<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

赤松健SS投稿掲示板


[広告]


No.14013の一覧
[0] 封じられた鞘(ネギま!×FATE、TSあり)  喪失懐古/八改訂[大和守](2010/09/08 09:15)
[1] prologue[大和守](2009/12/18 13:29)
[2] 封鞘墜臨 / 一[大和守](2009/12/18 13:30)
[3] 封鞘墜臨 / 二[大和守](2009/12/18 13:30)
[4] 封鞘墜臨 / 三[大和守](2009/12/18 13:32)
[5] 封鞘墜臨 / 四[大和守](2009/12/18 13:35)
[6] 封鞘墜臨 / 五[大和守](2010/02/12 14:11)
[7] 封鞘墜臨 / 六[大和守](2009/12/18 13:38)
[8] 封鞘墜臨 / 七[大和守](2009/12/18 13:38)
[9] 封鞘墜臨 / 八[大和守](2009/12/18 13:39)
[10] 喪失懐古 / 一[大和守](2010/01/18 15:48)
[11] 喪失懐古 / ニ[大和守](2010/01/19 17:10)
[12] 喪失懐古 / 三[大和守](2010/02/02 12:51)
[13] 喪失懐古 / 四[大和守](2010/02/12 16:53)
[14] 喪失懐古 / 五[大和守](2010/03/05 12:12)
[15] 喪失懐古 / 六[大和守](2010/03/26 11:14)
[16] 喪失懐古 / 七[大和守](2010/08/04 06:49)
[17] 喪失懐古 / 八[大和守](2010/09/08 07:49)
[18] 閑話 / 小話集・1[大和守](2010/09/06 18:19)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[14013] 喪失懐古 / 六
Name: 大和守◆4fd55422 ID:fb470a4e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/26 11:14

 ――――その結末が、悲しかった。
       その痛みが、悲しかった。
       その頑なさが、哀しかった。

       その強さが、いとおしかった。


 喪失懐古 / 六


『はいなー、珍しいなアルト。何か用なん?』
「……ああ。ちょっと頼みたい事が出来た」
『…………びっくりや。アルトが頼られてるのはいつも見てるけど、アルトが頼るのなんて初めてやないの?』
「―――。そうだな。麻帆良では初めてになると思う」
『んふふ。コレは名誉なコトなんかな~』
「名誉、とは違うと思うぞ。……それに、正直心苦しいんだ。桜咲との事では何も力になれてないのに頼ろうとしているんだから」
『そんなの関係あらへん。アルトは十分ウチの助けになってくれてるし、アルトに頼られるのは嬉しいってのはウチの正直な気持ちなんやから』
「…………。ありがとう、近衛」
『ん。で、ウチにどうして欲しいん?』
「―――ネギ君を頼む。ちょっと衝突してしまってな、言った事を撤回する気はないが、言い方が自分でもどうかと思うくらいキツかった。多分落ち込んで帰るだろうから、何とかフォローを頼む」
『―――? ネギ君、アルトに何かしたん?』
「……ちょっと触れて欲しくない所に踏み込まれた。言い訳だが、感情的になって自制が効かなかったんだ」
『ふうん。じゃ、ウチらはあまり踏み込まずに元気付ければいいんかな』
「ああ。神楽坂にも言っておいてくれるとありがたい。――悪いな、迷惑かけて」
『それはもうええよ、アルト』



 その翌々日。
 新年度、新学期。
 その初日を、こんな憂鬱な気分で迎える事になるとは思わなかった。
「いや、まあ。自業自得なんだけどな」
 原因は春休み中の弓道場での一件である。
 アレ以来、ネギ君と顔を合わせていないのだ。

 ……顔を合わせ辛い、と言うのもあるのだが、新学期前日であった昨日は何やら寮内が騒がしかった。例によって騒動の中心はネギ君達であったらしい。
 らしい、というのは、自室に籠もって持ち込まれたミシンや蛍光灯の修繕に躍起になっていた俺は寮(騒動)から逃走したネギ君と関わる事はなく、その顛末を知らないからだ。

