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No.27586の一覧
[0] アリエ【オリジナル・ファンタジー・短編】[午後12時の男](2011/07/07 15:20)
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[27586] アリエ【オリジナル・ファンタジー・短編】
Name: 午後12時の男◆96f3d9c1 ID:3561ecbb
Date: 2011/07/07 15:20
 大陸の人類文明の中心とも言うべきアルガラス連邦。
 そのすべてを統括している本国でも、国土の辺境のあたりになれば、生活圏が異種族間で重なり合うことも珍しくない。純血の人間が総人口の九割以上を占める首都圏と異なり、そういった地方都市では、人間とそれ以外の精霊格、神格、魔物の類が同じ都市機能を生活の拠点として活動しているのも、割合よく見られる光景だった。
 種族が違えば、生活習慣も、生理のリズムも、それぞれが大きく異なってくる。
 長い歴史の中で試行錯誤を繰り返し、時には幾度かの大きな戦争を経て、彼らは独自の共存のあり方を模索した。生活空間をともにしながら最低限の経済活動以外の交流を断ったり、あるいは種族間の壁をゆるい形で乗り越えて、首都の人間からみれば奇妙に思える形で双方の生活が交わっていたり。その有り様は地方や都市によってさまざまだ。
 ライザーナ地方に本拠を構える貴族、レオナル家の屋敷で働いている精霊種アリエもまた、そんな例の一つである。

