<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

XXXSS投稿掲示板




No.27351の一覧
[0] キスから始まる鬼畜なストーリー【ゼロ魔・鬼畜】[通りすがり……](2011/04/22 15:47)
[1] 異世界召喚[通りすがり……](2011/10/10 19:53)
[2] 反逆への道[通りすがり……](2011/04/23 10:43)
[3] 新しい関係[通りすがり……](2011/10/23 19:29)
[4] 最初の一夜[通りすがり……](2011/06/03 20:52)
[5] とある一日の風景[通りすがり……](2011/04/29 14:12)
[6] 第四の使い魔[通りすがり……](2011/05/02 19:47)
[7] 頼れる相棒[通りすがり……](2011/05/03 19:44)
[8] 最初の仕事[通りすがり……](2011/05/04 22:09)
[9] 強い心[通りすがり……](2011/05/06 10:27)
[10] 微熱の誘惑[通りすがり……](2011/05/07 20:31)
[11] 微熱から情熱へと[通りすがり……](2011/05/08 19:39)
[12] 情熱の行方[通りすがり……](2011/05/14 13:46)
[13] 決闘[通りすがり……](2011/05/15 21:05)
[14] 決闘の結末[通りすがり……](2011/05/17 19:13)
[15] 捜索隊結成[通りすがり……](2011/05/17 19:33)
[16] 森の広場[通りすがり……](2011/05/19 20:22)
[17] 奴隷が嗤うとき[通りすがり……](2011/05/21 15:50)
[18] 土くれのフーケ[通りすがり……](2011/10/11 20:00)
[19] 新しい一日の風景[通りすがり……](2011/06/03 20:16)
[20] トリスタニアの休日[通りすがり……](2011/06/03 20:38)
[21] 重大な決意[通りすがり……](2011/06/05 22:50)
[22] 卑劣なる男[通りすがり……](2011/06/09 23:54)
[23] 決断の時[通りすがり……](2011/06/15 20:12)
[24] 薔薇の行く末[通りすがり……](2011/06/21 23:03)
[25] 絶望のオスマン[通りすがり……](2011/10/23 19:27)
[26] 学院の支配者[通りすがり……](2011/10/23 20:05)
[27] 港町ラ・ロシェールにて[通りすがり……](2011/10/29 21:28)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[27351] 情熱の行方
Name: 通りすがり……◆60293ed9 ID:52126834 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/14 13:46
「っこのっ! 裏切り者ッ!!」

 パシィイッと大きな音が響く。キュルケは憎々しげにルイズを睨みつけ、その右手を大きく振りぬいた。

「っあんたも同罪よッ! っこの裏切り者ッ!!」

 再度パシィィッと大きな音が響いた。涙を湛えたキュルケはモンモランシーを睨みつけ、その右手を大きく振りぬく。

 吹き飛ばされ、石の床に叩きつけられ、叩かれたその頬はじんじんと痺れている。だが叩きつけられた身体の痛みも、口中に感じる血の味も、ルイズも、モンモランシーも、その心は罪悪感で一杯だったので気にならなかった。


 その日の朝、キュルケは幸せだった。光が眩しくて目を覚ますと、隣には布団とは違う温もりを感じる事が出来たからだ。
 それで昨日の夜何があったか思い出したキュルケは「おはよう、サイト」と、自然に零れる笑顔で才人を起こした。
 唇にキスされた才人はしばらくぼうっとした様子だった。ごしごしと目元をこすり、状況を理解すると「おはよう、キュルケ」と、満面の笑みで返してくる。嬉しくなったので「おはよう、サイト。いい朝よ」ともう一度キスをした。
 微笑んだ才人は髪を梳いてくる。もっと嬉しくなったキュルケはもう我慢できなくなった。その胸に飛び込んでいき、「おはよう!」と笑った。

 キュルケは幸せだった。こんないい朝は生まれて初めてだと思った。股間にある違和感と痛みさえも、誇らしくて嬉しかった。

「くくっ…キュルケ、そこまでだ。これから儀式を始めるんだからな、あんまり痛めつけないでくれ。二人にはキュルケの準備に手伝ってもらいたいんだよ」

「っぐ、も、申し訳ありません、ご主人様。お許しください」

 一日中幸せだった。授業を休んで才人と一緒に過ごし、楽しい話を一杯した。才人が異世界出身と聞いて驚いた。ルイズが才人をどのように扱っているか聞き及んで憤慨した。  
 もう才人は恋人なのだから抗議しようとしたら「キュルケは優しいんだな」と宥められて嬉しくなった。

