私はいま、飛行場へ来ている。なぜかといえば、ヒルダさんを乗せた船がもう直ぐ戻ってくるからだ。それと一緒にあの日そのままハンター協会に連れて行かれたあの人もいっしょに戻ってくるらしい。まぁ、今回ヒルダさんが出向いたのが彼を迎えに行くためだったから当たり前ではあるのだけど。もう、あの戦いから一ヶ月が経っている。今思えばなんだが自分のことではないみたいに感じてしまう。いろいろ辛いことや悲しいこともあった。でも、私はあの戦いを通して強くなったしいろいろと成長したと思う。それは素直に喜べることだと思うことにした。あれから私は平穏な日常を過ごしている。そう、あの戦いがあったからこんな何気ない平穏が尊いものだってのに気が付けたのだと思う。学校でルルや他の友達と一緒に勉強したり、運動したり、お喋りしたり。そして、一緒に町を自由に歩けるってことがとっても幸せなことなんだって。結局、ヒルダさんに出会ってからの半年間のことは友達には話してない。ヒルダさんも念のことは簡単に人に教えちゃダメって言ってたしね。でも、なんだかルルはときどき私に意味ありげな視線を向けてくることがある。ルルには私に何かあったってのがバレているのかも…相変わらず、私のことを"花が咲いてる"っていってくるのは相変わらずだけどね。そうそう、私がまだ念のことを知らなくて不思議な"力"だと思っていたとき、私は誰にも相談しなかった。多分これも、あの人に何かされていたんだなって気づいてしまった。だって、私は不思議に思ったことはすぐに誰かに聞いちゃうからね。今考えて見れば、何であのことだけそれをしなかったんだろうって思っちゃったんだ。この半月でいくつかそんなことがあって、私はやっぱり操作されてたんだなって実感したんだ。でも、それに気づいたからって私があの人を恨む気持ちはやっぱり湧いてこなかった。もしかしたら私は変なのかもしれないし、もしかしたら恨む気持ちが湧かないのも操作されているからなのかも。でも、それでもいいやって思う自分が確かにいるんだ。私があの人と出会ってから2年半で私がまっすぐ育つことが出来たのに、あの人の存在は大きかったってことにも気づいたから。私が毎日楽しみにしている朝のジョギング。そう、あの人が毎週あそこで私を待っていたのに気が付いたの。だって、いつもどおりジョギングをしてベンチで休んでいたら気が付けば凄く時間が経っていたんだもの。その日、私はあわてて帰って心配した親に怒られたんだけどそんな日もあるかなって程度にしか思わなかった。でも2週目、3週目も同じ曜日にまったく同じことがあったら、流石に鈍い私でも何かあるんだなってぐらいは気づく。そして、そのことを疑問に思ったとたんに記憶が溢れてきたの。そこで彼は私に、念での訓練の方法を示したり、私がどれだけ出来るようになったかなんかを聞いていたわ。それだけなら、ただ私を道具としてしか見ていないんだなって怒ることだと思うでしょう?でも、彼は私に生活で悩みが無いかとか、困ってることがないかとかそんなことまで聞いていて、それに真摯に対応してくれていた。確かに思い返してみると、私はあの二年半の間で大きな悩みにぶつかったというような記憶が無い。いや、無いわけではないのだけど、あったとしても自然に解決策が思い浮かんだり、そうでなくてもそれで重く落ち込んだりはしなかった。いつも元気いっぱいに前を向いて歩いていけていたと思う。それはきっとあの人のおかげなんだ。今はとっても仲良しなルルも初めのうちはあんまり仲良くしてくれなかった。私は彼女を一目見たときにやさしい子だと思ったし、きっと仲良くなったら楽しいだろうって積極的に話掛けていたのだけど…。逢ったばかりの頃のルルは、話しかけた私をうっとうしそうに見るだけだった。でも、私は諦めずにずっと話しかけ続けて、半年ぐらいあとに「あんたには負けたわ」ってとうとう会話をしてくれるようになったの!その半年間はきっと私は不安になったとこが有ったはずなんだ。どうして彼女は私に答えてくれないんだろう?って。