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No.1200の一覧
[0] 麻帆良に落ちた敗北者[ばきお](2006/05/13 12:10)
[1] 麻帆良に落ちた敗北者~第一話~[ばきお](2008/01/30 13:35)
[2] 麻帆良に落ちた敗北者~第二話~[ばきお](2008/01/30 13:52)
[3] 麻帆良に落ちた敗北者~第三話~[ばきお](2008/01/30 13:54)
[4] 麻帆良に落ちた敗北者~第四話~[ばきお](2008/01/30 13:59)
[5] 麻帆良に落ちた敗北者~第五話~[ばきお](2008/01/30 14:07)
[6] 麻帆良に落ちた敗北者~第六話~[ばきお](2008/01/30 14:09)
[7] 麻帆良に落ちた敗北者~第七話~[ばきお](2008/01/30 14:14)
[8] 麻帆良に落ちた敗北者~第八話~[ばきお](2008/01/30 14:15)
[9] 麻帆良に落ちた敗北者~第九話~[ばきお](2008/01/30 14:21)
[10] 麻帆良に落ちた敗北者~第十話~[ばきお](2008/01/30 14:25)
[11] 麻帆良に落ちた敗北者~第十一話~[ばきお](2008/01/30 14:25)
[12] 麻帆良に落ちた敗北者~第十二話~[ばきお](2008/01/31 02:30)
[13] 麻帆良に落ちた敗北者~第十三話~[ばきお](2008/02/08 15:15)
[14] 麻帆良に落ちた敗北者~第十四話~[ばきお](2008/04/12 13:32)
[15] 麻帆良に落ちた敗北者~第十五話~[ばきお](2008/04/16 17:35)
[16] 麻帆良に落ちた敗北者~第十六話~[ばきお](2008/08/01 18:42)
[17] 麻帆良に落ちた敗北者~第十七話~[ばきお](2008/08/20 20:16)
[18] 麻帆良に落ちた敗北者~第十八話~[ばきお](2008/09/09 16:18)
[19] 麻帆良に落ちた敗北者~第十九話 前編~[ばきお](2008/11/08 23:14)
[20] 麻帆良に落ちた敗北者~第十九話 後編~[ばきお](2008/11/10 23:36)
[21] 麻帆良に落ちた敗北者~第二十話~[ばきお](2008/11/20 17:31)
[22] 麻帆良に落ちた敗北者~第二十一話~[ばきお](2008/11/23 01:46)
[23] 麻帆良に落ちた敗北者~第二十二話~[ばきお](2008/11/28 21:31)
[24] 麻帆良に落ちた敗北者~第二十三話~[ばきお](2008/12/12 20:08)
[25] 麻帆良に落ちた敗北者~第二十四話~[ばきお](2008/12/19 20:22)
[26] 麻帆良に落ちた敗北者~第二十五話~[ばきお](2009/01/18 18:33)
[27] 麻帆良に落ちた敗北者~第二十六話~[ばきお](2009/01/24 14:47)
[28] 麻帆良に落ちた敗北者~第二十七話~[ばきお](2009/02/09 16:37)
[29] 麻帆良に落ちた敗北者~第二十八話~[ばきお](2009/03/11 18:02)
[30] 麻帆良に落ちた敗北者~第二十九話~[ばきお](2009/06/09 01:57)
[31] 麻帆良に落ちた敗北者~第三十話~[ばきお](2009/10/15 00:49)
[32] 麻帆良に落ちた敗北者~第三十一話~[ばきお](2009/11/23 01:16)
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[1200] 麻帆良に落ちた敗北者~第十七話~
Name: ばきお◆6ef4a5fe ID:c9c87904 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/08/20 20:16
「おい、吸血鬼」

 放課後、クラスの女子がネギとクーの仲が怪しいなどと騒ぎ立てている時、ファフニールは隣の席に座っているエヴァに話しかける。

「む、な、なんだ」

 いつも通り無愛想に返事をするエヴァだが、心なしか顔が赤い。
 ホレ薬の所為とはいえ、異性に真正面からお前の全てが欲しい、等と言われれば誰だって変に意識してしまうだろう。
 それはエヴァも例外ではなかったらしい。

