第二十話 従者の昼の務めと夜のお勤め
魔法関係の慣れない修行という行いにより、体はとても疲れている。
だというのに、亜子はベッドに潜り込んでからも眠気に誘われる事はない。
どれ程の間、ベッドの中をごろごろしていただろうか。
最後には腕を額に置いて、薄暗い中で二段ベッドの天井を見上げていた。
静まり返った中で時折、耳に聞こえるのは微かにベッドが軋む音と、まき絵の寝言が聞こえる。
えへへと笑った後にネギの名前を呟く。
自分を尊重して新体操に専念する事を認められかつ、守ってくれると言われたのが嬉しかったのだろう。
四歳年下の男の子とは言え、あんな自信に満ちた瞳で言われれば嬉しいに違いない。
「私かて、嬉しいもん」
まき絵より余程明確な恋心、愛情をムドに持つ亜子はなおさら。
守るとは決して言ってはもらえないが、どんな言葉でも、極端に言えば挨拶一つでも嬉しいものだ。
だが同時に、ムドとアーニャが仲良くしている様子はとても辛い。
ムドの答えに自分で耳を塞いだまま、体の関係を持ってしまった為に。
アーニャに対する罪悪感と、ムドの気持ちが分からない不安感。
それら二つが胸中に渦巻きながらも、片手を毛布の中に滑り込ませ、太ももの間に滑り込ませる。
「ん、あぅ……」
パジャマの上から触れた秘所は濡れている感触こそないが、少し湿っているように感じられた。
契約執行を受けた後はいつもこう、酷く体が疼くのだ。
皆もこうなのか、それとも自分だけが特別なのか。
後者ならば、ムドとの特別な関係が形として現れたようでかなり嬉しい。
例えそれがいやらしい形で、死ぬ程恥ずかしくても。
頭で考えるよりも先に、指先が勝手に動いて秘所の割れ目をなぞり、薄い陰毛を擦り合わせる。
「亜子、駄目だよ」
「ひゃッ、ちゃちゃうねん!」
突然、二段ベッドの上からまき絵の声が落とされ、パジャマのズボンの中に伸びそうだった指を毛布の外にまで抜き出した。
ムドの一物に見立て、すいついていたもう片方の手の親指も同様だ。
ドキドキと高鳴る鼓動を前に硬直しながら、万歳の格好で息を潜める。
だがどうやら寝言であったらしく、ほっと息をつくと同時に、熱く顔が火照り始めた。
「な、なにしとんねん。オナ、オナニー……やなんて、あかん。頭冷やしてこう」
まだまだ夜は風が吹くと冷えるので、パジャマの上にカーディガンを羽織って部屋を出る。
特別何処かを目指したわけでもないのだが、ふらふら歩いているうちに寮の外にまで来てしまった。
吹きすさぶ風は予想通りまだまだ冷たく、ぶるりと体が震えた。
だからというわけではないのだが、持ってきていた仮契約カードを手にとる。
「アデアット」
仮契約カードが輝きに埋もれ、別のモノへと形を変える。
エレキベース型のアーティファクト、傷跡の旋律。
ベースという地味さか、それとも傷跡というキーワードがお似合いなのか。
相手の傷口を抉る効果もそうだが、あまり好きではないそれを抱えて、弦を弾く。
アンプにも繋いでいないのに重低音でありながら伸びのある音が鳴り響いた。
ベースは小さい頃に父親のを触った程度で、何か曲が弾けるわけではない。
今はまだ、主役にはなれないなと自重しながらただただ弦を弾き続ける。
何も考えないように、それでも少しだけムドの笑顔や小さな手の平を思い出しながら、弾く。
「こら、夜中に近所迷惑よ」
「へ?」
ついつい夢中になってしまい、不協和音を掻き鳴らしていると優しい声での注意と共に、頭をコツンと叩かれた。
振り返ったそこにいたのは、普段よりも心持ち顔色の良いネカネであった。
「あ、ごめんなさい。五月蝿かったですか? 確か、寮長室は一階に」
「大丈夫よ、ネギ達は昼間の修行で疲れてぐっすり。明日からの学校に備えて、寮の子達は早くに寝てるし。起きてたのは、私ぐらいかしら」
「こんな時間まで、お仕事ですか?」
