さらりと間が空いて、正直スマンカッタ。
って言うか前編で止めてたとか、さすがにアレ過ぎる。反省。
あと、エロ自体もテンポが悪い。これも反省。
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纏め上げた髪を解くと。バッと広がって。
姐さんの顔の周りを、豊かな髪が埋めていく。
金の水流が白の岩に砕かれ広がるかのような。そんな幻想的な美しさだった。
オレがちと、目の前のそんな情景に見惚れていると。
姐さんが不審そうに問い質してきた。
「どうかしたのか?」
「いや。姐さんに見惚れてた」
「……あまり、からかうな」
照れくさそうに目を逸らす姐さんが素敵。
頭撫でてみた。振り払われたりはしなかった。
「こんなとこでするの、姐さん的にはアウトだろうけどね」
「当たり前だ」
「ま。訓練だから。その辺は大目に見てよ」
「……その話、本当なのだろうな」
胡乱気な姐さんに、オレは笑った。
「信頼してよ。オレが姐さんに嘘吐いた事なんて無いでしょ」
「嘘を吐かれた事は、な」
口元を歪めた姐さん。
それに、オレは笑いながら、頭を撫で続けただけだった。
うん。
と言う訳で、姐さんとヤる事になった訳よ。(つっても、仕事なんだけどね)
互いにアーマーは外して。常服に着替えてね。
練兵場の部屋ん中からは動かんで、話なんかしてた訳よ。
前戯に入るのかね、こういう会話って。
「それで、どうすれば良いんだ?」
犯ると決めても、姐さんはやっぱり戸惑い気味。
練兵場で犯るってのは、まああれだけどさ。
それ別にしても、姐さん、受身な訳で。それじゃ訓練の意味がない。
「姐さん姐さん、これ、訓練なんだからさ」
相変わらず頭を撫でつつ、オレは言った。
「戦闘で敵に、次どうしましょ、って訊く? そこは自分で考えんと」
「それはそうだがな――――」
「姐さん」
オレは姐さんを遮って、目を見据えた。
見返す視線にも、まだ戸惑いの色が移ろってる。
まあ、練兵場で、それも勤務中に犯るとかね。
いつもなら有り得ないんよ。姐さん的にも、当然オレ的にも。(蛇妖の嬢ちゃんの件は突っ込まんでよろしい)
それに、オレがここまで強引なのも珍しいしね。普段は模擬戦との交換条件だし。
その辺の認識は億尾にも出さず。
オレは説明を続けた。
「姐さんはさ、その辺、ムリムリで押しちゃう。大体はそれで押せちゃうしさ。
でもさ、だからあの淫魔さんには敵わなかった」
「……そうだな」
苦い顔を隠さない姐さんが可愛くて。
オレは姐さんを抱き寄せて、胸元に顔を掻き抱いた。
「だから、ま、訓練が必要なんよ。分かる?」
「それは……分かるが」
オレの胸に顔を埋めたまま、姐さんは呟いた。
されるがままだよね。
姐さん、エロい方向じゃすぐ受け手になるんだから。
でも今日は、それじゃ不味いんでね。
「ほら、姐さん。どうすりゃいいか、考えて考えて」
「ど、どう考えれば、良いんだ?」
「搾る時は相手の望む事を探る。殺し合いじゃ相手の嫌がる事を探る。
相手のね、心理や思考を読むってのはどっちも変わらんのよ。だから考えるんだ」
首を下ろして、耳元で囁く。
「オレが喜びそうな事。気持ちの良い事」
「気持ちの、良い事、か」
「そのためにはね、色々、前提条件を頭に入れる事」
オレは続ける。小声で、囁いて。
「オレは姐さんの事が好きなんだ」
「あ、ああ、わ、私も……」
「今はね、オレの言葉だけ聞いて。それで考えて」
「あ、ああ」
「姐さんが好きだから、姐さんに喜んで欲しい」
「あ、ああ」
オレは姐さんの頭を撫でる。撫でる。
「姐さん、渇いてたんだよね」
「そうだ」
「今も?」
「ああ。少し、だが」
「じゃあ、何か飲みたいよね?」
姐さんが、喉を鳴らした。
「姐さんが、飲んでくれるとね。オレも嬉しいんだよ」
「ん、あ、ああ」
「姐さんはオレを気持ち良くする。しなきゃなんない」
「……ああ」
「じゃあ、答えは?」
姐さんが顔を上げた。
重なるオレの言葉を、受け入れて。咀嚼したためだろう。
既に、その顔は欲情に濡れていた。
「お前のを、舐めて、飲ませてくれないか?」
