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No.27097の一覧
[0] リリカル! マジカル! Kill them All![気分はきのこ](2013/02/28 22:51)
[1] 『作家のオリジナリティ』[気分はきのこ](2011/04/14 15:56)
[2] 『作家のオリジナリティ・2』[気分はきのこ](2011/04/19 11:16)
[3] 『作家のオリジナリティ・3』[気分はきのこ](2011/04/23 11:18)
[4] 幕間 『笑顔』 R18[気分はきのこ](2011/05/09 15:16)
[5] 『リアル・リプレイ』[気分はきのこ](2011/05/02 10:16)
[6] 『リアル・リプレイ・2』 R18[気分はきのこ](2011/05/09 15:19)
[7] 『リアル・リプレイ・3』[気分はきのこ](2011/05/15 10:27)
[8] 『リアル・リプレイ・4』[気分はきのこ](2011/05/22 13:30)
[9] 『リアル・リプレイ・5』[気分はきのこ](2011/08/20 16:04)
[10] 幕間 『願望』[気分はきのこ](2011/08/20 16:01)
[11] 『∴Y≠U』[気分はきのこ](2013/02/28 22:43)
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[27097] リリカル! マジカル! Kill them All!
Name: 気分はきのこ◆4e90dc88 ID:30254318 次を表示する
Date: 2013/02/28 22:51
初めましての方、以前見ていただいた方、お久しぶりです。
まずは謝罪を。申し訳ありません。
前回、バグによりこのXXX板で上がりっぱなし、削除、その後音沙汰なしと、失礼をいたしました。

事は私の留学から始まります。
本来は留学先である中国でも執筆予定でしたが、パソコンを忘れ、その上授業で必死と時間がとれずarcadiaを見る事も出来ない状態でした。
バグは友人が携帯にメールを送ってくれたので知り、そのまま放置はまずいかと思い、パスを教え、消すようお願いをし、こうして今に至ります。
一度は失礼な事をしでかし、更に恥知らずにも続きを書こうと戻ってまいりましたが、次は以前書いたデータを紛失したという。グーグルキャッシュというのも、残っているのか、そもそも見かたが分からないという体たらく。
消す前までの話は頭に入っているので大まかな内容は問題なくとも、どうしても前回と文章が変わってしまいました。
もしそれでも良ければ、更新は現在の状況により一週間に一度出来ればいいな、という状態ではありますが、この先もよろしくお願いします。

続きまして、前書きを。
この作品は投稿場所がXXX板ということで、表現の自重をあまりしていません。具体的には、エロやグロといった部分です。
展開も鬱なものが多く、一部最近では本当に不味い児ポに引っ掛かりそうなものもあります。
『とらいあんぐるハート』の内容も使うのでいたしかたないとはいえ、児ポ疑惑の文については出しても一回だけにする予定ではありますが。それでもこいつはヤバいと思ったら、すぐ様感想板にて報告をお願いします。意見が多ければ、すぐ様どうにか先に繋げられるような内容に書き換えます。

砕けた言い方になりますが、SAN値ガタ落ちでオワタ。その様な気分になるのはほぼ間違いないかと思いますので、苦手と思ったら読むのは控えた方がいいかと思います。

以上で謝罪と前書きとせていただきます。

著者、気分はきのこ。























かんぱーい。
泡立つビールが一杯のジョッキを掲げて、彼らは馬鹿みたいな声を上げた。
今は今日を締めるパーティ・タイム。会場は地元のカラオケ店。個室にてジョッキをかち合わせる男六人は、アルコールで火照った頬のまま、マイク片手に歌いまくっていた。
ある男は「エアーマンがぁー」と無駄に張り切って空回りしたり、また別の男は「やらないか」などと下腹部を刺激するバリトンボイスで替え歌を披露。それに乗っかって踊ってみたイイ男たちがいたり。かくいう彼自身も、限界を軽く超えた高音で一万年と二千年前にラブコール。
誰もが自重を何処かに置き忘れたパーティは、喉がイカれようと関係なしで、朝まで続いた。
そんな彼らを、『彼』は懐かしさを感じながら見ていた。視点は常に六人の一人。なのに、これは『彼』ではない。
――――ああ、分かってるさ。これが夢なことくらい。
酒の味も歌声やBGMも感じられないぶつ切れの映画を見ている感覚が、『彼』にこれが現実とは違うんだと訴える。
それでも『彼』は目を覚まさない。一秒でも長く夢の時間に浸っていたかったから。