「昨日お前の家で話をしていたと思うんだが、どういう訳か途中からプッツリ記憶がねぇ。おまけになんか傷だらけで目を覚ましたんだが、どういうことだ?」

 記憶が無い。その言葉を聞いた瞬間、エヴァの周りの空気が凍りついた。
 勘の鋭い何名かのクラスメイトが何事かと視線を向ける。

「そうか……貴様。私にあれだけの事を言っておきながら記憶が無いとほざくか……」

 記憶の無いファフニールにしてみればエヴァに怒りを向けられるのは理不尽なものなのだが、反論するのはマズイと彼の本能が告げていた。

「ついて来い。やはり貴様には思い知らせる必要がありそうだ」

 氷の笑みを浮かべ、静かな怒りを携えたままエヴァは教室を後にする。
 茶々丸もオロオロしながらエヴァの後をついていき、ファフニールも感じた事の無い種類の気迫に戸惑いながら後を追った。

「な、なにアレ?」

「ただ事じゃないよね、あの雰囲気」

「痴話喧嘩かな?」

「え、あの二人付き合ってたの!?」

「マジ!? でも何気にお似合いかも……」

 残されたクラスメイトは有り得ない方向へ勘違いをしていた。




 ファフニールが連れて来られたのはエヴァの家だった。
 昨日茶々丸とファフニールの戦いで半壊していた筈なのだが、外見は元通りになっている。
 一体どのような魔法を使ったのか。

「オカエリ、御主人。オ、昨日御主人ニ愛の告白シタ小僧モ一緒カ」
 
 家に入るなり出迎えたのは、体長60~70cm程の茶々丸に似た人形。
 エヴァのもう一人の従者、チャチャゼロが顔だけファフニール達の方へ向ける。
 
「あ? 告白だぁ? なんの事言ってんだ?」

 ちなみに昨日、ファフニールとチャチャゼロは言葉を交わしていない。
 そんな暇も無かったからだ。

「ふん、それは後でたっぷり思い出させてやる。とりあえず黙ってついてこい」

 エヴァは乱暴にチャチャゼロの首根っこを掴み、地下へと続く階段を下りていく。

「ケケケ、ゴ機嫌斜メダナ、御主人」

 地下に降りると夥しい数の人形が鎮座しており、それを抜けた部屋には塔のミニチュアが入ったボトルシップのような物が置いてあった。
 エヴァ達がその前に立つと足元に魔方陣が現れ、皆の姿消えた。

「……ここは、異空間? あの模型の中、か?」

 一瞬にしてファフニールの周りの景色が一変した。
 さっきまで薄暗い部屋の中だったが今は青空が広がり、遥か下には海が見える。
 ファフニール達が立っている場所からは、かなりの上空にも関わらず手すりのない橋が巨大な塔まで続いている。

「その通りだ。ここは私が作り出した別荘。外での一時間が此処では一日となり、ここで一日経たねば外に出ることは叶わん」

 そう言ってエヴァは橋を渡り始め、茶々丸とチャチャゼロ、ファフニールもその後を追っていく。

「ここでなら私の力もある程度使うことが出来る」

 塔に着くと、おもむろにエヴァが口を開く。

「つまり貴様如き八つ裂きにするのは容易いという事だ。が、それではつまらん」

 鋭い眼差しでファフニールを睨み、邪悪な笑みを浮かべるエヴァ。

「私の目を見ろ。貴様の真偽を確かめてやる」

「あん?」

 言われたとおりにエヴァと視線を合わせると、ファフニールは何かに吸い込まれるような感覚に襲われる。

「む……これは」

 正常な感覚に戻り、ファフニールは辺りを見渡してみる。
 景色に変化こそないが、そこはさっきまで居た場所ではないことがわかる。

「幻想空間……夢の世界か?」

「ふん、無駄に知識はあるじゃないか。私が存分に力を振るえるのは此処しかないものでな」

 ここでならエヴァは全盛期の力を思う存分に使うことが出来る。
 先ほどのエヴァの言葉から察するに、彼女はファフニールをボコるつもりなのだろう。
 それは今のファフニールにとって死刑宣告に等しいものだった。
 おまけに茶々丸とチャチャゼロまで居るとなれば、どう転ぼうとファフニールに勝ち目など無い。