「夕方に停電騒ぎがあったでしょ? あれのせいで臨時にね」
停電に関して、ネカネが何をする事があるのか亜子は深くは考えなかった。
ただ単純に気楽な学生とは違い、お仕事を持っている人は違うなとぐらいにしか。
そう思いながら、亜子は改めて夜風に遊ばれる髪を手ぐしで押さえているネカネを見上げた。
ムドと同じ金髪の長い髪に、外国の血を感じさせる白い肌とはっきりとした青い瞳。
何時も穏やかな性格で、ムド達ばかりでなく寮生の面倒を見る事も多い。
寮生の中でもそんなネカネに憧れる者は多く、一種の理想像として崇める者もいる。
亜子も崇めるまではいかないが、憧れを抱く寮生の一人だ。
それにムドの姉でもあるので、将来はなどと想像した事は一度や二度ではない。
「さあ、あまり長居しちゃうと風邪ひいちゃうわ。お部屋に戻って、寝ましょう。明日から、また忙しい毎日よ?」
「あ、あの……ネカネさん」
「はい?」
「相談に、のって欲しい事があるんです」
だから、憧れの人に、ムドに最も近い家族の一人として、亜子がそう言い出してもおかしくはなかった。
寮長室の近くにあるネカネの研究室に招かれた亜子は、俯いたまま何も言い出せずにいた。
少々物が乱雑に置かれたテーブルの上に置かれた、紅茶にも手をつけず。
それでもネカネは辛抱強くニコニコと亜子が相談内容を口にするまで待ってくれている。
言わなければ、わざわざ時間をくれたネカネの為にもと思えば思うほど、口が重くなっていった。
そもそも、相談の内容が内容なのだ。
ついにというべきか、亜子は一人で勝手に涙をこぼし始めてしまった。
何も言わず涙を流してもネカネを困らせるだけだというのに、一度流れ始めた涙は止まらない。
「あらあら、大変。ほら、泣いてちゃ可愛い顔が台無しよ」
亜子の横に座りなおしてくれたネカネがハンカチで涙を拭いてくれたのを切欠に、想いが言葉となって溢れてくる。
「ウチ……可愛くなんかあらへん。折角ムド先生が背中の傷を消してくれたのに。恩を仇で返すような。迷惑かけて」
「大丈夫、きっとムドは迷惑だなんて思ってないわ」
「ムド先生がアーニャちゃんの事を好きなの知っとって……無理やり、まだ十歳やのに」
「亜子ちゃんは、ムドの事が大好きなんだ」
一瞬の躊躇、その後に亜子の首が小さく縦に振られた。
ネカネは亜子の顔を自分の胸に埋めさせ、嗚咽を漏らす亜子の頭を撫で付ける。
亜子の体が小刻みに震えており、その胸の内の苦しみが良く分かった。
何故ならそれは、かつてネカネも抱いていたものなのだから。
それ故、本当にムドは仕方の無い子だと思わずにはいられなかった。
自分の利益の為に、必要だと思えば迷わず女の子に手を出す事がではない。
(あの子、人を騙したり陥れるのは得意なのに、案外人の気持ちが分からないのよね。特に、自分を好きになってくれた女の子の気持ちは)
ここはやはりお姉ちゃんが人肌脱ぎますかと、ロングスカートのポケットに手を入れる。
常日頃常備しているそれに触れながら、、亜子を抱きしめて耳元に話しかける。
「ねえ、亜子ちゃん。そのままで良いから聞いてちょうだい」
頑張って小さく頷かれ、良い子ねとまた撫でる。
「そんなに難しく考える事はないのよ。亜子ちゃんはムドが好き、アーニャもムドが好き。ムドは、将来アーニャと結婚するけど、亜子ちゃんも好き。それで良いじゃない」
「ど、どういう事やそれ?」
さすがにそのまま頷く事も、受け流す事も出来ずに亜子が顔を上げた。
キスすら出来そうなほど間近で、聞き返される。
真面目に相談したのにと亜子は少し怒っているようにすら見えた。
それでもネカネは怯む事もなく、さらに笑みを、妖しい笑みを深めて囁く。
「亜子ちゃんも、私と同じになれば良いって事。私もムドが好き。ムドが将来アーニャと結婚しても、私はムドの隣にいる。ムドと二人でアーニャを愛するって決めたの」