「――――くん。佐竹くん? 今は授業中だから、起きようか?」


「…………はぁい。ごめんなさい、せんせー」


そんな幻想を何時までも見続けられる訳がなく、佐竹は優しく身体を揺すって声をかけた『担任』の女性に、欠伸交じりの返事を返した。
そのせいかまだ疑っているようで、次は駄目だよ、などと釘を刺す笑顔の担任に、分かっているとばかりに手を上げた。


「さて、それでは授業に戻りましょう。ここに六つのリンゴがあります。これを、二人で半分こしたら、さて一人何個かな?」


三個。
黒板に赤いチョークでリンゴの絵を描きながら問題を出す担任。そして、心の中で即答する佐竹。
初歩の初歩。分からない方がおかしい、簡単過ぎる割り算。
分かるひとー、と答えを促した彼女にすぐ様応えたのは、クラスの半数ほど。遅れて、少数が続く。
嬉々とした表情で最初に高々と伸びた手たちの主は、所謂天才秀才組だ。初歩とはいえ『今日』初めてやった割り算が分かったのは、きっと塾とかでやったのだろう。
残りは、佐竹を含めた普通の生徒。担任の問題に指折りで悩み、答えが出た生徒と無理だった生徒。そして、そんな『子供』である彼だ。


「それじゃあ、一番速かったバニングスさん」


「はい! 答えは、三個です!」


「うん、正解。さて皆、これは割り算と言って、式にすると――――」


慣れた手つきで黒板に白チョークを走らせる担任。先ほどの問題を式に変えて書き、それを生徒たちは手元のノートに写していく。正直な話、佐竹のノートは例え白紙だろうと問題は無い。数学ならまだしも、まだ算数の段階なら余裕なのだ。寝起きでボケた頭でも問題ない。
かと言って天才でも秀才でもない『普通』の子供な佐竹は、素直にノートへ書き写していく。
ただ面倒でしかない作業に、しかし佐竹は少しだけ懐かしさを感じていた。


【オゥ…………実にイイ尻だねぇ。思わず鷲掴みしたくなっちまう今日この頃、ガキンチョ共はいかがお過ごしでしょうか? もちろん、毎日ファックしてますよってなぁ! まだ勃たねぇけど!】


何年も前に経験した『一度目』の思い出に浸っていた佐竹は、カリカリと動かしていた鉛筆を止めた。
…………ぶち壊しだよ。酷い言葉の羅列によってガラガラと音を立てて崩れていった思い出に、佐竹はがっくりと頭を垂れる。


【あん? いいじゃねぇか、減るもんじゃねぇんだからよぉ。んな事より、どうよ相棒? あの尻、絶対安産型だぜ? そこにぶち込む俺様たちのマイ・サンシャイン…………おほっ! イイネイイネェ! 滾って来たぁ! そら、勃ち上がって気高く舞えよ、運命を撃てる戦士ぃ!】


うひゃひゃひゃあ! なんて頭の悪い笑い声が響き渡る。色に狂った台詞に辟易とする佐竹に、だが担任は授業を中断する事はない。
本来ならこんな言葉が聞こえたら空気が凍結しそうなものだが、嬉しくも残念なことにこの声は佐竹にしか聞こえていなかった。なにせ、その声の主は彼の中に住んでいるのだから。
声の主、普段佐竹が『ペイン』と呼んでいるこの変態には、実体がない。だがお化けとかでもない。なら何か? 何らかの存在に当てはめるとするなら、『神経』だろうか? 或いは『脳』? もしかしたら『肉体』そのものかもしれない。
何にせよその存在が不気味極まりないペインとの付き合いは、三ヶ月と少し。日々佐竹のストレスを決壊関係なしで溜めていくペインだが、それでもこの二人はパートナー<相棒>なのだ。

