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No.38600の一覧
[0] 【異世界転生・TS・チート】~詰んでる転生記~ 南の島でこの先生きのこれるか【異種族・恋愛・逆ハーレム】[峯田太郎](2018/08/01 12:43)
[1] 1[峯田太郎](2018/08/01 12:43)
[3] 2[峯田太郎](2018/08/01 12:44)
[4] 3[峯田太郎](2018/08/01 12:44)
[5] 4[峯田太郎](2018/08/01 12:45)
[6] 5[峯田太郎](2018/08/01 12:45)
[7] 6[峯田太郎](2018/08/03 12:45)
[8] 7[峯田太郎](2018/08/01 12:47)
[9] 8[峯田太郎](2018/08/01 12:47)
[10] 9[峯田太郎](2018/08/01 12:48)
[11] 10[峯田太郎](2018/08/03 12:46)
[12] 11[峯田太郎](2018/08/01 12:49)
[13] 12[峯田太郎](2018/08/01 12:51)
[14] 構想ノートの切れ端[峯田太郎](2013/10/13 13:59)
[15] 13[峯田太郎](2016/07/24 11:54)
[16] 14[峯田太郎](2016/07/24 11:54)
[17] 15[峯田太郎](2016/07/24 11:55)
[18] 16[峯田太郎](2013/10/28 13:51)
[19] 17[峯田太郎](2013/11/08 17:58)
[20] 18[峯田太郎](2014/05/01 11:36)
[21] 19[峯田太郎](2014/10/03 12:15)
[22] 20[峯田太郎](2014/04/15 15:52)
[23] 21[峯田太郎](2014/12/18 13:27)
[24] 22[峯田太郎](2016/07/24 11:55)
[25] 23[峯田太郎](2016/07/24 11:55)
[26] 24[峯田太郎](2016/07/24 11:56)
[27] 25[峯田太郎](2016/07/24 11:56)
[28] 26[峯田太郎](2016/07/24 11:57)
[29] 27[峯田太郎](2014/11/03 10:52)
[30] 28[峯田太郎](2016/08/03 12:19)
[31] 29[峯田太郎](2014/03/26 12:36)
[32] 30[峯田太郎](2014/02/16 12:26)
[33] 31[峯田太郎](2014/11/03 10:52)
[34] 32[峯田太郎](2016/08/01 14:10)
[35] 33[峯田太郎](2014/04/20 11:22)
[36] 34[峯田太郎](2016/07/22 12:10)
[37] 35[峯田太郎](2014/04/20 11:23)
[38] 36[峯田太郎](2016/07/24 11:57)
[39] 37[峯田太郎](2014/12/18 13:28)
[40] 構想ノートの切れ端 その2[峯田太郎](2014/04/18 14:43)
[41] 37.5[峯田太郎](2014/05/04 12:19)
[42] 38[峯田太郎](2016/01/14 11:58)
[43] 39[峯田太郎](2016/07/15 12:13)
[44] 40[峯田太郎](2016/07/22 12:11)
[45] 41[峯田太郎](2014/10/14 12:00)
[47] 42[峯田太郎](2014/12/18 13:28)
[48] 43[峯田太郎](2014/12/18 13:29)
[49] 43.5[峯田太郎](2015/07/15 15:30)
[50] 44[峯田太郎](2015/07/17 16:25)
[51] 45[峯田太郎](2016/01/25 12:41)
[52] 46[峯田太郎](2016/07/24 11:57)
[53] 47[峯田太郎](2016/01/15 12:11)
[54] 48[峯田太郎](2016/05/01 12:59)
[55] 49[峯田太郎](2016/01/20 14:16)
[56] 50[峯田太郎](2016/05/01 12:59)
[57] 51[峯田太郎](2016/04/22 16:45)
[58] 52[峯田太郎](2016/04/22 16:46)
[59] 53[峯田太郎](2016/05/01 13:00)
[60] 54[峯田太郎](2016/07/24 11:58)
[61] 55[峯田太郎](2016/08/01 14:11)
[62] 56[峯田太郎](2016/07/26 12:00)
[63] 57[峯田太郎](2016/07/26 12:01)
[64] 58[峯田太郎](2016/07/24 12:17)
[65] 59[峯田太郎](2016/07/28 12:37)
[66] 60[峯田太郎](2017/06/03 11:21)
[67] 61[峯田太郎](2017/06/03 11:22)
[68] 62[峯田太郎](2016/08/01 14:12)
[69] 63[峯田太郎](2016/08/03 12:20)
[70] 64[峯田太郎](2017/06/03 11:20)
[71] 65[峯田太郎](2017/06/03 11:20)
[72] 66[峯田太郎](2018/06/01 11:56)
[73] 67[峯田太郎](2018/06/01 11:56)
[74] 68[峯田太郎](2018/08/01 12:52)
[75] 69[峯田太郎](2018/08/01 12:52)
[76] 構想ノートの切れ端 その3[峯田太郎](2021/06/14 12:07)
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[38600] 58
Name: 峯田太郎◆cbba1d43 ID:59e4fefc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/07/24 12:17



 ☆108日め5、ひとはわかりあえることもある☆



現在残してある信仰呪文は1レベルが3回分と2レベルが1回分。
潤沢とまではいきませんがソーニャさんへ「意思の疎通」を使うぐらいの余裕はある。
私たちはオーク妻でして、人類文明の敵に属しているからには町中での会話にも不自由します。
秘密にできる意思伝達手段は必須ですね。


「ソーニャさん、みんなは?」
「ハラキズがまだ見つかってないわ。あとは全員無事よ、怪我人は幾らか出たけど」

あの日、転移してみたら私とハラキズがいなくなっていたので大騒ぎになったそうです。
探知系の呪文やアイテムを使っても何故か位置がはっきりせず、大母様が受けた神託で大まかな方向と距離そして生存してい
る事だけは解ったのが翌日になってから。

夫たちや巣のみんなが順繰りにオーク島と東方世界を転移しては地を駆け、転移しては空を飛び、転移しては水に潜って懸命
に探し続けてくれているときに私は浮気して人間ち○こ咥えこんでひいひい言っていた訳で。
駄目嫁にも程がある。


