どうにも自分はヨークシンという町と相性が悪いようだ。エイジアン大陸有数のマフィア『上帝会』のNO2、王星光は心の中で溜息をついた。五十路を過ぎても尚鋭さを保つその容貌にもいくらかの疲れが見える。
ボスの代理としてヨークシンドリームオークションへの参加を任されていたのだが、この二週間は不幸と気疲れの連続だったと言っていい。
ヨルビアン大陸への移動において使用したファミリーの所有する飛行船は、原因不明の機体トラブルにあい着陸予定地から遠く離れた荒野に不時着せざるを得なくなり、その後大破した。移動に余計な時間を食わされるのは王が最も嫌うことの一つだ。おまけにその時に右足を骨折したとあっては不機嫌にもなろうというものだった。
苦労してヨークシンシティまでつくと今度は、他のファミリーとのコネクションを作るために奔走しなければならない。ヨルビアン大陸系の巨大ファミリーのボスたちとの会食。バルサ諸島方面で近年流通しているという新たなドラッグの輸入ルートの構築。それとボスが気にしていた近年勢力を伸ばしているマフィアで、的中率100%の占いを行うファミリーとのコネクションの作成など、やることは数多い。面倒な限りだ。
そうこうしているうちに地下競売の開始。ここでの出資の一部はコミュニティーへの上納金となり、そのファミリーへの評価も上がる。しかし逆にいえばそれは力あるファミリーは多くの出資を期待されているということでもある。マフィアはメンツを何よりも重んじる。エイジアン大陸のビックネームである上帝会の出資は少なくない。しかしファミリーの受ける利益とリスクを見誤るべきではない。その見極めもまた酷く神経を使うものだった。
だがそれも今日までだ、と胸をなでおろす。直に郊外の発着所へ帰りの飛行船が到着する。来年からは自分もヨークシン行きは遠慮して、ボスに行ってもらうことにしようと考えた。もっともボスは去年のヨークシンで腹を壊してずっと寝込んでいたという苦い思い出があるので―――そのせいで今回は自分が行かされたのだが―――すぐに首を縦には振ってくれないと思うが。
「王様、迎えの飛行船が到着したとの報告が入りました。発着所へ出発してかまいませんか?」
「ああ、構わん。出せ」
部下の報告に応える声もやや疲れ気味だ。だがそれは仕方がないだろう、と王は考える。何はともあれこれでヨークシンとはおさらばだ。早く冷えたビールでも飲むとしよう。
そんなことをつらつら考え、リムジンのシートに体を預け眠気に身を委ねようとした時だった。
ふとした違和感。姿勢を直そうとするが、体がしびれたように動かない。
自分も年かな、などと暢気な考えがよぎったのは一瞬だった。まるで体中を万力で締め付けられるような圧迫感に襲われたのだから。
「……ッ!? ……!!」
声が、出ない。いくら声を張り上げようとしても音として鼓膜をふるわせることがない。
さらには息が出来ない。金魚のように口をパクパクと開くが、大気が肺を満たすことはない。まさしく彼は陸地で溺れていた。
体は簀巻きにされたように動かすことができない。運転席からは死角となっているこの位置では、運転手が彼の異変に気づくこともない。
運転手が異変に気づくのは、この二十分後。
飛行船の発着所についたとき、そこには顔を紫色に変色させた王の死体が残されていた。
双眼鏡越しには発着所で上帝会の黒服たちが慌てふためく様子が見て取れた。念能力を使えば音も拾えるのでより正確に状況を把握できるが、相手側の念能力者に感づかれる可能性もある。それにその必要もないだろう。二十分間の呼吸停止の後も生きている人間なんて、すくなくとも私は知らない。標的は死んだと結論付け、スーツ姿の女性は双眼鏡をしまった。
携帯電話を取り出し、登録されている数少ない番号の一つを選択。単調なコール音。このわずかな時間が彼女は何よりも嫌いだ。顔も合わせたくない上司に誰が好き好んで電話をするかと思う。
「何か用ですか、アゼリア。私の貴重な時間を奪うということは、それ相応に重要な用があるのでしょうね」
「上帝会の王星光を始末しました。任務完了です」
「ああ、彼がヨークシンに来る際に、飛行船を墜落させたはいいが仕留めそこなったというお粗末さでしたね。無能なあなたでもこれだけ時間を使えば任務は遂行出来るのですか。その不手際のおかげで、結局麻薬のパイプを作られてしまったわけですが、そこで動く金が一体いくらになるのか判りますか? まあ、無能は無能なりに頑張ったということで評価してあげましょう。で、ほかに何かありますか?」