「上出来」
オレは姐さんの頭を一撫でし、身を離した。
オレのズボンを脱がした姐さんは。
今にも食らい付きそうなくらい、俺の物に顔を寄せていて。
オレが手で、肩を止めてなかったら、とっくに始めてただろうね。
「駄目、なのか? 間違っていたのか?」
戸惑いが、失意に変わっている。
怖々と訊ねる姐さんは、常の姿からは程遠い。
「そうじゃない」
そんな、どこか濡れた目で見上げる姐さんは凶悪に可愛いが。
オレは冷静を装って、首を振った。
「姐さん、焦らしてみようよ」
「じ、焦らす、か?」
「そう。焦らすの大事だよ?」
囁き声を上から落とす。
「オレが堪らなくなるまで、焦らすんだ」
片手で頭を撫でる。撫でる。
艶やかな金の髪の中、姐さんは頭を震わせている。
「オレがね、姐さんが欲しくて堪らなくなるまで焦らす。焦らすんだ。ほら、手で触って、擦ってみて」
「あ、ああ。こうすれば、良かったのだな?」
「ん。そう。そんで、オレの反応見て、色々、探って」
顔を寄せたまま、怖々と両の手で俺の物を触り。
撫でるように表面を触り、撫で付ける。
本当に優しく。
今にも壊れそうな古物にでも触れるかのように。
確かに焦らしだけども。
これじゃ、刺激が少な過ぎるよね。
「姐さん、ほら、握ってみて」
「あ、ああ」
「それで、擦って。そう、もうちょっと力を入れて。そう、そんな感じで。もっと色々と探ってみて」
頷く姐さんに、俺は髪を撫で。
姐さんは強張らせた顔で、ゆっくりと擦る。
そのぎこちなさは、生娘かと見紛うばかり。
俺の物から目を外せない姐さんを見下ろし、少し意地悪げに笑った。
これじゃ、どっちが焦らしてんだか。
先に進めない、そのじれったさを感じてんのは、どっちが上なんだろうね。
姐さんの手も焦りがちで。雑。
ほとんど口淫ばっかりだったからね。手淫は珍しいんよ。
元が腕力も強靭性も人間と比べ物にならんから、力の加減に怯えがある。
だから、ま。雑なんよ。
もちろん、姐さんのしてくれる事は嬉しいし、素直に気持ち良いと思う。
それでも刺激がまだまだ不十分なのも確か。
頭を撫でながら、言った。
「姐さん、唾、手に付けてみて」
「あ、はあ、唾、か?」
「姐さんの唾でベタベタにしちゃおうよ。その方が、オレも気持ち良くなるしさ」
「ん、ああ、分かった」
一度手を外し、唾液を零して。
「手にすり込んで。もっとたくさん。こっちを見て。ほら、もっとたくさん零して」
息も荒く、涎を垂れ流しながら見上げる姐さんは、綺麗だ。
何故だろうね。こんなに下品で、淫らどころかだらしなくすらあるのに。
黒の目で見上げる姐さんは、本当に本当に綺麗で。
今すぐ抱き締めて、時間を忘れて犯りたくなるくらい、素敵で。
でも我慢我慢。
オレが正気を失ってちゃ世話ないわな。
オレは一度頭を振って、言葉を続けた。
「ほら。オレに見せるんだよ。手を。すり合わせるのを。見せ付けるんだ。そう。そうそう」
「ん、これで、良いのか?」
グチョリグチョリと。
手をこね合わせ、擦り合わせながら、姐さんは見上げる。
媚びるような、泣いてしまいそうな目。
そんな目が良い。
惹きつけられて。耳が姐さんの手の音にだけ集中させられてる。
やっぱり姐さんは良い女なんだよ。
こちらを魅せる技術なんてなくても、そのままオレを魅了しちまう。
元がこれだけ良いの持ってるのに、すぐ受身に回るんだから。勿体無い。
オレは内心で苦笑しながら、言った。
「その手で、オレのを握ってくれるんだよね?」
「あ、ああ、そう、そうだ……」
「じゃ、それを口で言って。こっちに知らせて。興奮させるんだ。分かる?」
「あ、ああ」
ごくりと、唾液と洩れ始めた腺液とを飲み込み。
重ねていた手を開いて、おずおずと、姐さんは言った。
「い、今から、お前の、その、物をだな」
「うんうん」
「こ、この、唾液まみれの、手で、ん、擦って」
「擦って?」
「き、気持ちよく、させて、やるから、な」
上出来上出来。
隠語なんか言わない生真面目な姐さんにしちゃ、上出来ですよ、マジで。
本当に、恐る恐る、といった風な具合の語り口。
