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No.27351の一覧
[0] キスから始まる鬼畜なストーリー【ゼロ魔・鬼畜】[通りすがり……](2011/04/22 15:47)
[1] 異世界召喚[通りすがり……](2011/10/10 19:53)
[2] 反逆への道[通りすがり……](2011/04/23 10:43)
[3] 新しい関係[通りすがり……](2011/10/23 19:29)
[4] 最初の一夜[通りすがり……](2011/06/03 20:52)
[5] とある一日の風景[通りすがり……](2011/04/29 14:12)
[6] 第四の使い魔[通りすがり……](2011/05/02 19:47)
[7] 頼れる相棒[通りすがり……](2011/05/03 19:44)
[8] 最初の仕事[通りすがり……](2011/05/04 22:09)
[9] 強い心[通りすがり……](2011/05/06 10:27)
[10] 微熱の誘惑[通りすがり……](2011/05/07 20:31)
[11] 微熱から情熱へと[通りすがり……](2011/05/08 19:39)
[12] 情熱の行方[通りすがり……](2011/05/14 13:46)
[13] 決闘[通りすがり……](2011/05/15 21:05)
[14] 決闘の結末[通りすがり……](2011/05/17 19:13)
[15] 捜索隊結成[通りすがり……](2011/05/17 19:33)
[16] 森の広場[通りすがり……](2011/05/19 20:22)
[17] 奴隷が嗤うとき[通りすがり……](2011/05/21 15:50)
[18] 土くれのフーケ[通りすがり……](2011/10/11 20:00)
[19] 新しい一日の風景[通りすがり……](2011/06/03 20:16)
[20] トリスタニアの休日[通りすがり……](2011/06/03 20:38)
[21] 重大な決意[通りすがり……](2011/06/05 22:50)
[22] 卑劣なる男[通りすがり……](2011/06/09 23:54)
[23] 決断の時[通りすがり……](2011/06/15 20:12)
[24] 薔薇の行く末[通りすがり……](2011/06/21 23:03)
[25] 絶望のオスマン[通りすがり……](2011/10/23 19:27)
[26] 学院の支配者[通りすがり……](2011/10/23 20:05)
[27] 港町ラ・ロシェールにて[通りすがり……](2011/10/29 21:28)
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[27351] とある一日の風景
Name: 通りすがり……◆60293ed9 ID:52126834 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/29 14:12
「それで、ミスタ・コルベール。あの東方から来たという少年について何かわかったのかね?」

「はい、オールド・オスマン。フェニアのライブラリーで全ての古書でルーンについて調べましたが、残念ながらどの古書にものっておりませんでした。王立図書館やアカデミーで調べてもらうわけにはいきませんか?」

 本塔の最上階。学院長室である。オスマンはコルベールからの報告を受けていた。

「ふ~む、ミス・ヴァリエールは無能なメイジなんじゃろ? それにコントラクトサーヴァントには成功したわけじゃろ? たまたま平民が召喚されただけの話じゃて」

「はあ……確かにそうかもしれませんが……」

「ごくろうじゃった。気になるのはわかるが君の仕事はそれだけではあるまい。忘れることじゃ。なに、わかったらその時動いても問題あるまい」

「……わかりました。確かにそうですな。忘れることにしましょう」

 平民が召喚されるありえないイレギュラー。何よりも見慣れない珍しいルーンが気になったコルベールは夜を徹して文献を調べた。しかしそれでも何も出てこない。思い余ってオスマンに相談したが、興味がないのでもう一度調査するように命じられたのだった。

 オスマンとしては一人の平民のことなどどうでも良かったし、それよりもいかにして学費を徴収するか、うまい手を考えるのに忙しかった。コルベールの提案にのってしまったら王室に借りを作ってしまうのでそれは拙い。
 単なる一平民の詳細を知るよりも美人の秘書にするセクハラのほうが重要であるし、さっさとこの話題から離れたかったのである。

