<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

XXXSS投稿掲示板




No.26700の一覧
[0] 東方蛇精譚・夜話【東方二次・男オリ主】[窓](2015/01/20 03:24)
[1] 蛇、幻想郷に至る、の巻[窓](2011/12/20 13:20)
[3] 蛇、旧友との再会に肝を冷やす、の巻[窓](2011/11/28 01:54)
[4] 蛇、洋館の門前にて門番と戯れる、の巻[窓](2011/11/28 01:54)
[5] 蛇、襲撃を受ける、の巻[窓](2011/11/28 13:39)
[6] 蛇、天狗娘と情を交わす、の巻[窓](2011/12/01 20:48)
[7] 蛇、山の神社にて、巫女に捕まる、の巻[窓](2011/12/01 23:44)
[8] 蛇、ミシャグジ神に苛まれる、の巻[窓](2011/12/06 05:28)
[9] 蛇、ミシャグジ神と共に人里に赴く、の巻[窓](2011/12/06 05:29)
[10] 蛇、ミシャグジ神と人里を堪能す、の巻[窓](2011/12/08 04:49)
[12] 蛇、襲撃されること再び、の巻(加筆)[窓](2011/12/09 00:07)
[13] 蛇、亡霊娘と情を交わす、の巻[窓](2011/12/09 15:03)
[14] 蛇、博麗神社に参拝し、巫女、魔法使いと遭遇す、の巻(冒頭追加)[窓](2011/12/15 17:13)
[15] 蛇、森の古道具屋を訪ねる、の巻[窓](2011/12/15 17:39)
[16] 蛇、半人半妖の店主を美味しくいただく、の巻[窓](2011/12/16 04:00)
[17] 蛇、半人半妖の店主と情を交わす、の巻[窓](2011/12/20 13:32)
[18] 蛇、棲家に帰還す、の巻[窓](2011/12/30 04:17)
[19] 【五万PV御礼】蛇、吸血鬼と情を交わす(前編)【おまけ】[窓](2012/08/30 17:21)
[20] 【五万PV御礼】蛇、吸血鬼と情を交わす(後編)【おまけ】[窓](2012/08/30 17:23)
[21] 【小夜曲一万U記念】蛇、メイド長と乳繰り合う、の巻【おまけ】[窓](2012/08/30 17:25)
[22] 蛇、妖怪の賢者、鬼と宴す、の巻[窓](2012/01/04 04:45)
[23] 蛇、風呂にて妖怪の賢者と戯れる、の巻[窓](2012/02/21 03:40)
[24] 蛇、妖怪の賢者と情を交わす、の巻(前編)[窓](2012/02/28 03:55)
[25] 蛇、妖怪の賢者と情を交わす、の巻(後編)[窓](2012/02/28 04:39)
[26] 蛇と九尾の狐、の巻[窓](2012/03/12 12:40)
[27] 蛇、地底に赴く、の巻[窓](2012/05/31 04:50)
[28] 蛇、鬼と宴す、の巻[窓](2012/07/08 22:05)
[29] 蛇と鬼と飲み比べ、の巻[窓](2012/07/16 04:25)
[30] 蛇と白黒魔法使いのトラウマ、の巻[窓](2012/08/25 04:31)
[31] 蛇、クピドの真似事をする、の巻[窓](2012/09/03 02:56)
[32] 【番外編】魔法使いと魔女、秘密の夜、の巻[窓](2013/02/25 22:01)
[33] 蛇、白黒魔法使いを誘惑す、の巻[窓](2013/02/17 13:10)
[34] 蛇と鬼娘、の巻[窓](2013/06/10 12:02)
[35] 蛇、隻腕の仙人と再会する、の巻[窓](2014/01/13 05:24)
[36] 子鬼の昔語り、の巻[窓](2015/01/02 05:51)
[37] 蛇、さとりの少女に出会う、の巻(文章追加)[窓](2015/01/20 03:26)
[38] 蛇、さとりの少女、新婚初夜、の巻[窓](2015/10/18 05:48)
[39] 蛇と温泉、の巻[窓](2015/10/26 13:21)
[40] 蛇、迷いの竹林に赴き、旧知に再会す、の巻[窓](2016/01/08 00:14)
[41] 蛇と蓬莱人の少女と月の姫、の巻[窓](2016/03/16 07:21)
[42] 蛇と蓬莱人の少女の過去、の巻[窓](2017/08/11 05:28)
[43] メモ。的な物[窓](2016/01/10 16:35)
[44] 【二万PV御礼】それはあったかもしれない世界【おまけ】[窓](2012/08/30 17:26)
