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No.27097の一覧
[0] リリカル! マジカル! Kill them All![気分はきのこ](2013/02/28 22:51)
[1] 『作家のオリジナリティ』[気分はきのこ](2011/04/14 15:56)
[2] 『作家のオリジナリティ・2』[気分はきのこ](2011/04/19 11:16)
[3] 『作家のオリジナリティ・3』[気分はきのこ](2011/04/23 11:18)
[4] 幕間 『笑顔』 R18[気分はきのこ](2011/05/09 15:16)
[5] 『リアル・リプレイ』[気分はきのこ](2011/05/02 10:16)
[6] 『リアル・リプレイ・2』 R18[気分はきのこ](2011/05/09 15:19)
[7] 『リアル・リプレイ・3』[気分はきのこ](2011/05/15 10:27)
[8] 『リアル・リプレイ・4』[気分はきのこ](2011/05/22 13:30)
[9] 『リアル・リプレイ・5』[気分はきのこ](2011/08/20 16:04)
[10] 幕間 『願望』[気分はきのこ](2011/08/20 16:01)
[11] 『∴Y≠U』[気分はきのこ](2013/02/28 22:43)
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[27097] 『リアル・リプレイ・2』 R18
Name: 気分はきのこ◆4e90dc88 ID:30254318 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/09 15:19

「今日は皆に大事なお知らせがあります」


佐竹にとっては三度目の、しかし周りの生徒たちにとっては初めての知らせ。全身を黒で統一した担任の口から出るは、とある転生者<明智一真>の凶報。
それを流す様にして聞きながら、佐竹は『まだ』生きているアリサ・バニングスを見て、これから始める善行<偽善>の事を考えていた。



















何をするにもまずは足場から。と思い至ったところで、黒金猛の消息をどうやって探せばいいのか。
時過ぎて、放課後の海鳴市に佐竹はいた。当ての無い捜索は、一切の手掛かりを掴む事無く続いていた。
下手な動きは見せられない。ただでさえ以前とは違う行動故に、佐竹の目的を勘付かれたら、その時点で敗北が決まる。
黒金猛の能力<チート>はまさに反則<チート>。最強のバリア・ジャケット<戦術機>を纏う彼に、正面から向かうなど愚の骨頂だ。
自身の『魔法』を思い浮かべながらも、しかし佐竹は首を振る。『生身』相手には有効でも、『機械』相手には意味を成さないのだ。
なのに黒金を殺そうと画策する自分に、佐竹は馬鹿な選択をしたとうな垂れた。

だが、彼は止まらない。歩きながら考えるは、黒金猛の居場所と殺し方。
ヒラルガ・サイトーンに送り付けられた『果たし状』から、海鳴市内に住んでいるであろう、とまでは分かっている。が、何分それだけしか情報が無い。
まさに八方塞。見た目は子供頭脳は大人と、どこかの天才探偵と条件は一緒なのに、中身<スペック>が全く違う佐竹である。

ちなみに、前回同様果たし状が送られる可能性のあるヒラルガだが、不思議な事に今日佐竹の教室にやって来る事は無かった。
というよりも、ヒラルガの『存在自体』が他の生徒の中からスッポリと抜け落ちていた。

転生者である以上、ヒラルガも佐竹と同じくループ前と同じ行動を取るとは思えない。
しかし、彼は良くも悪くも変態だ。一度とはいえこの世から消えたアリサ・バニングスに会いに来ないわけがない。
なのにいくら時間が過ぎようとも教室に現れないヒラルガ。それが気になった佐竹は、わざわざ彼のクラスに出向いてその姿を探したのである。
だが、ヒラルガはいなかった。もしかして奴も黒金の秘密<因果>に気付いて、動いているのか? そう思い生徒にヒラルガの出欠席について尋ねてみれば、返って来たのは「そんな子、知らないよ?」という言葉に乗せた困惑顔。

ヒラルガは影が薄いのか。もしそうなら、全世界の人間が存在感皆無という事になる。
きっと聞いた生徒が悪かったんだと決めつけ、佐竹がさらに聞き込みを続ける事数人。最後には一番の被害者である『彼女たち』にも質問したが、その全員が返した答えは、やはり「誰それ?」というもの。
ここまで来れば、誰でも分かる。ヒラルガ・サイトーンは自身の存在を『抹消』しているという事が。

