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No.36934の一覧
[0] すりこみっ!【オリジナル・ヒロイン飼育コメディ】[ハイント](2013/03/09 00:19)
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[36934] すりこみっ!【オリジナル・ヒロイン飼育コメディ】
Name: ハイント◆069a6d0f ID:a5c8329c
Date: 2013/03/09 00:19
注意書き
 若干スカトロっぽい描写があります。
 ・お腹を壊したヒロインを主人公がトイレでお世話する描写
 ・よく噛んだ食べ物を口移しで与える描写
 ・おしっこ少々

 あと、ぶっちゃけあんまりエロくありません。















 大学が夏休みに入ったある日のことである。昼食後、うだるような暑さにぐったりとした俺は、窓を開けたマンションの自室のフローリングで横になり、体を捻ってヨガっぽいストレッチをしていた。
 両の肩甲骨を床につけたまま、胴体部を捻って両膝が地面につかないものかと悪戦苦闘していた俺の頭上に、突然真っ黒い穴のようなものが開いた。
 穴、といっても天井に開いたわけではない。もしそんなことになっていたら、俺は落ちてきた天井だか上階の床だかに潰されて下手をしたら死んでいたかもしれないが……穴が開いたのは『空間』だ。

 何を言っているのか分からないって? 俺にも分からんよ。

 とにかく、床に仰向けに寝転がっていた俺の上の空間に穴が開いたんだ。そこは了解して欲しい。
 そいつは真っ黒い穴で、某国民的猫型ロボットアニメに出てくるタイムマシンの出入り口を彷彿とさせた。劇場版でよく見るアレだな。あんな感じだ。
 そんでまあ、呆気に取られてポカンと見上げる俺に、その穴から女の子が降ってきたわけだ。低価格エロゲにありそうなお手軽展開だな。
 その女の子は勿論全裸だった。全裸で俺の顔の上に降ってきたんで、慌てて俺は両腕でガードした。なんせそのままだと顔面に両膝でニードロップ食らいそうな体勢だったんで、これは不可抗力だ。
 落ちてきた両膝を両手でキャッチして、一瞬で支えきれないと悟った俺は、ガバッと両膝を開いてやった。ご開帳~、なんて余裕があるはずもなく、これは完全に自己防衛本能の成せる業だった。
 とはいえ、そのまま両腿を大開脚して顔面騎乗の体勢になった時には、流石に一瞬『イヤッホーゥ!』と思ったね。三次元女のアソコは臭いとよく聞くが、全くそんなことはなかったからな。

 ……いや、彼女が本当に三次元の存在かは、今もって謎なんだが。




















すりこみっ!

初日





「……で、君は何者なんだ」

 心行くまでパイパンの感触を堪能してから、俺は彼女の下から抜け出した。
 抜け出す前にじっくりと観賞したい気持ちもあったが、ここはぐっと堪えた。基本的に俺は純愛志向で、こういうのは段階を踏むべきだと思ったからだ。
 念のためカーテンを締めた後、正面に正座して彼女を見る。座っているので分からないが、身長は150センチ程度だろうか。肌は白く、幼い顔立ちにペタンとした胸は思い切り俺の好みで、しかも腰まであろうかという白髪ロングである。
 二次元では銀髪属性の俺だが、まさかリアルで銀髪ロリと出会う機会などあるはずもない。もしここが実家だったら、純愛主義を返上して発作的に蔵に監禁、陵辱ルートに突入した可能性もある。それくらい好みだ。
 そんな彼女は、軽く小首を傾げて俺を見上げていた。一向に口を開く気配がない。業を煮やして、俺は何度も声を掛けなおす。

「名前はなんて言うんだ? 何処から来たんだ? 目的はなんだ?」
「…………」

 ここでようやくパクパクと少女が口を開きだしたので、俺は黙って耳を澄ました。
 しかし一向に声が聞こえない。まさか人間の可聴域外で会話する宇宙人だろうか……などと不安になり出した俺だった。

「あーっと、俺の声は聞こえてるか? 耳、耳」

 耳を指差して俺は聞いた。少女は俺の仕草を真似する。つんつんと自分の耳をつついて。

「み、み……」
「そう、耳」
「みみ、みみ」

 ようやく声を聞くことが出来て、俺はひとまず安堵した。
 それにしても可愛らしい声だ。淫語とか言わせたい、凄く言わせたい……などと言っている場合でもなく、俺はとにかく思考を進めた。

「とりあえず人間の声を聞き取る聴覚と、発声機能はある、と。……言語をコミュニケーション手段とする種族にしか思えないが」
「み、み、みみ」

 俺は裸の少女をまじまじと観察した。 
 登場こそ奇怪だったが、外見的には人間と変わらない。しかし裸体への羞恥心はないようだし、言語的コミュニケーションに慣れている様子もない。
 仮に言語能力があるなら、同一の音だけしか発さない今の少女の様子はおかしい。例え知らない言葉でも、体系化された言語かどうかくらいは聞けばなんとなく分かるはずだ。

「待てよ、まさか音階やリズムで意思疎通するのか? あ、あー、あーあ、あーあーああ」
「……あ?」
「あ」
「ああー」

 俺の真似をして声を出す少女。その素直さにほっこりした俺だが、どうもこれも違うようだ。
 そもそも、彼女に積極的にコミュニケーションを取る意思と知性があるなら、最初から積極的に身振りでも声でも使ってくるはずだ。あくまでやって来たのは彼女の側なのだから。
 仮にテレパシー以外のコミュニケーション能力が退化した進歩種族だとしても、彼女の肉体は明らかに人間と近似している。その位の試行錯誤は、俺に言われる前に自力でできる気がする。

「となると……。記憶喪失とか、あるいは今さっき生まれたばっかりとか……」
「か、か」
「シャドーイング、だよなこれ。赤ん坊並と仮定できる、か?」
「か? か?」

 大分滑らかに発音できるようになっているあたり、学習能力……というより、運動能力は低くないようだった。
 ……とりあえずこういう場合、王道なのは。

「正木範明だ。の、り、あ、き」
「の、り、あ、き?」
「範明」
「のりあき」

 自分を指差して名前を名乗る。
 俺の名前は外国人には割と発音しにくいらしいが、彼女は明瞭に日本語のイントネーションで発音した。やはり発声能力自体は高い。
 『テレパシー以外のコミュニケーション能力が退化した進歩種族』という仮定は、この時点で否定されたと見て良いだろう。となると、

「宇宙人ないし高次知性体から送り込まれた人類観察用インターフェース……。あるいは時空間転移のショックで記憶を失った未来人……あたりが王道か」

 あくまでオタク的に考えるなら、そうなる。
 最初空間に開いた穴は既に消え去っていたが、しかしあれは作為的なものだったように感じる。確証はなにもないが、もしあれが天災的なものなら、もっと周囲や俺や彼女に被害が出ているような気がするのだ。

「まあいい。俺は初期化状態の全裸美少女を保護した。とりあえず現状はそんなところか」

 そう簡潔に現状を纏めて、俺は立ち上がった。
 この暑さだ、流石に喉も渇く。冷蔵庫に麦茶を取りに行く俺の後を、少女はてくてくと追いかけてきた。

「ん?」
「ん?」
「麦茶、飲むか?」
「むぎちゃ、のむか?」

 凄まじい学習能力に、俺は少しばかり背筋が寒くなった。
 まだ意味が分かっているわけでもないだろうが、明瞭な発音である。もし彼女が人類に敵対的な宇宙人の偵察ロボットだとしたら……などという妄想が浮かび上がってきて、俺は魂の昂りを覚えた。
 ……おもしれえ、やってやろうじゃねえか。
 俺だって子供の頃、ヘレン・ケラーの伝記くらい読んだことがある。冷蔵庫を開けて麦茶を取り出し、戸棚からプラスチックのコップを二つ出してリビングに戻る。
 女の子の肩を軽く手で押してテーブルの前に座らせ、俺は向かいに回って座った。

「これが『コップ』だ」
「これがこっぷだ」
「コップ」
「……こっぷ?」
「そう、コップ」

 そう言って俺は少女にコップを渡した。『コップ、コップ』と少女は呟きながらコップをいじる。
 次に俺は、麦茶のボトルを手に取った。

「これが、『麦茶』だ」
「これ、……これ?」
「麦茶」
「むぎちゃ」

 そう言って俺は少女にコップを持ち直させた。左手で白く華奢な手を軽く支え、右手のボトルで麦茶を注ぐ。
 コポコポと注がれる麦茶を興味津々見つめる少女。お約束通り、好奇心は旺盛なようだった。

「これが、麦茶だ」
「むぎちゃ? むぎちゃ……」

 俺は麦茶のボトルを置くと、首を傾げる少女の左手を取って、コップの中に人差し指を突っ込ませた。
 冷たい液体の感触にびくりと震える少女。俺はそのままの体勢で、もう一度言う。

「麦茶」
「……むぎちゃ!」
「麦茶。よろしい」
「よろしい、よろしい!」

 さて、と俺は手を離して、テーブル上の自分のコップにも麦茶を注ぐ。勿論目線は少女から離さない。
 少女はどうやら麦茶に興味津々らしく、コップを持ち上げたり傾けたりして……顔面から麦茶を被った。

