第32話
電車でごおっ!?
プワァァァァァァァァァァン・・・・・
窓の外を街並みが流れていく。休日の昼間の電車は通勤時間の時とは打って変わって適度に空いていた。
そんな中、ボクはドア越しに立って、窓の外を眺めていた。
ボクはチラッと通路を挟んで反対側に立っているシンヤを見る。シンヤはボクの方をニヤニヤしながら見ていた。
本当にやるの・・・?
目で問いかけたボクに、シンヤは黙って頷く。それを見てボクの身体はブルッと震えた。
今日のボクは休みだというのに学校の制服姿。でもそのスカートは不自然に少し膨らんでいたんだ。
「ん・・・」
腰がブルブルッとまた震える。さっきからボクは下腹を圧迫する感覚に襲われていた。嫌な汗がじっとりと浮かんでくる。太ももも小刻みに震えて止まらなかった。
も、漏れちゃう・・・
ボクは押し寄せる尿意を必死に耐えていた。
それは今朝の事。
「ほら、これを全部飲んでおけ。」
「もう飲めないよぉ。」
「いいから飲むんだ。」
渡されたペットボトルのお茶を強制的に飲まされた後、制服に着替えるように言われる。そしてその後渡された物を見て、ボクは驚いたんだ。
「ほれっ、パンツ脱いでこれに履き替えろ。」
「何これ・・・って、これ紙オムツ!?」
そうなんだ。それは赤ちゃんとかお年寄りが履くような紙製のオムツだった。何かやらされるんだろうとは思ってたけど、これを履けってことは・・・
「ま、まさかこれ履いて外に出ようなんて・・・」
「お、良く解ったな。流石“僕”、考える事は同じだな。」
「何言ってんだよ!こんなの他に考えられないじゃないかぁ!!」
ボクは顔を真っ赤にして怒鳴ったよ。これを履いてやる事って、お漏らしプレイじゃないか。どうりでお茶を沢山飲まされるハズだよ。そりゃ昔トウジと一緒に見た羞恥物ビデオで見た事あるけど、それをボクがやれって事なの!?
「や、ヤダよ!そんな事出来ないよ!」
「何言ってんだ。毎日毎日同じプレイしてると、直ぐ慣れちゃってエナジーチャージの効率が落ちるのは何処のどいつだ?だから俺がたまにはこうして別の事をしてやろうって考えてやってるんじゃないか。」
「だ、だからって・・・こんな事・・・」
「こんな事?前にもトウジとやってたんだろ?それ以後も、1人で外で漏らして興奮してたのは誰だったかな?」
「うっ・・・それはその・・・」
シンヤにそう言われてボクは別の意味で顔を赤くしてしまう。
そりゃトウジに言われてお漏らしする所見られたり、ちょっと変な気分になって人気のない所でお漏らししたことあるけど、こんなの履いてやるなんて・・・
「それとも何か?人前でジョロジョロ垂れ流しする方が興奮するのか?」
「そ、そんな事ある訳無いじゃないかあ!!」
「だろ?わざわざお前の趣向にあわせてやってるんだ。ぐだぐだ言ってないでさっさと履け。」
「趣向ってなんだよ!?ボクはそんなのっ・・・って、ちょっと、やだっ!触らないで!スカートっ、ひゃっ!?パンツ脱がさないでぇ!!」
「ええいっ!さっさと足上げろ!手間のかかるヤツだな!」
「いやああああっ!!!鬼ぃぃぃぃ!」
そんな事があって、無理矢理紙オムツを履かされると、家を連れ出されたんだ。
そして連れてこられたのは駅。ホームで電車を待っている頃には、ボクはモジモジし始めていた。
「ね・・・シンヤ・・・ボク、トイレに・・・」
「ダ・メ・だ。」
「だ、だって・・・このままじゃ漏れちゃう・・・」
「その為にそれ履いてるんだろ?気にせず出しちまえ。」
「そ、そんなあ・・・」
トイレに駆け込みたくてもシンヤが手を放してくれない。そんな事をしてる間に電車が来てしまう。
ボクはシンヤに引っ張られて、電車に乗り込んでしまったんだ。
そして今のボクは、シンヤに見張られながら尿意を必死に耐えていた。
「く・・・ん・・・・」
苦しい・・・膀胱、破裂しちゃう・・・
ドアの手すりに縋りついて、震えながら必死に耐える。でも足は震え、全身から脂汗が滲み、吐く息は窓ガラスを白く曇らせていった。
『どうした?我慢は身体の毒だぞ。』
頭の中でシンヤの声が響く。振り向くとシンヤは相変わらず反対側の扉に寄りかかりながら、涼しい顔でボクの方を見ていた。憎らしいけどボクは言い返す余裕すら無い。
無理だよ。出来ないよ・・・
周りを見渡せば、車内は休日の買い物とか遊びに出かける人達で座席は埋まっている。流石に立っている人はまばらだけど、こんな大勢の人がいる前でお漏らしなんか出来ないよ。
でもこの電車は快速だから、次の駅まではあと10分くらいかかる。それまで我慢しなきゃ・・・我慢・・・
ブルブルブル!