「そんな……アーニャちゃんの気持ちはどうなるんや。そんなの、おかしいやん!」
「でも、苦しいでしょう? 今のままだと、亜子ちゃんの想いは絶対に報われない」
報われないと聞かされ、脅えるように目をそらそうとした亜子をネカネは逃がさない。
顎に手をかけて固定し、その瞳を正面から覗きこんだ。
「い、いやや。もう二度と振られたくなんかない。怖い、あんなんちゃう。私が想い描いた私なんかとちゃう!」
「そう、好きな人に振られるのは誰だって怖い。だから、皆で愛しましょう。ムドが愛する人を、ムドを愛する人を。お互いがお互いに愛し合いましょう?」
固定された亜子の唇へと、ネカネが瞳を閉じながら唇を近づける。
「止め……ウチ、まだ決心が」
「決心なんか要らないわ。ただ一線を飛び越えるだけ、そうすれば自然と」
二人の唇が触れあい、頬を染め震えながらも亜子が瞳を閉じた。
そしてほんの少し唇を開いたネカネが、舌先で亜子の唇をつつく。
遊びましょうというお誘いではなく、貴方から遊びにいらっしゃいと。
度重なる催促は、唇を舌先でつつくだけに終わらなかった。
硬直し、一切の行動が停止した亜子のカーディガンを脱がし、髪の色に合わせた薄い水色のパジャマの上から胸に触れる。
「緊張しないで、力を抜いて」
「あ、あかん……ウチ、ネカネさんと違うて小さいから」
「ふふ、でも可愛いわよ。ムドは、この可愛らしい胸をどう揉んだのかしら。ほら、亜子ちゃんも触って良いのよ」
セーラー付きの紺のワンピースの上から、亜子の手を胸に添えさせる。
最初は恐る恐る、ネカネのふくよかな胸に触れるだけ。
だが緊張が解けるにしたがって亜子の手は大胆に動いて揉みしだき、舌先もネカネの唇の中へと吸い込まれていった。
一人の男の子を同時に愛する為に、まずお互いが愛し合う。
舌を絡めあっては唇に吸い付きあい、性感を高めあっていく。
「伝説の悪の魔法使いも虜にした私の胸はどうかしら?」
「ふわふわしてて気持ちええです。私も、これぐらい大きくなるやろか」
「だったら、一杯ムドに揉んでもらって。ここに一杯出してもらいましょうか。そうすれば、きっと女性ホルモンが一杯出て大きくなるわよ」
「はう……あ、そんな触ったら」
ここの呟いたネカネが、パジャマの上から亜子の子宮辺りを指先でなぞった。
一度夜のお勤めを果たして満足したネカネとは違い、亜子は夕方からずっと体を持て余していたのだ。
そこへ意図せぬ刺激を受けて、忘れかけていた疼きが蘇る。
唇や胸と、秘所から随分と遠い場所にばかり愛撫を受けて、物足りず太ももを擦り合わせていた。
「我慢出来ないって顔ね。その前に、脱いじゃいましょうか」
「やっぱり、ウチ……貧相やから、恥ずかしいわ」
「はいはい、ネカネさんは亜子ちゃんのそんな台詞に聞き飽きました。さっさと脱いじゃいましょうね?」
抵抗しないと、手早く自分の服を脱いだネカネが、亜子のパジャマを脱がしてしまう。
今は違うが、数年前にネギやアーニャにしていたので、手際が良い。
上着はばんざいと言って脱がせ、下のズボンは自分の方に背中から倒れさせて浮いた腰の隙間から一気に脱がせる。
やはりまだ羞恥心は残っているらしく、亜子はますます体を縮めて丸まってしまった。
それはそれでと、ネカネは背面座位の形となるように亜子を自分の膝の間に座らせて抱きしめた。
「ネカネさん、あんまくっついたら背中が」
「聞こえませーん。はい、ブラジャーも取れました」
「あっ」
「最後の一枚は、後でのお楽しみ」
そう呟き、早速ネカネが亜子の首筋に舌を這わせ始めた。
そのまま舌へと首を下げて、もう殆ど跡のない傷跡にまで這わせていく。
今や立派な性感帯と変貌を遂げた傷跡を刺激され、ふるりと亜子が身震いする。
