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No.26700の一覧
[0] 東方蛇精譚・夜話【東方二次・男オリ主】[窓](2015/01/20 03:24)
[1] 蛇、幻想郷に至る、の巻[窓](2011/12/20 13:20)
[3] 蛇、旧友との再会に肝を冷やす、の巻[窓](2011/11/28 01:54)
[4] 蛇、洋館の門前にて門番と戯れる、の巻[窓](2011/11/28 01:54)
[5] 蛇、襲撃を受ける、の巻[窓](2011/11/28 13:39)
[6] 蛇、天狗娘と情を交わす、の巻[窓](2011/12/01 20:48)
[7] 蛇、山の神社にて、巫女に捕まる、の巻[窓](2011/12/01 23:44)
[8] 蛇、ミシャグジ神に苛まれる、の巻[窓](2011/12/06 05:28)
[9] 蛇、ミシャグジ神と共に人里に赴く、の巻[窓](2011/12/06 05:29)
[10] 蛇、ミシャグジ神と人里を堪能す、の巻[窓](2011/12/08 04:49)
[12] 蛇、襲撃されること再び、の巻(加筆)[窓](2011/12/09 00:07)
[13] 蛇、亡霊娘と情を交わす、の巻[窓](2011/12/09 15:03)
[14] 蛇、博麗神社に参拝し、巫女、魔法使いと遭遇す、の巻(冒頭追加)[窓](2011/12/15 17:13)
[15] 蛇、森の古道具屋を訪ねる、の巻[窓](2011/12/15 17:39)
[16] 蛇、半人半妖の店主を美味しくいただく、の巻[窓](2011/12/16 04:00)
[17] 蛇、半人半妖の店主と情を交わす、の巻[窓](2011/12/20 13:32)
[18] 蛇、棲家に帰還す、の巻[窓](2011/12/30 04:17)
[19] 【五万PV御礼】蛇、吸血鬼と情を交わす(前編)【おまけ】[窓](2012/08/30 17:21)
[20] 【五万PV御礼】蛇、吸血鬼と情を交わす(後編)【おまけ】[窓](2012/08/30 17:23)
[21] 【小夜曲一万U記念】蛇、メイド長と乳繰り合う、の巻【おまけ】[窓](2012/08/30 17:25)
[22] 蛇、妖怪の賢者、鬼と宴す、の巻[窓](2012/01/04 04:45)
[23] 蛇、風呂にて妖怪の賢者と戯れる、の巻[窓](2012/02/21 03:40)
[24] 蛇、妖怪の賢者と情を交わす、の巻(前編)[窓](2012/02/28 03:55)
[25] 蛇、妖怪の賢者と情を交わす、の巻(後編)[窓](2012/02/28 04:39)
[26] 蛇と九尾の狐、の巻[窓](2012/03/12 12:40)
[27] 蛇、地底に赴く、の巻[窓](2012/05/31 04:50)
[28] 蛇、鬼と宴す、の巻[窓](2012/07/08 22:05)
[29] 蛇と鬼と飲み比べ、の巻[窓](2012/07/16 04:25)
[30] 蛇と白黒魔法使いのトラウマ、の巻[窓](2012/08/25 04:31)
[31] 蛇、クピドの真似事をする、の巻[窓](2012/09/03 02:56)
[32] 【番外編】魔法使いと魔女、秘密の夜、の巻[窓](2013/02/25 22:01)
[33] 蛇、白黒魔法使いを誘惑す、の巻[窓](2013/02/17 13:10)
[34] 蛇と鬼娘、の巻[窓](2013/06/10 12:02)
[35] 蛇、隻腕の仙人と再会する、の巻[窓](2014/01/13 05:24)
[36] 子鬼の昔語り、の巻[窓](2015/01/02 05:51)
[37] 蛇、さとりの少女に出会う、の巻(文章追加)[窓](2015/01/20 03:26)
[38] 蛇、さとりの少女、新婚初夜、の巻[窓](2015/10/18 05:48)
[39] 蛇と温泉、の巻[窓](2015/10/26 13:21)
[40] 蛇、迷いの竹林に赴き、旧知に再会す、の巻[窓](2016/01/08 00:14)
[41] 蛇と蓬莱人の少女と月の姫、の巻[窓](2016/03/16 07:21)
[42] 蛇と蓬莱人の少女の過去、の巻[窓](2017/08/11 05:28)
[43] メモ。的な物[窓](2016/01/10 16:35)
[44] 【二万PV御礼】それはあったかもしれない世界【おまけ】[窓](2012/08/30 17:26)
[45] 【小夜曲お気に入り300件突破記念】ゆかりんとゆりゆりソープごっこ【これはひどいタイトル】[窓](2012/08/30 17:28)
[46] 【長期休載のお詫び】蛇、天人娘と酒盛りす、の巻[窓](2012/08/30 17:29)
[47] 【↑の続き】蛇、天人娘と情を交わす、の巻[窓](2012/08/30 17:30)
[48] 東方蛇精譚・零れ話 御阿礼の子と蛇[窓](2013/02/27 06:17)
[49] 【番外編】宵闇小妖と蛇・前編【そーなのかーの日】[窓](2013/03/08 04:50)
[50] 【番外編】宵闇小妖と蛇・後編[窓](2013/05/16 19:49)
[51] 【零れ話】蛇、さとりの少女、三日夜の餅、の巻(前編)[窓](2015/10/31 01:02)
[52] 【零れ話】蛇、さとりの少女、三日夜の餅、の巻(後編)[窓](2015/12/31 21:35)
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[26700] 東方蛇精譚・零れ話 御阿礼の子と蛇
Name: 窓◆0bf2c45e ID:b20dbb99 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/02/27 06:17
幻想郷の人里。稗田邸。
九代目阿礼乙女、稗田阿求は物思いに耽っていた。
原因は昨日訪ねてきた一匹の蛇だった。