腰が激しく痙攣する。電車が揺れるたびに、ガクンッと膝が折れそうになった。
無理だよ!我慢なんか出来ないよ!漏らしちゃう!漏らしちゃうよお!!
ボクは涙目になってもう一度シンヤの方を振り返った。でもシンヤは表情も変えず、ボクを見つめているだけだったんだ。
そしてついにボクの中で堤防が決壊する。
「あっ・・・!?」
一瞬気がゆるんだ途端、オムツの中でちょろっと漏れてしまう。それが呼び水になったかのように、次の瞬間には一気に漏れ始めた。
「あ・・・ひ・・・ぁ・・・ぁあ・・・」
必死に堪えようとしても水流は止まる事はない。女になってから知った事だけど、女の身体は出始めたオシッコを自分の意志で止めるのって難しいんだ。
「う・あぁ・・・ぁ・・・ぁぁ・・・」
紙オムツのおかげで外に漏れる事はない。でも腰回りがたちまち重くなっていく。特に股の部分のオムツが急速に膨れてごわごわしていった。
「ぁ・・・あひ・・・ぃ・・・と・まらな・・・いぃ・・・あは・ぁ・・」
我慢していた時とは別の意味で腰がブルブル震える。頭のてっぺんまでゾクゾクした感覚が走り抜け、ボクは知らずに一滴涎を垂らして制服の胸元に染みを作っていた。
窓ガラスに写っているボクの顔は、涙と涎を垂らしながら喜んでいる、いやらしい女の顔だったんだ・・・
プシューーーー
空気の抜ける音と共に、電車の扉が開く。ボクはよろけそうになる身体をシンヤの腕に縋りついて支えながら、ホームに降り立った。
オシッコを吸ったオムツがずっしりと重い。その重みで垂れ下がってきたオムツは、身体を少しでも曲げると短いスカートから見えてしまいそうだった。
ホームをゆっくりとしたペースで歩く。通り過ぎていく人達がボクの事を見ているようで、顔を上げる事が出来なかった。
スカートを押さえながら階段を上り、改札を出るとボク達は商店街とは反対側の人通りの少ない通りに出、そのまま近くの駐輪場に入った。そこは普段学生が利用していて、休日の今日は人気が無くガランとしている。
「ほら、見せてみろ。」
「うん・・・」
ボクは言われるがまま、スカートを捲り上げた。オシッコを吸って膨れあがった紙オムツがさらけ出される。シンヤは手を伸ばすと、オムツの上からボクの股間をさすったんだ。
「パンパンだ。沢山出たんだなぁ、どうだ?気持ちよかったか?」
「んっ・・・そ、そんな、こと・・・やっ・・・」
オムツ越しに伝わってくるシンヤの指の動きがもどかしくて、ボクは切なげに身じろぎした。そんなボクの様子にシンヤは笑みを浮かべると、紙オムツをずり下ろしたんだ。
「あっ、やあっ!」
「んっ、なんだ?糸引いてるぞ?これはオシッコじゃないよなぁ?今ので感じちゃったのか?それともお漏らしで興奮して、電車下りる前からいやらしい汁を垂れ流してたのか?」
「ち、ちがうっ、違うの!」
「何が違うんだ?ほら・・・」
シンヤはボクの股間からトロトロ糸を引いて滴り落ちる滴を指ですくうと、それをボクの目の前で見せつけた。ねっとりと透明な液体がこびりついた指を見せられ、ボクの顔がカアッと赤くなる。
「興奮してたんだろ?」
「ち、ちがっ・・・うむっ・・・むっ・・・ちゅっ・・・じゅるっ・・・ふわあ・・・」
それでも反論しようとしたボクの口の何に、シンヤの指が入ってくる。それだけでボクはもう何も解らなくなってしまい、夢中でその指を舐め回した。
ボクのエッチなお汁・・・一杯漏らしちゃって、お兄ちゃんの手もびしょびしょなの・・・
お兄ちゃんの指、美味しい・・・ボク、お兄ちゃんの指舐めるの大好きなの・・・
お兄ちゃんの指舐めてるだけでボク、またエッチな気分に成って来ちゃった・・・お腹の奥が熱くて、またエッチなお汁が出てきちゃう。
「あむっ・・・ちゅうっ・・・ちゅっ、ふあっ・・・・やだあっ、もっと舐めるぅ。」
ボクの唾の糸を幾筋も引きながらお兄ちゃんの指が離れると、ボクは涙を流しながら哀願した。もっとチュパチュパしたいのぉ。
