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No.25212の一覧
[0] 【完結】ろくでなし子供先生ズ(ネギまでオリ主)[えなりん](2011/08/17 21:17)
[1] 第二話 打ち込まれる罪悪と言う名の楔[えなりん](2011/01/01 19:59)
[2] 第三話 脆くも小さい英雄を継ぐ者の誓い[えなりん](2011/01/05 21:53)
[3] 第四話 英雄を継ぐ者の従者、候補達?[えなりん](2011/01/08 19:38)
[4] 第五話 ムド先生の新しい生活[えなりん](2011/01/12 19:27)
[5] 第六話 第一の従者、ネカネ・スプリングフィールド[えなりん](2011/01/15 19:52)
[6] 第七話 ネギ先生の新しい生活[えなりん](2011/01/22 21:30)
[7] 第八話 強者の理論と弱者の理論[えなりん](2011/01/22 19:25)
[8] 第九話 闇の福音による悪への囁き[えなりん](2011/01/26 19:44)
[9] 第十話 勝手な想像が弱者を殺す[えなりん](2011/01/29 20:15)
[10] 第十一話 私は生きて幸せになりたい[えなりん](2011/02/05 20:25)
[11] 第十二話 棚から転がり落ちてきた従者[えなりん](2011/02/09 20:24)
[12] 第十三話 他人の思惑を乗り越えて[えなりん](2011/02/12 19:47)
[13] 第十四話 気の抜けない春休み、背後に忍び寄る影[えなりん](2011/02/12 19:34)
[14] 第十五話 胸に抱いた復讐心の行方[えなりん](2011/02/16 20:04)
[15] 第十六話 好きな女に守ってやるとさえ言えない[えなりん](2011/02/23 20:07)
[16] 第十七話 復讐の爪痕[えなりん](2011/02/23 19:56)
[17] 第十八話 刻まれる傷跡と消える傷跡[えなりん](2011/02/26 19:44)
[18] 第十九話 ネギパ対ムドパ[えなりん](2011/03/02 21:52)
[19] 第二十話 従者の昼の務めと夜のお勤め[えなりん](2011/03/05 19:58)
[20] 第二十一話 闇の福音、復活祭開始[えなりん](2011/03/09 22:15)
[21] 第二十二話 ナギのアンチョコ[えなりん](2011/03/13 19:17)
[22] 第二十三話 満月が訪れる前に[えなりん](2011/03/16 21:17)
[23] 第二十四話 ネギがアンチョコより得た答え[えなりん](2011/03/19 19:39)
[24] 第二十五話 最強の従者の代替わり[えなりん](2011/03/23 22:31)
[25] 第二十六話 事情の異なるムドの従者[えなりん](2011/03/26 21:46)
[26] 第二十七話 いざ、京都へ[えなりん](2011/03/30 20:22)
[27] 第二十八話 女難の相[えなりん](2011/04/02 20:09)
[28] 第二十九話 大切なのは親友か主か[えなりん](2011/04/06 20:49)
[29] 第三十話 夜の様々な出会い[えなりん](2011/04/09 20:31)
[30] 第三十一話 友達だから、本気で心配する[えなりん](2011/04/16 21:22)
[31] 第三十二話 エージェント朝倉[えなりん](2011/04/16 21:17)
[32] 第三十三話 ネギの従者追加作戦[えなりん](2011/04/20 21:25)
[33] 第三十四話 初めての友達の裏切り[えなりん](2011/04/23 20:25)
[34] 第三十五話 友達の境遇[えなりん](2011/04/27 20:14)
[35] 第三十六話 復活、リョウメンスクナノカミ[えなりん](2011/04/30 20:46)
[36] 第三十七話 愛を呟き広げる白い翼[えなりん](2011/05/04 19:14)
[37] 第三十八話 修学旅行最終日[えなりん](2011/05/07 19:54)
[38] 第三十九話 アーニャの気持ち[えなりん](2011/05/11 20:15)
[39] 第四十話 友達以上恋人未満[えなりん](2011/05/14 19:46)
[40] 第四十一話 ネギの気持ち、ムドの気持ち[えなりん](2011/05/18 20:39)
[41] 第四十二話 契約解除、気持ちが切れた日[えなりん](2011/05/25 20:47)
[42] 第四十三話 麻帆良に忍び寄る悪魔の影[えなりん](2011/05/28 20:14)
[43] 第四十四話 男の兄弟だから[えなりん](2011/05/29 22:05)
[44] 第四十五話 戦力外従者[えなりん](2011/06/01 20:09)
[45] 第四十六話 京都以来の再会[えなりん](2011/06/08 21:37)
[46] 第四十七話 学園祭間近の予約者たち[えなりん](2011/06/08 20:55)
[47] 第四十八話 麻帆良学園での最初の従者[えなりん](2011/06/11 20:18)
[48] 第四十九話 修復不能な兄弟の亀裂[えなりん](2011/06/15 21:04)
[49] 第五十話 アーニャとの大切な約束[えなりん](2011/06/18 19:24)
[50] 第五十一話 麻帆良祭初日[えなりん](2011/06/26 00:02)
[51] 第五十二話 ネギ対ムド、前哨戦[えなりん](2011/06/26 00:03)
[52] 第五十三話 仲良し四人組[えなりん](2011/07/02 21:07)
[53] 第五十四話 麻帆良武道会開始[えなりん](2011/07/06 21:18)
[54] 第五十五話 この体に生まれた意味[えなりん](2011/07/06 21:04)
[55] 第五十六話 フェイトの計画の妨げ[えなりん](2011/07/09 20:02)
[56] 第五十七話 師弟対決[えなりん](2011/07/13 22:12)
[57] 第五十八話 心ではなく理性からの決別[えなりん](2011/07/16 20:16)
[58] 第五十九話 続いて欲しいこんな時間[えなりん](2011/07/20 21:50)
[59] 第六十話 超軍団対ネギパ対完全なる世界[えなりん](2011/07/23 19:41)
[60] 第六十一話 スプリングフィールド家、引く一[えなりん](2011/07/27 20:00)
[61] 第六十二話 麻帆良祭の結末[えなりん](2011/07/30 20:18)
[62] 第六十三話 一方その頃、何時もの彼ら[えなりん](2011/08/03 20:28)
[63] 第六十四話 契約解除、ネギの覚悟[えなりん](2011/08/06 19:52)
[64] 第六十五話 遅れてきたヒーローユニット[えなりん](2011/08/10 20:04)
[65] 第六十六話 状況はより過酷な現実へ[えなりん](2011/08/13 19:39)
[66] 第六十七話 全てが終わった後で[えなりん](2011/08/17 20:16)
[67] 最終話その後(箇条書き)[えなりん](2011/08/17 20:18)
[68] 全体を通しての後書き[えなりん](2011/08/17 20:29)
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[25212] 第三十話 夜の様々な出会い
Name: えなりん◆e5937168 ID:1238ef7e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/09 20:31

