第三十九話 アーニャの気持ち
月曜から始まった修学旅行明けは、休日の土曜であった。
まだまだ旅行の興奮が冷めやらぬ間に、三-Aの面々はどう過ごしているのか。
はっきりとしているのは、ネギとその従者達の行動である。
相も変わらずというべきか、修学旅行前よりもより一層真剣に修行に明け暮れていた。
特にネギの真剣みは並々ならぬものであった。
同年代と思しきフェイトに、一矢報いる事もできずに無様に敗北してしまったのだ。
一心不乱に、修学旅行から帰って来た昨晩から修行しようとしてネカネやアーニャに止められたぐらいである。
そして本人の意気も凄いが、従者達のやる気もみなぎっていた。
規模こそそれ程ではなかったが、本物の戦を体験したのだ。
実際に戦い、先達である神鳴流剣士や呪術師を間近で見て得られる事も多かった。
後発組となるあやかもまた、遅れを取り戻そうと必死についていっている。
その中に、ムドがあえて教えたわけでもないのにハルナが混じっていた理由は定かではない。
ただどうせ近いうちに教える予定ではあったので、そのまま放置である。
そんなわけでエヴァンジェリンの別荘は、南国とはまた別の熱気に満ち溢れていた。
特にネギ達が立ち入りを禁じられたとある一室は。
「ん、はぃ……て、あゃっ。はぅぁ……」
「エヴァの中、やっとほぐれてきましたよ。いつもいつも、締め付け過ぎです。結構、痛いんですよこっちも」
「煩い、お前が大きいゃ……奥、までぇ」
ダブルサイズのベッドの上で、南国の陽よりも熱くエヴァンジェリンとムドが絡み合っていた。
正状位のまま手を重ね合わせ、ムドの一物を奥までエヴァンジェリンが受け入れる。
もう既に二度程放っている為に、秘所から溢れんばかりに愛液と精液が居場所を失い流れ出す。
他にも南国の熱気により二人共大量の汗をかき、陰部ばかりか全身が濡れていた。
粘性の軟体動物のように濡れた体を結合させつつ、擦りあわせる。
そして熱気により体液が蒸発しては部屋の中に匂いがこもり、麻薬のようにさらに二人の脳を痺れさせていく。
「それではぅ……何処まで、んっ動くな馬鹿。頭が働かんだろうぁっ」
「完全なる世界についてです。二十年前に紅き翼が活躍した戦争を裏で糸を引いていたとか」
「そうだった。んぁっ、ならそれで全部だ。麻帆良に閉じ込められる前後の新しい世情には疎いからな。集めるゃ……ぁっ、くりゅ。イク、はぁっあッ!」
エヴァンジェリンが暴れるため、貼り付けにするように重ねた両腕を目一杯広げる。
さらに追い討ちをかける様に唇を塞いだ。
ムドという存在そのものでエヴァンジェリンを窒息させるように。
ベッドの上にエヴァンジェリンを押し付け、膣の奥へと精液を流し込む。
その度に嬌声を上げて暴れたいのに、ムドがそれを邪魔をする。
もちろんエヴァンジェリンが本気になれば別だが、その抵抗感そのものを楽しんでいた。
そしてありったけの精液を流し込まれてようやく、エヴァンジェリンが大人しくなった。
「はぁ、はぁ……くぅ、んっ。たまには、一人で愛されるのも良いものだ。まだ、出るのか。この底なしが」
挿入により下腹部の盛り上がった部分を撫で付けながら、妖しくエヴァンジェリンが微笑む。
まだと言いながら、もっと射精を促がすように外側から刺激する。
「うっ、ん……エヴァが頼んだんでしょう。私は別荘に入るの嫌いなのを知っていて。魔力が濃い空間だから体調が悪くなるんですよ?」
「その分、濃いのを出させてやっただろう。それと、アーニャと過ごせる人生が一日でも減るのが嫌なんだろう。知ってて、誘ったさ」
「でも、そうとばかり言えなくなってきてるのも分かってます。抜きますよ」
「待て、抜くな。まだこのまままどろんでいたい」
そう言われては無理も言えず、挿入したまま上と下になっていた体を横に転がす。
言葉通りムドの腕の中で猫のように瞳を閉じてまどろむエヴァンジェリンを撫でる。
それぞれ従者ごとに周期はあるが、一人で抱かれたい日が訪れるらしい。