[45] 【小夜曲お気に入り300件突破記念】ゆかりんとゆりゆりソープごっこ【これはひどいタイトル】[窓](2012/08/30 17:28)
[46] 【長期休載のお詫び】蛇、天人娘と酒盛りす、の巻[窓](2012/08/30 17:29)
[47] 【↑の続き】蛇、天人娘と情を交わす、の巻[窓](2012/08/30 17:30)
[48] 東方蛇精譚・零れ話 御阿礼の子と蛇[窓](2013/02/27 06:17)
[49] 【番外編】宵闇小妖と蛇・前編【そーなのかーの日】[窓](2013/03/08 04:50)
[50] 【番外編】宵闇小妖と蛇・後編[窓](2013/05/16 19:49)
[51] 【零れ話】蛇、さとりの少女、三日夜の餅、の巻(前編)[窓](2015/10/31 01:02)
[52] 【零れ話】蛇、さとりの少女、三日夜の餅、の巻(後編)[窓](2015/12/31 21:35)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[26700] 蛇、襲撃を受ける、の巻
Name: 窓◆0bf2c45e ID:6be04712 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/28 13:39
それは風の刃だった。
美鈴を担いでからでは回避は間に合わない。
そう判断したのか、美鈴を左腕一本で宙に放り投げる。
「ひゃぁ!」
胴体を両断しようとする風刃を、右腕に妖気を纏わせ防御する。
青白い炎のような燐気を伴った妖気と、風の刃がぶつかる。
果たせず、右腕が肘の辺りで切断され、宙を舞う。
「ちっ」
舌打ちした夜智王は、切断された右腕を左手で掴み、振りかぶって風の刃が飛来した方向へとぶん投げる。
投げる途中で右腕が一匹の蛇へと変じる。
それを確認したあたりで、落ちてきた美鈴をやんわりと受け止め、すとんと地面に下ろす。
「やややや夜智王さん」
「すまんな美鈴、びっくりし…腰が抜けたのか?」
ぺたんと地面に座り込んだ美鈴を夜智王がからかう。
果たして放り投げられたのが原因か、それとも夜智王のマッサージが原因か。
ニヤニヤとする夜智王に対し、美鈴はその右腕を刺しながら、慌てている。
「それどころじゃないですよ!右腕が!」
すっぱりと切り落とされた右腕がグロテクスな断面を晒している。
ただあまり血は出ていない。
「なに気にするな、この程度の傷ならすぐに塞がる」
「そう…なんですか?」
「ワシの特技でな」
「はぁ」
「しかし、いいところで邪魔が入った。これは美鈴に懸想する何者かが妬んでのことかの?」
「そんな人いませんよぉ…悲しいけど」
「ほっほそれは良いコトを聞いた」
悲しげに胸の前で両手の人差し指をつんつんとする美鈴に、夜智王が笑う。
美鈴の頬に軽く口付け、腰の抜けた美鈴を椅子抱き上げて椅子に座らせる。
「では美鈴、続きはいずれ。次は日の落ちた後、閨でな」
次はセックスしよう。そう言われた美鈴は、真っ赤になる。
夜智王の冷たいはずの唇が触れた頬が異常に熱い。
「いいいいいきなりそんな!まずは友達から!とか!」
「セックスフレンドという奴か?」
「ちがいますぅ!」
「はっはっは、美鈴は初心だのぉ、だがそこが気にいった。次は必ずしような!」
「夜智王さんのばかぁ!恥ずかしいこと言わないでくださぁい!」
腰の抜けて動けない美鈴は喚くしかない。
そんな美鈴に手を振りながら夜智王は去って行く。
その姿が木々の向こうに消えるまで散々罵っていた美鈴だが。
その姿が消えたとたんへなへなと椅子に崩れ落ちる。
ぺとんと椅子に横になると、火照った身体に、秋の冷たい大気に冷やされた椅子心地よい。
「…気持ちよかった」
「何が?」
うっとりとする美鈴に誰かが声を掛ける。
美鈴が良く知っている声だ。
紅魔舘のメイド長。十六夜咲夜の、低い怒りの篭った声だった。
「ささささっささくやさん!」
「…門が騒がしいと妖精メイドの報告を受けてきてみれば…あなた、何をしていたの?今あなたの頬にキスをしていった男は何?」
「どどどどどどどこからみてらしたんですかぁ!」
「あなたが宙を舞ったあたりからかしら」
「あ、良かった」
その前の恥ずかしいシーンを見られていなかったことに安堵する美鈴。
しかし心の声が漏れているのは頂けない。
「…なにがよかったのかしらねぇ?あの男、じぃっとあなたのこの胸を!無駄にでかい!肉の塊を!みていたけど!」
やや控えめな胸元の咲夜が、なにやら私情の篭った怒りを向ける。
「やぁ!痛いです!咲夜さん!やめてぇ!」
その後も拷問まがいの咲夜の尋問は続いたが、美鈴はなんとか黙秘を貫くことに成功したそうな。
どっとはらい。