「ああ、許してやる。それより儀式を始めるぞ? それが終わればケツの処女を貰ってやる。嬉しいだろ? キュルケ」

「もちろんですわ、ご主人様。っあ、あたしのケツの処女をご主人様に捧げられるなんて、こんな光栄なことってありませんわ」
 
 そして夜になるとルイズが神妙な顔つきで現れた。才人のことで話があると言う。
 望むところだと部屋へと乗り込み、何故かそこにはモンモランシーがいて、そこで真実を告げられ、幸せは絶望へと変化してしまう。自分は道化に過ぎなかった――

「よし、じゃあ制服を脱いでいけ。脱いだら部屋の中央に直立しろ。手はバンザイ、足は肩幅になってみろ」

「っわかりました、ご主人様」

 遊ばれていた理由は単純だった。ルイズの隣の部屋にいたから、役に立つ駒だと思われたから、その方が面白いと思ったから。ただそれだけが理由だった。

「くく……昨日は尋ねなかったが…やっぱコレって剃ってんだよな? コレも乙女の嗜みってやつなのか?」

「ぁ…そ、そうです、ご主人様。乙女の嗜みですわ」

 隣の部屋にいた役に立つであろう駒。そんな理由で奴隷に堕とされるなど、到底納得出来ることではない。だが、それよりも許せないのは第三の理由だ。
“その方が面白いと思ったから”。
 こんな屈辱があるとはキュルケは思ってもみなかった。

「ふむ…こうやって並べると一目瞭然だな。モンモランシー、オマエはどう思う?」

「……比較にもなりませんわ。わたしはどちらかというと小さいほうかと思いますし……」

 辛そうな表情のルイズに説明された。それが本当なら…いや、この状況なら本当のことなのだろう。それならば手間など掛けなくとも、もっと簡単に奴隷へと堕とすことが出来たはず。
 それなのにだ。“その方が面白そうだったから”というふざけた理由で乙女の純情を踏み躙り、微笑んでいる表情のその裏で嘲笑ってくれていたのだ!
 幸せそうなキュルケを見て、これは面白いと嗤っていたというのだ! 
 これほどの屈辱。これほどに惨めなことはなかった。

「さ、キュルケ、始めてくれ。こいつをしないとちんぽの使い魔とは認められんぜ?」

「っわ、わかってますわ、ご主人様。で、では始めます」

 悔しくて悔しくて堪らなかった。「この卑劣漢!」と叫んで、激情の炎で焼き尽くしてやりたかった。それなのにだ。

 杖を向ける事がかなわなかった! それならばと殴りつけようとしたら身体が動かなかった! せめて「よくも騙してくれたわね、この裏切り者!」と叫んで唾を吐き掛けてやりたいと願ったのに、それさえも叶わなかった!

 ……っほ、本当に愛してしまったのに…う、嘘だって信じていたのに……

「……我が名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アルハンツ・ツェルプストー。五つの力を司るペンダゴン。このおちんぽのために生き、おちんぽのためなら何でもし、おちんぽのことだけ考える。我はおちんぽの使い魔となる……」

 平伏したキュルケは屈辱の誓いを口にする。恋人関係から決別し、奴隷へと転落するためのキスをした。



 顔をあげた時、キュルケは視界がぼやけているのがわかった。でも、才人が笑っているはわかる。
 そして、どうやら自分は微笑んでいるようだと思った。それなのに涙を浮かべている。
 なんて滑稽なことだろうと、キュルケは頭の片隅で思った。

「くっくっくっ…、これでオマエもちんぽの使い魔だ。ちんぽのために何だってやってもらうぜ?」

「もちろんですわ。このおちんぽのためなら何だってやりますわ」

 口が勝手に動いてしまう。それが悔しく、でも、それよりも悲しかった。
 惨めで、情けなくて、恋人だと思っていた男は自分を奴隷の一人としか考えていなかった。
 そんなことが悲しくて、胸にぽっかりと穴が開いてしまったようだと思った。

「さ、ルイズ。オマエはキュルケのケツ。モンモランシー。オマエは上半身を責めてやれ。…くく…キュルケはキスが好きみたいだしな、濃厚なのをしてやりゃ喜ぶと思うぜ?」

「わかったわ、サイト」

「わかりましたわ。頑張ってやってみますわ」

 今から愛撫をされる。昨日はあんなに嬉しかったのに。恥ずかしかったけど、満たされて温かかったのに、恋人だった男はもうしてくれないのだろうか?
 騙されていたとわかったのに、そんな期待をしてしまった自分が辛い。

