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No.2651の一覧
[0] 異世界エロ話(オリジナル[無屁吉](2008/02/22 20:01)
[1] 異世界エロ話その2[無屁吉](2008/02/20 09:31)
[2] 異世界エロ話その3[無屁吉](2008/02/23 01:30)
[3] 異世界エロ話その3.5[無屁吉](2008/02/24 02:43)
[4] 異世界エロ話その4[無屁吉](2008/02/22 20:00)
[5] 異世界エロ話5[無屁吉](2009/04/07 03:35)
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[2651] 異世界エロ話その2
Name: 無屁吉◆ab65b77c ID:01b3c9db 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/02/20 09:31
 2.
 
 長耳女が口にした言葉を、俺は思わず反芻する。
「ます、たー……?」
 女はうなずく。
 この時俺は、やはり召使として雇うつもりだったのだ――なんて楽観的に考えてしまった。
 それが甘い考えだと思い知ったのは、まさに直後。
 女は俺の隣に腰をかけると、俺の首に腕を回してしな垂れかかってきた。女から柑橘系の香水の匂いがふわりと広がる。
 俺は先ほど童貞にはすさまじいまでのエロティックな経験をしたが、それでも妖艶に微笑む金髪美女の顔が間近に来ると、心臓は高鳴り顔面と海綿体に血液を送り込んでいた。
「あの……」
 と、俺が声を出した瞬間、首に女の腕ではない何かが触れた。それはいつもズボンに通している革のベルトによく似た感触で、かちゃかちゃと金属同士が擦れる音が聞こえた。
 女が満足そうに笑んで離れた。俺はとっさに何かされただろう首筋に手をやる。やって、何故か皮製の首輪らしきものがかけられている事に気付いた。そして首輪には太い鎖もつけられている。
「こ、これは?」
 俺は怪しくなってきた雲行きに、通じるわけのない日本語で尋ねていた。女は首輪に繋がる鎖の先を俺の目の前にちらつかせると、言い含めるようにゆっくりと、赤い唇をはっきり開いて言う。
「ユー、アー、マイン」
 あなたは私のもの。
 それでやっと、俺は現実を認めた。俺は売られてしまったのだと。人間でありながら人間以下の存在として扱われているのだと。
 正直なところ、薄々は感づいていたのだけれど、あえて受け入れようとしなかった可能性だった。
 しかしこうなってしまえば認めざるをえない。これが現実なのだから。そして認めた上で、
「――ふざけるな!」
 声を荒げ、立ち上がり、女に掴みかかる。いや、掴みかかろうとした。
 女は俺が手を伸ばしてきた瞬間、嘲笑うような目をして、鎖を思い切り引いた。
 俺はそのままバランスを崩しつんのめって、前方に倒れこむ。女が腕を開いて俺を抱きとめた。
 大きく、柔らかい乳房の感触が衣服越しにも伝わってくる。だが、己の理不尽な境遇と、転ばされた怒りにそれを楽しむような余裕はまったく無かった。
「く、この……」
 毒づくように呻く俺の口を、長耳女は強引に唇で塞いだ。
「んむぅ!?」
 とっさに顔を離そうとするが、俺の頭は女の片腕ががっちりと押さえ込んでいた。
 女はそのままの体勢を維持し、俺の股間にもう片方の手を伸ばし、ズボンの上からやわやわと揉みはじめた。
「ん……っ、んくっ」
 布越しだと言うのに、女が与えてくる刺激は強烈なものだった。
 俺の理性は腰を浮かせて逃れることを命じるが、身体は女の手から離れたくないと動くのを拒む。
 二人の荒い鼻息が至近距離で絡む。俺の唇の端からは飲み込めなかった唾液が漏れ、女の顔を汚していた。