ヒラルガは『自在法』を操る転生者。佐竹たち同類<転生者>に『封絶』の持つ拘束機能以外は効かないようだが、どちらにせよ自身を消す事に意味はあるのだろうか。
黒金の影響で佐竹が『ループ』した以上、ヒラルガもまた同じであろう。だが、彼の存在は佐竹以外誰も知らない。

そんなの、まるで『トーチ<燃えカス>』じゃないか。
人間の『存在の力』を喰らった敵<紅世の徒>が、敵<フレイムヘイズ>の追撃を逃れるために作った代替物。それはゆっくりと過去の絆や自己を消耗させ、誰からも気に留められなくなった頃にひっそりと消え、その瞬間まで場に『いた』事を記憶から無くす。
ヒラルガの異能<チート>のモデル<灼眼のシャナ>にある『トーチ』の設定だが、今のヒラルガはまさにその設定通りであった。
だからこそ佐竹もヒラルガの『トーチ説』について考えてはみたが、しかしそれはあり得てはならないのだ。なぜなら、その場合ヒラルガ・サイトーンは誰よりも『死』が身近にある転生者となってしまうのである。

『自在法』は己の『存在の力』を糧として発動する異能。つまり戦う度に底なし沼へ自ら潜り出す様なものだ。
『零時迷子』という毎晩午前0時に持ち主が消耗した『存在の力』を元に戻す宝具があるなら話は別だが、しかしそうだとすれば、今度はヒラルガが自然消滅<燃え散る>事は考えにくい。
黒金との死闘で己の『存在の力』を使い果たしたなら分かるが、ヒラルガとてその様な無様を見せるとは思えない。
だからこそヒラルガもまた死闘の末『ループ』したはずである。なのに、今彼は世界にいなかった。

何故、どうして、と解けない難問に悩まされながら、だがそれを放棄せずに佐竹は解を求め続ける。
もはや目と身体は黒金猛を探していても、それ以外の機能がヒラルガ・サイトーンへの追及へと傾いていた。
ヒラルガは友達って設定の敵だ。チートである以上、間違っても油断していい相手じゃない。その事が佐竹の第一目的を塗り潰していく。

ところで、諺に『二兎追うものは一兎をも得ず』というものがある。同時に二つの物事をしようとして、どちらも成功せず駄目になってしまう、という意味だ。
何が言いたいのかというと、佐竹は両方<二兎>を追うが故に、そもそも黒金猛を探さなければいけない原因となった『彼女<兎>』の事を忘れてしまっていたのだ。


「きゃあ!?」


「うおっ!?」


いつの間にT字路に入っていたのか。視線は常に前を向き、頭の中は別の事を考えていたのが災いして招いたアクシデント。
突如右側より襲い来る人影。そのまま絡み合う様にして倒れる佐竹と誰か。


【右半身、特に頭部と腹部に軽度の打ち身。左肘と膝に、同じく軽度の擦過傷。結論、どーでもいいゴミレベルのケガでしたぁ!】


不幸にして幸い痛覚の無い佐竹はペインの診断にも平然としていたが、悲鳴をあげてぶつかった誰かはそうはいかない。
崩れた時の勢いに、とっさの出来事であるのも合わさって受け身など取れない。その身に降りかかる衝撃は相当なものだろう。


「あ、足が…………くぅっ!」


「大丈夫、か…………」


やはりというか、誰かは代償に足を痛めてしまっていた。
反射的に、佐竹は痛みを感じないのをいい事にすぐ様立ち上がり、ぶつかって来た誰かに手を伸ばす――――途中で硬直した。
小柄な身体を包む白いワンピース調の制服。アスファルトに乱れる長い金糸をそのままに、足首を押さえる少女。
俯いた顔でも、十分過ぎた。着ている服は佐竹の通う聖祥大付属小学校のもので違いなく、その上金髪にしてこの顔立ち。
彼女こそ、佐竹がもっとも忘れてはいけなかった少女<兎>。