第三十話 夜の様々な出会い

 文字通り体の芯から温まった刹那は、身なりを正してからはロビーにいた。
 既に消灯時間は過ぎており、ロビーになどいては見回りの先生に見つかりかねない。
 だが今はまだ、何処にもいけなかった。
 自分が所属する六班の部屋にも、木乃香の傍にも。
 鏡を見ずとも自分が幸せそうに微笑んでいるのが分かっていたからだ。
 ソファーに座り、夕凪を肩に立て掛けた状態で抱きしめるようにして呟いた。

「ムド様……」 

 つい十数分前に抱いてもらった愛しい人の名前だ。
 名前を呟く、ただそれだけで秘所の奥から頂いたお情けの精液が流れ出てくる気がする。
 風呂上りには、ある程度処理と後始末をしたつもりなのに。
 もじもじとお尻を動かして座りなおし、浴衣の上から下腹部に触れた。
 こんな奥にまで一物を突きこまれ、お情けを頂いてしまったと情事が思い出される。
 自ら望んで縛られ、お仕置きをと叫ぶ自分が印象的で煙を噴き上げながら赤面してしまった。

「私は、なんというはしたない事を。けれど……」

 与えられる痛みは快楽に直結し、主に隷属され虐げられるのがたまらなく嬉しかった。
 しかも主であるムドは、自分が混ざり者である事を承知の上だからなおさらだ。
 改めて、何故もっと早く気持ちを打ち明けなかったのかと悔やまれる。
 いやそもそも、学園長の言葉に踊らされ最悪の初対面から傷つけ合う道に及んだのか。
 贖罪はもちろんの事、何か別の形でもお返ししなければと思う。

「二度と裏切らない忠誠の証……そうだ、首輪。ムド様に付けて頂いて、そのまま犬畜生のように押し倒され後ろから」

 途中から真面目な顔が崩れ、だらしなくなる刹那の頬へ、ぴとりと冷たい物が押し当てられた。

「ひゃッ!」

 肩に立てかけていた夕凪を床に倒し、ソファーから転げ落ちる。
 呆けているうちに教師に見つかってしまったのか。
 自分を戒めつつも、それにしてはやり口が子供っぽいと思いつつ振り替えった。
 その先には、お腹を押さえて笑っている明日菜がいた。