 自然、俺のまぶたは閉じられていた。暗闇の中で、ただペニスに与えられる快楽を享受する。
 そしてややもせず、女が睾丸をこりっと少し強めに擦り合わせた瞬間、
「む、ぅんっ……!?」
 俺はパンツの中に精を放っていた。その快感に全身から力が抜け、それでも腰だけは女の手へ更に強く押し付けて、女に身の全てを預けていた。
 そうして女はようやく俺の頭から腕を放すと、両側から挟み込むようにして俺の顔を持ち上げる。
 唇と唇が離れ、エロティックな銀の糸橋がかかると、それもすぐに千切れた。
「ぷはぁ、はあ、はあ……」
 熱に浮かされたようにとろけた頭で、俺は女を見つめていた。女も微笑を浮かべ俺を見つめている。その目がいやらしく細められ、俺を誘っていた。
 気がつけばもう一度キスをしていた。今度は俺からだった。唇を押し付け、無理やりに舌を押し入れ、唾液をすすり、歯の裏から口蓋まで、届くところは余すところなく舐め尽くす。
 さっきまでの怒りなどすっかりどこかに飛んでいた。
 鎖で繋がれたことなどどうでもいい。物扱いされたことなどどうでも良い。
 今はただ、この女を抱きたい。この女を犯したい。この女を貪りたい。あるのはそんな雄としての欲求、本能。
 既に今日三度も――それも短いサイクルで――射精していると言うのに、俺のペニスはこれまでにないほどガチガチに強張っていた。俺は内側がぬるぬるになったズボン越しにペニスを女の太ももに押し付け、腰を前後にゆすり始めていた。
 俺の手が女の胸元に伸び、滑らかな布の感触ごと大きな胸をもみしだく。だが、すぐにそんな物では満足できなくなって、俺は女の服を破り捨てようと、襟に手をかけた。
 が、たしなめるように女にその手を叩かれ、行動を止められた。
 不満を隠しもせず女を見ると、仕方ないわねとでも言うように、胸元を大きく開いた。弾けるように服の中から双乳が飛びだす。俺は餌を与えられた犬のように、すぐさま喰らい付いていた。
 ――思えばこのとき既に「ご主人様」によって飼いならされていたのかもしれない。なんて思うのは相当後のはなしだった。
 右の乳首を強く吸いながら、左の乳房が俺の手の中で形を変えていくのを楽しむ。
 そんな相手のことなどまったく考えていない自分本位な愛撫を受けてなお、女は心地よさそうに微笑っていた。
 それがたまらなくいとおしく感じ、再び口付けをした。
 女が再び俺のズボンに手を伸ばした。片手だけで器用にベルトを取り払うと、ホックを外し、ザーメンの染みたパンツの中に手を入れ、子種にまみれたペニスを握り締めた。そのままゆっくりとしごきはじめる。
 穏やか、と言うよりはもどかしい気持ち良さに、俺は更なる刺激を要求するため、女の乳首をつねりあげた。
「あ」と女が初めて小さな悲鳴をあげ、それが俺の気を良くする。馬鹿の一つ覚えで、再び指で強く挟む。
 女は「やってくれたわね」と目で言って、ついに俺のパンツを全て下げた。
 外気にさらされ、跳ね起きるように現れたペニス。女はスリットの長く入ったスカートをまくりあげると、あらわになった片膝をペニスへと押し付け、強く擦り始めた。
 硬くも滑らかな肌の感触と、今までに体験した事のない屈辱的な責めに、俺の興奮は更に増す。
 女はペニスが更に硬さと熱を帯びてきた事で、それを感じ取ったのだろう。妖艶に輝く瞳に「膝なんかで気持ち良くなっちゃって、浅ましい」と侮蔑の言葉をのせてきた。情けない事だが、それでさらに俺のペニスに血液が集まっていた。
 もはや浅ましかろうが、軽蔑されようがなんだっていい。いまはただ、どうか俺に一時の快楽を。
 その想いが通じたのか、女の膝は力強さと速度を増す。俺もまた、こしをぐいぐいと膝に押し付けもっと気持ち良くしてくれと女にねだった。
