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No.27902の一覧
[0] 戦場に咲く白い花(H×H 女オリ主)[yuki](2011/05/21 07:14)
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[27902] 戦場に咲く白い花(H×H 女オリ主)
Name: yuki◆decc4be2 ID:cb1e6925
Date: 2011/05/21 07:14
 昔の記憶がよみがえる。
 流星街(りゅうせいがい)―――物心がついた時から、そこで暮らしていた。
 ここには、何を捨てても許される。ゴミも、死体も、赤ん坊も…この世の全てを捨てても誰も咎めない。
「何してるのユリ、行こう」
 振り返る。淡いピンク色の髪をした少女が顔を覗き込んでいた。
 ああ、そうだ、この人は―――。
「どこに行くの?」
 うまく頭が回らない。自分が自分じゃないようだ。
「皆のところ。もしかして行きたくない?」
 心配そうに首をかしげる少女。
 私のことを気遣ってくれているようだ。
「…ううん、行きたい!」
「そう」
 短い返事とは裏腹に、少女はにっこりと微笑んだ。
 その笑みを見ていると、何故だかはわからないが心が温かくなる。
「ほら、立って」
 どうやら、自分は地べたに座り込んでいたらしい。差し出された手を掴み立ち上がる。
 この世界には、自分の居場所なんてないのだと思っていた。しかし、それは間違いだった。少なくともこの時、この場所には、自分のことを思ってくれる人がいる。
「ど、どうしたの!どこか痛いの!?」
「…何でもない…何でもないよ」
 私は知らぬ間に涙を流していた。誰かに必要とされている。それが、ひどく嬉しくて誇らしかったのだ―――。  
 


+ + + + +



 天空闘技場。
 パドキア共和国より東部へと位置する。地上二百五十一階。高さ九百九十一メートルは世界でも第四位の高さを誇る建造物だ。
 その名が示す通り、ここは格闘のメッカ。野蛮人の聖地である。
 戦いは勝ち抜き方式。一階層から二百五十一階層まで、勝てば勝つほど上の階層へと進むことができる。さらに、百九十九階層まではファイトマネーを得ることができ、二百階層からはファイトマネーは貰えないが、その分名誉ある特典を得ることができる。
 弱肉強食の世界―――天空闘技場は、まさにソレを体現していた。 
「また、この夢…」
 目が覚める。夢見心地は最悪だった。
 かなり寝汗をかいてしまったみたいだ。まだ夏は遠いというのに、ぐっしょりと纏わりつくシャツが気持ち悪い。
 私は呆っとする頭を横に振り、ベットから勢いよく起き上がる。
 2DKの部屋はお世辞にも広いとは言えず、洗面所まで数歩でたどり着く。別に、狭いと不満を感じたことはない。むしろ、一人暮らしの私にとってはこの位の大きさが丁度いい。
「ふう」
 顔を洗い流し、ぼさぼさの髪を丁寧に梳かしていく。腰まで伸ばした長い髪は日ごろの手入れを怠ると、直ぐにへそを曲げてしまう。
 適当なところで手入れをやめ、着替えに移る。着替えには、さほど時間をとらない。育ってきた環境のせいか、一般的な女性と比べるとかなり早いのだ。
 着替えも終えると、もう一度鏡を確認。身なりを整える。ここまで、起きてから二十分弱―――私は、足早に部屋を出てある場所へ向かう。
「やぁ♥」
 出鼻を挫かれるとは、まさにこの事だろう。
 部屋の扉をあけると、奇抜なピエロが立っていた。
 私は、一度扉を閉めて深呼吸する。気を取り直して扉をあける。残念なことに見間違いではなかった。
「ひどいなァ♣」
「…どうしたんですか?私これから行きたい所があるんですが?」
「食事だろう?ボクもこれから行こうと思っていてね♦」
 いや、確かにそうだけど。
 危険人物と一緒に食事というのは、極力避けたいのだが。
「二百階層クラスのヒソカさんが、何故百九十階層の…しかも、私の部屋の前にいるのかは聞かないでおきましょう。ですが、食事は一人でとる主義なのです。ごめんなさい」
 そう言い残して、その場を後にする。先手必勝、逃げるが勝ち。
「くくく…つれないなァ。でも、そこがまたいい♥」 
 かなりの速度で移動したはずなのだが、ちゃっかり着いてきている。これだから変態は嫌いだ。
「はぁ。わかりました……あまり問題起こさないでくださいね?」
「うん♣」
 大きな子供を預かった気分だ。しかも、子供は手のつけられない問題児。折角の朝食が台無しだ。
「どうした?そんな思いつめた顔をして」
 原因の何割かは、あなたにあるんですけどね?
「少し昔の夢を見ましてね」
「!…昔の記憶を思い出したのかい?」
 そういえば、ヒソカには話したことがあった。
 十年前―――七歳だった私が、全てを奪われて戦いの渦に巻き込まれたことを。
 家も、家族も、記憶も失い。ただ生きるためだけに、戦い続けた。あの日々。しかし、希望があったからこそここまで来れた。
 時折見るあの夢。懐かしくて悲しい夢。きっとあそこには、私の居場所があった。
「いえ、いまいち内容がハッキリしないです」
「丁度いい良い念能力者がいるんだ♦ユリになら格安で提供するよ?」
「…遠慮しときます」
 悪魔の囁き声にしか聞こえない。契約したら最後、私の貞操どころか命まで持って行かれそうだ。
 でも、『念能力者』か。その発想はなかった。
 『念能力者』とは、人間が体から発するエネルギー『念(オーラ)』を自在に操る者の総称だ。その力は、修行なしで身につけることが非常に困難で、かつてそれを成しえた者は『仙人』『超能力者』『超人』などと崇め称されたという。
「残念♥」
 全然残念そうにみえない。
 ポーカーフェイスではないが、ヒソカの表情から考えていることを読み取るのは不可能に等しい。一年近い付き合いだが、未だに彼からは底知れない何かを感じる。
「Aセットお願いします」
「ボクも同じで♣」
 食堂でオバサンに注文する。硬直したのも一瞬、直ぐに笑顔で「はいよ」と言った。
 流石はプロだと感心する。天空闘技場でもヒソカは一目置かれた存在だ。彼の残虐性と異常性を知っている者は数少なくない。
 私は人が少なそうな席を見つけ。腰をかける。ヒソカは当然のように私の正面に座った。ずうずうしい奴だ。
「そうだ、今日勝てば二百階クラスなんだって?」
 フォークを置き、質問するヒソカ。意外と礼儀正しい。
「はい。そろそろ休暇がほしいと思っていたところです」
 二百階クラスは原則として、九十日に一度戦わなければいけない。しかし、それは逆に九十日間の自由を意味する。
「ふーん。休暇はどこか行くのかな?」
「…秘密」
 本当は決まっていない。でも、ここで戦い漬けの日々を送るよりは有意義だろう。私は彼と違って戦闘狂ではないのである。
「何かあったらいつでも連絡してね♦」
 何があっても連絡しません。
「そうだ。ユリの次の対戦相手、凄くおいしそうだったよ♥」
「ほう。それはどんな人物か興味がありますね」
 ヒソカは変態だが、ずば抜けた観察眼をもっている。彼の言うことが正しければ、次の試合は苦労しそうだ。
「でも、大丈夫。彼はまだ念を覚えていない♠」
「そうなんですか。緊張して損しました」
「油断、大敵だよ?」
 そんなことは言われなくても分かっている。
 だが、『念』が有るのと無いのでは、絶対的なアドバンテージの差が生じる。それこそ、普通の人間と、金属でできた人間が殴りあうほどの差が。
「私はそろそろ受付をしてこようと思います。ヒソカさんはどうしますか?」
 食事も終わり。紅茶を飲んでいるヒソカに問いかける。様になっている所が少しむかつく。
「ん~~~。あの子とキミの戦いは見てみたいけど、これから用事があるんだ♦」
「わかりました」
 内心ではほっと一息。彼といると疲れる。
「では、私はこれで失礼します」
「またね♥」
 今日は絶対勝とう。二百階に上がって旅に出るのだ。変態がいない地へと―――。