「あははは、ごめんごめん。刹那さん、なんだか気合入り過ぎてるみたいだったから。はい、買ったばっかりだから冷えてるわよ」
「明日菜さん……あ、ありがとうございます」
「うん、それで何か悩み事? て、それもそうか。木乃香が大変な事になってるんだもんね」

 炭酸のジュースを受け取り、ソファーに座り直すと明日菜が隣に座ってきた。
 そしてもう一本、自分の分のジュースの蓋を開けてごくごくと良い飲みっぷりを披露する。
 親友のピンチにも必要以上に暗くならないその明るさが、少し羨ましくなりながら刹那も蓋を開けてこくりとジュースを飲んだ。
 考えても見れば湯上りから水分を補給しておらず、喉に染みた。
 炭酸がやや辛いが、続けて缶を傾ける勢いで飲み干していく。

「お、良い飲みっぷり。まるでお風呂上りみたい」
「へっ、いえ……あの、喉が渇いていたもので。決して風呂上りなどでは!」
「なに焦ってるの。こんな夜中にお風呂開いてない事ぐらい知ってるわよ。変な刹那さん」
「あはは、ですね」

 刹那が気負っていると勘違いしたせいか、少しのわざとらしさと共に明るく明日菜が笑う。
 そんな意図した笑顔でも、刹那には眩しく綺麗なものに見えた。
 春休みから手ほどきを加えてはいるが、明日菜はまだまだ素人の域を出ない。
 時々ハッとするような動きも見せるが、古や楓とは元々の地盤も違う。
 だが友達が狙われているこんな状況で、他人にまで心遣いできる者はそうはいない。

(ムド様が、欲しがるわけだ。実力は圧倒的に私やエヴァンジェリンさんが上だが、この笑顔を見ていると安心する)

 女としての嫉妬は少なからずあるが、確かにそう感じた。
 明日菜の心が高畑に向いている事はムドも承知らしいが、何かお手伝いできない事か。
 失敗したら、したでお仕置きが待っていると不埒な理由が頭を過ぎる。
 何か小さな切欠でも、そう思った刹那はとある事を思い出し、ぶつけてみた。

「あの、明日菜さん一つお聞きしたいのですが……」
「ん、木乃香なら夕映ちゃんが気をつけてるわよ。私と同じで一緒の部屋だし」
「いえ、その辺りはネギ先生のパーティを信頼してますから」

 ある程度、完全にではないがと心で付け足しながら尋ねた。

「あの、ですね……ムドさ、先生から契約執行または代行した時、どのような感じですか?」
「あー、あれ。お腹が温かくなって、くすぐったいよね。おでんとか、温かい物食べた時みたいな。でも、違うかな。うーん、もうちょっと下だし」

 アレだけの快楽をおでんと表現するとは、感性が常軌を逸している。
 まさかオナニーすら、まだ満足にした事がないのか。
 いや好意を寄せる男性がいて、乙女とはいえありえはしないだろう。
 混乱しつつも、刹那は辺りに誰もいない事を確認するような素振りをわざとらしく見せた。
 それから息を止める事で頬を赤く染め、まるで恥を忍んだ風を装って明日菜の耳元に囁く。

「では、その……契約執行の後に、オナ、オナニーで発散したり等はしないのですか?」
「オナ……ど、何が。待って、刹那さんなんの話!?」
「ですから契約執行すると子宮の辺りから、ムド先生の魔力が広がって体が疼いたり。契約執行の後は、いつも大変だと以前、ネカネさんや亜子さんが口にしているのを耳にしまして」
「あ、アレって、そういえば、この辺りは……保健体育でそんな事を習ったような。て、アーニャちゃんはあんな小さな子に!」

 驚愕が怒りへと昇華され、その矛先がムドに向かいそうになってしまい慌てて言った。

「いえ、まだアーニャさんはそういった感情に目覚めてはいないようで……体の成長など、個人差もありますし」
「体の成長……ごめん、嘘ついてた。してる、してるわよオナニー。すっごいしてる」

 汗をだらだらと流しながら、突然明日菜が発言を撤回し始めた。
 何故急にと小首を傾げた刹那は、知らない。
 切欠が体の成長の個人差だと言われ、明日菜が自分のパイパンを思い出した事を。
 十歳であるアーニャと体の成長が変わらないから、だから体が疼かないという理論を否定する為に。

(ど、どうしよう……オナニーなんかした事ないわよ。まさか、だから生えてこないの? その理論だと、皆もうそれぐらいしてるわけ!?)