同時に、ネカネは女の子の体はムドよりも詳しいとばかりに、胸にも手を伸ばした。
手の平にすっぽりと収まる丁度良い大きさの胸を弄ぶ。
「どう、愛し合う事は気持ち良いでしょ?」
「今さらやけど、愛し合うのと違うんっ、やないかと……ぅぁ」
「亜子ちゃんは純情なんだから。愛し合う事と抱き合う事はほぼイコールよ」
弱々しい否定を行いながらも、亜子は十分に感じ始めていた。
そとで風に吹かれた時の肌の白さは失せ、顔だけでなく体全体が火照り始めている。
絶えず背中の傷を舐められ、胸を揉まれるのみならず乳首まで遊ばれては当然か。
最後の一枚とネカネが称したショーツには、しっかりと愛液による染みが出来ていた。
「それにしても、本当に嫉妬しちゃうぐらいきめ細かい肌ね。日本人の女の子は皆こうなのかしら」
「そんなウチなんて……木乃香とか刹那さんの方が、他にも綺麗な人は」
「まだそんな事、卑屈な人はこうよ」
少し体を後ろに傾けたネカネが、亜子の両膝の舌に手を差し込んだ。
そのままM字に足を開脚させたまま持ち上げる。
幼い子に親がおしっこをさせるような格好に、小さく悲鳴を上げながら亜子が両手で顔を覆った。
格好のみならず、残されていたショーツが秘所に激しく食い込み、恥丘が強調されていたからだ。
「ネカネさん、あかんて。ウチ、恥ずかし過ぎて……お、降ろして」
覆われた両手の隙間から放たれたか細い訴えを、ネカネはあっさりとしりぞけた。
「丁度良いから、このままね。ムド、入ってらっしゃい」
「え、えッ!」
ネカネの心底楽しそうな声の後、研究室の玄関の扉が開かれる音が聞こえた。
続く足音は、心なしかムドのものよりも大きい。
だがそんな細かい事よりも、亜子はまた抱いてもらえる期待感と、羞恥をあおる格好に青ざめたりと忙しい。
いややと暴れる亜子にさすがのネカネも苦戦していたが、それもムドが現れるまでであった。
亜子の抵抗が、ピタリと止まったからだ。
普段よりも随分と大きな、それこそ別人かと疑ってしまうぐらいに急成長をしたムドを見て。
「姉さん、こんな夜更けに呼び出したかと思えば、なにをしてるんですか」
その声は普段のものよりも幾分低いが、それでもボーイソプラノであった。
年の頃は亜子と同じ十四、五辺りで身長は百五十と少し。
グレイのパジャマのボタンは胸元の半ばまで外れており、妙に艶かしい。
ほぼ完全に近い、ムドの未来像が今亜子の目の前にいた。
「ほら、亜子ちゃん見て。将来のムドは、こんな可愛くなるのよ」
「か、格好良い……」
「断言しても良いわ。金輪際、ムドほど頭も良くて、可愛く綺麗な子は亜子ちゃんの前に現れないわ。身長がちょっとネックだけど」
「放っておいてください」
ネカネのいらぬ一言に、ムドが憮然とした表情になっても、亜子はずっと見つめていた。
一人だけ時が止まったように、自分が恥ずかしい格好をしている事さえ忘れて。
カッと熱くなる顔が、心臓へと沸騰したかのような血液を送り込み始める。
媚薬入りの薬や卑猥な流れ込み方をするムドの魔力のせいでもない。
亜子は今、改めてムド・スプリングフィールドに恋心を抱いたのだ。
「ムド、疲れてるかもしれないけど頑張って男の子でしょ。亜子ちゃんはもう、準備バッチリよ。ほら、こんなになってる」
「はぅんッ」
抱えていた足を片方放して、ネカネが亜子の秘所を指先でトントンと打ちつけた。
染みの一言ではもう片付けられない程に、そこは潤っている。
「ムド先生、ウチ……本当にあかんくなってもうた。もう、ムド先生から目が離せへん。好きすぎて。お嫁さんやなくてもええ、傍にいたい」
「全部、知っちゃったみたいですね。申し訳ないですが、私はアーニャと結婚します。けれど、亜子さんも愛します。姉さんも、強欲にも全員を愛します」
「それでええよ。やから、ウチを愛して。ここ使って、一杯愛してや」
