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No.20016の一覧
[0] 答え3. 現実は非情である。[完結][Ethmeld](2010/08/18 00:56)
[1] プロローグ 彼女の答え[Ethmeld](2011/08/15 11:09)
[2] 1話 ヴィヴィアン=ヴァートリーという少女[Ethmeld](2011/08/15 11:26)
[3] 2話 ある日、町の中、熊さんとであった。[Ethmeld](2011/08/15 11:45)
[4] 3話 ヒルダさんと念講義[Ethmeld](2011/08/15 12:11)
[5] 4話 戦う理由、私の決意[Ethmeld](2011/08/15 12:34)
[6] 5話 獣の心[Ethmeld](2010/08/25 02:05)
[7] 6話 出会いは突然に[Ethmeld](2010/07/13 00:21)
[8] 7話 粘着質な俺(スティッキング・ライフ)[Ethmeld](2010/07/13 00:23)
[9] 8話 S[Ethmeld](2010/07/13 00:25)
[10] 9話 アジト襲撃[Ethmeld](2010/07/13 00:28)
[11] 10話 本当の私[Ethmeld](2010/07/13 00:33)
[12] ”男” 0話 幸せな日に[Ethmeld](2010/07/04 14:59)
[13] ”男” 1話 前世という名の毒[Ethmeld](2010/07/13 00:42)
[14] ”男” 2話 ヴィヴィアン=ヴァートリーという少女[Ethmeld](2010/07/13 01:04)
[15] ”男” 3話 自由への道程[Ethmeld](2010/07/13 01:02)
[16] エピローグ 彼の答え[Ethmeld](2010/08/18 01:00)
[17] あとがき[Ethmeld](2010/07/08 20:01)
[18] 能力設定[Ethmeld](2010/07/10 19:56)
[19] Epilogue if  彼女の答え[Ethmeld](2010/08/18 01:00)
[20] if after 1 太陽の下へ[Ethmeld](2010/08/18 01:03)
[21] if after 2 高いところにある部屋で[Ethmeld](2010/08/18 01:03)
[22] if after 3 お帰りなさい[Ethmeld](2010/08/18 01:07)
[23] if after 4 片腕[Ethmeld](2010/08/18 01:08)
[24] if after 5 ”気を絶つ”技[Ethmeld](2010/08/18 01:08)
[25] if after Ep. prologue とある少女の決意[Ethmeld](2010/08/18 01:28)
[26] if after Ep. ”Walley” 1 探索の日々[Ethmeld](2010/08/18 01:28)
[27] if after Ep. ”Walley” 2 思わぬ客[Ethmeld](2010/08/18 01:28)
[28] if after Ep. interlude とある少女の昔話[Ethmeld](2010/08/18 01:28)
[29] if after Ep. ”Vivian” 1 彼女はどこへ?[Ethmeld](2010/08/18 01:28)
[30] if after Ep. ”Vivian” 2 尾行の結果[Ethmeld](2010/08/18 01:28)
[31] if after Ep. ”Vivian” 3 母と娘[Ethmeld](2010/08/18 01:29)
[32] if after Ep. ”Vivian” 4 父と娘[Ethmeld](2010/08/18 01:29)
[33] if after Ep. ”Vivian” 5 高き壁[Ethmeld](2010/08/18 01:29)
[34] if after Ep. epilogue とある少女の想い[Ethmeld](2010/08/18 01:29)
[35] if after Ending 祝砲が響くということ[Ethmeld](2010/08/18 01:31)
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[20016] 3話 ヒルダさんと念講義
Name: Ethmeld◆dc9bdb52 ID:ae2b5ac9 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/08/15 12:11
私は男の突進を間一髪避けることに成功する。
だけど、男はそれを予期していたのか直ぐに地面を削って停止し、体勢を崩している私に向かって来ようとしているのが見て取れた。
私の心に諦めが広がる。この状態では右腕で受け止めようとしても踏ん張りが利かず吹き飛ばされるだけ。
どちらにしろすでに詰んでいる状況なのだ。

