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No.25212の一覧
[0] 【完結】ろくでなし子供先生ズ(ネギまでオリ主)[えなりん](2011/08/17 21:17)
[1] 第二話 打ち込まれる罪悪と言う名の楔[えなりん](2011/01/01 19:59)
[2] 第三話 脆くも小さい英雄を継ぐ者の誓い[えなりん](2011/01/05 21:53)
[3] 第四話 英雄を継ぐ者の従者、候補達?[えなりん](2011/01/08 19:38)
[4] 第五話 ムド先生の新しい生活[えなりん](2011/01/12 19:27)
[5] 第六話 第一の従者、ネカネ・スプリングフィールド[えなりん](2011/01/15 19:52)
[6] 第七話 ネギ先生の新しい生活[えなりん](2011/01/22 21:30)
[7] 第八話 強者の理論と弱者の理論[えなりん](2011/01/22 19:25)
[8] 第九話 闇の福音による悪への囁き[えなりん](2011/01/26 19:44)
[9] 第十話 勝手な想像が弱者を殺す[えなりん](2011/01/29 20:15)
[10] 第十一話 私は生きて幸せになりたい[えなりん](2011/02/05 20:25)
[11] 第十二話 棚から転がり落ちてきた従者[えなりん](2011/02/09 20:24)
[12] 第十三話 他人の思惑を乗り越えて[えなりん](2011/02/12 19:47)
[13] 第十四話 気の抜けない春休み、背後に忍び寄る影[えなりん](2011/02/12 19:34)
[14] 第十五話 胸に抱いた復讐心の行方[えなりん](2011/02/16 20:04)
[15] 第十六話 好きな女に守ってやるとさえ言えない[えなりん](2011/02/23 20:07)
[16] 第十七話 復讐の爪痕[えなりん](2011/02/23 19:56)
[17] 第十八話 刻まれる傷跡と消える傷跡[えなりん](2011/02/26 19:44)
[18] 第十九話 ネギパ対ムドパ[えなりん](2011/03/02 21:52)
[19] 第二十話 従者の昼の務めと夜のお勤め[えなりん](2011/03/05 19:58)
[20] 第二十一話 闇の福音、復活祭開始[えなりん](2011/03/09 22:15)
[21] 第二十二話 ナギのアンチョコ[えなりん](2011/03/13 19:17)
[22] 第二十三話 満月が訪れる前に[えなりん](2011/03/16 21:17)
[23] 第二十四話 ネギがアンチョコより得た答え[えなりん](2011/03/19 19:39)
[24] 第二十五話 最強の従者の代替わり[えなりん](2011/03/23 22:31)
[25] 第二十六話 事情の異なるムドの従者[えなりん](2011/03/26 21:46)
[26] 第二十七話 いざ、京都へ[えなりん](2011/03/30 20:22)
[27] 第二十八話 女難の相[えなりん](2011/04/02 20:09)
[28] 第二十九話 大切なのは親友か主か[えなりん](2011/04/06 20:49)
[29] 第三十話 夜の様々な出会い[えなりん](2011/04/09 20:31)
[30] 第三十一話 友達だから、本気で心配する[えなりん](2011/04/16 21:22)
[31] 第三十二話 エージェント朝倉[えなりん](2011/04/16 21:17)
[32] 第三十三話 ネギの従者追加作戦[えなりん](2011/04/20 21:25)
[33] 第三十四話 初めての友達の裏切り[えなりん](2011/04/23 20:25)
[34] 第三十五話 友達の境遇[えなりん](2011/04/27 20:14)
[35] 第三十六話 復活、リョウメンスクナノカミ[えなりん](2011/04/30 20:46)
[36] 第三十七話 愛を呟き広げる白い翼[えなりん](2011/05/04 19:14)
[37] 第三十八話 修学旅行最終日[えなりん](2011/05/07 19:54)
[38] 第三十九話 アーニャの気持ち[えなりん](2011/05/11 20:15)
[39] 第四十話 友達以上恋人未満[えなりん](2011/05/14 19:46)
[40] 第四十一話 ネギの気持ち、ムドの気持ち[えなりん](2011/05/18 20:39)
[41] 第四十二話 契約解除、気持ちが切れた日[えなりん](2011/05/25 20:47)
[42] 第四十三話 麻帆良に忍び寄る悪魔の影[えなりん](2011/05/28 20:14)
[43] 第四十四話 男の兄弟だから[えなりん](2011/05/29 22:05)
[44] 第四十五話 戦力外従者[えなりん](2011/06/01 20:09)
[45] 第四十六話 京都以来の再会[えなりん](2011/06/08 21:37)
[46] 第四十七話 学園祭間近の予約者たち[えなりん](2011/06/08 20:55)
[47] 第四十八話 麻帆良学園での最初の従者[えなりん](2011/06/11 20:18)
[48] 第四十九話 修復不能な兄弟の亀裂[えなりん](2011/06/15 21:04)
[49] 第五十話 アーニャとの大切な約束[えなりん](2011/06/18 19:24)
[50] 第五十一話 麻帆良祭初日[えなりん](2011/06/26 00:02)
[51] 第五十二話 ネギ対ムド、前哨戦[えなりん](2011/06/26 00:03)
[52] 第五十三話 仲良し四人組[えなりん](2011/07/02 21:07)
[53] 第五十四話 麻帆良武道会開始[えなりん](2011/07/06 21:18)
[54] 第五十五話 この体に生まれた意味[えなりん](2011/07/06 21:04)
[55] 第五十六話 フェイトの計画の妨げ[えなりん](2011/07/09 20:02)
[56] 第五十七話 師弟対決[えなりん](2011/07/13 22:12)
[57] 第五十八話 心ではなく理性からの決別[えなりん](2011/07/16 20:16)
[58] 第五十九話 続いて欲しいこんな時間[えなりん](2011/07/20 21:50)
[59] 第六十話 超軍団対ネギパ対完全なる世界[えなりん](2011/07/23 19:41)
[60] 第六十一話 スプリングフィールド家、引く一[えなりん](2011/07/27 20:00)
[61] 第六十二話 麻帆良祭の結末[えなりん](2011/07/30 20:18)
[62] 第六十三話 一方その頃、何時もの彼ら[えなりん](2011/08/03 20:28)
[63] 第六十四話 契約解除、ネギの覚悟[えなりん](2011/08/06 19:52)
[64] 第六十五話 遅れてきたヒーローユニット[えなりん](2011/08/10 20:04)
[65] 第六十六話 状況はより過酷な現実へ[えなりん](2011/08/13 19:39)
[66] 第六十七話 全てが終わった後で[えなりん](2011/08/17 20:16)
[67] 最終話その後(箇条書き)[えなりん](2011/08/17 20:18)
[68] 全体を通しての後書き[えなりん](2011/08/17 20:29)
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[25212] 第二十二話 ナギのアンチョコ
Name: えなりん◆e5937168 ID:1238ef7e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/13 19:17

