ついにアリカ様の処刑日になった。
みんなも人助けに行かず部屋に集まっている。
さて、どうしたものか。
本気で動かないつもりなのか。
「ダン、あのときの話はまだ有効ですよ」
アル、それは前にも断っただろ。
とは言っても、本気でナギが動かないなら俺たちだけで行くことになるだろう。
なんせあのラカンすらもこうして動くのを待っている。
あと30分。
30分待ってナギが動かなかったら、俺たちだけで行くように提案しよう。
「ナギ・・・・・・」
かちこちと時計の立てる音だけが部屋に響く。
時間の流れるのがひどくゆっくりに感じる。
5分、10分と時間が経つにつれて杖を握る手の力が強くなっていく。
15分、20分。
誰一人何も言わない。
30分が経ち、もう限界だと思い立ち上がった時だった。
「おい、おまえら行くぞ!」
バーンとドアを勢い良く開けてナギが部屋に入ってきた。
おうっとみんなが立ち上がった。
「おせえよ」
でも、これで大丈夫。
アリカ様はより良い方法で助けられる。
処刑場所にたどり着くと、そこは元老院のメンバーと兵隊たちに埋め尽くされていた。
俺たちが着くと同時にアリカ様が谷底に落とされた。
しかし、そこは既に想定の範囲内で、ナギは俺たちとは別行動で救出に向かっている。
俺たちの仕事は兵隊を戦闘不能にして、元老院を捕らえること。
そして、そこから先はガトウさん達にまかせる。
交渉事ならあの人が一番だ。
そして、戦闘が始まった。
まっさきに狙ったのは元老院だった。
まずは元老院を逃げれないように気絶させることが重要だった。
紅き翼の登場に気づいた元老院はすぐに逃げようとしたのだが、アルの重力魔法によって地に伏せることになり為す術も無く意識を刈り取られた。
俺の仕事は元老院のメンバーが逃げ出さないよう杖を奪い縛り上げて見はっておくこと。
それくらいなら任せとけと言ったのだが、考えが甘かった。
元老院のメンバーを助けだそうと兵隊たちが群がってくる。
俺は元老院のメンバーを置いて逃げることもできないのであっさりと囲まれた。
「て、抵抗しなければ命までは奪わない」
しかし、囲んだ後は誰も俺に襲いかからない。
なんでだろうと思っていると、兵隊たちの会話が聞こえてきた。
「お、おまえちょっと攻撃してこいよ」
「ちょっ、ふざけるなよ。俺が殺されるだろうが。お前が行け」
「馬鹿!あいつの持ってる悪魔の力でやられると治療すらできないらしいんだぞ」
どうやら、この兵隊たちもダニエル(笑)を信じているらしい。
なんで元老院の連中も誤解を解いとかないんだろうと思ったけど、よく考えると仕方ないのかも。
結局のところ、これから先も俺たちをプロパガンダに使うつもりで、俺たちが救出に来るとは思ってもみなかったんだろう。
これは今の俺にとっては惟一の命綱。
これを使うことでしか俺が助かる道はない。
現に時々眼帯に手を掛けるだけで兵たちはびくっとしている。
ちょっとおもしろい。
数分間こんなやりとりが続いた。
「な、なら合図で全員突撃だぞ」
「お、おう。相手は一人だ。全員で行けば・・・」
相手もついに突撃を決意したらしい。
「1、2の・・・」
だが残念。
「さ・・あべしっ!」
既に時間稼ぎは十分。
こんだけ時間があれば誰かが来る。
今回はラカンが来てくれたらしく、右パンチで兵隊をたたきつぶした。
回りを見わたせば、既に戦闘は終了していた。
空を見上げれば、アリカ様とナギが飛んでいる。
そして二人はキスをした。
「よかったんですか?」
「アル・・・」
「あのナギがいる場所に、あなたがいる。そんな未来を選ぶこともできました」
いいんだって。
だって、どう見てもあれがハッピーエンドだろ。
「ふふ、そうですね。でも、あなたがそんな人間だからこそ私はあなたを主人公にしてみたかったんですがね」
「ただでさえ、英雄なんてやらされてるんだ。これ以上は勘弁してくれ」
離れたところでクルトがタカミチに怒鳴っていた。
なんか気に入らんことがある様だ。
まあ、あいつは頭いいから他の方法でも考えてたのかもしれない。
俺みたいな凡人からすればこれで十分なんだけどな。
とにかく、これでひとまずはハッピーエンドってことでいいのかな。
PS ガトウさんの交渉で、アリカ様が生きているということが民衆にバレ無い限りは、元老院のほうからアリカ様に手をだすことはないという魔法の契約を執り行った。
こいつらブッ殺したほうがいいんじゃないかとラカンが言ったが、戦争があって荒れている世界に混乱を起こさないためにもそうすべきではなく、こいつらが魔法世界の運営に一役買っていることも事実ということらしい。
難しいことはよくわからなかったが、全部終わったし、俺もようやく一息ついて休めるってことかな。
家に帰ってゆっくりと眠りたい。
明後日が原稿の締切だ。
あとがき
とりあえず、話ができているところまで投稿。
次の話で紅き翼編終了予定。
その後原作編に続くかは未定。
この戦いでダンの仕事をどうするのかが決まらなかったので、ダニエル(笑)に活躍してもらった。