顔を覆っていた両手を使い、盛り上がる恥丘に張り付くショーツをズラした。
さらに秘所までもを広げ、処女膜を先日失ったばかりの局部を見せ付ける。
いささか状況が飲み込めていないムドも、そうまでされては引き下がれない。
夜のお勤めを終えた後とはいえ、まだまだ余裕があった。
亜子の痴態を前に、パジャマを脱ぎ捨てて剛直にまで成長した一物を取り出した。
「ふふ、覚悟した方が良いわよ亜子ちゃん。大人になったムドは、さらに凄いんだから。でもそのまえに、こっちいらっしゃい。濡らしておかないと亜子ちゃんのが裂けちゃうから」
「ふわぁ……エッチやわ、ネカネさん。ウチの下手な愛撫で、ムド先生が切なくなるはずや」
先走り汁すら出ていない剛直を入れては大変だと、亜子を抱えていたネカネが口を開けた。
以心伝心、同じ事を考えていたムドがネカネの口の中に剛直を突き入れた。
喉の奥が突かれるまでネカネがくわえ込み、唾液を絡めるように二度、三度と首を前後させる。
だがそれでも三分の二程しか濡らせず、仕方が無いと舌を使って根元まで舐めていく。
「これで準備は良いわね。はい、メインディッシュよ、ムド。しっかり味わいなさい」
「ムド先生、ウチの中で気持ち良うなってや」
「ムド、で良いですよ。好きな人に他人行儀にされるのは好きじゃないですから」
改めてネカネが亜子を後ろから抱きかかえ、どうぞとその下半身を差し出した。
恥丘の盛り上がりでずれたままになっていたショーツの脇から、ムドが秘所へと亀頭を触れさせる。
そのまま十分に濡れていた亜子の秘所、その奥へとムドが剛直を挿入していく。
ゆっくりと、亜子の秘所を傷つけないように、慎重に推し進めた。
「くるしっ、ちょっと痛ぃ。おっきな杭が、下から来るわ」
「亜子さんの中、キツ過ぎます」
まだ一度しか男を受け入れた事のない亜子の中は、狭すぎた。
耳をすませばミシミシと体を無理やり押し広げる音が聞こえたかもしれない。
亜子は下からくる衝撃を逃がそうと、天井を見上げながら断続的に呼吸を続けていた。
快楽とは程遠いその様子に、気を紛らわせようとネカネと首筋に舌を落としながら頑張ってと囁く。
ムドも片手で小ぶりな胸を愛撫し、時に唇で乳首を吸い上げながら腰を進める。
一度の挿入に、長い長い時間を掛けて、ついに亀頭が最奥である子宮口へコツンと触れた。
「あぁっ!」
長い時間をかけたせいか、それとも達成感からか。
最奥を小突かれただけで亜子が、果てるように体を震わせた。
「良く頑張ったわね、亜子ちゃん。ほら、お腹の方を見てみて」
「まだ、はぁ……お腹が、頭の方までジンジンしとる。うわ、ぽっこりしとるわ」
とても成熟しきったとは言えない亜子の体には、ムドの剛直が収まった道がはっきりと浮かび上がっていた。
その証拠に、あるはずのないお腹のふくらみに亜子が触れると、切なさを噛み締めるようにムドが呻くのだ。
愛する人と一つになっている、そんな充足感が亜子を満たしていった。
しかも背中側からは、ネカネが包み込むようにして支えてくれており、自分が何か守られているようにさえ感じた。
皆で愛し合うのも悪くはないと、亜子は一足飛びに大人への階段を上っていく。
ただし、ムドの剛直は長すぎたのか少々余っており、上りたくても上れない段がありそうだ。
「亜子さん、そろそろ動いても良いですか。ちょっと、我慢できそうにありません」
蟹股でスロウな挿入を行ったムドの足が、ふるふると震えていた。
「ええけどゆっくりな、ゆっくりやでムドく……あ、あっ引っ張られる。ずるって」
「挿入よりも、抜く時が凄いのよ。カリが鍵爪みたいに膣の中をひっかいていくの。もう、これを知っちゃうと病み付きよ」
「あひゃん、あはぅ……キス、ムド君。キスんふぅ」
ネカネ曰く、病み付きの快楽を与えられ、半分以上言葉にはなっていなかった。