「……おーい、アルト、大丈夫? 顔色悪いよー」
「―――む。ちょっとだるいだけだ。熱もないし咳きもないから、風邪ではないと思うんだが……」
 早乙女の心遣いに返事をするが、目線をそちらに移すだけで体勢はあまり変えない。
 それが俺が無理をしている事になるのか、ザジも早乙女も綾瀬も、ついでに一つ向こうの龍宮まで振り向いてこちらを観察してくる。
「…………、なんでさ」
 そこまで信用無いのか俺は。
「無いね。少なくとも自分を大切にしないって点ではクラスの共通見解よ、あんた」
「む…………」
 断言されると立つ瀬が無い。ついでに反論の余地もなさそうなので視線を逸らすにとどめる。ついでに敗北感に打ちのめされる。

 新年度となり、学年が上がってもこの教室は以前と変わらぬ喧騒に包まれていた。
 理由は簡単。
 クラス替えも無ければ、席替えも無い。そもそも教室の位置すら変わらず、廊下に下げられている表札が「二年A組」から「三年A組」に変えられただけなのだから。
 当然、クラスメイトは以前と変わらぬ顔ぶれであり、気心の知れた連中に遠慮呵責もあったもんじゃねえのである。
 ソレを象徴するのが、朝礼前に行われた以下のやり取り。

『三年!』
『A組!!』
『『『ネギ先生―――っ!!!』』』

 …………いや、テンション極まったこのクラスならやるだろうとは思ったけどさ。

 溜息が自然と洩れて、視線は逸らしたままに窓の外を捉えた。
 快晴である。
 清々しいほどに快晴である。
 いっそ天晴れな程に快晴なのである。
「――――ふう」
 そしてこのクラス内で場違いにテンションの低い俺一人。うう、なんなんだこの倦怠感……。
「ほら衛宮、君がそんなだとネギ先生も不安そうだぞ。せめてあちらを向いて手ぐらいは振ってやったらどうだい」
 不意の言葉は龍宮か。ぼんやりと視線を教壇に移すと、確かにこちらを見るネギ君の姿。どこと無し不安そうなのは、彼も数日前の事が引っかかっているのだろう。
 取りあえず笑顔を取り繕ってひらひらと手を振ってやる。とたんにぱあっ、と表情を明るくして見せる子供先生。うん、純真なのは良い事だ。
 が。
 真に残念なのだが、こちらにはそれに追随していける余裕は無い。
「……真剣にどうしたの? いままでこっち、そんなに体調悪そうなあんたって見た事無いんだけど」
「―――そう聞かれても、俺自身本当に心当たりが無いんだ。理由の判らない体調不良がここまで応えるとは流石に思わなかった」
 いかにネギ君の背が低いとは言え、あちらは直立、しかも段差の上に立って。対して、こっちは着席している状態。自然、ネギ君はただ見渡すだけでこちらの様子を窺う事が出来る。なので取り繕った笑顔を早々に引っ込める事も出来ずに、しかし体のだるさはいかんともし難いのでそのまま頬杖をついて体勢維持。
 ……まあネギ君自身は俺と反対側の席に気を取られてそれ以上こっちを向かなかったが。
「ふうん……」
 不思議そうな顔で、それでも早乙女の追求も止んでくれた。
 しかし、
「ネギ先生。今日は身体測定ですよ、3-Aのみんなもすぐ準備して下さいね」
 ―――億劫な時間は平穏に過ぎ去ってはくれないらしい。
「あ、そうでした。ここでですか!? わかりました、しずな先生―――で、では皆さん身体測定ですので……えと、あのっ、今すぐ脱いで準備して下さい」
 ――――――――一瞬の静寂。教室内の喧騒が一気に消失する様は魔法のようだ。
 だがその実態は悪質だ。笑っている、絶対に笑っているぞこの連中。
「「「ネギ先生のエッチ~~~っ!!」」」
「うわ――――ん」
 まちがえましたー、と教室を飛び出していく子供先生。
 …………その様子をぼんやりと見送りながら、のっそりと腰を上げた。