 オスマンにも、コルベールにもわからなかった才人の正体。それは別の場所で明らかになる。



 ルイズの一日は才人を起こすことから始まる。

 才人に頼んで馬のエサである藁を貰ってきてもらい、それを部屋の隅に敷き詰め、毛布にくるまって寝ていた。それを才人はニワトリの巣と呼んでいる。対外的には才人の寝床となっているからであり、朝一番の才人の仕事はルイズを起こすことになっているので、なるほど、雄鶏のようでそうかもしれない。皮肉極まる状況ではあるが相応しい名前であるとルイズは思わざるをえない。
 
 ルイズは才人を起こすのにフェラチオをして起こす。「ちんぽの使い魔には相応しいだろ?」「大好きなちんぽを朝から咥えさせてやるなんて俺っていい主人だと思わないか?」と、説明するとき才人は言ったものである。悲しくて悔しいが従わなくてはならない。粘つく特濃の精液を毎朝一番に大量に飲み干す。

 昨夜の凌辱の痕跡を掃除する。その全裸での掃除姿をニヤニヤ見つめられる。朝っぱらから奴隷の身分を思い起こされ、ルイズのプライドはボロボロになる。それが終わって、やっと制服を着るのを許されるのである。

 リードのついた首輪を「ありがとうございます、ご主人様」と外してもらい、それを引き出しにしまう。管理はルイズの仕事である。そうしてから黒いマントと白のブラウス。グレーのブリーツスカートの制服を着る。着替えれば顔を洗い、歯を磨く。
 涙の跡が、精液の跡がこびり付いていないかと鏡をチェックする。ルイズはそのたび情けなくて泣きそうになった。

「さっ、いくわよサイト」

「お嬢様。本日はいちだんとお美しいことで」

「っ……あんた、何企んでるの?」

 精液がどこかにこびりついている? それとも何か新しい責めを思いついてしまった?

 朝、授業の時間まで才人はルイズにフェラチオをさせて時間を潰させる。当然その時は射精させるまで解放されることはありえず、時間に追われたルイズは必死の思いで肉棒を愛撫しなければならなかった。
 以前それが原因で遅刻してしまい、ダイエットを理由に食事を抜くことを強要されたり、「学生として遅刻はいけませんよ、お嬢様? 不出来な使い魔の仕事として教育して差し上げます」と、鞭で散々に叩かれてしまったりしたのだ。
 この時ほど、しつけに使おうと鞭や首輪を用意していたことを悔やんだことはなかった。

「いえいえ、今日は虚無の曜日。街まで買い物に行くんですよね? それが楽しくて顔に出てしまっただけです。はい、お嬢様。ただそれだけのことです」

「……そう。でもそんな風ににやけるのは止めなさい。あんたは貴族である、それも王家に連なる由緒正しい大貴族であるラ・ヴァリエールの使い魔なんだからね。それに誇りをもって相応しい行動を心掛けなさい」

「失礼しました。お嬢様。どうかお許しください」

 腰に手を当て、挑発的にルイズは叱責し、それを才人は頭をぺこりと下げて取り繕う。しかしくぐもった低い嗤いは止まっておらず、慇懃無礼に馬鹿に仕切っているのがよくわかる。

 こんな時、自分ならどうするか? 更に叱責するか受け流すか。どちらでもおかしくないが、藪蛇は怖い。瞬時の判断で受け流すことにした。ふんっと顔を背けて「馬鹿なことしてないで早くいくわよ」と扉に向かう。

「了解しました、お嬢様」

 ニヤリと笑って才人は続く。今日は虚無の日、すなわち授業はお休み。街の見物をしたいと言い出した才人に断ることが出来ず、私服や面白いものがあればと買い物に行くことになっていた。

「ヴァリエールの使い魔ならば着た切りスズメは拙いのでは?」と言われてはルイズも納得するしかない。もっとも納得できなくても買い物にはいくことになったであろうが。

 こうして二人はトリステインの城下町へと出かけたのである。



 才人が召喚されて一週間が経っていた。学院で才人はルイズの使い魔として紹介されている。学生から侮蔑されても下手に振る舞い、なるべく騒ぎを起こさないように心掛けた。
 もっともミスタとか、ミスと敬称を付ける事だけはどうしても嫌で、ファーストネームで呼んだりしたが。たとえ貴族でも教師や年上なら“さん”付けくらいは許せようが、同年輩の学生相手に敬称は必要以上にへりくだるようで耐えられなかったのだ。