半ばまで剛直が引き抜かれると、膣内に溜まっていた愛液がごぽっと溢れてくる。
そして再び侵入を始める剛直に呼吸を殺され、亜子はだらしなく口を開いてしまう。
その口へと唇を寄せたムドは、腰をゆっくりと使いながら呼吸を助けるように亜子の舌を巻き上げた。
すると耳に微かに呼吸音が聞こえ、愛撫へと切り替える。
「んふぅ、好き。ムド君、らい好きんっ……きら、お腹の中が削られちゃう」
どうやら挿入時よりも、引き抜かれる時の方が亜子の好みにあうらしい。
淫猥な光を帯びる瞳をとろけ落としそうになりながら、快楽を呟く。
そんな幸せ絶頂な亜子を支えるネカネは、少し不満そうにムドを見上げていた。
「ムド、お姉ちゃんも忘れないでね。相手にしてくれないと、拗ねちゃうわよ」
「明らかに体位のせいですよ。亜子さん、申し訳ないですが。一度、イッてもらいますね」
「へ? あ、んっ……そんらに早くしたら。あ、ぁぅっんん。あかん、伸びてまう。ウチのお腹の中が伸びてまぅっ!」
剛直に膣内を押し広げられるキツさは、多少なりとも和らいだようだ。
ならば尚更とばかりに、片道に一分近くかけていた所を往復で三十秒以内にギアをあげる。
それでもまだ遅いぐらいだが、さすがにこれ以上は亜子が壊れかねない。
ネカネの代わりにムドが亜子の足を抱え上げ、慎重にだが速めの挿入を繰り返す。
一方のネカネも速く自分の番とばかりに、空いた両手で亜子の胸の愛撫を開始した。
揉み転がしては乳首を少しだけ強くひっぱり、集中的に指先で転がしていく。
「凄い、二人も良かったけど三人だともっと。気持ちっ、良い。四人やと、もっと多いとどうなってまうん!?」
「亜子ちゃん、それは遠くない未来よ。アーニャに明日菜ちゃん、刹那ちゃんやいずれエヴァンジェリンさんも」
「私の体の負担を心配していただけると、ありがたいのですが」
「魔力切れはおろか、精力切れさえ起こした事ないくせに」
無駄話も交えつつ、ムドは腰を動かし続ける。
挿入の度に剛直の余り部分は減っていき、より亜子の膣内を奥へと推し進める。
強引にガンガン突かれた子宮は、勘弁してくれとばかりに口を開く。
精液を飲んでやるから、貴方の子供を孕んであげるからとばかりに。
「もう、ほんろうにあかん。頭が真っ白に、イク。飛んでってまう!」
「遠慮せずイッてください。新学年早々、腰痛でお休みしてしまうぐらい今日はしますからね」
「なら、せえへんから。遠慮はんッ、あ……あッ、あくひぃゃっ!」
剛直を突き上げるムドと、胸を揉み転がすネカネに挟まれたまま亜子が体を跳ねさせた。
大きく体をそらし、下腹部にある剛直を突かれた道がより大きく強調される。
キュッキュと締め付けてくる膣圧にムドも逆らわず、素直に精液を子宮の中へと流し込んだ。
まだ子宮で精液を受けた事のなかった亜子は、より一層に体を震わせた。
どろどろに濃く、火傷しそうに熱い精液を流し込まれ、契約執行時に良く似た快楽を与えられる。
「熱ぃ……ムド君が一杯、まだ出とる。ここからどくどく、流し込んどる」
「まだまだ、これからですよ」
休む間を与えないとばかりに、ムドが剛直を引き抜いていく。
果てたばかりで敏感になっている亜子は、引き抜かれていく過程で幾度か小さく果てる。
ついに引き抜かれた剛直は、亜子の愛液と自ら吐き出した精液を膣の中から掻き出した。
それが分かったのか、流れ落ちるなとばかりに秘所へと亜子が手を伸ばす。
だがその手が流れを食い止める事は決してなかった。
何故なら次の瞬間には、亜子の体が百八十度回転し、床に仰向けに寝るネカネの上にしなだれかかっていたからだ。
お互いに下腹部が密着し、自ら圧迫してしまった亜子は秘所から勢い良く精液が流れ落ちてしまい瞳に涙を滲ませていた。
「出たら、あかんのに……ふぁ、ウチがムド君から貰った精液」