「アリサ、バニングス…………」


そう。佐竹にぶつかって来たのは、今日が命日とされてしまった不幸な少女、アリサ・バニングスであった。
よっぽど痛むのであろう。瞳に涙を浮かべ、しかしそれでも歯を食いしばりながら立ち上がろうとした彼女に、佐竹は思わず身を引いた。
刹那、彼の背中が弾力性のある壁に触れる。それが壁でなく人間の身体であった事に気付くよりも早く、佐竹の背後を衝撃が襲った。
鈍い音と共に、前のめりで倒れる佐竹。意識はあった。痛みも無い。だが、身体は動かない。


「ちっ、めんどくせぇ。コイツも売っちまうか」


うつ伏せで倒れた佐竹の背に、男が乗っていた。剃り込みを入れた坊主頭の男は、マウント・ポジションとも称される形で佐竹を押さえ、彼の視界に入る様にナイフを見せ付ける。空いた片手は、ぷらぷらと手招きをしていた。
男の視線の先には、また別の男。佐竹と同じ状態となっていたアリサに何かを押しつけると、彼女はビクンッと大きく身を跳ねさせ、ついに沈黙した。


「やっべ! マジこれやっべ! 一発だよ、一発っ!」


バリバリとまるで玩具を与えられた子供みたく、手に持ったスタンガンを弄ぶ男。先ほどアリサに押しつけたのは、それなのだろう。


「わぁったから、さっさとこのガキにも当てろって! 人が来んだろ!」


「あいあい、分かってますよぉっと。つか、なんでダイは持って来てないのさ?」


「一つありゃ十分だと思ってたからだよ! いいから早くしろ!」


急かす坊主頭の男に、楽しくてしかたがないといった風貌でスタンガンを持った男が佐竹に近寄ると、彼の髪を鷲掴みにしてにへらと笑った。
耳や鼻、唇にまでピアスを付けた男は、佐竹の前で起動させたスタンガンをチラつかせる。


「運が無かったねぇ。まっ、諦めてちょうだい」


十二分に対象の意識を落とすだけの破壊力を秘めているスタンガンが、佐竹の首に押しつけられた。
5万Vの電撃が巡る。相棒っ! と普段からは考えられないほどの必死さを見せるペインの声が遠のいて行くのを感じながら、ついに佐竹は意識を失った。




















坂下大紀と溝端和宏は、所謂街のチンピラ<毒素>だった。
自分が楽しければそれでいいといった、なんとも自己中心的な考えの下、恐喝で資金を巻き上げ、それを元手にギャンブルやゲームセンターなどで遊びつくし、また金が無くなれば他から巻き上げる。
だが『悪』とされる行いは、全て小さなものだった。
万引きはした。喧嘩もした。強盗はまだない。殺人もまだ、ない。
所詮小悪党な二人であるからか、警察に厄介になる事はあっても、刑務所暮らしは未経験。
そんな毎日弱者を獲物に過ごしていた二人だが、ある日坂下は思った。


「毎日毎日…………つまんねぇな」


剃り込みの入った坊主頭をわしゃわしゃ掻きながら、坂下は徐に呟いた。隣でタバコの煙で輪っかを作って遊んでいた溝端が、不思議そうに首を傾げる。


「つまらないって、じゃあどうするのさ? そんな事より、どうよこのエンジェル・リング。俺、ウマくねぇ?」


「それぐらい、俺だって出来るっての。んな事より、カズはどうなんだよ? 毎日小金巻き上げて、遊んで、すぐ金無くなって、また最初に逆戻り。こんな生活、何がおもしれぇ?」


知らないよ、そんなの。大き目に広がった輪に煙の息を通そうとして失敗した溝端は、短くなったタバコをもみ消して新たな一本を漁る。
だが箱の中にはもう残っていなかった。今のが最後の一本だったのである。
小さく舌打ちをして箱を握りつぶし適当に投げ捨てると、溝端は唇に付けたピアスを弄りながら言った。


「じゃあさ。でっかく稼がない?」


溝端は坂下と同じチンピラであったが、坂下と違い様々なコネクションを持っていた。昔の友人がコネの全てであるが、問題は友人たちの所属する組織が真っ黒過ぎた事である。
友人に幾度となく自分の組織に来ないか、などと誘われていたものの、あまりその辺に興味が無かった溝端は全て断っていた。
その誘われた組織の内の一つに、人身売買があった。それを思い出し、溝端は坂下に提案したのだ。

