眼前にはフーケの隠れ家とされる廃屋があった。おおよそ50メートルほど先にある。
暗い森の中にぽつんとあり、いかにも泥棒の隠れ家として相応しく見えた。
……問題はここまで連れてきた訳だよな? いないとは思うが…もしかして協力者とかでもいるのか?
さて、フーケの正体はわかっている。ロングビルである。彼女は一体何を考えているのだろう? ゴーレムを使うつもりであるのはわかったのだが、何故そうするつもりなのかはわからない。
単純に考えれば才人たち四人を踏みつぶすでもしようと、そう言うことになる。だが、今のところはその気配はない。一体いつ使うつもりなのだろう?
「よし、じゃあモンモランシー。小屋の偵察に行ってきてくれるか?」
「わかりましたわ。行ってまいります」
命令を受けたモンモランシーがにっこりと微笑む。
それともう一つの疑問である。何故才人たちをここまで案内してきたのだろう? フーケの隠れ家を捜索させ、手掛かりがないことを示し、捜査を打ち切らせたいのだろうか? だが、そうなると矛盾が出てくる。
もしもそうなら、そもそもフーケの隠れ家を見つけたと報告する必要がない。調査に赴いて、残念ながら手がかりはなかったとすれば良かったはず。
学院まで戻ってくるのに時間が掛かったので、そのアリバイの為にでっち上げた? それなら一応筋は通る。だがどこかしっくりとこない。
意識を誘導させるためについた嘘は詳しすぎた。矛盾点をつかれ、ボロが出た可能性は高かったのだ。
……う~ん、あんな小屋じゃあ、隠れてても一発でわかるし……
他にどんな可能性があるだろうか? それからゴーレムを使うのは正体がバレた時の保険なのか、それとも他に理由があるのか?
「……ロングビルさん。フーケは何でこんな隠れ家に来たんでしょうね? 中にいると思います?」
わからない才人は直接本人に問い質してみることにした。疑問点を解消するには、これが一番確実であろう。
「……そうですね。わかりませんが、中で一休みしているのか、あるいはもう引き払っているのか……」
するとロングビルは自信なさげに答えてくる。才人はふむ、と考え込んだ。まあ素直に白状するとは思わなかったが、一体どんなつもりなのだろう?
何か目的があるはずなのだが、どうしても思いつかないのである。
「サイト、小屋を見てきたけど誰もいないみたいでしたわ。これからどうしますか?」
モンモランシーが戻ってくる。小屋の中は一部屋しかなかったという。それから埃の積もったテーブルに椅子。乱雑に散らかっていて、人が使っている形跡はない。
ただ暖炉の脇に薪が積んであり、その隣にあったチェストが目を引いたというのだという。木でできた、大きな箱である。
「どうします? 誰もいないようだし行ってみます?」
果てしてロングビルはどう反応するのか? 才人はこれによってその意図がわかってくると思った。聞いた限りではしばらくは誰も使用していなかった廃屋である。
そうなるとフーケも使用していなかったことになるだろう。ここに怪しい点が出てくるのだ。
……箱の中身ってなんだ? それを見せる為にここまで案内したってか?
そんな中であからさまに怪しく思えるチェストが一つ。おそらくロングビルの目的はそれだろう。だが何のためかがわからない。
箱が空ならアリバイ作りに利用されたということだろう。でも、それだとフーケの情報を詳しく伝えた意味がない。
例えば爆弾の類だとすると、それも意味がわからない。噂を聞いた限り、フーケは怪我人こそ出しているようであるが、死者を出したとは聞いていない。
となると、第三の理由となる。盗んだ品を見せる為であろう。そしてこの流れだとどうやら『破壊の杖』を見せる為になるのだが……
「そうですわね。ではわたしはフーケが来るかも知れませんから辺りを見てきますわ」
ロングビルが偵察に行くことを志願した。それで才人はピンと来たような気がした。
っこいつ、今からゴーレムを使うつもりだな? 『破壊の杖』っつーくらいだから、なんか武器の類だ。そうすると俺たちに使わせて性能を見たいってか?
「そうですね、じゃあそうしましょう。俺はモンモランシーと中を見てくる。ルイズは小屋の外で見張っててくれ」
ルイズとモンモランシーは「わかったわ」とうなずく。ニコリと微笑んだロングヒルは森の中に消えようとし、
っくく…さあ、ロングビル、どう出てくる?
