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No.38600の一覧
[0] 【異世界転生・TS・チート】~詰んでる転生記~ 南の島でこの先生きのこれるか【異種族・恋愛・逆ハーレム】[峯田太郎](2018/08/01 12:43)
[1] 1[峯田太郎](2018/08/01 12:43)
[3] 2[峯田太郎](2018/08/01 12:44)
[4] 3[峯田太郎](2018/08/01 12:44)
[5] 4[峯田太郎](2018/08/01 12:45)
[6] 5[峯田太郎](2018/08/01 12:45)
[7] 6[峯田太郎](2018/08/03 12:45)
[8] 7[峯田太郎](2018/08/01 12:47)
[9] 8[峯田太郎](2018/08/01 12:47)
[10] 9[峯田太郎](2018/08/01 12:48)
[11] 10[峯田太郎](2018/08/03 12:46)
[12] 11[峯田太郎](2018/08/01 12:49)
[13] 12[峯田太郎](2018/08/01 12:51)
[14] 構想ノートの切れ端[峯田太郎](2013/10/13 13:59)
[15] 13[峯田太郎](2016/07/24 11:54)
[16] 14[峯田太郎](2016/07/24 11:54)
[17] 15[峯田太郎](2016/07/24 11:55)
[18] 16[峯田太郎](2013/10/28 13:51)
[19] 17[峯田太郎](2013/11/08 17:58)
[20] 18[峯田太郎](2014/05/01 11:36)
[21] 19[峯田太郎](2014/10/03 12:15)
[22] 20[峯田太郎](2014/04/15 15:52)
[23] 21[峯田太郎](2014/12/18 13:27)
[24] 22[峯田太郎](2016/07/24 11:55)
[25] 23[峯田太郎](2016/07/24 11:55)
[26] 24[峯田太郎](2016/07/24 11:56)
[27] 25[峯田太郎](2016/07/24 11:56)
[28] 26[峯田太郎](2016/07/24 11:57)
[29] 27[峯田太郎](2014/11/03 10:52)
[30] 28[峯田太郎](2016/08/03 12:19)
[31] 29[峯田太郎](2014/03/26 12:36)
[32] 30[峯田太郎](2014/02/16 12:26)
[33] 31[峯田太郎](2014/11/03 10:52)
[34] 32[峯田太郎](2016/08/01 14:10)
[35] 33[峯田太郎](2014/04/20 11:22)
[36] 34[峯田太郎](2016/07/22 12:10)
[37] 35[峯田太郎](2014/04/20 11:23)
[38] 36[峯田太郎](2016/07/24 11:57)
[39] 37[峯田太郎](2014/12/18 13:28)
[40] 構想ノートの切れ端 その2[峯田太郎](2014/04/18 14:43)
[41] 37.5[峯田太郎](2014/05/04 12:19)
[42] 38[峯田太郎](2016/01/14 11:58)
[43] 39[峯田太郎](2016/07/15 12:13)
[44] 40[峯田太郎](2016/07/22 12:11)
[45] 41[峯田太郎](2014/10/14 12:00)
[47] 42[峯田太郎](2014/12/18 13:28)
[48] 43[峯田太郎](2014/12/18 13:29)
[49] 43.5[峯田太郎](2015/07/15 15:30)
[50] 44[峯田太郎](2015/07/17 16:25)
[51] 45[峯田太郎](2016/01/25 12:41)
[52] 46[峯田太郎](2016/07/24 11:57)
[53] 47[峯田太郎](2016/01/15 12:11)
[54] 48[峯田太郎](2016/05/01 12:59)
[55] 49[峯田太郎](2016/01/20 14:16)
[56] 50[峯田太郎](2016/05/01 12:59)
[57] 51[峯田太郎](2016/04/22 16:45)
[58] 52[峯田太郎](2016/04/22 16:46)
[59] 53[峯田太郎](2016/05/01 13:00)
[60] 54[峯田太郎](2016/07/24 11:58)
[61] 55[峯田太郎](2016/08/01 14:11)
[62] 56[峯田太郎](2016/07/26 12:00)
[63] 57[峯田太郎](2016/07/26 12:01)
[64] 58[峯田太郎](2016/07/24 12:17)
[65] 59[峯田太郎](2016/07/28 12:37)
[66] 60[峯田太郎](2017/06/03 11:21)
[67] 61[峯田太郎](2017/06/03 11:22)
[68] 62[峯田太郎](2016/08/01 14:12)
[69] 63[峯田太郎](2016/08/03 12:20)
[70] 64[峯田太郎](2017/06/03 11:20)
[71] 65[峯田太郎](2017/06/03 11:20)
[72] 66[峯田太郎](2018/06/01 11:56)
[73] 67[峯田太郎](2018/06/01 11:56)
[74] 68[峯田太郎](2018/08/01 12:52)
[75] 69[峯田太郎](2018/08/01 12:52)
[76] 構想ノートの切れ端 その3[峯田太郎](2021/06/14 12:07)
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[38600] 29
Name: 峯田太郎◆cbba1d43 ID:98863f1a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/03/26 12:36


 ☆58日め19、そですりあうもたしょうのえん☆


こんばんは、オーク島に現在十数組か二十数組は居るはずのほやほや新婚さんの一人、レイちゃんです。
いま私は、神殿の廊下を小走りで移動中です。

ここは本殿の一般区域。つまり参拝者や交易商、警備の戦士たちがいる区域なので女の一人歩きは危険なのですが、やむを
得ません。
我慢できないのです。
生理現象ではありません。もっと精神的というか、情動的な欲求です。


オーク族と人間は、生き物として見れば殆ど同じものです。なので間取り的に宴会場に向いている場所で大勢が集まって
騒いでいるならそこが宴会場と見て間違いないでしょう。向こうからお酒と食べ物の匂いも漂ってきてますし。

やはりここが宴会場でしたか。100人‥‥はないにしても四捨五入すればそのくらいのオーク達がいますね。

「グヒッ」「「グヒィー!」」「グッグッ」

大理石の床に車座になったり、あるいは一対一の差し向かいで飲み食いしているオーク達が入り口方向へ振り向きますが、
私が探しているオークたちの顔はその中にはありません。

「レェ・ウォス!」

でも一人は直ぐに見つかりました。ウォスは無闇に高い宴会場の天井にいます。
天井の梁や天板部分に彫られた彫刻や装飾を手がかり(指がかり?)にして、公園のウンテイや吊り輪の遊具で遊んでいる子
供のように動き回っているのです。ゲーム画面中のイタリア系髭面配管工なみの速度とせわしなさで、ですが。