今日はたまたまエヴァンジェリンがその周期であり、ムドも聞きたい事があったから別荘に呼ばれたのだ。
「とりあえず、フェイト君の事は置いておきます。まだ私がしてあげられる事はなさそうですし」
「まあ、ないな。正直、この先もあるとは思えないが。残党とはいえ、世界を手玉にとった組織の人間だ。しかも和美が保存していた高畑と坊やとの戦いの映像を見る限りは、下っ端であるはずがない」
ムドは細かい技術戦は分からなかい素人だが、映像見るだけでその凄さは分かった。
本気で戦ったら高畑でさえ負けるのではと思えてしまう程である。
「改めて、本分に立ち返ろうと思います。私の目的は二つ。兄さんに立派な魔法使いとなってもらう事と、強い従者に守ってもらう事」
「前者はまあそれなりに進んでいるが、後者だな。実力にばらつきがあり過ぎだ。これも、貴様が勘違いして従者を大事にし過ぎたからだ。愛するなとは言わん。だがお人形として大事にもし過ぎるな」
「ええ、だから断腸の思いでこの別荘の事を話そうと思うんです。姉さんやアーニャにも、強くなってもらいます。そして、私も」
「お前が? ギャグで言っているのなら、笑えんぞ」
この馬鹿とばかりに膣を締め付けられ、ぐぅとムドが呻いていた。
だが射精を促がして出されてしまい、エヴァンジェリンも敏感になり過ぎた体で果てる。
完全なる自爆であった。
「もう、何も兄さんのようになるつもりはありません。相手の不意をついた初手をかわす程度で良いんです。それだけでも、私の生存率はグッと上がります」
「確かに、従者に粒は揃っているが奇襲に弱い事が露呈したからな。しかし、武道をするにしても体を鍛える事はある程度、前提となるぞ? それさえも耐えられんだろう?」
「何の為にエヴァを従者にしてるんですか。合気道、教えてください。奇襲を仕掛けた相手の不意をついて一撃受け流す。まずはそれが目標です」
「まあ、女子供の為の護身術としても使われるぐらいだからな。だがそれにしても流れを掴むまでは……何か、方法を考えておこう」
でもその前にと、お互いの体を半回転させた。
結果的に正状位に始まり、ぐるりと一回転、エヴァンジェリンが上になった。
ただその際により深くムドの一物が貫いてしまい、膣の中に留まっていた体液がぶしゅりと噴き出す。
強くなる圧迫感にエヴァンジェリンは、小さく悲鳴を上げて天井を見上げながら歯を食い縛っていた。
そのまま反応が途切れたので、ムドが腰でトントンと突き上げてみる。
すると既に何度もお互い果てている為、腰砕けになってムドの目の前に倒れこんできた。
白い肌は真っ赤に熟れており、目元もとろんとして正気かどうか妖しいぐらいであった。
「ばっ、ゃぁ……私が、責めるばぁっんぁ」
「エヴァに任せていたら、日が暮れてしまいます。だけど安心してください、日が暮れても気持ちよくしてあげますから」
エヴァンジェリンの小さなお尻を掴んで、どんどん突き上げる。
快楽に負けまいとエヴァンジェリンは体を小さく縮めて、ムドの胸の上で両手でそれぞれ拳を握った。
だが次第に嬌声と悲鳴が交じり合った喘ぎ声が部屋の中に響き始めた。
「あっ、気持ちひい。んぁっ、ムド……愛してりゅ、今度は裏切るな。悪に染りぇぁっ!」
「とは言うものの、しばらくは正道ですけどね」
「揚げ足を、ふぁぁ……下半身が、なくなっ、ふわふわすりゅ」
呂律が回らなくなってきたのは、特別感じやすくなってきた証拠だ。
腰の動きをややペースダウンさせ、エヴァンジェリンに自覚させる。
ムドの一物がどう膣の中を押し広げていっているのか。
挿入されるたびに溢れる、精液と愛液がどんな音を立てては流れ出て行くのか。
お互いに無毛の性器同士で、じっくりと繋がりあう。
「焦らしゅなぁ、もっと突いれ。んぁっ、ぁぅ……時間は一杯ありゅ」
「それもそうでしたね。もっと原始的に行きます」
ゆっくりな挿入を止めて、エヴァンジェリンが壊れそうな程に突き上げる。