「いえ、報告は以上です」
「ではさっさと帰って次の指示が来るまで待機していなさい。まったく、無駄な時間を過ごしてしまいました」
通話の終了を告げる無機質な機械音が流れた。携帯電話がミシミシと音をたてて、慌てて力を緩める。
こちらとしても無駄な時間を過ごしたものだ、と怒鳴りつけてやりたかった。そもそも時間を無駄にしたくないから簡潔な報告にとどめているというのに、あの糞上司はねちねちと厭味に時間をかける。他に類をみないほどに性格最悪のあの男が上司だということは、信じてもいない神に対して文句を言ってやりたかった。
だがそれも慣れたものだ。なんせあの厭味に付き合わされるのはもうかれこれ十年にもなるのだから。頭の中で上司を殺す方法を十三通り考え付いたところで、怒りはある程度収まっていた。
立ち入り禁止の高層ビルの屋上は鍵がかかっており出ることは出来ない。しかし彼女は特にうろたえることもなく、入ってきたとき同様屋上のヘリから身を乗り出すと、人通りのない狭い路地に向けて飛び降りた。
音を立てることもなく、羽のように軽やかに着地する。通りに出れば多くの人々が歩いているが、不審な視線を向けてくる者もいない。彼らにとっては雑踏の中の一人にすぎず、記憶に残るものなどいないだろう。それはとてもいいことだ。仕事で重要なことは問題を残さないことなのだから。
偶然通りかかったタクシーを捕まえて、行先を告げる。
外を見ると、道路交通法を無視した速度で走っていく黒塗りの車がたくさん見えた。
リパ駅から徒歩十分ほどのところに、アゼリアの暮らすロフトはある。
アゼリアのいるファミリーが保有する物件で、何の変哲もない安っぽいロフトだ。殺し屋の待機場所としては最適といえる。
アゼリアは今年で十八歳になる。七歳の時にファミリーに引き取られ、殺し屋としての訓練を受けた。八歳の時に初めて手を汚して以来、ずっとこの仕事を続けさせられている。
好きでこの仕事を続けているわけではない。しかし彼女には辞めることができない理由があった。自己嫌悪に苛まれながらも死ぬわけにはいかない理由があった。
だからこのロフトに帰るときは、ドアを開ける前に必ず「円」で部屋の中を警戒するようにしている。盗むものなど何もないこの部屋に誰かがいるときは、自分の命を取りにきたと考えるのが自然なのだから。
そして……いた。
リビングのソファの陰に寝そべるように、一人の人間がいる。
身長は150㎝ほどだろうか。円から読み取れる情報によると髪が長いので、少女だと考えられる。その割には胸の凹凸がまるでないので、少年なのかとも思われたが。
子供の念能力者で戦闘向きの者などほとんどいない。しかし相手の能力が判らない以上油断は禁物と考えるべきだ。さらに円での警戒は相手の奇襲を防ぐが、同時に自分の帰宅を相手に知らせることになる。部屋に入った瞬間に攻撃を受けると思われた。
静かに、音を殺してドアを開ける。
一見する限り玄関に目立った変化はない。とはいえ敵の潜むリビングはドア一枚隔てたすぐそこだ。ここからが問題だった。
「絶」でできる限り気配を消してドアに近づく。音で拾える情報からは敵が行動しているとは思えない。息をひそめて隙を狙っているのだろうか。それとも特殊な能力の持ち主なのだろうか。
どちらにしてもここで立ち止まっていて良いことはない。覚悟を決めるべきだった。
「動くな!!」
ドアを蹴破ると同時に「堅」、やや「凝」で目にオーラを集中させ、相手の能力に対応できるよう準備する。
しかし予想された奇襲も、特殊な能力の発動も無かった。
壁に背をつけたまま、ソファーの陰を睨みつける。
相手の動きはない。オーラの揺らぎも、気配の変化もない。いや、というかあのオーラ、漏れてないか? 「纏」も出来てないように見えるのは気のせいだろうか。
決して警戒は緩めることなく、しかし本当に敵なのか……それどころか念能力者なのかも疑問に思いながら、アゼリアはそっとソファーを回り込んだ。
そして、思わず息を呑んだ。
そこにいたのは、予想に違わず少女だった。
年のころは十四、五くらいだろうか。しっとりと黒い髪が卵型の顔を縁取り、肩甲骨のあたりまで伸びている。閉じられた瞳の色は判らないが、かわいらしい顔立ちの少女だった。
だがアゼリアを驚かせたのはそんなことではない。
そこにいたのは、今も目を覚まさない最愛の……!!