 それでも安全には替えられない。指摘されるなら我慢しなければと覚悟していた才人だったが、意外にも「この無礼な平民め!」とならなかった。
 ルイズに聞いてみると大貴族の使い魔だからそれなりに地位は高いのだという。単なる平民よりも、むしろその地位は高い。身分保障をされているからだ。しかも使い魔を馬鹿にすればヴァリエール公爵家を敵に回すことを覚悟しなくてはならず、我慢しているのだろうという。
 それに元々ファーストネームで呼ばれ慣れているので、それほど気にしないものも多いだろうと言い、才人的に嬉しい誤算であった。

 そうして使い魔としての生活を一通り経験した才人は満足し、それからはほとんど仲良くなったマルト―親父のいる厨房に入り浸るようになったのである。

 コック長であるマルトー親父は大の貴族嫌いであり、才人が使い魔の不遇や貴族の横暴を訴えると大いに共感してくれた。才人のことを仲間たちに「我らの息子」と紹介し、何かと世話を焼いてくれるのである。
 それに厨房には優しいシエスタがいる。いけ好かない貴族に比べてどちらが良いか、答えは考えるまでもない。マキ拾いを手伝ったり、日本の料理を参考にアドバイスをして感謝されたり、それなりに楽しい毎日を過ごすようになっていた。

 才人はルイズが自分をどういう風に扱うつもりであったかを聞き取り、それを参考にルイズの境遇を決めた。そのおかげでルイズは同衾していたベッドから一夜にして叩き出されて藁に毛布を寝床とされることになり、食事をたびたび抜かれ、室内に戻れば首輪をはめることとされ、鞭でしつけをされることになった。
 才人に言わせれば「俺をどう扱おうとしていたかを参考にしただけだ。それに毎日たらふく精液を飲んでるんだし腹も空かないだろ?」である。ルイズは屈辱に顔が歪みそうになるが、にっこり笑って「そうね、その通りね」と納得するしかなかった。

 服については聞かれるまで考えもしなかったという。これには才人もやはりというか唖然としたものだが、後々報いを受けることになるであろう。今は部屋でのみ全裸とさせているが果たして将来は?

 ニヤリと笑った才人は考える。ルイズと過ごす生活環境には正直無理があろう。遠からず瓦解することも十分にありえる。ならばそれまでとことんまで恥辱を与えたいが、そうするとバレてしまう可能性も高まってしまうだろう。ここは思案のしどころであった。

「……ルイズ、狭い道だよな?」

「これでも大通りなんだけど? ここはブルドンネ街。トリステインで一番大きな通りよ。この先にトリステインの宮殿があるわ」

「宮殿ねぇ……」

 トリステインの街である。馬で三時間は辛かったと才人は思う。ここ一週間、別のことで腰を使っていたから尚更だ。

 それでも才人は楽しんでいた。先のことは先として、今は異世界の雰囲気を満喫したい。トリステインの城下町に行くことは楽しみにしていたのだ。
「馬に乗ったこともないなんて」とか、「これだから平民」は、などと罵倒してくれた時には笑った。びくびくしながら目線で「これでいいよのね?」と問いかけてきたからだ。鷹揚にうなずき、「それでいいんだ」と伝える。ほっとした表情をしたあと苦々しげな顔に戻ったルイズは「じゃ、じゃあいくわよ! ついてらっしゃいっ!」と歩き出したのだ。成長したものだとほくそ笑んだ。

 白い石造りの街はまるで中世の街を再現したテーマパークのようだと思った。
 老若男女取り混ぜて歩いており、活気に満ちていて面白かった。

「それで? 一体何を買うつもりなの? ありったけ持ってきたんだからスリに会わないように気をつけなさいよね?」

「こんなに重いのにスルやつなんていないだろ?」

「馬鹿ね、魔法を使われたら一発なんだから注意しなさいよ。ありったけ持ってきたんだから、これがなくなると次の仕送りまで無一文になっちゃうんだから気を付けてよね!」

「へーへー、わかりましたよ、お嬢様。気を付けますって」

 ずっしりと重すぎる懐に手を入れる。確かに無一文は才人も嫌だ。食事の心配はいらないとはいえ、金はあったほうがいい。何よりこの街での買い物が出来なくなる。気を付けようと思った。