***

 リオンにとって、書庫で埃を被っている本を読み漁るのは、数少ない趣味のひとつであった。
 今では単に貴族連合の末席に名を連ねるだけの地方貴族に過ぎないレオナル家だが、昔はそれなりの権力を持っていたようだ。書庫に保存されている書物の中にはかなり珍しい類のものまである。蔵書の数だけで言えばライザーナの中央府にある図書館にもひけをとらないだろう。
 武勲を勝ち取ることで地位を得てきたというレオナル家は、現在にあってもどちらかというと学より武を重んじる。書庫に収められた蔵書も、過去に侵略した領地の宝物として扱われていたもので、学問や知見のためというより過去の栄光の証として保管されている、という意味合いが強いものであった。リオン以外にここに足を踏み入れ本を読もうと思った者など、ここ数世代はいなかった――というのは書庫の管理人の弁である。
 もったいない、とリオンは思うのだ。
 ここには一人の人間が一生をかけても読みきれないほどの知恵が積み重ねられている。中には今の常識からすれば噴飯ものの内容もないではないが、それを含めてすべては人間の知恵の歴史の織り成してきたものだ。
 こんなに豊かなものが大して省みられることもなく埋もれて、やがて風化していくのかと思うと、それははやり悲しいことなのではないか。常々リオンはそう思っている。
「……坊ちゃん」
 本棚から目的の本を取り出して、そのままその場で読みふけっていたところに、どこかあきれたような声がかけられる。
 振り返ると、そこには小柄なメイドがはたきを片手に立っていた。
 アリエ=アルシェラ=アルファレオッタ。
 この書庫の管理者であり、リオンとはもっとも親しく接しているメイドの一人である。
 透き通るような銀髪に褐色の肌、切れ長気味の双眸に光る紫色の瞳は、この地方でよく見かける精霊種の特徴だ。
 人間で言えば十代もようやく後半を迎えたくらいの――見方によれば幼いとさえ言える小さく細い体躯だが、その見かけによらず彼女はこの屋敷にいる誰よりも歳をとっている。精霊格の多くは文字通り大地と命をともにしていると言われる。それが正しければ彼女の寿命は大地が滅ぶその瞬間と言うことになるだろうし――記録によれば彼女はレオナル家の初代当主の代からこの家に仕えているとあった。「ていうかまあ、奴隷として買われたんですけどね」などとアリエ本人は笑いながら口にしていたが。
「こんなところにいたんですか」
「ああ……うん」
「少しは武術訓練もなさらないと。サボりを見過ごしたってことになって、私まで怒られるんですから」
「別に僕が武術訓練しても、実になるものは少ないと思うけどなあ」
 苦笑しながらそんな毎度の説教を受け流すリオン。
 正妻と当主の間に生まれた第一子――レオナル家第一継承者という位置づけにある彼だが、運動神経は大してよくもなく、基礎体力もあまりないのか病気がちだ。最近はそうでもなくなったが、十を過ぎる頃までは月に一度は熱を出して寝込んでいたものだ。彼が読書を趣味としているのもそこらの事情があったからである。
 現当主はとっくにリオンの武芸に関してはあきらめていて、毎日のように書庫に出入りする長男をあきれ気味に眺めながら『身体が駄目ならお前は頭で武勲を立てろ』などと口にしている。
「武芸を高めるためだけでなく、体力の底上げにもなるんですから。やっぱりきちんとやらないと駄目ですよ」
 腰に手を当てて褐色のメイドはそんなことを言ってくる。
 使用人が貴族にするには偉く不遜な態度だが、不思議とそれがさまになっていて嫌味なものがない。
 諭すような口調でも、リオンを見る彼女の目は、古木のように落ち着いた暖かさをたたえていた。
「まあ、気が向いたらやるよ」