「な、なんで……?」
ありえない、と理性が言う。
彼女は今も病院のベッドの上で、おとぎ話の御姫様のように眠っているはずだ。
こんなところにいるはずがない。
しかし心はそれが幻などではないと訴える。そう信じたいと叫ぶ。
理性と感情が激しく渦巻く中、アゼリアは身動きすることもできず、もしもこれが敵の攻撃だったならば為すすべなく死んでいただろうというほど無防備だった。
「ん、ん~……」
そして、少女の瞳がゆっくりと開かれた。
眠たげに眦を擦る姿すら愛らしい。アゼリアにとってその姿はどんな宗教画よりも神秘的な光景に見えた。
何よりも待ち望んだ、誰よりも、自分よりも大切な人が目を覚ます、夢にまで見た一瞬。アゼリアは感動のあまり涙を流しそうになった。
……だからこそ、そのあとの一言に凍りついた。
「……あんた誰?」
その時のアゼリアの気持ちを言い表すことはできない。
何よりも待ち望んだその瞬間が訪れたと思ったら、それは幻想だった。
最高の気分と最悪の気分を同時に味わうこの感情は筆舌に尽くしがたい。
それでも残されたわずかな希望にすがりたいと考えるアゼリアを責めることは誰にも出来ないだろう。
「ヴィ、ヴィオレッタ? わ、私だ。アゼリアだよ。お姉ちゃんだよ?」
「誰よ、ヴィオレッタって。私はそんな白人みたいな名前じゃないわ。私は綾瀬遥。あんたなんか知らないわ」
世界がぐるぐると回っているようだった。
ぐらぐらと落ち着かないのは自分の方だということにも気づけないほど、アゼリアの受けたショックは大きかった。
ペタリと腰が抜けたように座り込み俯くアゼリアに、遥は怪訝な視線を向ける。
「ふ、ふふふふふ……これが、お前の能力ということか? 随分と悪趣味じゃあないか……」
床に座り込んだかと思うと、少し危険そうな笑いを洩らしながら一人言を呟くアゼリアに、遥は少し引いた。
それが遥の命を救ったと言えるだろう。彼女の首が今あった位置を「何か」が通り抜けたかと思うと、リビングの壁に巨大な切れ目が生まれたのだから。
「……え? ひ、ひぃっ!!」
ゆらり、と立ち上がったアゼリアの、狂気が見え隠れする笑いが貼りついたその顔に、遥は思わず腰が抜けそうになった。
立ち上がることもできず、手足をばたつかせて必死で後ろに下がる。しかしそんなものは逃げているうちに入らない。アゼリアの姿が一瞬ぶれたかと思うと、遥は首を掴まれて壁に叩きつけられていた。
「答えろ! 誰に雇われた? ヴィオレッタのことをどこで知った?」
「し、知らない知らない知らない!! ヴィオレッタなんて名前聞いたこともない! ここどこ!? 私こんなところ知らない!」
「貴様……!! しらばっくれるつもりか!?」
アゼリアの怒気が高まったと思うと、再び「何か」が遥の顔のすぐそばを通った。
ズドン、と大きな音がして、恐る恐る目だけでそちらを向くと、銃弾を撃ち込まれたように壁からは白い煙が立っている。
視線を前に戻すと、狂気を纏った死神の眼がそこにはあった。
「次は当てる。最後のチャンスだ。質問に答えろ」
「し、しらないんだってばぁ……き、気がついたらここにいたの、ほんとうになにもしらないの……」
遥はついに泣き出していた。
目もとを潤ませ、鼻をぐずぐずとさせ、しゃくりあげている。
それを見たアゼリアは、心の中のマグマのような怒りがすっと冷えていくのを感じた。
妹ではないとはいえ、それによく似た姿を傷つける気にはもはやならなかった。
それにこの少女は本当に何も知らないのだろう。ただアゼリアがそう思いたいだけなのかもしれないが、少女の怯えた様子は演技には見えなかった。
よくよく見てみれば、少女の瞳はダークブラウンの色彩だ。ヴィオレッタのアメジストのような紫色とは違う。だからヴィオレッタの姿をコピーした、というわけでもないのだろう。