「あのマスター、いくらなんでもこの状態でファフニールさんと戦うのは……」

 さすがに気が引けるのか、茶々丸はエヴァを止めようとする。

「ケケケ、イージャネーカ妹ヨ。久シブリニ肉ヲ切リ刻メルンダカラヨ。現実ジャネーノハ少シ残念ダガナ」

 カタカタ笑いながら恐ろしい事を言っているチャチャゼロ。その手にはいつの間にか身の丈ほどの剣が握られている。
 彼女は殺る気満々らしい。

「肉塊になるかどうかは、そいつが虚言者かどうかで決まる。なぁ、自称ドラゴン君。ここでならお前の本当の姿が見られると思うのだがなぁ?」

 ニヤニヤと笑いながら、ファフニールの周りを飛び回るエヴァ。
 彼女にとって、ファフニールが嘘をついていようといまいと関係ない。

「……確かに夢の中にまで神の呪いは届かない、か……何とかなりそうだな」

 ファフニールには珍しく興奮した様子で口元を歪める。

「いいぜ、見せてやるよ。オレの本当の姿と力を……っ!」

 瞬間、ファフニールの体が突如現れた炎の竜巻によって包まれる。
 炎の竜巻は天高く伸びていき、徐々に巨大になっていく。
 その様は正に壮観。その場にいる全ての者がソレから目が離せなくなっている。
 やがて竜巻は弾けるように掻き消え、その中から巨大な異形が姿を現す。

「それが、貴様の本当の姿、か?」

 思わずエヴァが言葉を漏らす。
 目の前に現れたのは巨大なドラゴン。
 身に纏う鱗はその一枚一枚がルビーのように赤く、力強い輝きを放ち、開かれた眼はサファイアのように蒼の美しさを放っているが、蛇のように縦に割れた瞳孔が凶暴性をかもし出している。
 その棘々しいフォルムはワイバーンと呼ばれる飛竜に近いが、大きく違うのはワイバーンは二本足であるのに対し、人の物に近い形の四本爪の腕がある所か。
 頭から尻尾の先まで約30m、両翼を広げれば40mはあるだろうか。
 京都で対峙したスクナに比べれば大きさは劣るが、その圧倒的な存在感はスクナ以上の物がある。

「グオオオオオォォォォッ!」

 天を衝く咆哮に何の縛りもない現在のエヴァですら気圧される。
 この幻想の中に赤き邪竜と恐れられた一つの世界の最強が具現した。

「やはり自分の体はいいもんだな」

 エヴァ達の頭の中に低く、威圧感のある声が響く。
 
「ち、とんだ化け物だな。お前の世界にはお前みたいなのがゴロゴロいるのか?」

 エヴァはこちらの世界の竜種と戦った事もあるだろう。
 その彼女をして化け物と言わしめるファフニール。

「取り合えず神の野郎以外には負けたことはねぇな。で、どうするんだ? このまま戦えばいいのか?」

「……そうだな、それもおもしろそうだ」

 言ってエヴァはファフニールと距離を取り、茶々丸、チャチャゼロがエヴァの前へ躍り出る。
 それに応えるようにファフニールの体から炎が噴出す。

 異なる世界の最強と最強がぶつかり合う。




 長い時をエヴァと一緒に歩んできたチャチャゼロ。
 幾度となく主と共に絶望的な戦場を駆け抜けてきた。
 
「コンナモン手ニ負エナイゼ、御主人!」

 従者としても遥か高みに居る彼女とその妹分である茶々丸の二人掛りでもってしても、目の前の脅威には足止め程度にしかならない。

「わかっている!」

 エヴァから17本の氷の矢が飛んでいき、それに合わせて茶々丸もレーザーを放つ。
 その全てが直撃するかと思われたが、ファフニールから吐き出された巨大な火球に飲み込まれてしまう。
 しかしその一瞬の隙をチャチャゼロは見逃さず、ファフニールの首の部分に刃を振るった。

