(32話スピンオフ ネタ提供:トト様)
SIDE マチ
私は今、ヨークシンでヒソカの治療の時に、知り合ったシュウという子と一緒に、食事をする店を探している。
めずらしくもヒソカはシュウを友人(シュウ本人は否定)だという。
ヒソカの奴と友人になる輩は、どこか頭のネジが外れているやつか戦闘狂のどちらかだと思っていたが、シュウは多分どちらでもない。
私から見た感じシュウは、戦闘に向くとは思えない。
やはりあの探索能力に目をつけていたのか?
たしかにあの能力はすごいと思ったが、時間をかければ他の方法で探せるし、本人の持ち物を使わないといけないという点でかなり評価は悪くなる。
やはりなにか隠しているのか……
「この店なんてどうですか?」
「お金出してもらうんだから私はどこでもいいよ。」
「俺は、マチさんが喜んでもらえる店で食べたいんですよ。」
なかなかうれしいこと言ってくれるじゃないか。
私たちは、この街で最高レベルの洋食店に入った。
たしかここは、前に雑誌で紹介されていた店で、どの料理も値段がそれなりにするはずだ。
さらっとこんな店に誘うなんてやっぱり闘技場で稼いでいるのかね。
ウエイターの案内で私たちは個室に案内された。
メニューを見ると普段の私なら絶対に頼まないような値段ばかり並んでいる。
私はとりあえず任せるというと、シュウは私に食べられないものと好きなものを聞いて、それをウエイターに告げメニューを決めていた。
まぁ無難なやり方だけど心使いはうれしいね。
頼んだもの意外で、何か単品で他に頼むかと言われたので、メニューの中の高いもの上から5つと頼んでやった。
しかしシュウはいやな顔一つせずに食べ切れますかとだけ聞いてきた。
少しこの子の評価が上がった。
料理がくるまで、ヒソカのことやシュウの能力のことで話しが弾んだ。
シュウは能力を使って一律500万で人探しの仕事をしているらしいが、私にはデートや食事一回でチャラでもいいと言ってきた。
旅団にとってもシュウの能力は使えるので、私は素直にその話しを請けることにした。
食事や遊んでやるだけで、探してもらえるなら安いもんだ。
「マチさんは普段やっぱりあの能力使って仕事しているんですか?」
「…あぁそうだね。たまに他の仕事もやっているけどね。」
仕事の話になったが、旅団のことについては一切話さなかった。
とりあえず私は、普段は今日のヒソカ相手みたいな仕事をしていると言っておいた。
シュウはそうなんですかと言って納得している様子だったが、その表情にすこし違和感を覚えた。
勘であったが、シュウは私の本当の仕事(旅団)について、知っているんじゃないかと思った。
私の警戒レベルが一気に上がり、シュウにカマをかけてみることにした。
……引っかからなかった、私の勘が外れたのかとも考えたが、なぜか勘が外れたとは思えない。どうにも疑問が晴れないので、私は自分から本当の仕事(旅団)について話をしてやった。
本当に知らないでいて、他の奴や警察に言うようなら、言われる前に殺せば良いと思った。
しかしどうやら私の勘は当たっていたようで、前にヒソカのシャワー上がりで蜘蛛の刺青を見たらしい。
あの馬鹿何やってんだかと頭を抱えたが、シュウは他に言うつもりもないし気にもしないと言ってきた。
シュウは旅団にとって不利益な奴ではないと勘が言っているので、その言葉を信じ殺さないでおく。
その後は酒を飲みながらシュウとヒソカの悪口で盛り上がっていった。
「マチさん、デザートは何にします?」
「それじゃあコレとコレとコレとコレ。」
これでも一応女なのでデザートにはうるさい。
シュウはお金を気にしないでいいと言っているので、自分の金なら絶対に頼まないような高いデザートのみ頼んだ。
どれもこれもとてもおいしかった。
帰るときにまたもシュウのおごりで、お土産用のケーキを買った。
今日の宿を聞かれたので、決めていないとシュウに教えると、どこが良いですかと聞いてきた。
さすがに会ったばかりの男と寝ないと伝えると、真っ赤な顔をして宿代を出すだけで、自分は闘技場の部屋に帰ると言い返してきた。
私はそれならと、シュウの言葉に甘えることにして、目の前にあった宿に泊まることにした。
シュウはフロントでハンターライセンスを提示し、その後カードで宿泊代を支払うとまた今度と去っていった。
なかなか紳士じゃないか。
シュウと別れた私は、宿のスタッフに案内され部屋に向かった。
ハンターライセンスの効果なのか一番良い部屋だった。
私は部屋に入るとお土産用のケーキを机に置き、ベランダに出てクロロに電話した。
「もしもしクロロ、今日ヒソカから電話があったろう?」
クロロにシュウの能力でクロロの居場所を特定した事や、蜘蛛について知っていたが不利益にはならないような奴だったと報告した。
クロロは、その関係を維持しろとだけ言い電話を切った。
その後私は、部屋に戻り携帯をベッドに放り、シャワーを浴びて寝ることにした。
―――――――次の日
SIDE ヒソカ
マチに腕をなおしてもらった次の日、シュウの部屋に朝ごはんを一緒に食べようと誘いにいくと、シュウは反省中の札を首から下げ正座をして眠っていた。
シュウのベッドには、ポンズがぐっすり眠っているし、また何かいらないことをしたのだろう。
とりあえずボクは、シュウを起こすことにする。
シュウを起こし事情を聞くと、どうやらポンズを放っておいて、マチと食事に行って、4時間待ちぼうけを喰らわせたらしい。
シュウにあれほど女性との付き合い方をアドバイスしてあげたのに、とため息をつくとどうやらポンズも起きたようだ。
「あれ…おはようヒソカ。シュウは?」
「正座して寝ていたから起こしたところだよ♢」
「そう、寝ていたの…それじゃあまだそのまま放っておいていいわよ。」
どうやらボクは、言葉を選び間違えたらしい。
シュウは、涙を流しながらこちらを睨んでいる。
ゴメンよ、シュウ。
ポンズが朝ごはんは食べたのかと聞いてきたので、まだだと伝えると、シュウのお金でルームサービスを2人前頼んでいた。
どうやらシュウのご飯は抜きらしい。
とりあえず許してあげればと助け舟を出すことにしたが、ポンズの怒りは収まらないらしい。
これも2人らしいかと、ボクはそれを見ながら朝ごはんを食べることにする。
それにしてもこの二人は、昨日のボクの試合を見てここまで態度が変わらないなんて、ある意味大物だね。
ボクは自然と顔が笑ってしまうのを抑えられなかった。