 まずいまずいと頭を抱えて明日菜が蹲り始めた。
 剣士ではあっても策士ではない刹那には、その明日菜の胸中が分からない。
 なにかまずい事をしてしまったのか。
 これでますますムドから明日菜の心が離れてはと、少し怖ろしくなってきた。
 だが同時に、勝手な事をするなと虐げられる自分を想像して悶える。

(駄目です、ムド様。そんな……亀甲縛りなど何処でお憶えに、縄が食い込んで身動きできない屈辱感が、あぁ……)

 ホテルのロビーにて浴衣姿の二人の美少女が頭を抱え、身悶える光景はそうそうない。
 思春期らしい勝手な妄想で身悶える二人が我に返ったのは、玄関先からの大きな音であった。
 何か重いものを落ちて砂利の上を滑ったような、ずしゃりという音。
 ハッと自動ドアのガラスの向こうに視線を向ければ、大きな影が何かを抱えているのが見えた。
 影が抱える誰かの瞳が、助けを求めて刹那と交錯する。

「お嬢様!」
「チッ」

 舌打ちした影が、木乃香を抱えたまま再び大きく跳躍した。

「えっ、木乃香いた? なに、さっきの影!?」
「兎に角、追います」

 ゆっくりと開く自動ドアをもどかしく思いながら、無理やり手で開いて飛び出した。
 木乃香を抱えていた影は、未だ三日月が浮かぶ夜空の上。
 頭の大きな丸いシルエット、それは巨大な猿であった。
 一跳躍で数十メートルを楽々と跳んでいき、とても普通に走っていては間に合わない。
 その為、刹那は浴衣の懐より、愛しい人との繋がりの証である仮契約カードを取り出した。

「契約代行、ムドの従者桜咲刹那!」
「げっ……もう、契約代行、ムドの従者神楽坂明日菜!」

 躊躇なく契約代行を行った刹那とは違い、一瞬だけ明日菜は躊躇していた。
 それもそのはずで、つい数分前に魔力が子宮を中心にと話していたばかりなのだ。
 改めて染み入るように広がる魔力を感じてみると、それは下腹部からだった。
 今はもっと詳しく、子宮を中心に広がっているのが分かる。
 股の間がむず痒く、乳首が起き上がって胸全体を包むブラジャーを僅かに押し上げた。

(やば……変な感じ。今まで、全然気付かなかった。刹那さんは……)

 チラリと隣を見て、直ぐに視線をそらす。
 太ももが浴衣の裾からすらりと伸びる様が妙に艶かしく、表情もどことなく妖艶である。
 これで視線を大猿へ投じていなければ、見入ってしまっていた。
 釣られてカァッと頬が赤くなるのを感じ、ねじ伏せるように明日菜は顔を横に振った。

「木乃香を返せ、この大猿!」

 そして性的な興奮を忘れるように怒りをぶつける相手を求めて、明日菜が叫んだ。

「ネギ先生!」

 大猿が今まさに着地しようとする地点には、刹那が叫んだ通りネギがいた。
 携帯電話を片手に喋っていたが、刹那の声に気付いて振り返る。
 瞬間、驚きに声を発するより先に、ネギが動く。
 木乃香を抱えている為に、大猿が動かせるのは遁走の為の足だけだ。
 しかもネギに気付いてからの行動が遅い。
 杖を槍に見立て横に薙ぎ、大猿の足を強かに打ち付ける。
 咄嗟の事で身体強化が間に合わず、ヌイグルミを殴ったような間抜けな音が響く。
 それだけでも、大猿が次の跳躍を行うまでの間が一呼吸分、遅れた。

「このガキ!」
「戦いの歌」

 大猿が振り返った口元の穴から、怒りを伴なう女性の声が漏れた。
 その正体は、大猿ではなく大猿のヌイグルミを着た女性であった。
 本当にそれがヌイグルミかどうかは定かではないが、なんであろうと構わない。
 反射的にそこが弱点かと見切りをつけ、杖の先端を大猿の口へと捻じ込んだ。
 抉るように回転させた杖の先が、ヌイグルミの丸い耳を弾き飛ばし綿ではなく煙を飛ばす。

「ひゃっ、なんやコイツ。まともにやってられへんわ。小猿でもくらっとり」

 間一髪避けられ、口を狙った杖の先がズレていた。
 大猿の口を通して呪符がばら撒かれ、夕方に木乃香を浚おうとした小猿に変化する。
 すばしっこい小猿相手に長物は不利と感じ、杖は背中に魔力で吸着し、拳を握った。