しかし、男は私に向かって突進しようと構えていた場所から唐突に後ろに跳び退る。
次の瞬間、男が居た場所を何か細長いものが叩きつけられ地面が抉られた。

「へぇ、あれを避けるなんて突進するだけの猪じゃないようね」

そういいながら現れたのは後ろで紫色の長い髪を束ねた20台前半ほどの女性だった。

「何者だ。なぜ邪魔をする」
「あら、かわいい女の子を助けるのに理由なんて要らないでしょ。
 かわいい女の子とそれを襲う大男なんてどちらが悪役か一目で分かるじゃない。
 私の散歩コースでそういうことしようなんて馬鹿じゃないの?」
「チッ、流石に2対1では分が悪いな、今日は引くが……。
 嬢ちゃん、うちのボスはしつこい。せいぜい気をつけるんだな」

男はそういい残すと公園から猛スピードで走り去っていった。
後に残ったのは私と多分助けてくれたであろう女性だけ。

「あらあら、逃げ足も速いのね……
 さて、お嬢さん、怪我は無いかしら?」
「あ、はい、大丈夫です」
「それは良かったわ。間に合わなかったら目覚めが悪いものね」
「あ、あの!助けてくれてありがとうございます!」
「別に礼なんていいわよ。さっきも言ったように散歩の途中で見かけたから割って入っただけだしね。
 それで、一体彼はなんだったの?」
「それが私にもさっぱり分からないんです。帰り道にいきなり話しかけられて、ついてこないと周りの人を殺すって……
 あと、天然物がどうたらこうたらとか……」
「それでのこのこついて来たわけね……
 流石に危機感が無さ過ぎするわね。貴方は念を教えてくれた人に何を教わっていたのよ」
「えっと、その念ってのを人に教わったことは無いんですけど……」
「は?いや、貴方は纏をしてるじゃない。それはどうしたのよ」
「これですか?これはなんかいつの間にかできていたと言うか、体から出ているのが勿体無かったから留めるようにしてみただけというか……」
「え?なに?もしかして、天然物ってそういう意味?うわー、わたしはじめて見たわ。
 ん、でも貴方さっき、練、凝、流とか使ってたわよね?」
「さっきの人にも言われたんですけどそのレン、ギョウ、リュウって何のことですか?」
「ちょ、ちょっとまって!まさかそれも自分で編み出したっていうの!?
 ありえないわ!貴方、そんなこと言って私を騙そうとしてるんでしょう!?」
「そんなこといわれても……ほんとに分からないのに……」

私は今日わけの分からないことが続いた挙句、助けてくれた人も信じてくれないことに涙が出てくる。
きっと、今日は一生の中で一番の厄日だ。

「ちょっと、泣かないでよ!私が悪者みたいじゃない!」
「すみません……ちょっとわけの分からないことが続いて、取りあえず助かったと思ったらなんだか涙が……」
「ああ、もう!ほらこれで涙を拭いて!」

そういって女性は私にハンカチを渡してくれる。
そのやさしさに緩くなった涙腺は水分を放出する量が増すだけだった。
しかし、それも次の一言で吹き飛んだ。

「そういえば、もういい時間だけど家の人が心配してるんじゃないの?」
「そうだ!両親が心配してる!」

私はあわてて携帯電話を取り出すと、そこには家からの着信がたくさん並んでいた。
それもそうだ、私が駅前から移動したあと直ぐに迎えの車が来たはずでそこには私が居なく粉砕されたベンチがあるだけなのだから。
周りの人に聞けば私が大男に連れて行かれたことも直ぐ分かるだろうし……
うちのような過保護気味な家庭でなくても心配で気が気でなくなる状況じゃないだろうか。

私がかけた電話はワンコールもしないうちに取られた。

「はい、ヴァートリーですが。どちら様でしょうか?」

電話に出たお手伝いさんのマリアさんも心なしか元気がない気がする。

「あ、私ヴィヴィアンだけど……」

そう伝えた途端、電話の向こうでマリアさんの叫び声が聞こえる。

「奥様!奥様!お嬢様から電話がかかってきました!!」
「本当なの!マリア、直ぐ代わって頂戴!」

私が一言も言うまもなく激しい物音と共に荒い息をつくお母さんが電話口に出た。

「ヴィヴィ貴方無事なの!?怪我はしてない!?一体今どこにいるの!?」
「お母さん私は大丈夫だよ、怪我もしてない、場所はちょっとわかんないけど直ぐ家に帰るよ」
「ああ、良かった!本当に心配したのよ。運転手のセバスが集めた話だと男につれてかれたなんて話も有って……」
「ああ、それは間違ってないんだけど……」