察するに、宴会芸の真っ最中ですか? 平均的なオークよりも更に丸っこい、むっちりとしたボディが手長猿も顔負けの軽
やかさで舞っています。まさに動けるデブ。
いえ、推定体脂肪率で言えば二割未満なんですけどね。三人の中で一番太めなウォスであっても。

「ドウシタ」

ひらり、と宙を飛んでウォスは目の前に降り立ちます。昼間よりも更に動きがよくなってきてますね、やはりあれはまだ病
み上がりというか昨夜の怪我が残っていたのですか。
幹部オークの頑丈さと生命力は人間の常識が通用しません。

「ゴォ・ドスは?」

ウォスが視線を向けた先、宴会場の奥ではオークの人垣ができていて何やら騒いでいます。ウォスの肩に担いで貰うと、
ドスがやたら大柄なオーガ戦士と殴り合っているところでした。
こっちは喧嘩ですか、まったくもう。
素手同士ですし、周りの様子からして本気じゃなくて宴会の余興っぽいから大丈夫かな?

体重で倍近くありそうな対戦相手でしたが、一定距離を保ちつつ連打されるドスの右順突きをどうしてもさばけず、殆ど一方
的に殴られ続けて倒れてしまいました。
うん、駄目だ。相手になってない。
スピードとパワーはともかく、技と術と感覚と洞察力と器用さと闘気法の精度とその他の色々なものが違いすぎます。

目を回して伸びている巨漢オーガが仲間に引きずられていって、次のオーガが出てきました。背は前のオーガよりも頭一つ分
低いですが、肩幅はむしろ広いですね。
見るからに強そうです。体格よりもその表情や仕草から、前のオーガとは格が違うのが分かります。
ただ、顔も身体も傷だらけなので防御は下手なのかもしれません。人間なら間違いなく致命傷の傷跡が10以上あります。
細かな傷は数えきれません。逆に言えば、それだけ怪我をしても生き延びてきたからにはとんでもなく打たれ強いのでしょう。


「ゴォ・ドス!」

真打ち登場に観衆は盛り上がってますが、私には関係ありません。
私を肩に乗せたウォスが歩いていくと、オークの垣が二つに割れました。

現場まで行ってみれば、宴会場の端で数人のオーガたちが身体のあちこちに拳痣を作って伸びています。
なるほど、勝ち逃げは許さないのですね。ドス、何があったか知りませんが貴男頑張りすぎですよ。

ウォスの肩から降りて、喧嘩現場に入ります。
見渡せば残るオーガは四名、一人は怪我人なのであと実質三人か。残る三人を殴り倒すか逆に倒されるかしないとドスは解放
されないでしょう。
冗談ではありません、そんなに待てるもんですか。

「オンナ、ノケ」

割り込んできた私に、傷だらけのオーガが凄んできましたよ。 


ああん? やんのかコラ やるなら本気で殺るぞ?
無限袋の中に手を突っ込んで睨むと、傷顔のオーガは下がっていきました。
本日分の呪文はあと三回残っているのです、彼が引き下がらなければ容赦なくフォースブレッドを放っていたでしょう。

もちろんオーガに硬式野球の球程度の威力をぶつけて効くわけありません。
だから無限袋から引き出した竹鞘の中身をフォースブレッドで撃って飛ばしてやるのです。何かに使えると思って拾っておいた、
折れたのを含めて毒銛三本と毒矢四本、この距離なら全弾命中させてやりますとも。

もし闘気法で毒飛礫を防げるのなら、ソーニャさんへの贈答用にとってある焼酎の瓶を出して打ち砕きます。
ちょうど向こうの壁に火の付いた松明が刺さっているので火種がいりません。
いくらか効果が弱まっているけどまだ使える毒銛が一本、別の鞘に入れたのを残していますから、火達磨状態に速攻を仕掛け
れば半分は仕留められます。残りのオーガを殺れるかどうかは運しだいですね。
あのバケモノのそれと比べればオーガたちの防護闘気は薄い。虚を突けば私でもかすり傷ぐらいは付けられます。


オーガ側のリーダーらしき若いオーガが出てきました。オーガとしては小柄ですがこちらも全身傷だらけで鍛えまくった身
体しています。顔つきが人間っぽくて表情読みやすいので、ハーフオーガなのかもしれません。
ん? 彼の向こうにいるのは見覚えのあるウサミミさんではありませんか。
前見たときより心なしか若返っていて、しかも明らかに美人になってますが本人です。間違いありません。
すると、こちらさんが噂の旦那様? 若リーダーを心配そうに見ていますし間違いないでしょう。

中止中止、毒弾も火付けも中止。やっと幸せを掴んだばかりのウサミミさんを、しかもお腹に子供ができたばかりの時期に寡
婦にする訳にはいきません。
元冒険仲間の巫女さんたちに聞きましたけど、結構重たい過去背負っているのですよ。彼女は。


若いオーガリーダーはそんな私の様子とドスの顔を交互に見ていましたが、やがて苦笑らしき表情を浮かべました。

「わるかっタ、おまえのよめ、いいよめダ」

訛った共通語(コモン)で言い、そしてぺこりと頭を下げます。
なんか「おれの嫁ほどじゃないけどな!」という副音声が聞こえてきそうな物腰ですが。

「ワカル、ヨシ」

ドスが謝罪を受け入れて一件落着です。
伸びているオーガたちは殴られ損ですが、気にしないことにしましょう。
嫁自慢がこじれただけなのに部外者が割り込むからこうなるんですよ。
そもそもの原因はそれですよね? のろけ合戦が変な方向に逸れて、それに喧嘩したくてたまらないのが便乗したと。


「「ルェイ、ドウシタ?」」
「えっとですね」

当然ですが人伝えで夫達を呼び出さずに、私が一人でここまで来た理由を訊かれました。
周り中が注目して、聞き耳立てている状態で言うのは恥ずかしいですが、女の方から言わないとこの変態紳士どもは何もして
くれません。だから言うしかないのです。

「ワタシ、ダンナサマ、ホシイ。フタリ、カワイガル、オネガイ」


しん とその場が静まりかえります。


「「グヒィー♪」」「ウォッフ!」「グヒッヒッヒッ♪」「「グヒー」」

たどたどしく微妙に間違っているオーク語のおねだりを聞いた周りが手を打って囃し立てます。

そして夫達は周り中の「もげろ」コールを浴びながらお姫様抱っこで私を抱えて、宴会場隣の小部屋に入っていくのでした。
運ばれるときにウサミミさんと目が合いましたが、彼女は笑顔で手を振って見送ってくれました。
その手首に填っていたのは、ソーニャさんが賭けた腕飾りです。あれは分配されてウサミミさんのものになったのですね。
うん、やっぱりお宝配っといて良かった。