「ウオ、硬ッ!」

 並のドラゴンの首ならば確実に飛んでいただろう。
 だが刃は通らない。障壁も何も無しに、その鱗のみでチャチャゼロの刃を防いだのだ。
 ファフニールは尻尾をチャチャゼロに叩き付け、エヴァに向かって火球を放つ。
 それを五重の魔法障壁で防ごうとするエヴァ。

「何!?」

 全力状態のエヴァの障壁を、しかも五重になっているものを抜ける攻撃などそうそう存在しない。
 しかし、放たれた火球は強力な障壁を簡単に破壊しながらエヴァに迫る。
 急いで回避しようとするエヴァだが、避け切れずに右腕を火球に食われてしまう。

「マスター!」
 
 悲痛な叫びを上げ、エヴァに駆け寄ろうとする茶々丸だが、凄まじい衝撃により吹っ飛ばされた。
 背を見せた瞬間にファフニールが茶々丸を殴りつけたのだ。
 邪魔者がいなくなり、エヴァの元へ飛び立とうとするファフニールだったが、その目標が姿を消していた。

「よくも可愛い従者をふっ飛ばしてくれたな」

 ファフニールの後ろから声が響く。
 再生した右手に五本の冷気の剣を携えたエヴァの姿があった。
 凄まじい魔力を籠めたそれをファフニールの背中に叩きつけ、塔の上層部ごとその巨体を吹っ飛ばした。

「ケケケケ、ソノ可愛イ従者モ巻キ添エニスル気カヨ」

「ふん、お前は可愛くない方だからな」

 大技を決めたエヴァの元に二人の従者が集まる。
 二人共大きなダメージを負っているが、動けない程ではないらしい。

「あー、痛ぇ」

 粉塵が収まり、中から大した傷も負ってないファフニールが現れる。
 背中から血を流してはいるが、致命傷には程遠い。

「アレヲイテェデ済マスノカヨ!?」

「馬鹿げた耐久力だな……」

 並みの相手なら塵も残さない程の一撃でさえ、やっと手傷を負わせる程度。
 
「まだまだだろ? 折角の夢なんだ、もっと楽しませろよ」

 三人の頭の中に愉快げな声が響く。
 ファフニールは翼を羽ばたかせ、三人に突撃していく。

「ふん、こっちの台詞だ」

 言葉と同時に巨大な氷塊を作り出し、ファフニールに放つ。
 それを腕の一振りで打ち砕き、エヴァに広範囲の火炎を吐く。
 エヴァはそれを同じく広範囲の氷爆で防ぎ空中へと躍り出る。
 ファフニールはそれを追い、エヴァは魔法を放ちながら前を先行する。

「コリャア、出番ナサソウダナ。トバッチリ食ワナイヨウニ見物シヨウヤ」

 チャチャゼロの言葉に茶々丸も頷き、この人智を超えたドッグファイトを見物することにした。




 空中戦になってから両者に決め手が無くなってしまった。
 エヴァの魔法はファフニールに傷を負わせられず、ファフニールの攻撃もエヴァに届かない。
 この展開にも飽きたのか、ファフニールが動いた。
 炎を噴射させて、爆発的な加速をしてエヴァをその手で掴む。
 その加速に乗せ、エヴァを掴んだまま塔へと叩きつける。
 その一撃で塔は崩れ去り、エヴァとファフニールは瓦礫に沈んでいった。
 