私がポロリとそう口にすると、収まりかけた母の炎は再び燃え上がる。

「ちょっと!それはどういうことなの!?本当に無事なんでしょうね!?」
「うん、通りがかった人に助けてもらったの」
「ああ、何てことでしょう。その方は今もそちらに居らっしゃるのかしら?」
「え、うん、隣に居るよ」
「なら、その方に代わってくれないかしら、ぜひともお礼を言いたいの」
「私は構わないけど……ちょっとまってね」

私は電話を放すと女性に視線を向けた。

「ん、どうしたの?ずいぶん騒がしい電話のようだったけど」
「お母さんがお礼を言いたいから代わってくれないかって」
「ああ、なるほど。別に構わないわよ」

女性の了承を得たのでお母さんに代わることを告げて、女性に電話を渡す。
しばらく、女性がお母さんと話しているのを見つめる。
内容自体は聞こえないが、大体想像はつく。お母さんがお礼を言うのに対して、女性は気にするなとかそんな会話に違いない。

しばらくの後電話を返してもらいお母さんと会話を再開すると、どうやら女性を家に招くということになっているらしい。
私としてもうれしいことだ、ぜひとも念とやらのことで聞きたいことがたくさんあるのだから。
さっきの熊男と違ってこの女性ならちゃんと教えてくれそうだ。

そうだ!動転していたため今まで大事なことを忘れていた!

「あの、私ヴィヴィアン・ヴァートリーというのですけど、よろしければ貴女のお名前を教えていただけませんか?」
「念能力者を相手に簡単に名前を教えるのは問題があるのだけど……
 まぁ、貴女ならその心配も無いか。
 私の名前はヒルダ=ライリーよ。ヒルダとでも呼んで頂戴。私もあなたのことヴィヴィって呼ぶけどいいわよね?」
「ええ、構いませんよヒルダさん。あの、あと一つお願いがあるのですけど……」
「ん、改まってなに?」
「私に念のこと教えてくれませんか?
 私それなりに強いつもりでいたのですけど今日のことでぜんぜんだって思い知らされました。
 今私に足らないのは知識だと思うんです。教えてもらえないでしょうか?」
「ああ、貴方ほんとうに天然なのね……
 まぁ、私も人に教えられるほど修めているわけじゃないけど、基本的なことぐらいなら教えてあげられるわ。
 それでもいいならね」
「ありがとうございます!最近、あんまり新しいことを思いつかなくてちょっとつまらなかったんです。
 これでまた面白くなります!」
「念の修行が面白いなんてなかなか変わってるわね……
 まぁ、それぐらいじゃなきゃ、独学であそこまで出来るようにならないか。
 私もちょっと見習わないといけないわね……」

そうしてしばらくヒルダさんと話をしているうちに迎えの車が来た。
どうやらヒルダさんがこの場所を伝えてくれていたようだ。
私は車に揺られ長い放課後に漸く別れを告げることが出来たのだった。


家に帰った私はお母さんと仕事から飛んできたお父さんにもみくちゃにされた。
いつもより3時間ほど遅れただけでこの有様はやはり少々大げさではないかと思うのだけど…
ヒルダさんはそんな私たちをほほえましそうに見ているようだった。

その後、両親はヒルダさんに盛大に感謝の言葉を並べた後、ぜひともということで夕食を一緒に食べることになった。
大男の相手をしてとてもおなかが減っていた私は、父とヒルダさんの会話を横で聞きながら夕食に集中する。