最初は、坂下といえどその案に速答出来なかった。つまらないとは言ったものの、いきなりの悪行レベル・アップに怖気づいたのだ。


「あれ? やっぱ、恐い? だよねぇ。分かる分かる。だって、犯罪だもん。俺だってムショは嫌だしね」


顔には出さなかったが、しかし思いは溝端に的中されてしまった。『犯罪』の基準がおかしい溝端の言であったが、坂下は彼の言葉を聞いて眉間に皺を寄せる。


「恐い、だって?」


馬鹿にされた。
臆病者、恐がり、チキン野郎。そのつもりがあって溝端も言った訳ではないが、坂下は溝端の『恐い』という発言に反応して、彼の胸倉を掴み上げていた。


「誰が恐いかよ! いいぜ、やってやる! でかく稼いでやる!」


本音は、恐かった。だがそれを口にする事が出来ず、ついに賽は投げられる。


「いやっ! 痛いっ! やだぁ!」


パンパンとリズミカルに腰を動かし、溝端は泣き叫ぶ少女の声に愉悦を感じた。

人身売買。用途は様々だが、どちらにせよ顔は整っていた方が好ましい。特に女なら使い道も多いから、そちらを希望。
友人より聞かされていた人選の下選ばれてしまった哀れな少女は今、服を引き裂かれ、犯されていた。

少女が目覚めた時は、すでに見知らぬ廃ビル。剥き出しのコンクリート壁、散らばる木屑、作業に使っていたであろう機具。
恐怖と先のスタンガンにより上手く動かない身体は、なぜかこの場に不釣り合いな厚手のタオルケットに寝かされていた。


「あははっ! いいねぇ、こりゃ最高だ! 他の女とヤるのもいいけど、こっちもまた別モノだよ、ダイ!」


気付けば、少女は溝端に犯かされていた。もっとも、溝端は元より攫った相手が女性であるならそのつもりであったのだ。
攫うために用意したバンの中、坂下の疑問に「お楽しみに使うんだ」と言って持ち込んだタオルケット。
このためか、と奥を突かれる度苦悶を漏らす少女から顔を背ける様にして、掲げた両手を壁に貼りつけて座る少年へと視線を移した坂下は、溝端と行動を共にしてから初めて彼に恐れを抱いた。


「お、おい。いいのかよ、こんな事やって? コイツ売るんだろ?」


「あぁ? ああっ、いいのいいのっ。どーせ売った後こうなるらしい、しっ!」


坂下の質問に答えながら、溝端は背後から犯していた少女を坂下に見せ付ける様にして持ち上げる。
少女と繋がる溝端の男根。未熟な彼女には大きすぎたそれは、破瓜の証拠と一緒になって血に濡れていた。


「どう? ダイもヤっちゃう? むしろ、ヤらなきゃ損損! 貴重な体験だよ?」


「…………だりぃから止めとくわ」


あ、そう? 拍子抜けとも言わんばかりに呟いて、溝端は持ち上げた少女をタオルケットに降ろし、また腰を打ち付け始める。


「ひぎぃ! あぐっ! や、めでぇ!」


耳を塞ぎたくなるBGMに、坂下は思った。俺の馬鹿野郎、と。
だがもう遅い。溝端の提案を良しとしたのは彼自身だ。その後どの様な事が起きようと、彼は受け入れなければならない。


「…………もう、降りられねぇ。もう、止まれねぇ」


坂下大紀もまた、溝端和宏と同じく紛れも無い共犯者なのだから。




















はぁはぁという荒い声。いやぁ! もうやめてぇ! と泣き叫ぶ少女の声。
それを聞いて覚醒する意識。まだ本調子とはいえずとも、目覚めた視界が己の世界を取り戻していく。
時間経過と共に晴れていく佐竹の視界に映ったのは――――――――白濁の欲望に汚されたアリサ・バニングスだった。


「あ、アリサぁ!」


無残に裂かれた衣服が、内に隠していたアリサの全てを露にしている。
佐竹が目覚める以前からも助けを求めていた彼女の声は、もう掠れきっていた。

無意識に叫んだ佐竹の声に反応して振り返る、まだ20代くらいの男二人。
腕を組んで、どこか悲愴な面持ちで佐竹を睨む坊主頭の男と、首だけを佐竹に向け、尚も行為<セックス>を止めないピアスだらけの男。