第二十二話 ナギのアンチョコ

 困った事態となってしまった。
 ムドは保健室の執務机にて頬杖をつきながら、パイプベッドがある薄いカーテンの向こうを眺めた。
 耳を澄ませば、午前の授業中であるにも関わらず穏やかな寝息が聞こえてくる。
 心地良さそうなその寝息は、エヴァンジェリンのものであった。
 学校へと登校するなり、眠いといってやってきたのだ。
 そのまま了解もとらずにパイプベッドにもぐりこみ、ぐっすりである。
 そんな気楽な様子に少々腹が立っても、仕方の事ないだろう。

「こっちはこっちで大変、なんです」

 昨晩にエヴァンジェリンは、ムドの要望を叶えようとはしてくれた。
 だがムドが本来願っていた展開から、予想しなかったの事態がいくつか発生してしまった。
 まず大前提として、ムドはネギに上には上がいる事を肌で感じて欲しかったという事だ。
 その表現として心を折ると言ったのだが、エヴァンジェリンは見事に粉砕してくれた。
 まき絵を襲って悪の存在をちらつかせるまでは良かったが、半吸血鬼化させてネギにぶつけてしまった。
 勝利の為に多少の犠牲はいとわず、ネギがまき絵を攻撃した事は問題ない。
 時には心を鬼にして従者を攻撃しなければならない事も学習できただろう。
 そうして義憤を抱いたネギはエヴァンジェリンに殴りかかり、一撃で敗北した。
 たった一撃、上には上がいる事も理解出来ないまま、心にダメージを負った。
 そしてネギが理解したのは、上がいるではなく、格の違いだ。

「兄さんは立ち上がるのではなく、這い上がらなければならない」

 それはきっと、言葉だけでは不可能だ。
 ムドのように口先でしか行動できない人間には。

「ある程度、這い上がってくれれば再戦の意欲を燃やさせる方法はあるんですが」

 ポケットの中の手帳、ナギの手記へと触れながら溜息混じりに漏らす。
 それともう一つの問題、それは亜子である。
 昨晩のネギとエヴァンジェリンのやり取りは、ネカネの研究室から水晶を通して覗いていた。
 ムドとネカネに亜子、そこへ刹那も加えた状態で。
 つまり亜子も、ネギがまき絵に攻撃して泣かせてしまった場面を目撃している。
 口元に手を当て、悲鳴を上げてからムドを見た時の表情。
 ムドが大丈夫だと心配いらないと言った結果が、アレでは当然か。
 折角、上手くいこうとしていた亜子の信頼にまで確実にひびが入ってしまった。

「約束してたのに、朝のお勤めに来なかったのがその証拠ですか」

 本当に頭が痛い、頼む相手を間違えたとしか言いようがなかった。
 だが既に起こってしまった事態は、取り返せない。
 ムドの言葉では、今のネギを這い上がらせる事は不可能だ。
 前提がそうである以上、ネギに直接働きかける事も選択肢から外れる。
 となると消去法ではあるが、動かすべきは、促がすべきはネギの従者であった。
 幸いにして、ネギの従者も全員うら若き乙女達であり、少なからず好意を持っていた。
 以前、エヴァンジェリンが言った英雄色を好むという言葉。
 精神的にも肉体的にもケアしてもらうのが妥当だろう。
 切欠さえあれば、砕けた心が少しでも修復されればネギを導く手はあるのだ。

「ただ、事態を知らないはずの私から木乃香さん達に近づくのも……」
「ちょっと、ムドいる?」
「あ、明日菜さ……なに、してるんですか?」

 保健室の扉を開けて入ってきた明日菜へと振り返り、即座に疑問を抱いた。
 やや虚ろな瞳を浮かべるネギの首根っこを掴んでいたからだ。
 そのネギの抵抗は弱々しく、後ろにいた木乃香があわあわと慌てている。