「……もう」
 気のない返事にこれ見よがしなため息をつき、そこでぱっと表情を切り代えて、アリエはリオンのほうに近づいてきた。
 わずかに目を輝かせて、リオンの手元にある本の紙面を覗き込んでくる。
 憮然とした表情を取り繕って、それでもなお子供っぽく興味を隠し切れていない辺り、愛らしいと感じてしまう。以前、そんな事を口にしたら、「見た目は生娘ですが、私、婆ですよ」などと呆れつつも頬を赤らめていた。
「で、何を読んでらしたんです?」
 その台詞に、リオンは思わず笑いがこみ上げてきて、それを必死にかみ殺す。
 先ほどのお説教も、すでに彼女としてはリオンが聞き流すのをわかっていたのだろう。それでも言ってくるのは、まあ、彼の父である当主に対する義理のようなものだ。
 むしろ本心としては、書庫の管理人として利用者が現れたことを嬉しく思っているようだった。
 読まれることもない本の山を管理すること数百年――その仕事に、彼女は、思いのほかさびしいものを感じていたのかもしれない。
「『マルヴァ・マリヴァラナス』全一巻」
「……それって」
 リオンの口にした本のタイトルに、思い当たるところでもあったのか、ピクリとアリエの表情が動く。
「そう。かなり昔の、房中術の本。それもちょっと特殊なやつ」
「…………」
 こともなげにそんな答えを返すリオンに、アリエはなんともいえない微妙な表情を向けてきた。
「世の中には変な本もあったものでさ。媚薬効果のある木の実を使ったやり方とか、異種族の子とやるときの作法とか、そういうのが載ってる。特に、まあ題名の通り、マリヴァラ支族とのやり方に詳しい」
「……」
「……」
「坊ちゃん……」
「なあに、アリエ」
「坊ちゃんがこのような変態の子に育ってしまったこと、私は旦那様にどうお詫びすればいいかわからなくなっています。使用人の、それも異種族の婆に手を出そうだなんて」
「誰のせいだと思ってんの」
 とうとう我慢していた笑い声が漏れた。
『手を出そうと』も何も、リオンに女の身体を教え込ませたのは、ほかならぬ『自称婆』――アリエ自身だと言うのに。
 それでも毎度のように、律儀に困った表情を見せるアリエ。そんな彼女を眺めるのは楽しい。何気ないそんな会話に愛おしさを覚え、同時に何だか悪戯心が湧いてきてしまう。
 もともと「そういうこと」をするつもりだったし、予定より早いが、もうたまらなくなっていた。リオンはにんまりと笑って本を閉じ、アリエに近付く。
「ね、アリエ」
「……っぁ……」
 アリエの腰をぐっと引き寄せ、息のかかる距離まで迫った美しい瞳を見つめる。
 瞳だけでなく、顔かたちの造作も美しい。唇の形も、少し寄せられた細い眉も、長く伸びたまつ毛も、その構成要素の一つ一つが男を誘惑するために作られた様なあやしげな魅力を放っている。
 困ったような、照れたような、そんな苦笑がリオンを見上げてきていた。
「メイドのほうの仕事、大丈夫?」
「ええ、今はまあ……空いてますけれどもね。もともと書庫の管理は仕事の暇なときにやっているものですから」
 そんなこと、分かっているでしょう、とでも言いたげな顔だった。
 無論、そんなことは分かっている。
 いちいち確認したのは、アリエに拒絶の意思がないかどうかを確認するためだ。
「たまには武術訓練もしないとって、アリエは言うけどさ」
「は、はい」
「アリエとこういうことするのも、十分基礎体力の底上げになっていると思うんだよね」
「………」
 顔を赤くしながらも、アリエはそんなリオンの言葉に、形ばかりのため息を返して見せた。
「……もお」
 ふくれっつらになりながらも、次の瞬間に交わされた情熱的なキスはアリエからねだってきたものだった。