そんなときにそっと背中を押して応援してくれてたのもあの人だった。そんなことにいくつか気づくと私の中に有ったあの人を憎いと思っていた心も何処かにスーッと消えていってしまった。だから、私はあの人がこれから幸せになれればいいなと素直に思うのだ。私がそんな事を飛行場のロビーに座って考えていると、ヒルダさんとあの人が乗ったと思しき船が下りてくる。いろんなことを思い出したせいか、なんだか一月ぶりにあの人にあうことに緊張してしまいそうだった。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■船から地上に着陸して、ゴンドラから人が吐き出される。その中に私は目的の二人を見つけることができた。どうやら、向こうは私がここにいるのに気が付いていないようだ。まぁ、私はヒルダさんにここまでくることなんて伝えてない。ヒルダさんは私がここにいるなんて思ってもいないに違いない。2人は私に気づかずこちらに向かって歩いてくる。その姿は、なんだか言い争いをしているようにも見えるのだけど…2人の表情を見るにどうやらその戦いはヒルダさんが優位に立っているようだ。あの人はなんだか諦めが入ったようなそんな苦い顔をしながらヒルダさんに返事をしている。でも、その表情は一月前のあの地下室で見たようないやな色が薄れているように感じた。少なくとも私にはそう思える。私にはそれが何かは分からないけど、決していいものではないのだろう。それが薄れているのはいいことだとなんとなく私は感じる。きっと、これからあの人がヒルダさんに引きずり回されるのは間違いない。それはきっと大変なことだと確信できる。なんたって私の修行にも容赦が無かった。いまはだいぶ落ち着いてるけど初めのことなんてとっても大変だったのだ!でも、その大変さはきっとあの人にプラスに働くにちがいない。私は、薄く笑みを浮かべつつあの人に言葉を掛けるヒルダさんをみてそう思った。「お帰りなさい。ヒルダさん、ウォーリーさん」近づいてきた2人に私は声を掛ける。案の定、私に気づいていなかった2人は驚いたようにこちらを見る。「あら、ヴィヴィじゃない。貴方、何でこんなところにいるのよ。」「…お帰り、か…。 その言葉自体久しく聞いてなかったが…、まさか君に言われる日が来るとは思わなかったよ…」別に出かけていた人が帰ってきたのだから、おかえりというのは別におかしいことではないと思うのだけど…?ウォーリーさんの言葉に私は内心首をかしげる。「なんでって、2人のお出迎えですよ?」「あんた、私が出かけてたときにそんなことしたこと無いじゃないの。」「なに言ってるんですか。最初の頃は来てましたよ! ただ、ヒルダさんがここを利用するのはしょっちゅうでしたし、そのうちに来なくなっただけです! 今日はウォーリーさんがいらっしゃいますからね。久しぶりにここまで着ました!」なんだか、ヒルダさんが変なことを言っているのを訂正して、2人を車まで先導する。「でも、ウォーリーさんが戻ってくるのに結構時間がかかりましたね。」「…なに言ってるんだ君は。これでも相当速いほうだと思うんだが…。 ヒルダが裏で手を回したらしいから、これだけ速いんだぞ。」「そうなんですか? でも、なんでまたヒルダさんはそんな事を?」私は疑問に思ったことをヒルダさんに投げかける。そんなにウォーリーさんを早く引き取りたかったのだろうか。ひょっとして…、もしかして、それって…私の言葉を聞いたヒルダさんは額に手を当ててため息をつく。「…何を言ってるのよ…。あんたのためでしょうが。 こいつにはあんたにかかってる操作を解除させないといけないんだから。 それが早ければ早いに越したことは無いでしょうに。」「ああ、なるほど…、そうでしたか…。」なんだ、私の想像は見当違いだったみたいだ。うーむ、そう考えるとヒルダさんってそういう人いないのかな?綺麗だし、格好いいし、強いしでとっても凄いのに…私はじっとヒルダさんの顔を見てしまう。