 さて、身体測定である。
 通常の学校ならばクラス別、さらに男女に分かれて、身長は何処、体重はそこ、座高はあちら、視力はどちらと盥回しにされるものだと思うのだが、この麻帆良はいささか異なる。何しろ中等部ニ年に限定しても生徒数738名。女子高である為男女別途に動く必要こそ無いが、一箇所の測定場に下着の女生徒が長蛇の列を作る光景は想像するだにシュールすぎる。
 ……なので、教室ごとに測定器を持ち込み、クラス別でそれぞれに測定する方法を取っている。一学年二十数クラス、それが三学年分。一種類合計七十台近くの測定器が必要な計算になり、何でそんな話をするのかと問われればその測定器の不具合点検を頼まれた時の俺の眩暈を誰か想像してくれ。
「ふんふん、エミヤン157てん~……2!」
「む」
 頭に当てられた測定棒が離れるのを待って台から降り、手元の記録用紙に今言われた数値を書き入れる。
「でさあエミヤン」
「うん?」

「ついでにもっと詳しい測定もやっておかない?」

 問答無用に拳骨をくれておいた。
「ったー!! ちょっとしたジョークじゃない、冗談通じないなあエミヤン!!」
「却下だエロパパラッチ。少しでも違う反応見せてたら問答無用で襲ってきただろう、お前は」
「む。私は襲わないよー? 私は……」
 ―――う。何気なしに笑顔が暗い。ついでにドロドロとした負のオーラが立ち上ってそうで……って何気に他の連中に伝播していないか!?
「――――――――」
「……………………」
「――――――――えっと、拒否権なし?」
「…………とっつげきー!!」
「ヤメロォォ―――――!!!!」

「……どうだたアルか?」
「んー。残念だね古菲、ヤツぁあんたをとっくに凌駕していたようだ……」
「!!! な、なんと…………」
「ぐ、具体的には!?」
「ふむ。例えばくぎみーにはちょっと敵わないかも」
「くぎみー言うな! ってか具体的過ぎ!! 全然例えてないよ!? や、それより何で私のサイズ分かるのアンター!?」
「それでいてウエストやヒップは引き締まっていて無駄が無い……。きゃつめ、この数ヶ月で大分身体に磨きをかけたな」
「ぐぬぬぅ。身長では敵わぬながらもくぎみーに近い体型か……このクラスで中堅を保てるとはかなり出来ると視た」
「…………上位陣が上位陣だからね」
「――――好き勝手言ってくれるな貴様ら」
 この沸々と湧き上がる怒りの衝動をどうしてくれようどうしてくれよう。さっきまでは思考の方向が変にならないように視界に入れないようにしていた彼女らの姿を見ても全く動揺しない位にはいい感じにテンパっているがソレこそ気にもならないぞ。人の身体を散々触って撫で回して揉みしだいておきながら漏らす感想が不平不満とはどういう事だその手をいい加減止めろと言うのだこの、
「明石ぃぃ―――ッ!!」
「うひゃあぁ、アルトー!??」
「うわ!? エミヤンがキレたー!!」
「逃がすか鳴滝姉、椎名も柿崎もそこで止まれ! よくもまあ人を思う存分玩具にしていたぶってくれたなこの餓鬼共―――!!」
「ちょ、タンマ、これ以上は洒落にならないよエミヤンってか、うひゃ、許してー!!」

「……誰か止めてあげないの、カオスすぎるわよアレ」
「諦めろ神楽坂。普段大人しいからといって御しやすい相手とは限らない、典型的な見本だ。もう関わればいらぬ誤解を生むぞ、自業自得なのだし放っておけ」
「流石は衛宮アルト。彼女らを相手にあの状況からこうまで逆転させるカ。いや、負い目があれどああまでされるがままになる古も珍しいネ」
 そして以前から仲の良い級友と最近になってよくお世話になる友達を何とか止められないかと右往左往する良い子が数名。



「…………散々な目にあった」
 只でさえ体調不良な上にあのクラスメイト達相手に大立ち回りを演じたツケが回った。
 ぐったりと身体を預ける女子トイレの中。女子校なのだから男性用のソレは基本来客・職員用なのだから当然だが。
 何か大事なモノを犠牲にして余計な事を目一杯かました気がするが良く覚えていない。身体測定の最中から記憶が曖昧で、ついでに明確にしてはいけないような予感が背筋を這い登って来て吐き気に変わる。うう、俺が一体何をしたっていうんだ…………。
「うぷ…………」
 ……おかしい。ここまで体調が悪いのははっきり言って初めてだ。
 思わず口元を押さえて下を向く。目前には便器。ああ、初めて用を足した時も、何か捨ててはいけないものを捨てた気になったっけな――――
「――――ん?」
 見慣れないものが視界に入る。
 ソレは、自分の足に付いていた。いや、正確には伝っていた。
 太ももから中膝を経由してふくらはぎへ。ああ、このままだとソックスまで伝って付着してしまう。ソックスの色は白だから大層目立ってしまうだろう。いけないいけない、この赤は服に付着すると落ちない。経験者は知っている、生半可な洗濯では中々落ちてくれない。なので付着させない事が大前提、カラカラとトイレットペーパーを引き千切って拭い取る。
 ――――そう。赤。出所は太ももから更に上、つまり足の付け根――――