「くく…どうだ? 大したもんだったろ? キュルケも練習して上手くならなくっちゃあな」

「っはぁ……はぁ……っ…す、凄かったですわ……で、でも、今はおちんぽを…っけ、ケツに入れて欲しいですわ……」

 全身を愛撫されてしまった。同性とキスをして、お尻の中まで舌を入れられてしまった。快感で喘いでしまったのが悔しかった。何度も絶頂に追い込まれてしまったのが情けなかった。

「それじゃあ、ご主人様。今からあたしのケツの処女を捧げますわ。どうかお受け取りください」

「おう。始めてくれ。俺が満足するまで腰を振り続けろ。くく…そうしないといつまで経っても終わらないぜ? 是非とも頑張ってくれ!」

 これからは自分もやらなくてはならないのだという。鞭を入れられ、何が悪かったのか自分で考え、そんな中で屈辱の奉仕をしなければならないのだという。

 ……うふふふ……奴隷かぁ……せめてサイトの奴隷があたしだけだったらなって、そう思うのはおかしいかしら? 
 たとえ奴隷でも独り占め出来たらなって思うのはおかしいのかな? うふ…うふふふふ……

 余計な事だった。今すべき事はお尻の処女を捧げる事だった。
 キュルケは才人に跨る。昨日はリードされていたが、今日は違う。
 自分が主体となってアナルへと肉棒を導き、腰を振り、射精へと導いていかなくてはならない。そのことだけ考えていればいいと思った。

「で、では、ご主人様、参りますわ」

「くく…わかったから早くしろって……」

 肉棒を手に取り、肛門へと添える。目を閉じて、一つ深呼吸。そうしてキュルケは肉棒を掴み直し、体重を掛け、ずぶりずぶりと埋め込んでいく。

「っっぐっぐうううううっ……ッぐっあああっ…っ…がっはっ……!」

 痛い。とんでもなく痛い。キュルケは裂けているのではないかと思った。
 昨日の処女喪失と比べて快感がない分、その痛みは比較にもならないと思った。

「ッっ~~ッ~~っ! い、いきますわっ! ご主人様ッ!!」

「おう! やってくれ!」

 キュルケは腰を振る。才人の胸に手を置き、腰を浮かせ、何度も何度もお尻を振る。

「ッぎっひいいいぃいぃ……ぐぅ…っが、がぁあぁあぁぁぁぁぁ……!」

 例え痛かろうとも、例え裂けてしまおうとも、例え壊れて使い物にならなくなろうとも、キュルケは才人の為に腰を振り続ける。
 今すぐ肉棒を抜きたいのに、身体は深く深く肉棒を求める。才人の求めに応じようと、肉は肉棒を締め付ける。

「ッッずぅあぁあぁぁあ……っご、ご主人様ッ! ど、どうですか! ッっキュルケのケツっ! っど、どうですかぁぁっ……!」

「おう! 悪くねえぜ! だが今日は時間の許す限りケツを振れ! とりあえず出してやるから、ソイツをローションにして頑張るんだぜ!」 

 キュルケは理解した。意志の力ではどうにもならない事がある。

 っルイズ! モンモランシー! ごめんね、仕方なかったんだよね。あたしにもやっとわかったわ! 叩いたりしてごめんね!

 苦痛に耐える為に歯を食いしばり、才人の問いに答える為に目を見開く。すると視界の隅には申し訳なさそうな顔をしたルイズとモンモランシー。
 彼女達だってやりたくてやったわけでない。それがキュルケにもようやく納得できたのだ。

「!ぎっひぃいいいぃぃいいぃぃぃぃぃ……!」

 キュルケは直腸内に熱い迸りを感じた。才人が射精をしたのだ。だが、肉棒は抜かれない。ムクムクと当然のように回復したソレは、容赦なくキュルケを責め続ける。

「おらっ! まだ始まったばっかだぜ? どんどんいけ! キュルケ、俺が良しと言うまで踊り続けろ!」

「ッッがあっはっっ! ぎぐぅうッ! ~~っわ、わかりましたわっ、ご主人様ッ!」

 一休みすら許されない。それが奴隷なんだと理解した。キュルケは命令通りにお尻を振る。締め付けるように意識し、これでいいのかと才人の顔を覗きこむ。
 何度でも、何度でもお尻を振る。肉棒を咥えて溢れてきた精液を始末し、お腹を舐めて精液と汗を始末する。つかの間の休息を許されたあとは才人に跨り、またお尻を振る。

 ルイズとモンモランシーがじっと見つめるなか、キュルケはお尻を振り続ける。

 っあっあはははははははははははっ! あ、あたしは奴隷! ちんぽの使い魔っ! だからこれが当たり前なのっ! ご、ご主人様にお仕えして! ご、ご命令のとおりにすればそれでいいのよっ!