「ひゃあっ」
「冷たいか?」
「つめたいか? ……つめたい」

 むー、と眉間に皺を寄せて、少女は残った麦茶の水面を睨んだ。
 可愛らしい姿に和みつつも、俺は少女の手を握り、手の甲に自分のコップから麦茶をたらす。

「ひゃっ」
「冷たい」
「つめたい……つめたい!」
「よろしい」

 どうやら温感も人間と変わらないようだと、俺は納得して頷いた。





 そういったやり取りをしばらく続け、俺と彼女は言葉の伝達法を確立した。
 とはいえ俺としては非常に楽な仕事だった。少女は最初から発音能力が恐ろしく高かったし、記憶力も高い。それに五感も鋭敏だった。
 サリバン先生のような苦労があるとは最初から思っていなかったが、多少拍子抜けだった感は否めない。

「ま、その分他の苦労はあるんだがな」

 麦茶を飲みながら、俺は自分の状況を省みた。
 部屋を見る。開いていた窓は既に閉めて、今はエアコンのスイッチを入れている。なにしろ風でカーテンが捲れるため、万が一俺の部屋を双眼鏡で覗いた奴が居たら少女の裸が丸見えになる。彼女の裸は俺だけのものだと、早くも俺は思い込んでいた。
 既に少女の『所有権』を主張することに躊躇いはない。我々の業界用語で表現するなら、彼女は『落ち物系ヒロイン』である。拾った俺が囲うことに何の問題があろうか。いやあるけど。

「どう見ても監禁だな。しかし彼女の容姿だと、迂闊に外に出しては警察に職務質問されかねんし……」

 それに個人的な感情でも、彼女を外に出すのは避けたかった。『病的に独占欲が強い』とは昔誰かに言われた言葉だが、いや全くその通りだと、俺は自分でも思っている。
 理想を言えば、『外の世界がある』ことさえ知らせたくは無い。このマンションの一室が彼女の世界の全てなら、俺の独占欲は完全に満たされるし管理も楽だ。
 幸い連れ込む姿を誰にも見られていないわけだし、このマンションは防音もしっかりしてるので、まあ閉じ込めてしまえば彼女の存在は外にも当分バレないだろう。
 また、俺の部屋は七階でそれなりに高く、都合の良いことに同フロアは空き室だらけだ。まあ一フロア三室しかないのだが。
 それに俺は今夏休み中なので、一切外に出ないで引篭もっていても問題ない……。

「いや待て。食料その他の買出しはどうする」

 それに、少女をいつまでも裸で置いておくのも目の毒だ。思考と妄想に没頭していたので今まで気にしていなかったが、このまま生活していたら数日中に陵辱ルートは間違いない。
 監禁ルート一直線な現状で何を言っているのかと思うかもしれないが、俺は監禁調教モノが好きなのであって、断じて監禁陵辱モノが好きなわけではない。この二つは似ているようで微妙に違う。

「密林使うか? いやしかし、他の人間を部屋に入れるのもそれはそれで……」

 今の時代、部屋に引篭もっていても金さえあれば生活は出来る。
 男子大学生の分際でオートロック付きマンションの七階に住んでいる事からも分かるように、俺の実家は割と裕福ではある。
 とはいえ、不労所得だけで生活できるような資本家階級ではない。それに夏休み中はしのげても、秋になれば大学も再開する。
 その頃まで彼女が居るとするなら、それまでにはちゃんと、ある程度の社会常識を叩き込んでやる必要があるわけで、結局引篭もりは問題の先送りでしかない……。

「……買出し、行ってみるか」

 麦茶を自分で注いでごくごく飲んでいる少女を見ながら、俺は覚悟を決めた。

「となると、置いてはいけない。放置して危ないことをしたり、鍵を開けて出て行かれても困る」

 絶対に、目は離せない。……俺がこれほどに彼女の扱いに慎重になっているのには理由がある。
 彼女のような無知系ヒロインというのは、エロゲだと大抵寝取られ要員なのだ。非常識な行動や警戒心の無さに付け込まれて酷い目に合うのが王道パターンで、俺は何度も二次元でトラウマをこさえていた。
 こういう子の扱いは『子育て』に準ずる。プライバシーとかわがままとか、そういったものに配慮するとド壷に嵌る――それは俺がモニタの向こう側で学んだことだ。

「……俺のエロゲ脳も極まってきたな」

 苦笑して自嘲する。
 幸い俺には良識が無いし、女の子を支配することに快感を覚える変態でもある。その点は自信があった。
 実際、もし外から鍵をかけられる部屋があれば、そこに閉じ込めて出かけただろう。しかし生憎そんな便利な部屋は無い。
 トイレのドアノブを外せば出られなくなるのではないかとも思ったが、指を突っ込んで無理矢理開けられるかもしれないし、そもそもここはマンションである。勝手にバラすのもまずい。
 南京錠やロープはあった気がするが、出会ったばかりで縛り上げるのも好感度が下がりそうだ。やめておこう。
 一通り可能性を潰して、俺は少女に声を掛けた。

「なあ」
「なあー?」
「……ああ、そうだ。名前どうしようか」

 今更そのことに思い至って、俺は天井を見上げた。
 シロ、という単語が真っ先に浮かんだが、流石にそのままでは犬の名前だ。首輪は後で買いに行くが、人間らしい名前をつけてやらなくてはならない。

「シロ、ハク……白亜でいいか。変換楽だし」
「はくあ?」
「白亜」

 指差して、ついでにそのまま頭を撫でて俺は言った。

「白亜、白亜」

 なでぐりなでぐり。

「はくあ、はくあ……」

 一通り撫で回して気が済んだので、俺はとりあえず、白亜に服を用意してやることにした。





「……案外何とかなるもんだな」

 俺と白亜には二十センチほどの身長差があり、サイズなど合うはずもない。
 なので俺は汗で透けない程度に厚手な無地のTシャツを引っ張り出して白亜に被せ、適当に折り返しては余った布地を縫い合わせた。安全ピン? 針は危ない。彼女は子供だ。
 裁縫などたいしてやったこともないが、案外適当でもなんとかなるもんである。特に襟元は開いていると乳首が覗ける危険性があったため、折り込んでから飾りボタンまで付けてしまった。
 ズボンも同様に、丈を折り返して雑に縫い付けた。ぶかぶかのウエストはベルトで締め上げてしまえば良い。パンツが無いのは我慢してもらうことにする。

「不恰好だが、まあ服はこれで行こうか……ちょっと待て白亜。お前、麦茶全部飲んだな?」
「のむ、のんだ? のんだ」

 『飲む』という動詞は既に教えていたが、過去形までは教えていないはずだった。
 動詞の変化まで理解したとしたら恐ろしい学習能力……などという話はさておき、俺は空になったボトルを振って溜息を吐いた。

「出発前に仕込みしておくか……」

 台所に向かう俺の後を、白亜はてくてく付いて来る。
 どうも刷り込み的なものが働いているらしく、彼女は俺の傍を離れたがらない。その点は俺にとって安心できる点だ。
 とはいえ油断も出来ないわけで、外に行くとなれば彼女の好奇心を引きそうなものはたくさんある。絶対に手を離さないようにしなければならない。
 正直な所、外の世界に対する恐怖や嫌悪を植えつけてしまいたい。彼女自身が閉じ篭ることを志向してくれれば、俺の負担は劇的に減る。

「……一応、使えそうなアイテムは考えておくか」
「てむ、てむ」

 邪悪な企てを練りつつも麦茶の用意をする俺を見上げて、白亜はそわそわと体を上下させていた。
 おや、と俺は引っかかりを覚える。踵を上下させる運動は腓腹筋を鍛える運動……などと言っている場合ではない。

「トイレか! 飲みすぎるからだ!」
「から、から……」
「はいこっち! こっち来る!」

 手を引いて俺は、トイレに白亜を連れ込んだ。
 急いでベルトを外してズボンを下ろす。ノーパンなのでそのまま便座に座らせれば済む。
 ふう、と一息吐いた俺を、白亜はきょとんとした目で見下ろしていた。

「のりあき、のりあき」
「なんだ?」
「すわ、すわる?」
「そうだな、座ってるな」
「すわってる、すわってる」

 せっかくの機会なので股間をチラ見しつつ、俺は適当に生返事を返した。
 しかし一向に出る気配が無い。たしかに尿意はあるようで、わずかに下腹部がぴくぴくしているのだが……。

「出して良いんだぞ?」
「だしてい?」
「出す」
「だす」
「おしっこ出す」
「おしっこだす?」

 うん、エロい。
 満足して、俺は股間に手を伸ばした。綺麗に閉じた筋マンである。ロリロリしくて素晴らしい。実に俺好みだ。
 大陰唇を広げてみる。綺麗なピンクの粘膜に、思わずごくりと唾を飲んだ。

「ステイステイ俺、ステイステイ……」
「すてすて?」

 やかましいわ。
 無意識に口に出していたことを白亜に指摘されて、俺は唇を犬歯で強く噛んだ。痛みで陵辱ルートの選択肢を叩き潰す。
 なんとか衝動を治めて、中指で尿道口の辺りを軽く撫でてみた。

