XXXSS投稿掲示板




No.25212の一覧
[0] 【完結】ろくでなし子供先生ズ(ネギまでオリ主)[えなりん](2011/08/17 21:17)
[1] 第二話 打ち込まれる罪悪と言う名の楔[えなりん](2011/01/01 19:59)
[2] 第三話 脆くも小さい英雄を継ぐ者の誓い[えなりん](2011/01/05 21:53)
[3] 第四話 英雄を継ぐ者の従者、候補達?[えなりん](2011/01/08 19:38)
[4] 第五話 ムド先生の新しい生活[えなりん](2011/01/12 19:27)
[5] 第六話 第一の従者、ネカネ・スプリングフィールド[えなりん](2011/01/15 19:52)
[6] 第七話 ネギ先生の新しい生活[えなりん](2011/01/22 21:30)
[7] 第八話 強者の理論と弱者の理論[えなりん](2011/01/22 19:25)
[8] 第九話 闇の福音による悪への囁き[えなりん](2011/01/26 19:44)
[9] 第十話 勝手な想像が弱者を殺す[えなりん](2011/01/29 20:15)
[10] 第十一話 私は生きて幸せになりたい[えなりん](2011/02/05 20:25)
[11] 第十二話 棚から転がり落ちてきた従者[えなりん](2011/02/09 20:24)
[12] 第十三話 他人の思惑を乗り越えて[えなりん](2011/02/12 19:47)
[13] 第十四話 気の抜けない春休み、背後に忍び寄る影[えなりん](2011/02/12 19:34)
[14] 第十五話 胸に抱いた復讐心の行方[えなりん](2011/02/16 20:04)
[15] 第十六話 好きな女に守ってやるとさえ言えない[えなりん](2011/02/23 20:07)
[16] 第十七話 復讐の爪痕[えなりん](2011/02/23 19:56)
[17] 第十八話 刻まれる傷跡と消える傷跡[えなりん](2011/02/26 19:44)
[18] 第十九話 ネギパ対ムドパ[えなりん](2011/03/02 21:52)
[19] 第二十話 従者の昼の務めと夜のお勤め[えなりん](2011/03/05 19:58)
[20] 第二十一話 闇の福音、復活祭開始[えなりん](2011/03/09 22:15)
[21] 第二十二話 ナギのアンチョコ[えなりん](2011/03/13 19:17)
[22] 第二十三話 満月が訪れる前に[えなりん](2011/03/16 21:17)
[23] 第二十四話 ネギがアンチョコより得た答え[えなりん](2011/03/19 19:39)
[24] 第二十五話 最強の従者の代替わり[えなりん](2011/03/23 22:31)
[25] 第二十六話 事情の異なるムドの従者[えなりん](2011/03/26 21:46)
[26] 第二十七話 いざ、京都へ[えなりん](2011/03/30 20:22)
[27] 第二十八話 女難の相[えなりん](2011/04/02 20:09)
[28] 第二十九話 大切なのは親友か主か[えなりん](2011/04/06 20:49)
[29] 第三十話 夜の様々な出会い[えなりん](2011/04/09 20:31)
[30] 第三十一話 友達だから、本気で心配する[えなりん](2011/04/16 21:22)
[31] 第三十二話 エージェント朝倉[えなりん](2011/04/16 21:17)
[32] 第三十三話 ネギの従者追加作戦[えなりん](2011/04/20 21:25)
[33] 第三十四話 初めての友達の裏切り[えなりん](2011/04/23 20:25)
[34] 第三十五話 友達の境遇[えなりん](2011/04/27 20:14)
[35] 第三十六話 復活、リョウメンスクナノカミ[えなりん](2011/04/30 20:46)
[36] 第三十七話 愛を呟き広げる白い翼[えなりん](2011/05/04 19:14)
[37] 第三十八話 修学旅行最終日[えなりん](2011/05/07 19:54)
[38] 第三十九話 アーニャの気持ち[えなりん](2011/05/11 20:15)
[39] 第四十話 友達以上恋人未満[えなりん](2011/05/14 19:46)
[40] 第四十一話 ネギの気持ち、ムドの気持ち[えなりん](2011/05/18 20:39)
[41] 第四十二話 契約解除、気持ちが切れた日[えなりん](2011/05/25 20:47)
[42] 第四十三話 麻帆良に忍び寄る悪魔の影[えなりん](2011/05/28 20:14)
[43] 第四十四話 男の兄弟だから[えなりん](2011/05/29 22:05)
[44] 第四十五話 戦力外従者[えなりん](2011/06/01 20:09)
[45] 第四十六話 京都以来の再会[えなりん](2011/06/08 21:37)
[46] 第四十七話 学園祭間近の予約者たち[えなりん](2011/06/08 20:55)
[47] 第四十八話 麻帆良学園での最初の従者[えなりん](2011/06/11 20:18)
[48] 第四十九話 修復不能な兄弟の亀裂[えなりん](2011/06/15 21:04)
[49] 第五十話 アーニャとの大切な約束[えなりん](2011/06/18 19:24)
[50] 第五十一話 麻帆良祭初日[えなりん](2011/06/26 00:02)
[51] 第五十二話 ネギ対ムド、前哨戦[えなりん](2011/06/26 00:03)
[52] 第五十三話 仲良し四人組[えなりん](2011/07/02 21:07)
[53] 第五十四話 麻帆良武道会開始[えなりん](2011/07/06 21:18)
[54] 第五十五話 この体に生まれた意味[えなりん](2011/07/06 21:04)
[55] 第五十六話 フェイトの計画の妨げ[えなりん](2011/07/09 20:02)
[56] 第五十七話 師弟対決[えなりん](2011/07/13 22:12)
[57] 第五十八話 心ではなく理性からの決別[えなりん](2011/07/16 20:16)
[58] 第五十九話 続いて欲しいこんな時間[えなりん](2011/07/20 21:50)
[59] 第六十話 超軍団対ネギパ対完全なる世界[えなりん](2011/07/23 19:41)
[60] 第六十一話 スプリングフィールド家、引く一[えなりん](2011/07/27 20:00)
[61] 第六十二話 麻帆良祭の結末[えなりん](2011/07/30 20:18)
[62] 第六十三話 一方その頃、何時もの彼ら[えなりん](2011/08/03 20:28)
[63] 第六十四話 契約解除、ネギの覚悟[えなりん](2011/08/06 19:52)
[64] 第六十五話 遅れてきたヒーローユニット[えなりん](2011/08/10 20:04)
[65] 第六十六話 状況はより過酷な現実へ[えなりん](2011/08/13 19:39)
[66] 第六十七話 全てが終わった後で[えなりん](2011/08/17 20:16)
[67] 最終話その後(箇条書き)[えなりん](2011/08/17 20:18)
[68] 全体を通しての後書き[えなりん](2011/08/17 20:29)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[25212] 【完結】ろくでなし子供先生ズ(ネギまでオリ主)
Name: えなりん◆e5937168 ID:1238ef7e 次を表示する
Date: 2011/08/17 21:17
第一話 英雄の息子は魔法が使えない