「で? 何を買うつもりなの?」

「そうだな……」

 着替えの衣類は確定である。特に下着類と替えのシャツ。その他にもタオルやバスタオル、石鹸や歯ブラシなど。マルトー親父に頼めば用意してくるかもしれないが、できうるなら自分で用意したい。紙やペンなんかの筆記具も欲しい。それからモンスターや夜盗が普通にいるファンタジーな世界。護身用として短剣の類もあれば尚よいだろう。それらのことをルイズに説明してみる。

「……そうね、そういうことならまずは衣類から片付けましょう。それならこの通りにあるし、剣なんかは裏通りになるからあとにしましょ」

「ほう、なるほどね。確かに主目的は替えの下着が欲しかったからだしな。そうすることにしよう。んでメシ食って、看板なんか見て聞くからさ、面白いのがあれば覗いてみることにしようぜ?」

 ニヤリと悪戯っぽく才人が笑い、それを聞いてルイズも笑った。何か企んでいると思っていたのだが、どうやらまっとうな買い物がしたかっただけらしい。

「それじゃ、いくわよ」

「おう! 案内してくれ!」

 そうして二人は様々な店を巡って買い物することにしたのだった。



「いや~、ルイズ、一杯買ったよな」

「そうね、人のお金だと思って。よくもまあ遠慮なく使ってくれたものだわ」

「そう言うなよ、全部必要なものばっかなんだしさ。それにルイズだって買ってただろ?」

「そ、そうね、必要なものばっかりだし、しょうがないわよね」

 はっはっはっと才人は笑う。ルイズの金だと思うと散財するのも気持ち良かった。替えのシャツに下着類。タオルや歯ブラシなどの小物類。シエスタへのお土産にアクセサリーも才人は買った。

「まあ、これで最後だしさ、そんなに怒るなって」

「っ怒りたくもなるわよ! 1000エキューも持ってきたのに残りが500エキューを切っているってどういうこと? 秘薬やマジックアイテムでもないのにこんな散財するなんてありえないんだからっ!」

 そう、ルイズの心は怒りで一杯だった。こめかみがぴくぴくしているのがわかる。

 着替えは確かに必要であろう。ここまではいい。しかしだ。ルイズ的に才人が誰と付き合おうと知った事ではないが、他の女への土産まで買わせるのはどうなのか?
 それに「ルイズだって下着類は必要だろ? 一杯駄目にしちまったしさ」と。ニヤニヤ笑う才人に指摘され、裏通りの怪しげな衣料店で散々に買い物をさせられたのだ。

 嫌がる才人を引き連れた好奇心満々の貴族といった風に演技させられ、合図によって買うものを決めさせられ、羞恥によって死にそうだった。そしてそれがまたえらく高くついてしまったのだ。腹立たしいことこの上なかった。

「悪かったからそんな怒るなって。これで最後なんだしさ。ほら、スマイル、スマイル」

「っ…………」

 ちっとも反省しているとは思えない才人だが、これ以上は怒れない。もしも機嫌を損なってしまったらと思うと、これ以上は怒れない。諦めたルイズは「ふんっ、馬鹿なこと言ってないでいくわよっ」と背を向ける。実はこの対応で良いのか、帰ったらこれを口実に新しく責められるのではないかとびくびくものだった。

 背後の才人は何も言わないが、それがまた嫌な想像を誘ってしまう。報告は義務であり、嘘は許されない。それを口実に殴られ、しつけられることは度々あるのだから。

 剣の形をした銅の看板の下がっている店。武器屋である。これが悔しい買い物の最後となろう。石段を上り、羽扉を開け、ルイズと才人は店の中へと入って行った。



 店に入ると出迎えたのは50がらみの親父であった。店内は昼間だと言うのに薄暗く、ランプの灯りがともっていた。壁や棚に、所狭しと剣や槍が乱雑に並べられ、立派な甲冑も飾ってあった。