「なるほど、ライリー殿はハンターでいらっしゃるのか」
「ええ、まだ若輩の身ですけど、先人の名に負けないようにがんばっておりますわ」
「それはすばらしい心構えでありますな。この街にはお仕事で?」
「いえ、その帰り道にたまたま寄っただけですわ」
「なるほど、それなら今はフリーの状態というわけですな。それでしたら一つお仕事を頼みたいことがあるのですが……」
「ふふ、みなまで言わなくても分かりますわ。お宅のお嬢様は少々見ていてはらはらさせられますものね」
「ええ、まったくもってこいつは昔から危機感が足らないというか好奇心旺盛というか……
 貴女のような人に近くに居てもらえればそういったことも改善してくれるのではないかと思いまして」
「私としても願ったりですわ。お嬢さんはなかなか豊富な才能を持っているようで。
 私も彼女に少々教えたいことがあるのですよ」
「それはすばらしい。護衛としてお願いしようかと思っていたのですが、ぜひとも娘にあるというものを伸ばしてやってください。
 その分お礼にも色をつけさせていただきましょう。ほら、ヴィヴィも改めて挨拶しなさい」

なんだか、話が急展開過ぎてついていけなかったが取りあえず私がわかったのはヒルダさんが私に念を教えてくれるということ。

「ヒルダさん、よろしくお願いしますね!」

このときの私は会心の笑みを浮かべていただろうと思う。




□□□□□□□□□□


ヒルダさんが護衛兼家庭教師となって翌日の夜、本来なら道場に行く日なのだけど私はヒルダさんの話を聞くことにしてお休みした。
これから、"力"、いや正しくは念だったっけ……、新しい念の使い方を教えてもらえるのだ!

「それじゃ、ヴィヴィ、貴女が今何が出来るかやって見せて頂戴」
「わかりました!」

私は今日一日浮かれっぱなしだった。
ルルに"今日のヴィヴィの浮かれっぷりは花じゃなくて花畑って感じだね"とよく分からないことも言われたほどだ。
それも仕方ないだろう、念願だった念という力についてようやく詳しく知っている人に出会えたのだから!

私はいつも念で遊んでいることをヒルダさんの前でやってみる。
初めは、浮かれている私をほほえましそうに見ていたのだけど何だか途中から表情が硬くなってきたみたい……
なんだろう?なにか、変なことをやってしまったのだろうか?

「相変わらず、貴女が独学だというのは信じられないわね……
でも、この家に貴女以外の念使いは居ないようだし。やっぱり本当なのかしら……」
「あの、私何か変なことしましたか?」
「いえ、特に問題ないわよ。あえて言うなら変なことしてないのが変というか……」
「はぁ、よくわらから無いですが……」
「まぁ、いいわ。この件に関しては考えてもしょうがないし、次に行きましょう。
 さて、特に貴女は意識せずにやってるみたいだけど、念の操作技術にはそれぞれ名前がついてるわ。
 別に今貴女が使えているように名前なんて適当でもいいのだけど、これが案外馬鹿に出来なかったりするの。
 念というのは使う人の心持によって大きく性能を変えるのよ。
 だから、この動作はこういうものなんだと定義して名前という形をつけてやると習得率が上がるのよね。
 漠然と"こんな感じ"というよりも名前があったほうがしっかりとしたイメージがしやすいでしょう?」
「ふむふむ、なるほど……。ヒーローが必殺技の前に名前を叫ぶような感じですね!」
「……いや、間違ってないけどそういわれるとなんか力が抜けるわね……
 ともかく、貴女は大半の基本技は出来ているようね。
 もっとも基本となるのが纏、練、絶、発の四体行。発は取りあえずおいておいて他は出来るようね。
 それに加えてオーラを一部分に集める凝、そのオーラを動かす流が貴女が今出来ることかしら。
 貴女の流は見事だわ。一般的なハンターよりもうまいって私が太鼓判を押してあげる。
 そうね、後は……、この指の上に何か見える?」

ヒルダさんにそういわれ、指のところを"視"てみる。

「数字の0が見えます!凄い!"力"でそんな形も作れるんですね!」
「……見るほうの凝は完璧と、あと"力"じゃなくて念よ。
 反射的に凝で見るなんてベテランでも怪しいのに、なんで普通の生活してた貴方が出来るのよ……」
「これですか?昔から目は良かったんですけど"力"…じゃなくて念を使ってみるともっとよく見えるようになるのに気づいて……
 よく見ようとすると勝手にやっちゃうようになっちゃったんです」
「責めてるわけじゃないのよ。それはとてもすばらしいことだわ。
 ただそれが本当に感覚的に出来る人がどれだけいるかとなるとね……
 さて、取りあえず総評だけど、纏は完璧、練は力不足、絶はお粗末、凝は人並み、流は見事、見るほうの凝も完璧ね。
 さて、ここまでで質問は?」
「えっと、溜めておくのが纏で、一気に出すのが練、出さなくするのが絶、偏らせるのが凝、動かすのが流で、よく見るのが……なんでしたっけ?」
「それも凝よ。様は目にオーラを集めるって意味では同じでしょ?」
「ふむふむ、なるほど」
「大丈夫みたいね。取りあえず、ほかにある応用技を全部紹介しておきましょうか」
「お待ちしてました!」