「ひゃんっ!」
「出ないかなー」
「でない、でない」
「ふむ、じゃあこっちか?」

 足の付け根から下腹部、膀胱の上辺りを優しくくすぐるように撫で回してみた。
 ぴくぴくとした震えが強くなる。その表情は恥ずかしさを覚えているようにも、未知の感覚に戸惑っているようにも見えた。

「あっ、ん、あっ」
「おしっこ出る?」
「おしっこ、おしっこでる」
「おしっこ出ろー」
「で、でろー、おしっこでろー……」

 よし、段々発言の誘導に慣れてきたぜ。
 とはいえいつまでも悶える白亜を眺めているわけにもいかない。そろそろ俺の理性も限界に近かった。
 指先で膀胱の辺りを優しく押してみる。同時に尿道口の辺りもくすぐってやると、白亜はぶるぶると震えて嬌声を上げる。

「ああっ、あっ、で、でろっ」
「出る」
「でるっ、でる、おしっこ、おしっこでるっ」
「よろしい」
「――ぁあっ!」

 膀胱を押した指先をくりっと動かした瞬間、堰を切ったように水流が迸った。
 驚いたような表情で、白亜は自分の放尿を見た。やっぱり生まれたばかりなのだろうか。ここに来る前に生活史があれば、こんな表情をするはずがない。
 悪戯心を掻き立てられて、俺は彼女の手を取ると、そのまま溢れるおしっこの中に突っ込んだ。びしゃびしゃと飛び散る飛沫が俺の顔まで飛んできたが、まあ美少女だしいいや。

「これが、おしっこ」
「おしっこ、おしっこ」
「おしっこ出た」
「おしっこ、でた……」

 流れる勢いが弱くなって、ぶるぶると白亜は身震いした。
 最後まで出きったことを確認してから、俺はトイレットペーパーを取ろうとして気付く。

「あ、手濡れてるな」
「ぬれてる?」

 このまま紙を取ると、ロールの下まで滲みてしまう。
 さてどうしたものか。タオルで拭こうかとも考えたが、ふと思いついて俺は、白亜の口元に手を持って行った。

「舐めるか?」
「なめるか?」
「ほら、こうやって」

 軽く舌を出して動かして見せると、理解したのか白亜は素直に、彼女の尿で濡れた手を舐めてくれた。
 なんともいえない満足感に、俺は感動に打ち震える。全力でアブノーマルに走っていると、俺は自覚していたが――彼女には、そんな自覚さえ無いのだろう。
 完全に白紙の女の子を染め上げる喜びと、保護欲と責任感。彼女は何も知らないのだという確信が喜びに続いて、俺を一周回って冷静にさせた。

「……守らないとな」
「?」

 怪訝そうに見上げる白亜に、俺はぎこちなく笑みを浮かべた。……変態プレイの後になんで真面目モード入ってんだろう俺。
 白亜はそんな俺をどう思ったか、気付けばぺろぺろぴちゃぴちゃと、俺の手に吸い付いて舐め取っている。気に入ったのだろうか?
 排泄物の匂いに対する嫌悪感は割と後天的なものらしい。そんなことを思い出しつつ、俺は一通り舐め取られたことを確認して手を引っ込めた。
 トイレットペーパーを取る。カラカラと鳴るロールに、白亜は興味を惹かれたようだったが、手を出そうとはしなかった。手を出そうとはせず、おしっこで濡れた自分の手をまじまじと見つめて、舐めた。

「……。紙を取る前に手を舐める癖が付いたんじゃないだろうな……」
「?」
「いや、こっちの話だ」

 仮にそうだとしても完全に自業自得だった。
 まあともあれ、おしっこに対する嫌悪感が無いようなのは俺的にアリだ。飲尿プレイが捗る。
 そんなことを思いつつ、トイレットペーパーを畳んで、ぽんぽんと濡れた股間を拭き取った。……一瞬舐めるか悩んだが、自重する。初日から飛ばしすぎてどうする。

「はい完了。立って良いぞー」
「かんりょう、かんりょう」
「立つ」
「たつ?」
「立った」
「たった」

 立ち上がった白亜を振り向かせて、お尻の方も確認する。

「もうちょっと足開いてくれ」
「ひらいて? ひらいて」
「で、上半身を前に倒してお尻を突き出す……こんな感じ」
「かんじ、かんじ」

 難しい指示は手で補助してやれば素直にやってくれるので、非常にありがたい。
 足を開き股間を突き出した姿勢を取らせる。もう堪らない姿勢な訳だが、しかしなんとか俺は耐えた。再度トイレットペーパーでお尻から太ももの辺りを軽く撫でる。

「あぁう……」
「はいオッケー。体勢戻してくれ」
「もどして、もどして」

 後ろから抱きしめるように腕を回して、上半身を起こさせる。完全に白亜は俺の言いなりされるがままで、そういう所に愛しさを感じるあたり、男というのも業が深い。
 ……いやまあ、俺はその中でも一等業が深いと思うが。





「行ってきます」
「いってきます」

 一通りの準備を終えて、俺たち二人は部屋を出た。
 白亜の白い髪は、今はリボンやらなんやらで適当に縛り上げられて麦藁帽子に隠されている。実家から気まぐれに持って来た帽子がまさか役に立つとは、人生何があるか分からない。
 ついでに紫外線に負けると困るので、例のTシャツの上に薄手の長袖シャツを羽織らせた。袖は例によって折り返して適当に縫ってある。
 靴はどうしようもなかったので、雪駄を履かせた。一応サンダルもあるがどちらにせよぶかぶかで、鼻緒があるだけこちらがマシだろうという判断だった。
 正直不信な格好だが、とりあえず学生証は持ったので、いざとなったら口八丁で切り抜けようと思う。あらかじめ親父に電話して口裏合わせを頼もうかとも思ったが、どう説明してもボロが出るのは間違いないので止めておいた。
 非常階段のドアを開ける。真夏の空気が肌にまとわり付いて、俺は思わず声を漏らした。

「暑い……」
「あつい……」

 見ると白亜も嫌そうな顔をしていて、計らずも外への苦手意識を植え付ける結果になりそうである。
 白亜の手を引いて階段を下りながら、俺は脳内で動線を確認した。

「まず服、試着なしで即買って出る。次に靴。それからスーパーで保存食を大量に買い込む。欲しいものは色々とあるが、全部後回しだ」

 最優先は白亜との意思疎通を万全にすることで、正直それまではあまり外に出たくない。
 いや、意思疎通が出来るようになったからといって油断するのは、エロゲ的に考えて完全に鬱展開フラグなのだが、言葉が通じるようになれば因果を言い含めた上で拘束できるようになる。
 出かける時は縛り上げて押入れに放り込んでおこう――割と外道な発想だが、この時俺は本気でそうするつもりだった。

「いいか白亜。俺の手は絶対に離すなよ?」
「はなすなよ?」
「握る」
「にぎるっ」

 強く力を入れて手を握る。ぐ、っと握り返されて、俺は多少安心した。
 アスファルトは照り返しがきつく、汗はだらだらと流れ出る。予想最高気温は三十度を軽く超えていたはずだ。熱中症を恐れて自販機でスポーツドリンクを買い、二人で回し飲みしながら歩いた。
 服屋に着く頃には握った手もぬるぬるになるほどだったが、しかし白亜は手を放そうとする素振りを一度も見せなかった。正直俺の方が手を放して拭きたくなった位だが、まあどうせ拭いてもすぐにまた汗は出る。焼け石に水だ。
 服屋では俺の好みで適当に白いワンピースとズボン、Tシャツを選び、丈だけ見合わせてレジに持って行った。試着させようにもまだ白亜は自力で着替えが出来ないし、それに彼女は細い。大きいことはあっても小さいことはないだろうという判断だった。

「あ、パジャマと下着も居るのか」
「ぱじゃま?」

 などと二度レジに並ぶミスもあったが、服の買い物はあっさりと終わった。販売員のお姉さんが近寄る隙も与えない早業である。
 服屋の近所には靴屋もある。とりあえず運動靴を幾つか選んで試着させてみる。鼻緒で擦れて指の間が赤くなってしまった白亜を座らせ、まずは買ったばかりの靴下を履かせようとして、

「あ、片手が塞がってるな……」
「ふさがってる?」
「いいか白亜。これから手を離すが、絶対に勝手に動かないように」
「うごかない」
「よしよし」

 家を出て以来握り締めていた左手をゆっくりと離す。白亜はなんだか名残惜しそうにしていて、手持ち無沙汰な右手を泳がせた。泳がせて、しゃがみ込んだ俺の肩を掴んだ。

「のりあき、のりあき」
「はいはい」
「のりあき」

 さらに左手でも、縋りつくようにぎゅうぎゅうと掴んでくる。なんだろうこれ。凄く萌える。
 靴下を履かせたら靴を片っ端から合わせてみる。22.5か23センチくらいだろうか。

「きつくないか……って聞いても分からんしなあ。外から触って、明らかに緩いくらいにしておくか」
「ゆるい、ゆるい?」

 基本的に白亜は俺に文句を言わない。赤くなった指の間だって痛んでいるはずだ。白亜の顔を見て軽く触れてみると、ちょっとだけ顔を顰める。

「痛いか?」
「いたい?」

 もうちょっと強く擦ってみた。

「う……」
「痛かったら言うんだぞ?」
「いう、いう?」

 普通痛みを与えられたら、動物だろうが赤ん坊だろうが抵抗する素振りを見せるものだ。
 しかし白亜は完全に従順である。どうも自己防衛本能が鈍すぎるような気がして、俺はなんだか不安を覚える。