未だハッスルハッスル言っている変態を余所に、佐竹はノートから視線をずらして窓の外を見た。
青く澄み渡る空。薄らと残る雲が綺麗な蒼天。その空の先を越えた宙<ソラ>のまた先にいるだろう、『原作』の組織。
遠くない未来、可能性の一つとして接触するかもしれない『彼ら』を思い描いて、佐竹は癖でぐにゃりと曲がった前髪を弄りながら、誰にも気付かれない様にため息を吐いた。
遠くないとはいえ、今の彼には目先の問題がある。どんな事よりも大きい、大問題。


このまま何もせずに生きていれば、『原作三期』終了には強制的に死ぬなんていう無理難題が。




















リリカル!マジカル!Kill them All!

――Prologue――




















目が覚めた時、視界には白色しか映らなかった。
彼は一瞬視覚障害にでもなったかと思ったが、掌の肌色を見てそうじゃないと安心した。
しかし、ここは何処だ。自身の身体を見れば、寝間着姿。上下灰色のスウェットが、白色の世界で浮き彫りとなっている。
周りを見れば、誰もいない。遠くを見れば、何もない。部屋の中かと思えば、どうも違う。それなら、彼は一体どこに立っているのか。


「お、おい!」


意味もなく彼は叫んでみた。応えてくれる声はない。


「誰か、誰かいないか!?」


今度は人を探そうとしてみた。それでも、響いたのは彼の声だけ。


「ちくしょう、何だよ、何なんだよ!」


思った言葉がそのまま口に出る。前後左右何処を向いているのかも分かっていないが、それでも彼は必死になって辺りを見渡した。
何かないのか。誰かいないのか。俺は…………独りなのか。
ぶるっと身体の底が冷える。この世界が寒いからではない。
――――どうしようもなく、恐くなったからだ。


「おい! 誰でもいい! 応えてくれ!」


恐い。恐い。恐い。
理解が追い付かない現状に、彼は誰かを求めて声を荒げた。
誰でもいいから、ここにいてほしい。誰でもいいから、俺の前に現れてくれ。


「お、おい。何だよココ!?」


何処からか声が聞こえた。それも、彼と同じ心の声が。
彼は慌てて声の出所を探すと、何時の間にか男が立っていた。くたびれたスーツを着込んだ男が、さっき見た時は何もなかったはずの場所に。


「なに? 何なのよ一体!?」


また声が聞こえた。今度は女だ。ヒステリックに叫んでいる彼女もまた、空白だった所に立っていた。
どこから来たのかは分からないけど、それでもいい。相手には悪いが、と彼は自分が独りじゃないと安心して、少しだけ気持ちが楽になった。
とりあえず、声をかけてみよう。最初に現れた男へ向かって彼は歩き出そうとして――――無理やり身体の向きを変えた。
重心が移動してこけそうになるのをどうにか堪えて、姿勢を正す。でも、動かない。

ああ、何もなかった。そのはずだ。俺は空白だった道を真っすぐに歩き出したんだ。


「えっ、何? ここ何処よ?」


なのにどうして。どうやってお前は現れたんだ!
彼が進路を変えた理由。それは、いきなり人が目の前に現れたからである。
まるでMMORPGでアバターがポップアップするかの様に、人が出て来たのだ。
来た頃の彼みたいにきょろきょろと周りを見る、少年。校章が刺繍されたブレザーを着ているあたり、学生なのだろう。
少年は一通り周りを見渡し、その際に目が合った彼へと近寄って行く。