とうとう話がほかの使い方に来た。名前の話も面白かったけど私が待ち望んでいたのはこれだ。

「もう、ちょっと、落ち着きなさいよ……
 まず、物の周りにオーラを纏わせたり、物自体にオーラをこめたりするのが周。
 練の状態をずっと維持して全体的な攻防力を上げるのが堅。
 凝の発展版で全身のオーラをすべて一箇所に集めるのが硬。
 体の周りにあるオーラを広げてその中にあるものを正確に把握するのが円。
 オーラを見えにくくするための隠。
 とりあえずはこんなところかしら?」
「あの…、硬ってこんな感じですか?」

私は拳に"力"じゃなくてオーラを集めてみる。

「……貴女は本当に……、なんだか頭が痛くなってきたわ……
 でも、あえて言うなら硬とまでは行かないわね。貴女の絶はお粗末だからそこかしこでオーラが漏れているわ。
 それを完全に止めて、本当に一点に集めるのが硬というわけ」

ヒルダさんの説明に思わず納得してしまう。
説明と共にヒルダさんの実演を交えていたのだけどどれも凄くきれいだった。
特に絶なんて本当に気配がまったく無くなってしまったのだ!
それに比べれば私は雨漏りのする天井のようなものね……

「さて、最後になった発の説明ね。
 これが念の一番面白くて奥が深い部分よ。もちろんそれ以外をないがしろにしていいわけじゃないから勘違いしないで。
 この発というのにはいろんな意味があるのだけど……
 そうね、取りあえず水見式でもやってみましょうか。
 そこのコップと水差しを取ってくれる?」

私にそう頼むとヒルダさんは部屋の角に置いてある観葉植物の葉を一枚ちぎって戻ってきた。
そして、コップになみなみと水を注ぐとその上に葉を浮かべる。

「それじゃ、このコップを手で包み込むようにして練をしてみなさい」

私はヒルダさんの言うとおりに手を置き、練をしてオーラを噴出す。
するとどうだろう、コップの水が淵からこぼれてきたではないか!

「うわ、なにこれ!凄い!」
「ああ、やっぱり貴女は強化系だったわね……」
「強化系?ですか?」
「そう、念能力には大別して6つの系統があるのよ。それが強化系、変化系、具現化系、放出系、操作系、特質系ね」

ヒルダさんは脇にあったペンで紙に六角形を書きながら説明してくれる。

「大体、自分の系統から近いほど得意で離れるほど苦手になるわ。」
「じゃあ、私は特質系がだめだめってことですか?」
「あー、特質系は特殊でね。使える人は使えるけど使えない人はまったく使えないという感じ。
 具現化系や操作系が特質系の能力を使えるってわけじゃないのよ。
 私は他の5つで五角形にしてその真ん中にでも特質を入れておけばいいと思うのだけど。
 一般的にはこの六角形で説明されるからね。一応これで説明するわ。
 水見式は自分がどの系統にいるかを判別するのに使う方法よ。あなたの場合は水の量が増えたから強化系。
 ちなみに私は変化系。水見式では水の味が変わるわね。」
「そのほかの系統はどうなんです?」
「ま、その話は追々ね。今は次へ行くわ。
 強化系は自分のオーラをいろいろなものに込めたり纏わせたりしてその物の威力や強度を上げることが出来る系統よ。
 オーラを拳に集めて殴ってればそれが立派に必殺技になる系統ね。単純な貴女には分かり易いでしょ?
 あと、強化系の貴女は自分の強化系の能力のほかに放出系と変化系に相性がいいわ。
 変化系で一番分かりやすい例はさっき私がやったみたいにオーラで特定の形を作ることかしらね」