 ぼんやりとした視界に映るのは土、湿り気を帯びた黒い土であった。
 校舎裏にある陽のささない陰鬱な場所にて、ムドは地面とキスする形で倒れていた。
 そんなムドの腹部に、少年のモノらしきつま先が深々と突き刺さる。
 その勢いたるや、まるで手加減という言葉を知らないかのようだ。
 正常な九歳児に比べてもまだ小さいムドの体が浮き上がった。
 蹴られた勢いのままに、体が仰向けになってごろりと転がる。

「げほっ、ぁ……がハッ」

 ムドは強制的に吐き出された肺の空気を取り戻すように、激しく咳き込んでいた。
 だが暴行を加える相手は一人ではなかった。
 空気を求める咳が治まる間もなく、今度は別の人間の足が薄く開けられた瞼の間から見えた。

「なんとか言えよ、この野郎。出がらしの出来損ない」

 勢い良く振り落とされた足が、無防備な腹の上に落ちた。
 肺の中にはもうありもしない空気が、無理やり搾り出される。

「本当、むかつくぜ。魔法が使えないくせに、座学で俺らよりも良い点とりやがって」
「ほら言えよ。カンニングしましたって。俺らが先生に報告してきてやるからよ」

 腹に落とされた足で踏みにじられ、まともに声を上げる事も出来ない。
 暴行を加えている数人の少年達も、言葉とは裏腹に返答が返って来る事を期待しているわけではなかった。
 要は、どちらでも良いのだ。
 仰向けに倒れ呻くムドがカンニングをしましたと諦めて口にしても、しなくても。
 苦しむ様子を見る事が出来れば自分達の自尊心が満たされるのだから。
 戦争を終結させた紅き翼のリーダー、ナギ・スプリングフィールド。
 立派な魔法使いとの呼び声も高い彼の息子であるムド・スプリングフィールド。
 高名な人の子供を足蹴にする事で、自分が凄い存在になったように感じているのだ。
 何しろ彼らは、ムドの双子の兄であるネギ・スプリングフィールドには手を出さないのだから。

「少しはやり返してみろよ。あの英雄の息子なんだろ?」

 涙が滲む瞳で、転がされていたムドは体を覆う熱に浮かされながら見た。
 自分を足蹴にしながら父の事を尋ねてきた少年ではなく、校舎二階の窓からこちらを見下ろしている教師を。
 三人の少年に自分が足蹴にされているのに、その教師は見下ろしているだけなのだ。
 その後すぐに教師は何も言わずに窓辺から姿を消した。
 まるでこの世のゴミでも見下ろすような瞳を、少年達ではなく、転がされているムドに向けてから。
 もし仮に、ここで兄であるネギが同じ立場なら、恐らくは対応は違った事だろう。
 親譲りの膨大な量の魔力により、実技と座学で優秀な成績を収めるネギには。

「なんか言えって言ってるだろ。それとも言えるようにしてやろうか?」
「それはまずいって。こいつ変な病気だから魔法は」

 ムドが何も言葉を返さない事に業を煮やした一人が、懐から星の飾りのついた杖をとりだした。
 見せびらかすように呪文を詠唱すると、星飾りの周りに透明に近い水色の冷気がまとわりつく。
 だがさすがにそれはまずいと、暴行を加えていたうちの一人が止めにかかった。

「魔法を使わないから、見逃されてるんだぜ。前に本気で魔法を使って一人、退学になっただろ」
「バレなきゃ平気だって。見つかる奴が間抜けなんだよ」
「へえ、それじゃあ。間抜けが誰かは確定ね」

 自分達以外の突然の言葉に、少年達は揃って体をビクリと震わせた。
 少年達はその声の主が誰であり、現場を見てどうするかは知っているからだ。
 冷や汗の浮かぶ頭で無い知恵を絞り、必死に言い訳を考える。
 だが結局は満足に考えが纏まらないまま振り返って言おうとした。