「……とりあえずこれにしておくか」
「しておく、しておく」

 店員を呼んで、タグを外してもらった。
 白亜が奇矯な行動を取るのではないかと一応警戒していたが、俺が他の人と話している間は、大人しく俺の陰で黙ってじっとしている。人見知りなのかもしれない。
 購入を済ませて店を出る。雪駄は貰ったビニール袋の中だ。右手一本で服やら雪駄やらをぶら下げるのは少々きつかったが、文句を言ってはいられない。白亜の手を離して、車道にでも飛び出されたら目も当てられん。
 用心のため二本目の500mlペットボトルを調達して、炎天下の屋外を家に向かって歩く。交通機関を使わなくて済む距離なのはありがたかった。改札で手間取るのは目に見えていて、それが駅員の印象に残るのは嫌な感じだ。……完全に犯罪者の思考である。
 犯罪者思考ついでに、スーパーも普段使わない所にすべきだろうか……そんなことを考えていた俺だが、握った手から白亜の歩みが微妙に遅れ始めていたことに気付いて、振り返った。

「……白亜、大丈夫か?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ……」

 顔も赤いし、ふらふらしている。大丈夫にはあまり見えない。
 急いで近くの日陰に連れ込み、ペットボトルを渡した。

「あつい……」
「ほら飲め、もっと飲め」
「のむ、のむ……」

 グビグビと飲んでいるが、焼け石に水の気がする。
 白亜の前にしゃがみ込んで、体の具合をざっと見る。手の甲が日に焼けて赤くなっていて、顔も火照っている。目の焦点は合っているのでまだ大丈夫だと思うが……彼女には保険証が無い。倒れたら面倒極まりない。
 真っ白い外見からして暑さに弱そうなイメージはあったが、ここまで弱いとは予想外だった。予定を切り上げて家に帰るべきか。

「……そうしよう。晩飯は夜買いに出ればいい」
「でる? だす?」
「出すな」
「な、な?」

 ふらふらしている白亜の帽子を軽くぱたぱたして風を送り、頭を冷やしてやる。
 ぐちゃぐちゃに纏めた髪が熱を篭らせ、排熱に悪影響を与えているのは想像に難くなかった。目立たないことばかり考えて配慮が足りなかったことを反省する。

「そもそも、もっと日が傾いてから出れば良かったんだな……」
「よかった?」
「良くなかった」
「よくなかった」

 自分では冷静なつもりだったが、考えてみれば唐突にエロゲ展開に叩き込まれて冷静で居られる人間が居るはずがない。
 俺は自分のことを結構ガチなキチガイだと思っていたが、どうやらそれほどでもないようだった。

「高校時代のアレで、多少は慣れたと思ってたんだけどなあ……」
「こーこー?」
「こっちの話だ」
「こっち、こっち」

 そうと決まれば、屋外に長居は無用だ。
 白亜の手を引いて日陰から出る。少しだけ彼女は嫌がる気配を見せたが、じっと目を見つめてやると、素直に日陰から出てくれた。
 どうも白亜には、俺に対する反抗心が無いらしい。それが俺個人に対するものなのか、人間一般に対するものなのかは良く分からないが、その見極めは後回しにしておこう。従順な女の子は可愛い。今はそれだけで良い。
 三本目のスポーツドリンクを買って、白亜の脇に挟ませる。服越しなのでそこまで冷たくは無いはずだが、どうやら気に入ったのか大人しく挟んでいた。

「大丈夫か?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
「辛くなったら合図するんだぞ?」
「あいず、あいず?」

 しかし白亜に、『気持ち悪くなる→熱中症で倒れる』という因果関係が理解できているとは思えない。能動的な意思表示は期待しないほうが賢明だろう。
 とにかく、俺の方で注意し続けるしかない。それが出来ないならきっと、彼女と付き合っていく権利は無いのだろうから。





 とはいったものの、家に帰り着く頃にはすっかり白亜はぐったりしてしまっていて、俺は盛大に焦ることとなる。
 それでもなんとか俺にすがり付いて歩ける程度なのはラッキーだった。流石に女の子を担いでマンションに入る姿が監視カメラに映るのは洒落にならない。
 まず第一に保身が頭に浮かぶあたり、俺も大概度し難いが、警戒心の薄い輩よりはマシではなかろうか。特にこういった異常な状況下では。

「大丈夫か、白亜」
「うー、だいじょうぶ……。あつい……」

 なんとか自室まで帰り着いた俺は、白亜を風呂桶に放り込むと、着衣のままシャワーをぶっかけた。横になるタイプの風呂桶なので、普通に寝かせれば頭の位置が高くなる。溺れる心配は無い。
 びしゃびしゃに濡れた衣服が肌に張り付いたが、つるぺたなのでこういう時は色気が無い。濡れて透けるような生地なら別だろうが、生憎と透けない服である。
 まあ、透けなくても脱がせれば良いだけの話なのだが。

「はい、バンザーイ」
「ばんざーい」
「次、腰浮かせる」
「うかせる」

 シャツを脱がせ、ズボンを下ろし、あと帽子を取って髪を解く。綺麗な白髪はぐしゃぐしゃになっていたが、水を被せれば気にもならなくなる。
 風呂桶に横たわる白亜の裸身。腰まである長髪が白い肌に張り付いて、なんとも言えない艶かしさだった。

「これはまさか髪を上手く配置したら、乳首と割れ目を隠す健全エロ構図が可能なのでは……」
「わぷ、わぷ」
「あっ、すまん」

 顔に水がかかって息継ぎに苦労している白亜に気付き、俺はひとまずシャワーを止めた。
 目の前には全身水浸しの裸の白亜。先ほどまで掻いていた汗は冷水で希釈され、今は風呂場全体に、甘酸っぱい少女の香りを漂わせていた。
 非日常的な情景に、頭がくらくらする。今すぐ俺もべたつく服を脱ぎ捨てて、思う存分彼女と戯れたい所だったが……しかしなんとか我慢する。
 安易な衝動任せな行動は身を滅ぼす。外れ者は叩かれる。人生は一寸先が闇であり、その瞬間その瞬間を後悔しないように歩み続けるしかないのだと、俺は高校時代に体で学習させられていた。
 冷水のシャワーを、今度は自分の頭にぶっかけた。頭を冷やして、俺は一旦風呂場から出た。

「って、こら白亜、付いて来るならちゃんと言え」
「いえ、いえ?」
「……イエーイ」
「いえーい」

 バスタオルを取って白亜を拭く。間近に観察すると、実に作り物じみた綺麗な肌だ。実際に作り物の可能性もあるけどな。
 拭かれる白亜はとても気持ちよさそうにしていて、なんだか性欲を持て余す。甘えてくる猫にムラムラ来た経験のある奴は意外に居ると思うが、あんな感じだ。そして白亜は裸の美少女だ。ヤバイ。

「……ふぅ。落ち着け、落ち着け俺。……とりあえず熱中症の危機は脱した、と……」
「と、と?」
「とーう」
「とーう」

 こういったやり取りは慣れてきたが、しかし長い髪はえらく拭きにくかった。
 とりあえずタオルで挟んでぽんぽんと叩き、水分を吸収する。ドライヤーを使うべきなのだろうが、生憎うちにそんなものは無い。

「買ってきた方がいいのかね……」
「かって、かって」
「早くもおねだりを覚えただと!?」
「だと!?」

 ……多分まだ分かってない気がする。
 しかし『買う』という単語は服屋だの自販機だので使っていたため、既に学習している可能性はある。……財布の紐はしっかり握っておかなくては。

「はい次下半身な。足広げて」
「ひろげて? ひらいて?」
「やることは同じだ。はい」

 濡れた内股に手を入れて軽くくすぐると、素直に白亜は足を開いた。本当に手のかからない子である。
 バスタオルで内腿から股間にかけて優しく拭う。やっぱりデリケートな部分なのか、白亜がなんだか潤んだ目でこっちを見てきて辛い。

「んんっ……。のりあき……」
「がふっ」
「……がふ?」

 甘えた感じに名前を呼ばれ、俺は思わず咳き込んだ。
 しかし破壊力抜群な娘である。出会った相手が俺でなければ、間違いなくとっくに犯されていたか、さもなくば然るべき所に保護されていただろう。
 勿論俺も下心全開で彼女を保護したわけなのだが、俺の場合は支配欲と独占欲が性欲の上に来る。精神から肉体まで完全にモノにするまでは、徹底して我慢する自信があった。

「一般的には異常な感性が、まさか役に立つ日が来るとは思わなんだ……」
「おもわなんだー」
「思わなかった」
「おもわなかった」

 ……口調も気をつけないと駄目だな。
 このままだと俺の口調がうつりそうだった。言葉を教える時は注意したほうが良い。
 だが待てよ、と俺は思う。つまりそれは好みの口調にカスタマイズできるということではなかろうか……。

「ふ、ふふ……」

 俺は感動に打ち震える。現実ではまずお目にかかれない、あんな口調やこんな口調を現実化するチャンスが目の前にある。これはエロゲオタの本懐だ。
 某接吻ゲーだって、口調のエディットは数パターンしかない。だが今俺の目の前には、無限の可能性がある――!!