「はッ!」

 十数枚の呪符が変化した小猿を、二つの拳で目に付く端から吹き飛ばしていく。

「ほな、さいなら」

 再び跳躍して距離を稼ぐ大猿を、ネギは悔しげな表情を浮かべるでもなく見送っていた。
 まずは小猿を殴りぬけ、一つ一つ丁寧に呪符へと戻していく。
 残り数匹となったところで、刹那と明日菜が追いついてきた。
 最後の数匹は三人で、一気に片付ける。
 その時には既にきぐるみの大猿の姿が、随分と小さくなってしまっていた。
 気がはやる刹那が急いで追跡を再開し、明日菜とネギがその後に続く。

「待てーッ! ネギ、一体なんで木乃香が浚われたの? 夕映ちゃんは!?」
「お嬢様! 楓と古の姿も見えませんが、一体この非常時に何を」
「トイレに行った隙を突かれたそうです。夕映さんは、他の魔法先生に警戒の連絡を。楓さんと古さんは、別途あの大猿を追っています」

 明日菜や刹那とは違い、まだ少しネギには余裕が見えていた。

「木乃香さんは、何時でも取り返す事ができます。ただ、彼女はあまり強くない。単独犯か、複数か。敵の勢力を見極めたいと思います。追っ手は、僕と刹那さんと明日菜さん、この三人だと取り合えず思わせておきます」
「よく分かんないけど、分かった。とにかく、追えばいいのよね!」

 ネギの言葉に即座に了解した明日菜とは違い、刹那は少し吟味していた。
 木乃香を何時でも取り返す方法をではない。
 今回の誘拐に対して、ネギが敵の勢力を見極めようとしている事だ。
 刹那もどちらかというとネギと同じ武人である。
 あまりというか、根っから策謀に関連する思考は持ち合わせていない。
 だが培ってきた警護経験から省みるに、ネギの判断がズレているような気がした。

(楓や古を隠したのはまだ分かる。護衛の数が分からないのは、相手もやりにくい。少数と誤解してくれれば、油断も誘える。だがお嬢様を守りきる期限は三日、その後は高畑先生が合流される。敵の正体や、殲滅は二の次だ。先程も、あえて大猿を逃したようにさえ見えた)

 奥の手を使えば、恐らくは仮契約カードによる召喚だろうが。
 何時でも木乃香を取り戻せるとはいえ、使い時は選ぶべきだ。
 それに奥の手は一度使ってしまえば、二度目は使えないと思った方が良い。
 相手も召喚があると分かれば、二度目はその対処をされてしまうのが当たり前。
 刹那も知らない奥の手が二個も三個もあるのなら、また話は別だが。

(ムド様ならこの場合……そもそも、誘拐さえさせない気がします。いや、仮定は無意味。今はただ、お嬢様を)

 閑散としたホテル周辺から、住宅や店舗が増えるにつれ大猿は跳躍を止めていた。
 何処に人の目があるか分からない為だろうか、丸太のような足で信じられない速度で走る。

「木乃香!」
「ちっ……しつこい人は、嫌われますえ」

 一度振り返り、ネギ達三人を大猿のきぐるみが振り返って見てきた。
 さらに速めたその足が向く先は、まだ最終電車が残っているのか電灯の灯る駅であった。
 最終電車ならば、多少の人影があってもおかしくはないのだが見当たらない。
 それどころか、駅長や車掌の姿ですら見当たる事がなかった。
 大猿が改札を飛び越え、構内に突入したのを見てネギ達も改札を飛び越えた。

「これも麻帆良の修行場と同じ人払いの効果?」
「そのようです。人の多いはずの駅に人払いとは、明らかに計画的な犯行です」
「まだ増援および、合流の敵は見えない。けれどこの辺りが潮時ですね」

 構内に飛び込んだ大猿が、今にも締まりそうな電車のドアに滑り込んでいった。
 電車で一気に距離を開けるつもりか。
 さすがに息切れしない相手では、身体強化を行っても追うのには限界がある。
 まだネギ達が乗っていないにも関わらず、目の前で扉が閉まろうとしていた。

「まずい、閉まっちゃう!」
「かくなる上は、私が」
「いえ、刹那さん僕が破壊します。ラス・テル、マ・スキル、マギステル」

 ネギが杖を手に詠唱を開始すると、電車内の大猿が明らかに狼狽していた。

「ちょッ、なに考えとんねん。電車なんて破壊したら、大騒ぎになってしまうえ!」
「光の精霊一柱、来たりて敵を射て。魔法の射手、光の一矢!」

 大猿の内部から聞こえる女性の声を前にしても、ネギは詠唱をやめなかった。
 ついに放たれた光の矢が、大げさな弧を描き電車とは見当違いな方向へと放たれた。
 走り出した電車に平行して走るように、そのまま加速しきる前の電車を追い越していく。
 その行き先が間違いない事を示すように、ネギが横に薙ぐように杖を振るった。
 遠隔操作により、先頭車両と二番目の車両との間に光の矢が進路を変えて飛び込んだ。
 金属がねじ切れるような鈍い音を立て、何かを破壊する音が発せられた。

