世界全部を敵にまわすという絶望的な戦いを始めたはずの俺たち。
そう、絶望的なはずだった。
しかし、現実は非常識だった。
ナギたちは、正直これ勝てるんじゃね?というぐらい圧倒的な戦いをした。
確かに王女様達のおかげでこちら側に協力してくれる人も増えた。
しかしその人達の仕事は主に物資の支援や情報の提供、一般人の避難誘導や治療などが主で、戦いになるとナギ達を突っ込ませて暴れさせるのが一番効率が良かった。
俺?俺はもちろん連れていかれた。
避難誘導のほうに回してもらったけどな。
魔法の飛び交う中を逃げ遅れた人を探して飛び回る俺。
頬をかすめる魔法の感触は忘れられない。
そして今日も今日とて戦場。
あ、そういや完全なる世界の目的は世界を無に帰すとかいうことになるらしい。
さすがの俺もそいつはまずいと思ったのでナギ達にがんばってもらいたい。
どうやら、そうこうしているうちに戦いは終わったらしい。
ナギが帰ってきたのだがどうやら様子がおかしい。
いつものような元気がなく、腕に誰かを抱えている。
「ナギ・・・」
どうやら、その子はまだ小さな女の子のようだ。
ひどいケガをしているようだが、どう見ても既に息絶えている。
こういうことは珍しくはない。
これだけ大規模な戦闘になると、いくら避難誘導に人員を割いても巻き込まれる一般人が出てくることは当然と言ってもいい。
「また巻き込んじまったよ」
ナギはその子を抱く手に力を入れた。
俯いているせいで表情は見えないが、おそらくは泣きそうな顔をしているのだろう。
「わかっていたし、覚悟もしていたつもりだったんだけどな・・・。でも、やっぱりキツイな」
俺はナギの手からその子を受け取ると地面にそっと置いた。
ロリ・ロリ・ロリータ・ロリッ・ロリッっとその子の傷だけでもと治癒呪文をかけた。
表面上の傷は治ったが、顔に血の色が戻ることはない。
「世界最強の紅き翼のサウザンドマスター。それでも、小さな女の子一人助けられなかったんだ。笑っちまうよな」
「それでもこの戦いは必要なものだし、やめるわけにもいかない。
命の重さを比べるわけじゃないけど、やらないと、明日にでも魔法世界に生きるすべての人が死ぬかもしれない」
「ちくしょう・・・ダン、世界は優しくねえよな」
ナギの握りしめた拳から血が滴り地面に落ちた。
俺は女の子を腕に抱いて立ち上がり、避難所に向けて歩き始めた。
せめてこの子を助かっているかもしれない両親に届けようと。
「そうだな・・・世界は優しくなんかない」
避難所の方から二人の男女が走ってくるのが見えた。
この子の両親だろうか。
二人とも怪我をして包帯を巻いていて血がにじんでいるが、気にも止めずに走ってくる。
「でも俺は、こんな糞ったれな世界だからこそ、この世界に生きる人たちの優しさだけは信じたい」
女の子を抱きかかえて泣き崩れる両親を見て俺は言った。
PS なんか俺の知らない間に王女様がクーデターとか起こして女王様にランクアップしていたらしい。
ただ、女王様というのは響きがあれなのでアリカ様と呼ぶことになった。
そして、近日中についに判明した連中の本拠地に突入することも決まった。
連合、帝国、アリアドネーの合同部隊というすごいことになっているらしい。
作戦としては合同部隊が雑魚敵(ナギたちにとっては)を引きつけている間に少数精鋭部隊(紅き翼)が敵の本丸に突撃するというものらしい。
そして、なんか俺も少数精鋭部隊に組み込まれていた。
いつものごとく俺の意見は聞いてもらえなかった。
どうやら、運良く続いてきた俺の人生にピリオドを打つときが来たようだ。
あとがき
このままだとナギがただのバカになりそうだったので救済措置。
そして、そろそろ始まる創造主戦もシリアスになると思う。
せっかくなのでダンに見せ場をあげようと思った。
でも第二部になるとまたいつもの感じに戻る、ダンもいつもの調子に。
次は決戦前夜~突撃までを書こうと思います。
突撃はだいたい考えてるので、決戦前夜をどんな感じに仕上げるか考えてきます。
あと、アリカルートをって書いてる人がいたけど、アリカルートはさすがにまずいんじゃないかと。
そういえば、アリカがアスナの姉ならアスナはネギのおばさんになるんだろうか。