気がついたらアゼリアの手は遥の首から離れ、ハンカチを差し出していた。
「悪かった」
泣きやむ様子のない遥の様子を見ていると、どうにも罪悪感が湧いてくる。
嗚咽の音が部屋を満たす居づらい空気の中、少女が泣きやむのを待つのはある意味拷問のようなものだった。
それから十分ほどたって、ようやく少女は泣きやんだ。
まだ鼻をぐずぐずさせているし、目元は真赤にはれ上がっているが、ひとまず会話ができる程度には落ち着いたようだ。
「悪かった。おまえが私を殺しにきた殺し屋だと思ってな。つい対応を誤った」
「う、う~……」
アゼリアに敵意がもうないことが判っても、遥は猫のように警戒したままだった。まぁそれも無理はないかと思い、アゼリアは話を進めることにする。
「ところでいくつか質問したい。ああ、もう危害を加える気はないから大丈夫だ。まず最初に、どうやってこの家に入った?」
「し、知らないわよぉ。家で寝ていたはずなのに、気がついたらここにいたのよ。ここどこ?」
「ああ、ここはヨークシンシティのリパ駅の近くだ。しかし、どうやって来たかは判らないのか?」
「だから、わからないってばぁ」
ここまでで得た情報から、アゼリアは思考を展開する。
彼女は家で寝ていて、気がついたらここにいるという。先ほどの様子から、嘘をついているとは思えない。そしてドアのカギには何も細工された様子はなかった。この少女は見る限りごく普通の、中流階級の少女のようだから、ピッキングなどの技術を持っているとも考えにくい。ロフトはボロイ安物件だが、鍵だけは立派なものをつけている。
だとすると、考えられる理由は一つ。
「念というものを知っているか?」
「ね、念?それってハンター×ハンターの?」
遥のいうことはよくわからなかった。
確かにハンターは念能力を使えるだろう。そしてハンターには様々な種類がある。幻獣ハンター、美食ハンター、賞金首ハンターなどなどだ。それらはあくまで呼称にすぎず、明確な区分けがされているわけではないのでそこまでしっかりとした分類ではない。しかしハンターハンターなどというものは聞いたことがない。
「これが見えるか?」
「な、なにも見えないわよぉ」
指先に念で描いた文字は、「正直に答えなければ殺す」というもの。やはり嘘をついているとも思えなかった。ならば彼女は念の使い手ではないのだろうか。
「君の近くの人で、何か魔法のような不思議な力を持っているひとはいなかったか?」
「へ、へんな力を持ってるのなんて、あんたが始めてよ!」
……ほぼ決まりだろう。
彼女は念のことなど何も知らない。念で描いた文字も見えなかったということは、無意識に能力を発現させたというタイプでもないのだろう。そうなると、彼女は見知らぬ念能力者の攻撃、または流れ弾に当たるような形でここに送られてきたまったくの一般人、つまりは被害者ということになる。
「……ほんとうにすまない。どうやら完全にこちらの早とちりだったようだ。お詫びと言ってはなんだが、君を無事に家に帰すと誓おう。何かわからないことがあったら、なんでも聞いてくれ」
「じゃあ、ちょっと聞きたいんだけど……ここ、どこ? もう一回言って」
「ああ、ここはヨークシンシティだ。中央からは少し外れたところだが、リパ駅からは歩いて五分というところだな」
「ヨークシン……? それって、あの、ドリームオークションとかやってるところ?」
「ああ、世界最大のオークションだ。そういえば、君の家はどこにあるんだ?」
「日本よ」
日本……? 聞いたことがない国だった。
昔どこかで、ジパングのことをそう呼ぶ人もいると聞いたことがあるが……それだろうか。
「ね、ねぇ、ところであんた、ハンターなの?」
「いや、私はハンターではないよ」
「ハンターっていう人たちはいるのね?」