「いや、違うんだ。これは」

 少年達が炎のように赤い髪の毛を持つ少女を、その瞳に写す事はなかった。

「なにが違うっての……最初から聞く気なんてないわよ、お馬鹿ども。アーニャ・フレイム・ナックル!」

 問答無用、少年達の背後より火柱が立ち上がる。
 それを右腕に集めた少女、アーニャの拳が振り返る途中の少年達へと向けて振るわれた。
 炎こそは魔法障壁が受け止めたものの、衝撃までは受け止められはしなかった。
 少年達は空高く打ち上げられ、悲鳴を上げる事も出来ずに気絶。 
 結構な高度からぐしゃりと落ちたが、あくまで魔法障壁は彼らを守っていた。
 軽い火傷一つなく、罪と罰が非礼する事はなかった。

「ムド、大丈夫? もう、いつも何かされたら呼びなさいって言ってるでしょ? なんで直ぐ呼ばないわけ!」

 殴り倒した少年達には見向きもせず、ムドの体に手を添えて体を支え起こす。
 心配する声には、少年達へと向けたものとは違う怒気が含まれている。
 それが分かるからこそムドは焦点の合わない、虚ろな瞳で小さく微笑み返す事ができた。

「何時もありがと、アーニャ。けれど……」
「けどじゃないわよ。いいから、呼ぶの!」
「好きな娘に何時も助けてもらうのは、正直悔しいし、格好悪いと思うんです」
「うッ……」

 弱々しくも儚い笑顔で言われ、アーニャが言葉に詰まる。
 助けに来た時の鬼の形相は何処へやら、可愛らしく顔を紅潮させながらだ。
 赤い顔を隠すようにうつむき、勢いを失いしどろもどろになるしかなかった。

「う、あう。あの……」
「私がアーニャを好きな事、知っているでしょう? それなのに、変なアーニャですね」
「うるさい、うるさい。仕方ないじゃない。だって、私まだ返事も」
「アーニャ、どいてください!」

 自分を支えてくれていたアーニャを、突然ムドが突き飛ばした。
 どうしてと目を丸くして尻餅をついたアーニャの直ぐ目の前を、その答えが飛んで行く。
 魔法の射手氷の一矢。
 自分達の腕程もある大きな氷柱が、二人を掠めるように跳んでいったのだ。
 実際、ムドの頬には掠っていたようで深い擦り傷から血が一筋流れ落ちていく。
 飛んできた方向へと振り返れば、一人の少年が倒れながらも杖をこちらに向けていた。
 さらには掠っただけかという意味を込めた舌打ちまでする始末。
 ムドに好きな娘と言われた時とは、全く異なる意味で顔がカッと熱くなった。

「アンタ……一体、何考えてるのよ。やって良い事といけない事の区別すらつけられないわけ? そんなんで立派な魔法使いになれるつもり!?」
「はッ、魔法が使えない奴よりよっぽどなれるさ。あの英雄ナギの子供の癖に、魔法も使えないような奴よりはな!」

 尻餅をついていたアーニャが、魔法の射手を放った少年が、お互い怒りに任せて立ち上がる。

「ちょ、ちょっと待った。そいつ、なんか様子変じゃねえか?」

 だが二人の間に入るように、意識を取り戻した別の少年が疑問の声を上げた。
 そいつという指をさされたのは、アーニャの後ろにいるはずのムドであった。
 先程の氷の一矢はムドの頬を掠めただけだ。
 ムドが普通の魔法使い、または普通の人間ならばただの軽傷にしかならない。
 けれどムドは普通の人間ですらなく、人によってはそれ以下とも言う事だろう。

「ムド!」

 ムドは胸を押さえて体を丸めるようにして倒れていた。
 普段から焦点の合わない虚ろな瞳はきつく閉じられ、顔には大量の汗がにじんでいる。
 呼吸も浅く早く、まるで心臓に病でも抱えているかのようだ。

「お、おい……大丈夫なのかよ、そいつ」
「大丈夫なわけないでしょ!」

 以前にも一度、見た事のある症状に震えながらアーニャはムドを抱え起こす。

「ムドは、ネギよりも魔力があるのにそれを外に出せない体質なのよ。そんなムドを魔法で攻撃すれば、防衛本能でさらに魔力がつくられて」
「じゃあ、前に退学させられた奴って……俺も、退学になっちゃうのか?」
「知らないわよ、いいからどきなさい!」

 こんな時でさえ、ムドではなく自分を心配する少年に、アーニャはほとほと嫌気がさしていた。
 言葉をかわすどころか、同じ場所で同じ空気さえ吸っていたくはない。
 こんな時の為に憶えた身体強化の魔法で、ムドを背中に背負う。
 普段から高熱を抱えているムドの体が、さらに熱くなっていた。
 お互いに制服のローブを纏っているのに、火傷しそうな熱が伝わってくる程だ。
 この状態になったムドを助けられるのは、今のところは姉であるネカネしかいない。
 詳しい方法は知らされていないが、少しでも楽にさせてあげられる事は出来る。
 だから一刻一秒でも早くと、退学になりたくないと叫ぶ少年達を蹴りどかしてアーニャはムドを運んで行った。









 不幸中の幸いと言うのだろうか。
 アーニャはムドを寮の部屋へと運び込むまでの間に、ネカネをつかまえる事ができた。
 手渡す時間も惜しんで、部屋に運び込み、ベッドの上に寝かせる。
 ムドの汗で制服のローブの背中が濡れてしまったが、まだやるべき事があった。
 先程の三人の少年達を、退学にするべく校長に訴えにいくわけではない。
 以前にも一度、悪ふざけで魔法の射手で撃たれた時、ムドは生死の境をさ迷う程の大騒ぎとなった事がある。
 今頃、のほほんと図書室のしかも禁書がある立ち入り禁止区域で本を読んでいるネギを呼びに行かなければならない。

