第五十一話 麻帆良祭初日
見事なまでに快晴の空の上を、数台のプロペラ機が轟音を奏でながら引き裂いている。
一塊で一直線に飛んでいたそれは、色とりどりの煙を吐き出しながらやがて方々へと散っていく。
それこそが、麻帆良祭開催の引き金でもあった。
麻帆良学園各所にて上げられていた気球からは紙吹雪がばら撒かれ始めていた。
「只今より第七十八回、麻帆良祭を開催します」
学内放送にて麻帆良祭開催の宣言がなされ、主要な大通りではパレードが動き始める。
仮装した生徒のみならず、巨大なバルーンからヌイグルミ、果ては戦車やロボットまで。
紙吹雪が舞う中で麻帆良祭開催を祝うように、練り歩いていく。
学園中、街中に歓声と拍手が渦巻き、学外からの一般入場者も始まっていた。
パレードの見物客も一分一秒ごとに増え、それに伴い歓声もまた留まるところを知らないようであった。
各所で始まったイベントもスタートしており、学園都市総出で大盛り上がりを見せていた。
「人ごみにもまれたら、私死ぬかもしれませんね」
大盛り上がりの大通りへと続く路地裏、そこからパレードを眺めていたムドが一人呟いた。
半そでのティーシャツにベスト姿、普段のスーツ姿とは異なる衣装であった。
手には麻帆良祭のパンフレットを手に、再びムドは路地裏へと歩みを進めていく。
今のところ、世界樹の魔力放出による体調は特に影響は出ていない。
そんなムドが向かう先は待ち合わせ場所、何時も使うスターブックスであった。
相変わらずの盛況を見せるお店の前にたどり着き、待つ事十数分、エヴァンジェリンが現れた。
フリルドレスに、ベレー帽と気合十分であるのに、何故か酷く息切れをしている。
「エヴァ、何故いきなり疲れてるんですか?」
「いや、なに……ちょっとな」
「坊ヤヲ、オイカケマワシテタンダヨ。イジメッ子ダ、イジメッ子」
「兄さんを苛めちゃ、駄目ですよ。そんな事よりも、私といた方が楽しいでしょう?」
差し出された手を握り、まあなとエヴァンジェリンは否定はしなかった。
「坊やが何か面白そうなモノを持っていそうだったからな。まあ、いい。それで、ちゃんとデートコースは考えてあるんだろうな?」
「もちろんです。ただ、付き添い有りだとは思いもしませんでしたが」
「ケケケ、御主人ハ恋愛ニツイテハ結構ビビリダカラナ」
「お前が暇だ暇だと言うから連れ出してやったのではないか、嘘をつくな!」
ムドの言う付き添いとは、エヴァンジェリンと共に現れた茶々ゼロの事であった。
セーラー付きのワンピースにハット帽と、こちらもおめかししている。
二人して色々と言い合ってはいるが、どちらが付き添いを言い出したかは分かりきっていた。
何しろ初エッチの時も、エヴァンジェリンは茶々丸に手を繋いで貰っていたのだ。
初デートもどうして良いか分からず、茶々ゼロについて来てもらったのだろう。
「ほら、エヴァ行きますよ。時間は貴重ですから、ね?」
「う、うむ……良いな、茶々ゼロ。邪魔だけはするんじゃないぞ」
「ハア……帰ッチマオウカ。ンジャ、シッポリシケコンデロヨナ」
「待て、帰るな。頼む、ついて来てくれ!」
ついにはエヴァンジェリンが本音を暴露したりと、ぐだぐだなスタートでデートは始まった。
一度大通りへと向かい、まだ始まって間もないパレードを見ながら歩く。
まだアーニャとしかした事のない恋人繋ぎで手を繋いでだ。
最初は緊張気味だったエヴァンジェリンも、歩くうちに気分は和らいだらしい。
途中から、人が斬りたいと月詠のような事を呟いている茶々ゼロは完全無視であった。
そして何時しか大通りを外れ、麻帆良祭の中でも人が閑散とした区域に足を踏み入れていた。
「おい、一体何処までいくのだ。もう学園都市の外れだぞ」
「もう見えてます。あそこ、遊覧飛行船です。お茶も飲めるそうですよ。アトラクションや見世物より、エヴァはこういうのが好みでしょう?」