 やがてもうすぐ絶頂を迎える、そんな前兆が俺の背筋を走ってペニスへと伝わったとき、女の膝が動きを止めた。
「……え?」
 どうしてやめるんだ、と唇の端から涎を垂らし、快感にぼやけた目で訴える。
 女は微笑を浮かべたまま、膝をはなし、股をゆっくりと開いた。挿入れなさいと言っているのだと理解した。
「ああ……」
 と、俺は期待に声を漏らしていた。ついにこの女を抱けるのだ。犯していいのだ。
 俺は震える手でペニスを掴むと、女の股を割るように両足を差し入れ、肉色に濡れて光る膣へと侵入を試みた。
 だが、俺のペニスは女の穴を捕らえる事が出来ず、ぬるりと割れ目を擦っていた。
 あれ? と焦りを感じながらももう一度挑戦し、同じ結果に倒れる。それを三度繰り返したあたりで、女の手が俺の息子を掴んだ。
 はっとして女を見ると、慈愛を感じさせるような優しい――しかしその根底に見えるのは雄を求める雌の本能で――微笑を浮かべ、ペニスを膣口へと導いた。
 ぐちゅりと卑猥な音を立て吸い込まれていくペニス。そう、入っていくなんて生易しいものではない。おれは思わずその気持ち良さに悲鳴をあげていた。
「ああっ、な、なんだこれぇ!?」
 女なんかよりオナニーの方が気持ち良い。そんな事を得意げに語っていたイケメン友人の話は嘘っぱちだった。
 根元をきつく締め付け、中で蠢く肉ひだが亀頭やカリクビと言った弱い部分を徹底的に攻撃する。オナニーごときで得られる快感では到底ありえない。
 俺はもはや腰を動かすことさえ出来ず、あっけなくもザーメンを放出していた。快楽に身を震わせて、尿道に残る精液一滴すら女の子宮に届けんと搾り出す。
 びくびくとペニスが膣内で暴れまわり、力尽きしぼむ。が、それもすぐに回復した。女の肉壁は萎えたばかりのペニスをなおも愛撫し、まだできるでしょう? と語って――否、命じていた。
 このとき俺ははっきりと理解した。俺が犯しているんじゃない。俺が犯されているのだと。
 もしかしたら、このまま搾り尽くされ殺すのではないだろうか――?
 そんな不安が頭をよぎるが、与えられる快楽に抗う術など俺は持ち合わせていなかった。
 そして俺は息を整えると、女の命を遂行すべく、細い腰を掴み、力任せに腰を振る。
「ア、ア、アッ!」
 その度に女の嬌声が上がり、俺の首輪に連なる鎖はじゃらじゃらと音を立て、肉と肉がぶつかり合う。
 ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を立てる結合部分に目を落とせば、白く泡立ったザーメンが掻き出されていて高そうなソファの布地に染みを作っていた。自らの子種が外に排出されていくのを見て、俺は不意に新たな種を植え付けねばならない――なんて義務感に襲われた。
 腰を振るスピードを更に上げる。女の中もそれに答えるように締め付けを増し、二人の快楽指数は上昇を続けていく。
 やがて、膣が震えるように痙攣をはじめ、女の絶頂が近いのだと俺に教えていた。
 女はじゃらと鎖を引いて、俺の顔を寄せるとキスをせがむ。俺は要望に応え、唇をあわせ、互いに舌を貪りあった。
 腰の動きはなおも速度を増し、女もまた自ら腰を振っていた。
 ふと、俺の視界に女の長い耳が揺れているのがうつった。身体をぶつけ合うたびにひくひくと動くそれに、俺は思わず口を寄せ、ぺろとひとなめした後、軽く噛み尽いた。
 瞬間――女が声もなく大口をあけ、俺に組み敷かれたままにもかかわらず背を弓反に跳ね上げた。
 同時にぎゅうと締め付ける膣に、限界に近づいていた俺の息子は白旗を上げ、またも女の中に精子をばら撒いていた。
 虚ろな目をして絶頂の余韻を楽しむ女を、俺は知れず抱き締めていた。そうしてもはや何度目かわからないキスを交わす。
 繋がったままの膣からは、どろりと白い毒液がこぼれだしていた。
 