「はぁ…」

物憂げな吐息を漏らす。

「どうしよう…胸が苦しい」

久方ぶりに幻想郷戻ってきた夜智王。
六代目以来の邂逅である。
一度見聞きしたことを忘れない、求聞持の能力を使い、幻想郷の歴史を綴る…幻想郷縁起を編纂する。
それが阿礼乙女の役目である。
その為に特別な秘術を使い、彼女は能力と記憶を持ったまま転生する。
とは言え、全ての記憶を持って転生する訳ではない。
ただ、一匹の蛇に関してはそうではなかった。
阿礼の頃からの知り合いであった。
彼が日ノ本の歴史を綴る際に、いくつもの古い知識を教えてもらったのも、かの蛇だった。
もっとも、かなり明け透けな夜智王の語る歴史は、史書として編纂するには敵さず、大分脚色しなくてはならなかったが…

「三代目がいけないのです…」

過去の自分を罵る。
三代目の犯した過ちこそが、今阿求を悩ます原因だった。

二度の転生を経て、彼女は弱っていたのだろう。
転生の弊害で若死するという運命。
わずかな人生も縁起の編纂と、転生の儀式の準備に費やされる乾いた日々。
十代半ばにして三代目は生きることに疲れ果てていた。
丁度幻想郷にやってきた夜智王に、三代目は泣き付いた。
蛇は黙って彼女を慰め…ごく自然な流れで二人は一夜を共にした。

「はぁ…」

能力故に、能力など無くとも、忘れ得ぬ夜。
それが阿求を悩ませる。
意識の奥底に沈んでいた記憶が、夜智王に再会したことで蘇ったのだ。

「どうしましょう…この年齢で性欲を持て余すなんて…」

あの性悪蛇のせいだ。

「せめて、もう少し大人の身体であれば…」

いやいやいや、何を考えているのか。
はぁ、ともう一度悩ましい溜め息を吐く。
八つ当たりするように、求聞史記の夜智王の項目を悪意に満ちた文章で綴って行く。
三代目が綴った縁起の彼の項とは逆に…

「これを見たら怒鳴りこんでくるでしょうか…」

抗議には来るだろう、苦笑気味に。
そして慰謝料として酒をたかるだろう。

「慰めて貰おうかな…」

三代目の時のように泣き付けば、彼は拒まないだろう。
別にいやらしいことはしなくても良いのだ。
ただ、妙に包容力のある彼の腕の中で愚痴を言わせて欲しい。
七代目と八代目の分も合わせて。