これ以上好きにさせてたまるか。
すでに始まっていた惨劇を止めるべく佐竹がアリサを助けようとした時、ようやく自分の両手が文字通り『打ち付けられている』事に気付いた。


【目ぇ覚めた相棒にファッキンな情報だぁ。
現在両手は釘で裏のコンクリに貼り付け状態。数は片手に3つの、合わせて6つ。
出血は見た目よか出てねぇ。骨は貫きやがったが、それ以外の重要な部分に損害なし。
つーわけで相棒よぉ。キリストになった気分はどうでぇ?】


最悪に決まってるだろ!
動く事には動くが、自由に歩くとすれば無理矢理にでも釘を抜くか、完璧に貫通させなければならない。
痛々しいアリサの声と動けないもどかしさがが、佐竹の焦りを増長させていく。


「お目覚め、か。その辺に落ちてた釘打ち機で掌ブッ刺しても起きねぇから、死んだんじゃねぇかと思ってたわ」


「まだ死んでないさ」


「みてぇだな。だからって、何かが変わるワケでもねぇ。黙って売られな。
…………おら、カズ! 遊びは終わりだ! こっちのガキも起きたし、さっさと事進めんぞ!」


「ちょっと待って! 今ヤってる最中!」


「うるせぇ! テメェもう三発ヌいただろうが!」


すぐ終わるから! とラスト・スパートをかけた溝端に、坂下はため息を吐いて佐竹へ歩み寄った。
見下ろした先には、じたばたと足をばたつかせる佐竹。距離を取ろうにも貼り付けられた両手が邪魔をして、結果この様な醜態を晒す始末であった。


「…………うぜぇよ。じっとしてろやっ!」


無抵抗の佐竹の腹に、坂下の足が突き刺さる。


「おっ、グうえェ」


【腹に打撃と圧力のダメージ。骨に影響はねぇ。ヤロウ、手加減しやがったな。
まっ、そのおかげで助かったみてぇだが、この調子じゃいつリミッターが火花散らしてイカれることやら。
相棒、さっさとカタつけた方がよさそうだなぁ。動けねぇ相棒の代わりに、俺が『魔法』を唱えてやんよ。ありがたく思いなぁ!】


足元に撒き散らされた胃液の内容物。まだ口の中に残るそれを吐き出す事よりも、失った酸素を得ようとだらしなく口を開いて呼吸を繰り返す。
当然だが、ここまでに佐竹は一切の痛みを感じていない。が、やはり圧迫された胃や肺ばかりはどうにも出来なかったのである。
とはいえ、このまま痛みを感じないにしても、ずっと貼り付けのままで事態を放置するのは得策ではない。
犯されるアリサの姿を脳裏に置いて、佐竹は俯いたままの頭を上げる。その顔を見て、坂下は得も言われぬ恐怖を感じた。


「知ってるか? ここには昔、お前らと同じ様な事をした奴らがいてな。その時に死んだ女の子の亡霊が、ここで復讐を考えてるって噂を」


圧倒的不利。自分の立場も分かっていないかの様な佐竹は、心底楽しそうに笑っていたのだ。
果たして、坂下が佐竹の笑みに恐怖を抱いたのは正しかった。










「いぎャァァああああああアアアアアアアアっ!」










獣の如き唸り声をあげて、右手首を押さえ蹲る坂下。アリサを犯していた溝端も、自身のイチモツを抜いて、坂下と同じく手首を押さえていた。
二人の右手首、その先に伸びる5本の指は、一本だけが不自然に曲がっていた。


「いでぇ! いでぇよチクショウ! 小指が勝手にぃ!」


「だから言ったろ。お前らは、ここで寝泊まりしてる亡霊に憑かれたみたいだな」


「ぼ、亡霊だぁ!? 今時そんなん信じるワグげぇぇぇエエエエっ!」


「ほぉら。バカにするから、またやられた」


佐竹の言葉通り、今度は右薬指が独りでに伸び、第二関節を外してくいっと曲がる。次いで中指、人差し指、親指と順に関節が外され、ついに五指全てが外されてしまった。
何もしていないのに起きた、超常現象。さも悪霊の仕業とすら思えてしまうこれらに、坂下はへらへらと笑う佐竹の胸倉を掴み、唾を飛ばしながら喚いた。