「ソーニャさん、私‥‥」
「何はともあれレイが無事で良かった。「願いの指輪(ウイッシュリング)」を2つ潰した甲斐があったわね」

いくらソーニャさんでもオーク達を連れて東方世界の隠れ家まで転移してから休まず移動と情報収集を行い、オーク島と電報
の送りあいみたいな通信を続け、新たに見つけたり改めて記憶した転移基準点に着いたらオーク島へ再転移してミッシェル山
大神殿が集めてコーネリアが分析した神託情報を検討して候補地を絞り込み、また東方世界へ転移して捜索を再開するも探知
系呪文に引っかかったハラキズの所持品を探し回ってようやく見つけたと思ったら、河に流されて滝壺に沈んでいた腰ミノに
差し込まれたままの魔法の短剣だった‥‥なんてことをやっていればMPが尽きて当然です。

超高級アイテムを、素早く効果の大きいMP快復手段として使い潰しながら探してくれていたのですよお師匠様は。
私とハラキズが消えてから、全くと言って良いぐらいソーニャさんは寝てないでしょう。
だから睡眠という普通の方法で回復できなかったのです。


あ、そうか。

思い出しました。願いの指輪(ウイッシュリング)ですよ、指輪のお陰で助かったのです。
落ちたときの衝撃かなにかで今まで忘れていましたが、私は墜落する寸前に願いの指輪を使ってました。

ソーニャさんが諸々のアイテムと一緒に渡してくれた願いの指輪を、ぎりぎりで出して使ったのです。
慌てていたので肝心の願いが「私たちの命が助かりますように」という簡潔なものだったので、指輪の精霊だかAIだかは
ハラキズと私とお腹の子の三人の命 だ け を助けて、消滅したのです。

ええ、墜落から命が救われることだけしか願いませんでしたからね。
一緒のところに落ちるとか、落ちて怪我しないとか、装備品がそのままだとか、気絶しないとか、落ちたところに野生動物や
モンスターが寄ってこないとかの要望は言ってませんでしたからね。

猿の手みたいな形で曲解されなかっただけマシだと思おう、うん。



「貰った指輪や色々なもので生き延びられました。ソーニャさんのお陰です」
「そう、よかった」

歳の離れた女学生のように、実際の見た目的には中高一貫校の新入生と最上級生より年齢差があるのですが‥‥手を繋いで通
りを歩きます。「意思の疎通」は視線や肌を合わせていた方が接続効率が良いのです。
もちろん普通に声を出しても会話していますが、大事なことはテレパシー的秘密回線で伝えあってます。レェ・ウォスと3人
の義息子たち(アンドレ、ブロディ、トンガリ)がヴァダの街から遠くない所に待機しているとか、ギュー・グェスとタレミミ
とコブハナの3人がビィーヤ盆地の北方面でハラキズの捜索を続けているとか、そんな事を。

うっかり町中でオーク語を喋ってしまい、オーク・ラヴァーだとバレてしまったら大事ですからねー。
ヒルデニア語が元になっている義息子たちの名前はともかく、夫たちの名を聞けば解る者にはそれがオーク語だと解ってしま
います。それだけで即、裏切り者との確信を抱く者は多くないでしょうが疑われる可能性が出てくる。


別れてからの事情を手早く説明します。

情報収集のために人里を目指した。
地元のオークたちと、そのお嫁さん候補になりそうな薬草つみの幼女と幼女の保護者をみつけた。
ヤクザ組織が嫁候補二人を攫ったので、潰して奪還した。‥‥三行で終わりましたね。

「よくやったわ」

ソーニャさんは、弟子がほぼ独力でヤクザを壊滅させたことを喜んでいます。
面倒ごと(トラブル)は冒険者の飯の種、ヤクザの生き残りや黒幕や同盟者が報復に来るとしてもお師匠様にとっては金銭と経
験値が向こうからやって来るだけなのです。

なるほどなー。

物理的にも心情的にもオーク勢力圏が本拠地で、人間社会は狩り場というか出張先みたいなものだからソーニャさんは面倒事
を厭わない。人類勢力圏での抗争などの面倒ごとに巻き込んだ結果、壊れて困るものがないのです。
実家とは冒険者になった時点で勘当の身ですし、堅気時代の友人知己も殆どが死ぬか孫や曾孫に代替わりしている。
人間社会にも大事なものはありますけど、傷つけられて本当に困るのは時々とって育てている弟子ぐらいです。

後援者とかお得意先とか信頼できる同業者とかは、まずは自分で自分を護ることができますしそうすべきなのです。
自分で自分を守れないなら冒険者などやってられません、商家や貴族でもそれは同じです。
東方世界は自主と自立と自尊を旨とする自力救済の世界観ですからね。おお、末法の世よ。 

ソーニャさんのこの無頓着ぶりが、彼女の本質を知らない人からみれば英雄らしい剛胆さ天衣無縫さに見えたり、または冷淡
で無慈悲な身勝手の権化に見えたりする訳ですね。
弟子から「一人でヤクザ者を60人ぐらい切り捨てました」と聞いて「えらいえらい」と頭を撫でかねない勢いで誉めている
のですから、人によってはドン引きでしょうねえ。

正義を為せば世間の半分が敵に回るとは言いますが、悪を為したとて世間の1割ぐらいは味方に付くものです。
現にスラムの住人でも、仁義をわきまえない新興ヤクザのやり口にうんざりしていた層はお師匠様に感謝や賛嘆や憧れの目を
向けています。なかには拝んでいるのもいたりするし。
実際、この後しばらくはスラムの空気も少しだけマシになるでしょう。リガの剣姫とその弟子の姿が、ビィーヤ盆地周辺から
消えてしばらく経つまでは。



私とお師匠様とサラ小母さんの三人で、裏門から市外へ出て廃墟に入ります。
マリアを無事保護した事と二人の家が血の海になっていることは既に話していますが、文句の一つも言わずに危険地帯へ付い
てくるあたり、ソーニャさんの見立てが正しいのかな?