「それからキュルケ。ロングビルさんの護衛についてやってくれないか?」
ピタリと足を止めることになった。落ち着きのない様子は明らかに狼狽が見て取れる。よほど予想外だったのだろう。
「あ、いや、中にフーケはいないようですし、一番危険なのは見回ってくれるロングビルさんでしょ? キュルケならトライアングルだし、守ってくれると思いますよ?」
「……しかし…その、見回るだけならそんな危険はないと思いますが?」
才人は笑いを堪えるのに必死である。
「何言ってるんですか。森の中を見回るなんて、一番危険だと思いますよ? 不意打ちさられたらどうするんです?」
「っしかしですね、ちょっと見てくるだけなんです。それなら一人でも充分です」
ロングビルは不機嫌そうである。だが、才人としてはここが勝負どころなのだ。追及の手を休めるわけにはいかないだろう。
「だから何言ってるんです? 俺としてもそうしてくれないと困るんですよ。万が一ロングビルさんがフーケの不意打ちを食らったら、皆が危険になるんです。護衛は必要でしょう?」
「っいえ、念のためですから危険はないと思います。一人でも充分ですわっ」
このやり取り見た奴隷たちは理解した。今こそ才人はロングビルの正体を暴くつもりなのだ。
その表情を確認してみる。すると抑えきれない嗤いが見えだしてきていた。
そうすると奴隷たちもおかしくなってくる。自然と口の端が釣り上がってくるのを感じた。
っおいおい、オマエら。少しは我慢しろって。くっ、吹き出しそうになるじゃねーかよ!
それでも平行線の話でしばらく抵抗していたロングビルだったが……ついに諦め、疑われていることを認めざるをえなくなった。さっと距離を取り、眼鏡を外すと笑って見せる。
その優しそうだった目は吊り上り、まるで獲物を狙う猛禽類のようになった。
「……いつ気付いたんだい?」
「くっくっくっ…いつって言われてもなぁ、最初からとしか言えないぜ」
もうこうなっては隠す必要はないであろう。
「まっ、こうなっちまったんだ。無駄な抵抗は止めて欲しいな。“ゴーレムで俺たちを潰そうとするなんざもっての外だ。逃げようとしないでくれ”」
これで詰みである。気が付いていないロングビルは「はんっ、冗談じゃないね!」と叫び、ポケットから杖を出してみせた。
「おー、やっぱスゲェな。噂になるだけのことはあるぜ」
現れたのは30メートルもの高さを誇るゴーレムである。いきなり10階建てのビルに匹敵する高さが現れたのだ。一度見たことのある才人としても、至近だとやはり吃驚した。
……どんな理屈なんだろな? 考えても仕方ないんだが…やっぱ不思議だよなぁ……。
ぼけっとゴーレムを見つめ、そのあとはニヤニヤしてくる才人にロングビルはイラつく。
っこの期に及んで余裕かい? っ舐めたことした報いさ、受け取りな!
もう勝負はついているというのに、焦る様子も見せない才人である。なにやら得体の知れない恐怖はあるが、それよりも自信がある。例えスクウェアのメイジであろうと、こうなっては恐れる必要はない。
「いきなっ!」
だってそうではないか。もう呪文は完成している。相手は杖を構えようともしないし、こうやって一言呟くだけで終わる。勝ちはどうしたって揺るぐはずがないのだから。
だが
「ん? どうした? 何がくるんだ?」
ゴーレムは全く動こうともしない。その巨体を鎮座させたままである。
異常事態にロングビルは焦る。「いきなっ! いきなっ!」と何度叫んでもゴーレムは全く動こうともしない。杖を振り、ルーンを唱え直してもゴーレムはピクリとも動かない。
「くくく…何を焦ってるんだ? 早く動かしゃあいいじゃねえか」
「っく……動きな! あたしのゴーレム! あいつらを叩き潰すんだよ!」
ニタニタと嗤っている才人に恐怖を感じてしまう。だが諦めるわけにはいかないのだ。感情を押し殺してロングビルは叫び続ける。
ほぅ…いやいや、流石は怪盗フーケってか? モンモランシーはこの段階で心が折れかけてたんだが……
才人としては感心せざるをえないだろう。この胆力なら、手駒として充分役に立つに違いない。一歩、また一歩と、才人はロングビルへと歩いていく。
「っく……い、一体何をしたんだいっ! 何であたしのゴーレムが動かないのさっ!」
才人は答えない。その代わりに手を伸ばせば触れるほどに近づき、「そのままじっとして俺の質問に答えろ」と命令した。
「くく…不思議だろうが、そんなことは問題じゃない。いくつか質問に答えてもらいたいんだが…構わないか?」
「っか、かまわない。何が知りたいんだい?」
するとどうなってしまうか? ロングビルの口が、質問に答えようと自然に開いてしまうのである。信じられない出来事だった。
っな、なんで勝手に答えちまうんだいっ! あ、あたしはそんな事思っちゃいないのにっ!