「あははは、何処狙っとるんや。ほな、うち……あれ、なんや!?」

 ネギが大きく外した事を疑わず高笑いをした大猿が、直ぐに異変に気付いた。
 加速したはずの電車が、逆に緩やかになっていっている事に。
 入り口の窓に張り付くようにして前を覗き、大猿は気付く。
 先頭車両だけが、暴走するように線路をひたすら先へと走っていった事を。

「すごい、やるじゃないネギ。アレなら、後ろの車両は走れないし。繋がってたところが事故で壊れただけにしか見えない」
「確かに、この薄暗い中でしかも動く電車を相手にした精密射撃はお見事でした」
「ありがとうございます。さあ、観念して木乃香さんを返してもらいます」

 ネギの半命令の言葉を聞きながら、閉じたドアをこじ開けて大猿が出てきた。
 逃げる足を失い、追い詰められたようにキョロキョロと辺りを見渡している。
 この期に及んでまだ逃げる、逃げられるつもりなのか。
 そう思うのは、他に助けに現れる仲間がいるからに、他ならない。
 周囲を見渡す事を止めた大猿が、一枚の札を取り出した。

「くっ、間に合うか。お札さん、お札さん。ウチを逃がしておくれやす」
「させるか。神鳴流奥義、斬空閃!」

 鞘からの抜刀の鋭さに魔力をのせ、斬撃を飛ばす。
 空に浮かぶ三日月に負けない鋭利で巨大な刃がお札ときぐるみの頭半分を斬り飛ばした。
 斬られた部分は煙と消え、きぐるみの維持も敵わず今度こそ完全に消えていく。
 大猿のきぐるみが消えた後に残ったのは、青ざめた表情の一人の女性であった。
 年の頃は三十手前、大きな丸眼鏡と長い黒髪が印象的な女性である。
 きぐるみがないと力が足りないようで、木乃香は地面に直ぐに降ろされていた。

「次は、お札ではなく貴様を斬り捨てる。お嬢様をその場に置き、下がれ」
「動くな、動けばお嬢様は」
「魔法の射手、戒めの三矢!」

 女性がいっそ木乃香をと人質にしようとした瞬間、ネギが捕縛の風魔法を放った。
 三本の風の矢は、木乃香を人質にしようとした女性ごと瞬く間に捕縛していく。

「な、なんやこれ。お嬢様がどうなっても」
「いいわけないでしょ。ただ、こうした方が早いでしょ!」

 捕縛の風に囚われ、見当違いな発言をしようとした女性の目の前に明日菜が踏み込んだ。
 誰に教えられたわけでもないのに、瞬動紛いの素早い動きで。
 女性の顔面に拳を突き入れ、強打する。
 下手をすれば鼻が折れかねない一撃なのだが、明日菜に躊躇はなかった。
 木乃香をさらい、情状酌量の余地なしといったところか。
 地底図書館の経験から、明日菜もなかなかその辺りはシビアである。

「ふう、あとはコイツを警察にでも突き出して終わりかしら」

 息を抜き、振り返って刹那やネギにそう明日菜が言った時、何かが空に現れた。

「明日菜さん!」
「へっ」

 月とはまた別の銀光、それに合わせるように飛び出した刹那が夕凪を振るう。
 上空から明日菜に振るわれようとしていたのは、やはり一振りの小太刀であった。
 それを振るったのは、刹那達よりもやや幼い印象の少女だ。
 ゴシックドレス調の洋服に帽子、高原にでもいればどこぞのお嬢様にも見えなくもない。
 ただ手にした小太刀ともう一振りの短刀が、儚いイメージを破壊していた。

「帰りが遅いから、逃走経路を逆走して正解でしたえ。初めまして、先輩。このたび、千草はんに雇われた神鳴流です」
「神鳴流、貴様のような奴が。アデアット、建御雷」
「あら、先輩も二刀流ですか。得物の長さは違いますけど、おそろいですね。お手柔らかにお願いしますえ」

 そう呟いた瞬間、少女の姿が消えて刹那の目と鼻の先で小太刀を振り上げていた。

「口調はのろいが……い、意外にできる」

 一刀目を防ぐと瞬く間に二刀目が奮われ、コレもまた大振りな得物で受け止める。
 そのまま一進一退、得物の小回りの効きから、やや刹那が押されていた。
 そして、増援は一人ではなかった。
 身構えていた明日菜の背後、影に紛れ忍び寄った誰かが手刀を首に落とそうとする。
 その手を、ネギが掴んで止めた。

