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No.4438の一覧
[0] 色欲のルルーシュ(CodeGeass ※壊れ)[鈴木 可翔式](2009/12/05 21:19)
[1] 色欲のルルーシュ~プロローグ~ 『バカ が 生まれた 日』[鈴木 可翔式](2008/10/14 20:35)
[2] 色欲のルルーシュ Return01『覚醒 の 白き 魔女』[鈴木 可翔式](2008/10/16 18:10)
[3] 色欲のルルーシュ Return02『弟子入り の クラスメイト』[鈴木 可翔式](2008/10/16 18:12)
[4] 色欲のルルーシュ Return03『ライフ は ゼロ』[鈴木 可翔式](2008/10/22 19:04)
[5] 色欲のルルーシュ Return04『皇女 と 痴女』[鈴木 可翔式](2008/10/22 19:10)
[6] 色欲のルルーシュ Return05『新たなる 仮面』[鈴木 可翔式](2008/11/02 20:59)
[7] 色欲のルルーシュ Return06『ギルフォード を 撃て』[鈴木 可翔式](2008/11/19 22:03)
[8] 色欲のルルーシュ Return07『黒 の 既視感』[鈴木 可翔式](2008/11/23 20:54)
[9] 色欲のルルーシュ Return08『リゲイン』[鈴木 可翔式](2008/12/05 22:28)
[10] 色欲のルルーシュ Return08.5『仮面 の 新事実』[鈴木 可翔式](2009/01/06 10:37)
[11] 色欲のルルーシュ Return09『モニカ 来る』[鈴木 可翔式](2009/12/05 21:21)
[12] 色欲のルルーシュ Return???『FLUKE REBELLION ~1~』[鈴木 可翔式](2010/05/29 19:33)
[13] 色欲のルルーシュ Return10『ナリタ 逃亡戦』 加筆分追加[鈴木 可翔式](2010/05/30 10:21)
[14] アーニャのブログ1[鈴木 可翔式](2011/03/21 21:54)
[15] アーニャのブログ2[鈴木 可翔式](2011/03/21 21:56)
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[4438] 色欲のルルーシュ Return09『モニカ 来る』
Name: 鈴木 可翔式◆ecc40991 ID:6a07a562 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/12/05 21:21

 ※今回の話では、一部ヒロインと言うかC.C.の扱いが、あまりにアレな部分が含まれます。
C.C.ファンの方は特に気分を害される恐れがありますので、僅かでも該当すると思われた方はスルーして頂くのが賢明です。
それでも構わないと言う方は、どうぞこのまま読み進めてやって下さい。








 近頃、騎士団内に日本人以外の団員の姿が見える様になってきている。
ゼロは言った。「ブリタニアの打倒と言う確たる意志。それさえあるのなら我々は仲間だ」と。
暗に人種は無関係だと告げるその発言に、団内から異論が挙がるのは当然の事。

 それでも、結局そんな声はすぐ消沈した。
幹部と目される様になった扇さん達が、「人種は問わない」と言うゼロの判断に沈黙を守っていたのも大きいだろう。
けど、何よりゼロの決断は騎士団の絶対だ。
ゼロが必要だと判断しての采配なら従う。
そうやってここまで勝ってきたし、これからも勝っていく。
だから、最後には皆その決定に頷かざるを得ない。
僅かな不満は残ろうとも。

 その事に関して私はと言えば、扇さん達と同じく、特にどうする事もなく傍観していた。
私はハーフだ。
認めたくはないけれど、紛れもない事実として私の体には半分ブリタニアの血が流れている。
もちろん、心はどこまでも日本人のつもりでいるから、日本の解放は日本人の手でと言う気持ちはわからなくもない。

 でも、自分を偽り通う学園の生徒会で、ブリタニアと言う人種全てが憎悪の対象にはならないと言う事も実感として知っていたから、人種を問わないと言うゼロの考えは素

直に受け入れられた。
受け入れられる程にゼロと言うリーダーを信頼していた。

 そんな自分を省みて笑う。
今は誰よりもゼロを信じている私自身が、最初は誰よりも仮面の彼を疑惑の目で見ていたと言うのにね、と。



 初めはシンジュク事変で助けられた。
次はブリタニアに捕まった仲間を救出してくれた。
その後仲間となって彼に手を貸したのは、恩義と「その手腕なら」と言う期待からだったのだと思う。

 そう、ブリタニアと戦えるだけの能力を彼は持っていて、私達にはその能力がどうしても必要だったから。
だから私達は彼と手を結んだのだ。
つまりは、利害が一致したからこその、信頼の薄い協力関係。
仮面で正体を隠した人物に、信用をおくつもりなどない。
彼に従うのは、あくまでも日本解放と言う目的の為だ。
そう思っていた。

 けれど、いつからだろう。
『ゼロ』と言う象徴でしかなかった人物が垣間見せる、思い遣りや人間味に惹かれていた。
彼が見せてくれる未来への可能性に、それを実現できるだろう力に魅せられていた。

 彼に救われる度に。
彼に導かれる度に。
私の中の想いがどんどん形を変えていく。
仮面に対する疑念は敬愛に。
仮面に従う思惑は忠誠に。
信頼なんか出来る筈がないと思っていた人からの信頼を、逆に何よりも欲っする様になっていた。

 レジスタンスだった頃からの皆もそう。
仲間内でゼロを疑う人はもう居ない。

 だって彼は私達に示してくれた。
信頼に値する行動で、仮面の正体を気にする事の無意味さを。
今は誰もが思っている。
『ゼロになら着いて行ける』ではなく、『ゼロだから着いて行こう』と。


 あぁ、私達は、―――私は、もう彼がいなければダメなのかも知れない。



 そう考える様になって暫くしたある日。
現在も拡大を続ける騎士団の中枢となってゼロを支えるメンバー。
旧扇グループ全員がゼロの部屋に呼び出された。

 促され着席した私達にゼロがした事は謝罪。
「人種を問わず入団を認めた事に対して、君達に意見を聞かずの独断を先に謝っておく」と頭を下げた。
慌てたのは私達だ。謝罪の必要などない。
ゼロは絶対のリーダーではあっても、傲慢な独裁者ではない事を、メンバー皆がわかっている。
人種なんかに拘っても、結果が出せなければ意味はないと、そんなゼロの考えを皆が汲み取っていた。
それが正しいと思えたから私達は異を唱えなかった。

 扇さんが皆の総意としてそう告げると、ゼロは少し笑った。
「随分と信用されているな」と可笑しそうに。
そうして、「その信頼への礼として少しだけ明かそう」と、ゼロが語り始めた話に、私達は耳を傾けたのだ。

 彼が順序立てて話してくれたのは、一つの道筋。
騎士団の当面の目標は、この日本の地を取り戻し新たな国家を設立する事。

 けど、それだけでは終わらない。いや、終われない。
ブリタニアが健在で、日本の地にブリタニアの欲するサクラダイトがある限り、一度ブリタニアから日本を解放したところで、その脅威に晒され続ける事になる。
そうならない為には、現体制のブリタニアの打倒は必要不可欠だ。
その為の力を、ゼロはこの地で興した新国家の外交を用い、反ブリタニアの国々と結びつく事で生まれる巨大な国家連合に求めようとしていると言うのだ。

 「だからこそ、それを成す為に結成した黒の騎士団には、人種に拘ってばかりいられては困る」と、そう締め括ったゼロに、言葉がない。
彼は誰よりも本気で、大真面目に、ブリタニアの打倒に向けた未来を見据えている。
日本解放だけを願ってがむしゃらに戦う事だけを考えていた私達とは違い、その後の情勢すらも既に視野に入れて、それを実現しようと動いている。
それがどれだけ達成困難な事と理解していたとしても、やり遂げるだろう、ゼロならば。

 ただ、凄いと思った。
この人と戦える事を幸福に思った。

 だから、「故に、日本解放は私にとって目的ではなく手段に過ぎない。それでも君たちは…」なんて言葉の続きは言わせない。
それでも貴方に着いて行くと、皆で返答した。

 でも、「君たちの信頼に感謝と、それでもこの仮面を外せぬ私の不義に謝罪を」と続けたゼロの次の言葉には、流石に驚いた。
あっさりと、「かく言う私も日本人ではない」なんて。
ゼロが日本人ではないからって今さら決意を翻そうとは思わないけど、作る和食は美味いし、忍術使うしで、完璧に日本人だと思っていたから…。
井上さんだけは、うんうんと頷きながら、「アノ大きさは、日本人じゃないわよねぇ」とか言って驚かなかったけど、それが逆に不思議なくらい。
大体、大きさって何の?