うん。そうしよう。
そう決める阿求であった。




三代目阿礼乙女阿未記ス蛇妖ノ事

名ヲ夜智王
其性有情ニシテ人ニ親シキ蛇
色ヲ好ミ、酒ヲ愛ス、オカシキ蛇
努々気ヲ許ス事無カレ


九代目阿礼乙女、阿求記す。

好色なる蛇。名を夜智王と称す。

人間友好度、高
危険度、極高

幻想郷で最も恐ろしい蛇妖。
再生する程度の能力を持つ他、小手先の妖術を使い、水蛇であるためか水を操る事もある。
詳細は不明なれど、零落した神であるとも言われ、長い時を生きている。
そんなことや、彼の能力としてはどうでもよいことで。
彼の危険性はその色を好むこと、人をたぶらかすことにある。
老若男女自在に変化するため、誰にとっても危険。
話術、詐術を用いて巧みに人を惑わす。
命の危機は無いが、貞操は勿論道徳観念も破壊される怖れ有り。
遭遇した際には、酒を飲ませると良い。
ただしどんなに誘われて自分が飲んではいけない。
その能力ゆえ、通常の手段では退治するのは不可能に近い。
彼の蛇への最大の対処は逃げることである。







「(熱は、落ち着いたみたいですね……)」

布団から出した手を額に乗せた阿求は、幾分下がった気のする体温に、ほっと安堵のする。
季節の変わり目に寝込むのは珍しいことでもないが、今回はかなり熱が出てしまい、家人は大いに慌てた。
上に下に大騒ぎの末、迷いの竹林から薬師の八意永琳が呼ばれ、まぁ熱は下がったのだが。

「坐薬かしら?」

と謎の呟きと共に妙にいい笑顔を浮かべた彼女は、ひっくり返した阿求の尻に謎の薬を突っ込んだ。
恥ずかしさのあまり、いっそそのまま死にたくなった阿求であった。

「はぁ……」

寝込むのは慣れているが、好きではない。
まんじりともせず横臥していると、普段は意識しないこと。
己の宿命、そう遠くもない将来のこと……つまり「死」を意識してしまうからだ。
ふるふると首を振り、嫌な想像を振り払う。

「(誰か見舞いにでも来てくれれば気が紛れるのですが……)」

こんな夜更けに見舞いが来るはずもなく、気を紛らわせるべく、何か楽しい事を考えようとする。

昼間見舞いに来てくれた慧音の話を自然と思い出された。
寺子屋に見知らぬ子供がおり、それが人外と気がついた慧音が、捕まえてみればそれが子供に化けた夜智王だった、というのだ。
何をしに来たと問い詰めた所。

「慧音殿の乳を眺めに」

と堂々のセクハラ宣言、当然怒り心頭に達した慧音の頭突きは夜智王が気絶するまで続けたらしい。
生真面目な性格の慧音はぷりぷりと怒っていたが、横の妹紅が「あいかわらずだな、あの蛇は」と微妙な笑みを浮かべていた。

「(知り合いなんでしょうか?)」

それにしても、慧音の怒りっぷりと、相変わらずの夜智王に、くすりと阿求の顔に笑みが浮かぶ。
夜智王は騒動を撒き散らすが、起こす騒ぎはいたって平和な物だ。
くすりと笑いながら、喉の乾きを覚えた阿求は身を起こし枕元に置かれた水を飲む。
乾いた喉に、冬の夜気に冷えた水が心地よく滑り落ちてゆく。
ほっと一息吐くと、今度は汗に塗れた寝巻きと体が酷く不快であることに気が付く。
あいにく替えは用意されていないので、せめてと水桶とともに置かれていた手ぬぐいで体を拭うことにした。

「……はぁ」

袷を緩めるとつい己の胸元に視線が行く、思わず悩ましげな嘆息が漏れる。
まだ幼い体ゆえ仕方ないことだろうが、あまりに平らな胸板であった。
先刻話に出た慧音あたりと比べると、一層悲しくなる。

「(ちゃんと膨らむのでしょうか、心なしか標準以下な気がします……)」

女として生を受けたのは初めてではない。
薄ぼんやりとした記憶を紐解いても、此度の体はいささか発育不良な気がしてならない。

「むぅ……」

思わず両手を胸に当て唸る。

「なんじゃまだ乳の大きさを気にする歳でもなかろうに」
「それはそうですが……っ!?」

思わず返事をしてから、阿求は息を飲み、恐る恐る背後を振り返る。

「どうした?」
「きゃぁ!」

なんでもないことのように小首を傾げる夜智王に、可愛い悲鳴を上げ阿求は慌てて布団を被る。

「夜智王さん!?な、なななんで!?」

布団ごしのくぐもった悲鳴が部屋に響く。

「おう、寝込んだと聞いて見舞いに来たが、思ったより元気なようだな」
「い、いきなり入ってこないで下さい!」
「てっきり寝ておると思ったのでな」
「寝てる私に何をする気ですかっ!?」