「はいはい、ムドに頼めばいくらでもくれるわ。けれど、次はネカネさんの番よ。だから亜子ちゃんも愛してくれる?」
滲んだ涙も拭わないまま、亜子がネカネの胸に顔を埋め、先端の乳首を口に含んだ。
未だ秘所から溢れてくる精液を失う喪失感を埋めるように吸い付き、もう片方に手を添える。
「そう、上手いわ亜子ちゃん。ムド、お姉ちゃんの中に来て」
「行きますよ、姉さん」
「くぅ……太い、あぁ。お腹の中がムドので満たされる。んんっはぁ、やっぱり凄いわ」
「んちゅ、ネカネさんとてもエッチで素敵な顔やわ。ウチも……え、ぁっ!」
剛直を挿入されながら乱れるネカネを、胸に舌を這わせながら亜子が上目遣いで見ていた。
自分も先程はこのような乱れ方をしていたのか。
今さらながら恥ずかしくなってきたその時、下腹部に訪れた再びの挿入感に力が抜ける。
しなだれかかるようにネカネの上に倒れこんだ亜子は、少しだけ首を後ろに向けてそれを見た。
ネカネの為に腰を動かしながら、亜子の秘所に中指を挿入しているムドを。
腰の動きにあわせ、指先でネカネと一緒に亜子を犯していた。
「あかあッン、ある意味こっちの方が……あふ、くぅん。ムド君の指で、お手てでされとる。ウチの大好きなお手てでっ!」
「あらあら、ムドったら何処で憶えたのかしら。亜子ちゃん、とても良い顔してるわ。切なそうで。私も亜子ちゃんに犯されてるみたいで、もっと感じてきちゃう」
「ウチがネカネさんを。ムド君も好きやけど、ネカネさんも好きや。ムド君が好きな人は全員大好きや」
亜子が何度も好きと呟きながら、同じリズムで縦に揺れるネカネと唇を重ねた。
お互いに舌を伸ばして絡めあい、揺れる胸の先端をつつかせあう。
そんな二人を見下ろしていたムドは、自分も混ぜてくれとばかりに体を前に倒していく。
剛直の挿入の仕方がやや甘くなるが、元々の長さが長さだ。
普段の小さな体では到底不可能な体位を目指し、片腕を二人の胸が擦れ合う中に差し込んでいった。
揺れては擦れ合う四つの胸の中で、その時々手に触れてきた胸を好きなだけ触れた。
手に掛かる重さ、肌の質感、乳首の尖り具合。
これ程まで贅沢で判定にこまる鑑定もこの世にない事だろう。
「夜のお勤めの後だし、さすがのムドもお疲れモードかしら。もうちょっと、頑張って」
しばし異なる胸の鑑定にいそしんでいると、膣を締め付けられ促がされた。
自覚はないのだが、やはり少し腰の動きが単調になっていたようだ。
改めて、気合を入れて腰使いのスピードを上げ、亜子へは指の数を増やして対応する。
「そう、その調子。ちょっと、来たわ。ゾクゾクって!」
「んぅっ、ムド君そんな広げたらあかんよ。中が見えてまう!」
浮き上がったネカネの腰の下へと、胸を堪能していたはずの腕を回した。
それで亜子ごとネカネの体を固定し、二人が果てる事を優先させる。
「亜子ちゃん、キス……あぁっ、ムドに見せ付けるように。んぷ、はっ。興奮してくれるように、いやらしくぅ」
「十分、んふぁ……ネカネさんはいやらしくてエッチや。んぁっ、あぅ……」
西洋の美女と東洋の美少女が、舌を絡めあう。
「んぅふふ、硬くなってきたわぁっ。はぅっ……ぁぁっ、ぁっ!」
「指の動きがんぅぁ、はやぁ。ムド君も、イクんやね。いやらしいウチと、ネカネさんを見て興奮してぇっ!」
「興奮、しないはずがないでしょ。こう、までされてっ!」
子宮口がもう行き止まりだと降りてきているにも関わらず、ムドは強く剛直を打ち込んでいく。
最奥を突かれるたびに、ネカネが体を震わせ、亜子の背中に腕を回して抱きしめる。
亜子もまた縦に揺れるネカネを逃がさないように、その顔に手を添えて下を伸ばす。
完全に一つとなった亜子とネカネを組み伏せ、ムドはひたすら犯していった。
「あはっ、きた。きちゃった、お姉ちゃんもう……ぃあ、イっちゃうわ!」