「なに、私がどうかした? というか、貴方のためだって言うのにそのがっかりした返事は一体なんなのよ。」「あ、いや、私のためにしてくれたってのは嬉しいんですけど…。」別方向でがっかりしたのは確かなので自然と答えが煮え切ら無いものになってしまった。ヒルダさんはそれも不満だったようだが、やがて気にしないことにしたのか追求してくることは無かった。一方の私は、頭の中でこの件をヒルダさんに直接聞いてみるか否かで会議中だ。"ヒルダさんってお付き合いしてる男の人とかいないんですか?"そう、口にするかどうかの議論は白熱し、結果はやめておくことに議決される。ちなみに理由は、"なんとなくしないほうがいい気がしたから"というものだったが…。うん、だって、私のカンはよく当たるのだから。そうこうしているうちに停めてあった車にたどり着く。ウォーリーさんが若干の躊躇を見せたもののヒルダさんに押し込まれ車のドアが閉められる。私も車に乗り込んで、我が家へと帰るのだった。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■我が家へ着くとそのままリビングへ。今日は、父も母もいないのだけど、ヒルダさんがいるからウォーリーさんを通しても問題ないと思う。ウォーリーさんは家に入るときも躊躇していたのだけど、ヒルダさんに何か言われると右頬を押さえてしたがっていた。そういえば、右頬が少し赤くなっていた部分が有ったけど、なにかにぶつけたのかな?私は2人にお茶を出してリビングにあるソファーに座る。すると、座ることもなくヒルダさんがウォーリーさんに声を掛けた。「お茶なんて後回しにして、さっさと解除して頂戴。」「少し落ち着つけ。出来るだけリラックスしていたほうがいいんだ。お茶ぐらい飲ませてやれ。」その言葉を聞き、ヒルダさんは憮然とした表情でソファーに座る。私は、お茶と一口のみ軽く息をつく。お手伝いさんが入れてくれるお茶はいつもおいしい。自分で入れてみることもあるのだけど、同じ葉っぱを使ってるはずなのになんでこんなに差が出るんだろう?そんな事をつらつらと考えつつお茶を飲むと自分でも気分が落ち着くのが分かる。そんな私を神経質そうに机を指で叩きつつ見ていたウォーリーさんが話しかける。「うん、そろそろいいだろう。 予め言っておくけど、ヒルダ、ヴィヴィアンの様子が変わってもおとなしくしておいてくれ。 途中で止めるのは一番良くないんだ。頼むぞ。」「…分かったわよ。でも、変なことしようとしたら容赦しないからわよ。」「そんなことしないさ…。」若干疲れたような声でヒルダさんに答えたウォーリーさんは私の前に一本の指を出す。「それじゃ、ヴィヴィアン。この指を見て。」私は、その声に不思議と逆らえず、目の前にある指を見る。その指はふらふらと揺れ、私の目もその指を追って動く。ウォーリーさんは何か私に話しかけて、その指が下に落ちる。その指を視線が追うのと共に、私は何処か深い場所へ沈んでいった……私はどこか深い場所をゆっくりと漂う……漂う私はとても落ち着いていて心地よい……出来ればずっとそこにいたいぐらいだったけど……何処かで私を呼ぶ声がする……その声に引っ張られ、私の体が浮いていく……その心地よい場所から離れなければならないのが少し寂しかった…「…さぁ、ヴィヴィアン。目が覚めたかい?」「…はい。」「よし、なら私が手を叩くとすっきりと目が覚めるよ。」私は、ウォーリーさんが手を叩いた音を聞いてすっと目が覚める。「気分はどうだい?」「?別になんとも無いですけど…?」「そうか、それは良かった。 ということですべて終わったから、ヒルダ、これをどうにかしてくれないか?」ウォーリーさんはヒルダさんに向かって話しかける。でも、そのヒルダさんはウォーリーさんの声を無視して私に話しかけてきた。私はその声にちょっと驚く。だって、ついさっきまで正面にいたと思ったのにその声は横から聞こえてきたのだから。「ヴィヴィ…。ほんとに大丈夫なの?」「なにがですか?というか、ヒルダさんさっきまで正面に座ってませんでしたっけ?」