「さすがに壮観だ」 照明に照らされ、白く輝く王宮を前に、ブラボーがつぶやいた。 王宮の入り口に至る距離、およそ200メートル。間には広大な庭園が横たわっている。 その、いたるところに。守備を命じられたであろうキメラアントたちが、手ぐすね引いてブラボーたちの侵入を待ち構えていた。 その数、およそ40。 ――ユウたちはこんな光景を見たのか。 ブラボーはふと思う。 NGL自治区、キメラアントの巣。 女王を守る蟻たちを誘導するため、暗殺者少女、ユウたちは自ら囮となってこの化け物どもと戦った。 ――あらためて尊敬するぞ。戦士ユウ、戦士シュウ! この場所に居ない戦友に対し、つぶやくと、ブラボーは王宮を仰ぐ。 建物からは、異様とも言えるオーラが放たれている。触れることすらためらわれる、そんなオーラだ。 エンド。 同胞にして、世界征服をもくろむ最悪の侵略者。 同胞として、ゲームマスターとして、そしてなによりもキャプテン・ブラボーとして。ブラボーは彼の存在を許容することなどできない。「エンドは、俺が止める」 口元を鋭くとがらせ、ブラボーは言葉を吐いた。 「だから皆……俺をヤツの居る玉座まで、たどり着かせてくれ!」 連戦の末、師団長を相手にしたあとだ。疲労が蓄積している。 この上キメラアント、そしてエンドが復活させた死者たちと渡り合い、その上でエンドと戦うなど不可能だ。 だからブラボーは、信頼する仲間に、困難を託した。 その思いが酌めぬものが、いまこの場所に居るはずがない。「わかったわ」 鎖使いのカミトが、口元を引き絞り、言う。「私たちがあなたを、エンドのところまで無傷で送ってあげる」 カミトの言葉に、全員がうなずき。 放たれた九本の矢は、一丸となって敵陣に突っ込んだ。 敵の数は40。 とはいえ相手は陽動を警戒してか、分散している。 ひと塊りになり突き進むブラボーたちのほうが、局地的にみれば多数で敵に当たれると言える。 この際スピードが命である。足が止まれば数の差は容易く逆転するからだ。 移動しながら戦っているのだから、キメラアントの生死は後回しにして、ブラボーたちは当たるを幸いキメラアントたちを撫で切りにしていく。 ブラボーは自分たちの状況を、ユウたちに比したが、それはけっして正確ではない。 ユウの場合、個対集団だった。相手の懐深く飛び込んで、ほかの敵の動きを掣肘し、同志討ちを誘うこともできた。いわば個ゆえ、相手を個に解く余地があったと言える。 しかしブラボーたちは9人。この数になると、もう集団と言っていい。 集団と集団の戦いは、数の論理がより強く働く。そしてそのしわ寄せは、力が劣る者に、確実に降りかかって来る。 敵にも、そして味方にも。 王宮までおよそ100メートル。 堅牢な巨体を持つ甲虫型のキメラアントとぶつかる。 先頭を駆けるブラボーのブラボー脚。アズマの純正無拍子に続けてツンデレの相棒、幽霊幼女ロリ姫のドリル。倒すのにかかったのは、わずか3合。かわりにほんの一瞬、行き足が鈍った。 そのわずかな間に、キメラアントが次々と駆け付けて来る。 虎口を逃れるため、ブラボーたちがふたたび全速で駆けだす、直前。一発の念弾がミコの細い脚に当たった。 ほとんど偶然の一発は、一人の少女の足を、完全に止めた。「ミコ!」 ブラボーは叫び、全力でブレーキをかけた。 止まらざるを得なかった。このいとけないお嬢様に、ブラボーは保護者のような気持ちを抱いている。 だが、ブラボーは止まることを許されなかった。 何者かが後ろから、ブラボーの体を突き飛ばしたからだ。 それはミコの念獣だった。 彼女はまっすぐにブラボーを見た。 自分を置いて先へ行け。間違えようのない強い意志のこもった瞳。 だが。「――俺は、捨てない!」 両足を地面に突っ張らせ、ブレーキをかけるとブラボーは逆方向に跳ぶ。 