「よくわからないが……ハンターという職業があるか、という質問なら、答えはイエスだ」
「……ちょっと、なんか読むものある? 新聞とかでいいわ」
少女から矢継ぎ早に繰り出される質問は、なんというか関連性が判らない。
しかし、アゼリアとしては先ほどの行動に負い目があるのも確かなので、何も言わずに今日の新聞を渡してやった。
少女は、それこそ一心不乱に新聞を眺めている。かと思うと、急に肩を震わせて笑いだした。
「ふ、うふ、うふふふふふふふふ……や、やったぁーーーー!!!」
やばい、おかしくなったか、とアゼリアが心配したのも無理はない。先ほどまで泣きわめいて、警戒心丸出しだった少女は、そんなこと遠い昔の出来事であるかのように飛び回って喜んでいる。
「やったー! うふふふ、やったわ!! こんなことが本当に起こるなんて! 神様ありがとう! でもなんで、旅団のアジトとか、ゾルディック家の庭とかに下ろしてくれなかったの!? ああ、でもいいわ。待っててね、クロロ! ヒソカ! イルミ! クラピカ! ああ、キルア君やゴン君もすぐに会いに行くわ!」
さいっこうにハイ!ってやつだー!!
そんな単語が思わずアゼリアの脳内に浮かぶくらい、少女の様子の変化とその喜びかたは異常だった。
……というかちょっと気持ち悪かった。
思わず鼻歌を歌いだしそうなくらい、テンションが天井知らずに上がっていく少女に声をかけるのは割とためらわれた。
「あ、あの……?」
「なーに? ああ、さっきのことならもう怒ってないわ! 私いまとっても気分がいいの! ああ、あなたアゼリアだっけ? しばらくの間お世話になっていい?」
「あ、ああ。それは構わない。君が無事に家に帰れるまでの間、生活と身の安全は私が保証しよう」
「ちーがーうーのー!! 私は、別に家になんか帰れなくてもいいわ! それどころかこのことに感謝したいくらいよ!」
「なっ!? 何を言っているんだ? 君には帰りを待つ家族もいるだろう!」
「そんなのどうでもいいのよ!! まず大事なのは、私を待っているクロロたちに会うことなの!」
「誰だクロロって!! というかどうでもいいわけあるか! って、人の話を聞けー!!」
「クロロタンは私の嫁よー!」
結局、その日はネジがまとめてぶっ飛んだ少女と話をすることは出来ず、寝て覚めて少女と話をしたのが翌日のこと。
異世界から来たとか、この世界はハンター×ハンターというとか、ヒソカの怪しげな魅力が素敵とか、幻影旅団に会いたいとか、イルミ萌え~とか、そんな滅茶苦茶なことを話し続ける少女を見て、アゼリアが思ったことは二つ。
あの時穏便に対処していれば、ということ。
この少女は病院に入れた方がいいんじゃないか、ということだった。
ああ、でももう面倒見るって言っちゃったしなぁ……
アゼリアは頭を抱えて、重い溜息を吐くしかなかった。
〈あとがき〉
初めまして、ELと申します。
富樫大先生そろそろ連載再開してくれないかなー、と考えながらこの作品を書いてみました。SSとかを書くのは初めてなので至らないところばかりだと思いますが、少しずつでもうまくなっていければと思います。
読んでくださった方は本当にありがとうございます。よろしければこれからも拙作にお付き合いください。
H×Hって、いわゆる夢小説といった作品が大部分ですよね。
夢小説を悪く言うつもりは全くありませんし、夢小説を読むことも私自身あるのですが、この作品はいわゆる夢小説的な展開に対するカウンターパンチャー的なストーリーになっていくと思います。ですので、もしかすると不快に思われる方がいるかもしれません。
割と常識人な殺し屋と腐女子なトリッパーの物語を楽しんでいただければ光栄です。
凄まじく遅筆な作者ですが、完結目指して頑張っていきたいと思います。
ではまた、次の更新の時にでも。