 ただひたすらに、キュルケはお尻を振り続けた。才人がやれといったのだ。キュルケにとって当たり前になった。

「おらっ! コイツで何発目だ? くく…暇そうだな、オマエら。お互いにマンズリしあってろ! 上手くやったんだ。褒美をくれてやるから準備してろ!」

「!わ、わかったわ」

「っわかりましたわ! い、今すぐマンズリいたしますわ!」

 命じられた二人はいきなりの指示に驚いたものの、直ぐに行動に移す。藁の上に寝転がり、キスを交わし、お互いの性器を舐め始める。

 くぅっくっくっ! 大分仕上がったがまだまだだよな! 言われなくてもやるようになんないと一人前の奴隷とは言えないぜ!
 
 次第に大きくなり始める嬌声。踊り続けるキュルケ。才人は満足であった。

 っあ、あたしはご主人様の奴隷っ! あ、あたしはちんぽの使い魔なのッ! だ、だからこれでいいのッ! こ、これでいいのよッ!!
 
 この日、キュルケは才人の奴隷として認められる。そしてキュルケは才人をご主人様として認めたのだった。



 トライアングルの実力をもつキュルケを奴隷としたので、ある程度の安全を確保することが出来た。これから護衛として役に立ってくれるだろう。
 モンモランシーに続いてキュルケでも試し、その力をいくらかでも理解出来た。このことも後々大きな意味をもつことだろう。

 くく……中出しじゃなくても大丈夫だって確認出来たのは大きい。飲ますだけで大丈夫ってことはだ、もっと手軽に奴隷を増やせるってこった。まっ、条件が必要かもしれんからいろいろ試す必要はあるけどな……

 もう才人に躊躇う理由はなかった。より万全の体制になるのを待っていたら、それこそ時間だけが過ぎていく。何かの拍子にバレ、破滅してしまうことは充分考えられる。
 動いても、動かなくても、どちらにしても破滅してしまう可能性があると言うのなら、状況を動かした方が遥かにマシと言うものであろう。失敗したとしても、それならば納得がいく。
 今の自分にはその力があるし、目指すべきは貴族に恥を掻かせて嗤うことである。
 リーヴスラシルとは欲望に忠実なのだ。いつまでも愚図愚図していては、その名が泣こうというものだろう。

 ……まずはだ、あの恥ずかしい馬鹿だな。っふざけたこと言いやがって!
 っ……どう思い知らせてやれば満足できる?

 モンモランシーという手駒は既に確保してある。これを利用すれば効果的な作戦が組める。ギーシュの末路を思い浮かべ、才人はにやにやするのを抑えきれない。

 くっくっくっ……、とはいえ大恥を掻かせて、直ぐに退場させるんじゃあもったいないよな? 是非とも学院に残って、嗤われ続ける存在となってもらいたい。そのへんのさじ加減をどうするかが問題だな……。

 ベッドに腰掛けて思考していた才人は視線を下へとずらす。足元には忠実な奴隷が三人。その立場に相応しい恰好で正座している。

 表だって魔法は使えないが虚無の使い手であり、トリステインでは一番の影響力を持つヴァリエール公爵家の三女ルイズ。
 開拓事業の失敗から苦境にあるとはいえ伯爵家令嬢であり、女子学生に影響力を持つモンモランシー。
 ゲルマニアからの留学生ではあるが富裕で知られる侯爵家の家柄であり、火のトライアングルと学生の中ではトップクラスの実力を誇るキュルケ。