「確かに、言われてみれば学生でも大学生以上か、大人のカップルばかりだな」
建物が何も無い飛行船が固定された敷地内に、一目で学生と分かる人は少ない。
実年齢は兎も角、幼く見られがちなエヴァンジェリンは、大人な空間が好きだ。
囲碁や茶道などを趣味に持つのは、精神が大人であると示す部分が少なからずあった。
ムドの読み通り、搭乗チケットを買い遊覧船に乗り込む間に多少待たされてもエヴァンジェリンは上機嫌のままである。
数少ない幼いカップルとして遊覧船に乗り込み、しばらくして出航となった。
「はい、エヴァ。お茶、貰ってきました。良い眺めですね」
「私などは、この程度の高さ、飛び慣れているのだが……紅茶を飲みながらだと、また格別だな」
展望台になっている乗客室、その周囲の手すりには、丸型テーブルが溶接されていた。
そこに紅茶のティーカップを置きつつ、ガラス張りの向こうに広がる麻帆良学園都市を眺める。
先程まで隣を歩いていた行列のパレードが一望でき、世界樹でさえも下に見えてしまう。
安物の紅茶でも、そんな光景が茶請けであれば十分過ぎた。
紅茶の味にうるさいエヴァンジェリンでさえも、美味しそうに飲んでいる。
もしくは最高の景色を前に、金銭的に高い安いは無粋だとでも思ったのだろうか。
「オイ、酒ハネーノカヨ。サービス悪イゼ」
茶々ゼロの言葉には少しムッとしていたが。
「もしくは、お前と二人きりで紅茶を飲んでいるからか?」
「無視カヨ」
紅茶に口をつけ、茶々ゼロは完全無視の方向でムドへと向けて微笑んでいた。
魔法使いから闇の福音と恐れられる吸血鬼にはとても見えない、陽だまりのような微笑であった。
そんなエヴァンジェリンの手を握り、ムドもまた微笑み返した。
「そうですね、最近は紅茶よりアッチ優先でしたからね。かと言って、二月の頃のようなのは勘弁ですが」
アーニャに隠れて、エヴァンジェリンに足コキされた一件の事である。
刹那や千雨と色々従者に酷い目にもあわされたが、アレもまた酷かった。
「あの頃はまだお前をただのガキとして見てなかった、それに今なら、隠さず三人でもいけるだろう?」
「本番はまだNGですけどね。姉さんからも、危ないからと止められてますし」
「体格は私と同じだろうに。全く、私に見せた強引さは何処へ行ったのだ。明日菜の件もそうだ。ほら、強引に奪ってみろ」
「素直にキスがしたいって言えば、しますよ」
テーブル越しに身を乗り出し、エヴァンジェリンが唇を突き出すようにしてきた。
カップルが多いだけあって、幼い外観の二人がキスをしようとしても誰も気付いていない。
ならいいかなと、ムドもまたテーブルから身を乗り出して唇を重ね合わせる。
小さくちゅっと触れる音が二人の耳にだけ届き、そのまま静かに時が流れていった。
唇を合わせるだけの幼い行為ではあったが、奇妙な程に胸が高鳴り、二人共顔を赤くしていた。
やがて唇を離し、照れくさそうに笑いあう。
「あっ」
周りのカップルと同じく二人だけの空間を作る中で、そんな声が割り込んできた。
無理に連れて来た茶々ゼロなら兎も角、無粋な声にピクリとエヴァンジェリンの眉が押しあがる。
そんなエヴァンジェリンを撫で付けて宥め、ムドは声の方に振り返った。
「兄さん?」
「う……うん、ごめん邪魔して」
そこには、気まずそうに視線をそらすネギがいた。
昨日の超の件でも思い出しているのだろう。
だが特にあの件そのものには興味のないムドは、別の事に興味を引かれてしまっていた。
「まさか、その格好で一人ですか?」
その格好とは、デフォルメされたライオンのキグルミであった。
一応顔こそヌイグルミの顔部分が丸く切り取られ出ているが、他は全てすっぽりはまっている。
カップルだらけのこの場所で、しかもそんな格好で何をしているのか。
ムドならず、エヴァンジェリンや茶々ゼロも不審に、むしろ哀れみの瞳で見ていた。