「あ、明日菜。ネギ君やったらウチが面倒みるから」
「て言っても、木乃香じゃ運べないでしょ。取ったりしないから、安心しなさいって。ガキには興味ないし」

 事態を自分達だけで治める事にした手前、ネギの状態を上手く説明できなかったのだろう。
 勘違いかどうかは不明だが、意味深な笑みを浮かべて笑い返されていた。

「なんか朝からネギ先生の調子が悪いみたいなのよ。上の空で授業も手につかないみたいだし、ちょっと診てあげてくれる?」
「ですから僕は……大丈夫、です」
「青い顔と死んだような目で言われて、はいそうですかって言えないわよ。んじゃ、後は任せたわよ木乃香。目一杯、優しくしてあげなさいよ」

 そう言って、頑張りなさいと明日菜が木乃香に耳打ちしてから颯爽と去っていく。
 なんだか全て、ムドの事さえ分かってやっているかのようだ。
 実際、そんな事はないのだろうが一番御し切れていないムドの従者だけあって行動に予測がつかない。

「それで兄さん、朝から具合は悪そうでしたが……どうなんですか? 寒気がするとか、気分が悪いとか症状はありますか?」
「ううん、ないよ。大丈夫、大丈夫だから……」

 青い顔を節目がちに、片手で二の腕をさすっていては説得力が無い。
 一応木乃香にも視線を向けていると、眉を八の字に落としてどうするべきか迷っているらしかった。

「嘘は、駄目です。言ってくれるまで、兄さんを帰しませんよ」
「うぅ……」
「あ、あんなムド君。ネギ君、ちょっと昨日色々とあって、ほいで」
「駄目です。うやむやにして、兄さんに倒れられても困ります」

 木乃香の言葉は、今だけはばっさり切り捨てる。
 そして少々危険だが問題を放置すると悪化するとばかりにネギを刺激した。
 這い上がらせる事は無理だが、粉砕された心を弄くるぐらいはできる。
 しばしの沈黙、ネギが視線をさ迷わせながら喉の奥で唸った。

「ムドは……」

 迷いに迷い、苦悩で頭をパンクさせながらようやく呟いた。

「虐め、られてた時……何を、考えてた?」

 意外な質問、まさかさらに昔の傷を自ら抉るとは思わずやや言葉に詰まった。
 だがそれ程までに、今回の衝撃は大きかったという事だろう。
 恐らくネギが聞きたいのは、ムドが絶対に敵わない相手に暴行を受けて、何を考えていたか。
 どのようにして耐えていたのかを聞きたい、そういう所か。
 一応、聞かれたくないという振りを行い、やっぱりいいとネギが言い出す前に返した。

「いつも、アーニャやネカネ姉さんの事を考えていました。少し恥ずかしいのですが、二人が慰めてくれた時の手の感触や、抱きしめてくれた時の……そういう、アレです」

 この時、言い含める相手は、ネギではなく木乃香だ。
 直接言葉にはしないが、その体を使ってネギの特に心を癒せと。

「凄く安心するんです。二人が想ってくれるから、頑張ろうって思えました。こんな所です」
「でも、それじゃあ……」

 ネギは直接指摘はしなかったが、それでは根本的解決にはならない。

「ごめん、変な事を聞いて。次、授業あるから……」

 望んだ答えとは違うとばかりに、おざなりに謝ったネギが立ち上がる。
 ふらついたネギがよろけ、慌てて木乃香が支えた。
 そのせいでネギの側頭部が控えめな木乃香の胸に僅かに沈み込む。
 ほんの少し意識したのか木乃香は頬を僅かに染め、思案顔となる。
 これで動いてくれればと、思わずにはいられない。
 今のネギに必要なのは根本解決ではなく、まず這い上がる事なのだ。

「木乃香さん、兄さんの事をよろしくおねがいします」
「そ、そやね。うん、ウチはネギ君の従者やし」

 駄目押しとして木乃香に念を押し、今考えている事を加速させる。
 そんな二人を見送り、一先ず復活の兆し、その切欠を作れた事に安堵した。
 後は木乃香達がどうにかこうにか、ネギを想って行動してくれれば良い。
 さすがにないだろうが、肉体的にネギを一皮向いてくれても構わなかった。
 比喩ではなく、そもそもネギが精通してるかまでは流石に知らないが。
 ムドが近右衛門に潰されそう立った時も、切欠は擬似的にエヴァンジェリンを抱いた事だ。

「んっ、んー……話は、終わったか? 」

 カーテンの向こうの影が起き上がり、大きく伸びを行った。
 やや艶かしい息遣いも混じる中で、パイプベッドを覆っていたカーテンが開けられる。
 そこから顔を覗かせたエヴァンジェリンが、今しがたネギと木乃香が去っていった扉を眺めた。

「全く、挫折を知らん奴はめんどくさいな。貴様のように生存本能むき出しに、従者を抱けば済むものを。少なくとも体はすっきりするぞ」
「あ、やはり同じ事を考えられてましたか。それと、空気を読んでいただいて申し訳ないです」