 けれど、これでゼロが仮面を被る理由を全てじゃないにしても知れた。
それが、ゼロからこちらへ預けてくれた小さくはない信頼の証に思えて嬉しくなる。
やっぱり何も変わらない。
彼が日本人ではないとしても、私は彼に着いて行く。




 その決意を胸に、私は今ここにいる。
ナリタ連山。日本解放戦線を討ちに現れるだろうコーネリア軍との決戦の地。

 メシアですら奇跡を起こさねば認められなかった。
これから成す事の為には、私達にも奇跡が必要だとゼロは言う。
民衆の支持を集める為にも力を示す。
圧倒的な戦力差を跳ね除け、コーネリア軍を退ける奇跡を起こせば、きっと誰もが認めるだろう。

 その為の力は、もう私の手の内にある。
紅蓮弐式。多数の無頼と共にキョウトより送られてきた、初の完全日本製のKMF。
ゼロがその鍵を与えてくれた日の事を、私は決して忘れない。

 紅蓮には貴方こそがと言った私に、自分は指揮官で、君がエースパイロットだと答えたゼロ。
その後ぶっきらぼうに、「KMFの操縦は得意ではなくてな。私では紅蓮を扱いきれない」なんて言っていて。
彼に不得手があるのは意外だったけれど、そこをサポートできる力が私にあると認めてくれた事が喜びだった。
「君には戦う理由がある」と、力をくれたゼロに応えてみせると誓った。

 私の戦う理由を肯定してくれたゼロに訊ねてみた事がある。
貴方は何の為に戦うのですか?と。
返って来たのは「大切な人達と穏やかに暮らせる優しい世界が欲しいから」なんて言葉。
「いつか、君が厭うている血の半分も受け入れられる様な世界を、私は創りたいと思う」と言って差し出された手を、私は握り締めた。
その時ゼロが微笑んでいると何故かわかって、いつか私にその仮面の内側を教えてと、意識せずに願っていた。


 紅蓮のコクピットに、『総員、配置に着け!』とゼロの指示が響く。
遂にブリタニア軍がナリタ連山の包囲を終えたらしい。
間違いなく今までで最大の戦闘が始まろうとしているのだ。
覚悟と共に操縦桿を握る。

 ゼロに出逢ってから心の裡に産まれた灼熱が叫ぶ。
ゼロを守れ!と。

 そうだ。全ての敵から彼を守る。
彼を害そうとするものは全部全部斬り裂いてやる。

 その在り方は剣だろうか?
ゼロを守る、ゼロの剣。

 うん。それが良い。
そうで在りたい。
彼の剣になれたなら、彼に振るわれたなら、何者にも臆さず突き進める筈だから。


 見ていてね、お母さん。お兄ちゃん。
私、頑張るから。

 見ていろ、燻っていた過去の紅月カレン。
ブリタニアの理不尽に涙するのはもうお仕舞い。

 そして、見るがいいブリタニア。
やっとお前たちと対等に戦える。

 その力をゼロがくれた。
今日この時この場所での戦いが、お前たちに対する本当の反撃の始まりだ!







 色欲のルルーシュ Return09『モニカ 来る』







 傷心回復翌日2ページ目

 C.C.と咲世子に事のあらましを問い質すべく急ぎ戻ったクラブハウスで俺が見たのは、俺の自室に大量のぬいぐるみを運び入れているC.C.だった。
俺がヘコんでいる間は、他の部屋でC.C.曰くの別居をしていたのだが、それも必要なくなったし俺の部屋に戻る準備との事。
もともとからして物に執着を見せない女だし、準備も何もお前の荷物などチーズ君くらいしかないだろうが、と思っていたのだが、そのチーズ君が一、二、三、………十二体

。増殖していないか?

 おい、C.C.。なんだ、これは?はぁ?「クラブハウス最愛のぬいぐるみ達。チーズ・オブ・ラウンズ」だと?
すると、チーズ君共で囲む様にした中心のピザ型クッションは円卓とでも言うつもりか?
なぁ、C.C.。色々とツッコミたいのを後回しにして言わせてもらうが、円卓の騎士とは本来、王を含めた十三人で構成される者達だ。これではチーズ君が一体足りな――

―なんだ、その含み笑いは?

 C.C.が背後に隠すように抱えていたナニカを、俺に見せつけてくる。
それは十三体目のぬいぐるみ。他と違い王冠と外套を纏ったチーズ君で………。
「チーズ・アーサーだ!」とか、誇らしげに胸を張るC.C.を見て思う。
こんなの俺の魔女じゃない。

 どうしてしまったというんだ。確かにお前はやり直す前からも一にピザ、二にピザのピザ女ではあった。
が、それでも肝心なところでは冷徹冷酷、傲岸不遜な俺の頼もしい共犯者だったじゃないか。
それなのに。それなのに!やり直してからのお前ときたら、日に日に頭のネジが弛んでいってるとしか思えないポンコツっぷり!
あの頃のお前は、一体何処へ逝ってしまったんだ!?魔女かむばっく!!

 は?「お前への愛が私を狂わせたのさ」だと!?
そんな愛いるか!
第一、ニヤニヤしながら言われても、説得力がないんだよ!
その愛ゆえの行動の結果が、俺がナナリーに捧げる筈だった貞操の強奪だったり、この無駄に増えたチーズ君だったりなんて冗談じゃない!

 あぁ、俺が引き篭っている間にゼロを引き受けてくれていた事には、感謝しているさ!だが………ん、待てよ。
そもそも、いくらC.C.がピザ命のピザ女とは言え、俺がヘタレていた期間だけで、こんなにもチーズ君を増やせるとは思えない。

 にも拘らず、不可解な増殖を果たしたチーズ君。
先程生徒会室で目にした雑誌のゼロ関連の記事。

 この二つ事柄から導きだされる解は一つだが、…信じられん。いや、信じたくない。
まさか、チーズ君欲しさに騎士団でピザ屋を、なんて………。

 ………C.C.、共犯者たるその身を信じて弁明の機会をやる。
ゼロのピザ屋襲撃と、爆発的に増えたチーズ君の関係性。きっちり説明して貰おうか。

 はっ、「関係などない」?虚偽は許さん。
「う、嘘じゃない!」だと!?そういう事は俺の目を見て言え!
おい、視線を逸らすんじゃない!

 更にしつこく問い詰めれば、狼狽えた様子のC.C.から、「咲世子がチクッた?…いや、それは有り得ん」とか、「それに元はと言えば、あれは扇が…」などと言った呟

きが聞こえてくる。

 …やはりか。
語るに落ちてるぞ、魔女。
チーズ・オブ・ラウンズだのなんだのと、C.C.の珍妙な言に惑わされはしたが、クラブハウスに戻ってきた目的を俺は忘れていない。
C.C.。ピザ屋襲撃の件も含めて、ゼロを演じていた間の事を仔細問い詰めさせて貰うぞ。
拒否?認める訳がないだろう。
いざとなれば、扇達にギアスを使い訊き出す事も出来るんだ。観念しろ。

 そう告げれば、途端に「アレは冤罪だ!」などと喚き始める魔女。
終いには、俺が仮面に搭載したフロートのせいで死んだ。いや、あれはお前に殺されたようなものだ!とか逆ギレしてくる始末。
まだ使うなと注意書きを残して置いたのに、使ったのか、お前は。

 もういい、わかった。少し落ち着け。
冤罪かどうかも、咲世子と併せて話を聞いた上で判断してやる。
だから、逃げるなよ?




 傷心回復翌日3ページ目

 なんと言えば良いのか。
C.C.と咲世子。二人を目の前に正座させて詳しく話を聞いてみれば、出るわ出るわ。

 団員達を統制する為のスパルタ。騎士団運営費を用いてのピザ責め。ピザ屋襲撃。ピザの宅配員を庇って死亡。ナイトポリスのゼロ単体での撃破。
嘘だよな?とか訊き返したが、二人が渋々提出してきた『はんぎゃく日記』なるものが決め手となった。
目を通して見れば、記されているのは二人がゼロとして活動していた時の詳細な全記録。

 ………なんだこのゼロ?
俺と違ってギアスが使えない故だろうが、作戦中、血路を切り拓く為の格闘戦に次ぐ格闘戦。
只でさえピザ関連を初め奇怪な行動が目立つと言うのに、挙げ句「え?どこの武神?」って位にゼロ無双なその内容。

 確かに、日記の内容からは二人の頑張りが伝わってきて、再び感謝の念が沸き上がりはする。
ピザ屋襲撃だって初めから意図しての行動ではないと判明したし、騎士団の前回より強固な結束などのプラス要素も多く見受けられる。

 しかし、俺がゼロに戻った時の事をもう少し考えて欲しかった。
このままでは、これからの作戦中にピンチに陥った瞬間、困った時のゼロ頼み!でブリタニア軍と生身でガチンコ勝負をさせられかねない。
つまり、戦闘能力の皆無な俺はそこで御陀仏になりかねない。

 どうしよう。…と言うか、どうしてくれるんだ、C.C.!咲世子!
何?「自業自得だ」だ?そんな訳あるか!
笑い事じゃない!死活問題なんだぞ!何とかしなくては…!!