「何を言ってるの!あれからだいぶ時間がたってるわ!」「?ヒルダさんが何を言ってるのかよく分からないのですけど…」時間も何も、ヒルダさんが正面にいたのはついさっきだったと思うのだけど…「あー、ヒルダ。あんまり混乱させるようなことは言わないほうがいい。 あと、いい加減この鞭を外してくれないか。 まったく、おとなしくしておいてくれって言ったのに…。」そういうウォーリーさんを見ると、その首にはヒルダさんの第三の手(フィアー・タッチ)が巻かれていた。私には状況がまったく分からない。一体何があったのだろう?「うるさいわね。ヴィヴィに変なことしたら容赦しないとも言ったでしょうが。」「変なことなんてしてないさ。 なんにしろ、ヴィヴィアンにかかっていた操作は全部解除したよ。」「え、私に何かあったんですか? 別に何かかわったこともない気がしますけど…。」「…、しょうがないわね。ヴィヴィアンも大丈夫そうだし信用しましょう。 で、本当に変なことをしてないんでしょうね?」ヒルダさんがウォーリーさんに詰め寄る。たぶん、私のことを心配してくれてるってのは分かるんだけど…。正直、何がなんだか分からなくて私は置いてきぼりになった気分だ。「変なことってなんだ?」「それは…、ヴィヴィに聞かせられないようなことよ!」「ああ…、そういうことか。 もちろんしてないとも。というかヒルダもここにいただろうが。」「今はいいのよ。でも、今みたいなことを毎週のようにしてたんでしょう!?」「だからしていないというのに。というか出来ない。 そんな事をしようとしたものなら、ヴィヴィアンは即座に目が覚める。」「それは本当でしょうね…?」「嘘をついて如何する。 基本的にヴィヴィアンがいやだと思うことを無理やりさせることは出来ないんだよ。 ヴィヴィアンがやってもいいかなと思う程度のことぐらいしか無理だ。」「でも、何も知らないヴィヴィアンだと誤魔化されてやりそうじゃない!」「それは…。確かに、否定できないな…。 それを言われると信用してくれとしか言えないが…。」やっぱり何を話しているか分からない私はもはや蚊帳の外だ。しょうがないので無理やり会話に参加することにする。「えっと…、多分私のことを言ってると思うんですけど、何の話をしてるんですか?」そんな質問をする私をヒルダさんは慈愛の視線で見てくる。なんだか気持ち悪い。「…ヴィヴィアン、貴方にはまだ早いのよ。」「いや、早いことは無いだろうが。もう15歳になるのだろう? 流石に過保護すぎるぞ。むしろその手のことを知らないほうが危険だと思うが…」「うるさいわね…。さっき気持ち悪い口調で話してたくせに口を出さないで頂戴。」「な!あれは誘導のときに不安を抱かせないためにだな!」ヒルダさんとウォーリーさんはぎゃーぎゃーと言い合いをはじめる。やっぱり私は置いてきぼりだったけど、諦めた私は目の前に有った飲みかけのお茶を手に取った。そのお茶が冷えていることに気づいた私は新しいお茶を貰いに部屋から出る。多分戻ってきたときにはあの2人も落ち着いているだろうし。■■■■■■■■■■■■■■■■■■■私が部屋に戻ると、もう2人は落ち着いたようだった。ただ、どういう結論になったのか分からないけど、ウォーリーさんの顔に増えた傷は見なかったことにすることにする。なんだかつつくと蛇どころじゃないものが出てきそうな気がしたから。そんな2人は私が部屋に戻ったのに気づくとこちらに視線を向けてきた。「ああ、ヴィヴィ戻ったのね。 …ちょっと、あとで話があるわ。とても、大事なことだからしっかり聞きなさい。」なんだか、ヒルダさんが重々しく私に話しかける。ウォーリーさんはそんなヒルダさんの言葉をうなずきながら聞いていた。「はぁ…、別に構いませんけど…。今じゃダメなんですか?」「い、いまは、ちょっとね。その話はあとでね。 それよりも話さないといけないことがあるのよ。」「なんなんですか?」私は新しく持ってきたお茶を机に並べながら答える。私はそのままお茶に口をつけて、一口飲んだ。