 ☆58日め20、ひとのゆめ☆



これは夢です。電波と断片的な記憶と情報の塊を、私の脳が物語風に組み立て直した夢物語。


今からざっと145年ほど前、そしてその数十年前からもこの島は西方文明の植民地でした。
幾多の原住民達は殆どが殺され、僅かなコボルド族が火山近くの洞窟にひっそりと隠れ住み、オーク達は農園や鉱山で使い捨
ての労働家畜として働かされていたのです。

その日、この城の地下ゴミ処理場に一人の奴隷が落とされました。
戦地で捕虜にされてから数十年、調教を繰り返されて自我が危うくなってきたエルフ女が生ゴミとして落とされたのです。
流れ流れてのべ数十人の主人に玩ばれた結果、雌奴隷としても使い物にならなくなり、最後の主人にも不要品として捨てられ
た彼女はすぐに死ぬはずでした。
たまたま落ちた場所に柔らかいものが積もっていたとしても、手足を切り落とされ「人豚」にされていた彼女がごみための中
で生きていける訳もありません。

「人豚」について知りたい人は「呂大后」で調べてみてください。


ですが彼女は生き延びました。ごみための中に蠢くオークたちに飼われて。

伝説とはしばしば尾鰭がつくものです。
酒場で頓死した大酒のみのほら吹きが、その法螺話が語り継がれていくうちに一端の錬金術師になり、高名な魔術師になり、
ついには究学のあまり悪魔に魂を売った大賢者として戯曲の主人公になったりします。
でも伝説には必ず核となる部分が、真実の欠片があるのです。

この島の建国伝説にも、核があります。奇跡は本当に起きたのです。
20年の長きにわたって、自分自身が明日をもしれない身であるオークたちは奴隷女を守り続けたのですから。

自分達が長く生きられないからこそ、オーク達は目の前のエルフ女に生きていて欲しかったのかもしれません。
自らの代わりに、命を紡いで欲しいと願って彼らは身も心もぼろほろの雌奴隷を慈しみ続けたのです。
毎日投げ込まれるゴミの中から最良最上のものを選んで、足りなければ自らの血肉を削ってまで与え続けたのです。
廃棄され投げ込まれるオークの数が増えすぎてしまったときは、オーク達はクジを引き、あるいは自ら進んで「鉄の王」配下
が戯れに放つ矢玉の的になったのです。

牢獄の中で囚人が手枷足枷を付けたままできる運動を繰り返して身心を鍛え上げるように、20年の歳月の中でその雌奴隷
は自分を造り替えました。
長命種の彼女には長年の奴隷生活のなかで何重にも「呪い(カース)」や「強制(ギアス)」が掛けられていましたが、その隙
間をかいくぐって出来ることを一つ一つ増やしていったのです。

例えば、彼女は奴隷の心得としてゴミ穴に投げ込まれる遙か前から、オークに文字や知識を教える事を禁じられていました。
でもその強制(ギアス)は、「独力で知識を身に付けたオークを誉める」ことは禁じていなかったのです。
オーク達は可愛いエルフ雌が喜び、誉め、励ましてくれることを懸命に考え、行っていきました。
その努力は、経験と知識は着実に受け継がれていきました。
新入りから次の新入りへ、より強くより賢くより巧みに、オーク達は淘汰されていったのです。ごみための中で。

20年の年月の中で、オーク達は研ぎ澄まされていきます。
彼らには希望がありました。ゴミ同然の彼らにも神が、信仰の対象ができたのです。
オーク達は彼らの、彼らだけの女神を崇拝しました。残忍酷薄な主人に棄てられたエルフの雌をその化身に見立てて。

その献身はやがて実を結びます。オーク達に全てを委ね、全てを与えられ、心を通じ合わせたエルフ奴隷は信仰に目覚めます。
平たく言えばオールクゥス神の声が聞こえるようになったのです。
毎日の辛く苦しい生活の中で、オールクゥスの尼僧となったエルフ雌は少しずつ少しずつ力を蓄えていきました。
切り落とされた手足を、封じられた精霊術を、なによりも心を、縛り付けられていた心を取り戻したのです。

ゲーム的に言えばレベルが上がって強力な信仰呪文を使えるようになっていったのですね。その力で一つ一つ問題を解決して
いったのです。そしてゲームの中だと強制(ギアス)を始め呪い系の呪文は、レベルが上過ぎる相手には効きません。
この世界の魔法システムでも、例えば黄色トログロダイト呪術師の呪い(カース)はソーニャさんには絶対に効かないのです。

‥‥うーん、集団で同時に呪文唱えて威力を上げる技法とか、増強用のアイテムや技能を使うならちょっとは効くかも?
ソーニャさんならその手のものにも対抗手段用意しているでしょうけど。
過大評価じゃありませんよ? 一流冒険者しかも単独行動主体なんて、バケモノが逃げ出す級に強くて用心深くないとやってら
れません。


オークたちの命を吸って生き続けたエルフ女は、遂に呪いに打ち勝ちました。全ての強制(ギアス)は解除されたのです。
その日から、彼女のご主人様は西方文明の総督や魔術技師団ではなく、ごみための中のオークたちになりました。
それが今から125年前のことです。


私が、今は私の巣になった場所に居候することに決めた次の日。
半ば廃人状態だった人形を整え直し飾り立てたとき、グェスたち三人は涙を流して感動し、抱きまくら人形を女神像にしてしま
いました。
あれは、この事件の再現と受け取られたのです。不具となった女神が輝くような美しさを取り戻し、微笑む姿が。
ウチの巣の幹部三人は、当代の主力メンバーです。今戦争になったとしたら招集される戦士達のうち上位百名の中に必ず入って
ますから。
三人の夫達が伝説の真相というか、核部分について知っていてもおかしくありません。

地球の江戸時代でも、三河松平家の始祖が甲斐武田家の分家で清和源氏の流れ、というのが大嘘なのはちょっと学のある武士な
ら誰でも知ってました。
いや、自称新田家の分家でしたっけ? どうでも良いけど。
伝説と事実は違います。でもオーク達は違うと知っていますが敢えて区別しません。
彼らの精神世界は古代か原始のものですからね。伝説は伝説として尊ぶことができるのです。