 とまあ、これが俺の童貞喪失の全てであり、同時に「ご主人様」に飼われる事となった経緯でもある。
 
 ◇
 
 この世界にやってきて俺は人間必要に迫られることはなんでもすぐに覚えるものだと実感していた。
 何せ苦手だった英語での会話が、ものの数ヶ月で出来るようになっていた。無論日常会話程度ではあるが、それでも格段の進歩には違いない。
 読み書きもまた上達していた。俺が繋がれている座敷牢の中では、読書以外に個人の娯楽がないのだから必然と言えた。
 この座敷牢は例えるなら犬小屋だ。俺という犬を飼うための。
 内装だけなら普通の部屋と大差ない。本棚もあれば、ベッドもある。それから驚くなかれ、ユニットバスまであるのだ。
 どうやらこの世界、科学技術がファンタジーの割りに発展しているらしい。いや、ファンタジー世界の科学が立ち遅れているなんていうのは俺の偏見なんかも知れないが、正直びっくりした。照明も実は蛍光灯だったりして、元の世界と近い文明を持っているんだななんて奇妙な安堵感を覚えていた。
 ところで、この世界にはどうも「人間」という種族がいないらしい。より正しくは、いないと言うよりは遥か昔に絶滅したのだとか。
 これは俺がどうにかまともに喋れるようになった頃、「ご主人様」と交わした会話からわかったことだ。
 簡単に解説すると、その昔「人間族」は発展した科学力をもって栄華を極めていた。だけどなんかの拍子に絶滅した。以上。
 この「なんかの拍子」がなんなのかは諸説あるらしい。巨大隕石が降ってきただのトンデモな話もあると言う。何処の恐竜だよ。
 だが、科学が発展していたというのは疑いようのない本当の話で、現在使われてる技術のほとんどが人間が作り出した物――通称「人間の遺産」――を元にしているのだとか。
 人間の遺産の中には現在の科学水準を遥かに越えるものもあり、遺跡などから発掘されれば恐ろしいほどの高値で取引されたりもするんだそうだ。
 中にはそんな「人間族」を神と崇める人たちもいるらしい。俗に「人間崇拝」というらしく、何気に「ご主人様」も――相当歪んではいるのだが――その主義者だった。
 さて、なんでこんな話になったかといえば、俺が「ご主人様」に異世界からやってきた人間だと告げた事が発端となる。
 
 ◇
 
「はん」
 俺の話を聞いた「ご主人様」は鼻で笑った。
「ねえ、黒? そんな風に作り話で自分の価値を吊り上げようなんてしなくても、私は十分あなたを買っているわ」
 ところで忘れてる人も多いだろうが、黒とは俺の名前だ。
「いや、冗談でもなんでもないんですけどね」
 俺は「ご主人様」に腕を枕として提供しつつ、長い手触りの良い髪の毛を手で梳かしながら言った。
「ご主人様」は首輪につながれた鎖を引いて俺の顔を寄せると「いい?」なんて前置きして、口を開く。
「確かにあなたの容姿は人間族の特徴によく似ているわ」
 ここでいう人間族の特徴とは「特徴がない事が特徴」だそうだ。「ご主人様」のようなエルフみたいに耳が極端に長いわけでもなく、獣人たちみたいに獣の耳や尻尾があるわけでもないし、毛皮で全身が覆われているなんてこともない。
 なるほど、特徴がない事が特徴だなんて良く言ったものだと思う。
「でも、整形手術をすればそんな姿はいくらでも作れる。良くある話なのよ。人間崇拝者により人間に近い姿の奴隷を売ろうとするなんて。より高い値で飼わせる事が出来るから」
 つまり「ご主人様」は俺はあのコボルトの奴隷商人に整形されて売られたのだと思っているのだろう。まあ、異世界からきた――なんて話よりは、そっちの方が真実味がある。あるのだが、ファンタジー世界の癖に異世界人を受け入れないとかものすごく理不尽な気がするのは何故だろう。
「ふふ、もしかして最近構ってあげられなかったから『捨てられちゃうかも』――なんて心配になったの?」
「え?」
「ご主人様」は意地悪く笑うと、鼻の頭に軽くキスをした。
「大丈夫よ。捨てたりなんかしないから。私があなたを気に入ってるのは人間族に近いからじゃなくて、その綺麗な黒い瞳よ」
 そう言った「ご主人様」は楽しそうに俺の目を見つめていた。
 なにやら勘違いしてるようだが、それを否定して「ご主人様」の機嫌を損ねる真似をする必要もない。
 俺は笑顔を浮かべると、そっと「ご主人様」の尻に手を伸ばして、お礼代わりにゆっくりと愛ではじめた。
 