 実はエヴァンジェリンが途中から起きていた事には気付いていた。
 ただムドの行動に干渉し、わざわざ自分の楽しみを減らす事はしないだろうと放っておいたのだ。
 望み通りの行動をしてくれた事に、頼んだわけではないが礼はしっかりしておく。

「屋上の硬いコンクリートで寝るより、ベッドの方が百倍マシだからな。それぐらいの事はする。それに……」

 パイプベッドの上で立てた膝を、エヴァンジェリンが開いていく。
 ムドに見せ付けるように妖艶な笑みを浮かべながら、制服のスカートをたくし上げる。
 意外な白、フリルがふんだんに使われたショーツが露となった。
 その純白の園に一点、異なる色が混じっていた。
 愛液という蜜により色を変えた一点、その染みがジワジワと広がっていく。

「今の私は、貴様と同じ状態。急激に戻った魔力が、小さな魔力に慣れきった体を犯していくのだ。つまり、常に発情している状態だ」

 分かるなと視線で問いかけながら、ショーツに覆われたままの秘所を両手で広げる。
 よりあふれ出した蜜によりショーツは半透明となり、男を受け入れた事のない場所を浮かびあがらせた。
 桃色の花びらを見せつけ、甘い蜜はここだと針となる一物を持ったムドを誘う。

「私には、亜子さんの心を引き寄せ直す算段が残っているのですが」
「そういえば、あの娘は佐々木まき絵と仲が良かったか。なら、私を存分に満足させれば手伝ってやらんでもないぞ?」
「自分の従者、女ぐらい。自分でなんとかしてみせますよ」

 エヴァンジェリンの目の前に跪きながら、きっぱりと断る。
 そして間近で秘所を見つめられ、より高ぶり蜜を増やす花弁へとムドは舌を伸ばした。









 エヴァンジェリンは、ご機嫌な様子で廊下を歩いていく。
 昼間の眠気も一度去り、ネカネ仕込のムドの舌で何度も果て、魔力も発散できた。
 普段履かない白が良かったのか、ムドも積極的に舌で奉仕してくれ、体が軽い。
 小さな体で精一杯の色気を振り撒き、何人かの生徒に振り返られながら数十分前を思い出し熱い吐息と共に呟く。

「私を犯したくても犯せないあの切なげな顔、代替行為として肌とショーツに一物を挟まれ果てる時の声。可愛いものじゃないか」

 その為、どうせ一度したのだからと唇までもを許してしまった。
 舌を絡め唾液を飲みあい、ムドの腰がかつてないほどに加速した。
 こちらが壊れるかと思うぐらいの震動と快楽により、果てるのに時間は掛からなかった。
 少しサービスしすぎたかなとも思うが、有り余る快楽を得られたから良いとする。
 そしてアレが自分の中を蹂躙した時の快楽はいかほどか、興味が出てきた事は秘密だ。
 新品に履き替えたばかりのショーツが、再び濡れそうになってしまう為、思考を切り替える。

「続きはまた今夜。睡眠、性欲、あとは食欲を満たさせてもらおう」

 残る三大欲求である食欲を、この昼休みの間に満たすだけ。
 教室へ向かい歩みを進めていると、正面から茶々ゼロを頭に乗せた茶々丸がやってきた。
 さすがに今の茶々ゼロは、両手には何も持たず手持ち無沙汰な様子でケケケと笑っている。

「ヨウ、色欲狂イノゴ主人ジャネーカ。アンナガキニヨガリ狂ワサレヤガッテ」

 口が悪いのは何時もの事なので、茶々ゼロの言葉は軽く流す。

「茶々丸、教室ではどんな具合だった?」
「少し異様かと。楓さんと古さん、夕映さんが私と姉さんを警戒。ネギ先生は気丈にも授業を進めてはいましたが……後、亜子さんがまき絵さんを気遣っていたのが印象的でした」
「そうか。坊やが息を吹き返すまでは、特別動かないとは思うが……お前は常に茶々ゼロと共にいろ」

 昨晩は結局あの後、ネギの心が折れると同時に撤退を見逃した。
 まき絵やのどかの姿も消えており、おそらくは別途木乃香や夕映が回収したのだろう。
 一先ずネギが心を癒すまで何もないとは思うが、注意するに越した事はない。
 エヴァンジェリンや古くからの従者である茶々ゼロとは違い、最新鋭ガイノイドといえど茶々丸の経験は圧倒的に浅い。
 特にこの麻帆良で生まれ、数年も経っていない現状では。

「はい、分かりましたマスター」
「うむ、聞き分けの良い下僕は好きだぞ」
「シッカリ、根ニ持ッテルジャネーカ。アノガキノ真似マデシテヨ」
「ええい、煩い。さっさと黙れ、この阿呆人形!」

 口の減らない茶々ゼロを一喝し、歩みを進めた。
 今日は何処で昼食をとるか、基本的に喧しいのは好きではないので外が多い。
 茶々丸の弁当も悪くは無いが、やはり出来たての方が美味しく感じる。
 やや無口な茶々丸と悪態以外言葉を知らない茶々ゼロを従え、足を向けた先に、彼女達がいた。

「エヴァ殿……」
「伝説の悪の、最強の魔法使い」
「夕映、下がるアル」

 主であるネギと木乃香を欠いた、ネギパーティである。
 極自然に立ち位置を変えた楓が前に進み出て、古が夕映を守るように身構えた。
 その口ぶりでは、エヴァンジェリンが何者か調べたという事なのだろう。
 ある意味で当然の反応だが、それでも気分が良いものではない。
 相手がとるに足らない存在ならば、いっそう。
 警戒され、身構えられても滑稽にしか映らないからだ。