こうしてオールクゥス神の大神官(ハイプリーテス)となった雌奴隷は、密かにゴミ捨て穴から脱出しました。
あとは伝説とほぼ同じです。それから更に20年あまりの時をかけて戦力を整えたオーク解放軍は、西方文明の艦隊がトカゲ帝
国海軍に大敗したことを好機と捉え決起したのです。



「それで、大母様は全てのオークの奴隷になったのですね」
「ええ、あれはそれが償いだと信じているのです」

目の前にはお馴染みの女神様がいます。だからこれは夢。私の見ている夢です。
現実世界の私は、夫達と一緒に川の字で寝ている筈。
夢の中で女神様と私は、触手くんではなく大きなブランコに乗って大母様と16人の一夜夫たちの絡みを見ているのです。


大母様と呼ばれるようになった奴隷エルフ女は、独立戦争後この島に宗教国家を組み上げ、大国の動向や都合次第であっさり
崩壊するかもしれない中を慎重に慎重を重ねて教団を育て上げてきました。
のべ数百人の命を捧げられて生き延び、それ以上の命を独立戦争に捧げさせたからこそ、止める訳にはいかないのです。

誰にも侵されず侮られることもない、オークと女奴隷達の楽園。
それが彼女の夢なのです。近づくことはできてもたどり着くことは決してできない理想の楽土。
オークの屍を積み上げることで楽土に近づくなら、せめてその死に甲斐を得て欲しいのですね。だから大母様は生き残り戦に
参加するオーク達に一月の間奴隷として仕え、その子を孕むのです。


「あのオークたちが、明日の生き残り戦に出るのですね」
「そうです。十五名の命が失われますが、六人の女が新たな命を宿します」

いつのまにか、下のエルフとオーク逢い引き肉団子の傍に五人の新入り巫女さんたちがいました。
実際には触手使い魔が一人ずつ上から降ろしていったのですが、夢なのでその場面は省略されてしまったようです。
ええ、五人はあのジャグジー風呂に入っていた巫女さん達です。

全裸の巫女さん達は、大股開きや、M字開脚や、四つん這いになってお尻を突きだした雌犬のポーズなど思い思いの姿勢で、
オーク達を「ご主人様」と呼んで誘惑します。
そしてオーク達はそんな巫女さん達にのし掛かって歓喜の声をあげさせ、思う存分蹂躙して嬉し涙を流させます。
巫女達へ主人として君臨し支配して屈服させ、やがて幸せそうな顔で失神する彼女達の腹に命を植え付けるのです。

オーク島の巫女はオールクゥス神の妻。そしてオークはオールクゥスの申し子であり現世の写し身。
つまり巫女にとって全てのオークが愛する夫でありお仕えするご主人様なのです(※ただし一人前に限る)。
逆に言うと全てのオークを夫として愛せる女でないと巫女には向いていないのですね(※ただし一人前以外は眼中になし)。


生き残り戦の前に、出場枠が複数有るならその枠一つにつき六人の巫女が出場するオーク達に嬲られ、子を宿します。
今回は大母様が孕んでないので巫女さん達は五人ですが、先月などのように大母様が既に孕んでいる場合は、追加の巫女さん
達が六人になる訳です。一人のオーク戦士が生まれるのと引き替えに最低六人は子供オークが仕込まれるのです。

つまり先月は生き残り戦二回分で計12人の巫女が孕んだことになりますね。
ええと、年間平均100人以上の巫女が出産している計算になりますが、それで良いのかな? 
妊娠から出産が半年程度だから、巫女が250人もいれば産みながらでもなんとか神殿を切り回せるでしょう。

いや、もっといる筈です。神殿では大母様以外に大きなお腹の巫女を見かけません。
まだ腹の膨らんでいない妊婦巫女の半分が普通に働いているとしても、残り半分の妊婦巫女は大きなお腹をしている筈。
となると動きづらくなった巫女さん達は、神殿奥の専用区域にいるのでしょう。
ですよねー。神殿の周りに広がっている元農地って異様に広いですから、千や二千の人口なら楽々と養えるでしょう。
単純に考えれば椰子類とイモの実の樹が合計で一万本有ればそれだけで足ります。
そのくらいは神殿周囲に余裕で生えてますし。


生き残り戦に出場する下っ端オーク達は、巫女さんたちの腹にいる子は自分の種だと信じて死地に向かうのです。
そういえば地球でも、出陣する前の兵隊さんをそっち系のお店に連れて行く習慣のある地域とかありましたよね。
その手の発想がいきすぎると、現代日本でならランドセル背負う前の年齢なのに処刑される理由を作るために強姦された
ローマ皇帝の娘たちみたいなことになりますけど。



「ねえ女神様、これをどうしろって言うんですか? どう変えろと?」
「何も変わらない。というのも変化の一つですよ」

そりゃまあ、現状維持だって少なからぬ労力が要ることぐらい分かりますけど。
オーク達に抱かれている大母様はとても幸せそうだけど、不幸だ。私の基準で言えば間違いなく。


「レイ。我々は何も望んでいません。期待しているだけです」
「え? なら神像の件についても?」
「この件に関しては、です」
「ですよねー」

期待されても、ねえ。私に何ができるのでしょう。
あー そうか、グェスたちが生き残り戦をなんとかしたいと思っているのは、このせいでもあるのか。
下っ端オーク達をどうにかしたいというのは、同時に大母様をどうにかしたいってことでもあるのですね。
気持ちは解ります。大好きなオーク達を死なせ続けることしかできない大母様と嬉々として死にに行くオーク達のどちらも、
見ていて楽しくなれる姿じゃありません。

大母様は良い統治者です。少なくともオークとその妻たちにとっては。
ぶれない、迷わない、へこたれないのは、統治者としてならその逆よりずっとずっと優れた要素です。
でも悩みがないのとは違うはず。彼女の抱えた悩みをどうにかしたいという気持ちはよく解ります。
私にとっても大母様はお姑さんのお姑さんみたいなものですからね、少なくとも数十代前にはそうなっていた筈です。
嫁としては姑と仲良くしたいですし、その悩みを解決できるものならば‥‥。


ふむ。どうにか、できるかもしれません。
私の知恵や力などたかがしれていますが、問題を問題と認識できる元異世界人の着眼点が期待されているのです。きっと。

自分が不幸だと気付いていない人を、気付かせないまま救う。
できなくはないと思います。
オーク達は100年以上前に奇跡を起こしました。不可能を可能にしてみせました。
私たちにも出来るはずです。