その度に最奥の子宮口へとムドの一物の亀頭が痛いぐらいにぶつかった。
だがもはやこの状態になると、エヴァンジェリンは快楽以外に何も感じないらしい。
刹那のように痛みさえも快楽に変えたように、ムドの上でよがり狂う。
「きら、ごつごつ奥れ。ぁっ、んきゅぅぁ。ぁぁっ、ぁっイッ、イク」
「幾らでもイッてください。好きなだけ、満足してください。愛してますよ、エヴァ」
「私も、愛してる。だけど、もぅ……真っ白に、何もぁっ。考えぅぁ、ぁっ、ぁっ、はふぁぁんぁっ!」
そして再び、エヴァンジェリンが果てると同時にムドは真っ白な精液を放っていた。
子宮の中まで白く染められて、エヴァンジェリンは白目を剥きかけている。
だがそれで射精が止まるかと言えばそうではなく、無理強いするように流し込む。
半分意識もなくし、抱きつく力が弱まったエヴァンジェリンを逆に抱きしめた。
首筋に鼻先を埋めて、小さなエヴァンジェリンの体から目一杯、女の匂いを嗅いだ。
その中にほんの微かにだが自分の匂いが感じられ、興奮する。
「まら、おっき……く、なっ……」
この少女を自分で染め上げたのだと、実感できたからだ。
何度も精液を注いだ事で、内部からそれが滲んだのだと感じて一物がまた硬くなった。
上半身を起こして対面座位の体位に変えて、またムドは腰を突き上げ始めた。
まだしばらくの間、エヴァンジェリンは嬉しい悲鳴を上げ続けるようだ。
お互いの体液まみれの濃厚な時間をまる一日分、過ごしたムドは別荘から出てきた。
ネギ達にはこの別荘を知っている事を知られない為に、こっそりであった。
その頭の上には護衛代わりの茶々ゼロが乗せられている。
修学旅行中の誘拐は相手が相手なだけに運が良かっただけ。
そこで基本的には一番暇をしている茶々ゼロにエヴァンジェリンから白羽の矢が立てられたのだ。
もちろん、ベッドの上でムドが語った合気道の習得も同時平行で行う予定である。
「アーァ、ツマンネエナ。コレナラ、マダ修行ノ面倒見テルホウガ楽ダゼ。タマニ、斬ッテイイシヨ」
「ぼやかないで下さい。もし、私を襲う人がいたら殺しても良いですから。ただし、騒ぎにならない方法で」
「ヘーェ、話ガ分カルジャネエカ。シカタネエカラ、守っッテヤルヨ」
「お願いしますね、茶々ゼロさん」
小さな蝙蝠の羽根をパタパタと振って、茶々ゼロがご機嫌の様子を表す。
その茶々ゼロを撫でてから、今度はログハウスを後にした。
まずしなければいけないのは、従者を集めてエヴァンジェリンの別荘を教える事だ。
あそこならば普段の生活に支障なく、修行にも集中して打ち込める。
ただし、例え数日、数ヶ月とはいえ周囲よりも人生の貴重な時間を使ってしまうが。
教えたくはないが皆や自分の安全には欠かせないと、携帯電話を手に取った。
「ムド? エヴァンジェリンさんとのお話は終わったの?」
「ええ、つい先程といいますか。とにかく終わりました」
通話先のネカネに一先ずそう答えておく。
ほぼ間違いなくただれた話し合いであった事はバレているだろうが。
「アーニャは寮の方にいますか?」
「皆と一緒に人払いが掛けられてる森にいるわ。ムドが話してくれるのを待ってるわよ、あの子。修学旅行中は周りに気を使って深くは問い詰めなかったけど」
「一先ず、アキラさんに説明した内容を流用します。魔力を抜く為に、姉さん達とキスしていると。さすがに最後までとは言えませんし、まだ」
「ビビッテルダケジャネーカ。御主人ヲ、ヨガリ狂ワセラレルダケノキンタマツイテンダロ?」
ぽくぽくと茶々ゼロに頭を叩かれた。
威力は皆無ながら、言葉の棘が凄まじく痛い。
「あら、茶々ゼロさんも一緒なの。けれど彼女の言う通りよ。アーニャに嫌われるのが怖いのは分かるけど、苦し紛れの嘘はいつかバレるわよ」
「く、苦し紛れじゃないです。段階を踏んでアーニャが怒らないように」
「普通、怒ルダロ。恋人ガホイホイ、ホカノ女トキスシテタラ」