「ち、違うよ。夕映さんも一緒で、トイレに行って帰って来たら通路の右と左を間違えて」
「従者とのデートがキグルミって……兄さん、まずいですよ」
「綾瀬夕映も、自分が馬鹿にされた気分ではないのか? 同じ女として、可哀想になるぞ」
「帰リニ後ロカラ、刺サレルンジャナイノカ?」
ネギのフォローも火に油を注ぐ結果にしかならなかった。
「これは、理由があってその!」
「とりあえず、忠告はしましたからちゃんと着替えてあげてくださいね。それから」
慌てふためくネギの肩に手を置いて落ち着かせ、ムドはその瞳を覗きこんだ。
哀れむでもなくからかうのでもなく、真剣なその眼差しにネギが口を閉ざす。
またしても昨日の一件、特に本気を見たいと言ってしまった事を思い出し始める。
そのネギが視線をそらすより早く、ムドは伝える事にした。
「兄さん、麻帆良祭の期間中に武道大会があるのを知ってますか?」
「え、うん……古さんが去年優勝したとか。今年も出るから、僕も腕試し程度に」
「あ、何処に出るのか決めてるんですか。なら丁度良かったです。私も、出ますね?」
「え!? だ、だってムドは……」
喧嘩の再来に脅えた為か、ネギは言葉を選びきれずにいた。
「本気です。本気で、武道会に出ますよ」
「本気、なんだ」
「ええ、本気です」
ムドの本気という言葉に、ネギはやや過剰な反応を見せていた。
心配そうにムドの体を伺っていた表情から一変、押さえ切れない感情を拳に込めて握り締めている。
戦力差はどう考えても明らか。
だというのに、まるでライバルを前にしたように気分を高揚させていた。
もっとも、キグルミの姿であったので、少しばかり滑稽でもあったが。
「あ、ネギ先生。こんな……ムド先生に、エヴァンジェリンさん?」
「おや、お揃いあるネ」
ムドとネギの間で僅かながらでも緊張感が走る中、夕映と超がやってきた。
トイレに行ったきり帰って来なかったネギを探しにでも来たのだろう。
夕映は水色のワンピースに白いフリルのエプロン姿である。
ネギのライオンと合わせ、実はオズの魔法使いの格好だったのか。
超の方は超包子の文字が入ったウェイトレス姿で、仕事の途中に抜け出したらしい。
「ネギ先生、実は……」
「あはは、夕映サン。冗談と判断したのなら、言わなくてもいいネ。私が火星人だなんて」
笑いながら超が言った火星人という言葉に、ピクリとムドは耳をそばだてた。
これが常人であれば笑って見逃す所だが、そうはできない理由があった。
ムドやエヴァは、先日にフェイトから魔法世界の真実を聞かされたばかり。
さらにその台詞が麻帆良最強の頭脳からであれば、ただの冗談には聞こえない。
少しカマを掛けてみようかと、ムドは冗談を冗談と受け取ったように笑いながら言った。
「麻帆良最強の頭脳も冗談を言うんですね。なんというか兄さんの受け持ちである三-Aに所属するだけの事はありますね」
「ふふ、お褒めに預かり光栄ネ」
もちろんムドとて、麻帆良最強の頭脳と言われる超にカマを掛けたりしない。
掛けるのはと、さも今思い出したようにネギへと話を振った。
「そうそう、兄さん。少し前にエヴァが追いかけ回したみたいですみませんでした。何もとられませんでしたか?」
「うん、大丈夫。このタイムマシンは無事に、あっ……」
「兄さんまで冗談に乗って、三-Aに染まっちゃいました? 火星人にタイムマシンですか。冗談は区切りよく終わらせないと、効果的ではないですよ?」
「そ、そうだね。気をつける」
懐中時計のような物を取り出して直ぐ、ネギは懐へと戻していた。
それを確認直後、ムドはエヴァンジェリンと手を繋ぎ、その場を離れようと踵を返す。
「それじゃあ、私はエヴァとのデートを続けますから。失礼します」
「坊や、二度はないぞ。私達の邪魔をするな」
戸惑うネギと夕映、一人瞳を光らせる超を置いて二人はその場を離れていった。
とは言っても、そう広くはない飛行船の展望台である。