 ☆59日め、新しい朝が来た☆


ゆうべはおたのしみました。

地球には「結婚式は花嫁の一番幸せな日」という式場の宣伝文句がありましたが、今まであの言葉の意味を誤解してました。
式当日が幸せの絶頂で、あとは相対的に不幸になっていくだけ。ではなかったのですね。
花嫁さんは翌日から新妻という、もっと幸せな生き物にクラスチェンジするのですよ。

昨夜、大母様+巫女さん達とオーク16人の乱交嬌宴を見て聞いて嗅いで、すっかり当てられてしまった私は宴会場に乗り込ん
で夫達に「かわいがれ」とお強請りしてしまいました。
いやもう、あれだけ見せつけられるとは思いませんでしたよ。お陰でオーク肌が恋しくて堪らなくなっちゃって。
いまの私には、三人の夫達限定ですがオークと肌を重ねることへの躊躇いが全くありません。気恥ずかしいので自分からあまり
過激なおねだりはできませんが、夫達に望まれたら何でも許してしまうし、してあげたいと思います。上手下手は別として。


仕方ないですよね、私はもうオーク妻なんですから。エロモンスターの真心にとろかされてしまったのですから。
情熱と誠実以上のMC(マインドコントロール)要素なんて、この世にありはしないのです。

で、昨夜は二人がかりでじっくりたっぷり可愛がって貰いました。
ええ、昼間は口付けだけで降参してしまいましたが、夜は口付けしながら胸を弄ってもらったのです。

もう本当に二人とも上手くて巧くて。美味しかったです、オーク唾液も舌も唇も。
ほら、初恋の頃って好きな人の姿を見ただけで胸が高鳴って、幸せな気分になれるでしょう?
その愛しい人がふたりがかりで、優しく情熱的にキスしたり触ったりしながら「大好きだよ、一生離さないからね」とか
囁いてきたら、頭が沸騰しちゃっても仕方ないじゃないですか。

あー 恥ずかしいっ。宴会場まで聞こえていたでしょうねえ、この部屋の扉は床下に隙間あるし、防音なんて考えられてません。
外の音が私の耳に聞こえていたからには、オークの耳に私たちのやり取りは筒抜けだった筈です。
どんなことを口走っていたか、具体的には言いたくありません。聞くな、武士の情けで。

お前は武士じゃないだろうって? ごもっともです。
ではその一部を抽象的に言いますと、ドスに右乳首を吸って欲しいと赤ちゃん言葉でおねだりして、吸われながら、将来母乳
が出る身体になったら子供が満腹なかぎり、いつでもどこでも飲ませてあげることを約束してしまいました。 
もちろんその間、ウォスの口は私の左胸に吸い付いたままでした。どうもウォスはおっぱいの星の下に生まれたおっぱいエロ
モンスターのようです。

そんな感じで、ゆうべは何度も何度も可愛がって貰いました。
鳩尾から上だけを手加減して触って貰っただけなのにこれですからねー。
三人がかり全身くまなく手加減抜きでだと、いったいどうなってしまうのやら。




それにしても し あ わ せ だ な ー 。

今朝の私はドスとウォスの二人と一緒に寝ています。全裸で。
訂正。
火炎耐性付きの首飾りを装備しているので、全裸ではありませんでした。ほぼ全裸です。

いやもう、前からやってみたかったのですよ、裸になって同じく裸のオークに添い寝するの。
薄布の肌着姿で触れ合ってこんなに気持ちよいなら、素肌それも全身でならどんなに良いんだろうって。
だから試してみたのです。
昨夜は二人の夫オークと川の字になって、肉布団に挟まれて寝たのですよ。


感想ですか? 最高です。
オークの産毛の感触を素肌で感じつつ、オークの体温に包まれて、オークの鼓動を聞きながら寝る。
私はこのためにあの羅刹場を乗り切ったのだと断言します。これだけのためじゃないけど。
あとはグェスもいれば完璧なのですが。

ああ駄目だ。思考回路が万華鏡で分速90回転してます。
うん、私ぼけてる。色ボケ状態です。新婚なので仕方ありませんが。

ちなみに私たちが寝ているベッドはスポンジもどきを縛って形を整えたマットに麻布のシーツを被せたものです。
この部屋は冷暖房用の設備がないので、気温は外と大差有りません。
裸でも三人で寄り添っていれば毛布や毛皮はいらないのです。抱き合って寝ていると丁度良い温度ですね。


意識がはっきりしてきました。完全に目が覚めたようです。
オーク達はまだ微睡んでますね。疲れているのかもしれません。

昨日は結構なハードスケジュールでしたからねー。なによりも、あの激闘からまだ丸一日過ぎてません。
二人には今だけでもゆっくりしてもらいたい所です。


寝台の横に立ててある衣装掛けに、三人分の服というか毛皮が一つと腰ミノが二つ掛けられています。
もちろん私たちのものです。つまり私だけでなく、ウォスもドスも装身具以外は何も身に付けてない裸な訳で。

大人のオークが腰ミノを付けていない場合は二つだけ。死んで身包み剥がされたときと、お嫁さんと寝るときだけです。
お風呂? 入浴用腰ミノ付けて入ってますが何か。
二人‥‥いえ、ウチの巣の幹部三人のお嫁さんは私だけですから、グェスたちの腰ミノを外せるのは私だけなのです。
なので、それぞれの腰ミノの外しかたを教えて貰ってます。

オークの腰ミノは結び目が解りづらい構造になっているのですよ、この島にだって雄を好んで襲い精気を搾り取ろうとするエ
ロモンスターはいるので、その用心です。
まあ、そんなのと頻繁に出くわすことはないにしろ、巣に置いてきた「踊り子の腰ミノ」みたいに戦闘中突然外れてしまうと
厄介ですからね。そう簡単に結び目が解けてしまっても困ります。


ああ、幸せです。生きていて本当に良かった。
何回でも言います。幸せです。
多分ですが、私は三日後でも同じ事言ってると思います。生きていて良かった、お嫁さんになれて良かった、と。
ほんとうにくつろげるなー。
いつか襲われるとドキドキしながら一緒に寝るのも良かったけど、いまの安らぎには替えられません。
神殿に泊まっていてこれなら、我が家でならもっと安らげるのでしょうか。


ん。

ドスの手が動いてます。寝ぼけているのかな?
その、夢見心地な彼が左手で撫で回している場所は、私の腰というかお臍の下数センチを中心にしたあたりでして。
珠を愛でるように、とはこういうのを表現するのでしょうか、宝物を扱うように私のお腹を撫でてます。