 ん?「仕方ない、私が解決案を授けてやろう」だと?
やけに自身ありげだな、C.C.。とりあえず言ってみろ。




 ナリタ作戦準備期間《ゼロスーツ編》1ページ目

 C.C.が提案してきた解決案は、「戦えなくて困ってるんなら、戦える様になれば良いじゃない」という馬鹿げたモノだった。
が、馬鹿げてはいるが、一番シンプルな打開策であるのも、また事実。
スザクや咲世子みたいな超人になれるとは欠片も思わないが、鍛えておくに越したことはないだろう。
前回は自身の知略とギアスだけを頼りに戦っていたが、生身での護身をある程度習得していればよりスムーズに事を運べただろう事態が幾つもあった事だし、これは丁度良い

機会なのかもしれない。

 と言うか、前回も僅かでも鍛える位はしておくべきだったと、今更ながらに思う。
自身の採れる戦術が向上したのなら、それを踏まえた上で戦略に幅を持たせる事も可能なのだから。
ナナリー達と幸せに過ごす理想世界実現の為にも、少しでも有利となる要素を増やす努力は怠るべきではない。
それに、C.C.と咲世子により形作られた、ゼロ=武闘派と言うイメージをこれから無理に軌道修正するくらいなら、既に形成された今のゼロのイメージを逆手に取ること

により、不本意ながらモヤシなイメージを持たれている俺を、ゼロの正体かも知れないと言う疑念から遠ざける事も出来る。

 なぁに、俺の身体能力が芳しくない理由は、必要性を感じずに鍛えなかった故の、持久力や筋力の無さだ。
反射神経は悪くない(と思う)のだから、決して生粋の運動音痴ではない…筈。

 幸い篠崎咲世子と言う俺が師事するに相応しい戦いのエキスパートもいる。
やる気にさえなれば、それなりに戦える様になる事など軽い軽い。
となると、やはり最初は基礎的な筋トレあたりからだろうか。


 ………などと、色々前向きに考えて鍛え始めたは良いのだが、いきなり壁にブチ当たった。


 まず、この咲世子師。俺をどう過大評価してくれているかは知らないが、基本的に「私が出来る事をルルーシュ様に出来ぬ訳がございません」とか無茶な方針を振り翳して

くる。
パンチはこう、キックはこう、と他様々な体捌きを一通り俺に見せた後、「ではルルーシュ様。今の感じでそこの壁を砕いてみて下さい」とか、「まず5m程跳躍してからで

すね…」とか。

 無理だ!と泣き付いても、「出来ぬと思うから出来ないのです。貴方様なら出来ます!」と、根拠のない根性論で押し切られる。
普段おっとりな咲世子からは考えられないスパルタに嫌味を溢しても、「主君を想えばこその厳しさです!」と、逆に叱責を受け。

 自棄になり、いいさ!やってやる!と挑戦した結果、拳は砕けそうになり、体全体が軋みをあげる。
その横ではC.C.が「気だ!ルルーシュ、気を使うんだッ!即ちフォース!ギアスという異能を制したお前ならできる!!」などと好き勝手に叫んでは笑い転げていて。
救いを求めてシャーリーを見ても、「ルル、がんばってるんだね」とか、感動していて気付いてくれない。

 鍛えるって、こんなにも大変な事なのか。そりゃあこんな事してれば咲世子もスザクも強いわけだよなぁ。なんて現実逃避してみても何も始まらず。
このままではナリタを前に死んでしまうと、咲世子に師事を受ける前の自分の考えを酷く後悔した。

 ごめんナナリー、俺はもう駄目かも知れない。
………愛してるよ。




 ナリタ作戦準備期間《ゼロスーツ編》2ページ目

 非常識な教えに死を覚悟しながらも、ナナリーへの想いだけを支えに鍛練を続ける事約一週間。

 何一つ成果を上げない、むしろ日に日に衰弱していく俺に対して、「やはり、筋力トレーニング等で身体の基礎を作る事が先決ですね」と本当に今更な事に気付き、残念そ

うな表情でそう言い渡してくれた咲世子。
無理なものは無理なのだから、残念そうにされる謂れはないとわかってはいるものの、忠実な家臣の期待を裏切ってしまった事には違いなく、少しだけ罪悪感に苛まれる。

 が、それすらオーバーワークによる死の恐怖から解放された安堵感には代えられるものではない。
咲世子も方針を改めてくれた事だし、これで漸く俺が思い描いていたトレーニングに精を出す事が出来るようになる。


 そう思って再び咲世子の指示に従ったと言うのに、やり直してからの世界はどこまでも俺の思惑の斜め上を行ってくれた。


 違う。このトレーニングは何か違う。
「精が出ますね」と、気の毒そうに話しかけてきた千草の苦笑が全てを物語る。
あぁ、確かに精は射精してるな。違う意味でドバドバと…。

 体全部を使った運動なのも認めよう。
スタミナだって向上するだろう。
でも、普通筋トレとは、腕立てとか、腹筋とかだろう?
俺が咲世子に期待したのは、そう言った手段での最も効率の良い方法を教授して貰う事であって、断じてベッドの上で過剰に腰を振る事を強制されたかった訳じゃない。

 俺が想い人を抱く事に魅入られた最大の理由は、単純に気持ちが良、じゃなくて!…そこに恋人達との心の繋がりを感じとれるからとか、癒されるからと言った精神的なも

のが多く含まれるからだ。
お互いがお互いを慈しみながら、求め合う。実に素晴らしい。

 しかし、現状のコレはまるで義務。
最低でも一日に一人3Rを1セットとした四人分。即ち4セット。
あくまでも俺が主に動いて鍛えるトレーニングな為に、騎乗位は禁止。
しかも、回を重ねる毎に、そこに『多対一の集団戦闘を想定した訓練』とか、筋力トレーニングと言う大義名分を忘れた4P、5Pが追加され始めた。

 どんな苦行か。
そも、こんなので本当に強くなれるのか?
「愉しみながらのトレーニング、何が不満なんだ?」とか訊いてくるC.C.には、何もかもだ!と声を大にして言ってやりたいし、シャーリーの「腰使いは逞しくなってき

てるよ」と言う言葉も、なんら慰めにはならない。
俺もノリノリだった癖にとブーイングする外野は、もうこの際全て無視するべきだ。

 大体、いくら全身運動とは言え、こんなの腰まわりが強化されるだけじゃないか。
端から咲世子達に頼ったのが間違いだった。

 こうなれば俺自身で何か別の方法を―――む、なんだC.C.?お前の胸を揉め?
あー、頼まれたからには揉むが、これが一体なんだと?
は?「これで、握力も鍛えられている」だと?

 …。

 ……。

 ………ぬぅ、意外に侮れんな、このトレーニング。
もう少し続けてみるか。




 ナリタ作戦準備期間《ゼロスーツ編》3ページ目

 俺が、度を超えた性交=理に叶った鍛練だと騙されてやれたのは、駅弁で腕力UP説までだった。
いくら父親からの遺伝により絶倫とは言え精力的に限界に来ていたのもあるし、この鍛練で力が身に付くのならブリタニア皇帝が最強の筈と思い至った事も大きい。

 よって、微々たるスタミナの向上のみを成果に、トレーニングは打ち切りとした。
まぁ、他にも腰のキレが良くなったりはしたが、重労働だった割には報われない結果だと言えるだろう。

 わかっていた事ではあるが、肉体的な頑強さを手に入れるのに、短期間でお手軽にと言うのはやはり甘い考えだった。
筋力トレーニングは地道に続けるにしても、それでは俺が戦える様になるまでどれ程の月日を要するのか知れないし、下手をすれば、肉体的に完成する頃には反逆が終わって

いると言うのも充分に考えられるだろう。

 それでは意味がない。
が、だからと言って俺に諦める気はない。
そもそもここで簡単に諦める様なら、初めから世界一の大国相手の反逆など企ててない。
ゼロとして戦うのに、自身の肉体的ポテンシャルで足りないとならば、不足分を他で補填してやれば良いだけの事。

 そう発想を切り替えた後より着手したのが、ゼロスーツの改造企画書作成だ。
仮面だけに機能を持たせるのではなく、マントやブーツにも色々とギミックを仕込んで、ゼロの衣装がそのまま一種の強化服としても機能する様に完成させてやれば良い。


 となれば、防弾防刃は当然として………おいC.C.、じゃれつくな。俺は今忙しい。
は?「私も交ぜろ」?ふざけるな。
お前の意見を聞いていたら、とんでもなく夢見がちなモノになってしまう。

 「私だってたまに袖を通すものなんだから、権利はあるだろう」だと?
………そう言われれば無下にもできんが。
よし、取り敢えず交ざって良いから、なんか案をだしてみろ。

俺の意見から先に述べさせて貰えば、飛行能力は必須だ。
何せ、世間では『魔王ゼロ』らしいからな。飛ぶくらいは必要だろう。

 そんなに嫌な顔をするな、C.C.。
お前が身を以て示してくれたから、仮面にだけフロートを着けても首吊りになるだけと解ったんだ。
次はブーツにもフロートを搭載して、空中での姿勢制御を万全にするとも。

 「なら、いっそエナジーウィングとかどうだ?」って?馬鹿を言うな。
いや、確かにゼロにアレが着いてたらカッコ良いが、可能とは思えん。
やるだけやってみるが、一先ずは飛べるだけで我慢しろ。

 次に攻撃手段なんだが、手袋にスタンガンとかどうだ?
飛び道具ではないが、不意を打つ点での優位性は中々だろう。「MVS」?………常に帯剣もどうかと思うが、考えておこうか。

 次、防御手段。「ブレイズルミナス」か。
言うとは思ったが、どうだろうな。
実装出来れば心強くあるが、って、これではまるでランスロットだな、おい。

 「あとはゲフィオンディスターバーだな」って、それこそどうしろと言うんだ?