すぽん、と布団から首だけ出した阿求が必死な様子で抗議する。
その珍妙な格好の可愛さに夜智王はクスリと笑いを漏らした。

「なんもせんよ」

布団に生えた阿求の頭に手を伸ばし、寝乱れた髪を整え、いいこいいこと、子供にするように頭を撫でる。

「う、嘘です!」

頭を撫でられ、幾分動揺した声で阿求は言い返すが、その顔は羞恥に染まり、表情には抑えがたい喜びの感情が含まれていた。

「信用が無いの、ワシは」

カカカと自分のことであるのに、気にした風もなく蛇は愉快そうに笑った。

「どれ」
「ひゃ!」

するりと阿求のおでこに夜智王の手が伸び、おかっぱ髪の前髪を上げるとこつんと額同士を接触させ熱を計る。

「な、ちょ、や」

かぁぁ、と恥ずかしさから阿求の顔が紅潮してゆく。

「ふむ、まだ幾分熱が有るようだな」

それはあなたの顔が近いからです!と怒鳴りたい阿求であったが、実際には舌が縺れ言葉にならない。
ばくんばくんと心臓が脈打つ音が耳の奥に直接響いてくる。

「動悸も激しいようだし、大丈夫か?」

するりと伸びた夜智王の手が優しく阿求の背中をさする。

「だ、わた、あせ、くさ」
「うん?」

だから近いです!と阿求は叫びたかった。
寝込んで三日、着替えの度に体は清めてもらっているが、汗臭いはずだ。
そんな自分に近寄られるのはひどく恥ずかしい。

「ああ、そういうことか」

合点がいったのか、優しい笑みを浮かべた夜智王は「気にするな」と言いながら、ひょいと阿求の被っている布団をひっぺがした。

「ひゃぁああああ!な、なにをするんですかぁ!」
「寝汗に濡れて気持ち悪いのであろう?」

ワシが拭いてやろう、と阿求を抱き寄せる。

「い、いいです!」
「遠慮せんでええぞ?」
「い、嫌がってるんです!」
「嫌がらんでもよいではないか、そのままではまた具合が悪くなるぞ」
「や、やぁ……」

弱々しく抵抗する阿求に構わず、夜智王は慣れた様子で帯をほどき、阿求をつるりと剥いてしまう。
さっと取り出したバスタオルで幼い裸身をくるむ。

「寒くはないか?ちょっと待っておれよ」
「え?」

スパンと障子戸が開いて、そこから大きな盥が侵入してくる。
大人ならともかく阿求のような小柄な子供ならすっぽりと入る大きさだった。
盥には手足が生えており、しずしずと歩いて寝室へと入ってくる「ご苦労」と夜智王が労いの言葉をかけると、どこか嬉しそうに手をばたばたさせる。

「(つくもがみ?)」

盥に満たされていた水に夜智王は手がつけると、ほかほかと湯気を上げ始める、どうやら夜智王は阿求に湯編みをさせようとしているらしい。

「よしいい塩梅だ」

抱き抱えていた阿求のバスタオルをひっぺがすと、ひょいと盥湯に入れる。

「ふぁ……」
「熱くはないか?」
「だ、だいじょうぶです」
「そうか」

腰まで阿求を湯に浸けると、夜智王は手桶を取りだし湯をすくい、肩から湯をかけてやる。
久々の湯編みの心地好さに、阿求は「ほぉっ」とか「はぁぁ」と中々に悩ましげな吐息を漏らす。

「気持ちよかろ?」
「ふにゅ……はい」

夜智王が術を使っているからだろう、盥の湯は冷める気配もなく、骨の髄まで湯が染み込むような快感に阿求はうっとりとしてしまい……そこではっと我に帰ると、己が素っ裸で夜智王に湯編みを手伝ってもらっていることを思い出す。