「待って……」

 息を整える間も惜しんで走り出そうとしたアーニャの手を、何故かムドが掴んだ。
 大量の魔力を内包し、高熱に浮かされた体で喋る事すら辛い状況であるのに。

「馬鹿、アンタは喋ってないでネカネお姉ちゃんに」
「兄さんを、呼ばないでください。迷惑を、掛けたくないんです」
「そんな事言って、前だってネギに知らせずに」
「アーニャ、私からもお願い」

 ネカネにまで頼まれ、アーニャは反論の言葉すら出なくなった。
 と言うよりも、押し問答していてはネカネの治療が始められない。
 きっと、アーニャが頷くまでムドは頑として治療を受けない事だろう。
 そういう頑固なところは、とても良く似ている双子であったから。

「分かったわよ。だから早く治療してもらいなさい。私はあの馬鹿達の事をお祖父ちゃんにチクりに行くから。退学って報いを受けるといいわ」

 ムドからの返答の声はなく、握られていた手が力を失い落ちていくだけであった。
 それ程までに苦しいのに、知らせないでと頑なに拒んだのだ。
 さすがのアーニャも、そんなムドの意向を無視してやっぱり知らせるとは言えない。

「ネカネお姉ちゃん、ムドの事をお願い。私、まだ返事してないの」
「ええ、分かっているわ。ムドの治療には集中力がいるから、アーニャは外で待っていてね。絶対に助けるから」
「うん、私は本物の正義の鉄槌って奴を落としてくるわ。仇、とってくるわねムド」

 そう言ったアーニャが何故か、とんぼ返りでベッド脇に戻ってくる。
 迷っていたのは一瞬、その場の勢いだとばかりに汗に濡れたムドの頬に唇を落とした。
 自分の行動で顔を真っ赤にし、部屋を飛び出していった。
 そんなアーニャを、ネカネは悲しげな、申し訳無さそうな瞳で見送っていた。
 事実、ムドを心配しながらも胸に置いていた手は震えている。
 治療が難しく、それに対して失敗を恐れているわけではない。
 恐れているのは、治療の方法そのもの。
 アーニャが飛び出して行った扉に鍵までかけて、ネカネは固く閉じた。
 そのまま閉ざされた扉に背を預け、ベッドで苦しみ呻くムドを見つめ頭を抱える。

「早く、しないと。早く……」

 幼い頃から成長を見守り続けていた。
 実の弟でこそないが、そのものに等しい程に大切な弟が苦しんでいる。
 一刻一秒でも惜しいこの状況でありながら、ネカネは無為に時間を潰していた。
 それ程の決意が必要であったのだ。
 ムドは生まれながらにして魔力、または気といった力を自分で外に出す事ができない。
 多くの医者にさじを投げられてからは、自身が治癒術師となってまで探し続けた。
 古今東西のあらゆる方法を見つけては試し、危うく自分の手で殺しそうになった事もある。
 そして苦節六年、ようやく見つけたその方法。
 ネカネは知っている。
 ムドは何時も自分を助けてくれるアーニャの事が、大好きである事を。
 率直にその想いを向けられ、憎からずムドを想いながらもネギとの間でアーニャが揺れている事を。
 だから治療を始める前には何時も、こう言うのだ。

「ムド、お姉ちゃんは許してなんて言わない。だからこの行為の意味を何時か知って、許せなかった時には……お姉ちゃんをムドの好きにして良いから」

 そう心に固く誓わなければ、ネカネはとても耐えられなかった。
 一方的な誓いを終えたネカネは、用意しておいたタオルでまずムドの汗を拭き始めた。
 顔から始まり、ローブの襟元を引っ張り首周りと、次の汗が出る事を妨げないよう一通りふき取る。
 そしてタオルを傍らに置くと、靴を脱ぎ、自らもベッドに上がりこんだ。
 仰向けに寝るムドの足元で両膝をつき、足首まであるローブをたくし上げた。
 膝が見えるどころか、腰を持ち上げトランクスが見えてしまうまで。
 ローブの中に篭っていたムドの汗と、もう一つの匂いがネカネの鼻腔をくすぐる。
 自分の歳の半分しかないムドが発するアンバランスなその匂いに、下腹部がキュンと刺激されてしまった。
 即座に湧き上がる罪悪感を振り払い、ネカネはそれを見た。
 高熱に浮かされるムドのトランクスの中で、信じられない程に膨張する男の象徴。
 子供とは思えない程に大きく、十センチは軽く超えている。
 先程、汗と共にネカネの鼻腔を刺激した臭いは、蒸れに蒸れた精臭であった。
 幼いムドからは早すぎるとも言えるそれが、はっきりと嗅ぐ事ができるのだ。
 まだまだこういう事に不慣れなネカネは、恐る恐るトランクスを脱がさせた。
 すると反り返った竿がネカネの前に飛び出し、より濃い臭いを撒き散らしていった。
 思わずネカネは、ごくりと喉を鳴らしつばを飲み込んでしまう。

「ムド、もう直ぐ。もう直ぐ、楽にしてあげるから。お姉ちゃんが治してあげるから」

 未だ自分が生み出す魔力により高熱を発する体に苦しむムドの顔を見下ろしながら、ネカネが呟いた。
 まるで自分に治療行為だからと言い訳をするように。

「ああ、ムド……」

 ネカネは竿に優しく両手を添えて支え、潤んだ瞳で顔を近づけた。
 間近で見つめた鈴口には、植物の葉に付着する朝露のような先走り汁が玉となって膨らんでいる。
 今にも零れ落ちそうだったそれを、可憐な唇で吸い上げた。
 そのまま恋人の唇に口付けをするように、何度も何度も口付け始める。