それより早く、赤い影が戻っている。レットだ。「ここは、俺が!」 足を旋風のように振りまわし、ミコに群がるキメラアントを吹き飛ばすと、レットが叫ぶ。「みんなは先へ!」 レットが皆を促した。瞬間。 乾いた音をたて、広がったオーラの壁が、ふたりとブラボーたちを隔てた。 それはブラボーたちが倒した甲虫のキメラアントの念能力だった。 死に瀕したこのキメラアントは、敵を遮断するため、能力を発動したのだ。「わたしが!」 ほとんど何も考えずにUターンしてきたツンデレが、壁を殴りつける。 だが、オーラの壁である。物理衝撃でオーラを相殺するツンデレ式除念法では、解除などできない。 そうする間にもキメラアント達が集まって来る。 壁の向こう側に25。ブラボーたちの側には10。「行ってください! 貴方には、やるべきことがあるのでしょう!?」 片足を引きずった状態で、それでも念獣を操り戦いながら、ミコが叫ぶ。「その通りッス! みんなが居ない方が、俺も力が発揮できるんスから!」 レットは不敵に笑い。 変身。 そう唱えて。 レットが念能力を発動させる。 ――“強化着装(チェンジレッド)”。 オーラや身体能力を、軒並み数倍に引き上げる、レットの強力無比な念能力。 着装時のレットの戦闘力は、キャプテンブラボーすら上回る。「レッドキィーック!」 たがいに背を守りながら戦い、ふたりは声をそろえて叫ぶ。「ブラボーッ!!」 そろってサムズアップ。 この意気が、ブラボーの心を打った。「ブラボーだ!」 ブラボーはふたりに向かって強く拳を突き出し、駆けだす。 ロスは大きい。王宮へとつづく道は、複数のキメラアントにより、塞がれている。 脇からすり抜けようにも、そちらからも敵が迫ってきている。 だが。敵の重囲を破るように。「――“加速放題(レールガン)”、満天花雨!!」 オーラのこもった数十のパチンコ玉が、ショットガンのごとく前方にはじけた。 アズマだ。物体加速の念能力で撒き散らしたパチンコ玉には、アズマのオーラが強く込められている。 下手な銃器よりもよほど強いこの攻撃で開けた突破口を、最後尾から一気に先頭に躍り出たブラボーが、まだ止まらず、地を這う流星となって打ち開く。「衝撃! ブラボーインパクト!!」 前方ががっぽりと開く。 続く5人がその間隙を駆け抜けた。 5人だ。一人足りない。 残ったのはシスターメイ。メイドとシスターを融合させた珍妙な衣装に身を包む、銀髪の少女。 彼女は分かっていた。 この突撃は、どこかで必ず足が止まる。 そこを敵に包まれれば、死は逃れられない。 だからシスターメイは、強いてあの壁を“分解”せず、いままた足を止めた。 すべて、敵を分散するため。「こっちよ! キメラども!」 別方向へ走るシスターメイを、数体のキメラアントが追っていく。 彼女は敵の攻撃が効かない。敵を何体引きうけようと、無謀ではない。 と、背中越しに、アズマの声が飛んで来る。「シスター! “分解”は絶対に使うなよ! また会おう(・・・・・)!」 シスターメイが振り返ると、黒づくめの仏頂面は、もうこちらに目もくれず、目的地に向っている。 ――まったく、この男前。 シスターメイはアズマたちに向けてサムズアップすると、襲い来るキメラアント達の攻撃を避けるふりをしながら逃げた。 もともと彼女には攻撃が効かない。反面、相手にも干渉できない。それがバレては、敵を引きつける役目を果たせないのだ。 ブラボーたちが王宮に駆け込んでゆく。 それを見やってにやりと笑いながら、レットは右脇から襲い来るキメラアントの頭部を裏拳で砕いた。 同時にしなう腕でわき腹を打たれている。「かはっ」 呼気を漏らしながら、レットは向かい来るキメラアントたちの攻撃をいなす。 本来、躱せる攻撃だ。にもかかわらず、喰らってしまう。背後に、ろくに動けないお嬢さまが居るからだ。 ――ヤバイッスね。 レットは不思議と笑いながら、心中でつぶやいた。 この状況、仮にレット一人だとしたら、あるいは敵を全滅寸前くらいには持って行けたかもしれない。 だが、それも動けない少女とともにでは、無理な話だ。 彼女もけっして足手まといではない。変幻自在の念獣“ハヤテのごとく(シークレットサーバント)”を使い、ミコは常にレットの死角を守ってくれている。 だが、敵に押し包まれる中、自在に動くことができない。これは致命的だった。 ――だからと言って、見棄てられるわけないっスけどね。 ピンチになれば、必ず現れて、助ける。 それがレットの理想とするヒーローの姿だ。 守るべきものを見棄てるなど、レット自身を否定する行為だ。そんなことができるはずがない。 だから、レットは賭けに出た。 守り、削られていく中で、幸いにも条件は満たしている。「――サンライトブレード!!」 突如、昼をあざむくばかりの光が、レットから放射された。 昆虫の性質を深く残しているキメラアントの何体かが、方向を見失ってほかのキメラアントにぶつかる。 光が、集束する。それは剣の形となり、レットの手に収まった。 敵の動きが止まる。この深紅の戦士の、未知の能力に警戒しているのだ。 ――好都合っスけどね。 不敵に笑うと、レットは渾身の力を込め、叫ぶ。「受けろ光の斬撃――サぁンライトっ――ブレードぉ!!」 剣先の軌跡がレットを中心に一周する。 瞬間。 光が奔る。 風が割れた。 大気が裂けた。 斬撃の威力は敵を巻き込み、庭園中に破壊を巻き起こした。 巻き込まれたキメラアント、数多。直撃を受けた蟻は、死骸すら残していない。 これぞレットの最終念能力、サンライトブレード。 変身に使われていた全てのオーラを、たった一撃に換える、一撃必殺の斬撃。 ――まだ、足りないっスか。 レットは見た。 庭園のそこここで、身を起こすキメラアントの姿を。 その数、すでに五指に満たない。それでも、いまのレットにとっては、致命的だった。 オーラを絞りつくしたレットは意識を失い、倒れた。「レットさん!」 ミコの叫び声。 柔らかい感触が、レットを包んだ。 それが何なのか、レットが気づくことが無いまま。 折り重なったふたりの姿は、襲い来るキメラアントの中に埋没した。 通路は死体で満ちている。 弾痕が壁一面に見てとれ、ここであった戦闘の激しさを偲ばせる。 通路をまっすぐ駆け、大階段を登れば、そこはエンドのいる玉座の間。 一心不乱にそこを目指して、6人の戦士はわき目もふらず一直線に駆け抜ける。 ふいに、殺気が揺れた。「――そこっ!」 鎖使いカミトの“鉄鎖の結界(サークルチェーン)”が、天井からの一撃を未然に防いだ。 同時に異音。攻撃を受けた“鉄鎖の結界(サークルチェーン)”が、半ばからふたつに千切れ飛んだ。「やるわね」 弾かれながら笑い、背後に着地したのは、サソリの特徴をもつ女性型のキメラアント。 ――ザザン、師団長。 カミトは心中、つぶやく。 続いて二匹のキメラアントが、天井から降りてくる。 4本の巨腕をもつ大猿と、全身鋭利なとげのついた甲殻をもつキメラアント。 ――ザザンの師団に居た兵隊長。 ここでカミトは覚悟を決めた。“鉄鎖の結界(サークルチェーン)”が破壊された以上、カミトの戦力は半減している。 だったら、この先の敵と十分に渡り合うことができないなら、命を賭して戦う場所は、ここしかない。「ブラボー、こいつらは私が止める。だから先へ」「フン。一人では無理だ。オレも残る」 カミトに続くように。 コートをなびかせ、海馬瀬人が一団の背後に立つ。 たがいに、ブラボーたちに向けて背中越しにサムズアップ。 ブラボーも、振り向かない。拳を天に突き上げ、玉座の間を目指し、駆けていく。「不快」 ザザンが眉を顰め、言った。