「ウチも、ムド君のお手てで。イク……っあ、んんぁ、イクッ!」
「げ、限界です。二人とも、イッ……イッてください。くっ、ぁあグァ!」
亜子を跳ね飛ばす勢いで体をそらしてネカネが痙攣する。
二人が抱き合っていなければどうなった事か、剛直と指先に膣が締まる感触を感じながらムドも果てた。
今夜だけでこれで何度目になるのかも分からないが、一度目から変わらぬ勢いで射精する。
ネカネの子宮口をこじ開け、子宮の中を真っ白な精液を流し込んでいく。
「来た、これがいいの。ムドの精液、温かいの……っあ、くぅ。堪らないわぁ」
「ネカネさん……幸せ、そう。ウチも、お手てでされて幸せや」
「やぱり、夜明けまでは無理。そんなに絞られても、もう出ませんよ」
「待って、抜いちゃだめ。もうちょっと、もっと精液をお姉ちゃんにちょうだい」
これ以上は精液ではなく別のものが出そうだと、脚を絡めて逃がそうとしないネカネの束縛を振り切った。
完全に萎えた剛直、ただの一物となったそれをぬるりと抜いた。
すると子宮に入りきらなかった精液が、まだこんなにも出たのかと呆れる程、ネカネの秘所から流れ落ちていく。
息も絶え絶えにそれを見ながら尻餅をついていた、ムドの体が縮み始める。
どうやら一物から十分に魔力を抜いた事で、年齢詐称薬の効果も切れたらしい。
「あ、可愛ええ方のムド君や。ウチ、こっちのムド君も大好きや」
「亜子ちゃん、可愛がるのは後よ。まずは後始末をしないとね」
完全に腰が抜けたのか、二人とも床の上を転がってムドに近付いてくる。
「ほら、亜子ちゃんも。気持ち良くしてくれたムドに、お礼をね?」
「ウチ……まだそういうの下手やから」
「うふふ、ちゃんと私が教えてあげるから。まずは舌で綺麗にね」
後ろ手をついて座り込んでいたムドの股間部分に二人が顔を寄せてくる。
萎えた一物を手で支えたネカネがまず、舌の腹を使って膜のようになった愛液と精液を拭う。
ネカネの視線に促がされ、やや気後れしながら亜子も舌を伸ばした。
ただしこちらは舌の腹で大胆に舐める事は出来なかったようで、舌先でチロチロと舐める。
「ここ、裏すじが気持ち良いのよ。しっかり、舐めてあげて。私はこっちをね」
「ふわぁ、そんなところまで」
竿を亜子に譲ったネカネが、袋の部分を片方だけだがまるまる口に含んでしまっていた。
かなり甘く噛んでやると射精しきれなかった精液が、裏すじを舐めていた亜子の顔に飛んだ。
小さく悲鳴を上げて顔を起こした亜子であったが、直ぐにやったなとばかりに、ムドの一物を飲み込んだ。
袋を口に含むネカネにキスできそうな程、飲み込んでいく。
「うぅ……二人とも、それって綺麗にしてるんじゃなくて」
お掃除ではなく、完全に愛撫の域に入っていた。
元々寝起きで疲れているのに、それでも体は、もっと言うならばムドの魔力が高まってしまう。
それと同時に、一物を根元まで咥え込んでいた亜子が、勃起していくそれに押し返される。
「そんな事、言って。これに耐えられたら、もうお終いにしてあげる」
まだまだ半立ちであった一物が、ネカネの豊満な胸に挟み込まれる。
それだけならまだしも、協力を乞われた亜子が、頑張って肉を集めて寄せてあげて反対がわから胸を押し当ててきた。
「明日、どうなっても知りませんよ」
再び痛い程に硬さを取り戻した一物を恨めしげに見ながら、ムドは呟いていた。
-後書き-
ども、えなりんです。
春休み最後の夜の一幕でした。
誰かムドじゃなくネカネを止めろ。
亜子を純愛ルートから力ずくで淫乱ルートに引きずりこみやがった。
たぶん、ネカネは今後もこんな感じです。
ムドの為でもあり自分の為にも、割と動いたりします。
あとシチュエーションに年齢詐称薬を追加。
今後もちょいちょい、出てきます。
それでは次回は水曜です。
今度こそ、桜通り編始まります。