いくら元冒険者で腕に憶えがあるとはいえ、寝間着の上にケープを羽織っただけで足元は上靴のまま得物はヤクザから巻き上
げた安物のロングソード一本のみ、という姿でモンスターが出没する廃墟へ連れ込まれてるにしては落ち着きすぎている。
あ、もちろん返り血を浴びた寝間着は着替えてますよ、今着ているのは小母さんの自前です。ケープと上靴は戦利品。


この近辺のオーク族、ダイコクたちとの逢瀬を過ごした場所の手前で無限袋から石像化したマリアを出して、石化解除の霊薬
を振りかけて元に戻す。
復活したマリアへ手短にお師匠様の紹介と状況説明をして、身支度の確認を済ませてからオーク達の狩り場へ向かいます。


「大丈夫だよマリア、心配ないから」

言われるままに薬を飲んだら、いきなり場所が変わっていて時間が飛んでいる上に知らない人がいて、どう考えても拙い場所
に保護者と一緒に向かっている‥‥という状況に戸惑っていた幼女でしたがサラさんに声を掛けられて、手を握られるといく
らか安心したようです。

手を握って瓦礫の隙間を歩く二人を、お師匠様と二人で護衛して進みます。
マリアには身支度の一つとして、ハラキズが落とした魔法の短剣を持たせてあります。
肩から紐で鞘ごと吊り下げてますが、戦闘力に全く期待していない彼女に武装させた理由は儀式のためです。


「グヒッ」
「グヒーッ」

狩り場の隅で待っていた二人のオーク族、色黒で比較的大柄なダイコクと明らかに小柄で素早そうなイダテンは、見知らぬ人
間雌二人にやや警戒していましたが私に続いてマリアが、そしてサラさんとソーニャさんも次々と武器を降ろしスカートと寝
間着の裾をまくり上げると落ち着きました。

下着の紐を解いて、エロスの期待に肉の内側から火照ってきた下腹部を見せつける四人の女達。
そしてオーク達も武器を置き、腰布をめくって股間をさらけ出します。

二人のち○こが、雌の匂いに反応してそそり立っていく。
片思いの男の前に立った小娘のように頬を染めているサラさんの腿を、潤んだ淫唇から漏れ出た愛液が伝い降りてます。
オーク達の無遠慮な視線を浴びた雌の穴が、久しぶりの雄を味わいたくてウズウズしている。


「ソーニャさんのいうとおりでしたね」
「前に言ったでしょ、レイ。オークの手先のおフェラ豚女は珍しくないの」

そういって、一目見たときからサラさんがオーク・ラヴァーだと解っていたお師匠様は優しく微笑みました。




オーク族と一口に言っても実態は様々でして、人里に近い地域の迷宮などで狩猟採集生活を営み偶に縄張りが接触した人間族
と互いに攻めたり攻められたりしているダイコクたちみたいな連中もいれば、ソーニャさんの弟子達のように人間の勢力圏か
ら少し離れた地域で部族社会を運営していて時折人里や交易路を襲って奴隷や財宝を奪っていく連中もいます。
人里から完全に離れた場所で狩猟採集や農耕を行い、偶に来る交易者から女の子や男の娘を買い入れて大事にしているオーク
島住人のような連中もいます。

ビィーヤ盆地から見て更に東にあった山岳地帯の小村、ルッニネツではオークは村人の家族として扱われていました。
オークたちは昼は眠って夜中に畑を耕し、樹を伐採し、水車を回して水を汲み上げ、村とその周辺を見張り、獣や余所者など
の外敵が攻めてきたら戦い、女達を寝屋で可愛がって孕ませるという働きをしていました。
つまり、普通の村でいう男衆の役割を果たしていたのです。

ルッニネツにも少人数ですが人間族の男がいまして、それらの男達は幼少期はオーク達のお稚児さんとして可愛がられ、成長
してからは男娼ならぬ男妾として両党使いのオーク達と仲睦まじく暮らしていたのです。
あれだ、エロゲで時々いる「ハーレム入りしてる男の娘」枠ですね。
外からの来訪者を誤魔化す偽装夫として、そして女達に人間の子を産ませるための種雄としても活躍していましたが。

前世でいえば両性愛者の男女複数ずつで家庭を作り、互いを共同の夫婦として暮らしているようなものかもしれません。
人間とオークの間にそんな関係が存在できるのかと言えば、ありえる場合もあります。
たとえば一定以上の実力を持つ人間の母が産んだオークとなら。


ルッニネツ村は、戦に敗れ離散したオーク族の巣から逃げ延びた人間妻ルッニが開きました。
文武両道に優れかつて人間社会で暮らしていた頃は、10年に一人の天才とか英雄候補とか謳われ讃えられていた彼女ですが
家庭環境故のいざこざから逃れるため、実戦で更に腕を磨くと理由を付けて冒険者になりました。
しかし候補の字が取れてからしばらく経った頃、オークの毒牙に掛かってしまったのです。

普通のオーク族長だと思って力圧しで挑んだ相手が、人間雌奴隷オーク妻だけど元は勇者な母親に鍛え上げられたオーク版勇
者であり、しかも混沌神の寵愛を受けて唾液の媚薬効果が通常の数十倍になっているという反則生物でして。
なので油断していたところで唇を奪われ、大人の口付けだけで抵抗できなくなるまでとろかされてしまいました。

色もいらぬ恋もいらぬ、私は只の女とは違うんだ‥‥と突っ張っていたのにファーストキスで逝かされまくり。
1時間足らずの間に、唇だけの接触で百回近く逝かされたらそりゃ壊れるわな。
ギュー・グェスと出会ったばかりの時に同じ目にあっていたら、私は温泉洞窟に着く前に妊娠していたでしょう。
それはそれで楽しそうですけど、その場合2ヶ月間に及ぶラブコメ漫画みたいな生活はなかったと思うのでやはりあの展開で
良かったのです。うん。


かくしてオーク妻となったルッニは、従軍娼婦として遠征するオーク達と同行して性欲処理に従事したり、人間社会に密偵と
して潜り込み襲撃先の選定や偵察をしたり、雌奴隷兵として矢面に立ち人間族を含む敵と戦ったり、捕まえた新入りオーク妻
の面倒を見たりと充実した生活を送りつつ2人の息子を産み、育てました。
しかしお腹の中の3人目が大きくなって略奪行に同行しづらくなった頃に、ルッニの巣と夫のオーク版勇者は人間族の大攻勢
を受けて敗れたのです。

一日にして夫と二人の息子を、愛する家族たちを失ったルッニは唯一人で逃げ延び、たどり着いた洞窟で暮らし始めました。
既に英雄級の実力を持つ聖騎士(パラディン)だった彼女は、一人きりで暮らすことができました。
ある程度の信仰魔法が使えると生活が楽になりますし、オーク族は人間よりずっと育て易いですから一人でオークの子を産み
父親にも負けない戦士に育て上げることもできたのです。

類い希な強さを持つこの母子の周りには自然とオークや女達が集まってきますが、ルッニはただのオークの巣では人間族の軍
隊や勇者に狙われてしまうと考えました。
故に彼女はオークの虜になっていながらも、オーク妻達とオークの虜になった少数の男達で村の運営を切り回す体制を作り上
げたのです。
オスマン朝トルコとか、奴隷階級が実権を握っている社会は地球にもありましたからねえ。