 親父は胡散臭げにルイズを観察し、それから何かに気付いたような表情を見せると愛想よく話し掛けてくる。

「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目をつけられるようなことなんか、これっぽっちもありませんや」

「客よ」

 腕を組んだルイズは簡潔に言う。才人には逆らえないが、単なる平民には下手に出る必要はない。高圧的に、侮蔑的な視線を送る。気にした風もなく親父は続けた。

「こりゃおったまげた。貴族が剣を! おったまげた!」

「どうして?」

「いえ、若奥様。坊主は聖具をふる、兵隊は剣をふる、貴族は杖をふる、そして陛下はバルコニーから手をおふりになる、と相場は決まっておりますんで」

 茶目っ気たっぷりに親父は話す。まあ、商売人としてはわからないでもないが、ハルキゲニアにはこんなのばっかりなのか? いくつか回った店のことを思い起こし、才人は呆れながら一連のやりとりと眺めていた。

「この方が剣をお使いになられるんで?」

 おっ、と才人は意識を切り替える。ここまで買い物してきてわかったのだがルイズは買い物が下手だった。「金はあるから好きなのを見繕いなさい」、商品を買ってから「値段は?」では鴨にさせるだけである。目線でルイズを制した才人は店主との交渉に乗り出していくことにした。

「ああ、俺が使いたいんだ。護身用として使いたい。素人だけどどんなものがいいんだ?」

 じろじろと才人を眺めた店主は「……そうですな」と考え込んだあと倉庫へと消え、一振りの剣を手に戻ってくる。片手で扱うものらしく、短めの柄にハンドガードがついている。ずいぶんと華奢な剣だと才人は思った。

「これ、なんていう剣?」

「レイピアでさあ。昨今は物騒ですから宮廷の貴族の方々の間で下僕に剣を持たすのがはやっておりましてね。その際にお選びになるのが、このようなレイピアなんでさあ」

 才人はじろじろと観察する。きらびやかな模様がついていて綺麗である。なるほど、プライドの高い貴族が好みそうだと思った。

「ふ~ん。まあ綺麗だとは思うけどさ、俺が欲しいのはこんなんじゃない。小振りなのはいいんだけどさ、もっと頑丈で、出来れば片刃の剣ってのはないのか? イザって時は両手で使えるのがいい。俺は素人だしさ、もっと扱いやすくて頑丈なのがいいんだよ」

 だがこれを欲しいとは思わない。才人にとって剣とは日本刀であってレイピアではない。慣れればそうでもないのだろうが、このような突くのが主体の剣をとっさに扱える自信はない。日本刀は無理でもせめて小剣の類が良かった。

「……ではこれなんかはいかがで?」

「……いや、もしかして、おっさん、俺の事馬鹿にしてる?」

 次に店主が持ってきたのは立派な大剣であった。宝石が散りばめられた、拵えも立派な業物である。

「くくく……、ゲルマニアの高名な錬金魔術師シュペー卿の鍛えた魔法のかかった一品でさあ。こいつなら両手で使えるし、素人が振るっても頑丈ですから壊れませんぜ?」

 にやにや笑いながら店主は才人に勧めてくる。どうやら才人がどう切り返してくるか試している雰囲気である。

 ったくどうしたもんかね? このおっさん悪乗りしてやがる。まあ乗ってやるのも面白いけど、対外的に貴族を放っておいて雑談する使い魔ってのもなぁ?