数メートルも行かない内に現れた角を曲がり、お手洗いの前で立ち止まった。
「エヴァ、確かめたい事があります。今から影の扉で外に出られませんか?」
「お前が何をしたいのかは、分かっているつもりだ。スターブックス近くの路地裏で良いか?」
「ええ、お願いします」
そう確認し合い、二人は男性用お手洗いの個室に駆け込んだ。
人目がない事はあらかじめ、確認済みである。
個室の中にてエヴァンジェリンが影の扉を生み出し、その中へと沈んでいく。
全身に魔力が絡みつき、ムドには辛い移動方法だがそれでも確かめなければならない事があった。
濃密な魔力と暗闇に包まれ、次の瞬間には飛行船の外である。
エヴァンジェリンが宣言した通り、待ち合わせに使ったスターブックス近くの裏路地だ。
「エヴァは使い魔を方々に飛ばして、飛行船外に兄さんがいないか探してください。場所は新体操部、馬術部、漫研部、演武会、占いの館です」
「なるほど、奴の従者が出し物をしている場所だな。教室の出し物はどうする?」
「この時間なら、亜子かアキラさんが当番のはずです。そちらは私が電話で聞きます」
エヴァンジェリンが使い魔の蝙蝠を空に放つ中、ムドは携帯電話を亜子に掛けた。
だが数コール鳴っても取っては貰えず、今度はアキラに掛けてみる。
すると二コール目ぐらいで着信され、アキラの声が受話器の向こうから聞こえた。
「もしもし、ムド先生? あの、今私あまり時間がないです」
「分かっています。少しだけ、そちらに兄さんは来ませんでしたか?」
「長瀬さんと一緒に来たよ。開店当初、十時過ぎにだと思う」
「そうですか、ありがとうございました。あ、水泳部のたこ焼き屋は行きますね」
待ってると好意的な言葉と共に、電話は切られた。
どうやらネギは担任の先生らしく、麻帆良祭開催と共に自分のクラスの出し物に向かったらしい。
それが十時過ぎに楓と共に。
だがムドとエヴァンジェリンが乗った飛行船もまた、麻帆良祭開催直後である。
きっちり十時ではなかったが、第一号の飛行船であった事は間違いなかった。
「おい、ムド……坊やはまだ飛行船内で綾瀬夕映や超鈴音と話しているのだが。中華娘と武術研で演武会をしていれば、雪広あやかと告白阻止の仕事もしているぞ?」
「麻帆良祭開始直後には、楓さんと一緒にクラスの出し物にも見に来たそうです」
改めて状況を整理してみた。
麻帆良祭の各所に、それぞれ従者と共にネギが同時出現している。
エヴァンジェリンがネギ本人を傀儡のようなものと間違えるはずはない。
それに、それぞれネギには従者がついており、偽者とは考え辛かった。
ならばどのようにして、ネギは同じ時間に同時出現しているのであろうか。
やはりキーワードは、タイムマシンで間違いないだろう。
「馬鹿らしくもありますが、兄さんは誰かからタイムマシンを手に入れて同じ時間を別の従者と繰り返している」
「いや、一概に馬鹿らしいとは言えんぞ。どんな不可能な事象であろうと、可能にしてきたのが人間だ。ネットやテレビ、自動車に飛行機それら全てもかつては不可能だったんだ」
さすがに長く生きているだけあって、エヴァンジェリンの方が柔軟に受け止められているらしい。
「その不可能を可能にしたのは誰か」
「超鈴音だろうな。茶々丸のハードを作ったのはハカセだが、理論やソフト全般を作ったのは奴だ。そして最後のキーワード、火星人」
「魔法世界は、厳密な意味では火星じゃない。けれど、フェイト君が懸念する魔力の枯渇が起きれば厳密な意味で火星となる。超さんは、その火星からタイムマシンでこの時代に来た」
「その理由は幾つか、考えられる。魔法世界の崩壊を止めたい。または、崩壊前に魔法世界から人を移住させる。後者は無理らしいがな」
崩壊を止めたい、または止める方法を知っているのなら麻帆良にいる意味はない。
魔法世界へと赴き、崩壊の原因を止める為に奔走するはずだ。