「なんだよ! なんなんだよこれぇ! ま、まさか本当に幽霊の仕業だってのかぁ!?」


「そうだ、と言ったら?」


「教えろ! 俺たちはどうなる!?」


「どうもこうも、死ぬんじゃないの? いや、殺されると言った方が正しいのかな?」


冷たく突き放す様な佐竹の宣告に、坂下は掴んだ胸倉を緩め、未だ訳も分からず騒いでいる溝端を置いて逃げ出した。
やっぱり、こんな事するんじゃなかった。恐い、でかく稼ぐ、その様な言葉に釣られてしまった自分が、今になってようやく間違いだったと後悔した。
だから逃げた。坂下は、わき目も振らず一直線に逃げ出した。

ごきゅ、と。坂下の右肩から骨が抜ける音がした。


「あガァァああああああああアアアアアっ! か、肩がっ! 俺の肩がぁ!」


「言い忘れてたけど、逃げない方がいいぞ? 幽霊さんは逃げ出す奴の手を引いて、逃がさないらしいから。
今は脱臼程度で済んでるけど、それでも逃げたら――――――――もげるぞ?」


右肩を押さえて崩れる坂下が『逃げない』様に釘を刺し、佐竹は左腕に力を込める。
滴る血もお構いなしに、叩きやすくするために潰れた釘の頭が掌にめり込んだ。
ブチブチと肉の中を突き進み、やがて手の甲を貫通する。途中【右掌から甲にかけて釘貫通。抜ける際に骨を一部破損】というペインの報告を受けたが、佐竹は気にも留めずに右腕を見る。
左腕は貼り付けから解放された。が、まだ右腕が残っている。しかし今は右腕を動かす事が『出来ない』のだ。
仕方なしに、佐竹は『関節が外れた右肩』をいい事に立ち上がり、そのまま歩き出す。全身に引き摺られながら動き出した右腕は、左腕の時よりも一層強い抵抗を与えたが、それでも貼り付け状態から抜け出す事が出来た。

左手よりも酷い右手のリアルタイム診断をペインより聞きながら、佐竹は歩き出す。
だらりと下げた掌からボタボタと流れる赤色。それは佐竹の歩みに合わせて、線の長さを伸ばしていく。

そうして辿り着いた場所は、涙の痕と引き裂かれた制服が痛ましいアリサ・バニングスの隣。
剥き出しの小さな胸。未熟すぎる秘部。そこから流れる、血液混じりの精液。
あまりにも惨い仕打ちを受けたのに、彼女の表情から全てを投げ捨てた様子は無い。瞳の中に死は映されていなかった。
とはいえ、その光もいつまで持つか。大人びているとはいえ、彼女もまだ子供。いきなりの事でパニックを起こし、正しく身に起きた全てが理解しきれていないだけなのかもしれない。


「お前を助けるから」


この状況では気休めにもならない言葉。『助ける』というには遅すぎだが、しかしそれは佐竹の決意の証であった。
自分が生んだ悲劇ではないにせよ、それでも間接的に関わっているのは確か。
ならば救いを。全ては自身の自己満足から始めた事に、今更それが増えた所で佐竹の何かが変わる事はない。


「いいことを教えてやる。ここの幽霊は凶器を嫌うらしい。隠したりせず全部この場にぶちまけて、神様に祈ってろ。でないと、また何かされるぞ?」


畳みかける様にして、坂下と溝端の右肘の骨がずるりと抜ける。もはや佐竹の『魔法』から身を守る術を持たない彼らは、佐竹に従う他道が残されていなかった。
またもやって来た激痛に叫びながら、助かるためなら、と坂下と溝端はまだ『動かせる』左手で上着やズボンから自慢の武器を投げ出した。
散らばる数種のナイフやスタンガン。それらに目線を向けた時、ふと釘打ち機が佐竹の目に入った。
佐竹はナイフを一本ポケットに入れ、釘打ち機を手に取る。ガスにより釘を打ち出す仕様のそれは、離れていても手傷を負わせる武器<工具>だ。