一方で美鈴に別れを告げた夜智王は、投げつけた自身の右腕の下へと向かっていた。
蛇に変じさせた右腕は、すでに襲撃者を捕らえ拘束することに成功している。
相手が誰かは分からんが、とりあえず女であるようだった。
その程度は感覚で分かる。
「…おお、ばかでかい烏がかかったの」
「すぐにこれを解け!このっ変態!」
夜智王の右腕が変じた大蛇に全身を拘束され地面に転がっていた少女。
その背中には見事な黒翼があった。
短めの波打つような髪もまた黒。
蛇に拘束されているせいで、身体の凹凸が強調されいやらしいことこの上ない。
「やはりお主だったか、久しいの文」
「お前に名前呼ばれる筋合いは無い!」
襲撃者の素性を夜智王は知っていた“風を操る”烏天狗の少女、射命丸文であった。



「ひどいのぉ…こーんなに小さい頃は「やちおうさま!やちおうさま!」とよぉ懐いておったのに…年月は残酷じゃ」
つい先刻幽香に遭遇した時とは逆の感傷にひたりながら、動けない文をじろじろと眺める。
「…それは私の人生でも最大の汚点だ、すぐに記憶から消せ」
「ぐるぐる巻きされて何を強がっておるのじゃ?お主は」
「やめろっ!」
ぴろっとこの格好で空を飛ぶのか?とつっこみたくなるような文の短いスカートを捲り中を覗き込む夜智王。
その動きには迷いが無く、おそらく脊髄反射でやっているのだろう。
怒鳴る文が周囲の風を操ろうとするが、それをはばまんと、首筋で待機している蛇が牙をむく。
「やめいやめい、ワシから離れているせいで有る程度その蛇は勝手に動く。怪我ではすまんぞ」
蛇の鱗は特徴的な六角形をしてる…マムシなのだ。
「くそっ…くそっ!」
「泣かんでもいいじゃろうが…」
よほど夜智王にいいようにされるのが悔しいのだろう、文の目に涙が溢れる。
「だいたいな、あんな殺気の篭った風刃を投げつけて置いて、なんの罰もなしに済むと思うほうがおかしい、美鈴に当たったらどうするつもりだったのだ?」
「うるさいっ!」
「童かお前は…まぁいい、天魔に挨拶もせにゃならんし、山まで連れて行け、それでこの件は手打ちにしてやる」
「…」
眦を吊り上げ夜智王を睨み続ける文。普段の文を知る物ならば、そのギャップに驚いただろう。
ただ夜智王にはここまで文に嫌われる“理由”に心当たりがあった。
「まだあの時のことを根に持っているのか?あれは半分はお主の自業自得で、残り半分はお主らの頭領である天魔の暴走ぞ?」
「…ほどけ、つれていってやる」
全身に巻きついていた蛇がずるずると小さくなっていく。
普通の蛇程度のサイズまで縮んだが、文の首に巻きつき離れない。
まるで蛇でできた首輪のようだった。
屈辱に顔をゆがめる文だが、これは途中で夜智王を振り落とさないようかけた保険なのだろう。
「ほれ早く着けばそれだけ、早く済む」
ギリと奥歯をかみ締めた文は、夜智王の腕を掴むと大空へと飛びあがった。