 いずれも手駒としては申し分ないと言えるだろう。才人は己の所有する奴隷達の立ち位置を決める。

 まずはルイズ。公式的には才人の主人である。よって連れだって行動していても当たり前となろう。才人が貴族の学生連中に対して横暴を働かないよう抑止力となってもらう。 
 つまり、才人に手を出すと言う事はヴァリエール公爵家に喧嘩を売るつもりなの? と、睨みを聞かせてもらうわけだ。基本的にはこれまでと変わらない。
 そしてキュルケ。才人に惚れてしまったということにする。キュルケの熱し易く飽き易い性格、平民にも色目を使っていたことは周知のことである。才人に付きまとっていても不思議ではない。ボディーガードとして働いてもらおう。
 最後にモンモランシー。正直才人と連れ立っていては不自然である。よってとある理由からルイズ、およびキュルケと仲良くなったことにする。そうすれば才人が一緒でも違和感はなくなる。
 理由については個人的なことだからと、秘密にしておけばいい。噂を仕入れたり、流させたり、情報操作なんかで役立ってもらうとしよう。

「くく……よ~し、そんじゃあ始めるぜ? あの馬鹿に報いをくれてやる。うまい考えを思いついたら褒美だ。忌憚ない意見を言ってくれ!」

 才人は嗤う。いよいよ本格的に動くことを決意した。



 ギーシュ・ド・グラモンをとはどのような人物であるか? 黙っていればそれなりの美男子であり、何よりも四男とはいえ、武門の名門として知られるグラモン家の男である。
 貴族社会の中でという括りはあるだろうが、普通はモテる。しかも当主である父親は元帥の称号を持っているのだ。普通はモテる。
 だが、彼に人気があるとはあまり言えない。高慢の塊のようなトリステイン貴族の女生徒だけに、ギーシュの歯の浮くようなお世辞に気分が良くなりはする。
 だからそれなりに話はするが、付き合うか? とまで言われたら誰もが二の足を踏む。モンモランシーやケティは例外中の例外と言えるだろう。

 彼は世間知らずであり、自惚れ屋であり、目立ちたがり屋であり、自尊心が高かった。これらの欠点は少なからず誰でも持っているものではあるが、度が過ぎれば目も当てられないことなる。

 父親からの「名をこそ惜しめ」との言葉をはき違えて理解し、貴族とは平民よりも高貴な存在なのだからと、平民に対して高慢で侮蔑的な態度を取る。見下すのが貴族であると思っている。
 家名にひっついた取り巻きの持ち上げから自身の実力を勘違いしている。実力が上の人間はそんな彼を馬鹿にして半ば無視しているのだが、自惚れから気付けない。イザとなれば実力などいくらでも上がろうし、ドットでいるのはむしろ余裕の表れだと思っている。
 戦場の華やかな部分だけを耳にし、自分もそんな存在になりたいと憧れた。見栄を張りたがるグラモンの気風もあって自己主張の強い衣服を、端的に言えばセンスの悪い服装を好んでいる。
 今は学生の身分であるから同級生にそれほど強い態度も取れない。結果、都合が悪くなると責任転嫁して誤魔化そうとする。

 ギーシュは学院の従業員から嫌われているのにも気付かず、取り巻きから持ち上げられて笑い、ナルシストそのものの振る舞いをして多数の女生徒から気持ち悪がれ、同輩から時に馬鹿にされて顔を赤くして怒り、それでも今日も今日とて学生生活を楽しんでいた。


「ねぇ、ギーシュ。あんたってモンモランシーに振られたんですって? それでケティっていう一年生にも振られたんですってね?」

「っな…、ル、ルイズ。き、きみは一体なにを言っているのかね? そんなわけないじゃないか!」

 アルヴィーズの食堂である。練りに練った計画を才人は実行に移す。ポイントはギーシュがモンモランシーに未練タラタラなこと。いや、下手をすれば振られたとは考えていないこと。

「へぇ……そうなの? でも、モンモランシーに聞いたわよ、あんな浮気者なんて知らないって。それにサイトからも聞いたわよ? 何日か前にここで何があったかって。違うの? ギーシュ」

「あ、あたりまえじゃないか! っモ、モンモランシーは誤解してるんだ。ケティだってそうだ。レディたちは恥ずかしいんだよ」

 そして、責任転嫁する悪癖があること。特に友人連中の前では虚勢を張るであろうこと。これを利用しようと考えた。
 才人は因縁の始まりとなったこの食堂でギーシュを叩きのめす。