 …む、それは。

 ……しかしだな。

 ………その手があった、のか?


こうして、途中からシャーリーと咲世子までも加えて、会議は深夜遅くまで続いた。




 ナリタ作戦準備期間《ゼロスーツ編》4ページ目

 会議に会議を重ねた俺達の新ゼロスーツ製作案は、ギアスで支配下へと置いた技術者達の不眠の頑張りもあり、驚異的なスピードで現実の物として形を成した。

 本来、ロイドやラクシャータと言った一流処がこれより未来に完成させる物品とは言え、やり直した俺にとっては既知の物。
技術開発は畑違いだとしても、前回に記憶した知識と、多くの技術者の助けがあれば、それらを小型化するのは思うより容易だったと言える。
とは言え、可不可を問わずに盛り込まれた夢見がちな装備まで、一応の実装にまで漕ぎ着けられたのは、嬉しい誤算だろう。

 フフフ、外見的には今までと変わらない様に見えるこのゼロスーツ。
しかして、その実態は人間サイズのKMFと言っても過言ではないポテンシャルを持った強化服へと仕上がった。


 一つに防御力。

 スーツとマント自体が優れた防弾防刃防火を誇り、それでも防げぬ攻撃に襲われた場合も、普段マントで隠されている肩部に仕込んだ装置により、瞬間的なブレイズルミナ

ス展開での防御が可能。
絶対守護領域の搭載こそドルイドシステムの小型化と、操作する為のタッチパネルをどう持ち歩くかが解決できずに躓き諦めたが、それでも充分以上の防御手段を得るに至っ

た。

 一つに攻撃力。

 MVSと言う切れ味抜群な剣と、左手袋に仕込まれた高出力のスタンガン。
そして右手袋に仕込まれた小型ゲフィオンディスターバー。
これらの装備により人間を感電死させたり、KMFを行動不能に陥らせた後、斬り裂いたり出来る凶悪なものとなった。

 と、こう書けば敵無しなように思えるが、小型化した事によるゲフィオンディスターバーの出力不足もあり、敵KMFのユグドラシルドライブ設置位置に超至近から使用し

なければならないと言う欠点もある。
それに、それで行動不能と出来るのは極短時間な為、有用性は微妙だ。
あって何かの役に立てば儲けもの程度に認識している。

 ちなみに、いつでも冷凍ピザを温められるという理由で、C.C.が熱望した輻射波動は廃案となった。
腕が弾け飛んでは溜まらない。

 一つに機動力。

仮面だけでなくブーツにも搭載したフロートにより安定した飛翔能力を得るだけでなく、マントに折り畳まれる形で実装された小型エナジーウィングの展開で、緊急時は超高

速での機動が可能。
ビジュアル的にも俺の好むところだし、満足している。
小型エナジーウィングなんて半ば冗談だった筈なんだが、やってみるものだ。

 飛ぶだけ飛んでも着地はどうする?と言う問題も、靴底に大量の衝撃吸収剤を注入する事で解決。
ある程度の高所からでも、負担なく着地できるだろう。


 ざっと挙げるだけで、これだ。
なんと言うポテンシャル。
なんと言う高スペック!
エネルギーの関係もあり、現状どの機能も使えて一回~三回。
フロートも飛べるのは三分(エナジーウィングなら一分)だけと言う制限はあるが、強力な装備である事に変わりはない。

 更に、ここで培った技術をジェレミアに流用する事で、戦いが激しさを増す終盤、オレンジ・アルビオン、はたまたジェレミア聖天柑橘式と言う、ナイト・オブ・ゼロすら

超える最強の騎士の誕生も期待できると言う寸法だ。

 ふっ、幼少期にスザクと見た戦隊物や変身ヒーロー物を思い出す。
年甲斐もなく心が踊るぞ、これは!

 さぁ、C.C.。残すは実用試験だけだ。
生まれ変わったゼロスーツの力を俺に見せてくれ!

 何?「なぜ私がテストしなきゃいけないんだ?」だと?
そりゃあ、お前なら何か不慮の事故があっても大丈、じゃなくて!お前を信頼しているからだ!

 ほら、ブツブツ言ってないで始めよう!
最初はフロートからだなッ!!


 おぉ、問題なく飛べているな。
フロートはOK、と。
あんなにはしゃいで飛び回って、C.C.もなんだかんだと楽しんでいるじゃないか。
よし、次はエナジーウィングだ。
C.C.、翼を展開してみろ!

 順調順調と頷きながら指示を出す。
しかし、指示した通り翼が展開された瞬間、俺の近くを飛び回っていたC.C.が掻き消えた。



 ………?



 疑問符を浮かべ、首を傾げる事数十秒。
この不可解な事態への答は、はるか空の上から降ってきた。


 くえすちょん。エナジーウィングを使用したらどうなりましたか?

 あんさー。ボロクズの様になりながら天空で絶命し、たった今地面に激突と言う形で帰還を果たした共犯者。


 なるほど。
エナジーウィングの余りの速度に制御を失い上空へ加速。KMFと違い、剥き出しの身体にそのまま襲い掛かる諸々の圧殺力に耐えきれず絶命。その後エネルギーが切れて落

下、と言う訳か。
C.C.、すまない。初めからこうなると気付いて然るべきだったかも知れん。

 こうなると、エナジーウィングの生身での使用は無理か。残念だが取り外そう。
やはり製作可能なのと、実用可能なのは違うと言う事だろうか。

 これは他の機能もわからなくなってきたな。
早くC.C.に蘇生して貰い、色々と試さねば!




 ナリタ作戦準備期間《ゼロスーツ編》5ページ目

 臍を曲げたC.C.をどうにか説き伏せ、実用試験を重ねた結果、ゲフィオンディスターバーも使用困難と判明した。

 使った瞬間に、敵KMFだけでなく、こちらのゼロスーツの機能もほぼ停止してしまうのは盲点だったと言わざるを得ない。
ゲフィオンディスターバー搭載の手袋を使用中は、他の機能が使えない。つまりは、仮面のファクトスフィアやフロートとの併用が不可能と言う事。
そうなると、KMFへの懐に潜り込んでの使用が絶対条件の小型ゲフィオンディスターバーは、それこそ咲世子くらいしか使い熟す事が出来そうにない。

 MVSにしてもそうだ。
熱に浮かされる様にして勢いで作ったは良いが、落ち着いて考えてみれば如何に切れ味が鋭かろうと、剣術のけの字も知らない素人が携えて意味のある武器か疑問に思える。
普通に銃器使用した方が強そうだ。
今目の前で飛び回りながら、余す事なくゼロスーツの機能を引き出している咲世子が実に羨ましい。


 ………結局、開発した新ゼロスーツは、俺にとっては小型フロートシステムの完成と、防御力の突出と言う恩恵を齎すに留まってしまった。

 いや、それでも素晴らしい成果ではあるんだが、俺がゼロとして戦闘出来る様にと着手した筈の計画にも関わらず、結果的に咲世子が更なるパワーアップを果たす事態とな

ったのが何故か釈然としない。
くそ、俺が真のゼロなのに………、と恨みがましく思っても、ゼロスーツを扱いきれない自身の不徳だ。納得するしかないだろう。

 最終的には、若干の火力不足すらエナジーウィングを撤去した空白部位を利用し、棍棒型手榴弾をマント内に多量に(重量的に俺やC.C.ではキツい程)ぶら下げる事で解

消した、強襲殲滅型ゼロ咲世子の誕生を区切りとして、今計画は幕を閉じる事になった。






 ナリタ作戦準備期間《黒の騎士団etc編》1ページ目


 長々と新ゼロスーツ開発の経緯とその顛末について書いてしまったが、もちろんそんな事だけに全てを傾注していた訳ではない。
我が日常は、学生としての生活と、反逆者としての活動により編まれるもの。
ゼロとしても復帰を果たし、近く迫ったナリタへと向けて全力で取り組んでいる。
引き籠りから脱して初めて黒の騎士団に顔を出す時などは、隔たった団員達との関係を憂慮してもいたのだが、中々どうしてC.C.達は上手くやってくれていたらしい。

 予想以上の慕われぶりで、逆に些か戸惑ってしまった程だ。
C.C.達の前でそう溢した時は、「もう少し私達を信用しろ」と拗ねられてしまったが、『はんぎゃく日記』なんてものを読まされれば不安にならない方がどうかしている