 でもそれもいいかと才人は思った。このようなやり取りは大好きなのである。

「んで? この剣っていくら?」

「エキュー金貨で二千。新金貨なら三千」

「ほほう? ふっけたなおっさん。で、いくらにまかる?」

「旦那、名剣は城に匹敵するんですぜ? 1950」

「いやいや、買うとは言ってないだろ? まあ200くらいにまかるんなら買ってもいいか?」

「いやいや、冗談を言っちゃいけませんや。何しろシュペー卿の一品ですぜ? 1900でどうです?」

 背後で蒼い顔をしたルイズがいるが無視である。チラリと視線が合わせるとブンブンと首を大きく振っている。横目に見えた親父もニヤリと笑っている。親父としても自らの力量をわきまえたうえで希望を言い、それでいて目利きを任してくれるような客は好きなのだ。
 武器は高いので正直あまり売れない。よって客も修理が主体で新品を買うような客は少ない。どうやら買ってくれそうな雰囲気であるし、このくらいのやり取りは軽いお遊びとして楽しみたかったのである。

「わっはっはっ! ご機嫌じゃねえか親父! 珍しいぜ!」

 突然、店内に馬鹿笑いが響き渡った。店主はそれを聞いて頭を抱える。

「こら! デル公! せっかく遊…交渉してんのに邪魔すんじゃねえ!」

「……なあ、おっさん。今の声誰?」

 声の方に振り向くが誰もいない。つかつかと店主の目線の方に歩いて行ったが誰もいない。

「おめえの目は節穴か!」

「っ剣がしゃべってる!」

 才人は驚いた。なんと剣がしゃべっているのである。流石はファンタジーの世界、なんでもありだと思った。

「……なあ、おっさん。これって何? 何で剣がしゃべってるの?」

「へえ、意志を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。…やい、デル公! お客様に失礼なことを言うんじゃねえ!」

 まじまじと見詰め、そして手に取って確かめてみる。刀身が細い薄手の長剣である。ただ、表面には錆が浮き、お世辞にも見栄えがいいとは言えない。

「……インテリジェンスソードねぇ……でもさ、剣がしゃべって何の意味があるんだ?」

 言いつつも才人は興味深々であった。必要とする剣とは違うが何しろしゃべる剣である。どうせルイズの金であるし、予算が折り合えば入手するのも悪くない。

「まったくでさ。いったい、どこの魔術師が始めたんでしょうかねぇ、剣をしゃべらせるなんて……。とにかく、こいつはやたらと口は悪いわ、客にケンカは売るわで閉口してるんでさ……。やいデル公! これ以上失礼があったら、貴族に頼んでてめえを溶かしちまうからな!」

「おもしれ! やってみろ! どうせこの世にゃもう飽き飽きしてたところさ! 溶かしてくれるんなら、上等だ!」
 
「やってやらあ!」

 興奮した主人が歩き出す。それを才人は遮った。

「親父さん、溶かすなんてもったいないって。それなら5エキューでどう?」

 それで主人も冷静になる。溶かしてもらうのにいくらかかる? 鋼材に戻したらいくらの価値になる?

「……旦那、5じゃ足が出ちまう。元々これくらいの長剣なら200くらいからが相場ですぜ? 鋼材に戻して、打ち直すとして、50……いや60は貰わないと割にあわねぇ」

 嘘じゃないと才人は思った。多少吹っかけているかもしれないが、この状況でとっさに弾き出した値段である。多少錆びてはいるが、新品で200なら60は悪くない。とはいえ興味はあるが、それを表に出したら失敗だろう。

「でもさ、閉口してるって言ってたじゃない。溶かして打ち直すのも手間でしょ? 厄介払いと思って5エキューでどう?」

「……旦那、確かに頭に血が上って溶かしちまうって言いましたがね、打ち直すのも武器屋の仕事でさぁ。まあ厄介払いしたいってのも確かなんですがね。……なら45でどうです? これ以上はまかりませんや」

「45ねぇ……」

 才人は考え込む。さびさびの剣に45エキューの価値はあるのか? いや、そもそもだ。

「一つ疑問なんだけどさ、打ち直すのも仕事ならどうして研いだりしないんだ? そうすりゃ少しはマシになるだろ? いくら口が悪くても見栄えが良けりゃ珍しいって買う客だっているんじゃないか?」

「へぇ、確かにその通りなんですがね、どうしたことか研いでも錆が取れないんでさ」

 苦笑いしながら店主が答える。それでますます興味をもった。
どうせルイズの金である。手に入るなら45どころか60でも惜しくはない。しかし主人の言い値で買うのも何か悔しい。