「馬鹿なこと考えてる間に拭き終わったか。よーし、新しく買ってきた服を着せるぞー」
「きせるぞー」
「着る」
「きる」
「バンザーイ」
「ばんざーい」

 白のワンピースを、上からすっぽりと被せた。
 女物の服の着せ方などよく分からないが、流石に単純な構造だ。間違えようも無い。

「これで良し、と」
「これでよし」

 パンツは……まあいいや。
 出かけるときに穿かせることにする。家の中ではノーパンワンピ……完全に俺の趣味だった。

「スカートから頭突っ込んでくんかくんかしたいなあ……」
「くんかくんか?」
「おっと白亜、麦茶飲むか?」
「むぎちゃのむ、のむ!」

 思わず呟いた独り言を聞きとがめられて、素早く俺は話を逸らした。変な言葉を覚えられたら困る。
 しかしスポーツドリンクより麦茶が好きなのだろうか。脇に挟んで歩いていたペットボトルも、まだ中身が残っているのだが。
 思い出して俺は、買い物袋から飲みかけのスポーツドリンクを取り出した。この暑さだとさっさと飲まないと雑菌で駄目になりそうだ。飲み切ってしまえ。

「うわ、白亜の匂いが……」
「はくあ? はくあ?」
「いや、呼んだわけじゃないから」

 名前を呼ばれて振り返った白亜の頭を撫でる。
 ……しかし、ボトルについた白亜の匂いが強すぎて味が分からんな、これ。





 そんなこんなでしばらくゴロゴロしつつ、夕方を見計らって再び買い出しに出た。
 念のため今度は、冷凍庫に放り込んであった保冷材を帽子の中に仕込むことにする。結露してびしゃびしゃになりそうだが、健康には代えられない。どうせ髪の毛はぐしゃぐしゃだ。
 ついでに服も着替えさせる。ノースリーブのワンピースは露出が多い。買ってきたズボンとシャツの出番だった。

「……汗で濡れたら乳首透けそうだな。絆創膏貼るか」
「はるか、はる」
「はい、シャツたくし上げてー」
「あげー」

 ぺたぺたと乳首を隠す。一応擦れて痛むのを防止する目的もあるが、多分に独占欲の発露だ。
 その上に俺の前開きシャツを羽織らせる。どうも白亜は紫外線に弱い気がするので、夕方とはいえ長袖は着せた方が良い。

「よし、行くぞ」
「いくー」

 そうは言ったが、玄関を出る時、白亜はちょっとだけ嫌がった。それでも例によって目を見つめてやると大人しく従って……怖がってるわけじゃないよな? と、俺は不安になる。
 不安になったので、軽く抱きしめてみる。すぐに力を抜いて体を預けてくる白亜。うん、大丈夫だ、信頼されてる。
 安堵した俺は、彼女を連れて外へ出た。夕日が二人の影を長く伸ばす。時刻は六時を回ったが気温はまだまだ高く、今夜も熱帯夜になりそうであった。

「しかし、なんでこのタイミングで食料が切れてるかなあ……」
「きれてる?」

 昼間のあれですっかり懲りた俺は、潔く最寄のスーパーに向かうことにした。
 手を繋いで夜道を歩く。白亜の歩みは俺より遅いが、それでも徒歩十分の距離だ。大したことは無い。
 自動ドアを潜り、買い物籠を取る。左手は白亜、右手に籠。肘関節に籠を引っ掛ければ、買い物できないことも無いが……。

「よし、白亜。俺の指示したものを取ってみようか」
「しじしたもの? とって?」

 段々と、日本語の文法を理解してきている気がする。
 陳列棚の前で身振り手振りを繰り返して、白亜に指差したものを買い物籠に入れるように教え込む。数回の指示であっさりと理解して、白亜は『それ取って』を習得した。
 幸いにして米はあるので、缶詰を大量に買い込んだ。ついでに野菜も買っておく。肉はまあいい。たんぱく質なら、友人に押し付けられた未開封のプロテインが余っている。せっかくだから消費しようと思う。
 一週間は軽く引篭もれる量を買い込んで、俺は会計を済ませた。女の子と手を繋いだまま、片手で財布を開く俺の姿は結構不審だった気もするが、まあ仕方ない。

「で、だ。これからリュックにこの大量の食料を、詰め込まなくてはならないんだ」
「つめこまな、つめこむ?」
「そう、詰め込む。だからちょっと左手借りるぞ?」
「ひだりて、はい」

 白亜が差し出した左手を取って、俺は自分の上着の裾を握らせた。

「はい、握る」
「にぎるっ」
「よしよし。じゃあ右手は離すぞ?」
「みぎて、はなす?」

 俺は左手の力を抜いて、白亜の右手を優しく離した。
 汗でぬめる手が離れる瞬間、白亜がやっぱり切なそうな顔をして、俺は不覚にも胸をときめかせる。これが胸キュンというやつか。
 俺は急いでリュックを背中から下ろし、買った食材を詰め込んだ。その間白亜はじーっと俺のことを見上げていて、どうもこの娘の好奇心は俺に完全に向いているんじゃないかと俺は感じる。
 独占厨の俺にとっては嬉しい状況だし、保護者としてもふらふらされるより扱いが楽だ。しかし……この娘が俺の部屋に出現した状況を考えると、俺への執着に空恐ろしいものを感じないでもない。
 俺は地球人の観察サンプルにでも選ばれたのだろうか……。

「……はい、詰め込み完了! 背負い完了! 右手!」
「みぎて!」
「右手良し! 左手離す!」
「みぎてよし! ひだりてはなす!」

 ……まあ、どうでもいいことか。
 嬉しそうに俺の手を握る白亜を見て、俺は思考をぶん投げた。





 家に帰って買ってきた食材をしまい込む俺を、白亜はじぃっと見つめていた。
 炊飯器のスイッチは家を出る前に入れていて、もうすぐ炊き上がる。しかしここで俺は重要なことに気付いた。

「……アレルギーとかたまねぎ中毒とかないだろうな」
「ちゅうどく?」

 人間とほぼ同じ外見なので、たまねぎは大丈夫じゃないかと思う。
 しかしアレルギーは分からない。万が一米アレルギーでも持っていた日には、今夜の夕食でぶっ倒れかねない。
 一応念のため、腕の内側あたりに食材を押し当ててから食べさせるべきだろう。……なんというか、非常にデリケートなペットを飼育する気分である。

「それに猫舌のような気がする……なんとなく……」
「ねこじた、ねこじた」

 子供というのは基本的に猫舌だ。炊き立てご飯には悪いが、少し冷ましてから食べさせよう。
 インスタントの味噌汁を作ろうかとも思っていたが、これも今日の内は止めておこうと思う。サバ缶と白米、野菜は……キャベツの千切りでなんとか……。

「明日になったら野菜スープでも作らないと……」
「すーぷ、すーぷ、つくらない」
「作る」
「つくる」

 課題は山積みだった。
 大鍋はある。なので野菜スープなりカレーなりを作り置きしてしまえば、当座の栄養面は何とかなるかもしれない。

「いや、カレーは駄目だ。ルーが激辛しかない。……甘口買って来ればよかった」
「あまくち、あまくち」

 買出しに行く前に、一週間の献立表を考えておくべきだったと後悔する。何しろ男の一人暮らしでは、適当にしていても何とかなる。扶養家族が増えたことを考慮に入れなかった俺のミスだった。

「くそ、経験が足りてない……なんてのは言い訳にもならないんだよな」
「ならない? ならない、の?」

 反省しなくてはいけない。今の俺は一人ではない。最低でもこの夏休み、下手をすればそれ以降も、俺は彼女を優先して生活していかなくてはならないのだ。
 初日だから仕方ない、などという言い訳は通用しない。俺がやるのは断じて『恋愛』ではない。『子育て』であり『教育』だ。人一人の人生と命を背負っている。

「……そうだ、まさしく子育て中の母親のような、愛情と配慮と注意力と警戒心を持たなくてはいけない!」
「あいじょう? はいりょ?」
「白亜! お前は俺が守るからなぁー!」
「むぎゅっ」

 決意を新たに、白亜を抱きしめて宣言する。この子には俺しか居ないんだ! この子を守れるのは俺だけなんだ! と何度も心の中で唱えた。
 独占欲と支配欲に裏打ちされた、強烈な執着と使命感が俺を突き動かす。……普通の女の子相手にこんなことしたら間違いなくドン引きされるが、幸いにして彼女の場合は、これこそが望ましい態度である。
 なんというか――生きてて良かったと、そう思った。

「……と、米も炊けたな。よし、じゃあキャベツ切るか」
「きゃべつ、きゃべつ」

 包丁を取り出した俺は、刃物の危険性も教えないと駄目だなあ、と思った。





「いただきます」
「いただきます」

 そんなこんなで用意も完了し、白米とサバ缶とキャベツという粗末極まりない夕食が始まった。
 なんというか……人生初? の食事がこんなので申し訳ない気分になる。
 例のワンピースに着替えた白亜は、俺の隣に座っている。箸など使えるはずも無く、フォークやスプーンを使わせるにしても、俺が使い方を見せる必要がある。面倒なので今日の所は、普通にあーんで食べさせるつもりだった。