何しろ超が麻帆良にやって来たのは二年前だと、学園長から奪った資料にはあった。
二年も前にやって来ていながら、何故この麻帆良に留まり続けているのか。
つまりは崩壊を止める以外の方法で、何かしら行動を起こすつもりなのだ。
単純に人が生きられる環境ではない火星から一人逃げ出しただけなら良いのだが。
「フェイト君に連絡しておいた方が良さそうですね」
「お前がそうしたいのなら止めないが……まったく、折角のデートが台無しだ。埋め合わせはちゃんとしろよ? 今すぐ穴を埋めては貰うがな」
「仕方がないですね。でも認識障害は使ってくださいね」
路地の壁にムドが背中を預けると、その正面にエヴァンジェリンがしゃがみ込んだ。
一応認識障害を張りつつ、ズボンのファスナーを降ろし、ムドの一物を中から取り出した。
勃起前の一物をぱくつき、あむあむと少しずつ食べていく。
その一方で、ムドはエヴァンジェリンの頭を撫でつつ、もう一度携帯電話を手に取った。
メモリからフェイトの番号を選び出し、通話ボタンを押す。
少しずつ大きくなる一物をぴちゃぴちゃと舐める音と、着信コールを同時に聞いていた。
「もしもし、ムド君。どうかしたのかい?」
「ぁっ……駄目です、フェイト様。声が、ぁっ、いやぁ……」
フェイトの声と同時に聞こえたのは、艶を持つ栞の声であった。
どうやら、あれからフェイトも色々と手を尽くしては従者を満足させているらしい。
「少し、耳に入れておきたい事ができました。火星人とタイムマシン、これを聞いて何を思い浮かべますか?」
「んふぅ……大きくなって、ぁっ、顎が外れんっ。ムド、気持ち良いか?」
「魔法世界の事かな? もし仮に、火星に投げ出された人間が生き延び、タイムマシンがその手にあったのなら、過去に戻りたいと思うだろうね」
「フェイト様、電話を……駄目、ぁっぁっ……ゃっ良ぃ、聞こえてしまいます」
お互いに従者を慰めつつ、顔と思考だけは真剣に連絡を取り合っていた。
「麻帆良学園には中学三年生で最強の頭脳と呼ばれる生徒がいるのですが、どうも兄さんにタイムマシンを渡したみたいなんです。しかも、当人は冗談めかして火星人だと」
「んっ、んっ、この匂いを嗅いでいるだけで濡れて……ムド、早くしろ。それとも、このまま出させてやろうか?」
「未来の技術を知っていれば、最強の頭脳と呼ばれてもおかしくはないね。そう、連絡してくれて助かったよ。その子、邪魔だね」
「はぅぁっ、ぁゃっ……イク、フェイト様。私、お電話中に……ゃっぁ、ぁっイ、クゥぁっ!」
栞の果てる声が受話器から大きく漏れたが、ムドは一呼吸置いていた。
フェイトの従者である栞の声ではなく、あくまでエヴァンジェリンの愛撫で射精する事を示すように。
一旦、無言になった携帯電話を耳から話してエヴァンジェリンの頭を両手で掴んだ。
そしてそのままエヴァンジェリンの喉の奥で射精するよう、腰を前に突き上げた。
「んーっ、んごぅ……んく、んく」
「エヴァ、気持ちよかったです。もう少しですから」
最初は突然の射精に目を見開き驚いてむせたが、直ぐに持ち直し精液を飲み始める。
小さな喉を一生懸命動かして、エヴァンジェリンは一物に吸い付いてきていた。
亀頭を始め、竿には舌やすぼめた口の壁で扱き、さらなる射精を促がしてくれる。
ありがとうとばかりに頭を撫でつけ、ムドは再び携帯電話を耳に当てた。
「一応は兄さんの教え子ですし、とりあえず斬るというのは避けたいのですが」
「僕も無意味な犠牲は避けたい。直ぐには無理だけど、遅くとも明後日には麻帆良に行くよ。それまでに、できるだけその子の情報を集めて貰えないかな?」
「分かりました。じゃあ、麻帆良祭の三日目ですね。その時に、私の従者も全員紹介しますよ。自慢じゃないですが、可愛い子ばかりです」
「そう、なら僕も従者を全員連れて行くよ。その時が楽しみだ。じゃあ、悪いけれど調査の方は頼んだよ」