「貴様ら、昨晩に見逃してもらった恩を忘れたのか?」
「まだ負けてないアル。ネギ坊主も直ぐに、立ち直るアル」
「授業中ノ、アノ様デカヨ。ナラ直グニデモ、殺シニ行ッテヤロウカ?」
「止めろ、茶々ゼロ」

 どうせ午後も保健室に入り浸るつもりだが、昼休みは貴重なモノだと体に染み付いている。
 ここで揉め事を起こして削られたくはない。
 茶々丸に茶々ゼロを胸で抱かせ、その悪い口を塞がせた。

「まったく、何故にコイツはこうも口が悪くなったのか。呪いの人形とはいえ、悪すぎだ」
「あの……一つ、聞かせてくださいです」
「私の事を調べた割には大胆な言葉だな。まあ、私も阿呆ではない。節度ある態度の者には、それなりの対応ぐらいするぞ。言ってみろ」
「誰に頼まれて、ネギ先生を狙ったですか?」

 夕映の核心を突いた言葉に、ほうっと小さな敬意の溜息が漏れる。

「エヴァンジェリンさんの行動は何もかもが不自然でした。最初にまき絵さんを襲い、その日のうちに今度はのどかを。何百人と女子生徒がいる中で、ネギ先生の担当の生徒を襲ったのは偶然でしょうか?」
「ふむ、確信にいたるには少し弱いな。もう一人、襲われていれば問題なかっただろうが。私はこう答える、偶然だと」
「では、何故貴方はまき絵さんのアーティファクトを知っていたのですか?」
「知っていたとは?」

 夕映の眼差しには、脅えの影が薄かった。
 知識としてエヴァンジェリンの事を知ったとはいえ、やはり実感が薄いせいか。
 ただ理詰めで物事を整理し、真実に手を伸ばそうとする姿勢は好ましい。

「仮に、まき絵さんの仮契約カードをたまたま見つけ、効果を確認したとしましょう。ならば逆にのどかを襲うのは不自然です。ネギ先生が魔法使いであり従者がいる事を知りながら、また彼の生徒を襲うことが。貴方が本当に悪い魔法使いであるならば、それは避けるのが普通」

 夕映が理詰めで答えを求めることで、エヴァンジェリンの偶然という事場が揺らぐ。

「貴方を調べれば調べる程、昨晩の行動が奇異に映るのです。何故、わざわざまき絵さんのアーティファクトを確認したのか。さらに、魔法先生であるネギ先生の生徒をわざわざ狙ったのか。挙句、ネギ先生をくだしながら、我々の撤退を見逃した。まるで誰かに頼まれ目的を達した、そう思える程に」
「私も、魔力が戻って少々浮かれていたらしいな。認めてやる。取り引きの結果、頼まれてやったのさ。坊やの心をへし折ってくれとな」

 別にそれぐらは良いかと、夕映の鋭い考察に敬意を表して教える。

「誰アルか。まさか……あの地下図書館でのゴーレム使いアルか?」
「良い気分に水をさすな、中華娘。全く、私は十五年の間、坊やの父親ナギ・スプリングフィールドのせいで魔力を封印され、お気楽な女子中学生を強制的に続けさせられていた」
「エヴァ殿のあの実力から察するに、封印を解いてもらう代わりに頼みを受け入れたと」
「実際はそいつを気に入っているからという理由も大きいが。そういう事だ。貴様達が手を出さない限りは、私もこれ以上はなにもせん」

 何をしないからと言って、楓達も素直には安堵できないのだろう。
 身構えていた体が、意思に反して警戒の構えを解かない。
 何故なら既にネギの心は折れてしまっている。
 春休みの間の短い期間とはいえ、皆で共通の敵に備え、力を培ってきたというのに。

「言っておくが、坊やにこの事実を伝えるのは止した方が良いぞ。坊やが自分の意志で乗り越えなければ、意味が無い。折れた心を修復するのではなく、新たに柱を建てねば一度折れたモノはまた折れやすい」
「では失礼します、皆さん」
「オイ、ソコノ忍者娘。オ前、筋ガイイゼ。次ハ命ヲ賭ケテ殺シ合オウゼ。ソノ方ガ楽シイダロ?」

 全く意に介した様子もなく、何処で昼食をと呟きながらエヴァンジェリンは去っていく。
 その三人を見送り、姿が完全に見えなくなった所でようやく楓や古が構えを解いた。
 頬や額に汗が浮かび上がり、雫となって流れ落ちる。
 昨晩、二人はネギを追いかけていて、茶々丸や茶々ゼロに足止めをくらった。
 茶々丸と相対した古はほぼ互角であったが、楓は茶々ゼロに封殺されていた。
 無闇に傷つけるなとでも言い含められていたのか、何度か隙を見逃して貰った事もある。
 そんな二人に、さらにエヴァンジェリンが加われば、最初からネギの傍に従者全員がいても結果は同じだっただろう。