「パンにしておけば良かったんだよな……」
「よかった? よかった?」

 自分の段取りの悪さが嫌になるが、過去を嘆いても仕方ない。
 十五分待ってアレルギー反応も出ていないようなので、白亜の腕に付けた米とキャベツとサバ缶の破片を拭う。多分大丈夫……だと思う。
 ……あ、しまった。せっかくなら舐め取れば良かった。
 そんな後悔もしつつ、俺はまず白亜にこちらを向かせて、目の前でご飯を食べて見せた。いつもより心持ち多く噛んでから飲み込む俺を、白亜はじーっと見つめていた。

「よし、次は白亜だ。あーん」
「あーん? あー」

 ジェスチャーで口を開けさせて、ご飯を放り込んだ。もごもごとしてからごくりと白亜は飲み込んで、

「んんっ!? んー!」
「白亜ーっ!?」

 喉に詰まらせたのを、慌てて俺は背後からみぞおちを押し上げて救助した。
 口からポンと飛び出したご飯の塊は、全く持って噛まれている様子が無い。

「ご、ご飯を喉に詰まらせる、だと……」
「けほ、けほ」

 想像以上にデリケートな生き物に、俺は戦慄を覚えた。

「お粥にしておけば良かったか……? も、もう一度やってみせるぞ!」

 白亜が落ち着くのを見計らって、俺はもう一度米を口に運んだ。
 もぐもぐと噛んでは、口を開けて米の状態を見せる。……正直ちょっと抵抗があったが、白亜は嫌悪感を覚える様子も無く口の中を覗き込んでいた。
 もう一度噛んでまた開き、しっかりと米をペースト状にして見せてからごくんと飲み込む。

「よし、やってみよう。あーん」
「あー」

 素直に口を開ける白亜に、再度お米を放り込む。
 もごもごと口を動かす白亜。
 もごもご、もごもご。
 もごもごもごもご、もごもごもごもご。
 もごもごもごもごもご、もごもごもごもごもご、もごもごもごもごもご。
 もごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもごもご…………。

「ご、ごっくんは!?」
「もご」
「ご、ごっくんしなさい、ごっくん」
「ごく…………んー!」
「白亜ーっ!!」

 再度、背後から抱きかかえてみぞおちを押し上げる。
 ポンと飛び出す米の塊。やはりほとんど噛まれた様子が無い。

「ご飯の噛み方が分からない、だと……」
「けほ、けほ」

 歯の使い方が分からないのだろうか。完全に赤ん坊並だ。もうこの子、離乳食辺りから始めた方がよいのではないだろうか……。
 だがしかし、そんなものはない。いい加減日も落ちており、買いに出るのも面倒だし、そもそも何処で売っているのかも良く分からない。
 これはもう、とにかくある物をすり潰して与えてみるしかない。とはいえミキサーなんて物は無いので、

「白亜、ちょっと待ってろ」
「まって……まつ?」

 何時の間にやら動詞の活用をマスターしつつある白亜をよそに、俺は米を口に含んで徹底的に噛んだ。

「もごもご……。あーん」
「あー」

 口を開けた白亜。その口に唇を重ねた。
 十分に咀嚼した白米を流し込む。白亜は少し驚いた様子だったが、すぐに対応して吸い付いてきた。

「ぷはっ、はい、ごっくん」
「んく、んく、ごくん」
「あーん」
「あー」
「……よし、飲めたな」

 女の子とキスした喜びより、飲み込めた安堵の方が強いのはどういうことだ……。
 というかこれ、何気に白亜のファーストキスのような気がするが……ノーカンだノーカン。
 授乳に性的な意味がないように、この口移し給餌にも性的な意味はない。要はペンギンの親子だ。胃で半消化状態の魚を口移しに与えるあれ。
 流石に人間の胃腸は吐き戻すように出来ていないが、米のでんぷん質は唾液で糖に分解されるはずで、やっていることはまさにそのものである。
 サバのたんぱく質は胃液だが……まあ、それ位は白亜の胃に頑張ってもらおうと思う。……というか、それくらいできないと地球上じゃ生きていけない。

「野生だったら絶対に生きていけない生き物だよな白亜……。お蚕様かよ……」

 白くてふわふわの体は、確かに蚕っぽくはある。
 しかし生態的には托卵的な生き物な訳で……いや、別に白亜がこの状態で本当に幼体なのかはよく分からんが。

「あー」
「……ああ、はいはい。待ってなさい」

 人間に保護される前提なら、もっと赤ん坊っぽい容姿の方が適していると思うのだが。
 白亜の正体がなんであるかは分からないが――とにかく変な生き物だと、俺は痛感させられた。





「疲れた……」
「ごちそうさま、ごちそうさま」

 二人分の食事を噛む羽目になるわ、いつのまにか膝に乗ってきた白亜で足は痺れるわ、酷く気疲れする夕飯だった。
 既に夜の帳は下り切っていて、外は暗い。カーテンを閉め、俺は白亜を抱き寄せて床に横になった。

「……寝る場所、どうしようか」
「どうしよう、どうしよう」

 勿論一緒に寝るのが最有力だが、しかしこの暑さだと、朝起きたらこいつ脱水でぐったりしてるんじゃないか、と俺は不安になる。
 普通こういう不思議っ娘は、大体常人より優れた能力を持っていたりするものなのだが……この白亜にそれを要求したら、あっという間に倒れて死んでしまいそうな気がする。
 俺の感覚だとそういう所が可愛いのだが、手がかかるのは事実だった。

「でも、一緒に寝るのが一番だよな……。柵付きベッドなんか無いし……」
「いっしょ、いっしょ」
「一緒だぞー」
「いっしょー」

 すりすりと体を摺り寄せてくる白亜が可愛くて辛い。
 すんすんと鼻を鳴らして匂いを嗅いでくる姿が小動物じみていて……ああそういえば汗流さないと、と俺は思い出した。
 昼に水をぶっかけた白亜ももう一度汗をかいているし、寝る前にシャワーくらい浴びさせる必要がある。なんかこいつ、放置したら汗疹とかで酷いことになる気がする。

「一緒に入るか?」
「いっしょ、はいる」

 とは言ったものの、流石に裸の白亜の前でパンツ下ろしたら我慢できなくなると思う。
 幼少期の性的虐待は後々に響く。いくら俺が理性で耐えたとしても、勃起を抑えることなんぞ土台不可能だ。今の俺の立場は白亜の中で『父親』のはずで、少なくとも性的な知識を教え込んだ後でなくては、色々とトラウマを作りかねない。
 基本的に俺は純愛主義だ。だから無理矢理は厳禁だし、無知に付け込んでどうこうするのもNGである。
 白亜にはちゃんと人並みの社会常識と性知識と貞操観念を教えた上で、あくまで自分の意思で処女を捧げてもらいたい。それは譲れない俺のこだわりだった。

「……特殊性癖だよな」
「せいへき?」

 断じてこれは善意でも良識でもなく、何処まで行っても俺の趣味だ。“そうするのが一番興奮する”という、欲望を満たすための舞台装置。
 だが、まあ――それは決して、彼女にとっても悪いことでもないと、思う。

「風呂は白亜だけ先に洗って、俺は白亜が寝てから浴びるかな……」
「はくあ、よんだ?」
「呼んでない」
「よんでない、はい」

 ……初日にしてこの学習能力である。社会常識を学び取るのも、そう遠い日ではないだろう。
 一つ欠伸をして、俺は白亜の髪に顔を埋めた。





「ん、寝てたのか、俺……?」

 どうやら白亜を抱きしめたまま寝落ちしてしまったらしい。
 身を起こして、俺は軽く伸びをした。いかんいかん、寝るならベッドで寝なくては。

「その前に白亜の体を洗わないと……白亜?」
「うー……」
「白亜? どうした?」

 顔色が悪い。何事かと揺さぶる俺の顔を、白亜は涙目で見上げてきた。
 横たわったままの白亜は、両手でお腹を押さえている。

「腹痛……え、冷やしたか? それともまさか消化できなかったか?」
「うう、うぅ……」

 慌てて白亜を担いでトイレに駆け込んだ。買い物以来穿かせっぱなしだったパンツを脱がせ、ワンピースもすぽんと脱がせてトイレの外に投げ捨てる。
 素っ裸の白亜を便座に座らせて、お腹を撫でてやりながら彼女に言う。

「だ、出して良いぞ?」
「だす、おしっこだす……」
「そっちじゃねえよ」

 反射的に突っ込んだものの、おしっこがさっきで初めてなら、おそらくうんこも初めてだろう。
 そもそも今日の昼間に生まれたばかりだと仮定するなら、白亜の消化器は固形物を受け入れたことが無いことになる。
 冗談抜きで、離乳食から始めるべきだったのだろう。米を与えたのは本当に失敗だったと言わざるを得ない。

「うぅーっ、うぅーっ」
「ほら、頑張れ」
「うぅー、のりあきー」

 ぎゅうっと掴んで来る白亜の頭を胸に抱いて、俺はひたすら彼女のお腹を撫でた。
 消化不良なら、すぐにでも出ると思うのだが。もしかして別の理由だろうか……と不安になる程度の時間が経った頃、『ああっ』と白亜が声を漏らして、服を掴む手の力を抜く。
 ようやく聞こえた水っぽい音に、俺は安堵の息を吐いた。