そう言ったのを最後に、フェイトの方が通話を切ってきた。
それにしても従者に優しくする術は憶えたらしいが、まだ褒める事を知らないらしい。
三日目に合ったら、その辺も少し教えてあげようと携帯電話をポケットにしまい込んだ。
超の事を調べる前に、まずはエヴァンジェリンの埋め合わせをしなければならなかった。
勃起し、射精した一物を咥え、まるで血を吸うようにちゅうちゅうと吸い付いていた。
「お待たせしました、エヴァ。どうして欲しいですか?」
「んっ……ここじゃ、服が汚れるからな。後ろから、ショーツ降ろしてくれ」
一物から顔を離したエヴァンジェリンが、立ち上がって壁に手をついた。
腰をやや突き出し、催促するようにお尻をふりふりと振っている。
ムドは後ろから抱きつき、ふさふさと背中の上で揺れる髪に顔を埋めながら手を伸ばした。
スカートの中にではなく、ささやかなふくらみを持つ胸へだ。
「あん、馬鹿者……もう十分に濡れて」
「駄目です。ただでさえエヴァの中は狭いんですから。怪我をしないように、愛撫はしっかりしておかないといけません」
服の裾から中に手を伸ばし、ささやからふくらみへと手を伸ばしていった。
ムドの小さな手の平で胸を包み込み、その先端にある蕾を指先で引っかくように弾く。
あまり強い刺激は痛みしか与えない為、身長にじっくりと乳首を責め上げる。
弾かれる度にピクリと反応するエヴァンジェリンを楽しみつつ、器用に竿でスカートをまくり上げた。
僅かな布地に包まれる股の間に食い込ませ、割れ目の上を滑らせる。
「やっぱり、また上手く……合気道、教えてぁっ、正解だったな。んっ、ふぁっ」
「完全に副産物ですけどね。エヴァの胸だけで、イかせてみせましょうか?」
「こら、下を責めるのを止めるなぁぅんっ。止め、乳首気持ち良い。凄い、胸が小さくても感じる。乳首、乳首でイク」
「小さくなんてないですよ。ちゃんと胸、ありますから。乳首じゃなくて、胸でイクんです」
感じ入る度に、エヴァンジェリンは足元がおぼつかなくなってしまった。
壁につけた手はずり落ちガクガクと膝を揺らしている。
半分以上はムドの竿に体重を預けてしまっており、その分お尻が持ち上がり始めていた。
それでも執拗に胸を、または乳首を責められついには壁から手が離れてしまった。
崩れ落ちる寸前、ムドが腰を下げてエヴァンジェリンを持ち上げるように後ろの壁に背をつけた。
「す、すまんっ、力が……入っ、イク。もう、胸をいじられてふっ、ぁっくぅぁっ!」
軽く果てたエヴァンジェリンが、体を捻って振り返りキスを求めてきた。
それにムドも答えながら、一度なんとかエヴァンジェリンに立ち上がってもらった。
中腰の背面座位から、正面を向き合いショーツをずらして秘所に亀頭を添える。
そして一気に挿入すると同時に、首に腕を回させ再び腰でエヴァンジェリンの全体重を支えた。
かなり腰に負担はかかるが、全体重を受けた分だけ一物がエヴァンジェリンの膣内を蹂躙していく。
口で精液を受け、胸で軽くとはいえ果てて、既に十分に潤っている。
膣の途中で立ち止まる事すらなく、亀頭が一気に最奥にある子宮口を突き上げた。
子供の姿の時には、エヴァンジェリン以外に誰にもした事がない駅弁スタイルであった。
「ひぅっ……ふ、かぁぃっ、あぅぁ。奥に、ゴツンって」
「エヴァ、気持ち良いですか?」
「あうぅ、ぁっ。ゴリゴリするな。気持ちよ過ぎて、馬鹿面になりゅ」
「十分、可愛いですよ」
水平に円を描くように腰を動かし、亀頭で子宮口を石臼のようにひいていく。
それによる快楽が大きすぎ、少しエヴァンジェリンの言葉使いが妖しくなっていた。
お尻に両手を添えて、背伸びをしては地面にかかとを打ちつけ、衝撃で突いてみる。
より体を密着させたエヴァンジェリンが耳元で、たどたどしく囁いた。
「ふぁ、ぅぁ……もっと、ぴょんぴょんしろ」