外から見れば男が少なめの山里で、内側から見ればオークの隠れ里。
ルッニの指導のもと、村人達は産まれたときからあるいは幼少時に引き取られたときからオーク・ラヴァーとして育てられ、
奴隷としてですが、密かに静かにそして辺境の村としては有り得ないほどに豊かで安楽に暮らしていました。
その繁栄は東バルキアの桃源郷として、異種婚制度の成功例として女神様の記憶または記録に残った程です。
ええ、先程から妙に情報が詳しいのは女神様補正です。


が、しかし、開祖ルッニの死後はオーク達の統制が乱れ、掟は次第次第に骨抜きになり教訓は忘れ去られ、村人達はただの奴
隷妻となっていきました。
そしてタガが外れた生活を続けるうちに、何処からどう見てもオーク族に占領された村にしか見えなくなってしまったルッニ
ネツは通りがかった勇者一行と相打ちになる形で滅んだのです。

正確に言えばルッニネツを滅ぼしたのと引き替えに半壊した勇者一行の生き残りは、帰還中にソーニャさんの知り合いの手で
口封じされてしまったのですがそれはごく限られた者しか知りません。
今ですら知っているのは、始末した異種姦推進派な冒険者本人とソーニャさんと私だけですから。地上にはそれだけです。



で、サラさんは「ごく僅かな商人が名前ぐらいは知っている廃村」であるルッニネツ出身の冒険者として東バルキア地域を放
浪していた訳ですが‥‥ 育ちの関係上、彼女はオーク族が悪者とは思いづらかったのです。

確かにオークには質の悪いのもいますけど、それは人間でも同じ事でして。
そこらに溢れている人間族のヤクザや山賊や領主や坊主どもに比べて、オークたちが殊更に悪だとはどうしても思えないサラ
さんはオークたちに半ば協力する形で冒険者稼業を続けていました。

あるときはオーク族の欲しがるものを提供し財貨を受け取る行商人として、あるときはオーク達の欲望のはけ口となって金銭
や物資を得る流しの娼婦として、あるときは街の様子や討伐隊の動向を知らせる密偵として、あるときは考えなしに動く巣を
人間族の力を使って粛正する始末屋として。

もちろんそれらの行動が全てではなく、普通の冒険者として活動することの方が多かったのですが。



ルッニネツ村の生き残り達の殆どがそうしたようにオークの巣に嫁入りしなかったのは、サラさんは何故かオークの子を孕め
なかったからです。
オークたちはいわゆる産まず女であるサラさんを追い出したりなどせず、むしろ引き止めていたのですが他の女達がどんどん
子を産んで育てて幸せそのものに暮らす中で、自分はそうできない寂しさと惨めさにサラさんは耐えられませんでした。

まさに身につまされる思いというやつで、話を聞いていたソーニャさんが「私もそうだった」とサラさんの手を取って涙ぐん
でいます。
普通の幸せを普通に手にできない悲しさ悔しさは、普通じゃない幸せを浴びるように受けても埋められないのだと。


やがて慎ましやかに暮らすなら一生困らないだけの技術と蓄えを得たサラさんは、現役引退してショーシャの森に近い村で暮
らしていたのですが‥‥ 時に身体の疼きを抑えられなくなって街に出かけることがありました。
弱めのモンスター討伐や賞金首狩りなどで小金を稼いで、その金銭でオークを買っていたのです。

といってもこの近辺には念入りに調教したオークの男娼を抱えた、会員制の秘密娼館などありませんのでもっぱら近隣の迷宮
で浅いところに出没するオークたちと交渉して抱かれていたそうですが。
ダイコクたち地元オークが人間雌に甘いというか、無条件で敵扱いしていないのはサラさんのような「オークに股を開く女」
が珍しくないからでもあるのでしょう。

ええ、サラさんのようにオークと交渉を持つ人間族は、割といます。
捕らえられたり睨みあっていたり取り引きしていたりしているうちに、オークフェロモンやオークオーラにやられてしまった
りとかしちゃうのです。
捕虜にしたオークを尋問したり道案内させたりしているうちに堪らなくなってしまった女だけの冒険者たちが、捕虜に悪戯し
たり逆強姦したりしてオークち○この虜になるなんてことも稀によくあります。

年季の入った冒険者のなかに「オークは殺せ、すぐ殺せ」と言い張る者がいるのは当然なのですよ。
恋人な冒険仲間が、縛り上げている捕虜オークに跨って「膣出ししてくれないと殺しちゃうぞ♪」とオークち○こを股に填め
込んで媚びっ媚びの喘ぎ声あげながら腰を振っているところを見たら、そりゃそうなるわな。

元々淫乱の気があって、最近は欲求不満で、オークフェロモンに弱い体質の女が何時間も密閉空間で捕虜オークと二人っきり
でいたら気分が出てしまっても仕方ありません。ビールひと舐めで酔っぱらう奴を醸造倉に入れといて酔っぱらうなと言うよ
うなものです。

尋問するという口実で、一度ちょっかい出してしまったらもう止められない。
何か有益な情報を一つ吐くごとに 胸 元 を 見 せ て や る とか 踏 ま な い で や る とかのご褒美を
与えているうちにどんどん填り込んでいきます。
仲がよい冒険者一行なら見張り役が行方不明になる(捕虜と駆け落ちする)ぐらいで済みますが、不満や不和が貯まっている一
行だとそれが切っ掛けで全滅しかねません。

東方世界にも夾竹桃だのトリカブトだの、猛毒植物が野山に生えてます。そしてそれら自然の毒物はオーク族の基礎知識。 
捕虜オークとの幸せいっぱいえっちを切っ掛けに、身近な人間関係を清算する気になってしまった冒険者が仲間に一服盛って
自分以外全滅したことにして一人で帰還する、なんてことも有り得るのですよ。
余程のことがない限り、冒険中の事故と故意は判別できませんからねえ。


表沙汰にならないだけで、冒険者の中には異種姦や異種恋愛や異種婚にはまり込んでしまっている人は結構います。
オークち○こに填り込んでしまったオーク・ラヴァーに限っても、その事情は様々ですがね。