***

 アリエの属するマリヴァラ支族は、淫魔に近い性質を備えた下級精霊格として分類されている。
 活動のためのエネルギー源を自給することが出来ないため、他の下級精霊格と同様、他の生命体からエネルギーを「捕食」することで自己を維持する類のものたちだ。
 エネルギーの補給法は大きくわけて二つある。
 植物や動物の血肉を口にすることでエネルギーの補給を行うか、あるいは人間の男性と交わることで精気をもらい、エネルギー源とするか。
 また時に精気を吸わぬ形で精子だけをもらい、それを子種として子をもうけ、自らの支族を増やしていくとされている。精霊格の彼女らには基本的に寿命がないが、それでもそうやって仲間を増やすのは、ひとえに数を増やし精霊格の範図を広げることが、土地への加護をより強固なものとし、大地をより実り豊かなものにすることに繋がるからである。
 ちなみに、比較的近い支族や淫魔の類とマリヴァラ支族を区別する特徴としてあげられるのが、性行為時、交わった男性側に免疫強化の「祝福」があるということだ。その性質の理由には諸説あるが、これは主な活動地域であるライザーナ地方の気候に合わせ進化した結果だというのが、現在最も有力な考え方である。
 ライザーナ地方は比較的穏やかで安定した気候、肥沃な大地を有する地域だが、それは逆に言えば、数々の病原菌の宝庫と言うことでもある。
 女しか存在しないマリヴァラ支族にとって、人間の男は食料源であると同時に子を孕ませてくれる大切な『夫』だ。彼女らは男たちと交わることで数々の疫病から彼らを守り、また性交を通じて自らの夫としてふさわしいものを選別し、より強い遺伝子を子種として選んで自らの種族の存続を図り数を増やす。
 そんなマリヴァラ支族の生態は割合古くから人間の間でも知られており、比較的穏やかな気候のライザーナ地方では、資源をめぐった争いもおこらず、歴史の早い段階から彼女たちは人間と共生の道を歩んできた。
 原始宗教が主だった時代においては人類に加護を与える巫女としての役割を負い、そしてそれから中世に入り、人類が台頭してくると逆に性奴隷として飼われる様になった。近代化が進み、奴隷制度が非人道的なものとして禁制化したあとは、それぞれの個体が思い思いの形で人間と共生の形を探っている状態だが、中には権威をもつ人間によって未だに囲われている個体もあると言う。
 アリエもまたそんな形で、貴族に囲われているマリヴァラ支族のいち個体であった。
 ただ、アリエ本人に言わせればそんな見方は心外の極み、「私は自分の意思でレオナル家に仕えているのです」とのことだが。
 だから、リオンがアリエとそういう関係になったのも、ある意味で必然と言うものなのかもしれない。
 十歳を過ぎた頃、大病を患い床に伏せったリオンを、傍で看病し続け、最後の手段として肉体関係を持つことで免疫力を強制的に引き上げ、死の淵から救ったのがほかならぬアリエである。男と女の愛情もなく、ただ命を救うために肉と肉の繋がりを持つ直前、「ごめんなさい坊ちゃん。本当は好き合ったお嬢様とこういうことをすべきなのに」とアリエが泣いていたのを、今でもリオンは覚えている。
 何も詫びることなどなかったのに、と彼は思うのだ。
 彼女のおかげで生きながらえ、それどころか今は健康で不自由のない身体で生活が出来ている。そして何より、あの時のことがきっかけで、アリエという素敵な女性を知ることが出来たのだ。
「――ん、ふぁ……っ」
 キスをして。身体をまさぐりあって。
 抱き合い始めて大して時も経っていないのに、二人の身体はもう出来上がってしまっていた。
 最早待ちきれない気持ちでリオンは下半身を露わにする。アリエも、メイド用の黒いワンピースの裾をたくし上げ、その状態で書庫の隅に置かれた執務机に手をついた。既に下着はあるべき場所から下ろされ、露わになった局部はひくつき美味しそうな蜜をたれ流して太股を汚している。
 四つん這いにさせて後ろから貫いたことも何度もあるが、こういう体勢もいいものだ。アリエ自身の積極性が見て取れて、何とも言えない嬉しさがこみあげてくる。
 露わになった逸物で丸く柔らかな臀部を撫で上げ、先走りを擦りつけると、アリエはぶるりと身を震わせ、「んくぅっ」と小さく、切なげな子犬のような鳴き声を漏らした。
 アリエはよく自分は婆だと自嘲交じりに笑っているが、とんでもない。いちど火がつけばご覧の通りだ。何よりも美しくいやらしい少女としてリオンのなすがままになっている。
「……変な坊ちゃん」
「何が?」
「んっ……だって。過去に何代かの当主様と関係を持ったこともありましたけど……、っは、ぅ……こんな、何度も迫ってくる方、居ませんでしたもん」
「そうなの?」
「気味悪がられますので……んんぅ……私は、歳をとりませんし、それに……」
 もたれかかるようにして背中から抱きつき、胸元をまさぐってくるリオンの動きに敏感に反応しながら、何処か不貞腐れたような表情をして、アリエは自分の股間に右手を添えた。
 くちゅりと音がしてひくつくアリエの股間。
 愛液をとめどなく流し続ける雌の蜜穴は――二つあった。
 人間と同じ場所に一つ。そして、肛門にあたる場所に、やや小さめなのがもう一つ。
 人間と同じ場所にあるのが子を成すための第一性器、肛門にあたる場所にあるのが、男の精気を吸い、男に加護を与える第二性器だ。