そういって、ヒルダさんは指をピッと立てる。私は何気なくそれを"視"て驚く。

「え、それ私の似顔絵ですか!凄い!」
「驚くのはこっちよ、なにその反応の速さ……、自信なくしちゃうわ……
 まぁ、貴女もこれぐらい出来るはずだから練習しなさい。取りあえず初めは0~9までの数字を作ることね。
 その後が文字。これが出来るようになるとハンター同士で簡単に筆談が出来るようになるから地味に便利よ。
 私の似顔絵は……まぁ、宴会芸の類ね。
 次は放出系だけど、これはオーラを自分の体から放すことが出来るわ。
 他の系統でも出来ないことは無いのだけど、往々にして体から離れてしまうと念の強度が格段に落ちるわね。
 強化と操作はそれほど劣化はひどくないのだけど、変化や具現化だと相当な熟練者じゃないとまともに使えないぐらいになっちゃうわね。
 まぁ、放出系は念の塊を飛ばして遠距離攻撃が得意な系統ってこと。
 ついでに全部説明しちゃうと、操作系はオーラを物に込めて動きなんかを操作するのが得意な系統。
 具現化系はオーラの変化をもう一段進めて実際に物質として生み出しちゃう系統ね。
 特質系はその名の通り特殊すぎて決まった形というものが無いからなんともいえないわ」

その説明を聞いて私は昨日合った男の人を思い出す。

「あ、なら、昨日の男の人の手と足が熊みたいになっちゃったのも具現化系なんですか?」
「おそらくそうでしょうね。具現化系の怖いところは生み出したものに特殊な効果をつけることが出来ることよ。
 そういえば貴女、昨日殴られたところはなんとも無いの?」

そういってヒルダさんは私の左腕を見る。

「えっと特に違和感は無いですよ?」
「そう、それならいいのだけど……
 さて、取りあえずこれで大方の説明は終わりよ。何か質問はあるかしら?」
「たぶん、大丈夫だと思います、……たぶん」
「……まぁ、分からなくなったら聞きなさい。
 とりあえず、貴女を今後、鍛えるわけだけど、さし当たってやらないといけないのが練の改善かしらね。
 ちょっと、練をやってみなさい」

ヒルダさんに言われるままに"力"を一気に噴出させる。

「やっぱり、そんなやり方でそれだけの出力が出ているのが凄いというべきなのかしら……?
 練というのはね、ただ一気に出せばいいわけではないのよ。ちょっと言葉にするのは難しいのだけど体の中でタメを作るというか……
 んー、一度からだの中で圧力をあげてから蓋をあけるとかそんな感じね。そのほうが出てくる勢いが強くなるのは分かるでしょ?」
「ふむふむ、なるほどー。んと、こうかな?えい!
 ……うーん、なんか違うなぁ」
「一夕一朝で出来るようになったら他の念使いの立場が無いわよ……
 タダでさえ貴女は変な癖がついちゃってる状態なんだし。
 さらに言うなら、その練で噴出したオーラをちゃんと体の周りに留め続けるのが堅よ。
 貴女の練は無駄に散っていくオーラが多くて堅をしているとはとてもいえないわ。
 堅は念使い同士の戦いではもっとも基本になる技術だから死ぬ気で覚えなさい。
 それが出来るようになったら私と念を使った組み手ね。
 貴女の流は見事だけど、体の動作とあってなくては意味が無いわ。
 道場に通って武術を習っているようだけど、その動きと流が噛み合ってなければ意味が無いわよ。
 それをかみ合わせるのも貴女の大きな課題ね。
 あと、道場にはちゃんと通いなさい。あなた、今日サボったらしいじゃない。
 基本的な体の動かし方を覚えるのは大切なことよ。」
「あ、はい、分かりました。」

道場をお休みしたのがばれてしまっていた……
だって話を聞くのがたのしみだったんだもの……
でも、いっぱい話を聞いてとてもためになった。
これからやることも明確になったし、なんとなく遊んでたころとは格段に上手になれるだろう。

「ヴィヴィアン、私が教えるからには、出来る限りやるから覚悟してなさいよ」
「はい!よろしくお願いしますヒルダ先生!」


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