「うっ、ぅぁ……」

 すると、ずっと苦しげに呻いていたムドの声に、僅かにだが別の声が含まれ始めた。
 体は小さく幼い恋を心に秘めながらも、体は十二分に快感という言葉を知っているのだ。
 ネカネは両手で支えていた竿の根元をさすりながら、口付けを止めて舌を絡め始めた。
 自分が飲んでしまった先走りの汁の代わりにとでもいうように。
 丹念に鈴口から、カリ部分、血管浮き出る竿とまるでマーキングのように舐め続ける。
 そのおかげで、竿をさすり続けていた両手は自分の唾液でべとべとに濡れてしまう。
 最初は優しくさすっていた手も順次その速度を速め、ニチャニチャと小さく水音が響き始めていた。

「ね、姉さん……」
「分かってるから、お姉ちゃんに全部任せて」

 うなされながらも、ムドの腰はさらなる刺激を求めるように浮き始めていた。
 最初にネカネが見たときよりも、一回り一物の大きさも硬さも増しているようであった。
 ムドを安心させるように呟きながら、ネカネはついにムドの一物をその唇で飲み込んだ。
 四分の三程を飲み込み、口内の肉壁や舌を大いにからませながら抜き、また飲み込む。
 左手はムドが不用意に暴れないように腹を押さえ、右手は自分のローブの中であった。
 まるで嫌がる弟を犯して遊ぶように、右手はショーツへと向かっていた。

(濡れてるだけじゃない、欲しがってる)

 秘所を包む薄いショーツは、受け止めきれない愛液で濡れていた。
 弟の一物を咥え込みながら、ネカネの秘所は実際の口の中以上に潤っていたのだ。
 上ではなく、下の口に咥えさせてくれとばかりに。

(違うの、これは治療よ。ムドの為なの。この子は、自分で魔力を出せないから!)

 必死に言い訳を頭に浮かべても、口も止まらなければ、手も止まらない。
 濡れて機能を失ったショーツをずらし、その隙間から指を滑り込ませさらに秘所へと指を伸ばす。
 左手はムドの腰を引き寄せるようにして、絶頂に誘うように首ごとグラインドさせている。
 それどころか、右手は本来不要であるはずの自分の快感を求めて、指を曲げては肉壁を擦り上げていた。

「あ、あッ……」

 ムドのうめき声も、半分以上が快感に押し流されていた。
 苦痛も感じてはいるのだろう。
 だがその心の中ではどちらを感じているのか、判別不能になっているのかもしれない。
 そのムドが、ベッドの上にずっと落としていた両腕をいきなり持ち上げた。

「姉さッ!」

 脊髄反射、もはや本能に近い動きだったのかもしれない。
 竿の根元にまで唇に吸い込まれた瞬間、ネカネの頭を逃がさないとばかりに押さえつけた。
 ムドの腰が精液の放出につられるように、ベッドから跳ね上がる。

「ンーッ!」

 亀頭がネカネの喉を突き、固定された顔の代わりにその体全体が電流でも流されたように跳ねた。
 どくり、どくりと濃密な魔力が溶けた精液がネカネの口に流し込まれていく。
 行為に夢中になりながらも、その最後の一線、治療行為だけはネカネが続けていたのだ。
 東洋に伝わる術、房中術という性行為による体内の力の制御法である。
 自分で魔力を外に出せないムドの代わりに、ネカネのような魔法使いの女性が性交により外から吸い出すのだ。
 一度の放出が終わると、ネカネは吸い付いて離れなかったムドの竿から唇を離した。
 精液を一滴も逃さないようにずるずると粘っこく竿に吸い付き、鈴口に至り唇をすぼめる。
 その動作は、ムドと共に果てたせいか酷く緩慢であった。
 おかげで、ムドが一度に出し切れなかった精液が、二回程、ネカネの口に射精されていた。
 そして、房中術とは全く無関係に、口の中でぷりぷりと弾力のある濃い精液を舌で弄び多大に惜しみながらごくりと飲み込んだ。

「姉さん、そんなものを飲み込んで大丈夫なんですか?」

 幼い弟の激しい射精と果てた余韻。
 そして何時までも残る青臭い匂いにしばしネカネは心を奪われ、反応が遅れた。

「え……あ、えっと。そう、飲み込んだ方が効果があるのよ。それより、具合はどう?」
「ずいぶん、楽になりました。というか、気がついたらベッドの上で、少しびっくりしました」

 そう呟いたムドの瞳は、まだ焦点が合っているとは言えなかった。
 今日のような事がなくても、普段から自分の魔力により熱がでているのだ。
 体の調子が良ければ良い程、ムドは高熱が出て苦しめられる事になる。
 実際、楽になったと本人は言っているものの、容態が好転したようにはとてもみえなかった。
 熱による汗はまだ浮かんでおり、口淫による汗と共にネカネはもう一度拭いてあげた。
 その後で自分の左手を拭いてから、ムドの額に手の平を置き、熱の具合を確かめる。
 タオルで拭くとはいえ、自分の淫らな愛液で濡れた右手で触れたいとは思わない。
 感覚で測った熱の具合は、普段のムドのものであった。
 一番精神的に苦痛を伴なう三十八度近辺だ。

「ムド、あのね……」

 言うべきか、言わざるべきか。
 一応は危機が去り、ムドなりの日常生活に戻るには支障はない。
 だがムドが内包していた熱を移されたように、今度はネカネの体が熱く火照り始めていた。
 一度は果てながらも、ネカネのショーツを超えて愛液はまだまだ流れ落ちているのだ。
 それらは治療前に抱いていた罪悪感を薄れさせるには十分であった。