「全く、自分の未熟を思い知らされた感じでござる。ネギ坊主の逃げるという判断は、正しかったでござるな。心が折れながらも、きちんと状況を把握していたでござるよ」
「一番弱い茶々丸でさえ、私と互角だったアル。まさか、茶々丸があんなに強かったとは、ノーマークだったアル。次こそは、勝つアル」

 圧倒的強者を前に、それでも武者震いを起こす古の頭に、落ち着けとばかりに楓が手を置いた。

「しかし、エヴァ殿の言う通り……今後、エヴァ殿クラスの相手が現れないとも限らないでござる。未だゴーレム使いも、何処にいるのか分かってはいない」
「ですが、今考えるべきは来るべき敵でも、当座の敵でもないです」
「ネギ坊主の粉みじんになった自信アルな。私にも経験はあるアルが……」

 なんとか、ネギを引き上げる方法はないものか。

「あ、おったえ。夕映、くーふぇ、楓」

 頭を悩ませる三人の元へ、手を振り上げながら走ってくる木乃香の姿が映った。









 圧倒的強者、それが放つ一撃に体力も気力も奪われ、ネギは敗北ではなく勝てないという事を悟った。
 だがネギの心を占めていたのは、強者に対する脅えではない。
 昨晩の出来事より、ずっと考えていた。
 傷は木乃香に癒され、失せた体力を取り戻そうと、頑張って眠ろうと試みていた間も。
 殆ど眠る事ができないまま朝を迎え、家族と食事をし、職場で生徒を前にしている間さえ。
 近しい人を守れなかったらどうしようと。
 襲い来る敵に打ち勝つ事ができなかったらではなく、その結果守れなかったら。

「僕、何も変わってない。あの卒業式から、地底図書館での事から……」

 薄暗い空の下を、麻帆良女子中学生寮へと向けて歩きながら呟く。
 ムドへの周りの冷遇を知ってから、弟を気にかけそばにいる事が多くなった。
 地底図書館でムドを殺されかけてから、外敵に抗える力をさらに求めてきた。
 春休みの間も、最低限の先生の仕事以外は全てを従者との鍛錬に費やし、強くなったはずだった。

「相手が強かったから……そんな言い訳、通用しない。負けたら、そこで終わり。力がないと何も守れない」

 だがその力を手に入れるまで、どれだけ掛かる。
 最強と謳われる魔法使いの一人であるエヴァンジェリンに一撃で破れ、その高みさえ理解する事はできなかった。
 最強の座はどれぐらい高く、遠い先にあるのか。
 何もかもを守る為には、悪魔でさえ容易く葬る父のような最強でなければならない。
 何十年掛かるかも分からない道の先へ辿り着くまで、守り続けるはずがなかった。
 ムドも、ネカネやアーニャも、従者になってくれた木乃香達でさえ。

「怖い……失い続けるだけの道。負ける事よりも、守れない事が怖いんだ」

 寮を目前として足は立ち止まり、両の瞳から涙が零れ落ちる。
 今ここで涙を枯らさなければ、ムドやネカネ、アーニャの前で泣きかねない。
 兄として、男として強くあらねばならないのだ。
 今のネギにできるのは、家族に心配させないよう普段通りに振舞う事だけ。

「ネギ君、おかえり」

 そんなネギの前に木乃香が現れ、目線を合わせてそう言ってきた。
 薄暗いとは言え、流した涙がみえないはずがないのに。

「こ、木乃香さんこれは……あの、僕ちょっと目にゴミが入っただけで!」
「ええんよ、なんも聞かへんから。でも、ちょっとだけウチに付き合ってな?」
「はい、構いませんけど」
「ならちょっと、目瞑っとってな」

 言われた通り、ネギが目を瞑ると手を引かれ、歩き出す。
 直ぐ近くだと思いきや、感覚では寮の中へと足を踏み入れ、まだ先へと続く。
 そして何か布キレのようなものが頭に触れ、何処かの扉をくぐった途端、なにやら良い匂いに包まれた湿度の高い場所に出た。
 一体ここはと考えていると、一度ここで待っていてくれと置いていかれる。
 木乃香の行動が良く分からず、それでも待っていると再び手を握られた。
 だが木乃香ではなく、誰だと瞳を開けようとした瞬間、体が軽く宙を舞った。

「え?」

 視線を落とした先には、全裸でネギのスーツを手にしている楓がいた。

「秘技、強制武装解除……で、ござる。にんにん」

 真面目なのか、ボケなのか。
 疑問の答えが出る間もなく、隣にやってきたこれまた全裸の木乃香に楓がスーツを渡した。
 木乃香がスーツを脱衣籠にしまっている間に、楓が広げた腕の中にネギが落ちてくる。
 そのネギは腕に当たった生の楓の乳の感触に赤面しながら、顔を両手で覆った。

「え、なに……見てない。僕はなにも見てないです。紳士ですので!」
「それでは意味がないでござるが、今のうちでござる」
「ほな、いこか」

 からりと引き戸を木乃香が広げると、むせ返るような湯気が出迎えに現れる。
 そこでようやく、ネギはここが女子寮のお風呂である事を察した。
 逃げようと暴れれば抱きかかえてくれている楓の胸が、腕にお腹にと当たってしまう。
 楓は問題ないとばかりに何時もの糸目で微笑んでいるが、ネギはそうはいかない。
 恥ずかしいやらなんやらで、しかも何やらトイレに行きたい時とは違う何やらむず痒い感覚が下腹部から上ってくる。