うん、おいしい。「それはね、貴方の発のことよ。」「発って念の必殺技の発ですか?」「そう、それよ。あなた、今それをもってないと思ってるでしょ?」「え?だって、私そんなの使ったこと無いですよ?」「いいえ、貴方は使ってるわ。それも日常的に…ね。 ちょっと、これを見て。」そういって指を一本上げる。私は反射的に"視"て、そこにデフォルメされた私の顔があった。おお、ヒルダさんの久しぶりの…、宴会芸…だっけ?とにかくそれをみる。「あ、その似顔絵久しぶりですね。相変わらず上手ですねぇ。」「それが貴方の能力よ。」「え?」これが私の能力っていうと…、似顔絵にされるのが?…ぜんぜん意味が分からない…。「ちょっと、意味が分からないんですけど…。」「貴方のその凝だけどね。それはすでに能力の域よ。 最近気づいたのだけど、貴方それで遠くが見えるようになるんでしょう?」「え、確かにそうですけど…、みんなそうなんじゃないんですか?」「違うわ。普通の凝って言うのは隠された念を見えるようになるだけよ。 遠くが見えたりとかなんてしないわ。 多分その能力によって、視界から得られる情報がだいぶ増えてるんでしょうね。」「…はぁ、そうなんですか。」なんだかいきなり言われたので頭がついていかない。つまりは、私の凝は普通とは違ってそれが能力ってことなのかな。うーん、必殺技ってもっとこう派手なものを想像していたからちょっと残念だ。「たぶん、貴方のカンが良く当たるのもその能力でしょうね。 カンって言うのは得られた情報から無意識下での答えを得るものよ。 貴方の場合は前提となる情報量が普通よりも多いのだから良く当たるようでも不思議じゃないわ。 …ところで、ウォル。なにあんたまで驚いてるのよ。 あんたは知っていたんでしょう?」「いや、知らなかった。 俺が知ってる情報はすべてヴィヴィアンからの伝聞だぞ。 本人が認識してないものなんて知りようが無いだろうが。」「…、それもそうね。まぁいいわ。 どう、ヴィヴィアン分かったかしら?」そう聞かれて整理するが、さっき考えた通りなんだろう。やっぱりちょっと残念。「…ええ、まぁ、分かりましたけど…」「なんだか不満げね…。 何よ、凄い能力じゃない。これほど汎用性の高いのもなかなか無いわよ。 しかも、無意識で作ったって事は自分との相性は最高クラスでしょうしね。」「まぁ、そうなんですけど…。 なんというか、必殺技ってもっとこう…、どかーん!って感じのものだと思ってたので…」「何よ贅沢ね。 まぁ、あんたならこれからそんな感じのを作るのことも出来ると思うわよ。一層訓練に励みなさい。」「はい!」うん、そうだ。別にもう持ってたって新しく作るのが無理なわけでは無いだろうし…。よし、訓練をがんばろう!そう思っているとウォーリーさんが立ち上がる。私は思わずそれを見上げた。「…、話は終わったようだな。ヒルダはここに泊まるのだろう? 私は町で宿でも探すからお暇させてもらうよ。決まったら連絡すればいいだろう?」「ん、そうね。それでいいわ。あんたが問題起こすと私の責任になるんだからくれぐれも注意してよ。」「心配するな。群衆にまぎれるのは得意だ。」私はその言葉を聞いて疑問に思う。「え、ウォーリーさんも泊まるんじゃないんですか? 客室なら余ってますよ?」それを聞いたウォーリーさんは額に手を当てため息をついた。「ほらヒルダ、やっぱり教えておかないとダメだろう?」「ええ、まったくね…。」2人はまたも私に分からないやり取りをする。「なんにしろだ、俺がここに泊まるのはいろいろと良くない。 ちょうど、義手も探さないといけないしな。少し1人になりたいんだ。」「それなら、分かりましたけど…。」私はウォーリーさんの言葉にしぶしぶうなずく。ウォーリーさんは一言挨拶をして部屋から出て行く。もうちょっとあの人と話をしたかったので少し残念だ。「さて、ヴィヴィアン。ちょっと貴方はお勉強の時間よ。」部屋に残っているのは私とヒルダさんの2人だけ。そう笑顔で話しかけてくるヒルダさんがなんだか私は怖かった。