「白亜、大丈夫か? 楽になったか?」
「んぅー、のりあき、のりあき……」
「よしよし、良い子だ」

 なでぐりなでぐり。
 恐らくは人生初であろう腹痛を乗り切った白亜の労を労わって、俺は頭やら背中やらを撫で回した。脂汗を浮かべていた白亜もようやく痛みは引いたのか、気の抜けた表情をしている。

「さて」

 落ち着けた白亜を、便座の蓋に寄りかからせるように仰け反らせる。一応覚悟を決めて、俺は便器を覗き込んだ。

「……陰になってよく見えん。白亜、足抱えて」
「かかえて、……かかえる?」
「抱える」
「かかえる」

 足を抱え込ませる。まんぐり返しに近い姿勢だが、お尻が汚れているのはご愛嬌か。まあ仕方ない。
 覗き込んだ水面にキャベツが見えて、俺は溜息を吐いた。水っぽい音で想像はついたが、案の定上手く消化できていない。いやまあ、キャベツは健常者でもあまり消化できないが……。

「のりあき?」
「うーん……」

 何してるのかな、という感じでこちらを見る白亜。羞恥心を感じていないようなのはありがたい。
 別段そっちの趣味の無い俺であるが、汚いとかそういう意識は無かった。あるのは心配と義務感だけだ。
 世の母親はオムツを代える時、匂いで赤ちゃんの体調を判断するという。あるいは医者なんかも、患者の体調を調べるのに排泄物をチェックするそうだ。
 そこまでやる必要があるのだ。白亜の消化器が人並みに働けるようになるまで、何日かかるか分からないが……それまでは『出したもの』を確認させてもらうとしよう。

「……ふふ。いいじゃないか、燃えてきたぜ……」
「もえて、もえて、きた?」
「燃えてきた」
「もえてきた」

 訂正を入れつつも、俺は感動に震えた――たとえ恋人であろうと、内臓や排便の状態まで確認する関係が何処にあるだろうか?
 俺はどうしようもない変態で病的な独占欲の持ち主だが、その分『愛情を示す』ことについて妥協はしない。まして女の子の身体状況を上から下までチェックして管理できるこの状況は、まさに願ったり叶ったりだった。

「よーし、じゃあお尻拭くぞー。白亜、一旦足下ろして」
「おろす」
「オーケーオーケー。それじゃあ今度はお尻浮かせて」
「うかせる」

 素直に従う白亜。言葉だけでもかなり言うことを聞けるようになっている――ぞくぞくするな!
 上半身を正面から左腕で抱きしめて、右手で白亜のお尻を拭いた。白亜は微妙に鼻にかかった吐息を漏らす。まあ、性感帯だからな。
 そういえば、口唇期やら肛門期やらの概念を前に聞いたことがあった。フロイト心理学だったか。幼児の人格形成がどうとかいう……。

「……子育てって大変なんだな」
「こそだて、たいへん?」

 いやまあ俺の場合、性欲と一体化してるから全然楽なもんなんだが。一緒にしては世の親御さんに怒られる。それ以前に警察に捕まる。
 その辺りの対処も、早めに手を打っておく必要があった。

「管理人には連絡入れておいた方がいいだろうなあ。親父をなんとか言い包めて……白亜? 今度はどうした?」
「おしっこ、おしっこ出る」

 まだ出してなかったんかい。

「気にせず全部出せ。面倒だから」
「めんどう? ……おしっこだす」
「出ろー」
「でろー」

 じょー、っと白亜がおしっこを出して、俺は今度は前から、白亜の股間を拭いてやる。
 お尻を突き出させて拭き残しのチェックをしつつも、俺は今度は興奮する余裕が無かった。
 明日からの食事、どうしたもんか……。





 明日のことは明日考えよう。
 投げやりな結論を出した俺は、面倒なので裸の白亜をそのまま風呂場に連れ込んで、さっさと体を洗ってやっていた。

「はい白亜、お尻出して」
「おしり、はい」

 白亜の突き出したお尻に、温めのシャワーをぶっかける。
 お湯の感触が気持ち良いのか、白亜は腰を上機嫌に揺らしていた。なんかもう全部分かってやってるんじゃないかと勘ぐりたくなる。
 石鹸を泡立てて、尻たぶから肛門まで指で洗う。くにゅくにゅとお尻の穴をくすぐると、白亜は鼻にかかったような喘ぎ声を上げた。

「あん、あっ、のりあきぃ……」
「……こういう時名前呼ぶの、止めてくれないかなあ」
「んぁっ、やめ、やめる? やめるの?」

 どうしようこの子、エロい。
 とはいえそんなのは最初から分かっていたことだ。エロくなかったらとっくに警察かどこかに連れて行っている。マジで。
 お尻を洗い終わったので、椅子に座らせて体を洗う。ぬるぬると全身を泡で撫でると、触れた箇所に応じて白亜は僅かに反応を返した。
 多分本当はくすぐったくて逃げたいんじゃないか、と思う。痛みに対しても抵抗しなかった白亜だ。くすぐったくても俺の行動を邪魔してはいけないと、必死で耐えているんじゃなかろうか。
 彼女の心境を想像するだけでモノが固くなって、俺は思わず息を荒げた。ハァハァと口で呼吸する俺を、白亜が潤んだ目で振り返る。

「のりあ、のりあき、んぁ、あつい? ぁつい、の?」
「こ、これは白亜のエロさに興奮したからであって、別に気温が高くてハァハァ言ってるわけじゃないんだからな?」
「はぁはぁ? はぁ、はぁ……」

 なんでハァハァをラーニングしたんだ。
 口ではぁはぁと荒い息を吐く白亜の姿が、エロさ数割増しで凄く良い。凄く良いが、そろそろ俺の頭もフットーしそうである。誰得だよ!

「泡流すぞ! 冷水でゴー!」
「ごーっ、がぼがぼ」

 夏場の温い水道水を、白亜の頭上から降り注がせる。ついでに俺も頭を流水に突っ込んで冷やした。
 続いてシャンプーを手にとって、俺ははたと動きを止めた。そういえばこの家、リンスとかコンディショナーとか無い。

「当面は大丈夫……だよな?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」

 白亜の中で『だいじょうぶ』が口癖になりつつある気がする。
 困ったことがあったらちゃんと報告してもらわないと困るので、あまり良い口癖ではない。明日になったら『痛い』『辛い』『苦しい』『助けて』あたりを教えなくては。

「あと、ペット基準で考えるなら『待て』と『我慢』も要るな。食事とトイレの訓練と、服の着方に……あ、歯ブラシが無い」
「といれ? といれ、いく?」
「行かない」
「といれ、いかない。おしっこ、ださない」

 白亜は否定形とトイレの使い方をマスターしつつあった。

「じゃあ頭洗うぞー。目、ぎゅー」
「ぎゅー?」
「うん、閉じてる。開けちゃ駄目だからな」
「あけちゃだめ、あけ……ない」

 瞼を上から下へ撫でて、しっかりと目を閉じさせる。
 わしゃわしゃと頭を掻いてやると、白亜はなんだか嬉しそうな気配を見せた。本当に可愛くて仕方ない。

「流すぞー。ざばー」
「ざばーごぼごぼ」

 ……もしかして『息止め』が出来ないのか?
 だとしたらいずれ、お風呂で教えてやらなくてはならない。はっきり言って危険だ。
 普段当然にやっていることでも、幼児には難しいということもある。白亜は教えればすぐに出来るようになりそうな気もするが、教えなければいつまでも出来なさそうな危うさも感じる。責任重大だった。





「のりあき、のりあき」

 かりかり。

「のりあき、のりあき」

 かりかりかりかり。

「……のりあき、だいじょうぶ」

 い、居心地が悪い……。
 白亜を洗って拭いてパジャマを着せてやった後、俺は自分の体を洗っていた。
 すりガラスの向こうで、白亜はかりかりと風呂場のドアを引っかいている。なんかもう本気で俺の傍を離れたくないらしく、あれだけ聞き分けの良い白亜が、『ドアを開けるな』という簡単な命令は、中々了解してくれなかった。
 今後の躾が思いやられるわ、この隙に一発抜こうかと思っていた当ては外れるわで、俺は肩を落としたくなる。
 しかし実際に落とすと心配した白亜が乱入してくるので、できない。ガラス一枚引き離して初めて分かった、驚きの忠誠心である。

「だいじょうぶ、だいじょうぶ?」
「大丈夫だぞー」
「のりあきだいじょうぶ。はくあ、はくあ」
「はいはいそこに居るな?」
「はくあ、はくあ」

 名前アピールである。
 先ほど物の弾みで『白亜』と名前を呼んでしまったら、凄い勢いでドアが開いた。『呼ばれた』と認識したらしい。
 なので名前を呼ぶのは厳禁だった。……もしかして世間一般の基準だと、地雷なんじゃないかこの娘。
 いや、俺の感覚だとこれくらい俺に執着してくれる方が好みなのだが……そんなことを思う俺に、白亜は戦略を切り替えて攻めてきた。