こ、このエロモンスターめぇ♪ いいですよ、もっとやりなさい♪

ウォスに乳首を吸われたときもグェスと口付けしたときも思いましたけど、こいつら反則(チート)です。
何かズルしているとしか思えないぐらい、触られると嬉しくて幸せで気持ちよいのです。
もちろんそれだけではありません。
この世界の神々あるいは他の誰かが与えてくれた加護で、第六感が人間離れしている私には解ってしまうのです。
ドスが、どんなに私のことを好きで、大切に思っていてくれているのかが解ってしまうのです。

これが女の喜びというものなのでしょうか。
この人(オーク)の子供を産んであげたい。そう素直に思えます。私は男だけど。

いえね、女の子に転生したと思うからいけないのですよ。だから悩む羽目になると気付きまして。
私の自我は転生前から殆ど変わっていません。
そして今の私が精神的に男のまま、三人のオークを夫として‥‥その、好きなのは、前世から私は同性愛者であって、
たまたま前世ではそう気付く切っ掛けがなかっただけと考えるべきでしょう。
前世の私には、801系漫画やBL小説を「読め」と押し付けてくる腐った女友達や姉妹はいませんでしたからねー。
従妹はいたけどまだ幼稚園児でしたし。


つまり、私はこの世界に女の子として産まれたのではなく、好きな男の子供が産める超能力者に産まれたのだと考えれば問
題ないのです。
そう、私はリアル男の娘。
外見が女の子にしか見えない可愛い男の娘で、同性愛者で、好きな男の子供が産める特殊能力持ち。
そんなファンタジー生物なのです。

自分を「男心だけしか理解できない女の子」だと定義して女の子として暮らしていくよりも「男に惚れてしまった男の娘」
だと定義して男の娘として暮らしていく方が気楽なんですよ、私的には。




 ☆59日めの2、露骨な朝だ☆



凄かった。



何がって、ナニですよ。ほら、朝に起き上がるアレ。「神保さん stand up!」のあれ。
二人とも腰ミノ外していたからもう、モロ見えでした。

やっぱり私、同性愛者のようです。
あんなご立派なモノを見ても、敵愾心とか脅威とかを感じません。私にとってアレは敵や脅かすモノではなく、頼もしい存在
なのです。
そうかー オークのあれってあんなのなのかー。

は、恥ずかしがっちゃいけませんよね。夫婦になった訳ですし。
‥‥恥ずかしいわぁっ! 

あ、あんなものが、いえ前世の、つい二ヶ月前までは私にも類似品が付いてましたけど。
同性愛者の自覚がなかった前世では、それほど多くの類似品を見ていたわけではありません。でもそれらとオークのそれとが、
同じ範疇のモノであり似ているけど違うものであることぐらいは解ります。
具体的に言うと、アダルトショップで売っている電動だったり電動じゃなかったりするコケシ人形にちょっと似ているアレコレ
と比べると幾らか大人しい姿形をしています。
猫のアレみたいにトゲトゲだったり、豚のソレみたいにドリル状だったりはしませんでした。


あれを私は、あれしちゃうんですよねえ、近いうちに。

できるの?

前世の装備品が500ミリリットル入りだとしたら夫達のは2リッター入りサイズなのですが、ペットボトルで言えば。
直接触って調べた訳じゃありませんが、今の私の肘から先より長いし、握り拳よりも太いですよねえ。夫達の装備品は。
どうしましょう?


「で、何故それを私に相談しに来るの?」
「他に信頼できる人、知りませんし」

私の返答に、人気のない中庭でやっていた朝の稽古を終えて汗を拭っていたソーニャさんは呆れています。
いや、参拝やなにやらに来た嫁さんたちにも聞いてみたのですが皆さん「夫達に全てまかせなさい」としか言わないし。

「私だってそう言うわよ。たとえ致せなくても、旦那様たちはそれを承知の上で貴女を妻に迎えたのでしょう?」
「ええまあ、そうなんですけど」

物理的に色々無理があることは分かってました。体格自体、私とオーク達では幼児と相撲取りぐらい違いますから。
でも、金髪ちゃんとその旦那様は私たち以上に体格差がありましたよねえ?
なんとかなるのかな? なるかもしれません、彼らはエロモンスターですし。

エロスの力を侮ってはいけません。
これもコケの一念というのでしょうか、オーク達の変態紳士力こそが魔王に勝ったのですから。
もしもオーク達が下衆モンスターだったら、大母様は八つ当たりの的としてなぶり殺しにされ食べられていた筈です。

エロモンスターだからこそ可愛がって可愛がって、その心をとろかしてしまったのです。大母様が生涯を奴隷として捧げてし
まう程に。地球には「君主は国家第一の下僕なり」なんて言い切った苦難マゾヒズムの王様もいましたけど、彼女はオークの
奴隷であるために、奴隷の自分が安心してオーク達に仕えていられるために宗教国家を運営しているのです。

若い雄のエロパワーは時に想像を絶しますからねー、地球人類それも世界一淡泊だと統計結果が出ている日本人ですら。

私の夫達はオークで筋金入りどころか超合金級の変態紳士だし、心配要らないかな?
紳士だけど変態ですからねー三人とも。この島のオーク達は、オーク達の一部は女の子を女の子の側から惚れさせることに命
賭けちゃうんですよ。本気で。


あ、命がけで思い出しましたけど、まだソーニャさんへお礼言ってないや。

「先月はご指導ありがとうございました。お陰で命が繋がりました」
「それなんだけど、だいたいの所は聞いたけど詳しい話が聞きたいわ」

という訳で、一緒に水浴びしながらトログロダイト騒動について話しました。私の正体については省略して。

いえね、生命の粘土に触れてドラゴンの正体を知る → なぜか不意打ち失敗 → 精神面は負けてないので攻撃呪文が通じる
のではないかと思いつく → 紆余曲折の果てにドラゴン自滅。
という流れなので、私の素性について黙っていればバレる心配ないのですよ。
ソーニャさんの口が軽いとは思ってませんが、知る者の数を抑えることが秘密を守る秘訣です。完全に信用している訳でもあ
りませんし。


「それ、無理よ」
「え?」

話が石切場でトログロダイトの群に切り込む前のあたりに来た所で、突っ込みが入りました。
ソーニャさんの見立てでは、私は 死 ぬ と 蘇 生 で き な い そうです。レベル不足で。