 その、意味するところは。

 ・
 ・
 ・

「………………………………なんでさ」



 唐突だが、衛宮アルトは感情の自己制御能力が優れている。
 そう言うにはいささか問題のある行動が最近目立っていたが、それは制御しようという意識があまり無かったからであって、衛宮アルトがその気になればいつでも感情を沈めて冷静な行動が取れる。
 それは、衛宮アルトの側面――魔術使いである事に起因する。
 魔術行使の際、魔術使いは自身を「神秘を実行する者」ではなく『神秘を実行する機構』と認識する。
 魔術という現象を現す為のシステム。そのシステムに感情は不要だ。
 加えて、魔術というのは自己暗示である。
 自分自身を律するキーワードを一声呟くだけで、衛宮アルトは万難を排する魔術使いへと“切り替わる”事が出来る。

 ……なので、つまり、何が言いたいのかと問われれば、

「……? もしもし、衛宮?」
『高畑、あー、すまない、本来ならば頼るべきではないと分かってはいるんだがお前しか頼れない。この場合、どうしたらいいんだろうな』
「ちょっと待って衛宮、話が全く見えてこないんだけど何があったんだい」
『あ? いや、切羽詰った話じゃないんだ。いや個人的には目一杯切羽詰ってるんだがあくまでそれは個人的な事であって誰かに迷惑がかかるとか危険が迫ってるとかそういう話じゃなくてだな、いやこの電話をかけている時点でお前には迷惑をかけている事になってしまう訳なんだがつまり、ああいやそういう話じゃなくて』
「待て待て、衛宮、訳が分からない。……OK、ちょっと落ち着こうか衛宮。取りあえず深呼吸をしてみよう。―――やった? 落ち着いたかい? 良し。じゃあ僕が一つずつ質問をするから、それに正確に答えるんだ。いいね?
 まず第一に、君は今何処にいるんだ。―――女子トイレ? ……、まあいい。それは判った。じゃあ次に、今君に命に関わる危険は無いんだね? ―――うん、そうか。それならいいんだ。じゃあ純粋に困った事があって僕を頼りたいだけなんだね? いやいいよ、一応僕は君の担当だからね。大抵の事は一人でこなしてしまう君に頼られるというのも貴重な経験だと思えるんだし。ははは、いやいやそんなコトは無いさ。
 ――――じゃあ、その困った事ってなんなのかな?」

 こんな風に、動揺を晒す衛宮アルトというのは、

『高畑――――――――

               生理って、どうすればいいんだ』

 とっても珍しいコトなんだぞ、っていう――――

「……………………それ、僕に何とかしてくれって?」



 結果。
 しずな先生にオンナノコとしての基本をレクチャーしてもらい、相応の対処法を教授賜り、有り難くも大事を取って保健室で静養するように指示された。
 経過? 訊くな。今日一日で俺がどれだけ磨耗したと思っている。
「今日の晩御飯は御赤飯じゃのう?」
 そして誰か俺の傍らでバルタン笑いをする枯れ木を撤去してくれ。焼却処分でも一向に構わないから。
「学園長、あまりからかうのは止めた方が……。衛宮は、ホラ。―――なあ?」
「―――ああ、ありがとう高畑。この場で俺の味方はお前だけだ」
 三人しかいないけど。
「ふむ。まあそれはそれとして――――しかし、驚いたのう。まさか月のモノとは。少々厄介なコトになるのではないかの?」
「学園長―――」
 老人の言葉に疲れた顔を見せる高畑。だが、しかし―――
「いやタカミチ、これはいたって真剣な話じゃ。詳しい話は割合するとして、衛宮の人体は確かに女性のものでも、ソレを統括する脳、命令を伝達する神経はオリジナル―――男性のもの。故に本来、男性としての身体機能しか統括されない。にも関わらず女性としての機能が働く事など在り得ない」
「そうだな。そしてそうなると確かに厄介な事になる。俺の持つ“記録”、魔術回路、そして各自の状態。それらを統括するのは自身を『衛宮』と認識しているだけの別人なのか、それとも―――俺の脳に、何らかの“手が加えられている”のか、可能性としては」
「…………、な」
 俺の発言に息をのむ高畑。まあ、只でさえ俺の扱われ方が酷かった上にそういう作為までされていたと考えればスプラッタも此処に極まった感じだが、