「姉さん、私はまだ熱っぽいでしょうか?」

 だから、ムドからそう尋ねられた事は、ネカネにとって好機とも呼べるものであった。

「そうね、まだちょっと熱っぽいわね。念の為、もう二、三回その……して、おこうかしら?」

 できるだけ自然に言葉を返そうとして、何が大切なタガが外れる音をネカネは聞いた気がした。
 二、三回とは何処まで強欲で淫乱なのか。
 そう呟いた瞬間は確実に、これがムドの為の治療行為だという概念が抜け落ちていた。
 顔が熱くなると同時に、青くもなった。

(私、治療行為を口実にしてムドに抱かれたがってる。なんていやらしい女なの)

 そう心で呟きながらも、体はムドの体、腰の上をまたがっていた。

(認めちゃえば、楽になれるかしら。弟に抱かれる罪悪感から。妹みたいなアーニャの好きな子を寝取っている事実から)

 これから他の治療法を見つけるまでは、ネカネがどういう結論に至ろうとムドに抱かれるしかない。
 むしろ、ムドの体調の事だけを思うのなら、本来は毎日のようにこの治療をすべきなのだ。
 それなのにネカネは罪悪感という個人的事情から、緊急時にのみしかこの治療を行ってはこなかった。

(認めよう、自分から望んでムドに抱かれよう)

 そう思った次の瞬間には、ネカネは自分の体を覆い隠すローブを一気に脱ぎ去っていた。
 これまでは治療という一線を守る為に、互いに全てを脱ぐ事はなかった。
 ムドに何度か抱かれながらも、全てを晒す事はなく、今その一線をネカネは望んで踏み越えた。
 それなりに自身のある大きさの胸さえさらけ出す為に、ブラジャーをも脱ぎ捨てる。

「ね、姉さん?」
「ムド、お姉ちゃんを見て」

 ネカネを覆う衣類は、局部が愛液で変色した淡い桃色のショーツ一枚。
 ブラジャーを脱いだばかりの胸さえ、腕で隠してはいなかった。
 乳首が固く、勃起した様さえ見せ付けた。
 茫然と初めて見るであろう女性の裸体にムドが生唾を飲む音を聞き、体が震える。
 自分の体で興奮してくれるのだという、歓喜の震えであった。

「ほら、お姉ちゃんムドのを咥えながらこんなにしてたの」

 ネカネがムドとの間にある、最後の壁を膝までずり降ろした。
 体質的に薄い陰毛は、染みを広げすぎたショーツにより肌にピッタリと張り付いている。
 普段は焦点を失っているはずのムドの瞳が、焦点を取り戻し始めていた。
 陰毛より視線を落とすと、小さな淫核が自己主張するように膨れ、さらに下部からはよだれのように愛液が流れ落ちている。
 女性器から太ももへ、時折雫となって落ちては少し柔らかくなったムドの一物へと落ちた。
 すると一度力を失ったはずの一物が、砂漠で倒れた旅人が水を与えられ蘇るように空を突くように立ち上がった。

「嬉しい……ムドも、お姉ちゃんが欲しいのね。いいわ、お姉ちゃんは今日からムドのものよ。ムドが楽になるように、好きな時に好きなだけ出させてあげる」

 自分の台詞に酔うように、身震いをしながらネカネは本来の用途を果たせなくなったショーツを引き裂いた。
 逐一立ち上がり、脱ぐ時間も惜しんでの事だ。

「お姉ちゃんが、治してあげる。だから一杯、一杯出しなさい」
「わ、分かりました……」

 一物を硬くしながらも、一瞬戸惑ったムドの言葉にネカネの胸に生まれて初めての感情が芽生えた。
 きっとムドは、アーニャの事を思い出しただろう。
 この行為の本来の意味を知らないながらも、生物的な本能で。
 だからネカネはそのムドの想いを奪い取るように、一物を手で支えて一気に腰を落とした。

「くゥッ!」
「ああッ!」

 自分で腰を落としながら、ムドと共に歓喜と苦痛の声を上げてしまう。
 歳にそぐわない大きさといえど、ムドのそれは成人男性の平均よりもやや下ぐらいである。
 単にネカネの方が経験不足もあり、まだ男を迎え入れるだけの度量がなかったのだ。
 だがムドが助けを求めるように抱きついてきた為に、直ぐに我に返る事が出来た。

「お姉ちゃん、気持ち良いけど、苦しいです……なん、ですか。これ、うゥ」
「あん、胸に顔を押し付けて喋っちゃ、だめ……乳首がこすれ。同時になんて始めてで、んぁっ!」

 望んだ助けが貰えず、思わずといった感じでムドがネカネの乳首に吸い付いた。

「そんな強く噛んじャ……あ、私も動、かないと」

 今まで経験してこなかった胸への刺激に弱りながらも、ネカネはぎこちなく腰を使い始めた。
 ムドの一物を口でしたように、膣でねぶり、こすりあげ、突き上げさせる。
 ムドもネカネの乳首をきつく唇で噛みながら、拙いというより本能で腰を突き上げた。
 経験不足な二人が、自分の快感だけを求め、ほんの少しだけ相手を思いやりながら腰を動かしあう。

「姉さん、姉さんッ!」
「いいわ、もっと強くンッ……ほら、こっちのおっぱいも。ギュってしちゃだめ!」
「どうして良いか、分かりません。でも止まらないんです。だ、だめだ。助けて、アーんンッ!」