密偵や工作員としてあえて人間領域に残る者もいれば、ただ単に引き離されてしまったり死に別れてしまったりした者もいる。
たとえば出会ったその日のうちに恋に堕ちたけど相手のオークが死んでしまった‥‥とか、オークの巣で仲睦まじく暮らして
いたけど斥候や買い出しなどで街にでていたら巣が壊滅してしまった‥‥とかいった場合、あるいはオークに犯されて完全に
屈伏させられたけど、嫁にする価値はないと置き去りにされてしまう事もあります。

オークだってやり捨て上等のろくでなしはいます。誰もが変態紳士ではありません。


そんなわけで女達の中には、人間の領域で暮らしながらオークち○こを咥えこむ生活を送っている者もいます。
いわば隠れオーク・ラヴァーですね。

サラさんのように迷宮などの人目に付かないところで野性のオークを誘惑していた女もいれば、ソーニャさんのように辺境地
域などの人が立ち寄れないところにオークを囲って(放し飼いして)いた女もいます。
巣では首輪つけて飼われていたお師匠様ですが、実力だけで言えば飼われているのはオークたちの方でして。
他にも屋敷の地下室にこっそりとオークを囲って(監禁して)いる女とか、研究施設の実験動物として堂々と飼育して繁殖させ
ている女とかもいるそうですが。
イワノフとその妻たちはこっそり囲っていた(囲われていた)部類ですね。


「言っちゃなんだけど、アンタら一昨日からオーク臭くってバレバレだったよ」

数ヶ月や数日しかオークと過ごしていない後輩達と違い、年季の入ったオーク・ラヴァーであるサラさんにはマリアの様子は
隠しているうちに入りませんでした。
オークと合体寸前までいって、とろっとろにされてしまっているのは明白なのです。

マリアの様子からみる限り相手のオークは考えなしや乱暴者ではなさそうですが、幼女がオークの巣に嫁入りする危険性や私
の意図がもう一つ掴めなかったことから、サラさんは早ければ今日の未明にもマリアを連れて逃げ出すつもりでした。
元々スラムに長居する気はなく、身体が動くのならとっくの昔に逃げている筈でしたからね。
幸い合体がまだなので、引き離してしまえばマリアの初恋もそのうち鎮まると見ていたのです。

しかし想定以上に早く埋蔵金狂いが動き、昨夜のうちに二人とも連れ去られてしまった。


まあ、組織の財政があそこまで‥‥人間に喩えたら酸素吸入器が外せない級の酷さに危機状態だとは普通考えませんよねえ。
外部からだと内情は解りにくいですし。





 ☆108日め6、どうしてこうなった☆



で、サラさんですが今は子供が産める身体になっています。女神様の太鼓判付きです。
何故かといえば呪いが解けたからでして。
ええ、あの妙にしつこかったやつですよ。まさか十数年に渡って続いていた代物だったとは。

どうもルッニネツ村が壊滅したときに掛けられた呪いだったようで、正確には「子供が産めなくなる」呪いではなく、
「好きであればあるほどその相手では孕めなくなる」呪いだったのです。
反対に大嫌いな、殺しても飽き足りないほど憎んでいる男に種付けされたら一発で孕んでしまう訳でして、呪った奴は当時小
娘だったサラさんを取り逃がさなかったら、犯して孕ませてから場末娼館にでも売り飛ばすつもりだったのでしょう。

幸運にして幸福なことに、呪われてからのサラさんは呪われるまでと同じく、冒険者になる前も冒険者生活中も引退してから
も気に入った相手とだけ、抱きたい男や抱かれたい雄だけと躰を重ねていたのです。でなければとうの昔に孕んでいる。


その呪いが解けたことを、例によってエスティア様の神託により強制的に理解させられてしまったサラさんは‥‥

「アタシも年貢の納めどきだねえ~ こんな年増を貰ってくれるってんなら、喜んで嫁に行くよ♪」

と、歌いだしそうなぐらいに上機嫌です。

まあ、東方世界の冒険者にしてみればソーニャさんはメジャー三冠王どころじゃない成功者かつ英雄な訳で。
そんな生ける伝説が実はお仲間(オーク・ラヴァー)だった上に今日から後ろ盾になってくれて、その弟子が前から持ってきて
いた嫁入り話はリガの剣姫だけでなく女神様の保証付き良縁ときたら、浮かれるなという方が無理か。


狩り場に巻物を使って結界を張りまして、大きな丸石に腰掛けたサラさんは寝間着の胸元を大きく開けて乳房をさらけ出して
います。
そしてイダテンはその胸に顔を埋めたり、揉んだり、吸い付いたりして感触と反応を楽しんでいる。
おっぱいは良い。出るおっぱいは神聖な存在ですが出ないおっぱいは至尊の存在です。
男にとってただただ有り難いものなのです。

母親に溺愛されて育ったイダテンはマザコンの気がありまして、おっぱいが大好きなのです。
ダイコクもマザコンですが優れた癒し手であるというダイコクの母は今も健在でして、幼い時期しかも実時間で僅か数ヶ月前
に死に別れているイダテンに比べれば母性(おっぱい)への執着は薄い。


「今のうちに楽しんでおくんだよ、アンタの弟や妹ができたら空いてるときにしか弄らせてあげられないんだから」
「ウン。ママ、ウム、オレノコ」
「良いともさ。アタシはいつだって構わないからね」

オークとしては小柄なイダテンよりも、人間雌としては大柄なサラ小母さん方が背丈が高かったりします。
なので疑似母子プレイをしてると、中学生ぐらいのマザコン息子を甘やかしている駄目母に見えなくもない。

これまでは幼いと言った方が良いぐらいの若者オークたちに、「ママ」とか「カアサン」とか呼ばせて性欲と慕情のはけ口に
なる形で抱かれることが多かった彼女ですが、これからは本当に母になれる訳でして。
なんかもう「息子のち○こを拒む母親なんていないさ、アタシの股は触ってくれさえすればいつでも開くからね」とかいった
脳味噌とろけてるとしか思えない台詞をイダテンの耳元で、甘っ甘っな口調で囁いてます。


ううむ、物心つくあたりから約20年オーク・ラヴァーやってるとこうなるのか。
行き着くところまで逝っちゃってますね。


その横でマリアを膝の上に座らせていちゃいちゃしているダイコクは‥‥小学生と淫行している力士にしか見えません。
体格差がありすぎて前世なら完全に犯罪だ。
最大の懸念だった保護者の問題が片づいてしまったので、安心したマリアは全力で婚約者な交際相手といちゃついてます。