そして気が付けば才人だけではなかった。ルイズも、モンモランシーも、そしてキュルケも、近づいて来ていた。
微笑んでいるのだが、それが怖い。ロングビルは悪寒を感じて震えてしまいそうなる。
「ルイズ!」
「わかってるわ。こんなチャンスはそうそうないし試してみるわね」
振り返りもせず、才人は指示をした。人目に付かない場所で、トライアングルのゴーレム。こんなチャンスはそうそうないのだ。
才人がゴーレムを動かすよう命令し、ロングビルはゴーレムを動かす。
っく、っどうして? 何で今だけゴーレムが動くのさっ!
事態がわからず、とてつもない恐怖を感じてしまう。そしてルイズはズシンズシンと去っていくゴーレムを見ながら呪文を詠唱する。
唱えるは「ファイアボール」の呪文。何だって構わないのだが、イメージとしては一番適当であろうと選んだ呪文だった。
っっい、一体何を試すっていうんだい!
さて、ルイズの呪文は全て爆発してしまう。これは属性が虚無であるからであり、行き場を無くした魔力が暴走してしまうからであるが……
さぁ、どうなる? たぶん行けると思うんだが、どうなる?
だが才人は思ったのである。爆発だろうとありえない結果は魔法と同じなのだ。しかもルイズは虚無を自覚した結果、その威力は以前と比べものにならなくなっている。
学院の中庭で試していては目立ってしまうほどであり、それで尚、全力には程遠かったという。
普通の呪文と違い、任意の場所で発動させられる“爆発”の呪文。それをゴーレムの内側で破裂させるイメージで使ったならどうなる? 全力で唱えたらどうなるか?
そして、ルイズの呪文はゴーレムへと襲い掛かった。
まるで強力な地雷がそこにあったかのように爆発する。才人は思わずほぅと感心した。
土砂が崩れるかのかのような激しい爆音がし、ゴーレムの上半身がばらばらにとびちったのである。
……流石は伝説の虚無ってか? 大した威力だ。想像以上だったぜ。……しっかし、それにしても脆くねえか? 中身がスカスカだとこんなもんなのかね……。
とはいえ、才人としては予想以上の結果である。手駒の能力が想像以上だったのだから、これは嬉しい。
ロングビルはありえないと茫然とし、話を聞いていたキュルケも、モンモランシーも、
そして予想以上だったのだろう。ルイズもまた、驚きで目を見開く結果である。
土の塊が雨のように辺りに降り注ぎ、ゴーレムの下半身だけが立っている。
そして、滝のように腰の部分から崩れ落ち、ただの土の塊へと還っていく。あとには土の小山が残された。
さあ、ここからである。
……だというのに、あれほど強気を保っていたロングビル。裏返せば己のゴーレムに絶大な自信を持っていたのであろう。ゴーレムの末路を見届けるともう駄目だった。がっくりと地面に崩れ落ちたのである。
……ありゃあ…拍子抜けっていうか、こんなんで役に立つのか?
