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No.39194の一覧
[0] 念と燃《短編》【感想募集】[湯印](2014/01/05 19:51)
[1] 念と燃弐《短編》【感想募集】[湯印](2014/03/13 20:26)
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[39194] 念と燃《短編》【感想募集】
Name: 湯印◆d3ba9219 ID:697d33fa 次を表示する
Date: 2014/01/05 19:51
 念ト燃 ハンターハンター二次創作短編

舞尾街(まいおがい)は、古縫(ふるぬい)の内野にある。
 舞尾街の北に位置する古縫の刷堂山(すどうざん)に丁度雲が沸いた頃、男が四人、刷堂山から駆け下りる。
 男達は皆傷を負っていた。
一人の男は頸筋から腹の下まで綺麗に裂かれ、一人の男は左肩の付け根から先が無く、一人の男は獣に喰われたかのように右耳と左目を無く
している。三人の男達の最後から、両肩から血のみを出す男が朦朧と後を追っていた。

「弥勒(みろく)よ。どうするのだ」
眉間に深く皺を寄せて走る男が云った。深い声ながら静寂を含んだ声は刷堂山の山中に三人の足音と共に響いた。
「致し方あるまい。殺さざるをえん」
「寺の者は皆準備を始めたであろうか」
「死ぬのは嫌じゃ。死ぬのは・・・・・・」
振り向き際に弥勒は二人に云った。頸筋より流れる血は弥勒の数歩後ろに散り、花を咲かす。身に纏っていた着物は汗も血も何もかもを吸い取り月
光を艶やかに反射していた。
「宴陸(えんりく)よ!無事か!」
左腕を無くした男――朱雀(すざく)が背後に向って叫ぶ。
聞こえる音は――無い。弥勒の目には、ただただ深い靄が掛かった森が写るのみで在った。
「宴陸も――だ」
そう云った朱雀は声を震わせながら走り出す。
(やはり、こうなってしまったか)
弥勒は顔を歪めた。かつての念者が自身の道を占ったことが脳裏を過ぎる。
それから月光に照らされ靄が覆う夜の山道を弐拾分は走っただろうか。
「見えたぞ!」
弥勒、朱雀、蒙塁(もうるい)は麓の舞尾街に在る羅刹寺に歩を向けた、血の匂いを曳いて。

弥勒達が生まれるより遙か昔、人が知恵を持ち始めた頃、人を超える人が現れた。他者よりも貪欲で、他者よりも狡猾。化生の類よりも恐ろし
き魔性の力を手にし人間。力は十を超え、人への察知は万を超す。生まれながらに力を持つ者や、果てに至った者。人は彼等を念者と呼んだ。
かつての世界は念者こそが絶対で、頂点であった。念者は念者を生み、力を持つ者達は村を作った。
念者が作った村は繁栄を極めた。念者からは念者が生まれ念者の傍にいる者は、力を持つ者か無邪気な子供と決められた。念者は念者を喰い、
村は村を飲み込み、やがて一国の国が生まれた。念者こそ国力であり念者こそ王で在り、王が念者で無くとも王の裏には彼らが在った。
其れから時は流れ、国の上に国が出来、念者の上には念者が。念者こそが此の世を成すと幾許かの人間が気づいた時代に弥勒は生まれた。
此の理を繋ぐ者。
其れは、嘗ての念者達が弥勒に与えた占で在った。