「や、ややややちおうさん!」
「なんだ?」
「じ、じぶんでできますから!」
「病人が遠慮するな」
「ですから遠慮してるのではなくて!」
「病人にやらしいことなどせんわ、見損なうなよ」
「それは……確かにそうですけど……」
「それとも何か?そんなに阿求はワシを意識しておるのか?」
「う!……うぅぅぅぅ……」
「お主がその気ならワシもやぶさかではないぞ?ん?」

ず、ずるいぃ!と内心で阿求は叫んだが、もはやどうすることもできない、観念して、というよりは捨て鉢な気分で夜智王に身を委ねることにした。

「よしよし、ようやく素直になったな」
「やちおうさんのいけず……」
「阿求が可愛いからつい苛めてしまうのだ」

そう言い夜智王はぼとりと湯の中に何かを落とす。
あっという間に湯に溶けたそれは香の類なのか、ふわりと柑橘類の香りが湯気と共に立ち上る。

「柚子湯……ですか?」
「体が暖まるぞ、何も危険なものは入っておらんから安心せい」

こころなしか粘り気を帯びた湯を掬って阿求の体にかけてやりながら夜智王はそう答えた。
半身浴だというのに少しも寒さを感じないのもこの薬のお陰か?と心地好さに身を任せながら阿求はぼんやりと思考する。

「どれ寝たきりで体が凝っておろう」

もはや反論する気力も無いのか、阿求はほにゃとした表情で湯を堪能している。
しばらく寝込んでいたせいで強ばった肩を丁寧揉みほぐし始める。
その手つきにいやらしいものは無く、労りに満ちてはいたが、時おりに阿求はびくりと身を痙攣させ「っん!」とか「ふぁ」と悩ましげな吐息が漏らす。
精神年齢と外見のギャップゆえ、その艶めいたその様子は酷く蠱惑的であり背徳的でもあった。

「なんなら豊胸マッサージもするか?」
「文さんに言いつけますよ」
「……怖いことをいうでないよ」

文に噛みつかれる恐怖を思いだした夜智王がぶるりと震える。
その様子に阿求はくすくすと笑いを漏らさざるを得なかった。



しばしの後、すっかり体の芯まで暖まり、ふにゃふにゃになった阿求を湯からあげると、丁寧に水気をバスタオルで拭き取り、新しい寝巻きに着替えさせる。
下着まで着せてもらい、もう阿求は死にそうな程に恥ずかしい。
しかも

「な、なんですかこれ?」
「パジャマという洋風の寝巻きだ、うんよぉ似合っておるぞ」
「丈がぴったりなんですが……」
「阿求の為にと用意したものだからな」

絹製らしいパジャマの着心地は確かに良いのだが、着なれない洋装に阿求はもじもじとしている。
その可愛らしい様子に夜智王は相好を崩し、可愛い可愛いと誉めそやす。
さらに恥ずかしくなった阿求は、いつの間にか用意されていた新しい寝具に潜りこむ。
布団を顔の半分近くまでひっぱり、恥ずかしさをごまかす。
風呂以外の理由でも熱くなった体を、新しい寝具の冷たさが適度に冷ましてくれる。

「そうそう、見舞いを持ってきたのだ、食べるか?」
「柿……ですか?」
「昔から柿が赤くなると医者が青くなると言うだろう?」
「そうですね」

身を起こした阿求に「体を冷やすなよ」と綿入れをかけてから、つるりと柿の皮を剥き、食べやすい大きさに切り分ける夜智王。

「おいしそうです」
「旨いし甘いぞ、佐渡の柿だ」
「佐渡?外界のですか?」
「ああ「おけさ柿」というらしい」

結構値がはったぞ、おかげですっからかんだ、と夜智王はぼやく。

「どうやって手に入れたのですか……」
「そこは“蛇の道は蛇”よ」

くつくつと夜智王は笑う、どうやらこの蛇は大結界をすり抜ける術を持っているらしい。

「ほどほどにしないと怒られますよ」
「ま、いまさらだな。それに食せば阿求も同罪ぞ?」
「……ずるい言い方ですね」

ぶす、と阿求はむくれる。
しかし寝込んで以来重湯程度しか食していないせいか、柿はひどく旨そうで、ふわりと漂ってくる甘い香りだけで胃がきゅうきゅうしてくる、到底その誘惑には抗えそうにない。
皮を剥き終え、食べやすい大きさに切り分ける夜智王、皿におかれた一欠片に阿求の手がのびる、だが。