 しかし、前回ならば此方の指示に渋々と言った感じでしか従わなかった玉城ですらが、快く動いてくれているのだ。
不安はすぐに杞憂と知れた。
現時点で玉城はすでにゼロを親友呼ばわりで。
あの玉城がそうなのだから、他のメンバーは言うまでもないだろう。
一方ならぬ信頼が寄せられている事は、容易に窺えた。
それに、皆友好的ではあっても馴れ合っては来ず、そこに一律の統制を感じられるのも好ましい。

 正直、ゼロとして活動するのに理想的とも言える環境だ。
好感度次第でこうも変わるのかと、現況と照らし合わせた前回を僅か悔やむ。
飴と鞭なんて言ってはいたが、餌付けと制裁だけでこうも見事に上下関係を構築するとは…。
C.C.と咲世子。近頃アホらしい面ばかり見せられていたが、やはり優秀なことは間違いないらしい。

 そんな風に二人の株も再び上がってきていたものだから、当然、カレンの忠誠値が最大まで高まっていると判明した時は、よくぞここまで!と、手放し褒め讃えた。

 今もこうしてゼロとしてアジトに姿を見せてみれば、すかさずカレンがお茶を出して来る。
仮面で飲めないの知っているのに遠回しな嫌がらせだろうか?とも最初は思ったが、そこにあるのは純粋な好意だ。
礼を言えば、瞳に喜色を浮かべた彼女に犬耳と尻尾が見える。

 むぅ、可愛いじゃないか、カレン。
久しく向けられていなかったこの愚直なまでの忠誠心。
こうも早く拝める事になろうとはな。

 前回はゼロの正体が俺とバレてしまった瞬間から即座にツンデレモードに移行したカレン。
後々、そのあまりに短かった忠犬期の終わりをCの世界で残念に思ったのを憶えているだけに、感慨も一入だ。
しかもツンデレ時はビンタされたりとかのツン分が強すぎて、あまりデレ分の思い出がない。
悪逆皇帝として、本気で命狙われたりしたし時は、彼女に『可憐』なんて名付けた親の考えを疑ったりもした。
が、この忠犬ぶりをみるに名付け親は正しく慧眼の持ち主だったのだろう。

 何度でも言うが、可愛い。実に可愛い。
お手。とか言いたいし、させたい。
首輪とかプレゼントして飼いたい。
対カレンの重要イベント。紅蓮のキー譲渡までは我慢しようと思っていたが、もうアタックしてしまおうか?

 いや、けれど今回カレンの好意がここまでなのは、C.C.、咲世子の働きであって俺は何もしていないのが些か引っ掛かる。
でも、まぁ、それも時期の早い遅いはあれ、前回純度100%に俺だったゼロでもカレンは忠犬化したのだし結果は同じか?

 ならば、いつ手を出そうとm―――いやいや、しかし彼女の母親があんな風になってしまったばかりでもあるし、それはあまりに無節操過ぎる気もする。
俺がヘタれずに計画通りに事を進めていれば、ギアスでリフレインを断たせた後に療養先を見つけてやれるなりなんなり出来た筈で、そうすれば、少なくとも服役なんて事態

は回避できた。
その事に関しての負い目もあるし、ここはもう暫く時期を置いてからにするべきか…。

 ………うん、そうだな。そうしよう。
よくよく考えれば、今ゼロのままカレンの純潔を奪って、いざゼロの正体が俺とバレた時に「騙された!」なんて泣かれるのは辛い。
態度は多少軟化してきているとは言え、やはりここは学園での俺に対する好感度ももう少し上げてから、ドラマティックに正体を明かしてからと言うのがベストだろう。

 となると、時期は神根島の前辺り。
認めたくはないが、もし今回もスザクがユフィの騎士に就任するのなら、それに合わせてとか、か。
親友が憎むべき白兜のパイロット→苦悩する俺→それを知るカレン→そして二人は…。なんて流れはどうだ?

 悪くない、と言うか非常に良い!………が、それまで長いな。長過ぎる。
カレンからのこの慕われっぷりを前に、そこまで俺が我慢できるだろうか?

 やはり今の時点で味見くらいしても罸は―――って、井上?
あ、あぁ、すまない。考え事をしていた。
何?「もう限界なの…」って何の事だ?
おい、何処へ引っ張っていくつもりだ!?私はこれからナリタでの作戦に向けて会議を、ってKMFの格納庫ぉ!?ッ、何故脱ぐ?!
ま、待て!今はマズイ、と言うか此処はマズイッ!!
折角カレンとも良い感じなのに、こんな現場見られたら…!せめて私の部屋に―――って、ほわぁーーーッ!!


 ………C.C.達め、とんでもない爆弾を残していてくれたな。
カレン達に見つからなかったのは救いだが、禁欲から自らを解き放った井上は、雌豹だった。淫獣だった。
問答無用に部下に逆レイプされるとは。
実は、全然理想的な環境じゃなかったじゃないか。




 ナリタ作戦準備期間《黒の騎士団etc編》2ページ目

 井上に襲われてから暫くした夜。
学園のプールにてC.C.とシャーリーが戯れているのを横目に、プールサイドで情報を纏める。

 井上の奇襲により、一度はカレンの事が色々と有耶無耶になってしまったのだが、あれから熟考を重ねた結果、どうすれば俺がゼロとバレた時に、「騙された」と思われな

いか一つの答に至った。

 まず、ルルーシュ・ランペルージとしての俺の印象を良くするのは必須。
その上で、バレる前に自らでゼロとしての目的が『日本解放』などに留まらない事と、日本人でない事を告白してしまう事にしたのだ。
実は元皇子ですとまではこの時点では流石に明かせなくとも、ある程度打ち明けた上で彼女が道を選んで着いてきてくれるのなら、「裏切られた」とは思うまい。

 故に数日前、扇グループだけを呼び出し、打ち明けた。
カレンだけに、と人選を絞らなかったのは、なんだかんだと扇達の判断にカレンが左右されやすい事と、ここで扇達を取り込む事が出来れば後の憂いが軽くなると判断した為

だ。
C.C.が「今の好かれ具合なら大丈夫だろ」なんて薦めてきた事もある。

 とは言っても、事前に人種を問わずに入団を認める。と指示する事で反応を窺わせて貰いはした。
そこで悪感情をわかりやすく表に出したなら、打ち明ける事は危険だと判別する為の予防線―――だったのだが、扇達は誰一人不満を口にする事はなく。
ならば、と。予定した通りに話して見ても、カレンも、扇達も、ゼロに着いて行くと言う意見を変えなかった。

 意外、と言っては彼らの寄せてくれる信頼に失礼だろうが、前回が前回だっただけに驚いたのは無理なからぬ事だろう。
まぁ、そのお陰でカレンを忠犬モードなままに騎士とする第一条件はクリア。
入団に日本人である事が前提ではなくなったからこそ、より優秀な人材を集めやすくなりもした。
これでこれからの戦力も充実が期待できるだろう。

 今も開いたノートPCの画面には様々な顔ぶれが軒を連ねて―――む、ディートハルト、今回も来たか。
ふん、優秀な事は疑いない。採用しようじゃないか。
まぁ、不審な気配を僅かにでも感じたら、お前の死に際の願い通り、今回はギアスをかけてやるさ。って、お、美人だな、この女。
審査には引っ掛かっていない。ブリタニア人か。むむ、こちらの女も中々に………。

 ははは、魔王ゼロだのと呼ばれた時は民衆の心離れを危惧したが、なんだ、対外的に『正義の味方』である事に変わりないじゃないか。
黒の騎士団の人気は相変わらずだ。
ゼロが客寄せパンダ的な扱いなのは少し遺憾だが、人々の関心が高いのは喜ぶべき事だろう。

 ―――「順調なようだな?」って、C.C.か。
あぁ、順調だよ。日本人に限らずとも、人間ってのはスタンピードに弱いらしい。
少し煽ってやれば、この通り『正義の味方』大好きなヤツ等が集まってくる。っと、またも美人だ。国籍は…中華か。採用!

 ククク、良い感じだ。
このままならルキアーノのヴァルキュリエ隊みたいに、零番隊を優秀な美人のみで構成すると言う夢も簡単に叶う!
おっと、嬉し過ぎる未来予想図につい涎が!って、ん?「そ、それは正義の味方の顔じゃないな」だって?
フフフ、そうかい?