「チッ、女はやりにくいから一発で気絶させたろ思ったのに。やるやんけ、お前」

 手刀を受け止められ、ネギを睨んだのは髪の隙間から獣の耳が出ている学生服姿の少年であった。

「明日菜さん、木乃香さんをお願いします。僕はコイツを」
「あ、分かったわ」
「おっと、千草の姉ちゃんを連れてかれると俺らも困るんでな」

 少年がつかまれていない方の腕を振るうと、影のように黒い犬のようなものが飛び出した。
 その犬が木乃香もろとも千草を捕らえていた風の束縛を食い千切る。
 振り出しに戻してたまるかと、慌てて明日菜が木乃香を抱えて飛び退った。
 そこへ少女と斬り結んでいた刹那が、数回拳の攻防を少年と交えたネギが引いてきた。

「退きましょう、刹那さん、明日菜さん」
「ですね。正直、これ以上の増援はさばきかねます」

 未だこちらは、楓と古を残しているとはいえ不確定要素が大きすぎる。
 相手の戦力の確認をしたいのはわかるが、同時に不用意に藪を突くべきではなかったのではとも刹那は思った。

「おい、月詠の姉ちゃん。西洋にも面白ろそうな奴がおるやんけ。アイツ、俺の拳を避けるだけじゃなく反撃してきよったで」
「えー、ウチは先輩みたいな方の方が好物です。あの太刀さばき、ぞくぞく疼いてしまいますえ」

 ウキウキと喋る少年と少女は、何処か真剣さというか木乃香に対する執着が見えない。
 それに鼻の頭を押さえながら起き上がろうとしている千草に、手すら貸す様子がなかった。
 仲間、増援なんだよねと、ネギ達が疑ってしまう程である。

「痛ッ、たたた。思い切り顔面に拳放り込んでもろて……あんさんら、もう少しウチの心配したらどうですえ」
「千草の姉ちゃん、弱すぎや。一番弱そうな姉ちゃんのパンチ一発で気絶して」
「ウチ、千草はんのような年増の方は余り好みではないです。依頼料の分は、働きますけど」
「あんたら……」

 鼻血を拭いながら立ち上がった、千草という名の呪術師は打ち震えていた。
 妙に仲間意識の薄い少年少女のせいか、それとも木乃香を奪還されたからか。
 しばしの沈黙の後、気を取り直したのかネギ達を睨みつけてきた。
 と思った次の瞬間には、脱兎の如く逃げ出した。

「退きますえ。小太郎はん、月詠はん。こいつら倒すには準備不足え……お、憶えてなはれ!」
「ちょ、これからって時に逃げるんかいな。おい、そこの赤頭。憶えとけ、俺は小太郎や。お前、面白そうや。またやろうやんけ」
「先輩も、また近いうちにお手合わせお願いしますえ」

 見事にバラバラなチームワークに、追いかける事も忘れてネギ達は呆けてしまっていた。









 ネギ達が木乃香を奪還した頃、ムドはロビーの自販機コーナーにいた。
 露天風呂で汗と同じぐらいに精液をぶちまけて、喉が渇いたのだ。
 もちろん、温泉のお湯はネカネが魔法で浄化し、綺麗にしておいた。
 最近、ネカネがこの手の魔法に関して腕をメキメキあげている。
 エヴァンジェリンに二回、ネカネに三回と亜子は疲れていた様子なので手で可愛がったのみ。
 直前の刹那を入れると、最低でも七回は射精した事になる。
 それだけ魔力も発散できたのだが、同時に疲れもして体は楽だが目が霞んでいた。

「でも、刹那さんが帰ってくるまでは起きていてあげたいですし」

 待つのはムドだけで、ネカネ達はそれぞれの部屋に返した。
 今回狙われているのは木乃香であって、ムドには全く関係ない事件だからだ。
 ネギがそれを隠すつもりらしいので、脅威は欠片もなく心配はされなかった。
 刹那を待ちたいという我が侭だけは、贔屓は今夜までだと注意されたが。

「えーっと、これ」

 霞み目のまま選んだ紅茶を選択し、ガコンと落ちてきた缶を取り出し口から拾う。
 一瞬の違和感、やけに缶が真っ黒だ。
 真っ黒な缶の紅茶など見たことはないというか、選んだ缶は真っ黒ではなかった。
 じっと自販機と手の中の缶を見比べ、気付いた。