「魔力を抜く為です。命の瀬戸際です」
言い訳がましくそう呟くも、やはりアキラに同じ嘘をついた時とは違う事が理解できた。
今はそうではないが、アキラに亜子との仲を疑われた時は、最悪記憶を消せばよかった。
アキラを傷跡の旋律で攻撃しかけたぐらいなので、亜子もその程度は許してくれただろう。
だがアーニャに対しては、そう簡単にはいかない。
今さら和美や月詠、アキラが従者として増えた記憶を消しても無意味だし、消したくない。
絶対に手放したくないし、嫌われたくないのだ。
「フォローはしてあげるから、ちゃんとアーニャと話し合いなさいね」
「分かりました。姉さんも、直ぐに来てくださいね」
「はいはい、分かったから。男の子なんだから、頑張りなさい」
通話が切られると当時に、迷いからもの凄く気分が重くなった。
やや早足だった足の回転も汚泥にでもはまり込んだように、鈍くなっていく。
だがそれでも、行かないわけにもいかない。
アーニャへの言い訳はもちろん、皆にもエヴァンジェリンの別荘の存在を教えねばならないのだ。
今のままでは守ってもらうどころか、従者達自身の身さえ危うい可能性さえあった。
その為に当初の優先順位さえ目を瞑り、まずはもっと従者達には強くなってもらう。
「和美さんとか、例外はありますけどね」
「アメエナ、早速例外ヲ作ッテンジャネーヨ」
またしても茶々ゼロに、ぽくぽくと頭を叩かれてしまった。
護衛というよりは、この辛辣な口を教師代わりにエヴァンジェリンが与えたのか。
それとも単に口うるさい従者を押し付けただけなのか。
疑惑は色々とあれど、茶々ゼロの言葉もありがたく受け取りながら森を目指した。
そこは春休み以降は殆ど使われておらず、ムドも訪れるのは久しぶりであった。
何しろネギ達でさえエヴァンジェリンの別荘に立ち入るようになってからは来ていないのだ。
一ヶ月ぶりという微妙な期間ながら、それはそれで思い出深いものがある。
従者になる前の刹那と初対面を果たした場所や、ネカネやエヴァンジェリンとの初めて三人で事に及んだ場所。
それからなんと言っても、アーニャとの初めてのキスをした場所だ。
一瞬それを思い出して足取りが軽くなったが、直ぐにまた重さを取り戻す。
「はあ……想定内の怒りで済みますように」
「現実ハ常ニ、想定ノ斜メ上ダゼ。得ニ悪イ事ハナ」
ありがたいが、ありがたくない言葉を胸に刻みつつ歩くと、声が聞こえてきた。
修行中の荒々しいものではない。
丁度、休憩中なのか和気藹々と喋っている声のように思えた。
自分がいない場所ではどのような話をするのか興味があって、一歩引いた場所で茂みから覗き込んだ。
思った通り休憩中らしく、それぞれが思い思いの場所に腰を下ろしている。
「あー、疲れた。久しぶりだと、体が鈍ってるのが本当に良く分かるわ。コレで怪我一つなくあの戦いを潜り抜けられたわね」
両足を肩幅に開いた状態で伸ばし、後ろ手に支え棒をした状態で空を仰ぎながら明日菜が呟いた。
「慌てたのは最初の弓矢と亜子が危なかった時ぐらい? ……アキラが助けたから、良かったけど」
その隣にちょこんと座ったアーニャは、少しだけアキラを剣呑な表情で見ていた。
アキラだけではなく、和美や月詠へと向けても同様であった。
まだムドから詳細を聞いていない為、同じ従者である事が納得できていないのだろう。
アキラもすまなそうに目を伏せながら、大丈夫と亜子から慰められている。
そのまま亜子がアキラの肩に軽く頭を置いて、心配しないでと手を振った。
「アーニャちゃん、心配ないて。アキラはまだ、ウチの事が心配でムド君の従者やってるだけやから」
「それがいきなりアレでびっくりしたけど」
「確かに初陣がアレでは……あんな馬鹿げた数の鬼をよくも召喚したものだ」
「そない言いはりまして、アレはフェイトはんがムドはんの魔力を使って召喚したんですえ。本当、アッチ同様に底なしなお方どすえ」
アーニャや明日菜の前で性交をほのめかす発言に、真っ先に反応したのは刹那であった。