一部のゲーム世界と同じで、この世界には復活魔法があります。いわゆる○オリクですね。
しかし、この手の魔法には色々と制限があります。
死体の損壊が酷かったり、死後時間が経っていたりすると復活の難度が上がりますし、そもそも対象に生命力や生きる気力がな
ければ復活できません。
そして、復活した者は衰弱します。ゲーム的に言えばレベルが下がります。
そうです。低レベルキャラクターである私は、復活時の衰弱に耐えられない可能性が高いのです。

「つまり私は、死んだらそれっきりですか?」
「可能性は半々ね、死んだままかアンデッドになるかのどちらかよ」

うわぁ。


あ、そうか。死んでも簡単に生き返れるのなら女神様が「最大の危機」だなんて言う訳ないですよね。
とびこえて はじめてわかる みぞのはば。レイちゃん心の一句。
現世への執着なら人一倍あると自負してましたが、確かに執着が強いと亡者(アンデッド)になる確率も上がりますよねえ。

するとこの髪は無駄切りしただけでしたか。せっかく伸ばしたのに。
ギュー・グェスの母上はヒルデニア出身で、長い直毛の黒髪なのだそうです。ええ、グェスは黒髪ロングヘア好きなのですよ。

まあ良いか。精々数ヶ月ずれこむだけだし。
夫オーク達が天寿を全うできるのなら、私の結婚生活はあと30年は続くのです。切るも伸ばすも、その時間の中で好きに出来
るでしょう。

なお水浴びの後で、ソーニャさんが左右の髪を切りそろえてくれました。これで見苦しくはなくなりましたね。




 ☆59日め3、死と再生☆


昼の決闘に出る準備に入ったソーニャさんと別れて、私はウォスとドスの二人と合流しました。
前と同じように軽く食事をしてから、闘技場へと向かいます。
ちなみに献立は市場で買った蒸し里芋もどきに、巣から持ってきたクジラ肉の燻製+蜂蜜。あと近所で採ってきた果物です。

開始まではまだしばらくありますが、既に結構な数の観客が入ってます。もっとも、入っているのは明るいところで大勢に見ら
れながらいちゃいちゃしている既婚者と、それを羨ましそうに見ている下っ端たちですが。
私たちは、最前列の升席に座ります。夫達二人は星10の戦士ですし、竜退治で名を上げてるので文句の出ようもありません。

あ、升席の端の壁際席にウサミミさんとその旦那様がいますね。二人だけで、父親と幼い娘のようにウサミミさんが旦那様の膝
の上に乗っています。
靴下脱いでるからウサミミさんの足の形がよく見えるのですが、綺麗な足してますねー。人間のとは違う形ですが、思わず触り
たくなるような造型です。

彼女達のように静かに甘々トークしている夫婦もいれば、激しく組んず解れつやっている所もあります。
私たちのすぐ後でお隣に来た金髪ちゃん達とか。

すぐ隣で見せつけるように、というか明らかに見せつけられてます。
具体的に言うと胡座をかいた旦那様の膝に金髪ちゃんが座っていて、お姉さんが妹の下腹部を触って、金髪ちゃんの皮膚と肉ご
しに旦那様のものを撫でさすっているのです。指で揉んだりもしていますね。
金髪ちゃんは旦那様とお姉さんに代わる代わる口付けして舌を絡め合っていたり、どちらとも口付けしていないときは切なげに
あるいは幸せいっぱいに喘いでいます。
旦那様は口と両手と三本目の足で二人の奴隷妻を可愛がっています。金8銀2ぐらいの割合で。

えーと、ほら、便秘のときに大腸のあたりを触ると固いものの手触りがあるでしょう?
あんな感じで、銀髪のお姉さんは妹の下腹とその中の固い物体に触っているのです。
自分の手で、可愛い妹と大好きな旦那様の二人を同時に悦ばせているお姉さんは、本当に嬉しそうです。
オーク相手には半端な、いえ余程の演技であっても通じません。彼らの鼻はアドレナリンなどの内分泌物の濃度すら嗅ぎ分ける
のですから。
旦那様が満足しているということは、銀髪さんは夫が妹に種付けしてることを本気で喜んでいるのです。


眼鏡の奥さんたちもでしたけど、仲良しさんですよねえ。
流石はファンタジー世界、ハーレムの有り様が地球とは大違いです。これはもう、旦那様がエロモンスターだからだけでは説明
しきれないかも? 元戦場捕虜の彼女達はトカゲ人や神殿に洗脳されてない筈ですし。

ちなみに眼鏡の奥さん達は、舞台を挟んだ反対側の升席にいます。彼女達の巣は新月の門前市へ早めに商隊を送って、早めに売
り尽くして店仕舞いする方針なのです。
今も升席で眼鏡の奥さんと「ずっこんばっこん」している旦那オークは星10の戦士で、席次は島全体でいうと40位以内へ確
実に入るぐらいでしょうか? なので升席に座る資格充分です。


私も彼女達のようになれたら良いと思います。グェス達が選んだ女の子なら、その子達が夫達の子を孕むことを我が事のように
嬉しく思い、共に喜ぶことが出来るでしょう。そうなれたら、それはとてもとても幸せな事の筈です。

ああ、そうか。そりゃ堕ちるわ。
人間は容易く堕落します。楽な方に楽な方にと進んでしまう生き物なのです。

金髪ちゃんやそのお姉さんや、二人に仕えていた侍女達が堕ちてしまうのは当然なのです。
魑魅魍魎が泣いて逃げ出す貴族社会で生まれ育った令嬢達が、貴族の体面やしがらみや妬みや諍いのない平穏で充実した暮らし
を一度味わえば逃げられる訳がない。

彼女達にとっては、人間として、女として扱われること自体産まれて初めての経験だった筈です。
私なんか平凡な小市民からお姫様扱いの落差で病みつきになってしまったのです。
道具ではない、人格を持つ存在として扱われた彼女達の衝撃はちょっと想像もできません。今も隣の席でいちゃいちゃしてます
けど、彼女達の旦那様もオーク島式の変態紳士ですからねー。紳士的かつ情熱的に捕虜達を可愛がってたことは確実です。

ええ、西方文明圏は地球の欧州に輪を掛けたような修羅の国々なのですよ。眼鏡の奥さんや神殿の女達の話から推察するに。
まして彼女達にはもう帰る場所なんてないのですから。
オークに負けて捕虜になった貴族の子女が居れる場所は西方文明圏にも東方文明圏にも、墓場の隅にさえありません。
今頃は乗組員と乗客まとめて難破して死んだことになっていて、領地も資産も親族や寄り親・寄り子が分配しているでしょう。