天狗は幻想郷最速の種族である。
あっというまに天空を翔けた文は妖怪の山と呼ばれている場所まで夜智王を運んだ。
「あの神社と湖はなんじゃ?あんなもの山にはなかったであろう?」
「天魔様に聞け」
「つれないのぉ、うぉい!」
急降下した文は、その勢いのまま、山頂近くの立派な屋敷の庭へと夜智王を叩きつけた。
ここが天魔の屋敷らしい。
「着いたぞ、すぐにこの忌々しい蛇を外せ」
「いたたたた、並みの妖怪ならぺちゃんこだぞ、おい」
「早く外せ!」
「わかったわかった。ご苦労だったな」
するりと文の首に巻きついていた蛇が離れ、それはようやく本体の元へと戻ると、しゅうしゅうと音を立てて右腕に戻っていく。
「じゃぁな!」
返事をする暇もなく、文は地面を蹴りいずこかへと飛び去っていった。
「やれやれ…これはなんとかしないとまずそうだの」
とりあえず古馴染みである天狗の長、天魔に挨拶をするため、夜智王は屋敷の中へと向かっていった。








「くそっ!…忌々しい!」
夜智王を天魔の屋敷の庭に放り投げた後。
しばらくは取材の続きをして気分を変えようと思ったものの。
耳に残る夜智王の懐かしい声と、繋いだ手の感触のせいで、まったく集中できなかった。
結局自宅に舞い戻り、表に「新聞作成中、面会お断り」と書いた札をかけて、強く扉を閉める。
こうしておけば天狗の仁義として、よほどの急用でもないかぎりは、誰も家には入ってこない。
全てに腹が立つ。
久方ぶりに帰ってきて早々に紅魔舘の門番と乳繰り合う夜智王にも
夜智王に愛撫され陶然とする門番にも
何よりもそれに嫉妬し、反射的に風を叩きつけ、あげく反撃にあって捕まった自分に。

昔を思い出す。
夜智王は文の母方の祖母の悪友で、よく祖母の家に遊びに来ていた。
天狗としては型破りなことに奔放だった祖母は、若い頃は夜智王と“良い仲”だったらしい。
結婚した後は、そういったコトはなかったらしいが、祖母に懐いていた文は自然夜智王とも仲が良かった。
祖母は「あれは性悪の蛇だから、本気でほれちゃぁダメだよ文、火遊びでやめときな」とまったく適切でない忠告を幼い文にしたものだった。
もっとも文はあくまで夜智王を「優しいおじちゃん」程度の認識でなく、夜智王も幼い文に淫らなことをすることは一切なかった。

歳を経て、祖母が急な病気で亡くなり、文が成長してからも、そんな関係に変化は無かった。
祖母に似て天狗としては少々型破りな性格であった文は、上手く夜智王と付き合えていた。
そんな二人の関係が決定的に壊れる、あんな事件があるまでは。