「しまった、間違えた。夜にコーヒーって眠れなくなるって聞いたような。どうしよう……」

 そう呟き後悔した瞬間、誰かが隣に立ったのが分かった。
 チャリンチャリンと投入される小銭の音の後、その誰かがこちらを見た気がした。

「何を飲みたかったんだい?」
「え、あ……この紅茶ですけど」
「そう」

 話かけてきていたのは、真っ白な髪の少年であった。
 濃紺の学生服を着ているところから、別の学校の生徒であろうか。
 消灯時間を抜け出してきたのか、そんな疑問を言葉にする前にとある缶を差し出された。
 つい先程、買おうと思っていた紅茶の缶である。
 最初はその意図に気付けず、それとなく受け取った。
 するとその手は引っ込められず、受け取った物を返せとも言われず、気付いた。
 持っていたコーヒーの缶を差し出すと、受け取られる。

「あ、ありがとうございます」
「たまたま、僕が飲みたかった缶を君が持ってたからだよ。君は、コーヒーが嫌いかい?」
「ううん、飲んだ事がないから分からない。回りには、紅茶しか飲む人が居なかったから飲んでるだけで」
「それなら、機会があれば試して見る事をお勧めするよ」

 なんとなく分かれるタイミングを失い、二人で同時に缶を開ける。
 こくりと紅茶を飲んだムドは、ちらりと目の前の少年を見た。
 年の頃は自分とそう変わらないぐらいか。
 そういえば、ネギ以外の同世代の男の子と話すのは、随分と久しぶりであった。
 と言うよりも、物心突く前を除けば、初めての事かもしれない。
 だからもっとこの子の事を知りたいとムドが思うのは、自然な事であった。

「私はムド・スプリングフィールドです。お名前を聞いても?」
「……フェイト・アーウェルンクス。修学旅行生さ」

 ムドが名乗ると、些細な間を置いて白髪の少年が名乗り返してくれた。

「ああっと、私もです。少し、特殊な形ですけど」
「どうせなら、座らないかい?」

 そんなフェイトのお誘いに、うんうんと二度まで頷いてしまった。
 明らかに就寝時間を過ぎている時間でのお誘いが妙である事にも目を瞑って。
 だがいざソファーに座ってみると、何を話せば良いか分からない。
 ソワソワと視線をさ迷わせて話題を探していると、フェイトに微笑されてしまった。

「何を話せば良いか分からないです。お恥ずかしながら。同世代の友達がいなかったもので」
「僕もだ。理由は言えないけどね。君は?」
「私は生まれつき体が弱くて、普通の人にできる事が普通にできなくて。優秀な兄さんと比べられては色々と……うん、情けないけどそんな感じ」
「その割には、君の瞳には自信が溢れてるね。言う程、自分を卑下していない」

 確かに指摘され、改めて考えるとその通りだ。
 あくまで緊張しているのはフェイトがいるからで、恋人達といる時はそうではない。
 自分が抱く愛を信じ、持てる全てを投じて愛しつくしている。
 値踏みするかのようなフェイトの視線には気付かず、そうムドは確信した。

「だったら、君にとって体の事はささいな事だという事さ。誰も彼もとはいかないが、それを含め君を好きになってくれる人はいる」
「ですね。私自身はそこまで……周囲が勝手に騒ぐ事の方が多かったぐらいです。いっそ、放っておいて……あっ、申し訳ないです。私の事ばかり」
「いや、友達の事を知る事は幸せな事さ。だから、気にしなくて良いよ」
「友、達……」

 すっと目の前に差し出された手を、ムドもやや震える手で握り返した。
 フェイトが立ち上がり、繋いだ手が離れてしまった事が名残惜しい。
 もう終わりかと、縋るように見上げてしまった。

「消灯時間は、過ぎてるよ。君も、もう戻った方が良い」
「そ、そうですね。また、明日です」
「そうだね、また会おう」

 刹那の事は部屋で待とうと、ムドは握手の感触が残る手を胸に戻っていった。
 だから知らない、気付かない。
 フェイトがずっと、ムドの事を探るように見ていた事に。

「ムド・スプリングフィールドか」

 フェイトが僅かに態度を変えたのが、スプリングフィールドの名を聞いた時からである事は。









-後書き-
ども、えなりんです。

ネギが頑張っている間に、ムドはエッチ三昧w
しかもラスボスとお茶してて、何してんだ。
まあ、フラグ立ちましたけどね。

フェイトの口調が微妙なのは一応のわけが……
書いているうちに、エヴァのカヲルと混同してしまったのです。
たぶん、そのうち元に戻る、かなぁ?

あと今回の最大の焦点は、明日菜が性欲を知った事。
しかし、オナニーすると下の毛が生えるとか、麻帆良の性教育はどうなっとるんだ。
明日菜が馬鹿だからなんだろうけど。

それでは次回は水曜です。


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