ふと気づいたんだが、タカミチとクルトとガトウさんがいない。
どうやら、あの三人はおいてきたようだ。
ガトウさんおいてくるくらいなら、俺のこともおいてきてくれよ。
「やあ、千の呪文の男、また会ったね」
なんか強そうな敵が出てきた。
もしかしてラスボスか?
杖すら無い俺はとりあえず神に祈ることにした。
神はいた。
ラッキーなことに敵の数は俺たちより一人少なかった。
いざ戦闘が始まると俺は除け者になった。
なんという僥倖。
しかしどいつもこいつも一生物としては考えられない力で戦っているため、流れ弾に当たる危険を感じた俺は柱の影に隠れることにした。
なんかフェイトとかいうやつが超強い。
ナギと互角にやりあえるやつがラカン以外に存在するとは。
おそらくあいつもバグってるんだろう。
それにしても、さっきから流れ弾、いや流れ魔法がいっぱい飛んでくる。
敵味方問わず、外れた魔法が俺のところにピンポイントで飛んでくる。
このままだと死ぬと思ったのでもっと離れようと思ったのだが、これ以上後ろに行くと自動人形や召喚魔のパラダイスにまで戻ってしまう。
しかしここに留まるのは無理。
そんなときに俺に天啓が舞い降りた。
俺はできるだけ端の目立たないところを通りつつ通路を一直線に進んだ。
ラスボスより先に敵を配置したりはしないだろうと考えた。
なんとか無事に通路を出ることができ、俺は生命の危機を乗り切ったことに安堵した。
なんか黒ずくめのやつがいた。
何も言わずそこに佇むそいつを見た瞬間、さっきの奴ら以上の危険があると俺の危険人物センサーがビンビンに反応し始めた。
中ボスの先に一人でいる、どう考えてもこいつがラスボスだった。
「こ、こんにちは」
魔法が飛んできた。
迫り来る魔法を見ていると、次第に今までの旅のことが脳裏に蘇ってきた。
ナギに無理矢理旅に連れてこられたこと。
ナギに巻き込まれて戦争に参加することになったこと。
ナギに引っ張られて戦場に連れて行かれたこと。
ナギに・・・・。ナギに・・・・。
よく考えなくてもろくな人生歩んじゃいねえなとか思っていたとき、俺に奇跡が起こった。
後ろから、おそらくは通路から飛んできた魔法が俺の近くに着弾した。
すると、あまりの威力に周囲の床が崩れて俺は下に落ちた。
墜落しつつ、俺が落ちた穴の上をバカでかい攻撃魔法が通過していくのを見て、もしかして今まで不幸だったぶん幸運が一気にやってきたのかと思った。
どうやら地下通路に落ちたらしいのだが、俺は着地した時の足の痛みに蹲っていた。
上では、ナギたちが黒ずくめと出会ったらしく。
すさまじい魔法の音が聞こえた。
それからしばらく静かだったので、まさかナギ達全滅?とも思ったのだが、しばらくするとナギの声が聞こえてきたので生きているようだ。
「ダンの仇」とか聞こえてきた気がする。
あれ?俺死んだ事になってるの?
そんなことを思っていると、上のほうから石とか落ちて来始めたので生き埋めはゴメンだと思い俺は地下通路を進んだ。
後ろのほうで轟音が聞こえた、どうやら移動して正解だったらしい。
なんか広いところに出たんだが、大きな光る石があった。
そういやアリカ様がオスティアを浮かべているのは魔力で、その魔力が込められている石があるとか言ってた。
迷路みたいになっている地下通路の先にその石を置いているとか。
どうやらそいつがこれのようだ。
とりあえず、ここは崩れる気配も無いので戦いが終わるまでここにいようと思った。
しばらくすると、戦いの音も聞こえなくなり、俺は生き残ったんだと歓喜の声を上げた。
しかし、現実はそう甘くなかった。
なんか魔力が奪われだした。
オスティアがグラグラと揺れ始めた。
ふと、アルが言っていた完全なる世界のやろうとしていることが広域魔力減衰現象とかいうことだということを思い出した。
どうやらそっちを止めるのは間に合わなかったようだ。
目の前にある石からも光が少しずつ失われている。
これって、オスティア落ちる前に脱出しないといけないんじゃとか思い、俺はすごいことに気づいた。
・俺、杖も箒も無い。
・ナギ達、俺が死んだと思っている。
・石から魔力なくなると、オスティア落ちて死ぬ。
・ここから脱出するにも地下通路は迷路になっているらしい。
俺はとりあえず、目の前の石に魔力を注ぎ込み始めた。
俺自身の魔力も失われていき、石の魔力も失われていく、どう考えてもヤバイ。
次第に俺の魔力も空になり、残っているのは魔眼(笑)だけになった。
このままだと落ちて死ぬんだが、こいつを使うと俺の右目はぷちゅっとなる。
俺は悩んだ。未だかつて無いほど。