 アーニャの名前を呼ぼうとした瞬間、起き上がりかけていた体は押し倒されていた。
 同時に強く唇を吸われるように塞がれ、舌でこじ開けられる。
 ピチャピチャとどちらともつかない唾液を舌で絡めあい、時にネカネが一方的に自らの唾液を流し込む。
 決心が緩むと、ムドの唇はおろか全てをむさぼるようにネカネは犯しつくしていく。
 抱かれたいと決心しながら、その実はネカネがムドを抱いているに等しかった。
 途中からはムドも無駄な抵抗は諦め、ただただネカネの体をむさぼり始めた。
 そんな時であった。

「ムド、ネカネお姉ちゃん!」

 校長への報告が終わったのか、戻ってきたアーニャが扉を叩いたのは。
 瞬間的に、ネカネは自らの口を両手で押さえていた。
 予想だにしないアーニャの声、しかし我に返り罪悪感を浮かべる間もなかった。
 同じように我に返ったムドの一物が、今まで以上に膨張したのだ。
 そのせいか、それともネカネの子宮が精を欲して降りてきていたのか。
 ムドの一物の亀頭が、ネカネの子宮口を強かに打ちつけた。
 そこからはもう、我に返ろうがなんだろうが止まれるような状況ではなかった。

「ンー、ンーッ!」

 叫びそうになる自分を、ネカネは必死で押さえつけている。
 子宮に直接精液を流し込まれる初めての感覚に脅え、同時に快感を抱いているのだ。
 どくりどくりと流し込まれるたびに、絶頂の渦が体に悦びという刺激を運んできた。
 今ここで歓喜の声を上げたりもすれば、何もかも終わると呼吸さえできない程に口を押さえつける。
 そしてムドも罪悪感に心を乱されてしまっていた。
 姉を自分のモノにしたという征服欲、大好きな子に隠れて行う秘密の行為に。
 それでもできたのは、ネカネのように必死に叫び声を抑える事だけであった。
 文字通り、ネカネがお腹一杯になるまでムドの精液は流し込まれた。
 何しろ射精した傍から、ムドの一物とネカネの秘所の隙間から溢れてくるのだから。
 その間も、部屋の中から返答のない事を不審に思ったアーニャが扉をたたき続けている。

「ムド、ネカネお姉ちゃん。どうしたの、一体何があったの!?」

 二人が声を発せられるようになったのは、アーニャがいっそ扉を壊そうかと思い始めたギリギリの頃であった。
 二人とも全身を性交の汗と冷や汗にまみれながら、ベッドの上で体を重ねていた。
 そのうちに、体力的に余裕のあるネカネが体を起こして答える。

「アーニャ、大丈夫よ……ちょっと疲れて、うとうとしちゃっただけ、だから」
「あ、ごめんなさい。うるさくしちゃって。ムドの顔、見たいの。鍵開けてもらって良い?」
「大きな声じゃ言えないんだけど……ムドの治療方法は、軽々しく人に言えない治療法も使ってるから。片付けるまで、お部屋で待ってて」
「あ、でも私……」

 自分にまで秘密なのかという、アーニャにしては沈んだ声が返ってくる。

「アーニャ、私は平気です。随分楽になったので、ただ汗だくで……アーニャに嫌われたくありません。せめて、汗を拭きたいので……」
「ごめ、そ、そうよね。あ、でも勘違いしないでよ。別にそんなぐらいで、嫌いになんかならないから!」

 何を想像したのか、酷く慌てた様子で叫び、アーニャは走っていったようだ。
 酷く大きく聞こえたその足音が遠ざかるにつれ、室内は沈痛な静寂に覆われ始める。
 そしてネカネが瞳から涙をこぼし、両手で顔を覆いながら小さく嗚咽を漏らし始めた。
 ムドに抱かれたあの熱さが一瞬で冷え切ったように、未だに体は繋がりながらも温かみを感じない。
 子宮に流し込まれた精液が、まるで鉛のような重さと冷たさを持っているように感じていた。

「ごめん、なさい。私、ムドに酷い事を……お姉ちゃんなのに、ムドがアーニャの事を好きって知ってたのに。ムドが言いなりなのを良い事に、自分の欲望だけをぶつけて」
「私は、アーニャの事が好きです」

 小さな体で目の前のネカネを抱きしめながら、ムドは残酷にもそう呟いた。
 まるで捨てないでと引き止めるように、ネカネの膣がムドの一物を締め付けたが、続ける。

「けれど、姉さんの事も好きです」
「嘘、治療にかまけて弟を犯す姉なんて。ほら、分かる? 泣いて謝りながら、ムドからもっと絞り出そうとしてる」

 そういってへその下、ムドの一物で少し膨れた部分をさする。
 事実、ぐねぐねとうねるネカネの膣が、ムドの一物から最後の一滴まで搾り出そうとしていた。

「こんないやらしい、淫乱なだけの女なの!」
「くッ……でも、嘘じゃない。魔力のせいもありますけど、私は姉さんの事が大好きです」
「本当、に? お姉ちゃんはお姉ちゃんでいて良いの?」

 泣きはらした顔で確認してきたネカネに、ムドは深く頷いた。

「証拠、あげます。私と仮契約を結んでください。もちろん、アーニャには内緒で」
「仮、契約……お姉ちゃんとムドが?」
「この気持ちに偽りがない証です。それに、姉さんに捨てられたら、文字通り生きていけないのは私の方です。捨てられないように必死なのは、私の方なんです」

 最後に、この行為の意味をきちんと知っていますとムドはネカネに伝えた。
 本来ならば愛する人との繋がりを強め、子をなす為の行為であると。
 知っていて、あえて知らないふりをしていたと。