 直後、C.C.と同じくプールから上がってきていたらしいシャーリーに目論見が露見。怒られた。
頬が痛い。




 ナリタ作戦準備期間《黒の騎士団etc編》3ページ目

 本日はナナリーを連れてナリタにハイキング。
先日まで、図らずもナナリーに寂しい思いをさせてしまった事に対するささやかなお返しと、ゲフィオンディスターバーなどの罠を設置する為の地理的な下見、その両方を兼

ねて訪れた訳だ。

 メンバーは、俺、ナナリー、C.C.、シャーリー、咲世子、千草、アーサーとそれなりの人数である。
本当なら、C.C.と千草はあまり人目に晒すべきではないのだが、来るなと言って聞くC.C.ではないし、そうなると一人残す事になる千草にナナリーが悲しむ事は目に

見えていた。
それ故、仕方なくの全員行動。
もちろん、C.C.と千草には変装はさせているものの、発見された時の為に警戒はしておく。

 が、気にし過ぎて、ナナリーがそれを察してしまっては意味がない。
こんな時に頼りになる咲世子もいてくれる事だし、そこそこに気を抜いてナナリーを愛でるとしよう。

 ハイキングとは言ったが、目と足の不自由なナナリーでは楽しみ方にも制限がある。
体だって丈夫とは言えないのだし、様々な兼ね合いの結果だとしても、連れて来る場所を間違えたか?とも思った。

 けれど、ナナリー曰く「お兄様や皆さんとお出掛けできたのに不満なんてありません」との事で、事実それを示す様に終始にこにこと天使の笑みを浮かべてくれている。
そのナナリーに、俺の頭から、罠設置の下見なんて予定は早々に消し飛んだのは言うまでもないだろう。

 うん、下見は明日一人で来よう!と決め直す。
己が全身全霊でナナリーを愛でずして何がルルーシュ・ヴィ・ブリタニアか!?と。

 そんな訳だから、ナナリーの目を盗んで青姦に持ち込もうとする魔女なんかは断固拒否。
場所的なものを利用して「なぁ、ルルーシュ。雪が何故白いのか知っているか?」とか雰囲気出してきても、全力で拒否。



 当然、翌日もしっかりと下見に行った。
疲れはしたが、ハイキングの帰り道ではしゃぎ疲れて眠ってしまったナナリーの寝顔を思い返すだけで、それも吹き飛ぶ。
やはり、俺の選択は間違いじゃなかった。




 ナリタ作戦準備期間《黒の騎士団etc編》4ページ目

 下見の結果、ナリタ連山には罠を設置するに適した箇所がふんだんに見受けられた。
多く生い茂る草木や、起伏に富んだ岩場、降り積もった雪と、豊富な自然そのものが設置する罠を巧妙に隠しきってくれるだろう。

 これなら考えていた以上に義姉上の軍を混乱に陥れる事が出来そうだ―――と、人が気分良く学園の教室にてナリタでの作戦を見直していたと言うのに、理事長からの呼び

出しがそれを台無しにしてくれた。


 ルーベンが俺を呼び出した用件は、新ゼロスーツ運用試験時に仮想敵KMFとして使用したガニメデの無断借用に対する注意。
「何に使ったかは問いませんが、せめて一言断りを…」と語るルーベンに、俺も尤もな意見だと謝罪した。

 これだけで済んだなら、気分を害する理由はなかったのだが、問題は「それはさておき本題ですが」、と続けられた次の話の内容。
それは、何でうちの孫娘に手を出さねぇの?と言う叱責で…。

 聞くに、ルーベンとしては殿下にもGOサインも出したんだし、可愛い孫娘の秘めたる恋も間も無く成就する筈!と思い、今か今かと吉報を待ち望んでいたらしい。
ところが、複数の女を囲ってたりするし、中々のやり手だと思われたその殿下は、待てど暮らせどミレイに手を出す様子はなく、それどころか別の女を一人メイドとして新た

に囲いだす始末。
そうこうしている内に、ミレイの両親が伯爵家との縁談を進めようと動きだして………。

 なんなの殿下?あれだけ女囲ってるのに、なんでミレイは放置なの?なにミレイにだけ純情ぶってんの?もしかして純愛なの?バカなの?死ぬの?
このままじゃうちの孫娘は伯爵家に嫁にいく事になっちゃうよ?いいの?
ってか、アンタほんとにあのブリタニア皇帝の息子?

 ―――なんて旨の話を延々と………いや、今でも俺を敬ってくれているルーベンであるから、口調はもっと丁寧ではあったのだが、不甲斐ない俺に喝を入れる語り口だった

事には違いない。
要は、早いトコ決めちゃって下さい!と言う事だ。

 俺としても、俺は常に純愛だ!とか、あのクソ親父なんかと一緒にするな!!とか言い返したい事は山程あった。
が、未だミレイに手を出していないのも確かな事実。
沈黙を通し粛々とルーベンのお叱りを受ける他に術はない。

 ただ、敢えて言わせて貰うとすれば、「出さない」のではなく「出せない」のだと言う事だけは理解して欲しかった。
シャーリーの目を掻い潜りミレイにアタックするのがどれ程の困難か、ルーベンは知らない。
C.C.達に協力を仰ごうにも、「自分の女一人御せずに、何が魔王だ」とか鼻で笑われるだけだし、事学園での恋愛戦線において俺は孤立無援なのだ。
それでも頑張ってチャンスを狙っている内に、ナリタでの作戦準備が大詰めを迎え、時間的な余裕すら失った。

 あぁ、ルーベンに言われるまでもない。
俺だってあのおっぱいを揉みしだきたいさ!
けれども、俺のゼロとしての宿命が今はそれを許さない。

 本末転倒も良いところだ。
ナナリーやミレイ達と幸せな世界でアハハウフフする為の反逆。その為のゼロ。
だと言うのに、そのゼロとしての活動が、ミレイを口説く機会すら圧迫しているこの皮肉。


 そうして、こみあげてきた歯痒さを表に出さぬ様に、ルーベンには「善処します」とだけ告げ、足早に理事長室を出たのがつい先刻。
クソ、引き篭ったり、ゼロとしての活動にばかり気を取られていたツケがここで回ってきた様だ。

 ルーベンが言っていた伯爵とは、間違いなくロイド。猶予は少ない。
ヤツとの見合いの前に、なんとしてもミレイと恋仲にならなくては、あのおっぱいを揉めなくn、じゃなくて、彼女はまた望まぬ婚約に苦しむ事になってしまうだろう。
もうシャーリーの怒りを恐れている場合ではない。
ナリタでの作戦が完了した直後、ミレイを我が恋人にして見せる!

 いや、違うな。
ミレイだけじゃない。
ナリタが成功に終われば、コーネリア義姉上、あわ良くばユフィすらも我が手中。
カレンとだって色々したい。

 そうだ、俺はヤる!ヤッてみせるッ!
もう一度思い出せ!やり直す前のCの世界で、俺は何を神に祈った!?やり直したのは何の為だ!?
愛に満ち溢れた性活の為だろう!

 思うに最近の俺は消極的に過ぎた。
ナリタと言う節目が過ぎれば、一応の区切り。
ここで一気に攻勢に出て、沢山の愛を育んでやろうじゃないか!

 その為にも、必ずや!必ずや、ナリタを勝利で飾ってみせる!!ふ、フは、フハハハハッ!!



 ナリタ作戦準備期間《黒の騎士団etc編》5ページ目

 想う女達への愛欲を、ナリタへの意欲へと変えて俺は働いた。
俺だけじゃない。C.C.や咲世子。ゼロの下一つに纏まった騎士団員達も、戦闘訓練、KMF操縦の習熟に熱意を以て取り組んだ。
今作戦では協力関係を結んだ日本解放戦線からも、罠の設置を初めとした全ての準備は整ったとの連絡も入った。

 俺にとって最大のイレギュラーであるユフィによって、コーネリア達の動きが変わる事だけが最後までの懸念事項だったが、政庁に密偵として忍びこんだ咲世子の報告によ

れば、どうやらそれもない。
恐らく、義姉上はユフィが何か動こうとしても取り合わなかったのだろう。
つまり前回と同じく、コーネリア軍はナリタ連山への包囲作戦を展開する事は確実。
入団を希望するディートハルトから挙がってきた報告からも、裏は取れた。

 負傷したギルフォードの穴を埋める為に招聘されると警戒していたグラストンナイツも本国待機のままだ。
推測に違わず、日本解放戦線など簡単に勝利できる相手だと、慢心にも似た考えを義姉上は持っている為だろう。
サイタマで不覚をとった純血派の存在も、今回は最初から敵戦力として換算済み。
カレンに紅蓮のキーも渡すと言う、重要なフラグも消化した。

 となれば、此方側にもはや何一つ負ける要素はなく。
作戦決行までに残すは、日本解放戦線片瀬との最終調整の為の談合のみ。

 今や日本の一大勢力のトップ同士の作戦会議。
万全を期して臨むとしよう!