舞尾街の西に位置する羅刹寺(らせつじ)は何時もの様相とは裏腹に平静が消え去って居た。羅刹寺の直傍に在る繁華街は昼の賑わいを無くし、昼に静寂を保つ寺は夜中に声が叫び出る。寺に居た念者の一人は相反するこの景色こそ世の道理と自嘲する。燃え盛る街は何れも世の終わりを感じさせた。
「どうするんじゃ!」
十六在る襖が全て開かれ、異様な風体の僧がずらりと蝋燭を囲う様に座っていた。五拾二は居よう其の姿は正しく百鬼夜行で在った。
「遣るしか在るまいて。皆覚悟はしていよう」
「されば――」
「皆よ。弥勒の占の件。忘れた訳では無かろう。これもまた、我等の運命也」
彼等は覚悟していた。念者が公に出てきた時代に、遂に終わりが来たと。此処こそが末路なのだと云わんばかりに老人は、顎を撫で近頃まるっきり見えなくなった目を閉じ云った。
「では・・・・・・念字の製作に入る。皆、持場に」
そう言うと老人は立ち上がり月を見ながら寺から出て行った。
「普賢(ふげん)よ。弥勒、文殊(もんじゅ)、観音(かんのん)、地蔵(じぞう)を任せる」
髪を後ろで結ぶ皺を寄せた男はそう答えると自身の頸を爪で切った。床に血が落ちる。
(恐怖の発作は無くとも生への未練はやはり残るか)
男は、血が出る頸の傷を抑えながら蝋燭を上に念字を書き始めた。
「我も、我も」
自身で頸をかっ切る者が徐々に増えて行く中、男は一人云った。
「壱つ。此処弥勒以外の者立入ることを深く禁ず」
男は頸を切り、自身の血で染まった床に念で文字を書いた。
「壱つ。今より全ての者死ぬことを禁ず」
女は沿う言い腹を自分で裂くと床に念で文字を書いた。
「壱つ。此処に魂を注ぎし者、永劫の苦しみを持つ」
男は剣で、胸を刺し、寺は血で染まった。

「弥勒よ」
寺の門で、老人は弥勒に声を掛けた。
「ご老人よ。街の者は皆・・・」
舞尾街はかつては林の中に埋もれる街であったが、目も眩むほどに人が居た。今は、街は焼かれ、人は死に古縫は血の池と成った。弥勒は、門を見上げた。丹塗りに美しい月が僅かに写り、刷堂山が微かに雄叫びをあげている。弥勒はそう感じた。
「・・・寺の者が待っておる。弥勒よ。覚悟せよ。此処より先は・・・・・・逝け」
空を見上げ、月を見る。今夜は、満月。涙と共に微笑が出た。
「勢至(せいし)様」
「朱雀。分かっておる・・・これが最後だ。見よ。月を、あの火を」
「勢至様。介錯、失礼する」
「良い良い。逝くぞ皆よ」
一瞬。風が吹くと勢至と呼ばれた男の首が落ちた。
「朱雀」
「嗚呼、蒙塁」
二人は顔を見合わせ、同時に心の臓に指を突っ込むと、老人の上に被さるように倒れた。
(燃える街もまた一興か・・・。後は、任せたぞ弥勒よ)
朱雀は、そう思いながら目を閉じた。

「皆よ、ご苦労である」
弥勒は壱拾六ある襖の一番端から中に入り地に伏せ文字を書く者達に声を掛けた。
慟哭であろうか。僅かに聞こえる声に皺を寄せると、皆が倒れる中唯一本、血で穢れることも無く揺らめく蝋燭の火を見ながら――云った。
「此処に、観音、弥勒、文殊、地蔵、普賢、他五拾弐名の命を対価に、誓約を果たす。誓約の名は制約。此の世に生ける全ての念者に此れを挿す。今より、全ての者に成約を掛ける」
そう弥勒は云うと、全身に油を掛け、その蝋燭を身に浴びた。
(痛みは無い。思うことは何も。此れぞ世の断りである)
ふと――弥勒はそう思った。

その後、羅刹寺は陽炎のように消えた。同じように、舞尾街も夢幻かのように姿を消した。
それから、幾許かの時が流れ其の地に寺院が誕生した。
創設者の名は――宴陸。
腕を持たない、僅かな男であった。
心源寺には決まりがあった。

一つ、念を授けし者には燃を授けよ
一つ、燃を知らざるものに念を教える者此れを罰す
一つ、制約を持つ者こそが真に力を扱うものと覚悟せよ

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【妄想背景】
・かつては念に制約が無く、制約を作る誓約を誰かが作った的な感じで描いた

感想募集です。


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