「あ、あの、ここ何処すか?」


「…………俺が知りたいよ」


なんすかそれ、と望まない答えが返ってきて不満顔な少年に、彼は他の人に聞いてくれ、と適当な人を指さし、そのまま誰もいない場所へと歩き出した。後ろから小さく舌打ちが聞こえてきたが、無視して歩く。
歩きながら、彼は少し今について考えていた。内容は、この場所の異常さについて。
誰かと共に協議すれば思わぬ答えが出たかもしれないが、未だ困惑したままの彼は、とにかく独りになりたかったのだ。
さっきまで独りぼっちに恐がっていたのに、今となっては独りになりたいなどと、なんとも矛盾しているが。
さて、一度冷静になろう。こういうのは、思い込みから始めるもんだ。
緊張と不安でバクバクと音を立てる胸を沈めるように、彼は自己流の簡単な暗示を掛けた。

まず、これは一体全体どういう状況だ? 真っ白な所に、次々と現れる人たち。以上。…………やばい。さっぱり分からん。
彼はまた現れた人を避けて、歩き続ける。

まだだ。今度は違う部分を攻めてみよう。ここは何処だ? それは俺が聞きたい、次。他の人は何処から来た? ワープ装置か何かとか。…………どこのSF映画だよ。
彼はまた現れた人にぶつかって、適当に謝りながら歩き続ける。

なら他には何かないか? 例えば、ここにいる人。どうも男女関係なしで、その上歳もバラバラ。どうして? 世の中は男女平等です。…………もう嫌だ。

まさしく『無駄な抵抗』を脳内で繰り広げていた彼は、歩くのを止め、立ち止まる。同時に、腰辺りに重みを感じた。振り向けば、小さな女の子。それもまだ中学にも行ってなさそうな子供だ。
まさかこんな小さな子までいたとは、と彼はしゃがみ込んで女の子と視線を合わせる。そして声をかけようとして、困った様に頬を掻いた。
女の子は、泣いていた。涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして。
何よりもまずは、このえぐえぐと泣きじゃくっている女の子をあやす事から始めよう。彼は、女の子に見えない様にため息を吐いた。いつもの様に癖でぐにゃりと曲がった前髪を弄りながら。






















たかいー、と無邪気に喜んでいる女の子の声を聞きながら、しかし彼は憂鬱な表情のまま周りを眺めていた。
最初彼独りだったこの空間も、気付けば至る所に人がいる。自ずと声は大きくなって、今じゃ最初の静けさが嘘の様だ。
集まった人は、上はいい歳した男から、下は現在肩車の真っ最中である女の子まで。ついでに男性女性幅広くと来ている。
因みに、どうして今彼女を肩車しているのかといえば、そもそもこの子は彼が考え事していた時にぶつかっていたらしい。第一印象は最悪だけど、一番近くにいたのがそんな彼だったからと、こっちに向かって走って来たのだとか。
そのまま恐怖や体当たり等で泣いていた女の子をあやしていた際、どうにか泣き止ませた後、何故か肩車をせがまれ、理由を聞けばパパがいないがどうこうだのと要らない家庭内事情を聞いてしまったせいか、小さな罪悪感を感じながら父親の代名詞、肩車をする始末。
きっかけが俺だけに、どうしようもないと分かっちゃいるけどさ……。わーいわーいとはしゃぐ女の子に、彼は女の子の母親が早く引き取りに来てくれないかな、などと思っていた。


「現在一万名。以上を持って締め切りとし、これより選考会を始めるかのぉ」


そんな時だった。機械に読み上げさせた様な、変に耳に残るしわ枯れ声が響いたのは。
がやがやとうるさかった世界の中、嫌な程ハッキリと聞こえた声。他の人にも届いたらしく、喧騒が徐々に収まっていく。
しかし一万名だって? 今の声が正しいのなら、ここには一万もの人がいるのか?
ふと沸いた彼の疑問に答えは出てこなかったが、代わりに真っ白なローブを着た老人が宙に現れた。
長い白ひげに禿げあがったてっぺん。その上に輝く、ドーナツ状のリング。
まるで、お伽噺の神様ルックだ。ただ、あまりにもベタ過ぎるが。