 ナリタ作戦準備期間《黒の騎士団etc編》6ページ目

 なんて意気揚々と、俺としては初めての片瀬との談合に赴いたと言うのに、………駄目だ、コイツ。
一度では気が済まないので、もう一度言う。
駄目だ、コイツ。

 何が駄目って、仮にも組織の指揮官であるにも関わらず、その自覚が全く見受けられない。
口を開けば、「藤堂が」、「藤堂に」、「藤堂なら」、と全て人任せ、と言うか藤堂任せ。
藤堂藤堂藤堂とーどー、実に五月蝿い。
なら、もう藤堂が指揮官で良いだろうに…。

 今この場にいないその藤堂にしても、何故こんなのを主君と仰ぐのか理解が出来ない。
それが軍人と言えばそれまでだが、こんなのの下で日本解放が果たせると本気で考えているのだとしたら、藤堂の評価の再考も已む無しだ。

 大体、この片瀬と言う男。自分で語る頭もなく、何故いまの地位にいるのだ?
その癖、「日本は、我々こそが!」と固執する想いだけは病的なまでに強いと来ては、失望を禁じ得ない。
愛国者と言えば聞こえは良いが、いざと言う時にその想いの強さで暴走されては、手を組むこちらとしては堪まったものではないのだから。

 直に会ってわかった事で、片瀬はダメと言う以外にもう一つ。
コーネリア軍と言う共通の敵がいる現状こそ一先ずの協力関係を保ててはいるが、片瀬は危機を切り抜けた瞬間に、日本人を至上とはしない黒の騎士団をも自分たちの敵と見

なす。
そこには、ギアスを使い草壁の副官にさせた「黒の騎士団は我々と敵するものではない」と言う微かな印象操作などなんら意味を為さない。


 あぁ、ならばこそ。
片瀬、こうして直にお前に会う事の出来たこの機会に感謝を。
我が目的の為にも、下らぬ小競り合いに手を煩わせている暇はないんだ。


 だからお前は、『我に従え!』


 ―――これで、全ての仕込みは済んだ。
後は、作戦当日を待つだけだ。




 ナリタ作戦当日1ページ目

 今回、逆落としは使わない。
シャーリーの父はもう殺せないし、彼女の父に限らず人的被害は最少に抑えるべきだ。
それにジョセフ氏がシャーリーの呼び掛けに応えてここに来ていない保証はない。
あまりに執拗にシャーリーがジョセフ氏を止めれば、ナリタ連山での戦闘を予期していたのかとシャーリーが疑われるだろうと控えさせた。

 つまり、逆落としは、使わないと同時に、使えない。
それでも、これならばいけるだろうと言う自信が俺にはある。


 前回の記憶と違わぬ日時にコーネリア軍による、日本解放戦線壊滅作戦は始まった。
ナリタ連山を包囲するのは、物量、練度共に圧倒的なブリタニアの精鋭達。
しかし、対する黒の騎士団員に怯えはない。陳腐な演説ではあったが、作戦前の鼓舞は効いている様だ。

 奇跡は安売りなどしていない。
前回のこの日この時、玉城が俺に向けて放った言葉から始めた演説。

 確かにその通りだ。
それでも勝つ為には奇跡が必要なら、それを我々の手で起こして見せよう。
勝ちたければ、これからも勝ち続けたければ、ここで勝利を掴んでみせろ。
この戦いを生き残り、本当の戦士となってブリタニアを打倒するその日の為に。

 そう言い聞かせれば、返ってきたのは咆哮だった。
勝ってみせると、誰しもが決死の覚悟を顔に浮かべていた。
騎士団の士気は高い。

 表向き対等なフリをする様にと命令したが、片瀬も既にギアスの支配下だ。
先立って騎士団が流したナリタ連山襲撃の情報により、藤堂達も初めから無頼・改で作戦に備えている。
前回の様に互いの意図を察した共闘ではなく、指示に従う駒として使えるのだから、解放戦線を、そして藤堂と四聖剣を指揮下に置けるのは大きい。

 前回身を隠した洞穴に待機させた強襲殲滅型ゼロ咲世子他、幾つかもしもの為の策も用意した。

 一通りの戦力、戦術を見直して再び思う。
いけるだろう、これならば、と


 ブリタニアの侵攻が始まる。
密かに複座へと改修した無頼・ゼロ専用機の中、操縦は同乗しているC.C.に任せ相手の布陣を確認。

 正面は、右からコーネリア、中央にダールトンを挟んで、左アレックス。
ふむ、出撃できないギルフォードに代わり、ダールトンがコーネリアの護衛として付き従うかとも考えたが、どうやら偏りなく将兵を配置する事を優先したらしい。

 クク、理に適った布陣とは思うが、義姉上の護りが薄いのはこちらにとっても好都合だ。
その判断悔やませて差し上げよう。

 さぁ、義姉上。再び始めましょうか。
姉弟での戦いを!




 ナリタ作戦当日2ページ目

 用いる基本戦術は単純。
規模こそ違えど、サイタマの焼き増しだ。

 こちらのKMFを囮とし、そこに向かってきた敵KMFを各所に潜ませたゲフィオンディスターバーで停止させ破壊。
KMFの数でどれだけ劣っていようとも、動けぬ兵器なら歩兵であっても破壊できる。
これで数的な有利を削ぐ事に成功すれば、如何に精強なコーネリアの軍も、初めから襲撃に備え士気も高い騎士団と解放戦線相手に戦力的な拮抗を見せざるを得まい。

 ランスロットの関係していなかったサイタマでゲフィオンディスターバーを一度使った程度では、ロイドがディスターバー対策を施せる訳もない。
それどころか、知りもしていないかも知れない、と言う読みは見事当たった様だ。
面白い程に敵はゲフィオンディスターバーの餌食となっている。

 この隙を突く形で、予め指示していた通りに、藤堂と四聖剣率いる部隊が、G―1ベースへの進軍を開始。
途中で既に勢いを失していたアレックス隊を撃破して、G―1ベースに接近している。

 片瀬を介し藤堂達に伝えたのは、そこにいるだろうユフィの確保だ。
政略に利用する為、決して傷付けぬ様にとの注釈を加えたこの命令だが、真の目的は別にある。
例えユフィを確保出来なくとも、コーネリアの動揺を誘えるであろう事が一つ。
そして、最大の邪魔者であるランスロットの足止めが一つ。

 ユフィがG―1に乗っているならば、スザクは必ずランスロットで護ろうと出撃するだろう。
だが、如何にスザクと言えど、藤堂と四聖剣相手の防衛戦。こちらに手を回す余裕は流石にあるまい。

 ダールトン隊や他の部隊も、日本解放戦線全戦力と設置したゲフィオンディスターバーに任せてある。
もし抜かれたとしても、奴等が目指す解放戦線の本拠地は初めから裳抜けの殻、痛くも痒くもない。

 条件は整った。
この間に紅蓮弐式を擁する黒の騎士団本隊にて、コーネリアにチェックをかける!



 ククク、順調だ。
桐原公達の情報網にすら掛からなかったコーネリア軍の今回の作戦を察知した事で高まっている京都六家からの評価も、これに勝てば更に鰻登り。
ゲフィオンディスターバーを使った事が知れれば、ラクシャータの関心も引けるだろう。
ナナリーの足に治療が見込めるとすれば、それはKMF開発だけでなく、医療サイバネティクスの権威でもあるラクシャータをおいて他にいない。

 あぁ、待っていてくれナナリー。
お前には今度こそ絶対に、優しい世界と、何不自由ない肉体を………!

 その為にm『ゼロォオーーーッ!!』、ッ!来てくれたか、ジェレミア!
閑職に回されていないだけあって前回より遭遇が早い。なんて良いタイミングだ!

 そう、ナナリーの足がラクシャータの医療サイバネティクス頼りなら、目の方は、ギアスキャンセラー保持者(予定)のジェレミアしかいない!

 ナナリーの目の為に、本当に悪いとは思うが、お前にはもう一度キャンセラー保持者になって貰う!
そう言う事でカレン、程々にチンしてやってくれ!!




 ナリタ作戦当日3ページ目

 唐突ではあるが、ここで誰にでも出来るギアスキャンセラー保持者の造り方を簡単に紹介しよう。

 まず、純血派のジェレミア辺境伯を一人用意します。
その彼をオレンジ呼ばわりした後に、輻射波動で傷みすぎない様注意してチン。
その後暫く寝かせた後で、一皮剥けて帰ってきたオレンジを、今度は重石(ガウェイン)と共に海底に叩き込みましょう。
それから運を天に任せ、更に一年程寝かせる事により、あら不思議!
ギアスキャンセラー保持者、忠義の騎士ジェレミア・ゴットバルトが出来上がります。

 …なんて、同乗した魔女が寝言並べているが、こう聞くと本当に悲惨だなアイツ。
最後、よくあそこまで仕えてくれたものだ。
今も、『ヴィレッタの仇、ここでとらせて貰う!』とか部下思いな叫びが聞こえるし、本当に良いヤツだ。
せめてヴィレッタは生きてます。と教えてやりたくなってしまう。

 そんなナイスガイを、これから冥府魔道に叩き落さねばならないと思うと、いくら俺でも良心が疼く。
しかも今回はわかっていて同じ目に遇わせようと言うのだから、尚非道い。

 数分後。
カレンが熱し過ぎないかヒヤヒヤものだったが、上手い具合に脱出装置が作動し、空高く消えて行くジェレミアを見送りながら、心からの謝罪をしておく。
ジェレミア、お前の先行きに幸多き事を………。

 などと気を取られていたら、いつの間にか他の純血派も壊滅しかけている。
これは良い意味での誤算だった。
今回のカレンは恐ろしく強い。
高い士気の所為もあるだろうが、確実にこの時点での操縦技術が前回よりも上がっている模様。
「ゼロは私が守る!」とか、ナリタで聞けるとは思わなかった。

 C.C.に一日ピザ食い放題と言う条件で操縦させているから、この無頼・ゼロ専用機もそこそこにやれる筈なのに、活躍の場が僅かにもない。
これもまた、想いの力か。
その鬼気迫る戦い方を呆然と見ている内に、純血派は早くも一機を残すのみとなっている。

 まぁ、ジェレミアさえ無事(?)なら、他はどうでも―――って、待てよ。純血派にはもう一人死なせてはマズイ男がいなかったか?
あー確かあれは…『オレンジを倒したからといって、調子に乗るなよイレブンがッ!』って、この声、そうだ、キューエル!