「ほぉここが文のねぐらか…なんか妙な匂いがするの」
「ひぃ!」
何の気配も無く、背後に出現した夜智王が後から文に抱きついたのだ。
妙な匂い、恐らく新聞の印刷に使うインクの匂いのことだろう。
「お前!どこから!」
「陰行は得意なのだ、蛇だからな。知っておろ?」
「やめろ、放せ!ひっ!」
夜智王を振りほどこうとした文は身を竦める。
ひんやりとした夜智王の両手が文の翼を掴んだからだ。
「ふふ、天狗はここをつかまれると弱いのだ、知っていたか?」
羽を繕うようにゆっくりと夜智王の手が撫でる。
ぞわぞわとした感覚に文が身を竦める。
「やめろ…尾羽に…触れるな…やぁ!」
天狗の服は翼を出す都合上、背中が開いているか、もしくは背中に継ぎ目が入っているいることが多い。
文は前者であった。
大きく露出しているわけではない。
だがわずかな隙間から除く、翼の付け根、丁度人間の肩甲骨に辺りを夜智王が掴む。
翼の付け根は神経が集中しており、敏感であり、傷つきやすい部分である。
そこを掴まれる恐怖と、くすぐったいような感覚に、文はまったく動けなくなる
「尾羽はだめなのだろう?」
「やめろ、やめろ、やめろぉ!」
多少の痛みは覚悟で暴れようとした文から、ひょいと夜智王は離れる。
「なんじゃ、そんなに嫌がらんでもいいだろうに…」
ふて腐れた表情をした夜智王は、文から離れると勝手に家へと上がる。
「こりゃなんじゃ瓦版か?」
「新聞だ…何しに来た!」
「天魔に泊めてくれといったらふざけるなといって追い出されてな。仕方が無いのでここに泊めてもらおうかとおもって」
「ふざけるな!出て行け!」
激昂した文がとっさに風を繰ろうとし…寸前で止める室内で、しかも自宅でそんなことをしたら大変なことになる。
蛇に侵入された時点で文は詰んでいることに気が付く。
「なんもせんよ、わしゃ女子が嫌がる事はせん。それはお前もよぉ知っておるだろ?酒は無いのか?」
「お前に飲ます酒は無い」
「さもしいのぉ…まぁ天魔の屋敷からかっぱらってきたから別にいいがの」
後で怒られる…そんな未来が見えて、文ががくりと膝を付く。
「最悪だ…」
さっそく一人で飲りはじめた蛇は実に旨そうに酒を飲み干す。
しばし、部屋に静寂が落ちた。
夜智王は手酌で酒の飲み続け。
文は黙って夜智王を睨んでいる。
「こうして部屋の中で二人きりになるのはあの時以来じゃな」
びくりと文が震える。忌まわしい記憶が蘇り、震える自分の体を抱きしめ、ぶるぶると首を振る。
「やめろ…」
「丁度今頃の季節だったか、いきなりお主が思いつめた表情で「抱いてくれ」などというから、何事かと思ってわ」

ことの起こりは文の初恋が原因だった。
相手は男ぶりと女癖の悪さで名の知れた大天狗だった。
あちこちで浮名を流しており、性質の悪さから「夜智王以下」と言われていや。
(その頃から夜智王というのは好色の代名詞のようになっていたわけだが)
しかし、そんな悪評も霞むような美男子であり、女をたらすのが上手かった。
烏天狗になったばかりの文が、仕事の都合でその男の部下となったのがまずかった。
初心な天狗娘はあっさり色男に恋をした。
しかし相手は名うての遊び人、到底生娘な小娘である自分など、やさしくはしてくれるが、恋・・・いや遊びの対象ですらない。
思いつめた文が昔馴染みの夜智王に泣きついたのは、自然な流れだったのかもしれない。

しかし
「わしゃ、生娘は抱かんのだ、色々めんどうだし」
そう言って夜智王は断った。
夜智王が生娘を(極力)抱かない信条なのは事実であったし。
まだほんの小娘だった文を抱きたい、とも思わなかったのも事実である。
だが本当は昔馴染みの孫娘である文を大事にしたいだけだった。
ただそれを言うのは照れくさかったらしい。

結果として更に思いつめた文は気鬱の病にかかった。
それだけならば、初恋にまつわる悲喜交々で済んだ。
時間が解決してくれただろう。
それを決定的に悲劇にしてしまったのが、日ごろから文を気に入っていた天魔の暴走だった。
日に日にやつれていく文にとち狂った天魔は、夜智王を襲撃。
こてんぱんにのして拉致監禁したのだ。
しかも七日七晩かけて夜智王を“媚薬漬け”にした天魔は、そこに文を放り込んだ。
結果は言うまでも無い。