これで構わないか、とでも問いたげな上目遣い。
オレは再び姐さんの頭を撫で、誉めた。
「そうそう。そうやってちゃんと口に出すのが大事なんだよ」
「い、今ので、良かった、のか?」
「今すぐにね、姐さん押し倒したいぐらい」
そしてオレは促した。
「じゃ、今までの忘れないで。続けてみて」
グジュルグジュると手にへばり付いた液が音を立てる。
手の滑りは、悪い。
舌から漏れ出た腺液が粘ついているからだ。
その抵抗に応える様に姐さんは両の手に力を込め、すっていく。
それは先程までとは全く違ったレベルの快楽だった。
グジュプ、ジュプジュプ、ブジュプ、グジュプジュジュプジュプグジュプジュプ────
腰が浮ついて、軽く振っている。無意識に。
ただ締りの良いだけの膣にぶち込んでいるよりも、今の姐さんの手の方が何倍も気持ち良い。
「あ、姐さん……」
「ん、は、ああ、あ、な、なん、だ?」
「ん、い、いまの、これ、ね、きもち、いい、から」
「あ、ああ、ああ……!」
今にも口付けそうな位置に顔を置き、姐さんは必死にこちらの反応を見ている。見上げている。
興奮に理性の線が切れ始めてる。
汗に塗れつつあるその顔は純粋に綺麗で、エロくて。
今までの余裕はどこに行ったか、オレも仕事を半分忘れて、快楽を貪っていた。
腰の振りが徐々に大きくなる。
時折、姐さんの上向いた顔の、上唇や頬に、先がぶつかる。
汗や唾液でぬめり、滑って、それはまた刺激となって、興奮を加速させる。
時折力の加減が変わり、緩んだ手の内を強く突いた。
腰を戻す時に、力が入り、未だにこびり付く液がひどく腰を重たくさせる。
それで、またオレの腰は、もう一押しの力を使って、自分から快楽の嵩を増していく。
じゅぷじゅぷ、じゅぷじゅぷと。
姐さんの手の動きと、オレの腰の振りとが一体となっていた。
オレは姐さんの手を犯し、姐さんは手でオレを受け入れている。
完全に余裕を失っていたオレは、気づかない内に姐さんの頭を掴んでいた。
もう限界なのだ。つっかえつっかえ、それを伝える。
「ん、あ、あね、さん」
「は、あぁっ、んん、なん、だ……?」
「おれ、も、んんっ、げんか――――っ!」
喉奥で言葉がつかえた。
代わりにオレは、呻きのような声を洩らしていた。
手の、狭い狭い間が、抜けて。
違った窄まりに、オレは物を突き込んでいた。
いや、突き込まされていたんだ。
その感触のいきなりの変化に耐え切れず、目の奥で火花が散った。
吸い付き、離れない。
ただでさえ悪かった滑りは、もうべとべとになって。動きすら難しい。
そう思わせるくらいに姐さんの口内で、オレの動きは鈍った。
だが、それは、腺液のせいだけじゃない。
隔離されていた思考すら消し飛びそうな衝撃。
圧倒的な快楽の渦に、オレは幻惑されていた。
腰の動きはもう、オレの意思から外れていた。
ぐちゅりと鳴る、穴の奥深くまで突いて、穴の入り口に引っ掛けるために引き戻す。
ただ貪るためだけに、オレの抑えなんか忘れて、ただただその動きを繰り返していた。
喘ぎ、見下ろすと、見上げる姐さんの顔が見えた。
それは、訊ねる顔。
蒸気が上がりそうなほど体温を上げ、顔を紅潮させながら。
それでも、姐さんはオレに訊ねていた。
これで、正しかったのか、と。
ああ、そうだ。
正(まさ)しく、これで良かったのだと。
そう返事をする代わりに。
オレは、姐さんの喉に、そのまま精を放っていた。
堰を切ったかのように、激しい勢いで。どくどくと。
抜き終わったオレは、茫然と意識を浮かせてたんだけど。
その間も、姐さんは後処理まで丁寧にしてくれていた。
ちょっとの間、まだ出るんじゃないか、と言わんばかりに、口内で物を弄んでた姐さん。
一度口を離すと、綺麗にオレの物を舐め、精の残滓すら余さず拭い去って。
オレから少し距離をとって、胡坐でその場に座り込んだ。
頬に朱色を残したまま、姐さんは深々と嘆息した。
「結局、だな」
「結局?」
姐さんの言葉に、オレも自分を取り戻して。聞き返す。
姐さんは口元に苦さを浮かべて、呟いた。
「お前の言うことに、従ってただけだったな」
オレはそれに、言葉は返さないで。