ただ発言者が月詠であったからかもしれないが、建御雷を手に取っていた。
だが次の瞬間には次元刀で近くの木の上に移動されてしまい、振るう事すらできない。
しぶしぶ座りなおした刹那や、追いかけてもらえず残念そうな月詠を見て和美が呆れる。
「休憩中まで元気だね、桜咲も月詠も。にしても……明日菜、どうかした?」
「べ、別に……なんでもないわよ」
方々に渡鴉の人見を飛ばして、スパイ映像取得の訓練をしていた和美が何かに気付いたらしい。
指摘された明日菜本人はなんでもないとは言っているが、そうであるはずがなかった。
ムドからは遠めで判別しにくいが、何やら顔に朱が差しているように見える。
心なしか伸ばしていたはずの足も、内股になって太ももを擦り合わせていた。
そういえば刹那の話では、明日菜が修学旅行中にオナニーを覚えたという話だが。
まさかと思い身を乗り出すと、木の上に座っていた月詠と目が合った。
そこで思い立ったように、唇に人差し指を伸ばしながら仮契約カードに手を伸ばした。
(月詠さん、刹那さんの背後に回って体が疼いてないか聞きながら愛撫してください。刹那さん、聞こえてますね。激しい抵抗はしないえください)
突然のムドの念話に刹那が驚いていたが、月詠の行動が速く躊躇の暇すらなかった。
「刹那先輩も、ここが疼いてはりませんか? 契約代行すると、エッチな気分になって困りますえ」
「や、止めろ月詠。くっ……こんな、ところで。皆が見ている」
「そないな事言いはっても、しっかりスパッツに染みができとりますえ。見られて、逆に感じてはるんやないですか?」
刹那の抵抗はムドの命令で封じられ、月詠は思う存分に刹那の体を堪能していた。
制服の上から胸をまさぐり、うなじに息を吹きかけながらスパッツの上から秘所を指で愛撫する。
指で押され卑猥な形に盛り上がる秘所の中で、ぷっくりと小さい珠のようなクリトリスが浮かび上がっていた。
突然の二人のレズ行為にアーニャは目が点であった。
その隣にいた明日菜は、生唾を飲み込んで見入りながら、スカートの中に手を伸ばそうか迷っていた。
「うわっ……私、あんな風に刹那さんにされてたんだ。恥ずかしいけど、こうしないと生えてこないし」
亜子やアキラはもっと大胆に、足を開いてお互いにショーツの上に手を伸ばしている。
若干アキラは戸惑っていたが、亜子に促がされてショーツの上で指を走らせた。
「なんで、皆急に……私も、少しは疼いてたけど」
「和美が周りを見てたし、きっと大丈夫やわ。だからアキラ、もっとさわってや」
そして感の鋭い和美は、自分でオナニーをしつつムドの存在に気付いていた。
結構危ないが、ムドに見えるように足を開いてオナニーを始める。
「ちょ、ちょっと皆なにしてるのよ。良く分からないけど、それっていけない事でしょ!」
「アーニャちゃんも大人になれば分かるわよ。ムドの契約代行、気持ち良くなっちゃうのよ」
ようやく我に返ってアーニャが叫ぶも、苦笑いしながら明日菜に諭されてしまう。
「憶えたての癖に、生意気言って。和美さんが手伝ってあげようか?」
「ちょっと、ぁっ……朝倉、アンタやめ。激しい、もっと優しんっ」
「明日菜のつるつるじゃん。でもその分、滑りが良くてさわってるこっちも気持ち良いわ」
「う、煩いわね。これからよ、直ぐ生えてくるんだから」
ショーツの中に指を差し込まれても、明日菜は抵抗しなかった。
状況に流されただけかもしれないが、和美もこれ幸いにと愛撫を続ける。
他の面々も明日菜や和美以上に盛り上がっていた。
刹那は月詠に押し倒されては好き勝手に体をまさぐられ、声を上げまいと必死に耐えている。
「先輩、可愛いですえ。必死に歯を食い縛り耐える表情が、ウチ……ウチ」
「誰が好き好んで貴様などに。これっぽっちもっ、気持ちよくなど。ぁっ、くあるものか」
ムドの命令に従い、懸命に耐える自分に悦に入りながら。