 確かに普通の、人間の女の身体に慣れた者が見れば奇妙な造形に映るかもしれない。しかしリオンにとってはアリエこそが初めての女性だ。一番見慣れた女の場所である。リオンのはじめてを受け止めてくれた場所である。それをいやらしいと見ることはあっても気味悪がるいわれは全くない。
「僕は気にしないけどな」
「……」
「アリエ、優しいし。やらしいし。可愛いし」
「……んんっ か、可愛いだなんて」
「僕が知ってる中で、一番女の子らしい、可愛いコだよ、アリエは」
「~~~~~~っっ」
 ぎゅっと後ろから抱きつき、頬に、耳たぶに、キスの雨を降らす。
 大した性感帯でもないのにアリエの身体はぶるっと震え、リオンの愛撫に、最大限の喜びを示してくれる。
 リオンの言葉に嘘はない。
 子供のころからアリエのことは知っている。
 いつも優しいメイドのお姉さん。病弱でまともに外に出ることもできないリオンの世話を、いつも焼いてくれていた。彼が本の虫になったのも、部屋の中ばかりだと暇だろうと、彼女が書庫から本を引っ張って来て、枕元で読み聞かされたのがそもそもの発端だ。
 一線を越えてからは、彼女を姉でなく少女として、女として見るようになった。時折見せる愛らしい表情が目に留まるようになり。肌を合わせた時の色っぽい仕草にいつも魅了され続けている。
 実を言うと――はじめて関係を持った後の数年間、罪悪感もあったのだろう、アリエはリオンを避けていた時期がある。
 その間、彼女の肌が恋しくなって、代替として何度か娼館に足を運ぶこともあったが、どんな遊び女もアリエの持つ魅力に敵うものではなかった。
 永い年月を生きてきたが故の、大地の気配すら感じさせる包容力をたたえた笑みに比べれば、男を喜ばす技術に長けた高級娼婦の魅力でも酷く児戯めいたものに思えた。
 結局、リオンが押し切る形で、再びアリエは関係を持つのを受け入れてくれるようになった。
 身体を重ね続ければ、やはり情は移るもの。
 気がつけば、もう後戻りできないほどに、アリエはリオンの中で特別な存在になっていた。
「……んっ、は、ぅぅううっ。も、もう……坊ちゃん……わ、私ぃ……」
 キスの雨は胸への愛撫より効果的だったようだ。
 濡れそぼった陰部を押し付けるようにして彼女は腰を振り、リオンの腰に擦りつけるようにして肉の重なりを求めてくる。
 焦らし合いに負けて彼女の方からおねだりをしてくるようになったのは、つい最近のことだ。アリエは「こんなところで坊ちゃんが成長されても、嬉しくないですっ」などと事が終わってからいつも不平を垂れるのだが、彼女の女の部分はそうは思ってはいないらしかった。
「うん……いくよ」
 だから、胸がいっぱいになったまま、リオンは限界近くまで昂ぶっていた自らの逸物を、アリエのそこへと宛がった。彼とて焦らされ続けて、そう余裕がある訳ではない。
 向かう先は、第二性器。彼のはじめてを受け入れてくれた、そして彼の命を救った、淫魔としての穴である。
 第一性器を使ったことはない。それはかなり早い段階でアリエに「ダメです。死にますよ」と拒否をされてしまった。
 第二性器を使い、そこで相手の男がつがいになるにふさわしいと彼女自身が心から認めない限り、第一性器が開くことはない。
 正確には子宮あたりの粘膜が毒性を帯びていて、心が開いてようやくそれが無害なものへと変質するのだと言う。
 レオナル家に仕えるようになってから、あるいはそれ以前に、アリエはそこを使った事があるのだろうか――ふとそんな疑問を持った事がある。聞いてしまえば無暗にリオンの中で黒いものが湧きそうな気がしたので、結局そのあたりを彼女に問い詰めることは出来なかったが。
 ともかく、何度となくアリエの身体を求めるうち、いつかはそこを味わいたい、というのが、彼にとっての目標になっていた。
 今はダメでも、いつか、きっと――もっと、身体も、心も、彼女の傍に近付けた、その時ならば。
「ん、ふぅ……んぁああっ」
 むせ返るほどの性臭を放つアリエの肌を抱き寄せ、鼻を擦りつけ、その匂いを存分に楽しみながら、腰を前に進める。
 つぷりと亀頭が尻の穴へと収まり、そのまま勢いに任せて根元まで貫いて。それに合わせてアリエが美しい鳴き声を上げた。
 細く小さな背中がぐっと反りかえり、後ろから抱きしめていたリオンに甘えているようでもあった。
 今はただ、リオンの雄で可愛く悶えているアリエの仕草が愛おしい。
「ぁ、うぅ……坊ちゃん、坊ちゃん……」
 ゆるゆるともどかしげにアリエの腰が動いている。
 ひだの痙攣具合からして軽い絶頂には達しているようだったが、それだけの刺激ではまだまだ満足できていないようだった。
 当然、リオンも満足していない。
 アリエの腰の動きに合わせてゆっくりの腰を回し、次第にその動きを激しくし、限界まで反り返り膨れ上がったカリ首を十二分に生かしてアリエの肉の壁を掘り返していく。
「ん、あ! いい、気持ちいいです、ん、んんんっ」
 責め立てられ、息も絶え絶えに喘ぎながら、アリエが首を回し、切なげな瞳を向けている。
 愛おしさがはじけ、口の中にためこんだ求愛の言葉を口付けで流し込んだ。
 舌と舌が絡み合い、その熱さに触発されたように腰の動きは前後運動に変わる。ぱんぱんぐちゅぐちゅと肉を打つ音、粘液のはじける音が書庫に響き渡った。
 そのまま、口づけを交わしたままリオンはアリエの雌の部分を責め立て続け、アリエが七回、リオンは四回絶頂に達するまで二人の動きが止まることはなかった。