周りに目をやって、お目当ての品を探してた。お、発見。
あ、ズボンですよ。探してたのは。
ずっと下半身丸出しってのも恥ずかしいもんでね。
姐さんは、オレを横目に言葉を続けていた。
「考えろと言われて、このざまだ。情けない」
衣擦れの音が残る。
いや、オレが返事返さなかっただけなんだけどさ。
ちとね、この後の段取りがぐるぐる回ってたんだけども。
姐さん、ほったらかしてちゃいかんよね。反省。
ズボンを履き直したオレに、姐さんがポツリと零した。
「終わりか?」
「ん?」
再び落とした嘆息も深々だ。
「……やっぱり、駄目だったんだな」
「いや、違う違う」
よっと。まあ、そんな感じに。
姐さんの隣に寄ったオレは、そのまま腰を下ろした。
「違うって姐さん」
「何が違う? 何が違った?」
「いやいや。姐さん、上出来だったから」
ふと上げた視線に、明るさが戻る。
聞き返す声色も、少し上向いたものだ。(まあ、第一段階はクリア、だろうかね)
「……本当か?」
「マジマジ。嘘言ってもしゃーないでしょ」
ぶんぶんとオレは首を振った。
それでも姐さん、納得いってないみたいだけども。
「……しかしな」
だから姐さんは、言い募るのを止めない。
それを遮るオレは。
一つ、シニカルに笑って言った。
「いや、ほらね。あれだよ」
姐さんねぇ。
多分ね。ちと、上見すぎなんだよね。
「姐さんはさ、まあ、あれなんだよ」
「だから何なんだ」
「性に関してだけど。卒業したてのヒヨっこバリなんよ」
オレの適当な言い草に、姐さんはハテナ。
ま、そりゃ今の言い方じゃ分からんわな。
「ヒヨっこばり? 何だそれは」
「訓練学校、卒業したばっかのヒヨっこ。オレのパーティによく来るような連中みたいって訳」
姐さんの髪、手櫛で梳きながら。オレは説明を加える。
「姐さん、ヤる技術とかさ、あんま考えた事ないでしょ」
「あ、ああ。確かにそうだが……」
「学校で習って、実践でどう使うか考えてないのと同じ」
髪が整って、オレは手を離した。
そのまま手を広げ、伝える。ちと辛辣な話を。
「計画立てて、やってみて、それで評価する。
これ繰り返してさ、経験って積む訳でしょ。戦闘経験も。性技も。
こっちの分野で姐さん、そういう経験以前に、そんな事も考えた事ない。そういう訳よ」
無言。
姐さんの顔、良いね。集中してる。戦闘前の会議ん時の顔だ。
姐さんはゆっくりと口を開いた。
「つまり……今の私は、素人同然、なのだな。
何の経験も積んでいない、知識だけのヒヨっこ」
屈辱をかみ殺すような声音。
姐さんは、ラングダ。
性を扱えぬ淫魔と鬼の混血。
だから、姐さんが性技に達していないのは致し方ない。
だからって、仮にも淫魔がね、人間にヒヨっこ扱いされたんだ。
屈辱を感じない方がおかしい。
特に、ギルドで勤め、淫魔と直で接している姐さんなら。淫魔としての自覚を持ちつつある姐さんなら。
オレはあえて表情を動かさずに、頷いて返す。
「そそ。だから、先輩が指示する。それに従う。なんかおかしい?」
「いや。そうか。それで上出来、なのか」
「姐さんのレベルじゃ、まだオレが指示しなきゃいけない程度なの」
すっと、小さく音が聞こえる。
姐さんが息吸った音だ。
こちらが身震いするくらい、姐さん、集中してる。
「それで、私はどうしたら良い?」
良いね。
本気で良いよ。姐さん。
でもね、姐さん。
姐さんがフゥッラと、こんな桁違いの相手と戦うなら、やっぱね。一足飛びでいかにゃならんのよ。
並大抵の成長じゃあ、いつになるとも知れんから。
視界の端で、祓われてない地面を見る。
ったく、トンでもない。
よくもまあ、オレなんかに殺されたもんだよ。戦場は怖い。
「姐さん」
「ああ」
「オレの目を見て」
正面に回って。
オレは姐さんを見据えた。
座り、向き合ったオレと姐さんの間には、風一つ吹かない。静かだ。
可憐とすら言える、薄い口唇をきっと閉め。
姐さんもオレを見返している。
黒の瞳が、全部、オレの目を、その奥を見詰めている。
オレはちょっとだけ、目だけで笑って。言った。
「姐さん」
「ああ」
「キス。して、良いかな」