「アキラ、ちゃんと下の毛は処理せえへんと。んっ……はみ出てまうよ」
「言わないで。週一でちゃんとふぁ、してるけど。私、人より濃いから……」
亜子もアキラも自分の服が汚れるのも構わずにシックスナインの格好で慰めあっていた。
人払いのされた静かな森の中に、少女達の喘ぐ姿の花園が咲き乱れる。
たった一人、その花園に踏み込めなかったのはアーニャであった。
根本的に性に関する知識が乏しく、本能的にいけない事だと理解するので精一杯なのだ。
だがそう叫んでも皆は止まらず、普段聞いた事もない喘ぎ声に包まれていた。
普段楽しくお喋りする相手の口から、聞いた事も内容な声が漏れる。
「なんなの、皆……なんか怖いわよ。そうだお姉ちゃん、ネカネお姉ちゃんを呼んでくれば」
全く理解できない花園を前に、恐れさえ抱いたアーニャがそう呟き後ろに足を引いた。
そして自分へと誰も意識を向けていない事を確認して一気に走り出す。
当然、その後を追ってムドも追いかけ始める。
今のアーニャは混乱の絶頂期であり、そうとう動揺しているはずだ。
できればこの森の中で追いつき、ペースを握ればと思ったが立ち位置が少しばかり悪かった。
ただでさえ足が遅いムドに対し、アーニャは身体強化さえかけていたのである。
後ろから追っていては一生追いつけない。
「うわ、まずい」
「ケケケ、オ前ケッコウ馬鹿ダロ」
だが幸運というべきか、そのアーニャが突然走る速度を落とし始めた。
全速力から小走りに、やがてとことこと数歩歩いて止まった。
一度、皆がいる修行場の方へと振り返り、不安の表情の中に何かを秘めた表情を向ける。
「大人か。大人になればもっと……」
そして顔を真っ赤にしてから道をそれてこそこそと茂みの中へと入っていく。
「ガキハ操リヤスイナ、本当ニ」
大好きなアーニャを手玉に取った罪悪感はねじ伏せ、後をつけていった。
茂みを覗くと、アーニャはこちらに背中を向けてしゃがみ込んでいた。
白地に黒の縁取りをされたティーシャツの下に履いた赤いプリーツスカートをたくし上げているようだ。
後ろからでは、はっきりと分からないが頭が少し下がっているので間違いない。
「ここ、さわれば良いのかな。でも汚いし」
もの凄くこの先を見たいが、一人では危ないからと声をかける。
後でネカネにそれとなく聞かせ、ちゃんとした知識は教えようと思いながら。
「アーニャ、そんなところで何をしてるんですか?」
「はぅわ、わわわ……ム、ムド!?」
「ゴ開帳ッテ奴ダナ」
突然声をかけられて動揺したアーニャが、振り向き様に足をからませてしまった。
くるりと綺麗に一回転してお尻から転んだ時には、ムドに向けて足を開いていた。
ピンク色のジュニアショーツが晒され、布地の皺とは違う縦筋部分が小指の爪の先程変色している。
それに気づいているのか、いないのか。
慌てて手でスカートを押さえたアーニャが、上目遣いで睨んできた。
「痛ッたたた。きゃっ、み……見た?」
「ええ、少しですけど」
「もう、ムドのエッチ」
決してそこまで狙ったわけではないので、視線を背けながら手を差し出す。
すると責めているのか、やや微妙な声色にて怒られてから手を握られる。
普段のアーニャならば、直情的に馬鹿と言って頬の一つでも叩くはずだが。
ムドの頭上に居座る茶々ゼロに遠慮するようなアーニャではない。
自分が転ばないように気をつけてアーニャを起こすと、立ち上がった勢いのまま一度抱きつかれた。
その時に香る匂いが、普段とは違って少し大人っぽい。
とは言ってもまだミルクの匂いがコーヒーミルクになった程度だが。
それでもムドが逆に動揺させられてしまうには十分であった。
「ア、アーニャ!?」
「変なの、積極的なムドらしくない。ごめんね、からかって。はい、お終い」
「あぅ……」
お預けを喰らってしまい情けない声が漏れ、せめてと離れていくアーニャの手を握る。
その時、一瞬瞳を開いてから、嬉しそうにアーニャが微笑んでいた。