「えー、集まっていただいた皆様に申し上げます。本当に申し訳ないんじゃが、皆様はワシが間違えて殺しちゃいました、てへ」


しわ枯れた声で、老人はコツンと固めた拳を頭に落とした。そういうのは可愛い女の子がやるものであって、決して老い先短そうな老人がやるものではない。
普通ならここでボケた老人に対して突っ込みを入れるべきなのだが、と彼は思うも、だがどうしても言い出せなかった。
言葉に抑揚はある。感情だって感じられた。――――なのに、凄く気持ち悪い声だったから。

それとはまた別に、彼には突っ込めない理由があった。老人が言っていた台詞に聞き覚えがあったのだ。老人の台詞が、多少の違いはあれどネット上の二次創作とかで出てくる、所謂テンプレであると。
彼は、オタクな世界が好きな人間だ。グッズは集めていないものの、アニメやマンガ、小説にゲームが大好きな人間だ。今ではそれらの他に今まで見てきたアニメや小説、ゲームとかの二次小説をパソコンで漁るのが日課となっている。
だからこの様な展開は、液晶パネルを通して良く見て来た。でも、違う。何かが違う。この老人は、何かが違う。

変な違和感が彼の心で蠢くが、他の人は違うらしい。降りてこいだの、いっぺん死んでみる? だのと罵倒している。何故か笑顔のままで。中にはテンプレ乙や、キタコレ転生フラグとガッツポーズを取るのもいた。
各々違う気持ちを抱く彼らに、老人はゆっくりと口を開く。


「本当に申し訳ない。じゃから、今から皆様を転生させようと思っとる。今の空きが『魔法少女リリカルなのは』だけなので、それで勘弁してやくれまいか?」


またも彼の知る決まり文句<テンプレ>を語る老人。それに対する返事は、静寂の後に降りた大歓声。
大きなイエスが所々より沸き上がる。否定的な意見を出す人が、誰もいない。まるで元から『それを望んだ人間』で集められているみたいに。
――――いや、まだOKを出していない人間いた。それは先の違和感が拭いきれずにいた彼であり、異様な光景にビクつく肩の上の女の子。もしかしたら、先の轟音にかき消されただけで他にも否と訴えた人もいるかもしれない。どちらにせよ、この熱気の中でその様な意見を持つ者は少数だろう。


「まずは手元の画面を見とくれ。そこの項目から、好きなものを一つ選ぶんじゃ。それがお主たちの力となる。ただし、一度選んだら戻れんぞ」


なんでさ! 仕様じゃ。
どうでもいいやり取りを聞き流しながら、未だ理解が追い付いていない彼の目の前に半透明のパネルが現れた。思わず後退りをするが、一定の間隔を保ってくっ付いて来る画面。何処かで見た気がした彼は、このパネルが以前見たアニメのものとそっくりな事を思い出した。
先にも述べたが、彼はアニメが好きだ。それのみならず、マンガも、小説も好きだ。その中の一つ、アニメの分野で、彼は老人が転生させると言った『世界』を見ていた事がある。

魔法少女リリカルなのは。テレビでは第三期まで放送された、魔法と出会い、戦い続ける少女たちの物語。そんな作品に出てきた半透明の画面が、今目の前にあった。
嫌でも目に入る三つに分けられた項目は、上から『魔力』、『身体能力』、『どうしようもないおまけ』。
一つは微妙だが、間違いなくチート<反則>を意味する魅力的な言葉たちだ。しかしどうにも気が乗らない。彼はどうでも良さそうにパネルを手の甲で払うが、その指先が一番下の文字に触れた。
ピッと鳴る電子音。次いで出てくるチート能力――――というには、あまりにも酷い候補。