 カレン、待て!輻射波動を停めろ!
ほら、キューエルも『クソ!なぜ脱出装置が作動しない?!』とか困ってるじゃないか!

 待て!いや、頼むから待ってくれ!
ソイツを死なせてしまうと、妹のマリーカが俺を………、とか言っている間に盛大に爆発したぁッ!?

 響く轟音。
コックピット部分が飛んでいった形跡なし。

 結論。
キューエル・ソレイシィ。ナリタにて戦死。


 ………き、キュゥーエルゥーーーッッ!!




 ナリタ作戦当日4ページ目

 なんて事だなんて事だなんて事だ!
折角順調に作戦が推移していたのに、みすみすキューエルを死なせてしまうとは!
くぅ、これで確実にマリーカに恨まれ、マリーカの姉貴分リーライナまでが、敵に回る事が確定してしまった!

 カレン、『ゼロ、やりました!』とか、褒めてオーラを醸し出されても、今はそんな気分になれないんだ。
君に非がないのはわかっているが、忠犬なら「待て」位は出来て欲しかった。

 あぁ、C.C.、「ヘコんでないで、コーネリアを確保に向かうべきじゃないか?」なんて事は、お前に言われずともわかっている。
ここで落ち込んで、作戦を台無しには出来ない事くらい。
さっさと作戦を終了させてから悩むとするさ。

 騎士団はこれよりコーネリアの確保に向かう!
戦線の硬直が崩れない内に、迅速を以て敵の指揮官を捕らえるのだ!
騎士団本隊、私に続けッ!


 ハァ、しかし、今後を思うととんでもなく気が重い。
キューエル、何故死んだ。




 ナリタ作戦当日5ページ目

 何もかも上手くいくかに思えた今作戦。
俺にとっての凶事はキューエルの死だけでは済まなかったらしい。

 最初にやられたのは玉城。
コーネリアに向けて進軍中、横からの砲撃で撃破され脱出した。
『クッソォー!』なんて叫びながら飛んでいったコックピットを見て、もうアイツKMF搭乗禁止にしようか悩んでいる内に、南、杉山、吉田、と次々にKMFが破壊されて

行く。
『そんな!?』とか『ゼロ、すまない!』との言葉を耳にしながら、流石に只事ではないと気付いた時には、紅蓮が一体のKMFと抗戦していた。

 現れた敵はなんと単騎のグロースター。
それが我が軍最強の紅蓮と互角にやり合うと言う冗談の様な状況で、驚きはそれだけに留まらない。

 俺の更なる驚愕を誘ったのは、そのグロースターの色だった。
深い緑と金色の色彩。
それは、知る人ぞ知るであろう皇帝護衛部隊のカラーリング。
そして、記憶が確かならその纏め役は、ナイト・オブ・トゥエルブ!


 そう認識した瞬間、ゾクリとした怖気と共にCの世界でのある会話が再生される。



 『ねぇ、ルルーシュ君。ユーフェミア様やシャーリーって子と、何時も一緒にいるわね?随分と仲も好いみたい』

 『そ、そうか?』

 『そうよ。………浮気とか、してないわよね?』

 『ッ!?あ、当たり前じゃないか!俺はモニカだけさ』

 『そう。良かった』

 『………』

 『………』

 『………ち、ちなみに』

 『え?』

 『いや、あくまで例え話!本気で浮気してるとかじゃなく例え話なんだが、…俺が浮気してたら、どうするんだ?』

 『………そうね。一度死んだ後の世界でこんな事言うのも可笑しいかもしれないけれど、もし浮気なんてされてたら―――』

 『さ、されてたら?』

 『―――あなたを殺して、私も死ぬわ』



 冗談めかして喋ってはいたが、あの時のモニカの目が笑っていなかったのを、俺は忘れない。忘れられない。
そうだ。だから俺は誓ったんだ。
モニカにだけは、何があろうとも他の恋人達との関係をバラしてはならないと!

 そのモニカが目の前にいる。
スザクには機体の性能差もあって瞬殺されていたが、流石はラウンズ。
経験不足と言えど、絶好調の筈のカレン相手に、劣る機体で一歩も退いていない。

 クソッ!そう言えば作戦直前の学園で、また顔を腫らしていたスザクに原因を訊いた時、確かアイツはこう言っていなかったか?
「うん、なんかブリタニアの凄い位の高い騎士さんが昨日本国からお忍びで来てね?その人女性なんだけど、会った瞬間に殴られちゃって、僕何かしたのかな?ってホント参

っちゃったよ」と。

 それがモニカだったならスザクの顔の傷も頷けると同時、彼女が前の記憶を持っている事にも確信が持てる。
何せモニカにとってスザクは、前回自分を殺した相手だ。彼女でなくとも殴るだろう、そんなの。
そもそも、前回には有り得ないこの事態そのものが、明らかに彼女がワイアードである事の証。

 マズイ、マズイ、マズイ!
ブリタニア側のユフィ以外のワイアードがこうも早く。
大体、モニカの目的はなんだ!?

 恋人な俺に逢いに来た?
わざわざ戦場に?有り得ない。

 では、ゼロである俺を阻止しにきた?
それならば、まだ良い。

 最悪なのは、どうしてか女関係がバレている場合だ。
モニカは絶対、殺る気満々に決まっている。

 いやいや、しかしそれでも俺もやり直してるなんて、モニカは知らない筈なんだから誤魔化し様は、ある、のか?
でも、凄い殺気感じるし。

 ………よし、一先ずは逃げよう。逃げるべきだ。
これから先の展開を考慮してフロートを封印したのが少し悔やまれるな。
とにかく、C.C.。カレンが戦ってくれている間に、最大戦速でこの場をはn『待ちなさい!る…ゼロッ!』って、おぃ今モニカのヤツ「る」とか明らかに俺の名前言い掛

けたぞ!?

 えぇい、カレンの前で名前呼ばれたら計画が全てご破算になってしまう!
かと言って、この場に残っても殺されそうだし、これでは八方塞がりだ!

 逃げる事も、進む事も出来ないとは、―――く!ブリタニアン性術覚えたてで調子に乗りまくってたあの頃の大馬鹿者な俺を殺してやりたい!
なんて危険な女に手を出してしまったんだ!!
このままでは、成功まで後一歩の作戦も瓦解してしまうじゃないか!


 どうすれば良い?どうすればッ!?






 色欲のルルーシュ Return09『モニカ 来る』おわり







 あとがき

 前回、前より遅くならないぞ、とかどの口でほざいたのか。
更に間を空けてすみません。どうも鈴木です。

 なんか、最近自宅のPCがネットに繋がらないんで今回は初のネットカフェから更新です。
話自体はちょい前から出来てたんで、休日を利用して漸く投稿。
これ、店員さんに書込み内容すぐにはバレナイヨネ?とかビビりつつの投稿。
ともかく、待って下さっていた方いらっしゃいましたら、少しでも楽しんで貰えれば幸いです。

 で、今回。
多々ネタに走り過ぎました。
悪夢ゼロさんに少しでも近付く為にどうしたら良いか無駄に考えてのゼロスーツだったり。
あまりどんなキャラか判明してないと思われるモニカさんの好き勝手捏造だったり。
もう自分でもどこに向かってるのかわからなくなって来てます。
タイトルも当初『カレン 飼う』だったのに某マフィア漫画みたいなのに変わってるし。

 文章の方も、長くなるにつれ文章力や語彙量のなさが明るみに出ちゃいました。
何回同じ言い回し使えば気が済むのか。
内容の方も含めて、これは無ぇだろ?みたいなのあったらご指摘下さい。救われます。

 で、いつもの感想下さった方々への御礼を。
本当にありがとうございます。
執筆ペース落ちて来てますが、これからもよろしくお願い致します。

 「玉城」「玉金」のご指摘について。
誤字ではありません。
C.C.がふざけて記したものを、天然の咲世子さんが愛称かなんかと思い込み呼んでいる、って感じで一つ。
わかり難い書き方をしてしまい申し訳ないです。

 そんなところで、次回はナリタ決着と、Cの世界でのモニカとの経緯云々を。
次こそは、そこまで遅くなりません。きっと。
何故ならもう出来掛けているから!
そして未来日記のSSも投稿するかも知れません。
その時はどうか御贔屓に。

 またも長くあとがきましたが、今回はこの辺で。
サブタイトルの伏字は次回投稿時に直します。
では、また。








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