「大丈夫ですか、姉さん」

「オォ、ナイス判断ダ妹ヨ」

 茶々丸に抱きかかえられながら、瓦礫の山を見下ろすチャチャゼロ。
 その中から瓦礫を吹き飛ばしファフニールが上空へ舞い上がる。

「加勢しなくていいのか?」

「ケケケケ、マァ夢ノ中ダシナ。好キニ殺ッテクレヤ」

 チャチャゼロはおよそ従者とは思えない発言をして、茶々丸に此処から離れるよう催促する。
 ファフニールは意識を瓦礫の方へ集中させる。
 するとファフニールの周りで渦巻いている炎が、口元で六亡星の魔方陣と複雑な文字を描いていく。
 一秒ほどで魔方陣は完成し、馬鹿げた量の魔力がそこに収束する。
 
「ッ! 離脱します……!」

 離れた場所で見ていた茶々丸は此処でも危険だと判断したのか、ファフニールよりも遥か上空へ移動する。
 その瞬間ファフニールから瓦礫に向かって一条の光が放たれ、エヴァが居るであろう場所へ着弾、同時に爆発を起こし目に映る建物全てを消し飛ばしていった。
 爆発が収まるれば、そこには塔や小島の変わりに巨大なクレーターが出来上がっていた。

「現実デコノ戦イ見タカッタナ……」

「日本が海に沈みます」

「ケケケケ、ダカラジャネーカ」

 間一髪危険地帯から脱していた従者たちは、クレーターを見ながら好き勝手なことを言っている。
 その様子を見たファフニールは戦いがまだ終わっていない事に気付く。

「来たれ氷精、闇の精」

 何処からとも無く聞こえる詠唱。
 ファフニールは辺りを見渡すが、声の主の姿は見えない。

「闇を従え、吹雪け、常夜の氷雪」

 キィキィと鳴く蝙蝠の声を自身の背後に感じ、振り返るがもう遅い。

「闇の吹雪ッ!」

 半身を復元させ、至近距離で大魔法を放つエヴァンジェリン。
 直撃を受けたファフニールは、闇の吹雪の威力に押されエヴァから遠ざかっていく。
 エヴァはこの好機を逃すまいと、闇の吹雪を放ちながらありったけの無詠唱魔法をファフニールへと叩き込む。
 驚異的な耐久力を誇るファフニールもこれには堪らず、身動きが出来なくなる。

「ッく。リク・ラク ラ・ラック ライラック」

 だがエヴァの攻撃はまだ止まない。

「契約に従い、我に従え、氷の女王」

 詠唱魔法を放ちながら無詠唱魔法を放ち、それを維持しながら詠唱魔法を放とうというのだ。

「来たれ、とこしえのやみ」

 さすがの彼女もそれほどの魔法行使は辛いのか、額に汗が浮かぶ。

「えいえんのひょうが!」

 それでもエヴァはやり遂げる。
 それは彼女が魔法使いとしてどれ程の高みに居るかを証明していた。
 舞い上がった煙が晴れると、そこには凍ったドラゴンのオブジェが完成していた。
 海から伸びていったかのような氷の中に閉じ込められたドラゴン。
 それは身震いするほどに神秘的な光景だった。

「全ての命ある者に等しき死を」

 だが忘れてはならない。

「其は、安らぎ也」

 これはエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルという最強の魔法使いが放った最大の攻撃だという事を。

「おわるせ……何!?」

 そしてもう一つ忘れてはならない。

「ガアァァァァァァァッ!」

 彼女が相手をしているのもまた、最強の怪物だということを。
自身を封じた氷を中からを砕き、一層強く炎をその身に纏わせてファフニールがエヴァと対峙する。

「驚いた、今まで戦ったことのある人型じゃ間違いなく最高クラスだな、お前」

 ファフニールは偽り無くエヴァを称える。
 彼が他人を称えるなんてことはそうそう無い。
 
「貴様は私が今まで戦ってきた全ての者の中でも最高クラスの相手だよ」
 
 エヴァも偽り無くファフニールを称えた。
 だがその心中は穏やかではない。
 身体の再生、詠唱魔法を放ちながらの無詠唱魔法の乱射、それを維持しながらの詠唱魔法。
 自身最高の攻撃も目の前の赤竜にはあと一歩、致命傷足り得なかったのだ。
 