「……誤解ねぇ……それに恥ずかしいって何が恥ずかしいの? うふふ……二股するようなギーシュと付き合っていたって過去のこと?」

「っ、き、きき君は何を言ってるんだね? ぼ、僕を侮辱するつもりなのかねっ!」

 ルイズは回りの友人たちと歓談していたギーシュの前に立ち、冷笑を浮かべながら続ける。今は食事も終わったデザートタイム。
 大方の学生は去ったが、まだ人はいる。取り巻きたちは黙っているが、周りの友人たちと言えば……

「何言ってるんだ、ギーシュ! モンモランシーに頭からワインを掛けられていたじゃないか!」

「そうだぞ、ギーシュ! 一年生にもひっぱたかれてたじゃないか! どこが誤解だって言うんだ?」

 こういう時に普段の行いのツケがくる。真っ赤な顔をして怒るギーシュにゲラゲラ笑ってみせるのだ。真実を改めて暴露されたギーシュは真っ青な顔になり、屈辱を押し殺して黙り込むしかなくなった。
 下手にルイズに反論しようものなら、友人連中も敵にしなくてはならないのだ。
 
「……ギーシュ」

 そこにモンモランシーが現れた。眉をひそめ、冷たい視線でギーシュを見る。

「!っモ、モンモランシー! い、いやっ、これは違うんだモンモランシー。っそ、そうだ! 僕のモンモランシー、ルイズに言ってやってくれないかね? 誤解だって言ってほしいんだよ! きみは恥ずかしいだけなんだ。そうだろ? 言ってやってくれないか! 僕のモンモランシー!」

 ギーシュには自信があった。いや、すがりたかった。これまで何度となく他の女性に色目をつかってしまい、その度にモンモランシーから「もうあんたみたいな浮気者なんて知らないわ」と別れを告げられていた。だが、必死になって持ち上げ、褒めつくすことで許されてきたのだ。
 高慢で自尊心の塊のようなモンモランシーではあるが、だから根は優しいのは知っている。ならばこれほどの苦境、必ずや助けてくれると、いや、助けに現れてくれたのだと思った。

「……ギーシュ」

「ああ! 判ってくれるんだね? 嬉しいよ! 僕のモンモランシー! さあ、ルイズに言ってくれたまえ! 僕が愛してるのはモンモランシー、君だけさ! ルイズには冗談を言っただけと言ってくれたまえ!」

 何故なら今のモンモランシーは悲しそうな顔をしている。何か決意を持っているような雰囲気である。ちらりとルイズを確認し、目配せを交わしてからギーシュの顔を見てくれた。

 ……嬉しいよ、モンモランシー。僕は幸せ者だ。……ルイズに嘘を言うのが辛いんだね。大丈夫、本当のことにすればいい。そうなればルイズの顔も立つんだ。さあ、僕のモンモランシー、早く冗談を言ってしまったんだって言ってくれたまえ!

 ギーシュはモンモランシーに微笑んでみせる。何か一言でもいい。ギーシュを弁護する一言さえもらえれば、周りの友人連中はしらけてしまうはず。
 そうなればギーシュは苦境を乗り越えられるのだ。

「……あのね、ギーシュ」

「なんだい? 僕のモンモランシー」

 ニコリと微笑んだモンモランシーに、ギーシュもまた微笑み返す。万が一との不安が消えた。微笑むモンモランシーはギーシュへと語り掛ける。

「ギーシュ、あなたって恥知らずよね」

「……え?」

 モンモランシーは汚物を見るような目でギーシュを見た。

「聞いたのよ。ギーシュ。あなたってわたしに振られたあとにメイドに八つ当たりしたんですって? 親切を受けたのにメイドの所為だって責任を押し付けようとしたんですってね」

「え? あ、いや、そ、それはだね、モンモランシー、違うんだよ!」

 てっきり弁護してくれると思い込んでいたギーシュは慌てた。八つ当たりしたのは事実である。だが平民に対してであるから問題ないと思っていたし、気が晴れたので気にしていなかったのだ。

「何が違うっていうのかしら? 振られたのは二股をしていたあなたの自業自得でしょう? 親切に落し物を拾ってもらったのに、感謝するどころか機転が利かないって怒鳴りつけたんですって? ギーシュ、八つ当たりでなくて何だっていうのかしら?」

「な、何を言ってるんだい、モンモランシー。だ、だってメイドだよ? 平民じゃないかね! そ、それにだ。機転が利かないのを注意して何が悪いって言うんだ。当たり前のことじゃないかね!」