「来た、本当に連れて来たアル。確かに中国でも相手を高める房中術というものがあるアルけど、まだネギ坊主には早いアル!」
「おち、落ち着くです。目的はネギ先生を立ち直らせる切欠を、その……くーふぇさん。ピルは何処で売っているのでしょうか?」
「あー、そんな慌てんでもええって二人共。ちょっとネギ君とお風呂に入るだけやん」
「とにもかくにも、いざ湯船の中へ。ネギ坊主、少し熱いでござるよ」

 大勢の寮生を受け入れる為の、広い湯船の中には古と夕映が待っていた。
 ただし木乃香や楓程、開き直れてはいなかったようで体を腕で隠しながら湯船に沈む。
 その湯船の中へと、ネギを抱えた楓と木乃香が掛け湯をしてから浸かっていく。

「ネギ坊主、もう目を開けても良いでござるよ」
「無理です、何を考えてるんですか。僕、帰ります。こんな事をしてる場合じゃ、うわッ!」

 楓の腕を抜け出し立ち上がるが、直ぐに湯船の中に戻ってしまった。
 背後や横にいた楓や木乃香は兎も角、古や夕映は正面にいた。
 そこで立ち上がれば、先程からむず痒い小象がさらされるわけだ。
 ネギの悲鳴に隠れてはいたが、小象を見てしまった二人もまた小さく悲鳴をあげていた。

「ネギ坊主、落ち着くでござるよ。湯船で騒ぐのはマナー違反でござる」
「そうやえ、とりあえずゆっくりつかろう?」
「マナー違反……は、はい」

 固く瞳を閉じながら、半分諦めたネギが肩までしっかりと浸かった。
 そのネギの腹に両手を差し込んだ楓が、ぐいっとその小さな体を引っ張り後頭部を胸で受け止める。
 ここでも取り乱しかけたネギであったが、その手を木乃香に握られ、無理やり落ち着く。
 下手に暴れても楓ならなんとかしてくれそうだが、木乃香だとそうはいかないからだ。

(なんだろう、なんなんだろう。後頭部がふわふわするし、木乃香さんの手はお湯より温かいし……ところで、お尻の辺りでさわさわ揺れてるのなんだろう?)

 ネギの知識では、お湯の中で楓のワカメが揺れているなど想像もつかないのだろう。
 そんな小さな疑問を浮かべている間に、古が木乃香とは逆側に移動し、ネギの手を取った。
 これに慌てたのは夕映であり、もはや残っているのはネギの正面しかない。

(ネギ先生の小象を……アレを握れと、む……無理です。ハードルが高すぎです!)

 くらくらと茹で上がりそうな脳みそで考えた結果、まだこっちの方がと背中からネギにもたれ掛かった。
 ネギが楓のワカメにお尻が触れたように、ネギの小象がお尻に触れるとも思わずに。
 完全なパニックに陥った夕映のお腹に、楓が手をまわした。
 そのまま夕映ごと、再度ネギを自分に抱き寄せ、従者による完全包囲が完成する。

「ネ、ネギ先生……あまり動かれ、ぁっ。なんだか少し、大きく」
「すみません、夕映さん。なんか変な感じで……結局、なんなんでしょうか?」
「主従の裸の付き合い、と気軽に考えるでござるよ。今、この瞬間だけは全てを忘れて」

 柔らかな枕を提供してくれる楓が、そう呟いてネギの頭を撫でた。

「細かい事はええやん。ネギ君も満更やあらへんやろ?」
「胸に持ってくとさり気に手が動くアル。ませてるアルな」
「ちょっと、木乃香さんもくーふぇさんも安全地帯からやり過ぎです。私が、私の危険地帯にネギ先生のアレが!」
「忘れられるわけ、ないじゃないですか」 

 女の子と一緒にお風呂に入る羞恥も、初めて持て余した性欲も今は忘れてそう呟いた。
 柔らかな肌と花のような香りに包まれていると、下半身が疼く。
 ネギはそれの意味を知らないが、昨晩に命の危機を感じた事で生存本能が子孫を残そうとしているのだ。
 今しばらくこの行為に没頭すれば、精通さえ迎えたかもしれない。
 だがネギの心が、折れた心がそれを許さなかった。

「今こうしている間にも、ムドが……他の誰かに危険が迫ってるかもしれない。でも駆けつけたとして、助けられるとは限らない。何もできずに、昨晩みたいに……」

 弱い事は悔しいが、もっと辛いのは現実が待ってはくれない事だ。
 ある日突然現れた絶対的強者に全てを奪われる、あの日のように。

「ネギ坊主……一人で気負い過ぎでござるよ」

 小さく嗚咽を漏らし始めたネギの頭を、今一度力を込めて楓が撫でた。
 少し角度をつけて、胸の谷間にまでその頭が沈んでしまう程に。

「忘れたら、あかんよ。ネギ君は、確かにエヴァちゃんに負けたけど……その前に、のどかを助けたやん。まきちゃんを、助けたやん」

 それは誇るべき事だと、握っていた手を胸に持っていった木乃香が、ネギの肩に頭を乗せた。

「目的は、敵を倒す事ではなく守る事。そもそも拳法の始まりも、そこから来てるアル。護身術なんて言葉はあるアルけど、そもそも全ての拳法は護身が起源アル」

 胸、胸と続いてはインパクトがないと、生唾を飲み込んでから古が思い切って太ももの間にネギの腕を挟んだ。
 手が丁度、若草に、いまは色が明るいワカメに触れるように。
 湯船の熱さとは別の理由から、湯辺りしそうだが古は耐える。