「おしっこ、おしっこだす」
「出すな!」
「だすな、ださない。おしっこ……でる」
「だから出すな!」
「おしっこでる、おしっこでる」

 しまった、声を荒げたのは失敗だった……!
 不意打ち気味のおしっこ宣言に焦って、白亜に俺の気を引く方法を学ばせてしまったようだった。
 さっきトイレに行ってから三十分程度しか経っていないわけで、溜まっているとは思えない。どう考えても方便だが、出そうと思えば出せないことはないのがおしっこである。
 犬だって苛められた腹いせに放尿テロを実行したりする。置き去りにされて拗ねた白亜がやらないとは断言できない。……将来白亜が人並みの羞恥心を学習したら、間違いなく黒歴史だろうが。

「というかお前、パジャマ着てるじゃねえか! 新しいんだから汚すなよ!?」
「おまえ、おまえ……はくあ? よんだ?」
「呼んでない」
「よんでない。のりあき、はくあ、よんでない。……おしっこだす」
「やめろ! 今出るから!」
「でる? でる? おしっこ?」
「なんでこんなに尿ネタ多いんだこの娘……!」

 舐めさせたせいだろうか。
 しかし飲尿プレイや嬉ションくらいなら可愛げもあるが、拗ねてあちこちにお漏らしするような女の子になられては困……いや、それはそれでありかもしれないな。

「自宅限定なら許せ……ここ賃貸だ……」
「でるっ、でるぅ……っ」
「おい、その声俺が困るって理解して出してるだろ」

 こいつ、俺から引き離した方が高速で成長するんじゃないだろうか。
 そんなことを思いつつ、俺は風呂から上がった。





 纏わりつこうとする白亜をなんとかあしらってパジャマを着て、俺はひとまず先に歯を磨いていた。
 股間に伸びてくる白亜の手を撃墜する。

「……パジャマだとテント張ってるの隠せないよな。まあ分かってた」
「てんと?」

 先ほどから男の体に興味津々の白亜は、左手で自分の股間をまさぐりながら、右手で俺の陰茎を触ろうとしてきていた。ちょっと直視できない姿である。
 しかし目を逸らすと握撃されるので、見ないわけにもいかない。俺の逸物さっきから萎えないんだが、あまり長時間の勃起の持続って血流が滞ってやばいんじゃなかったか……。

「……はい、歯磨き終わり! 白亜カモン!」
「かもん?」

 白亜の手を引いてリビングに戻る。クッションを枕にソファーに寝かせて、仰向けに口を開けさせた。
 子供の歯磨きといったら膝枕でやるようなイメージがあるが、今の俺にはそれは無理なので、大人しく床に座って白亜の顔を覗き込む。
 顔同士の距離が近くてこれはこれで悪くない。

「歯磨き粉大丈夫かな。あーん」
「あー」

 どうやら大丈夫そうなので、しゃこしゃこと歯ブラシを動かす。
 『毛の生えた棒を突っ込んで云々』という引っ掛けがあった気がするが、女の子の歯磨きをしている現状、俺は特に興奮も覚えなかった。むしろ物理的に萎えた。
 いや、口を開けたまま横になってされるがままの白亜は、たしかにエロい気もするのだが……全身綺麗に洗われてあんあん言ってる姿とか、俺の気を引く為におしっこ漏らそうとした姿とかに比べると大人しいもんである。
 ……初日で随分と凄まじい成長を見せているのだが、気付いたら逆レイプとかされないだろうな、俺。

「磨き終わったが、うがいできるかな。はいこっちおいで」
「ほっち、ほっち」
「お口閉じる!」
「ん!」

 この聞き分けの良さを常に維持して欲しい。切実にそう思った。
 洗面所に連れ込んで、口に溜まった唾液やら歯磨き粉やらを吐き出させる。

「ペッてしなさいペッ、って」
「だばー」
「だばーじゃないんだ……」

 唾の吐き方も教えなきゃならんのか……。
 しかし意外なことに、うがいはなんとかなった。ガラガラは多分無理だろうが、ブクブクは一発で習得する。
 喜びの余りえらいえらいと褒め倒してしまったが、よく考えると白亜の学習能力ならこれくらい出来て当然のような……まさか俺の気を引く為に駄目な子を演じてるわけじゃなかろうな……?
 なんだか少し、白亜の悪知恵が信用できなくなった俺だった。





 なんとなく嫌な予感がしたので、風呂桶に水を張ってから寝ることにした。
 水音を聞きながら白亜と戯れ、寝る前に麦茶を飲んでからベッドに入る。白亜はやたらと麦茶を飲みたがっていたが、絶対トイレが近くなるので二杯だけしか許さなかった。
 横になるや、すぐにすやすやと寝息を立て始めた白亜に感心する。多分生まれたばかりの彼女は、常に好奇心のセンサーを張り巡らせて行動していたはずだ。
 『学習』という行為は脳を疲労させる。子供の睡眠時間が長い理由の一つだ。

「ふあぁ……なんだか長い一日だったな……」

 願わくば朝起きた時、白亜が消えていませんように。
 ただそれだけを祈って、俺は瞼を閉じたのだった。










本日の白亜ちゃんの学習ポイント
 ・『おや』は『のりあき』っていう
 ・『わたし』は『はくあ』ってなづけられた
 ・のりあきはことばをおしえてくれる
 ・のりあきはわたしにきがいをくわえない
 ・のりあきといっしょにいると、あんしん
 ・むぎちゃおいしい
 ・おしっこきもちいい
 ・おしっこしたあと、のりあきにふいてもらうと、もっときもちいい
 ・おそとはあついからでたくない
 ・でものりあきが、てをつないでくれるからだいじょうぶ
 ・わたしがきもちわるくなったら、のりあきがたすけてくれる
 ・はだかでみずあび、きもちいい
 ・のりあきにふいてもらうと、もっときもちいい
 ・かいものしてるとき、『とって』ってのりあきにいわれたら、かごにいれる
 ・はものはあぶない
 ・ごはんこわい
 ・くるしくなったら、のりあきにぐえっ、てしてもらう
 ・たべものは、のりあきからくちうつし
 ・のりあき、いいにおい
 ・おなかいたくなったら、のりあきにたすけてもらう
 ・のりあきにおしりをふいてもらうの、きもちいい
 ・といれのあとは、おしりをつきだしてのりあきにみてもらう
 ・のりあきにからだをあらってもらうの、きもちいい
 ・すりがらすがにくい
 ・おしっこだそうとしたら、のりあきわたしをみてくれる
 ・のりあきは、はなにかかったようなこえがすきみたい
 ・のりあきのおまた、なにかある
 ・はみがき、のりあきといっしょ
 ・のりあきといっしょにねると、あんしん










後書き

寝取られが苦手なくせに寝取られモノのヒロイン(無知っ娘)に一目惚れする
 ↓
購入したら案の定心に傷を負って鬱モード突入
 ↓
数日凹んでいる内に、主人公に対する怒りが込み上げてくる
 ↓
怒りに任せてこれを書きなぐる(所要時間三日)
 ↓
賢者タイム ←今ここ


 というわけですっきりしました。作者のハイントです。
 作中で主人公が言っているように、無知娘が寝取られ担当な昨今の風潮。これに一石を投じたくてこの作品を書いたわけです。
 本当に少ないんですよ、無知娘独占モノって。エロゲだと私の知っている限りで、片手の指で数えられる位しかない。しかもほとんど低価格同人ゲー。
 またその数少ない作品も、割と早い段階でヒロインがエロ覚醒しちゃって、性知識の無さを堪能できないわけですよ。それじゃあ意味ねえんだよ! それじゃあ!
 あと『言葉が通じるようになるまで時間スキップ』とかも定番なんですが、この手の娘は幼児じみた無防備さが可愛いのであって、最序盤こそ華です。何故そこを飛ばすのか全く理解できない。箸の上げ下げからトイレのやり方まで手取り足取り教えさせろよ!

 というかおまえら、今放送中の某アニメ(ラノベ)のタイトル初めて見た時、本作みたいな内容想像したよな正直に答えなさい怒らないから!

 そういった不満をぶちまけた結果がこの作品です。そりゃあもう全力でぶちまけました。ぶちまけるだけぶちまけて校正してないんで、後で改稿するかもしれません。
 『白紙系ヒロイン』『独占』『純愛』『溺愛』『教育』『調教』『支配』『飼育』と、私の好きな属性てんこ盛りなこの作品、楽しんでいただけたら幸いです。

 なお作者が賢者タイムに入ってしまったため、当分続きを書く予定はありません。ご了承ください。



登場人物

正木範明
 主人公。筋金入りのエロゲ脳と病的な独占欲で白亜を溺愛する。
 あまりにも寝取られが嫌いすぎる故に、寝取られ回避ルートのある寝取られゲーを買ってきては、全力でハッピーエンドを見に行く趣味がある。なんだこの変人。
 高校時代色々あったらしく、妙に物に動じないところがある。この物語がバトル展開に突入する可能性が微レ存……?

白亜
 ヒロイン。正体不明というか未定。作者の趣味的にウボ=サスラの落とし子あたりになりそうな気がする。
 初期状態がやたらと貧弱で、結構飼育難易度が高い。油断すると死ぬ。
 ファーストコンタクトで範明を『親』と認識してしまったため、割と何をやっても好感度が上がる。
 そして範明以外の人間は眼中に無い。意気込む範明を尻目に範明まっしぐら、超イージーモードなヒロインである。
 でも油断すると死ぬ。


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