妙にドギマギさせられるが、ペースを握りなおせと自分を叱咤して、一歩アーニャとの距離を縮める。
「アーニャに、言っておきたい事があるんです。これまで秘密にしていた、姉さん達と私の関係を」
その言葉に、ハッと我に返るようにご機嫌だったアーニャの機嫌が急速に悪くなっていく。
「それで?」
やはり何かあったのかと、少し距離を置くような言葉使いで促がされた。
直前になってやはり、戸惑ってしまう。
嫌われたら、そう想像してしまうと喉が渇いて言葉を発する事を遮ってくる。
例え嘘とはいえ、キス一つの重みはムドとアーニャでは大きく異なるはずだ。
ムドにとっては所詮、体を重ねる前の挨拶のようなものでしかない。
だがアーニャのような年頃の普通の女の子にすれば、一生の問題にもなりかねないはず。
本当にムドの価値観よりの告白で許してもらえるのか。
先にアーニャを落としてから、きちんと伝えた方が良いのではと躊躇いが大きくなる。
「もう、なによ。男の子でしょ、はっきり言いなさッ」
だから例え何があってもアーニャを逃がさないように、先に抱きしめた。
繋いだままであった手の平から腕を引っ張り、抱き寄せ、深く腕の中へと誘い込んだ。
「ちょっ、ムド。ねえ、どうしたの?」
直接触れ合う事で震えが伝わったのか、心配そうに伺われ頭を撫でられた。
「私が過剰魔力で何度も死にかけた時」
「うん……大丈夫、ちゃんと聞くから」
「姉さんとキスする事で、魔力を抜いてもらっていました」
今はまだこれが限界である告白に、撫でてくれていたアーニャの手が止まった。
だからより一層、ムドはアーニャを強く抱きしめた。
振り払われたりして、逃がさないように。
「亜子とか、刹那達も?」
「はい……姉さん一人だと、今度は姉さんが倒れかねないので」
「本当に、キスしなきゃ駄目だったの?」
「耳と耳でできると思いますか?」
振り払われなかった事で少し気が緩んだのか、軽口が飛び出した。
衝撃的な告白の最中にも少しウケたのか、アーニャがクスリと笑う。
「できないわね」
「すみません、ずっとアーニャを騙していました。け、軽蔑しますか? 嫌いに、なったり……」
「馬鹿」
ほんの少し体を離したアーニャが、額をムドの額に押し付けてきた。
間近で見つめる瞳には、怒りの色は見えはしなかった。
多少、動揺したような揺らぎは見えたが、ちゃんと真っ直ぐムドを見ていてくれた。
「薄々は何かあるって気付いてたわよ。朝と晩、お姉ちゃんと研究室に篭ってたの知ってるんだから」
やはり隠しきれてはいなかったかと、抱きしめる力を強める。
「そうしなきゃ、ムドが死んじゃってたんでしょ? そりゃあ、いくらお姉ちゃん相手でも嫌だし、できるなら私が全部代わりたいわよ。けどそれで私が倒れたら、ムドが困るわよね」
「ええ、アーニャではまだ危険だと姉さんも言ってました」
「じゃあ、どうしようもないわよ。私が喚いても、仕方ないじゃない。だから……」
瞳を閉じたアーニャが、唇を差し出してきた。
「ムドの記憶を、全部私で埋めなおしてあげる」
「アーニャ、大好きです」
抱きしめていた手を肩に置きなおし、引き寄せた。
そして二度目のキスをする。
以前はアーニャが感情に任せての事であったが今回は違う。
お互いに納得し合い、同意を得ての事だ。
唇同士が触れあい形を変えながら押し合い潰れあっていく。
大人の一歩手前、長い長いキスを行いながら二人はしばらくそのままでいた。
(完全ニ忘レラレテルナ。マア、多少ハ大目ニミテヤルカ。多少ナ)
そしていい加減に痺れを切らした茶々ゼロに突っ込まれるまで、ずっと二人は唇を触れ合わせていた。
-後書き-
ども、えなりんです。
アキラにした説明をアーニャにもしました。
さて、ここでのキーワードは「仕方がない」です。
仕方がないから、認める。
理解はしたけど、納得はしてないって事ですね。
ここ重要です。
次回は久々にまき絵が登場。
ちょい、寝取りくさい感じです。
それでは、次回は土曜日です。