するとお兄ちゃんはズボンのベルトをカチャカチャ外しながら、もっと素敵な事を言ったの。
「それより良い物をやるよ。これを下の口にな。ほら、向こう向け。」
「はあぁ・・・はあい。」
ボクは喜んで言われたまま反対側を向いて壁に手を付く。そしてお尻をお兄ちゃんに向けて突き出すと、誘うように振った。
「早く、早くぅ、お兄ちゃぁん。」
「そう急かすな。・・・入れるぞ。」
お尻に堅いモノが触れ、それはボクのアソコまで下がってくる。そしてお兄ちゃんは一気に腰を突き入れたんだ。
「はひっ、あああああああああああああああああっ!!」
薄暗い駐輪場の中で、ボクの歓喜に満ちた嬌声が響き渡った・・・
「ふぅ・・・」
「なんやお嬢?溜息なんかついて。」
「何でもない・・・」
次の日、ボクはHR前の教室で机に座って深い溜息をついていた。後ろでそれを聞いたトウジが話しかけてきたけど、ボクは上の空で答えるだけ。
ボクは昨日の出来事を思い出すと、もう一度溜息をついたんだ。
シンヤのヤツぅ・・・なんて恥ずかしい事、ボクにさせるんだよ。よりにもよって公衆の面前でお漏らしさせるなんて・・・
そりゃ誰にも気づかれてなかったけど、それでも凄く恥ずかしいんだよ。それに最近直ってきたと思ってたお漏らし癖、また酷くなったらどうするんだよ・・・
「はふぅ・・・」
でも・・・興奮しちゃったのは確かだし・・・
電車の中でお漏らししている間、ボクの耳には幻聴らしい物まで聞こえてたんだ。
『見て、あの子お漏らししてる。』
『あの子、オムツ付けてるぜ!?いい歳して恥ずかしくないのか?』
『こんな大勢のいる前でオムツ付けてションベン漏らすなんて、ど変態だな。』
見てる・・・お漏らししてるボクを、お漏らしして感じてるボクを、スケベで変態なボクをみんなが見てる。
見て、もっとボクを見て。みんなの視線が感じるの、感じすぎて気が遠くなりそうなの。
もう・・・もう、ボク・・・イっちゃう・・・
お漏らししながらそんな変態な事妄想して、イっちゃったんだよなぁ・・・
お漏らしが止まってもボクのアソコは熱く疼き続けてて、エッチなお汁を流し続けてたんだ。電車を降りても「早く犯されたい、滅茶苦茶にされたい」ってそれしか考えられなかったし。
だから駐輪場でシンヤに良いようにされて、ボクも乱れまくっちゃったし・・・
良くあんなところでエッチして、人が来なかったよ・・・今考えるとゾクッとする。
しかも昨日はアレで終わりじゃなかったし・・・
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・んっ・・・あぁ・・・まだ、出てくる・・・」
シンヤにバックから突きまくられ、何度もイった後にようやく解放されたボクは、腰が抜けて地面にぺったり座り込みながら取り出したポケットティッシュでアソコを拭いていた。
何度拭いてもその度に奥からゴブッと白い液体が噴き出してくる。そこから立ち上る濃厚な匂いに喘ぎながら、ボクはそれを拭き取っていく。
ようやく拭き終えたボクはよろけながら立ち上がって、ある事に気が付いた。
「あ・・・ボク、換えのパンツ持ってきてないよ。ノーパンで帰らなきゃいけないの!?」
地面に落ちているのはオシッコを吸い取って膨れあがった紙オムツだけ。まさかそれをもう一度履く訳にも行かないし、ボクは途方に暮れてしまったんだ。
「ああ、換えなら俺が持ってるぞ。」
「ほんとっ!?」
その紙オムツを拾い上げ、右肩にかけていたリュックから取り出した袋に入れていたシンヤは、そう言ってまたリュックの中に手を入れた。
「ほれ、これを履け。」
「あ、ありがと・・・って、これ!」
渡された物を見てボクはビックリ。だってそれはさっきまで履いていたのと同じ、真新しい紙オムツだったんだ。またこれを履けって言うの!?