「二人だけでこの私を止める気?」 カミトの鎖が、地面を打った。 ブラボーたちを追おうとしたザザンの配下二体の動きを、それで止めたのだ。 それがザザンを無視した行為に見えたのだろう。ザザンの額に青筋が立った。「あなたたち、そっちの男と遊んでなさい。私はこのクソ生意気なガキに――教育してあげるわっ!」 言うや、ザザンはカミトの鎖を宙で捉え、振りまわした。 暴力的なまでの力に翻弄され、カミトは壁にぶつけられる。壁が破壊され、それでも止まらず数枚の壁を抜き、外までぶっ飛ばされた。 カミトの視界は万色の薔薇で覆い尽くされた。 王宮東側に在った薔薇園の中に突っ込んだのだ。 人の侵入を感知したからだろう。照明がつき、辺りをこうこうと照らしている。 薔薇のとげに裂かれながら、体勢をたてなおしていると、カミトが開けた大穴から、ザザンがゆっくりと出てきた。「ゆっくりと、薄皮を剥ぐようにして、解体してあげるわ」 凶悪な尾を振い、薔薇の花を散らしながら、ザザンは三日月のごとく口の端を釣り上げた。「後悔なさい」 ――あの尻尾。 カミトは身構えながら、思考を走らせる。 ――私の“鉄鎖の結界(サークルチェーン)”を砕く威力。まともに食らえば即死! カミトは左手首に巻いた、長さ半分以下となった鎖をはずした。 いまのこれは、カミトの愛用する鉄鎖ではなく、その残骸だ。“鉄鎖の結界(サークルチェーン)”として用を為さなくなっている荷物をぶら下げている余裕など、ない。「喰らいなさい!」 尾の一撃が、カミトを襲う。 避けざま、“追尾する鉄鎖(スクエアチェーン)”を送り込み、束縛を狙うが、一瞬のちにはザザンの姿は右後方にある。 かろうじて目で追ったカミトは、襲い来る拳撃を、腕で受ける。 かなりのオーラを割り裂いたが、それでもガードした腕が悲鳴を上げる。 防御に専念しながらも、別の意思をもったように“追尾する鉄鎖(スクエアチェーン)”はザザンに絡む。「――っとおしいっ!」 ザザンの尾が振われる。 カミトは瞬間的に鎖を送り出し、尾の軌道から鎖を逃がした。 そうなると今度はカミトに攻撃が来る。 ――なんて攻撃! 防御が精いっぱい! 攻撃の軌跡が薔薇を舞わせる。 魅入られるような花吹雪の中、戦いは続く。 攻撃をしのぎながら、カミトはじりじりと、攻撃に移る機会を探っている。 ――ザザンも、どんな攻撃でも私の鎖を破壊できるわけじゃない。 拳や足では無理だ。 破壊力の集約された、尻尾の一撃のみが、鎖を破壊しうる。 その判断は正しい。 問題は、ザザン自身もそれを知っていたことだ。 だからザザンは、待っていた。カミトが、この厄介な鎖を積極的に使ってくる機会を。 そのために、あえて尾の動きを、ほんのわずか、敵に違和感を与えぬ程度にセーブしていた。 結果、一合。 カミトの繰り出した“追尾する鉄鎖(スクエアチェーン)”は、手元20センチのところできれいに砕かれた。 鎖の砕片が飛び散る。 ザザンがサディスティックな笑みを浮かべた。「これであなたの牙は抜いてあげた。あとは――処刑ね」 操作系の念能力者は、使い慣れた武器を失えば、戦闘力が激減する。 小生意気な少年は恐怖に震え、無様に泣き叫ぶことしかできないはずだった。 だが、カミトの面に絶望の色はない。 有るのは強烈な覚悟と意思。「ありがとう」 カミトは目を伏せ、礼を言った。「いざとなると、なかなか覚悟ができなかったのよ。手足のようになじんだ、愛着のある武器だから」「なにを――」 ザザンが絶句する。 いつの間にか動けなくなっているのだ。 すぐさま“凝”。瞳にオーラを集めたザザンは、見た。 己を拘束する、強烈なオーラの気流を。「気づいた?」 カミトは笑う。 念能力を作った時、カミトはこのような事態を想定していた。 だから、モデルとなったキャラクターになぞらえて、ひとつの能力を作ったのだ。 