「あっ……」

ひょいと夜智王がそれを拾い上げ、満面の笑みを浮かべながら阿求の口許に寄せる。

「ほれ、あーん」
「じ、自分で食べれます!」

どこか嗜虐的な物を感じさせる笑みで、当たり前のように恥ずかしいことを要求する夜智王に、阿求が真っ赤になって抗議する。

「あーん?」

無視して夜智王は同じこと繰り返す。
再度抗議しようとすると、捨てられた子犬のような、寂しそうな表情を浮かべる夜智王。

「阿求は意地悪だな」
「なっ、なんでそうなるんですか!?」
「ワシがこうやって人と戯れるのが好きと、阿求は知っているのに、ワシが嫌と言われれば無理強いできないと知っておるのに……」

ぶちぶちと夜智王が文句を垂れる。

「う……」
「ワシは今日はこうやって手ずから阿求に柿を食わせたくて見舞いにきたのに、ひどいではないか」

まるで阿求が悪いような言い方であった。
断固として自分が悪いわけではないのは阿求も分かっているが、寂しげな夜智王の様子に、なんとも言えない罪悪感を抱いてしまう。

「阿求がそうやって意地悪するならワシも意地悪するぞ」
「えっ、ちょっと、きゃぁ!」

さっと阿求を抱き寄せると、ぐいと顔を寄せてくる。

「口移しで食べさせてしまうからな?」
「ま、まってください!」
「嫌だ」

そう言って、夜智王は顔を近寄らせてくる。
口移しなどと言いながら、その口には柿は含まれておらず、ただ少し意地悪そうに吊り上げっている。
このままでは接吻されてしまう。
きゅっと阿求が目を瞑る。
しかし

「誰が見てるわけでもないのだ、ワシに甘えても良いのだぞ?」
「え?」

唇ではなく、頬にそっと接吻した夜智王はそう囁きかけてきた。

「夜智王さん?」
「お主は忘れてしまったかもしれんがな、昔ワシに泣きついてきた三代目のこと、ワシは忘れておらんのさ」

二人きりの時は、ただの阿求で良いではないか。
そう蛇が囁く。
稗田の当主でもなく。
阿礼乙女でもなく。
ただの女子として。
どくん、と心臓が高鳴る。
誤魔化すように阿求は声をあげる。

「あ、あの時のことは……忘れて下さい……」
「嫌だ」
「もうっ意地悪!夜智王の馬鹿!」

思わず呼び捨てにする、昔のように。
なのに嬉しそうに蛇は笑った。

「そう怒鳴るな、あまり興奮すると体に毒だぞ」

誰のせいですか!と憤慨する阿求。

「ほれ、あーん?」
「う……」

観念したかのように、きゅっと目を瞑り、しぶしぶ口を開く。
恐ろしく間抜けな表情をしている気がするが、目を開けている勇気は無い。

「ん……はむ……こくっ」

つるりと柿は阿求の口の中に滑り込んだ。
芳醇な甘味が口一杯に広がる、種もなく、食べやすい大きさに切られているうえ、とろけるように柔らかいのでほとんど咀嚼する必要もなく、喉を滑り落ちていく。
かすかに酒の風味がするのは渋抜きに使われた焼酎の名残だろうか。

「おいしいです」
「であろう?ほれもう一欠け」

餌付けされてるみたい……と思わざる得ない阿求であった。










「わ、わたしは何てことを……」

翌朝、すっかり元気になった阿求だが、昨夜のことを思い返す度にぽんっと顔が赤くなり体温が上がる。
風呂の世話をしてもらい、素っ裸は見られる。
過去の恥ずかしい思いでは持ち出される。
あげく、赤子のように「あーん」させられる。
穴がなくとも掘って埋まりたい気分である。

「夢なら良かったのに……」

生憎夢ではなかった。
その証拠に枕元には、幾つかの丸々と太った柿。
それと「体に良いから寝酒にでもしろ」と夜智王手製の柿酒が残されていた。

「おはようございます阿求さま、お加減はいかがですか?」
「ひぅっ!」

真っ赤になっている所に家人がやって来た。
おもわず妙な声をあげて布団をひっかぶる阿求。
家人はすわ熱がぶり返した!と慌て、再度呼ばれた永琳によって(何となく事情を察していたにもかかわらず)坐薬をいれられるはめになる阿求であった。






















ピクシブの投稿テストだったものを加筆して投稿します。


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