「……てめ、使い手かと思ったらリーヴスラシルじゃねえか……」

 その時であった。ぼそっとデル公と呼ばれた剣が呟く。

「……リーヴスラシル?」

 初めて聞く名前であった。店主の方を見、ルイズの方を見る。どちらも知らないと首を振る。

「……親父さん、この剣買うよ。45でいい」

「へい、毎度」

 才人はとにかくこの剣が欲しくなった。
 自分のことをリーヴスラシルと呼ぶ剣。もしかしたら自分やルイズの異常を知る手がかりになると思った。
 ぼそりと呟いたあと、剣は何にもしゃべろうとしない。何かありそうである。

「この剣、デル公って名前なのか?」

「へえ、デルフリンガーと本人は名乗ってますぜ」

「そっか、よろしくな、デルフリンガー。長いからデルフって呼ぶぜ?」

 デルフリンガーは黙りこくったままである。

「ねえ、サイト。そんな汚い剣にするの?」

 主人と才人のやり取りを黙ってみたままだったルイズがここで口を挟む。公式的には才人はルイズの使い魔である。汚い剣を使っていると、それはヴァリエールの恥となるかもしれない。そう思ったのだ。

「おう。しゃべる剣なんて面白いじゃんか。心配すんなって、普通の剣も買って、持ち歩くのはそっちにするからさ」

「……そう」

「今は静かにしてますがね。どうしても煩いと思ったら、こうやって鞘に入れればおとなしくなりまさあ」

 パチンと音を立てて、店主は鞘にデルフリンガーを収める。それを才人は受け取った。

「よし、じゃあ続きだ。ネタはもういいからまともな剣を見せてくれ。それと小振りなナイフみたいなのはないか? ナイフについては切れ味の良いのが欲しい」

 ニヤリと笑って店主が答える。

「へへっ、旦那、わかってらっしゃる。護身用だとしたら最後に頼りになるのがナイフでさ。一本あるとこんなに便利なのはねえですぜ!」

 調子の良い主人にニヤリと笑う。こうして才人はデルフリンガーを手に入れ、いい買い物ができたと満足したのである。



 才人は魔法学院へと帰ってきた。対外的には才人の立場はルイズの使い魔である。つまり重い荷物はすべて才人が運ばなければならなかった。とにかく重かったと、ベッドに腰掛け休んでいた。

 へへっ……でもシエスタも喜んでくれたし良かったよな?

 食事をし、プレゼントを渡した才人は部屋へと戻ってきていた。喜んでいたシエスタに才人の気持ちはあったかくなった。大した金額でもなかった露店で買ったペンダントではあったが、涙を流して喜んでくれたのだ。首に掛けたときはぼうっとした顔で幸せそうであった。

「ま、喜んでくれたならそれでいいさ。どうせ俺には縁がないんだ。良くしてくれた分の感謝の気持ちってだけだしな」

 そう、シエスタには縁がないだろう。才人は自分が欲望に溺れているのを自覚している。
 清い付き合いで収めているうちは何とか我慢できるが、仮に本当に付き合うとなれば欲望をぶつける形でしか愛せないと理解していた。辱め、苦痛を与え、あまりの羞恥に身もだえさせ、それを見ながらほくそ笑む。そんな歪んだ愛情である。
 微笑んでくるシエスタと話していると、ふとした時にシエスタを絶望の表情へと追い込むことを想像してしまう。どうしてもそうしたくなってしまう。だがそんな愛情の形を、シエスタは受け取りはしないであろう。だから、縁がないと諦めているのだ。

「……さっ、シエスタのことを考えるのはこれまでだ。それよりも今はコイツだよな」

 鞘に収まったデルフリンガーを手に取る。今頃ルイズは情けない思いをしながら風呂に入っているだろう。浴槽の中でお尻に指を入れて、悔しい思いをしながら揉みほぐしてでもいるのだろう。それまでにデルフリンガーに話を聞いておきたかったのだ。

「コイツ、何を知ってるんだ? あれだけじゃべってたのに何でいきなり黙り込んだんだ?」

 疑問を解消すべく、才人はデルフリンガーを鞘から抜きはなった。


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