「あのバカは見事に忘れているようだがな」
「…」
「ワシも大変だったのだぞ?七日だ七日、七日も特性の媚薬に漬け込まれたせいで、男も女も見境無く誘ってやりたい放題。
おかげスキマに散々懲らしめれた挙句外に放逐されたのだぞ」
「…」
「そんな状況でもなお主の処女を奪わんかったワシは偉いと思うんだがな」
「・・・!うるさいっ!ばか!」
罵倒と共に小さな風の礫を夜智王へと投げつける、直撃を受けた夜智王が「ぐぅ」と低いうめき声をもらす。
「あの天狗はどうした…いまも女を泣かしておるのか?」
「随分前に殺された」
「痴情のもつれじゃろ…しかしいいところにはいった…ぐぅ」
ぐしゃぐしゃになった内蔵の再生が辛いらしく、夜智王は随分苦しそうにしている。
さすがにやりすぎたかと思った文だが。
付き合いが長いのでこの手で蛇が、よく人を騙すことも承知している、じとっっとした視線で睨むに留める。
小芝居は通じないと分かった蛇は苦笑し、身を起す。
「しかも、あの媚薬漬けのせいでかの、吐く息に人を淫らにさせる効果が出たのにはまいったわ」
先刻、美鈴が感じた甘い匂いはそれらしい。
「…最悪です」
「ああ、酒が零れておるではないか!…あああ、もったいない、一番上等なのをかっぱらってきたのに」
「ざまぁです」
「ひどいのぉ…あんなにかわいかった文が、草葉の陰で絢も嘆いておるだろうのぉ」
絢というのは文の祖母のことである。
「勝手に祖母を嘆かせないで下さい」
「…はぁ、酒ものうなったし寝る。すまんが一晩軒先を借りるぞ。さすがに山で野宿するほどワシは図太くないのでな」
梟あたりから化生した鳥妖に襲われてはたまらん。と呟きながら、夜智王は縁側へと消えた。
気が付けば既に日は落ち、月が出るような時間だ。
障子に月明かりに照らされとぐろをまく大蛇の陰が映し出される。
幻想郷に居る蛇妖の中では最強の大蛇、そう言われている夜智王の本性が月明かりに照らし出されているのだ。
文も布団を敷きごろりと横になる。
寝間着に着替えるのは、障子越しに夜智王がいるので躊躇われた。
酷く気恥ずかしい。

どうしてこんなことになってしまったのだろう。
あんなことがなければわたし達はずっと親しい友人でいられたはずなのに。
もしかしたら祖母のように「ちょっと火遊びをする」ような関係になったかもしれないが、あの蛇が起す騒ぎを面白おかしく新聞にしたりもできたはずなのに。
あの時、あまりのショックで呆然としていた文は、ただ夜智王に弄ばれたとだけしか思っていなかった。
あの状況でも彼が自分を傷付けぬように苦しんでいたなど知らなかった。
彼が消えた後にさらに追い討ちをかける事態が有った。
それら全ての怒りや悲しみをその場にいない夜智王に向けることで、自分は誤魔化してきたのだ。
全ての罪はあの蛇のせいだと。
自然と涙が流れ出し枕を濡らす。
夜智王に聞かれぬように、漏れそうになる嗚咽を布団を噛んで隠す。
何時間、そうしていただろうか。
くしゅん、と夜智王かくしゃみをする音と鼻をすする音が聞こえてきた。
勝手に身体が動いた。

布団を抜け出し、縁側へ向かう。
「なんじゃ文。怖い夢でもみたのか?ひどい面だぞ?」
誰のせいだ。
子ども扱いする夜智王を無視すると、つとめて無表情を装い、声に感情を込めず口を開く。
「中に入って下さい、秋とはいえもう夜は冷えます」
「助かるの、ついでに文の懐で温めてくれると最高なんじゃが。いや冗談「いいですよ」は?」
目をぱちくりさせてアホ面をする夜智王。
この二枚目になりきれないあたりが彼が好かれる理由の一つなのかもしれない。
「いやじゃな、耳が遠くなったのかの」
「いいですよ、と言ったのです。どうせ布団は一つしかありませんし」
ぼやっとしている夜智王の手を引っ張ると障子を後ろ手に閉めて、布団へ向かう。
「…えと化生するか?かまんから安心せいよ?」
「そのままでいいですよ、さぁ」
「…じゃぁ失礼して」
文用にしつらえた小さな布団に二人で入る。
無駄に背が高い夜智王には少々小さい、身を丸めながらも、布団に残った文のぬくもりにご満悦の様子だった。
「・・・」
天狗は翼があるため、横向きかうつ伏せで寝る、当然夜智王に背を向けると翼が邪魔なので、夜智王の方を向いて布団に入る。
夜智王はわざわざ女子にそっぽを向いて寝るような性格ではない。
仰向けではせまいのでやはり横向きに寝転がっている。
自然向かい合って寝る格好になった両者の間は三寸(約9cm)も無い。
互いの吐息が掛かるような距離だ。
「ぬくいのぉ、極楽じゃ」
嬉しそうに笑う夜智王に、文は抱きついた。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.046928882598877