この右目がなくなると、将来就職に困るかもしれない、恋人すらできないかもしれない。
しかし、死んだら意味がない。
悩んでいたのだが、オスティアがすごい勢いで落ち始めたのを感じて死ぬのは怖いという結論に達した。
意を決して魔眼(笑)の魔力を使い始めた。
ぷちゅっと聞こえた。
右目がスゴク痛いけど、魔力を注ぐのをやめると死ぬのでやめれない。
ナギに振り回されている間に大怪我をすることも何度もあったので、右目が潰れても気絶しなかったのはよかった。
流石は軽く1年以上溜め込み続けただけあって魔力はまだまだ無くなる気配が無い。
時間にして30分ほどだろうか、俺は魔力を注ぎ込んでいたがついに限界が来たらしく、意識を失った。
私は信じられない光景を目にしている。
「空中王宮の落下速度がどんどん減少しています!」
言わずともわかる。
目の前で空中王宮が落ちる速度がどんどんと緩やかになっている。
反転封印術式があるとはいえ、本来なら広域魔力減衰現象を押さえ込むまでに空中王宮を支える魔力が失われるはずだった。
そして、空中王宮は地に堕ち見るも無残に崩壊するはずだった。
「これは、誰かが魔力石に魔力を注ぎ込んでいるとみて間違いないでしょうな」
艦長がそう言った。
神の奇跡でも起きなければそれしか考えられない。
しかし、ナギ達はあそこにいるのが見えていて、魔力を注ぎ込めるはずも無い。
いったい誰が。
今あの場にいて、墜落を緩やかにするだけの魔力を持った人間。
考えども考えども該当者は無し。
やはり、神の奇跡でも起きたのかと私が思った時だった。
「うん?そういえば、ダニエル殿がいませんな」
艦長が言ったのでダニエルは置いてきた、と私が伝えると。
「それはおかしいですな。先程帰還した混合部隊の人間が、ダニエル殿は作戦開始寸前に転移魔法を使って現れ、ナギ殿達と共に墓守り人の宮殿に突入したと言っておりましたぞ」
まさか、そんなことが。
しかし、あいつがいるとすれば、あいつの持つ魔眼を考えると。
私は至急混合部隊の人間を呼び寄せて真偽を確かめた。
すると、間違いなく突入したと。
「あの大馬鹿者が。私のせっかくの好意を無駄にしおって」
自然と笑みがこぼれた。
だが、感謝しよう。
あのスピードなら空中王宮は地に堕ちようとも再生不能な打撃を受けることはない。
確かに、空中王宮が地に堕ちるという未来は変わらないだろう。
太古の昔よりオスティアの象徴である空中王宮。
それが堕ち、崩れ去るということが我がオスティアの民の心にどれだけ影響があるかなどわかりきっていた。
しかし、あれなら空中王宮は地に堕ちようとも生き残る。
空中王宮が生きてさえいるのなら、民の心は折れぬ。
この先、オスティアが滅ぶことがあろうとも民は希望を持つことができる。
いつかオスティアを復興させる希望を持つことができる。
「それにしても、主がそこにおっては誰が祝勝会の料理を用意するのじゃ」
「ナギ、気づいているか」
ラカンが声をかけてきたが、気づかないはずが無い。
オスティアの墜落スピードがどんどんと落ちていっている。
そして、今の状況でそんなことが可能なやつは一人しかいない。
ダン、生きていたのか。
「あいつ、最後の最後においしいところ全部持っていきやがって」
ラカンが苦笑を浮かべた。
「何言ってんだ。俺たちにはまだ、お姫様を助けるっておいしいところが残ってるだろ?」
さあ、姫子ちゃんを迎えに行かないとな。
あとがき
ダンは最後においしいところを全部持っていった。
単行本を読み直してもオスティア崩壊らへんはよくわからなかったので勝手に設定作ってしまった。問題ないだろうか。
そういえば、ゼクトが変なことになるのもこの時だったっけ?
もうちょっと後?
単行本にはまだ出て無いので思い出せない。
ダンは結局死なない。
あと、ダンは日本語を覚えない限り魔法世界編まで本編にかかわれないことに気づいた。
あとがき2
感想板に書いていただいた指摘に気づき、ネットを使って調べ直したところ、自身の勘違いが発覚。
単行本が基本となっていて、雑誌を読んだのはずいぶん前のことなので忘れていたようです。
構成を練り直して書きなおすか、うまく話をつなげようとしますので、それまではどうかご容赦ください。
あとがき3
とりあえず、オスティアでなく空中王宮に変えて話を続けてみることに。
原作では創造主戦のときは魔力の消失現象ではなく減衰現象と言われていたので苦しいオリ設定ですけど、創造主のときは魔力は減っていくけど使用はできるということで。原作の消失現象内でもナギクラスならギリギリ使用可能っていうのはわけがわからなかったので。