 何やら怪しげな雰囲気になってきたのに学生たちは黙り込む。モンモランシーの怒気とギーシュの慌てぶりに、これは面白い見世物だとニヤニヤしながら見物に回ったのだ。

「……当たり前ね。メイドは自分の仕事をしたに過ぎないわ。だってそうでしょう? ビンが転がったままだと踏みつけて、それで割ってしまうかもしれないわ。そうしたらギーシュ、あなたはどうするつもりだったの? 
それにね、ギーシュ。この落し物はあなたのものですかって聞いて何がいけないのかしら? 違うと言われて、それで聞き返してしまうことの何処がおかしいのかしら? ポケットから落ちるところを見たって言うんでしょう?」

「そうだぞ、ギーシュ! モンモランシーの言うとおりだ!」

「頑張れ、ギーシュ! 何か言い返してみろ!」

 ギーシュは真っ青となって立ち尽くすばかりとなった。ギーシュにしても自業自得というのはわかっていたが、それよりも自分の体面の方が大事だったのだ。周りの声援に力を得たモンモランシーは続ける。

「しかもよ、事情を聞いたサイトが泣いているメイドの代わりに謝るからって、頭を下げたって話よね? そしたらギーシュ、あなたってば土下座して謝れって言ったんですってね。
 無関係なのにギーシュの顔を立ててあげようとしたサイトに土下座しろって言ったんですって?」

「っそ、それはだね、モンモランシー。平民が貴族に謝るのに立ったままって法はないじゃないかね! 僕はあのメイドが気を利かさなかったおかげで恥を掻いてしまったんだ!
 間違いを正してやるのは貴族である僕らの務めってもんじゃないかね!」

 それには目についたメイドは丁度良かった。ニタニタ嗤う友人たちの矛先を逸らすにはメイドに当たるしかなかった。平民なのだからそれくらいはいいではないか。

「……呆れた。まだそんなこと言ってるの? いい、ギーシュ。あなただって自業自得って、わかってたんでしょう? 感謝こそすれ、間違いを正すなんて、どうしたらそういうことになるのか、わたしには理解できませんわ」

 やれやれとモンモランシーは頭を振る。頭に血が上ったギーシュは反論した。

「だ、だってそうだろう? 無関係なのに勝手に出てきたんだ! 謝るって言ったんだ! なら、貴族に謝るんだ。手を付いて謝るのが当たり前じゃないか! っだ、だってサイトは平民なんだぞ? それは当然のことじゃないかね!」

 ギーシュは必死だった。間違いを認めるわけにはいかないのだ。何故なら食堂に残っていた全員がこのやり取りを眺めている。それは学生だけではない。あまりの騒ぎに、今では従業員である平民も注目している。
 もしここで間違いを認めてしまったなら、平民に対しても恥を晒してしまうことになる。恥の上塗りとなってしまう。そんなことはギーシュには耐えられることではなかった。

「……そう、そんな風に思ってるの。たとえ平民だろうと顔を立てようとしてくれたんなら、わたしは感謝したほうが良いと思うけどね……」

「モ、モンモランシー! 僕のモンモランシー! 馬鹿なことをいってはいけないよ! 僕たちは貴族なんだぞ? 平民に対して感謝なんてする必要あるわけがない! そんなことをしたら平民たちは勘違いするじゃないか! 平民は僕たち貴族に奉仕するためにいるんだ! 感謝なんてする必要はないんだよ!」

 もはやモンモランシーは憐れみの視線となっている。周りの学生たちと言えば「その通りだ」とうなずくもの。ニヤニヤとギーシュの狂態を嗤って楽しむもの。激しい言い争いに戸惑うものといったところであろうか?
 だが、女子学生を中心に一部の学生は違った。たとえ平民だろうとか弱いメイドに辛く当たって泣かせ、まるで悪びれない態度に嫌悪感を抱いていた。平民である従業員たちに至っては激怒して顔を赤くし、軽蔑の視線で睨みつけている。

 っくっ、何故だ? どうしてこんなことになってるんだ? これじゃあ僕が悪いみたいじゃないか! 平民の間違いを正して何処が悪いって言うんだ!