子供の筋力では、片手で使うには少し重い。両手で使うにしても、支える右手は肩から肘、五指が『脱臼』しているため、それも出来ない。


【めんごめんご。すぐにハメハメしてやんよ】


ごぎん、と鈍い音が右肩より響き、続く様にして右肘、掌の五指が音を鳴らす。それらの音は佐竹だけでなく、苦悶の声と合わせて坂下や溝端からも鳴った。ただ、溝端の場合は右肩が外れ、それ以外が元の位置に戻っていたが。
治った事に困惑と恐怖で怖気づく坂下と溝端を余所に、佐竹はぐるぐると右肩を回して動く事を確認すると、釘打ち機を持って二人に近付いた。

これで準備は整った。使った事のない武器<工具>ではあるが、動かない獲物を狙うのに得手不得手も無い。


「そういや、これを武器にゾンビと戦う高校生がいたようないなかったような?」


ふと思った事が口から出る。その言葉が、坂下と溝端が聞いた最後の言葉だった。

狙いは頭部。バンッ、と大きな音を立てて放たれる弾丸<釘>。それを一度じゃ足りないとばかりに、残弾全てを吐き出さんと撃ち出していく。
躊躇すらも無かった。ただ彼らを『殺す』事一心に、佐竹はハリネズミをその手で作り出す。
眼球に口内、鼻や眉間。何十もの銀の杭が血飛沫を散らして突き刺さり、二人の頭部をスパイク・ボールへ変貌させていく。
そうして全弾撃ち尽くした時、坂下と溝端は事切れていた。


「――――まだ、死んでないかもしれない」


初めて人間を殺した実感は、手に残っていなかった。釘打ち機とはいえ弾丸<釘>により殺したのだから、命を刈り取った感触が薄かったのである。
佐竹はポケットからナイフを抜いた。刃渡り8cmの折りたたみナイフを手に、すでに『死んでいる』坂下の首へナイフを横薙ぎに切る。
頸動脈が切れた。水鉄砲の如き鮮血が佐竹を染め上げる。しかし、それでも佐竹は坂下の首に傷を増やしていく。
一閃、また一閃と首に線を刻み、いつしかその数が十を超えた時、今度は溝端へと狙いを変え、同じ様に切り始めた。


「なんだ、そんな難しいことじゃなかったんだ。人を殺しても――――――――何も思わないや」


奇行とすら思えるこの行動だが、佐竹はしっかりと自覚しながら行っていた。
人を殺す。いつかは絶対しなければならない行為。その予行練習として、彼はナイフを振ったのである。
平和な日本に生まれた故に、死は遠いもの。いざその手で人間<転生者>を殺す時、戸惑っては意味が無い。だから佐竹は、この無意味にして狂気的とも思える所業をしでかしたのだ。

ここまでして分かったのは、いたって『普通』である事。釘打ち機で射殺して、またナイフで切り殺して、そうして得たのが何も感じない現実。
吐き気を催す事もない。罪の意識を感じる事も無い。そんな自分が、佐竹は何よりも恐くなった。


【ハッハァ! ヴァージンを切った感想はどうでぃ、相棒! 愉快爽快さようかいってなぁ!
そりゃあそうと、アソコのクソビッチをシカトしててイイんかぁ?】


手に残るあっさりとした人殺しの余韻に浸っていた佐竹は、はっとしてアリサに駆け寄った。
ぐったりと横たわる彼女を見て、とにかく病院だ、と携帯電話を探し出した。

自前の携帯電話を使えればいいのだが、生憎佐竹はそれを持っていなかった。子供の内は必要ないと思っていた老夫婦の意見に賛同したツケが、今になってやって来る。
それを悔いても仕方が無いと、佐竹は辺りを見渡してアリサ・バニングスが持っているはずの携帯電話を探す。


「あった!」


邪魔物と投げ捨てられていた鞄のそばに、それはあった。すぐ様手に取り『119』のボタンを押して、佐竹は思い留まる。
液晶パネルに浮かぶ、緊急のダイヤル。それを消し、佐竹はアドレス帳からとある番号を選んで電話をかけた。
1コールと経たず受話器は取られ、彼は相手に事の顛末を話し出すのだった。











それから数分後。立派なリムジンに揺られながら、佐竹はバニングス家へと向かっていた。
後部座席で横たわるアリサ・バニングスは――――――――あれからずっと眠り続けている。





児ポ問題の本作。もしヤバいと思ったら、感想板に書き込みをお願いします。
指摘が多い場合、訂正させていただきます。


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