才人としては苦笑するしかなかった。まあ仮面を被るのは上手いようだし、自信を回復すれば使えるようになると思いたい。
学院の情報を入手し、学院へと働き掛ける。またフーケとして活動していた時の伝手や情報収集能力。
マチルダは手駒としてどうしても必要なのだ。
「……キュルケ!」
才人は奴隷の一人に声を掛ける。キュルケは嬉しそうに「何かしら、ダーリン」と返した。
何故ならこれは今回の作戦で一番役に立ったとの証明なのだ。嬉しくないはずがないだろう。
「念のためだ。杖を取り上げて縛りあげろ。ルイズもモンモランシーもそれを手伝え」
今回の作戦で一番役にたったのはルイズとキュルケであろう。才人としてはどちらにしようか迷ったのだが、こうなると趣味が優先される。
いつでもどこでもおっぱいは正義なのである。
「くっ…そんなむくれるなって。わかった、わかった。ルイズ、オマエの意見も聞いてやるからそれで勘弁しろって」
こうしてフーケことロングビルは捕まってしまった。ルイズは不満そうだったが、才人の言葉で機嫌を直したようである。それをキュルケはふふんと挑発的に笑い、その光景にモンモランシーは苦笑した。
ロングビルはされるがままに、おとなしくなっている。ショックが大きすぎ、気力が尽きてしまったのだ。
さっ、尋問タイムのスタートだ。くく…素直に白状してくれるといいねぇ……
こうしてロングビルは縛り上げられた。ようやく本当の目的が果たされる時が来たのである。
後ろ手に縛りあげられ、地面へと直に正座で座らされ、勲功一位と認められたキュルケがその縄尻を握る。才人はその状態で尋問をすることにした。
さあ、何を答えてくれる?
楽しい楽しい時間の始まりであった。
◇
「……まあ偽名だとは思っていたけどな、まさか元伯爵令嬢だとは思ってなかったな」
「……そうだよ。あたしの本名はマチルダ・オブ・サウスゴーダさ。これで満足かい?」
ロングビル。いや、マチルダは疲れ切っていた。
「くくく……どうだ? ちんぽの使い魔になった気分は? 正直に今の気分を答えて見ろ?」
「最悪だね。これ以上ないってくらい最悪さね」
そして絶望していた。フーケとして散々盗みを働いていた自分である。最悪は縛り首も覚悟していた。だが絶対服従の奴隷にされ、その上で生かされるとは思ってもいなかった。
例の儀式である。
「……我が名はマチルダ・オブ・サウスコーダ・五つの力を司るペンダゴン。このおちんぽのために生き、おちんぽのためなら何でもし、おちんぽの事だけ考える。我はおちんぽの使い魔となった……」
そう誓わされ、屈辱のキスをさせられ、イマラチオによって、その精液を飲まされてしまったのである。
そしてそのあと冷笑を浮かべるルイズから、軽蔑の視線のモンモランシーから、最後に嬉しそうな様子のキュルケから説明されたのである。
もう逃れられない。オマエの運命は生涯奴隷として確定された。その証拠はわたし達である、と。
マチルダは絶望せずにはいられなかった。
「そうか? そいつは残念。まあこいつらも最初はそうだった。慣れりゃあ、気に入るようになるって」
「そうかい。そんなことはないと思うけどね」
マチルダは白状させられていた。口が勝手に動いてしまうのだ。破壊の杖の使い方がわからなかった、だから誘い出したと話した。
潜入していたのだから本名は違うのではないかと問い掛けられた。だから本名であるマチルダを名乗った。
問われれば問われるだけ、知っている限りをしゃべらされてしまったのである。
伏せていた顔をあげてみる。
っこ、こんなもんの使い魔ってのかい! っちくしょう! ふざけやがって!
そして今のマチルダ。儀式が終わると縄を解かれていた。それなのに黙って正座をし、聞きたくもない話を聞いている。
才人が「そのまま聞け。俺が何を望んでいるか考えてそのまま動け」と命令した結果、お尻がどうしても地面から離れなくなっていたのである。
すっと視線をずらしてみた。
そこには才人の奴隷たちが控えている。当たり前のように全裸であり、恥ずかしいとは思っていないようであった。
っくぅうぅぅ……ま、まさかとは思ったけど、こいつら全員このガキの奴隷だったなんてね。
あたしもヤキが回ったもんさ。ここに来る時からずっと嗤われて、試されてたとはねっ。
ッそれで、あたしも、こいつらのようにされちまうってのかいっ!
晴天の屋外である。森の中の広場である。そうそう人が来るはずないとは理解できるだろうが、それにしたって屋外である。普通は恥ずかしくて堪らないはずであろう。
それなのに才人が「脱げ」と一言呟いただけで、ルイズも、モンモランシーも、そしてキュルケも。まるで躊躇いなく全裸となっていった。
そして「脱がせろ」と呟けば丁重に衣類を脱がせていったのである。
この時マチルダは己が今からどうされるか理解した。才人たちは『破壊の杖』などどうでも良かったのだ。マチルダを捕まえ、犯すことのみ目的だったのである。
っちくしょう! ちくしょう! っっなんでこんな目に合わなくちゃなんないんだよ! あたしが一体何をしたってのさ!