***

 七回目の絶頂は潮噴きを伴ったもので、床を汚してしまったためにアリエは機嫌を損ねてしまった。
「もう。気持ちいいのはいいとしても、もうちょっと手加減してくださいまし。そもそも書庫で交わるのは、匂いが本に染み付いてしまうので嫌なんですよ」
「でも、二人きりになれる場所、あまりないしね」
「……はあ。ホントに……。せめて次からは、もっと優しくしてください」
「自信ないなあ。だって、アリエ、可愛いから」
「……もう」
 二人で汚れた床の掃除をして。後片付けをしながらそんな事を語り合うのも、もう毎度のことだ。互いの個室で事に及んだこともあるが、何だかんだで彼女自身、書庫でするのも興奮するようだった。壁の薄いメイドの個室や人の来る恐れのあるリオンの部屋とは違い、あられもなく鳴き声を上げる事が出来るからかもしれない。
「後で坊ちゃんのお部屋に窺います。お洋服の替えも準備しないと」
「ごめんね。ありがと」
 会話を進めるうちにアリエの機嫌も戻ってくる。何度かキスをしながら語り合う。やがて、身体も頭の熱が冷めてきて、それに従い徐々にキスの頻度も下がっていく。さざ波が引くように、次第に二人の立場も坊ちゃまとメイドに戻っていった。
 これもまあ、いつものことだ。
 仕方がないことなのだろうが、それがどうにも寂しく感じられてリオンは嫌だった。
 ほどなくして、片付けが終わった。窓を少し開けて、空気を入れ替える。半日もすれば二人の淫臭も抜けるだろう。
「……そろそろ仕事に戻りますね、私」
 にこりと事務的な笑顔に切り替えて、書庫を立ち去ろうとするアリエを、リオンはふと思いついた様子で呼びとめた。
「思ったんだけどさ」
「はい?」
「アリエはさ、なんでレオナルの家に残ってるの」
「……」
 扉の前で振り返ったまま、アリエはリオンを見つめている。
 そこにあるのは、曖昧な笑み。
「もうあなたをここに縛っていた奴隷制はない。そう望むのなら、あなたは今すぐにでもこの屋敷を出て、別の生き方を探すことが出来る。なのに――」
「――坊ちゃんは、意地悪ですね」
「そ、そうかな」
「ええ。だって、あんなに可愛がってくださった後に、そんなこと言うんですもの」
 押し黙ってしまったリオンに、アリエは酷く優しい表情で再び近づいてきた。
 頭一つ分は高いリオンを見上げながら、それでも幼子をあやすように、爪先を伸ばしてリオンの頭を撫でてくる。
 寝つきの悪い時、そう言えば彼女によくこんなことをしてもらっていた事を、不意にリオンは思い出していた。
「理由は――まあ、たくさんありますけれど。ご主人様がせっかく興したお家が、私の見ているところで没落したりすると、嫌じゃないですか」
 頭をなでられながら聞かされたそんな台詞に、リオンの胸がちくりと痛んだ。
 ――それが多分、リオンの感じる一番の壁だった。
 ご主人様と旦那様。
 アリエははじめに仕えたレオナル家の初代をご主人様と呼び、それから後の当主を旦那様と呼ぶ。その区別は、彼女にとって初代がどれだけ大きな存在か、大切なものだったかを端的に象徴しているような気がした。
 あるいは第一性器を許してくれないのも、そこのところによるものが大きいのだろう。
 まして今のリオンは、「旦那様」ですらない。「坊ちゃん」だ。
 悔しい――と、そう感じてしまうのは、やはりいけないことなのだろうか。
「坊ちゃん」
 全てを見透かした瞳が、どこまでも優しく、母性すらたたえてリオンを見ていた。
「ご主人様に嫉妬なさってるんでしたら、まずは自分を磨いてみてくださいまし。あなたには時間がまだまだたっぷりあります。あせらず、ゆっくり。自分自身のやり方で自らを鍛え上げてみせてくさだい。私はどこにもいきません。いつもあなたの傍に居ます。いつもあなたを見ています。だから――」
 そこで、少しためらって。僅かに少女の表情に戻って。
「私、待ってますね。あなたが私のご主人様になる時を」
 あくまで母性をたたえた笑みを残して、アリエは、リオンの額にキスをした。



 レオナル家の歴史を記した記録に精霊種アリエ=アルシェラ=アルファレオッタの名が再び現れるのは、それから十数年後のことである。





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生存報告がてら、気分転換に落書きしてみた。毎度のことながらエロが薄くて申し訳ありません。

そしてそれ以上に、「ふたりのひみつ」停滞していて申し訳ありません……

ちょっとこちらの投稿は手を休めて、新人賞に投稿するための原稿を書いてます。

七月頭くらいには今書いているものに関してメドがつきそうなので、それが終わり次第、「ふたりのひみつ」も完結に向けてスパートをかけるつもりです。

また忘れたころに投稿することになると思うので、その時はよろしくお願いします。


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