なるほど。
この島ではつくづく命が軽いのですね。容易く死に、容易く生まれ、容易く生き返り、容易く生まれ変わるのです。
女達が生まれ変わるからこそ、その主人となるオーク戦士も生まれ変わらなければならない。

私は今でも、いえ前よりも生き残り戦には反対します。効率の良さは認めますが、それ以外の取り得がないですから。
正確には、もっと効率が良くて感情やその他の点で納得のいく手段を見つけたいのです。
代わりの方法を見つける前に廃止しろとは言わないだけで。

生き残り戦には反対ですが、かといって今すぐ全てのオーク達にお嫁さんを行き渡らせる事はできませんし、やりません。
例えばウチの下っ端達が今すぐにお嫁さん貰ったとしても、寡婦が次々と増えるだけです。下手すれば、いえ確実にお嫁さんた
ちも次々と命を落とすでしょう。
ずっと洞窟の中に閉じこもっていて貰いでもしないと、お嫁さん達の命が幾つあっても足りません。


神殿がお嫁さん候補に武術や呪文などの戦闘手段を叩き込むのは、この島の生態系が危険すぎるからです。
かといってモンスターを完全に駆除してしまえば、トカゲ帝国などの列強が侵略してくるでしょう。
侵略されない為には国力が必要で、国力を上げるには人口が必要で、オークを増やすには人間(ヒュー)などの雌が必要。
嫁さんを安定供給するには外部との交易が必要で、嫁供給についてトカゲ帝国に依存しないためには大枚はたいて東方やヒルデ
ニアの海賊と取り引きするしかない。
一度に沢山の女奴隷を仕入れても受け入れる事ができないから、少人数の奴隷でも高い代金を払わないと海賊が儲からない。
だから質の良い奴隷に馬鹿げた高値を付けることで、数を制限しつつ交易路を保つ。
嫁候補の数を抑えることでオーク同士の競争意識を煽り、神殿の収益をあげ、溜めた財貨を交易に使う。
嫁を守り通せる強者でなければ嫁を貰えず、手っ取り早く強くなるには闘技場の生き残り銭に参加するのが一番早い。

社会構造の歪みって、指導部が有能で誠実でも、個々の現場が善意で動いていても発生するんですよねえ。
上から下まで腐りきった組織はあっという間に倒壊するから当然といえば当然ですが。
清朝チャイナやロマノフ朝ロシアの末期とか、笑えるぐらい壮絶ですよー。


フォンタジー世界でも、現実は手強いですね。
これを「どうにかできるもんならやってみろ」って言ってるんですよね、私に。大母様は。
だからこそ昨夜、しつこいぐらいご主人様たちとの絡みを見せ続けたのでしょうし。

オークや女達から聞いた話から察するに、この島のオークに変態紳士が多いのは大母様の影響でしょう。間違いなく。
彼女は息子や孫やその子孫達に「女はまず心を堕としてから抱きなさい(他に手がない緊急時は除く)」と教育しました。
その結果嫁さん達とらぶらぶちゅっちゅっな暮らしを体験したオーク達や、私の夫達のように産まれる前も後も母親に溺愛され
て育ったハーフオークたちは立派な変態紳士になっていったのです。

彼らはもう、殺伐とした生活には戻れません。一度コタツの魔力に捕らえられた人間が逃れられないように。
余所の、東方の僻地や西方の周辺区域で蛮族やっている同族達のように、エルフや人間(ヒュー)族と見れば襲い、殺し、奪い、
犯す‥‥そんな暮らしは出来ないのです。
だってそんなことしたら、特に理由もなく村や船を襲ったりしたら嫁達が悲しむじゃありませんか。

オーク達は人間と極めて近い、ほとんど同じと言ってよいぐらい似ている生き物です。
恐怖や苦痛にならともかく、快楽と安逸に耐えられる人間なんて居やしません。
だからこの島で生まれ育てば、オーク達は短気で単純な野蛮人ながらも優しく健やかな好漢に育つのです。
それがこの島で暮らす最適解なのですから。オークだって楽な方へ楽な方へ、楽しく嬉しい道に進んでいくものなのです。
人間やトログロダイトと同じように。

オーク島良いとこ一度はおいで。特に交易船と嫁入り志願者は大歓迎です。
ただし西方文明圏の船だけは別。そっちは警告抜きで襲撃します。文句があるならきちんと講和条約を結びましょう。
生憎とこの島は、未だ「鉄の王」の眷族と戦争中なのですよ。



生き残り戦が始まりました。鋼鉄製の武器を持った16人のオークがオールクゥス神の御名を唱えて舞台に上がり、全員揃った
ら最後の一人になるまで戦い続けます。

これで三回目。そしてこの一ヶ月で有った色々な体験があるので、今度こそ最初から最後まで見続けました。
死は嫌だ。殺すのも殺されるのも好きにはなれません。戦場的な意味で童貞を棄てた身ですが、やはり私には戦士の資質がない
ようです。

舞台で殴りあい切り付けあい刺し貫きあうオーク達の表情は妙に朗らかで、屈託を感じません。
そりゃあまあ、憧れの大母様や可愛い新入り巫女さんたちを何日も何週間も共同奴隷妻として可愛がって孕ませちゃったのです
から毒気も抜けているでしょう。
殺し殺される相手も気心の知れたハーレム仲間、同じ嫁さんを可愛がった共同夫同士。誰が生き残っても恨みっこ無しです。

なるほど、初めてこの儀式を見たときに、簡単に死んでいくと思ったのはこのせいですか。彼らなりの殺し合う理由が、その欠
片だけでも理解できた今はちょっとだけ印象が違って見えます。

たとえばこの生き残り戦にあまり関心をもっていない奥さん達ですが、それも道理なんです。
だって舞台の上の連中を、奥さん達が応援する訳にもいかないでしょう? 
夫でも巣の仲間でもない余所の雄、しかも神殿の一夜(期間限定)夫を応援する訳にはいきません。その権利があるのは大母様と
元ごみための下っ端オーク居住区で伸びている筈の巫女さん達だけです。
あと、その六つの腹にいる子供たちぐらいか。

今もまだ、オーク島の戦争は続いています。
戦争中だからこそ、この儀式が続いているのです。弱いオークを淘汰して強いオークを残すために。

この儀式に参加しない、したくない下っ端達は腰抜け呼ばわりされています。
ですが私はそのオーク達を、ウチの巣の下っ端連中を支持します。ハラキズ達は間違ってません。
自分の命の使い時ぐらい自分で選ぶのが真の戦士でしょう。命を惜しむのは臆病なんかじゃないのです。




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