 当然ギーシュも周りの雰囲気が変わっているのに気付く。居心地の悪さにイラついてしまう。何故こうなってしまったのか、そんなことはわかりたくもない。

「……ギーシュ、“僕の”なんて言って欲しくないわね。もう完全に愛想が尽きたわ。顔も見たくないわね。反省も出来ないなら、そうやっていつまでも其処にいればいいわ」

 見限られたギーシュは顔面蒼白となった。慌てて「待ってくれ、モンモランシー! 話を聞いてくれ!」と追いかけようとするが、モンモランシーはそんなギーシュを無視をした。「いきましょ、ルイズ」と食堂から出ていこうとする。

 ギーシュは焦る。ケティなど他の女生徒に目をやってしまうギーシュだが、本命はモンモランシーなのだ。ここは何としても話を聞いてもらい、誤解を解いて許しを得なくてはならない。

「だ、だから待ってくれ、モンモランシー! 話を聞いてくれ! そうすれば誤解だってことがわかるんだよ! だから、モンモランシー! 僕のモンモランシー! 話を聞いてくれないかね!」

「っ気持ち悪いのよ! それと“僕の”なんて言わないでちょうだい!」

 ギーシュは必死に伸ばした手を乱暴に振り払われてしまう。モンモランシーは「行きましょう、ルイズ。ギーシュなんて見てたら気分が悪くなってしまいますわ」と、食堂から出ていく。
 周りの人間がくすくすと嗤うなか、ギーシュは茫然として見送るしかなくなった。
 その時である。ギーシュはわずかに口の端を釣り上げたサイトを見てしまった。

 っっあの平民ッ! 全部アイツの所為だ! よくも貴族である僕を嗤ってくれたなッ!!

 食堂から出ていくモンモランシーとルイズ。サイトは入口に控えて見物していた。
 だからルイズが「いくわよ、サイト」と声を掛ければ、どうしたって目に入った。

「待ちたまえっ! そこの平民っ!」

 モンモランシーとルイズ。その声に反応してぴたっと足を止める。遅れて才人も足を止める。

「……えっと、なんだ、ギーシュ。平民って、もしかして俺になんか用か?」

「そうだ! サイト、君は今僕の事を笑ったね? 平民の分際で僕の事を笑ったね? 一体どう言う事か説明してもらおうじゃないかね!」

 もう今のギーシュは感情の抑えが利かない状態だった。
 モンモランシーに完膚なきまで振られ、周りの学生から憐れみと侮蔑の視線を向けられ、平民たちにまで情けない姿を晒してしまった。
 こうなってしまった元を辿れば、それは余計なことをしてくれた才人のせいなのだ。
 その才人が今の自分を見て嗤ってくれた。到底我慢できるはずもない。

「……ギーシュ、また八つ当たりしようっての? あんたって本当に救いようがないわね。……相手にする必要はないわ。サイト、いくわよ」

「だから待ちたまえ! その平民は僕のことを嗤ったんだ。説明してもらいたんもんだね。一体何がおかしかったのか、それを聞くまでは帰らせるわけにはいかない!」

 腰に両手を当てたルイズがいかにも呆れたと言う風に首を振る。

「サイト、行くわよ。こんなバカに付き合ってるとバカが移っちゃうわ」

「そうね、行きましょう、サイト。ギーシュなんかに付き合う必要はないですわ」

 ルイズは冷笑を浮かべて挑発的に告げ、モンモランシーは嫌悪感も露わに引き上げようとする。そしてギーシュは見てしまった。モンモランシーが才人に微笑んで見せたのを。
 ギーシュに声を掛けようとする才人の腕を抱え込んでみせ、「早く行きましょう?」と微笑んでみせたのを目にしてしまった。

「サイト! 今すぐモンモランシーから離れたまえッ!」

 その言葉に才人は振り向いた。両脇から「相手にすることはないわ」と手を引かれ、ギーシュからは「待て」と声を掛けられ、どうすればいいか困惑する。その様子がまた、ギーシュの怒りに油を注ぐことになってしまう。

 自分はモンモランシーに完膚なきまで振られてしまった。それなのに才人はそのモンモランシーに微笑まれている。今までギーシュはそんな風に手を引かれるなどなかった。何時間もご機嫌を取り、それでようやく手を握らせてもらうのが常だった。それなのに困惑しているだと?
 周りの人間はくすくす、ニヤニヤ、自分を嗤っている。こうなってしまった理由はなんだ? 元はといえば才人のせいではないか! 情けなく土下座して謝ったと言うのに、もう忘れてしまったとでも言うのであろうか?
 ふざけるなと思った。もう我慢の限界を超えていた。叩きのめしてやらねば気が済まないと思った。

「サイト! 決闘を申し込むッ!!」

 ギーシュにはもう、これしか方法が思い浮かばなかったのである。



前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.029284000396729