+ + + + +



 受付を終えてリングへと上がる。
 異常な熱気。観客席はほぼ満員だった。純粋に戦いを見に来た者や、金を握りしめギャンブルを楽しむ者もいる。

―――ユリちゃ~ん!結婚してくれ~~!!

 一部、何をしに来たのか分からない奴らもいるようだ。とりあえず睨む。
 むしろ喜ばれた。変態の類だったか…。

「―――はっ。女が相手かよ」

 何そのチャラチャラしてんじゃねーよ。みたいな物言い。心外なんだけど?
「何か文句…―――子供?」
 ムカっとして振り返ったが、リングに上がってきたのが子供だとわかり気が抜ける。
 そういえば近頃、子供があり得ない動きをして勝ち続けているという話を、どこかで耳にしたような気がする。
「何か文句あるのかよ?」
 それは私のセリフ。でも、私は大人で相手は子供ここは自分が折れよう。
「いえ、ありません」
 相手のことを思いやり、気遣う。これこそ、大人の対応だ。
「ち」
 舌打ちされた。態度悪っ。
 しかし、その態度を裏付けする実力は持っているみたいだ。一見つっ立ているようにしか見えない姿。その実、いつでも動けるように足を半歩開き、重心をやや下に落としている。これだけの動作。相手に気取られずに行うのは至難の業だ。きっと、天空闘技場にも見切ることのできる人物は少ないはずだ。
 それに、あの目つき。必要とあれば躊躇いなく人を殺す目だ。何度も見てきた目だ。
「殺しは御法度ですよ?」
「知ってるよ。でも、あんたすごく強いだろ。それに、人この事言えるのかよ。オレには隠せないぜ?お前からは血の臭いがぷんぷんする」
 鋭い。ヒソカが興味を持つわけだ。
 そして、一つ訂正してほしい。私の体臭は臭くない。フローラルないい香りがするのである。
「その歳でそこまで見抜くとは…今後の成長が末恐ろしいですね」
 子供というのは呑みこみが早い。それは、実体験したからこそ確信できる。
 彼が辿っていく軌跡に、私が関係しないことを祈るばかりだ。
「自己紹介がまだでしたね。私は、ユリ=タカネ。よろしくお願いします」
 これは、私なりの流儀。人と人との関係は自己紹介から始まる。
「…キルア―――キルア=ゾルディック」 
 訂正。態度は悪いが礼儀はあるようだ。
 しかし、ゾルディック、ね。確か暗殺の一族―――あれ、もしかしてこれ勝っちゃうと報復コース?追ってくるのは変態だけで十分足りてるんですけど。
 内心の動揺を悟られないように訊いてみる。
「ところで、お父さんは何してる人ですか?」

「うん?殺し屋だけど」

 無情にも試合のゴングが鳴り響く。もう、私には逃げ道はないらしい。 


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