「まあ、それはこの『器』が“れっきとした人体である場合”なのだが」

「「は?」」
 おお、息が合っているな麻帆良ツートップ。

「そんなに不思議な顔をするな。確かに確証は無いが、そういった手が加えられた可能性は恐らく低い。理由は幾つかあるが、まず俺は間違い無く『衛宮』だ。これは俺自身の魔術と関係があるからお前達にも明言は出来ないが、確かに言えるのはこの魔術回路は常人の手には負えないモノだ。そしてソレを過不足無く統括出来ているのだからな。
 それにこの『器』は“人形師の作品”だ。それもおそらく、封印指定のな。
 確か人形師の封印指定は、“自分と寸分違わぬ己自身”を作り上げたが故にその命令を受け魔術協会から出奔した。つまり本物と見紛う程完成された人体を造る事は可能なんだ。
 この『器』はその類だ。俺が封印されてから同格の人形師が現れたのか、俺をこの地に飛ばした何者かが件の人形師から手に入れたのかは不明だが。
 ……後の話は簡単だ。この『器』に、“脳からの指令が無くとも機能する”器官を予め組み込んでおけばいい。学園長の危惧とは別ベクトルで悪趣味極まるが機能している以上は仕方が無い。そういうモノだと受け止めるしかないんだろう」

 長い話になったが、結論は簡単だ。
 俺が組み込まれた『器』は人造のモノで、ついでに余計な機能が付随していたという事。
「―――そういうモノなのかの?」
「……まあ、解析した俺自身専門外だからそれが可能なのかと聞かれると困るが」
「……はあ。それじゃあ、当たり前な女性としての悩み以上に困る事は無いってコトかい?」
「その“当たり前な女性としての悩み”が俺にとって最大の頭痛になると判っての発言か、高畑」
「ははは……」
 乾いた笑いを漏らされた。学園長は学園長で自分の危惧が杞憂に終わったと一息ついているし、どうにも納得がいかないのだが。
「―――失礼しまーす」
「ん?」
「む」
「お」
 保健室内に誰か入ってきた。こちら側の話が一区切りついた事もあり、学園長が素早く認識阻害の魔法結界を解除する。
「じゃ、僕達はもう行くけど」
「ああ、破綻した電話をかけて悪かった」
「あはは」
 念の為に引いていたカーテンを開いて出て行く二人。と、
「あれ? 学園長先生と高畑先生」
「……こんにちは」
「やあ、みんな」
 聞き覚えのある、というか毎日聞いている声が。
「―――大河内と明石か?」
「あれ、衛宮さん?」
「うわ、めずらしい! あのアルトが保健室のベッドで横になってる!」
 どうしたのー!?
「……あー、その、―――二人、いや和泉もいるのか、三人はどうしたんだ」
「あれ、アルト身体測定のとき聞いてなかったの? 昨日まき絵が桜通りで倒れてて此処で寝てるんだよ」
「――――む?」

 …………記憶を探る。身体測定。佐々木が倒れていて? 教室に報せが入ったのか、何時? あの時は確か、

人の■■を■々■■■■■回■■■■■だい■おきながら漏らす■想が不平不満とはどういう事だその■をいい加減■■ろと言うのだこの、

 ――――ぞくっ。

「……そうか、あまり覚えていないがそういう事があったと理解する。するから思い出させないでくれ頼むから」
「? う、うん……」



 その後、佐々木が起きるのを待って五人で寮へと帰った。
 帰り道、見上げる空には真円を描く光芒が一つ。
 遠く反響する世界干渉が、一つの始まりを告げていた。



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.02661395072937