「少なくとも、理由にはなります。仮契約は、恋人に近しい人です。私を姉さんの恋人にしてください」
「ムド、ありがとう。全部が全部、本心だとは思えない。貴方は賢い子だから。けど同時にお姉ちゃんを思って言ってくれた事も分かる。だから、甘えちゃうね」

 止まらない涙をムドに拭われ、ネカネは気が変わる前にと抱きついた。
 ムドの頭を両腕でガッチリと固定し、強くその唇に吸い付く。
 仮契約の魔法陣がネカネの魔力で敷かれ、契約には十分過ぎる濃いキスで契約がなされる。
 キスだけに留まらず、再びネカネの腰は動き始めた。
 挿入を繰り返すたびに、中から溢れた精液と空気が混ざるジュブジュブという音を立てながら。
 むしろ、ムドと二人で互いに繋がる事を確かめるように交わり続けた。









 仰向けに眠るネカネは、抱き枕のように胸の少し下でムドを抱きしめながら眠っていた。
 度重なる性交での疲れに加え、精神的な疲れもあったのだろう。
 ただその顔は、全てから解放されたように穏やかな笑みが浮かんでいる。
 なんとか手を伸ばしネカネの頭を撫でながら、ムドはもう一方の手で掴んでいる物を見た。
 かつてない程に鮮明な視界にて、ネカネとの仮契約カードを。
 生まれて初めての従者との契約の証。
 騙して追い込んで、ネカネから望むように仕向けて契約に至る事ができた。
 最後には自分から持ちかけてしまったが、まあ及第点といったところか。

「姉さん、謝るのは私の方です。全部、知ってました」

 柔らかく温かい、見知らぬ母を思い出させる姉を今度は両手で抱きしめる。

「治療法そのもので苦しんでた事や、性欲に流されまいとしていた事。アーニャの事で悩んでいた事もです」

 ネカネが寝ている事を良い事に、ムドの謝罪は続く。
 決して本人に聞かせる事はないであろう謝罪を。

「私は、強くなる事ができません。弱者よりも下の存在。なのに周りはそんな私を放っておかない。英雄の、ナギ・スプリングフィールドの息子だから」

 自分を苛める力のない子供程度ならまだ良い。
 卒業を控え、大人の世界へと足を踏み入れなければならなくなった時、ムドは無力だ。
 無力なのに、ありもしない実力以上のものを求められる事もあるだろう。
 だから、必要なのだ。
 ネカネのように、全てをかけて自分を守ってくれる存在が。
 自分の赤ん坊を守る母のように、命まで投げ出して助けてくれるような従者の存在が。

「兄さんが羨ましいです。努力すれば、強くなれる人が。悔しいです、誰かに頼らなければ生きられない自分が。それでも私は、こんな生き方しかできません」

 いつしかネカネの胸の下に顔をうずめていたムドは、穏やかに眠る姉の顔を見上げた。

「そんな私を愛してくれますか?」

 答えは、もちろんない。
 ネカネは眠っており、最初から確認するだけの勇気がないのだ。

「ネカネお姉ちゃん、ムド。本当に大丈夫、アレから待ってても全然来なくて。二人とも倒れてなんかいないわよね!」

 再び、どんどんどんっと強く扉がアーニャによって叩かれ、思考が停止した。
 二度目とは言えその急な登場に驚かされ、思わずムドは射精してしまった。
 行為の後もずっと挿入されていたネカネの中に。

「あん、こら……ムドったら。これ以上されたら、お姉ちゃん溺れちゃぅんっ!」
「お姉ちゃん、寝ぼけないで下さい。アーニャが直ぐそこに」
「え……あ、もしかして。だめ、ムドそんなに動いちゃ。また、したくなっちゃうわ」
「言ってないで、服着てください。せめて換気を、匂いが……あ、慌てるとまた熱が。全体的に楽になったぶん、少しの熱で辛いです」

 頭を抑えふらふらとするムドだが、またアーニャが待ちきれず扉を叩く。

「ムドはまだ寝ていなさい。急にぶりかえすといけないわ。私が上手くアーニャに伝えるから。そうしたら……」

 下半身丸出しのままムドはベッドに押し込まれ、布団を被せられる。

「もう少し、抜いておきましょう?」
「吹っ切れすぎです、姉さん」
「それだけ、貴方が凄いのよ。将来は凄い女泣かせになるわね」

 そう言ってムドの頬にキスをしたネカネは、カーテンと窓を開けて魔法で手早く換気を促がす。
 それから自分だけ服を着ると、慌てていたアーニャを招き入れた。
 布団一枚でアーニャと対面させられたムドは、大いに焦った。
 まさか即座に招き入れるとは思わず、心配され熱は大丈夫かと額を触れられ。
 先程のネカネとの情事を思い出し、体の一部が硬くなり少し布団を持ち上げてしまう。
 それを見て、まだ何回か出来るわねと微笑んでいたネカネの顔にも、もちろん気付いていた。









-後書き-
ども、えなりんです。

りりかるグラハムを終え、百八十度ぐらい違うお話となります。
エロ三割シリアス七割といった感じで。
あと決してネギアンチな方向へとは進みません。
何故なら、主人公も同じぐらいろくでなしだからです。
どういうろくでなしかはおいおい、作中で語っていきます。

更新日は土曜水曜の週二回。
執筆状況としては六十七話、完結済みですが、
三十五話までしか推敲が終わっていないところです。
なのでドロンして消えることはほぼないです。

今日は初回投稿ですので、引き続き二話をお楽しみください。


次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.032757997512817