「も、もうヤダよ!普通のパンツは持ってきてないの!?」
「これだけだなぁ。」
「じゃ、良いよ!近くのコンビニで買ってくるから!」
駆け出そうとしたボクの腕を、シンヤがガシッと掴む。何っ!と振り向いたボクにシンヤは、リュックからお茶の入った大きなペットボトルを取り出しながらこう言ったんだ。
「買ってきても良いが、まず最初にこれのみ干してから行け。帰りの分だからな。」
「え・・・?」
ボクは最初言っている意味が分からなくて、惚けたようにそれを見る。でも直ぐにその意味を理解して、カタカタと身体を震わせた。
「ま、まさか・・・帰りも?だからこれ?」
ボクは手に握った紙オムツを見つめた。帰りもお漏らししろってこと?また電車の中で?
またあんな恥ずかしい思いするの?
「嫌、とは言わないよな?良かったんだろ?素直になれよ。ほら・・・」
シンヤはボトルをボクに差し出した。戸惑うボクの意志に反して、ボクの手はそれを素直に受け取ってしまう。
タプンッとペットボトルの中でお茶が波打つ。それを見ている内に、ボクは熱でうなされているかのように頭がぼんやりしてきた。そして下腹の奥がじわじわとうずき始めたんだ。
ボクはシンヤの見ている前で、ペットボトルのお茶をゆっくりと飲み干していった・・・
「はふぅ・・・」
「またかいな・・・」
ボクはまた溜息をつく。それを聞いたトウジがボクの後ろで呆れたように呟いた。自分でも気づかない間に、何度も溜息をついているみたい。
だって仕方ないじゃないか。昨日の事思い出すだけで、自己嫌悪と・・・軽い高ぶりが沸き上がってきてしまうから・・・
結局、帰りの電車の中でもボクはお漏らしをしてしまい、興奮しすぎたボクは気を失いそうになってシンヤに支えられていたんだ。そしてパンパンに膨らんだオムツのまま、家まで歩いて帰らされるし・・・
あんな恥ずかしい事、またやらされるのかな・・・人に見つかりそうで怖いし、恥ずかしいのに、ボクの中で期待してドキドキしているボクがいるのが解るんだ。
ボク、ますます淫乱な女の子に調教されてきちゃってるよ。
そんな事考えてたら、やけにパンツがヒンヤリするのに気がついたんだ。一瞬こんな所でお漏らししちゃったんじゃってヒヤッとしたんだけど、どうやら昨日の事を思い出してたらそれだけで興奮しちゃって、パンツをグッショリ濡らしちゃってたらしい。
「はぁ・・・」
ボクは鞄から小さなポーチを取り出すと、席を立った。学校に持ち込んでいた漫画本を読んでいたトウジが顔を上げる。
「何処行くんや?お嬢。もうすぐHR始まるで。」
「ちょっとトイレ・・・女の子にそんな事聞かないでよ。」
「へいへい・・・ん?なんか香しい臭いがしたような・・・」
「!!」
トウジが鼻をクンクンするのを見て、ボクは顔を赤くしながら教室を飛び出したんだ。
トウジのヤツ、ボクの濡らした臭い嗅ぎつけちゃったのかな。ほんっと、スケベな事に関しては鼻が効くんだから。
早くパンツ履き替えよう。
「は~い♪皆さ~ん。今日は新しいお友達を紹介しま~す。」
「「「「「「「「「「おお~~~~!!!」」」」」」」」」」
教室に入ってきたミサト先生は、ニッコニコしながらいきなりそんな事を言い出した。小学生の先生じゃ無いんだからって心の中で思わずツッコミ入れたけど、クラスのみんなもノリが良いから歓声上げちゃってるよ。なんだかなぁ・・・
「喜べ男子!なんと転校生はとびっきりの美少女よ!では入ってらっしゃい。」
「は~い。」
ミサト先生が声をかけると、元気の良い声と共に教室の扉が開いた。そして入ってきた少女の姿を見た途端、今度は男子限定で歓声が上がったんだ。
「「「「「うおおおおおおおおおっ!!」」」」」
「霧島マナです。よろしくお願いします♪」
「へい、よろしゅう。」
ぴょこんっと頭を下げたその子は、可愛らしいショートカットの女の子だった。トウジがふざけた調子で返すと、クラス中が笑いに包まれる。霧島さんもニコニコ嬉しそう。
ミサト先生もそのままHRそっちのけで質問コーナーへと勧めていく。次々と男子達の手が上がって質問がかけられ、霧島さん全然嫌そうな顔をしないで答えていった。
「恋人はいますか?」
「え~、いないですよぉ。」