ふたつの鎖を失ったときにのみ発動可能な、だからこそ、圧倒的に強力な念能力。「これ喰らって死ななかったら、素直に尊敬するわ」 散らされ、地に積もった薔薇の花びらが舞い上がる。 オーラの気流が唸りをあげ、カミトの手元で加速する。「ちくしょぉぉぉぉっ!!」 ザザンの、痛恨の叫びすらかき消して。「――“星雲嵐(ネビュラストーム)”!!」 破滅的なオーラの嵐が吹き荒れた。 この嵐に巻き上げられたはずのザザンは、落ちてこなかった。 かけらも残さず、ザザンは消滅したのだ。“星雲嵐(ネビュラストーム)”を放った態勢のまま、カミトは前のめりに倒れた。 その上に、舞い散る薔薇が覆いかぶさっていく。 ――私はここまでみたい。みんな……あとは任せたわよ。 薔薇の雪に埋もれながら、カミトは意識を手放した。「オレのターン!」 海馬瀬人は決闘盤からカードを引き抜いた。 海馬は舌打ちした。手札には即時に召喚できるモンスターもギミックもない。いわゆる手札事故だ。 全身を棘で鎧ったキメラアントが、抱きついてくる。 それを紙一重で避け、続く大猿の攻撃を躱す。4本の腕を避けきれず、肩口に攻撃がクリーンヒットする。 物理的ダメージはない。かわりにオーラがごっそりと削られた。 現在ライフポイントは2300。 いまのダメージだけではない。カピトリーノから続く連戦、念能力の連続行使により、オーラは全快には程遠い。 まともに戦えば、それでも海馬はこの二体相手に優勢に渡り合えるだろう。 しかし、海馬にそのような選択肢は有りえない。「“トレード・イン”を発動! 手札からレベル8のモンスター、“青眼の白竜(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)”を捨てることで、デッキから2枚ドローする!」「――ナンだテメエ、バトル中にカード遊びなんかしやがって。馬鹿じゃねぇのか?」 海馬がカードを引く間にも、攻撃の手は止まない。 攻撃を受けながら、それでも海馬はけっしてひるむことなく、不敵に笑う。「オレのターン! “未来融合-フューチャー・フュージョン”を発動! 融合素材となるモンスターを墓地に送ることで、二ターン後に融合モンスターを特殊召喚する! 指定するのは“F・G・D(ファイブゴッドドラゴン)”だ! オレは五体のドラゴン族モンスターカードを墓地に送る!」 期は、満ちた。「“竜の鏡(ドラゴンズ・ミラー)”を発動! 墓地の“青眼の白竜(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)”三体を除外し――出でよ! “青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)”!! それに加え“巨大化”を発動だ!」 白銀の竜皮をもつ、三つ首竜が、通路を埋め尽くすように現れた。 魔法カード、“巨大化”の恩恵を受け、その攻撃力は、実に9000。 この威容に圧され、二体のキメラアントの動きは、否応なく止められた。「一撃だ」 海馬は指を一本立て、それを敵に向け、そして吼える。「――スーパー・アルティメット・バースト!!」 光の奔流が、通路を埋め尽くした。 避ける余地などない。キメラアントたちの姿は光の中に消えた。 光が収まる。 圧倒的な破壊。あとには塵一つ残っていない。「バカな戦いか。確かにそうだろう」 虚空に向けて、海馬はつぶやく。「だが、これがオレの――プライドだ」 カードを手に、海馬は構えを解かない。 通路の向こうから、広場に居たキメラアントたちが侵入してくる姿が見えたのだ。 残りライフポイント、わずかに100。すでに海馬は消耗しきっている。 それでも海馬は敵を鼻で笑い、カードをドローする。「――オレの……ターンだ」