 ◇
 
 俺の仕事は「ご主人様」の性欲処理である。
 時にサディスティックに俺を責めるのは勘弁して欲しいと思うこともあるが、基本的に暴力は振るわない人なのでそれほど苦痛はない。ただ、男として女にいいようにされるのは屈辱的なだけだ。
 対して「ご主人様」の仕事は相当ヤバいものらしい。細かいことは「どうでもいいじゃない」と教えてくれなかったが、言葉の端々からマフィアの幹部なんじゃないかな、なんてあたりをつけてる。
 そもそも、奴隷なんて買うような人間がまっとうな職業についているわけがないとは思う。
 
 そんな俺の予想を裏づけするような出来事があるとき起きた。
 俺がいつものようにベッドの上で本を読んでいると、犬耳のメイド――薄情な事だがまだ名前を知らない――が座敷牢に入ってきた。
「あれ、もう昼飯?」
 俺は本を閉じながら尋ねるが、犬耳は横に首をふる。
「ご主人様がお呼びです。私に着いてきてください」
 いつも朗らかなはずの犬耳は強張った顔でそう言う。
「どうしたんだ? なんか様子が――」
「お願いですから早くしてくださいっ!」
 心配する俺に犬耳は声を荒げた。
 常ならぬ犬耳の剣幕に俺はかけてあった上着を取り、蝶ネクタイを締めるとすぐさま支度した。
 それを見て犬耳は牢の外に出た。俺もあとを追う。
 行く先は地上へ続く階段ではなく、更なる地下へと続く階段だった。
「何処に行くんだ?」
 歩きながら尋ねる。俺は初めて赴く場所と、犬耳の態度から不安を隠せなかった。
「俺牢より下には行った事がないんだよ」
 だからだろうか、返答がないにもかかわらず饒舌になるのは。
「……なんだか気味が悪いな」
 あたりの雰囲気が変わっていた。
 俺がいた階は座敷牢があるとはいえ内装もきちんとしていた。
 だが、ここの通路はコンクリートが剥き出しになっていて、電灯も最小限ついているだけで、不気味さを増していた。
 やがて犬耳は無言のまま、見るからに分厚そうな金属扉の前に立つ。扉の上部には小さくのぞき窓らしきものがついており、俺のいるような座敷牢などではなく、正しく牢屋と言った風情をかもしていた。
「失礼します。黒を連れてまいりました」
 犬耳がノックをし、そう言う。その声色はやはり硬い。
「待ってたわ。入りなさい」
 扉越しに聞こえる「ご主人様」の声。
 俺たちは扉を開いて部屋に入る。そして、俺は目を疑った。
「なんだ、これ」
 俺の視界に入ってきたのは三角木馬やら吊り具。そのほか一体どんな用途があるのかさえ分かりかねるような――しかし、そのどれもが人を傷つけるために作られたのだとわかる禍々しさを備えている――器具が数多くあった。
 その部屋の中央に我らが「ご主人様」はいた。いつもと同じように、銀色のファーを首にかけ、スリットの長いスカートを履いて。
 ただ違うのは、その手に持つのが俺の鎖ではなく長い革の鞭で、
「いらっしゃい、黒。今日のあなたの相手よ」
 そう言った「ご主人様」がさした指先には、きつくこちらを睨みつけてくる獣人の美少女の姿があった。ただし、裸の上両手足を縛られ、床に転がされた状態で。
 よく観察すると、彼女に見覚えがあった。俺がここに連れられてきたとき、俺の身体を洗った四人のメイドのうちの一人――ネズミ耳だ。彼女とは初めて接した時以来、身体を重ねることはおろか、顔をあわせることすらほとんどなかったので思いだすのに時間がかかった。
 ネズミ耳の裸身には鞭で打たれたのだろうみみず腫れが幾筋もあった。
 俺は事態が飲み込めず、もう一度同じ言葉を吐いた。
「なんだ、これ」
「なんですか、でしょう?」
「ご主人様」が俺の言葉使いを訂正する。言葉の調子こそいつも通りではあったが、どうしてか俺は寒気を感じずにはいられなかった。俺はすぐさま言いなおした。
「なんですかこれ」
「裏切り者に罰を与えているのよ」
「ご主人様」はあっさりと言う。
「裏切り者、ですか」
 俺はちらとネズミ耳を見た。が、刃物のような鋭い目に俺はすぐさま視線を逸らす。
「ご主人様」はそれを気にした様子もなく続けた。
「そう、裏切り者。こいつ事もあろうに私の命を狙ったのよ」
「なっ!?」
 その言葉に、俺は絶句する。正直奴隷と言う扱いではあるものの、身体を幾度も重ねた「ご主人様」にはそれなりに愛情の念があった。
 その「ご主人様」の命を狙っただと?
 目の前のネズミ耳にふつふつと怒りがわいて来る。
 そして、この状況、俺が呼び出された理由も検討がついた。
「わかりました。俺がこいつを拷問にかけて誰の差し金か吐かせればいいんですね!」
 俺は上着を脱ぎ捨てるとシャツの袖を巻くってネズミ耳に向かって進む。
 が、「ご主人様」は、
「違うわよ。黒は拷問なんてしたことないでしょ?」
「ええ、まあ」
 言われてみればそうだった。
「拷問って難しいのよ? 特に情報を聞き出すためのはね。殺さないように、でも苦痛は最大限に。そこの匙加減は素人には分からないわ」
 なるほどごもっとも。でも「ご主人様」えらく楽しそうに語ってますが怖いです。
「でも、そしたらなんで俺をここに?」
 尋ねると「ご主人様」は笑った。
「ご褒美よ」
「ご褒美?」
 思わず鸚鵡返しにすると「ご主人様」は続けた。
「こいつを黒に上げる。ここにあるものも自由に使っていいわ。こいつで遊びなさい」
 言って、ネズミ耳を指差し、次いで部屋全体をぐるりと指した。
 俺はごくりと唾を飲む。
「い、いいんですか」
「ええ。黒はよく私に尽くしてくれてるし、私もしばらく黒に構ってあげられそうにないのよ」
「え、どう言うことです」
「大きなお仕置きをしなくちゃならないから。――こいつを差し向けた大元の連中にね」
 そう言った「ご主人様」の笑みは酷薄なものだった。
 