「ははっ、なんだこれ?」


思わず笑ってしまうくらいに、酷い有様だった。
『すごいよたけるちゃん』、『せーぎのみかた』、『にこってしてぽ』、『なでちゃってぽ』、『いたいのいたいのとんでけー』、『ぱんぱんぱんぱん』、『すきまさんぎょう』、『ずーるしき』、『いろはすしき』等々。
どれ一つとして中身が無いように思える、チート<反則>の欄。
『にこってしてぽ』や『なでちゃってぽ』、『いたいのいたいのとんでけー』はまだ雰囲気で分かるけど、それ以外は何? マサルさんにでもなれるのか? レンジャー部隊に入隊? ぱんぱんぱんぱんって手拍子? 八百長の方法でも教えてくれるのか? 後、水はいらん。
何にせよ、これはあんまりである。かといって、一つ前に戻る選択肢はない。後悔先に立たず、だ。
上二つを選んだのであろう周りは、瞳を爛々と輝かせていた。口々にチートどうこうと言っている辺り、相当良かったのだろう。他人のパネル自体が不可視なため、盗み見る事が出来ないのが何とも悔しい所である。

だが触れてしまったものは仕方がない。気が乗らないとはいえ、ここまで来たら最後までやるか、と彼は比較的分かりやすい項目を選ぶ事にした。名前は『いたいのいたいのとんでけー』。
言葉通りなら、たぶん回復系か何かだろう。これなら例え戦場にほっぽり出されたとしても、生きていけそうだ。なんせ、周りもチート<反則>。ぶっ飛んだ腕を一瞬で再生とかやってくれそうだな。
意外にも真面目に選んでいた彼は、自分の考えを自身で肯定するかのように、閉じた画面を見送って頷いた。


「どうよ、お嬢ちゃんは?」


ワクワクテカテカしている他の人に聞くのは嫌なのか、彼は今も頭上で楽しげな女の子に話を振ってみる。
返事は返って来ない。視界に入らない位置な為、悪いと思いつつ彼女を降ろす事にした。
女の子は、何もない場所を突ついて遊んでいた。恐らくは、そこに彼のパネルがあるのだろう。伸ばした人差し指でちょんちょんしているのは、選択しきっていないからか。しかしここまで遊んでいれば、何時かは触ってしまいそうであるが。
軽い体重とはいえ長時間乗せていたために凝った肩を回しながら、彼は静かに苦笑した。玩具<パネル>が無くなったら、また肩車か、と。


「ふーむ。大体決まったようじゃな。ならば――――これより選考会は選定へと進めようかのぉ」


どくっ、と。彼の心臓が高鳴る。
反射的に彼は頭上を見上げた。そこには老人がいる。さっきまでと同じ、変わることのない老人が。


「選定を開始する。まずは属性別じゃな」


老人の口から出た、相変わらずのしわ枯れた声。その声が決定したと同時に、彼の前にいた女の子が姿を消した。代わりに見知らぬ男がその場所に現れる。


「――――え?」


次第に強くなる鼓動。消えた? 代わった? なに、なんで?
手を伸ばしたら届く距離にいたのに、今は誰とも知れない男によって塗りつぶされてしまった空間。そこにいたはずの女の子は、何処かへと消え去ってしまった。
彼は慌てて周りを見る。そこには、依然大勢の人。違いと言えば、まるで固められたかのように集まっていることか。
よくよく見れば、その固まりは数種に分けられている。男女年齢は関係ないようだが、おそらくは何らかの意味があるのだろう。
元よりその場にいた者も、そしていきなり移動させられた者も困惑と疑問を老人へ投げかけるが、それに対する答えは返ってこず、