どうやら相談が纏まったようであった。才人たちはふざけたことに普通に犯すのではなく、その方法を話し合っていたのである。
漏れ聞こえる言葉の数々は屈辱の限り、信じたくもない話の数々。
「くく…待たせたな。やっぱせっかくの屋外だ。それに相応しいやり方でまんことケツを貰いたくってな。時間も押してるしそろそろ始めようぜ?」
「っぐ…そ、そうさね。あたしのまんことケツ。早いところ貰っとくれよ」
どれだけ抵抗しても無駄であった。身体は勝手に動くし、口は勝手に回ってしまう。何か別の事を考えていれば? そう考えて試してみた。
なのに頭の片隅では別の事を考えつづけ、気が付けば才人の意図はどこにあるか? どうすれば命令を遂行できるか? ただただそれだけを考えてしまうのだ。
「よ~し、そんじゃあ始めますか」
説明を突き付けた才人はニヤリと笑い、開始を宣言する。
これからどうなってしまうのか? どうしても信じたくはなかった。
◇
開始を宣言した才人に控えていたルイズが一本の鞭を差し出す。何の荷物をもっているのだろう? 大した大きさの鞄でもなかったので気にしていなかったマチルダだが、今になって理解した。
鞭や縄。そういったものを隠すために用意していたのだ。
才人がニヤニヤ笑いながら「始めろ」と、マチルダに向かって合図する。
「っじゃ、じゃあご主人様。始めるよ。あたしの脱ぎっぷり、見てておくれ」
ゆっくりと立ち上がる。そうしてからニッコリと微笑んでみせる。猛禽類の目つきから優しげな表情へと変えたマチルダはその手をスーツの上着へと掛けていく。
っちくしょう…ちくしょう…ちくしょう…なんでなんだよ……
上着を脱げばそのあとはスカーフであろう。しゅるしゅると解き、ブラウスを露出させる。
直ぐには脱いでいかない。才人にアピールし、これでいいのかを確認しなくてはならない。
「あ~ん、見てぇ、見てえンっ、あたしのおっぱい見てえン……っ!」
場末のストリッパーマチルダは観客にアピールしてから脱いでいく。
それから表情だって気を付けないといけないだろう。流し目を送り、ウインクなどしてみる。才人がニヤリとしたのを見て、次に進む。
焦らすようにしてブラウスのボタンを外し、それをぽいっと投げ捨てるのだ。
ひらひらと舞い落ちていくブラウス。それは才人とマチルダの中間へと落ちた。そしてその才人であるが……
「じゅむぶっ…はむ…ちゅるぢゆ…ぺろれろ…ちゅゅうっ…はんむ…れろ……」
ルイズへと肉棒の奉仕をさせている最中である。そしてそれだけではなくモンモランシーの背中にどっかりと座り込み、キュルケの乳房を背もたれとしていた。
な、なんて悪趣味なんだいっ! ……っちくしょうっ…あ、あたしもああなっちまうって、いうのかい?
キュルケは嬉しそうにゆさゆさと揺らし、むにむにと押し付けているが、モンモランシーは四つん這いに、苦痛に顔を歪めている。だが、才人の奴隷なら当然のことだ。
椅子もベッドも、腰掛けるものがないから仕方がないし、それに奴隷がいくら苦しかろうが、そんなことは才人には知ったことではないのだ。
「くっくっく…焦らすなよ、マチルダ。そろそろ御開帳といってくれ」
「あっは~~んんぅ…、も、もう! ご主人様のいじわる~~っ!」
常に表情はあくまでも明るく、お尻をぷりぷり揺らしくいく。おっぱいを揉み、乳首をどうにか舐めようとし、小鳥のさえずりを音楽としてタイトなスカートを脱いでいたマチルダ。
才人の要望である。御開帳のためにショーツへと手を掛ける。恥じらいを見せるマチルダはスリットの結び目を解き、そしてもう片方のスリットも解く。
うっうううっぅうぅぐぅぅうぅ……ち、ちくしょう! こ、こんなのさっさと脱いだ方がよっぽどマシってもんじゃないか……。
ショーツを抑えたままM字になってしゃがみ、お尻を地面へとつけ、乳房を抱え込むようにして隠す。
っくっふぅうううう……は、恥ずかしいじゃないかい……ち、ちくしょう……
さあ、いよいよである。マチルダが御開帳をする。
M字の体勢から身体を寝かし、背中を地面へとつけた。あとは次第次第に足首をあげていき、股をゆっくりゆっくり広げていく。
っっやけくそだよ! ちくしょう! 見たいってんなら見ればいいさ!