「メイア、オレノヨメ。コドモ、タクサン、ウム」
「はい。すえながくお願いします」

こっちもかっ飛ばしてるなあ。いっとくけど貴方ら、式挙げるまで合体禁止ですからね。

「「グヒッ♪」」


女たちの返事がないけど気にしないことにします。野郎どもさえ抑えておけば良し、実害はない筈です。



色ボケしてる女(オーク・ラヴァー)達とエロモンスターどもは幸せそのものでなによりですが、こっちは問題が山積みですよ。


まず、ハラキズの行方は相変わらず分かりません。
女神様情報では「命に別状はない」そうですが、神様の尺度は緩すぎですので安心できない。
 生 き て る だ け な状況だったりしたら嫌すぎます。
とりあえず東バルキアの何処かにいるらしいのですが、早く見つけてあげないと。


次に、オーク島でも次々と異変が起きているようです。
私とハラキズの転移失敗も、島の異変と関係しているのかも。


ダイコクたちにしても、大人数なオークの群と接触したけどその群の長が女神像を気に入ってしまい奪われてしまうという
問題が起きています。
当人達は、強い族長が女神像を管理してくれるならまあ良いかぐらいにしか感じてないみたいですが。

ただ、奪い取った側は女神像を独り占めしようというのではなく、かつてオーク族が神々を祀っていた場所に安置して神殿を
再興しようという動きなので私としても緊急性が低い問題だと見ています。
暇ができたら話をつけに行きますけどね、絶対に。


ええ、いまはもっと優先すべき問題がありまして。
街の近くまで来ているウォスたちの一行が、なにやら騒動に巻き込まれたようなのです。


ぶわぁぁぁあん という感じで輪っか状の次元扉(ディメンジョンドアー)が狩り場へ現れました。
扉の向こうからソーニャさんが顔を出して、こちらを覗きます。

「レイ、オーク用の重石弓は持ってるかしら。あと矢も」
「この前試作したのが一つあります。矢は鋼の鏃のだけですが30本」
「貸して。準備でき次第、戦闘態勢でこっちに来てね」
「はい」


言われるままに、オーク向けに作った大型機械式クロスボウとその矢筒を渡します。
魔法合金を使った複合機械式石弓で狙撃スコープと滑車2個付きですが、ハンドルを回すのではなく足踏み式または二人掛か
りで弦を引く構造で、ドスみたいに剛力で腕が長い体型なら一人でも腕の力だけで引けます。

受け取って次元扉に引っ込んだお師匠様から新鮮な血の匂いがしました。向こうでは荒事系の騒動が起きているのか。


「はいはい急いで急いで慌てないでね」

色ボケしてるバカップルどもに身支度するよう指示して、私は装備品と武装を再点検します。
良し。これなら今朝方の強化手段山盛り状態には及びませんが、並のゴロツキ4~5人ぐらいまで対処できる。
6人以上が至近距離に来たら、全員仕留める前にマリア達へ攻撃されてしまうかもしれません。
サラさんとオーク達はある程度戦えますが、ゴロツキが相手でも必ず勝てるほどには強くない。一人は病み上がりだし。

雑魚い下っ端であっても緊急時には大真面目になれるのがオーク族の長所でして、ダイコクとイダテンは手早く自分の身支度
を済ませたのちに交代で女達の着衣を正してやり、手荷物を持たせました。
片方が女達の世話をしている間、もう片方は見張りと待機をしています。

ふむ、系統だった訓練は受けてないがそれなりに経験積んでいますね。
大神殿で暮らしている下っ端オークたちの平均よりも、ダイコク達の方が潜った修羅場の数だけなら上のようです。
当然か。この地にはオークの天敵が山のように居るのだから。



準備ができたので5人で次元扉に入り移動します。

出た場所は籔の中でした。細いけど深めの河と寂れた街道が交差する平地に、籔というか茂みのような、森と言うには小さす
ぎる緑地が点在してまして次元扉はその籔の一つの中に立てられているのです。

で、お師匠様は無限袋の中から投げ槍(スピア)を何本も出しては籔の地面に突き立てている。
見たところ何の変哲もない歩兵用の短い槍ですね。穂先は一応鋼鉄ですけど安物だ。


薄暗い籔の木々と蔓草の向こうに街道と、その真ん中に立つオークの姿が見える。
南の島風の腰ミノ、手強かった獲物の牙や爪を集めた首飾り、腰に吊した愛用の棍棒。
この距離でも一目で分かる、むっちりとした肉付きは間違いなくレェ・ウォスです。

たった4日ほど会わなかっただけなのに、涙がでるぐらい懐かしく愛おしい。
思わず駆け寄りそうになりましたが、衝動を押さえ込みます。いまはそんなことしたいけどしてる場合じゃない。

しかし、ウォスは妙な武装をしてますね。盾というよりは雨戸を外してきて取っ手をつけただけのような大板を持ってます。
右手に掴んでいるのは、太くて丈夫そうな鉄鎖かな? 鎖は戸板じみたものの角に繋がってますね。



地形と街の位置からみて、ここは来たときに通った道の隣か。あっちの森がでかい狼と別れた場所です。

ウォスが立っているあたりには夥しい血の跡があり、道や草地の所々に人体の一部らしき肉片が転がっている。
やや離れたところには人や馬の死骸も幾つか倒れています。
それだけでも戦いがあったと分かりますがウォスの後方、約50メートルの地点に10人ほどの女子供が固まってまして、
女子供を守るように3人の下っ端オークが並び、鋼鉄製の大盾と武器を手にしています。

やたらでかいアンドレ、でかくて毛深いプロディ、二人に比べると小柄でやや耳が尖ってるのがトンガリ。
みんな元気そうでなにより。後に女子供がいるせいか士気も高そうです。
ええ、泣きそうなのをこらえてる子供とか抱き合って恐怖に耐えている母子とかいますけど、その恐怖の対象はオーク達では
ありません。オーク達へは、頼っているとまではいかずとも縋り付いているぐらいの信頼感が漂う状態ですね。

女子供の更に後には、草地に十数人の老若男女が横たわって並べられていました。もちろん全員死んでいる。
死因は刺殺と斬殺そして撲殺。
ここからではよく見えませんが、オークに殺されたにしては傷が綺麗すぎる気がします。
あれはもっと非力な者に攻撃されて付いた傷だ。