要望に答え、膝の力と重力に任せてエヴァンジェリンの中を突き上げる。
一物が膣より引き抜かれる度合いは浅いが、突き上げ方が半端ではない。
何しろエヴァンジェリン一人分の重さが全て亀頭にかかり、子宮口に叩きつけられるのだ。
突かれる度にエヴァンジェリンは痙攣するように体を震わせ、味わっている。
それに伴い愛液の量も増え、スカートの中は飛び散ったそれで汚れてしまっていた。
汚れを気にして当初バックから始めたのだが、これでは早々に着替えなければならないだろう。
だが今は純粋に抱き合う快楽をと、ムドはエヴァンジェリンを責め続けていた。
「ぁっ、ぁっ……ふんぁ、良い、気持ち良い。ムド、もっと後少し、ぁぅ」
「行きますよ、スパート掛けます。何時でも、好きな時にイってください」
「ぁぁっ、んぁっ。は、はや……んきゅっ、突き過、ぁっぁっ……イ、ゃぁ、あぅぁっ。イクぅぁっ!」
「ふぐぅ、んっ!」
エヴァンジェリンが果てると同時に、ムドも膣の最奥にて精液を迸らさせた。
子宮口に密着させた亀頭の鈴口から、子宮壁に叩きつける。
隅から隅まで、ムドの遺伝子をエヴァンジェリンの中に埋め込んでいった。
「ぁっ、熱……溢れる、ムドが一杯……もっと、精液欲しい。ムド、愛してる。好き」
「私もです、エヴァ。愛してます、これからもずっと」
「もっと言ってくれ。それだけで、イクぅっ!」
「愛してます、貴方を愛しています!」
叫ぶと同時に更に射精しては、子宮の中へとさらに精液をどろりと流し込んだ。
やがて膣の中を逆流した精液がぷしゃっと音を立てて、外へと流れ出した。
一部はエヴァンジェリンのお尻を流れ、一部は路地裏の汚れた地面の上にぽたぽたと落ちる。
もう子宮の中にさえ収まり切らない合図であるというのに、二人はまだむさぼりあっていた。
「んっ……ムド、漏れた分だけもっと。はぅっ、ん」
「ぐっ、あぅ……もう、出な。出る」
ムドはまだ子宮を犯そうと終わらない射精を続け、エヴァンジェリンもそれを受け止め続けた。
二人共に終わる切欠を何か待つように、抱きしめあい、キスを続けている。
その切欠は、はっきりとはしなかったが確実にムドの体に影響を及ぼしていた。
「うっ」
小さく呻いたムドは、元から膝の力が抜けていたがさらに抜けるのを感じた。
しかも、エヴァンジェリンへと射精して魔力を抜いたばかりなのに、熱が高まり始める。
まるで周囲の魔力が一時にでも増加してしまったような、奇妙な感覚。
それに気付いたムドは、ポリバケツの上にハンカチを敷き、脱力中のエヴァンジェリンを座らせた。
一応は男の意地で、その場に座り込む事はなかったが、性交とは関係なしに脂汗が流れ始める。
「ムド、おい大丈夫か? 魔力が抜き足りないなら、もう二、三度。わ、私は全然構わないぞ?」
「いえ、そうではなくて……まさか、誰かが?」
惚けていられないとエヴァンジェリンに心配され、そうじゃないと微笑み返す。
思い浮かんだ理由は一つ、誰かが魔力溜まりの六箇所で告白行為を行い世界樹が活性化した可能性だ。
何処かの魔法先生か生徒が告白阻止に失敗したのか。
それを憂う中で、ムドの携帯電話が緊急招集の為にか鳴り響き始めた。
「も、もしもし?」
「ムド様、大変です。ネギ先生が世界樹の魔力を受けて暴れて明日菜さんが!」
受話器の向こうから聞こえたのは、焦る刹那が叫ぶ声であった。
-後書き-
ども、えなりんです。
ムドとフェイトは狙ってやっているのだろうか。
連絡取り合ったり会ったりする時、必ずやってる。
そのうち穴兄弟になるための共通の従者ぐらい用意した方が良いのか?
二人なら取り合わず、仲良く半分個しそう。
あとムドの武道会参加フラグ、というか自分で出るって言いました。
ネギと戦うまで持つのだろうか。
もちろん予選突破すら危ういのでアーティファクトでずるしたりします。
それでは次回は土曜日です。