なんだかんだでもう最終決戦前夜になった。
俺たちはオスティア近くの要塞に混合部隊の人たちと泊まり込んでいる。
混合部隊のみんなは、明日で世界の命運が決まる大決戦ということで大切な人と過ごしたり仲間と酒を飲んだりしている。
流石にこんな空気で逃げることなどできるはずもなく、俺も酒を片手に黄昏中。
ナギはみんなと酒飲んで酔っ払って寝ている。
俺はというと、なんでこんなことになってるんだろう、とか俺の人生どこで間違ったんだろうとか考えながらちびちびと酒を飲んでいる。
「こんなところにおったのか」
アリカ様が声をかけてきたけど、相手をしてるような気分じゃない。
「なんじゃ、つまらん男じゃな。こんな美女が声をかけてきたんじゃ。
上等なワインの一つでも差し出すのが男の甲斐性じゃろうに」
明日死ぬかも知れないのに甲斐性とか気にしてる場合じゃない。
「ま、気持ちはわからんでもないがの。
なにしろ明日で世界が滅びるかどうかが決まるのじゃ。私とて平常ではおれん」
いつもどおりの平然とした顔でいわれても説得力はありません。
というか、作戦に参加するメンバーの中で俺が一番死にそうだし平然となんか出来るはずもない。
「飲め」
なんかワインを俺に勧めてきた。
俺も酔いたい気分だったので抵抗なく飲んだ。
それからアリカ様と話していたのだが、なんかすごい眠気が襲ってきた。
「すまんな。明日の作戦に参加すれば、主はおそらく死ぬじゃろう。
それはあまりにも忍びない。ナギには私から言っておこう。
・・・・・・料理でも作って私たちの帰ってくるのを待っておれ」
ちょっ、まさか睡眠薬かよ。
俺は既に声を出すこともできず深い眠りに落ちて行った。
ありがとう、とすごく感謝しながら。
次の日、俺が目を覚ますと誰もいなかった。
感動に打ち震えていた俺は、とりあえず料理の準備をしておこうと思って保存庫を開けたのだが、昨日みんなが食べてしまったらしく何も残っていなかった。
近くに街も無いので、仕方なく周囲の森からなんか採ってこようと思って箒に乗って森に向かった。
ある日、森の中、悪の魔法使いに出会った。
なんか俺が果物とか採っていると
「どうやらもう出発した後のようだ」
「くそっ、一歩遅かったか」
「奇襲をかければやつらの一人ぐらいはと思っていたのに」
「やはり、オスティアで待ち構えていた方がよかったのか」
という会話が聞こえてきた。
俺はまずい予感がびんびんだったので、こっそりと逃げようとした。
しかし、どうやら相手は偵察用の使い魔を放っていたらしくばっちりと見つかった。
「なんでこんなところにいるのかは知らんが、貴様らに殺された同胞の恨み!」と、俺は悪の魔法使い10人ほどに追いかけられだした。
箒に乗って全速力で逃げる俺の後ろから魔法がどんどんとやってくる。
戦争中にナギたちの異常な量の魔法を避けながら避難誘導とかしていたので、これなら逃げ切れるかもと思っていたのだが、どうやら別働隊もいたらしく俺はあっけなく挟み撃ちにされて囲まれた。
なんか周りを囲む敵に、紅き翼にしては手応えが無いとか言われている。
いや、俺は戦闘要員じゃないから。
「とりあえず、殺しておくか」
一人がそう発言した瞬間、俺ついに死ぬのかと思った。
「まあ待て、ただ殺すだけではつまらんし、同胞の無念も晴れまい。
今のオスティアは完全なる世界の配置した自動人形や召喚魔で地獄のようになっていることだ。こいつをそこに杖も無しで送り込むというのはどうだ?
さぞ苦しんで死んでくれることだろう」
他の一人がそう言ったとたんに全員が「それは名案だ」とか言い始めた。
俺は抵抗空しく、装備なしの状態で転移魔法を使われて、光に包まれた。
「あ、ちょっと送り先間違えたかも」とか聞こえてきた。
ここは最前線であり、最終防衛線でもあるという言葉から始まった混合部隊の隊長
の激励の言葉が終わり、全員が作戦開始を待っていた。
「不気味なくらい静かだな、奴ら」
「なめてんだろ、俺たちのこと。悪の組織なんてそんなもんだ。
でもナギ、お前はよかったのか?」
「ああ、話は聞いてる。正直残念だが、今回ばかりはあいつの命の保証が無いって姫さんにこっぴどく怒られちまったよ。いくら言っても聞いてもらえなくてな。
まあ、さっさと片付けて帰ってダンの料理でも食おうぜ」
そうだな、と全員が了承の意を返したときに、急にダンが目の前に現れた。
なんか目を開けるとナギがいた。
みんなびっくりしてるんだが、俺もびっくりだ。
とりあえず、ここはまだ地獄じゃないみたいなので帰りたい。
「ダン、お前どうして・・・・・・。
いや、そうだよな。俺たちはずっと一緒なんだったな!
悪かったなダン、俺が間違ってたぜ!さあ、お前ら行くぜ!」
なんかナギが俺の腕を掴み、空を飛んでオスティアに向かい始めた。
え?俺のことは置いといてくれるんじゃなかったの?
なんかみんなも「へへ、このバカヤロウが」みたいな感じで俺のことを見てる。
混合部隊の人たちが足止めをしている間に、俺たちは猛スピードで本拠地に向かっていった。
あとがき
やっぱりシリアスは無理だという結論にたどり着いた。
あと、おそらくこのssでダンがまともに戦闘をすることは無いと思う。
次は創造主戦。ダンはもちろん戦わない予定。
そういや、オスティアって魔力で浮いてるんでしたっけ?
それが魔力を減衰させる力場かなんかで落ちる?
でも、反転術式で抑え込んだなら落ちないんじゃ・・・。
抑えこむ前に落ちたのかな?