遠くから地響きのような音が聞こえてきました。荷重状態の大型馬の群が立てる馬蹄の響きが近づいてきている。
甲冑武者の総重量は100㎏前後、馬具や予備の武器や馬用の鎧も合わせればその倍以上。
自重700㎏を越える軍馬にとってさえ軽くはありません。
街道を走ってくるのは、巨大な軍馬に跨り煌びやかな板金鎧を身に纏った重装備の甲冑武者たち。
どこかの騎士団でしょうか、後の方にいる騎馬武者が絹地に樹木を描いた旗を掲げています。

「ありゃポルトニクス家の騎士だよ」

地元民のサラさんには何処の誰か分かりました。

言ったときの表情や名前を聞いたマリアの反応からして評判の宜しくない領主のようですね。
其処のお抱え騎士ですか、ぴかぴかに磨かれた鎧着ていますから臨時傭いじゃないでしょう。
高潔とか誠実とか寛容なんて言葉とは無縁の連中とみた。まあ中世世界の騎士なんてそんなものですよね。


どんどんと騎馬隊が迫ってきてます。

騎馬武者の突撃は怖ろしいものです。
元々は臆病で繊細な奇蹄類と非力で軟弱な裸猿でしかありませんでしたが、数万年の品種改良と装備開発と戦術研究により戦
闘生物として作り変えられた二種の哺乳類は、組み合わされ訓練され実戦をくぐり抜けた結果として野生動物やモンスターに
匹敵する強さを持っています。

良く訓練された騎馬武者は大型猛獣並に強い。
ですが、ですがしかし、彼ら騎馬武者たちが立ち向かおうとしているレェ・ウォスはオーク版の勇者。
野性の猛獣を狩って糧とし、魔物を見つけては恰好の鍛錬相手として挑みかかる日々を送る真の強者なのです。

勇者でない甲冑武者など束になってかかって来ようとも、徒歩勇者の敵ではない。
王座防衛戦のファイトマネーだけで食っていけるヘビー級世界王者に、プロ免許がどうにかこうにか取れたばかりの新人ボク
サーが喧嘩を売っているようなものですよ。

ですから私もソーニャさんもウォスの心配はしてません。しているのはウォスと直接戦わない連中に逃げられる心配です。


「私たちは後の2騎を狙うわよ、貴男たちは布服の人間を優先しなさい。レイは鎖かたびらのを」
「はい」「「グヒッ」」

街道の向こうから突撃してきた騎馬は全部で13、うち11はウォスに向かいました。残る2騎は速度を緩めます。
別れる前に何かの呪文を唱えていましたし、この二人は呪文使いであり支援要員でしょう。
つまり集団戦では真っ先に潰さなくてはいけない目標です。

両手に一本ずつ持ったソーニャさんと、普通に一本ずつ持った私とダイコクとイダテンが籔の中から槍を投げつけました。
槍が空中を飛んでいるうちに、地面から次に投げるべき槍を引き抜きます。

私の投げた槍は僧兵らしき騎馬武者に当たりました。鎖かたびらを貫いて太腿そして鞍越しに馬体まで刺さってます。
ダイコクのは大外れ、投げた途端に籔の木に当たって軌道がそれてしまい目標までの半分も飛びませんでした。
イダテンのは見事土手っ腹へ命中し、魔術師らしき標的は展開していた「盾(シールド)」ごと串刺しになっています。

ソーニャさんの投げた槍は二本とも当たりました。一本は魔術師の頭に当たって顎から上が消し飛び、一本は僧兵の右脇の下
に当たって穂先が左肺あたりにまで達しています。
心臓だけは外れていたので僧兵はその後数十秒間生きていましたが、致命傷状態なのに馬体に縫い止められているので落馬も
できず暴れ回る馬の上で揺さぶられ続けている。
拷問ですねあれは。並の人間なら即死しているけど、半端にレベルが上がっているので死ぬに死にきれない。回復呪文を唱え
ようとしましたが失敗してます。口から出る吐息より吐血の方が多い。


お師匠様だけで良かった気がするけどそれは今更か。上手く仕留めたんだから良しとしましょう。



ウォスの方はといえば、飛んでいます。
突撃してくる騎馬武者の群に向かって疾走していた彼は、激突の寸前に飛び上がり宙を舞って騎馬武者が突き出す馬上槍を避
けその柄を踏んで前へ前へ跳躍しています。

重装騎兵の頭や肩を踏み台にした彼が飛び抜けると同時に、その両手に握られていた鎖が繋がっていた戸板は馬上槍や大斧な
どの武器で砕かれました。
そして砕かれた戸板の中に仕込まれていた、死神が担いでいるような大鎌の刃が現れます。

温泉洞窟の武器庫にあった、性能的にもう一つ信用できなかったので下っ端たちに貸し出すのを止めたあの大鎌の刃です。
そういやソーニャさんに鑑定して貰ったときに、改造して良いかって訊かれたから「どうぞ」って言ったような記憶が。


死神の大鎌の刃の、根元と鎌先の近くに鎖を付けてそれぞれの先端をウォスが持っている状態です。
つまり縄部分がピアノ線でできているというか縄の中心あたりに鎌の刃を仕込んである縄跳びの縄を、騎馬武者達の首辺りに
引っかけるような形ですれ違った訳で。

コボルド魔剣ほどじゃありませんが切れ味重視で必殺(クリティカル)率上昇効果付きの魔法武器が避ける余地のない状態で、
しかもカウンター気味に入りましたので‥‥

いやあ、兜首(だけとは限らない)が次々に飛ぶと壮観ですね。馬の首も半数以上が飛んでます。
思わず「たぁ~がやぁ~!」と歓声をあげそうになりましたよ。

首や胴が切断されずに済んだ運の強い連中も2~3名いますが、手足を失った状態で全力疾走中の馬から落ちたり馬もろとも
転倒したりで無事ではなく、動きが鈍っています。あれではウォスの鉄拳や棍棒の前にはひとたまりもないでしょう。




ただ一騎、咄嗟に首を引っ込めたのか乗り手も馬も首が飛ばずに済んだ騎馬武者はそのまま突っ走ります。
彼は自分の状況が分かっていたのかどうか。
なんせ次の瞬間にウォスの投げつけた馬上槍の穂先で延髄貫かれて落馬しましたので。

投擲名人のウォスにとっては鎌改造罠に切り飛ばされた穂先を空中で拾って投げつけることなど容易いもの。
左手に持っていた鎖は口でくわえて固定してます。
本人の戦士系特技とソーニャさんの支援呪文の相乗効果で、彼の動きは通常時の2倍半ぐらい素早くなっている。