「この一撃で最後だ。この幻想空間もそろそろ限界だしな」

 エヴァの言う通りあちこちの空間にひびが入っている。
 彼女は残った魔力全てを冷気の剣へと変える。

「接近戦か? いいだろう」

 ファフニールは渦巻く炎を右掌に集め圧縮させていく。
 やがてそれはファフニールの掌大の太陽のような球体になる。

「……おかしな話だが、今まで貴様にちゃんと名乗ったことはなかったな」

 ふと思い出したようにエヴァが呟く。
 出会ってから約一ヶ月、しかも同じクラスにいながら名乗ってないと言うのはある意味凄い。

「不死の魔法使い、闇の福音。エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ、覚えておけ」

 自身の通り名と共に高らかに声を上げるエヴァンジェリン。

「……名乗るってのが好きだな、人間は。赤き邪竜ファフニール、オレの世界の奴等はそう呼んでいた」

 ファフニールは溜息交じりに、しかし何処か愉快げにエヴァに名乗る。

「ふ、いざ」

「尋常に」

「「勝負ッ!」」

 あらゆるものを消し飛ばす断罪の剣と全てを破壊する太陽がぶつかり合う。




「最後ハ置イテケボリデヨクワカンネーンダケド、結局ドッチガ勝ッタンダ?」

「あぁ? オレに決まってるだろうが」

 エヴァの別荘で食事の手を緩めずチャチャゼロの問いに答えるファフニール。

「アホか、決着はつかなかったんだから引き分けだ」

 ワインを片手にファフニールに反論するエヴァ。

「ボケたか? あの時点でお前は限界、オレは余力を残しまくってんだ。明らかにオレの勝ちだろうが」

「抜かせ、私にもまだ切り札あった。だが幻想空間の状況を見てあえて一発勝負をしてやったんだ」

 二人の口論は止まらない。
 と言うのも、二人がぶつかり合った瞬間に幻想空間が解けてしまい、どちらにとってもすっきりしない決着となってしまったのだ。

「お二人共落ち着いて下さい」

 茶々丸は無表情ながらにオロオロして二人の仲裁に入る。

「ふん、そういや結局てめぇが怒ってた理由ってなんなんだ? そこのチビ人形が告白がどうたらとか言ってたが」

 ワインをグイっと飲み干し、ファフニールはエヴァに問う。

「……茶々丸、見せてやれ」

 エヴァはニヤリと邪悪な笑みを浮かべ茶々丸に指示をする。
 茶々丸はノートパソコンをファフニールの前に差し出し、ある動画を再生する。

「これがなん……なんじゃコリャァ!?」

 そこにはお前が欲しいとか言いながらエヴァに迫るファフニールが映っていた。

「う、嘘だ、こんなのオレじゃねぇ……」

「イヤ、ドウ見テモオ前ダ」

 あまりにショックだったのか、パソコンの前でプルプル震えているファフニール。

「さすがに私も驚いたが、まさかお前がそんなに私を想っていたとはなぁ。下僕としてなら飼ってやってもいいぞ? 人間になったドラゴンを置いてみるのも一興だ。アーッハッハッハ!」

 エヴァはファフニールがこんなになった理由を知っているにも関わらず、高笑いをする。
 そんな中、何かが粉砕される音が響く。

「そうか、なるほど。つまりお前ら全員消しちまえばこの事実は消える訳だな?」

 中々にパニくったファフニールはシンプルな答えを出したようだ。 
 その手に赤い篭手を装着し、纏う炎は今までで一番熱く、激しく燃え上がっている。

「ふん、夢の中での決着をつけてやるよ」

 こうして再びエヴァとファフニールの戦いというじゃれ合いが始まった。
 勝敗は……言うまでも無い。







 あとがき

 どうもばきおです~。
 遂にドラファフ登場です。夢の中だけど(汗
 てか人外同士の戦いって難しいですねぇ。
 まだまだ精進が足りません……
 感想、批評などございましたらお願いします。
 でわ~


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