「ネギ先生、先生には我々がいるです。一人ではなく、皆で守りましょう。確かにエヴァンジェリンさんは圧倒的な存在です。が、ネギ先生のお父さんに力を封印されていたように、絶対的な存在ではないはずです」

 お腹に回っていたネギの腕に触れ、思い切って膨張中のネギの小象の上に座った。
 体勢のせいで割れ目にまで届く事はなかったが、それでもお尻にはしっかり挟まっていた。
 誰も彼もが死にそうに恥ずかしい思いを、乙女の柔肌を使ってまでネギを支える。
 新しい柱がその心の中に建てられるように、皆でネギの心に太い柱を建てていく。

「父さんが? ……僕は、本当に守れたんでしょうか?」
「守れていたでござるよ。それは勝敗とは別の事でござるからな」

 楓の言葉を最後に、湯船の中に雫が落ちる。
 ぽたぽたと天井に辿り着いた湯気が雫を落とすように、ネギの瞳から。
 続く嗚咽を、誰も泣き止めと止めようとはしなかった。
 ネギの涙が混じる湯船の中で、より体を密着させて自分の存在を感じさせた。
 大木の湿気を抜くようにネギは涙を零し、湿気が抜けた大木を新たな柱として打ち立てる。

「もう一度、挑んでみようと思います。まだ勝機と口にする確実なものもありませんが、もう一度」
「なら、早速修行アル。一日や二日で埋まる差じゃないアルが、何もしないよりはマシアル」
「古の前向きさを、ネギ坊主も少しは見習うべきでござるな。拙者も付き合うでござるよ」
「怪我したり、疲れたら言ってや。直ぐ、癒したるえ」

 ならば早速とネギの言葉に賛同する中で、夕映がふるふると体を震わせていた。

「あの……そうと決まれば、今すぐにでも。というか、もう我慢できないです!」

 ある意味で、楓よりも密着していた夕映が、湯船より立ち上がった。
 敏感な部分にネギの小象を挟むどころか、それが僅かながらすくすくと大きくなっていたのだ。
 耐えられるはずはないのだが、ネギを含めた他の四人は何故夕映が突然立ち上がったのかが分からない。
 自分の背中に集中する視線を感じたのだろう。
 慌てて振り返った夕映が、両手を激しく振り乱しながら弁論を試みようとして気付いた。

「あ……つるつる」
「へ、つる……!?」

 背中を預けていたのだからして、立って振り返ればどうなるかは自明の理だ。
 ネギの言葉通り、毛が生えていない割れ目がネギの視界にさらされる。
 慌てて湯船にしゃがみ込むが、もう遅い。

(見られ、全部見られたです。生えてない事まで……かくなる上は、ネギ先生にせきに)

 そしてうな垂れて湯船の床に手をついたのが運のツキ。

「小象が、ネギ先生の小象が……心の柱よりも先に立ってるです!」
「あのこれ、なんですか。痛くて、でもお湯の流れに触れると少し……気持ち良いような」
「むう、まさかネギ坊主がここで目覚めるとは、流石に予想外でござる」

 相変わらずネギを股の間に置きながら、本当に驚いているのかと突っ込みたい程に落ち着いた声を楓が上げていた。
 もちろん、ネギの勃起を聞かされた途端、木乃香も古も少し距離を取っている。

「ネギ先生はいずこですか。そのお悩みを、この雪広あやかの胸にてお聞かせください!」
「なんかネギ先生、様子が変だったもんね。こんな面白そうな事、放っておけないって」
「ゆえゆえ~、何処?」

 そして何故か、あやかを筆頭にハルナやのどかと二-Aの面々がやってきてしまった。
 流石に水着は着用しているようで、楓達のように全てをさらしている者はいない。

「まずい、隠れるアル。というか、何故いいんちょ達……ネギ坊主、立たずに湯船の中で移動するアル!」
「あやや、ちと早かったえ。もしもの時の為に、皆の力も借りようかなって声をかけといたんよ。止めるの、間にあわへんかったね」
「どうするですか、今のネギ先生は……」
「うぅ、僕って病気ですか。変な病気じゃないですよね」

 股間を押さえながら、涙目で訴えるネギに木乃香達の胸がキュンと刺激される。

「仕方が無いでござる。ここは、抜くか」
「引っこ抜くんですか!? おチンチンがなくなったら、僕は女の子になっちゃいます!」

 いや違うと四人に突っ込まれ、結局は勃起が収まるまでお風呂場を逃げ回ることになった。









-後書き-
ども、えなりんです。

ネギが一撃で敗れたのは、ムドも想定していませんでした。
狙ってたのは、上には上がいる事を理解し、世界の広さを知る事でした。
まあ、細かい打ち合わせをせず、エヴァまかせにしたムドの落ち度ですがね。

そして、ボロボロのネギ君。
従者と裸の付き合いで絆を深めつつ、精通が来ましたw
ただしまだ性知識がないのでにゃんにゃんはないです。
ネギの思春期については、今後もちょいちょい出てきます。

それでは、次回は水曜です。


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