乗り手は落ちたけど首が飛ばずに済んだ馬たちのうち、一頭だけが突進を止めずアンドレたちの防衛線に突っ込みましたが、
トンガリが撃った矢を受けて怯んだところをブロディのサスマタで食い止められ、アンドレの両手持ち大棍棒で頭蓋骨を打ち
砕かれて倒れます。

狼どころか豹や黒熊でも蹴り殺してしまう狂暴な軍馬ですが、三人掛かりでいけば怖くない。
うん、数日前より格段に動きが良くなってますね。これが三日遇わざればってやつですか。


ん? 勝ったのに女子供達が悲鳴を上げていますが‥‥

あれ? あの最後の甲冑武者、立ち上がってる!? 
馬鹿な、兜の後頭部から刺さった穂先が面当て(バイザー)の覗き穴から飛び出してるのに。
アレで生きてりゃ人間じゃない、甲冑の中身がトロルだったとしても少しは痛がる筈です。


敵が立ち上がったので、アンドレたちは咄嗟にそしてバラバラに攻撃しました。
下っ端オーク達が放った矢が板金鎧の胸板を貫き、投石が兜を凹ませ、鎖分銅が足に絡みつく。
しかしそれでも甲冑武者は、いや甲冑武者だった何かは立っている。


「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛っ っ」

立っていると言うより生えている? 奇怪な、哺乳類のものとはとても思えない太すぎる叫び声を立てて、どんどん伸びてい
きます。両の足は地面に突き刺さり、振り上げられた腕が細く長くなりながら斜め上に伸びていく。
背が僅かに、そして首が凄まじい勢いで妖怪ろくろ首のように上へ上へ伸びていく。

似ている。この感触、石切場遺跡の奥で棘ドラゴンが物体エッ○スもどきになり果てたときにそっくりです。


変化していく何かの衣服と鎧兜が内側から弾け飛びました。肌色の樹木のような裸身がどんどんと伸びていく。
引き延ばされた皮膚の下で、巨大なウジ虫が這い回っているかのように中の物が動いている。
腕と首はますます勢いを増して伸び続け、既にそれぞれの長さが20、いや30メートルを越えています。


元甲冑武者に近寄ろうとしたウォスが飛び跳ねました。地面から触手のように樹の根‥‥いや触手と化したヒトの足指が飛び
出して幹部オークを襲います。
逃げるウォスに負けない速度で指触手が伸び続け、絡め取ろうとしている。

あ、暴れ馬とその馬体に縫い止められている死にかけ僧兵騎士が指触手に捕まってしまいました。
素手に力一杯握りしめられた完熟トマトみたいに潰されてます。

触手の先っちょが人間の指先そのもので、平爪や指紋が残ったままなのが不気味過ぎて鳥肌が立ちそうです。
サラさんはマリアを抱きしめてバケモノを見せないようにしてますが、それが正しいでしょう。
うっかり見ちゃったダイコクは泡噴いて立ったまま失神してますし、イダテンは尿を漏らしながら震えている。
私だって二度目じゃなけりゃ腰を抜かしていたかもしれません。


檻のようにウォスを囲もうとした触手に小さな光弾が飛んでいき、触れて爆炎が巻き起こりました。
ソーニャさんが打ち込んだ「火球(ファイアボール)」の爆風を利用して、ウォスは触手の攻撃範囲から逃げ切ります。


「魔法が効かないわね」

ソーニャさんは次々と「火球(ファイアボール)」だけでなく「吹雪(ブリザード)」や「魔法の矢(マジック・ミサイル)」や
「分解(ディスインティグレート)」などの攻撃呪文をバケモノに打ち込みましたが効いている様子がありません。

幸いなのか分かりませんが、バケモノは反撃してきません。向こうの攻撃らしい行動は足の指が変化したらしい触手が近寄る
ものへ絡みつこうとするものだけです。
変異が苦しすぎて攻撃どころじゃないっぽいですね、あいつは。触手の動きは反射運動なのかな。


「レイ、「招雷(コール・ライトニング)」の巻物を使ってみて。急がなくて良いわ」
「はい!」

指示に従い、無限袋から出した信仰呪文の巻物を読み上げます。これもソーニャさんからの貰い物です。
読み間違いや言い間違いがないようゆっくりと、通常時の倍の時間をかけて読み上げ確実に発動させる。
アイテムマスターとしての能力は、今の私では1種類しか使えません。ここは威力最大限でいきましょう。


「あれは下界に有ってはならぬモノです、私も力を貸しましょう」

エスティア様の声が聞こえます。ああ、やはりあの樹木めいたものは三種混合キメラと同じ陣営か。
ならば、この呪文は効くかもしれません。
電撃系はまだ試してませんし、ソーサリー系は効かなくても信仰系の呪文なら効くかもしれない。
おまけに神様直々の増幅付きですからね。



詠唱が終わり、雲一つない快晴の空に雷鳴が轟きます。
空中に発生した電子の偏りが地中の電子と引き合い一気に流れ落ちたのです。

威力最大化、威力上限突破、達成値上昇(極大)、範囲拡大(中)、対邪神特効(大)‥‥ゲーム的に言えばそんな効果が付与され
た電光は、裁きの雷として仮称樹木ニンゲンを焼き尽くしました。
大樹のようだった巨体が空中で燃え尽き、灰と炭の欠片になって砕け散り風に飛ばされていきます。



あー 私もオーク達の、自分で栓ができる便利な耳が欲しかった。そしたら聴かずに済んだのに。
あのバケモノ、燃え尽きる寸前に言いましたよね。ヒトの形が残った口で確かに言った。
聞こえちゃいましたよ 「 兄 者 助 け て 」 って悲鳴が。

いや、「兄弟」とか「同胞よ」とかの意味だったのかもしれませんけど。


いるんだろうなあ、ポルトニクス家とやらの家中にはアレの兄弟分が。
評判の悪い、野盗の親玉めいた土着貴族領主一家が邪教団の隠れ蓑。実にありそうな話です。


はい、揉め事一覧に「地方領主+邪教団と抗争開始」追加で~す。




どうしてこうなったかは解りませんが、私が何をしたいのかは分かります。
安楽妊婦生活に戻りたい、ただそれだけです。

とりあえず邪教団を潰す方向性で、夫たちやお師匠様と協議してみますか。放置していて良いことは何もなさそうですし。


 



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