 ◇
 
 私がいない間はその子の言う事を聞いているのよ。
 そう「ご主人様」は犬耳を指差し、牢――拷問室を出た。
 部屋に残されたのは俺と犬耳と――裸で転がされたネズミ耳。
 俺は好きにしろと言われたものの、どうしたものかわからずに犬耳を仰ぎ見た。
 が、犬耳はこちらを見向きもせず、つかつかと靴を鳴らしてネズミ耳に近づいた。そして、作業台のような机に置いてあった鞭を手に取ると、思いきりそれをネズミ耳に振り下ろした。
 風切り音と水面を叩いたような音が響く。
「あうっ」
 ネズミ耳は小さく悲鳴をあげると、叩いた犬耳を睨んだ。
 しかし犬耳はそれにひるむ事もなく、同じくらい鋭い視線で睨み返していた。
「よくもまあ、ご主人様のお命を脅かすような真似を……!」
 普段は温厚なはずの犬耳が怒りに震えていた。
 彼女は犬らしく忠義に厚い。それだけに「ご主人様」からの信頼も厚いのだ。
 聞けば孤児であった犬耳を「ご主人様」が引き取ったのだとか。だからこそ、犬耳は「ご主人様」を狙ったネズミ耳が許せないのだろう。
「この、恩知らずめ!」
「あぐぅ!」
 再び風切り音。そしてネズミ耳の身体に新たなあざができた。そして悲鳴が上がり、細長い尾がびくんと跳ねる。
 それが数度繰り返されて、犬耳はようやく叩くのを止めた。はあはあと肩で息をしながら、俺の方を向く。
「……ごめんなさい。黒の物に傷をつけてしまいました」
「い、いや。別に構わない。犬耳もこいつが許せない気持ちは分かるし」
 そう言って俺は引きつった笑みを浮かべた。
 ところでどうでも良い事だが、俺は犬耳メイドを「犬耳」と呼んだが、実はここだけ日本語だ。あんまり犬耳、犬耳と日本語で呼ぶもんだから、既に愛称のようになっている。もちろん、彼女はこれがそんな直球な意味だとは知らない。
「ところで、好きにしていいって言われたけど、どうしたらいいだろう?」
 すっかり困り果てている俺は、責められるほうはプロだが、責めるのはまったくのド素人だった。
 


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