「七組か、まぁまぁの数じゃの。では仕上げじゃ――――ほいっとな」


やって来たのは、パチンという乾いた音。それが老人の指より出たのと同時、雑音は無音へと変わった。




























「男性が6と、女性が1。バランスが悪い。しかし問題は無い」


果ての見えない世界の中、別れ別れの位置で立つ七人の人。


「訳が分からないなら、答えを。質問は?」


線でなぞれば円となる並びの七人から丁度真ん中に立つ、黒色の人型。白の世界の対極であるからか、不思議と七人よりも存在感が強い。
人型は、両腕らしき線を広げた。まるでかかって来いとでも挑発しているようにさえ感じられる行動に、だが七人の誰もが口を開かない。
人型はかくりと丸い黒の頭を傾げた。


「質問は?」


「…………なら、聞くわ。零から十までの全部を説明してくれへんか?」


「作品を作った」


速答。瞬時にして帰って来た答えに、しかし質問を出した男は凍りつく。
聞き間違いかと、男は金に染め上げた長髪に隠れるこめかみを揉み解した。


「…………もう一度聞くで。これの説明をせぇ」


「作品を作った」


「…………ワレ、ナメとんか?」


「何も。集めた意味も、その結果も、そして今も。全てが作品のための設定。しいてその目的を付けるとするなら――――暇つぶし」


事もなげに言ってのけた人型は絶句する七人を見渡し、のっぺらぼうな顔に吊りあげた三日月を浮かべた。


「そう。これは暇つぶし。SS<サイドストーリ>、FF<ファンフィクション>、二次創作。どの様に捉えようが勝手ではあるが、それの作家を目指した。
設定はこう。作者、つまり神によって集められたのは、数あるサブカルチャーを漁り、中でも『リリカルなのは』に少々でも興味を持った人間一万。その中より人間の性格、行動といった属性を大まかに分け、更にその集合から一人をランダムで選択する。その後キャラクターは『リリカルなのは』の世界へと転生させらる。しかし、神によって『原作の三期』が終わるよりも速く転生者の頂点に立たなければ死んでしまうという呪いがかけられてしまった。自身の未来を勝ち取るため、転生者たちは戦争を始めるのだった。以上が冒頭<プロローグ>だ。
筋立て<プロット>は無い。必要も無い。作品は、最初が決まれば後は勝手に書きあげられていく」


出来の悪い小説家の様なセリフを長々と語る人型。言葉通りであるなら、七人の、いや集められた一万もの人間を自らの作品<オモチャ>に利用した事となる。
当然その意味を理解した七人は激怒した。感情が抑えきれないせいか言葉に回りくどい捻りなどない。七人の気持ちは、一つ。
元に戻せ。その一言だ。


「拒否は認めない」


「人を何やと思っとる! 神さんになったつもりか!」


「拒否は認めない――――作品が作者に歯向かうな」


パチン。真っ黒な指先から鳴った軽い音が、今の今まで抗っていた金髪の男を消し去った。
七人の円が、欠ける。追い打ちをかけるように、人型は指先を空いた空間へ伸ばし、そのまま時計回りに回り始めた。
ゆっくりと進む指先。それに指された残りが、音も無しに次々と姿を消していく。


「あ、あの子はっ!」


そうして最後。ついに残る一人が消される瞬間、人型が動きを止めた。
諦めが滲み出る顔で、男は言った。曲がった前髪を弄りながら、大きく息を吐いて。


「もう逃げられないのなら、最後に…………消える前に聞きたいんだ。あの女の子は…………最初に消えた他の人たちはどこに?」


「言葉通り、先に転生した。移動先は、知性を持たない生物。一般に単細胞生物と呼ばれる。あぶれた存在が作品の邪魔になっても困る」


「なっ!? そんなこと――――」


言いきるよりも速く、残った彼も消え去った。
人型を残して、誰もいなくなった白い世界。人型は一度ぐるりと辺りを見渡し、果てのない天を見上げると、自身も世界の色に塗りつぶされていく。
にやり、と顔に浮き出した気味の悪い半月を残して。


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