満面の笑みを作って見せる。場末のストリッパーとはそうしたものなのである。
その見事なV字はまさに御開帳。じゃまになったショーツをぽいっと投げ捨て、両手を使って秘唇をくつろげて見せる。
奥の奥まで見えるようにと力を込め、才人の目を見てニッコリ微笑むのだ。
「どう? ご主人様? あたしのおまんこ、使ってもらえるかい?」
どうしても屈辱と羞恥が出そうになってしまう。だが、今のマチルダには許されないだろう。何とか表情を作り、才人へと微笑んで見せる。
「くく…ああ、使ってやる。それとケツ穴のほうもよろしく頼むぜ?」
「わかってる。これでどぉ~お?」
太ももを抱えてみせる。そしてもう片手で二本の指を送り込み、ぐいっと広げてみせる。
マチルダの顔が紅潮しているのは怒りのせいだけではない。羞恥で死にそうだったからである。
木々から吹く風が膣とアナルを凪いでいく。すーすーと情けないのが実感できる。それを見ている才人なのにニヤニヤしていて何も言わない。
批評されるのも辛いが、それには怒りを伴うだろう。でも、こうやって放置されているのも辛いのだ。
何しろ冷静になれるし、そうすると羞恥しか感じられないのである。
っは、早くしとくれよ! 早く終わらせておくれよっ!
引きつり気味だった満面の笑顔が変わっていく。情けなさと恥ずかしさで、愛想笑いに変わろうとしていく。
「くく…よし、次にいけ」
その言葉にマチルダは心底ほっとした。このあと更に酷い屈辱へと追い込まれるだろう。
でも、今はそんなことより、屈辱の御開帳をなんとかしたい。それだけしか頭には残っていなかった。
「っっい、いくよ、ご主人様。あたしのマンズリ、見ておくれ……」
そして現実とは辛いものであった。マチルダはこれから「よし」と言われるまで自慰に励まなくてはならない。
「っはぁあぁんんぅ……はぁ…はぁ……っはんっ、っぁぁン~~はぁ……はぁ……」
このあともまだまだ予定がある。だから手を抜くわけにはいかない。何故なら才人は宣告していたのだ。
「くく…やらないのならそれもいいだろう。だがな、多分その報いは受け取ることになると思うぜ?」
そう言われてはマチルダとしては手を抜くわけにはいかない。例え恥ずかしかろうと、悔しかろうと、手を抜くわけにはいかない。
っごめんよ、テファ。あたしね、あんたのことしゃべっちまったんだよ……
そして情けなかろうと、惨めであろうと、手を抜くわけにはいかなかったのだ。
才人の言う“報い”が何であろうかはわからない。もしかしたら充分にほぐさないと裂けてしまう。そういう意味だけだったかもしれない。
「っはぁはぁああぁんんぅ……あっ、いくよ、イっちぅよぉ……! はぁはぁ…んん~~っイくっ、イぐうぅうぅう……っ! っ……はぁ……はぁ……っんんぅ…あんっ…あぁぁあんぅぅ……」
だが、マチルダとしては匂わされるだけで充分だった。この悪魔のような男だけに意味がないかもしれない。
でも、少しでも可能性があるなら、どうしたって手を抜くわけにはいかないのだ。
「おい。ケツだって使うんだ。思いっきしやって見ろ。それから四つん這いでもサカってみろ。くく…見せつけるようにするんだぜ?」
嗤う才人がマチルダに促す。
「!っ~~わかったよ、ご主人様! っっあ、くがぁぁんんッ……っはぁ……はぁ……っくっ……っ」
命令は絶対である。否との選択肢はない。体勢を入れ替えてお尻を突き出す。見せつけるようにと言われたのだ。高く掲げ、ふりふりしながらしなければならないだろう。
マチルダはそうやって指を入れ、ぬぷぬぷとアナルオナニーへと熱中していく。
はぁぁンっ……ち、ちくしょうっ! ちくしょうッ! っはぁ…んんんっ……はぁ…はぁ……
薄暗い森の中ではある。だが、廃屋の周辺だけは広場となっている。太陽の光のもとマチルダは全裸となった。
そして今、屈辱に備える為に自慰へと熱中させられていた。