「どんな人がタイプ?」
「えっとぉ、やっぱり優しくて強い人かなぁ。」
「お、俺なんかどう?」
「ん~・・・とりあえずぅごめんなさい。」
「OUCH!」
そんな感じの応答が続き、ボクはそれをのんびりと聞いていたんだけど・・・最後にかけられた質問に対する霧島さんの答えに、ボクは机から落ちそうになっちゃったんだ。
「じゃあ、好きな有名人は?芸能人とかスポーツ選手で。」
「あ、はい。凄く尊敬してる人がいるんです。それはぁ。」
「「「「それは?」」」」
何を言うんだろ?クラスメート達、主に男子達が身を乗り出して次の言葉を待つ。魂胆見え見えだよ、その有名人に合わせて口説こうとでも思ってるんだろ。
でも・・・
「それはぁ、正義の味方!イブ・レイヤーお姉様でぇす!きゃっ、言っちゃった♪」
ずるっ・・・
ボクは思わず椅子からずり落ちる。スカートがめくれてしまい、トウジが嬉しさと呆れが半分半分の声をだした。
「お嬢・・・パンツ丸見えやで?お、今日はピンクのレースかいな。」
トウジや周りの男子達にパンツを見られても、ボクは直ぐにそれを隠す事も忘れて霧島さんを見ていたんだ。
なに・・・この子・・・なんかやな予感がするよぉ~
明るくて良く笑う霧島さんは、すぐにクラスに馴染んでいった。次の日にはクラスのみんなと普通に会話しているしね。特にアスカとウマが合うらしく、自然にボク達のグループの中にいる事が多くなっていったんだ。
霧島さん、凄いんだよ。今まではアスカが話の主導権を持っていて、ボク達を引っ張っていったんだけど、霧島さんも負けないくらいよく話すんだ。2人が話し始めると殆どマシンガントークで、ボクとヒカリはついて行けないくらいだよ。
しかもアスカに何吹き込まれたのか知らないけど、霧島さんまでボクの事オモチャ扱いするし・・・話して解ったけど、霧島さんってアスカと同じくらい下ネタ話が好きなんだ。
2人してセクハラされると、もうどうしようもないよ・・・ああ、女の身体になってから、女の子に抱いていた幻想がガラガラと崩れ落ちていく・・・
まあそれでも友達が増えるのは嬉しいんだけどね。
「お嬢~、場所取れたんでバスケやるけど、お嬢もやらへんかぁ?」
「うんっ、やるやる。」
昼休み、トウジと数人の男子から声をかけられ、ボクは喜んで椅子から立ち上がる。そんなボクを、今まで話をしていたアスカが呆れた顔で見上げていた。
「アスカとヒカリもやる?」
「え~、アタシはパス。バスケなんかやったら髪型乱れるもん。」
「私も・・・あまり得意じゃないし。」
とりあえず聞いてみても、返ってきたのは2人とも乗り気じゃない返事。特にヒカリは男子に混じってバスケって抵抗あるみたい。トウジがいるからちょっと気にはしてるみたいだけど。
ボクは・・・アスカ達とお喋りしてるのも楽しいけど、やっぱりトウジ達と“男同士?”で遊ぶのも好きなんだよね。
「ん~、じゃ、行ってくるね。」
「はいはい、アンタも好きねぇ。」
「頑張ってね。」
ボクは鞄の中からブルマを引っ張り出すと、スカートの下に手早く履く。前はそのままトウジ達と遊んでたんだけど、走り回るたびにスカートが跳ねてパンツが丸見えになっちゃってたんだ。
それを見咎めたアスカに拳骨付きで怒られて、ブルマを履くようにしたんだけど、そしたら今度はトウジが「そんなん邪道やぁ!!」なんて騒ぎ出して、ヒカリに叩かれてたっけ。
準備が出来たボクがトウジ達とグラウンドに行こうとすると、パンを食べていた霧島さんが声をかけてきた。
「なになに?バスケするの?私もやるぅ~。」
「え、霧島さん良いの?男の子ばっかりだよ?」
「サヤカちゃんだって女の子じゃない。大丈夫、私、男の子なんかには負けないよ♪」
「お、自信満々やな。ならええよ、霧島はんも一緒にやろか。」
「うんっ!」
トウジも女の子が増えるのは嬉しいらしく、簡単に仲間に入れてしまう。ボクは良いのかなぁ、なんて思ってたんだけど・・・
「サヤカちゃん!パスパス!よっし、シュートォ!!」
「わっ・・・霧島さん、凄い・・・」
実際に初めてみると、霧島さん凄い運動神経なんだ。バスケになると例え女の子相手でも本気になるトウジのガードをかいくぐって、次々とゴールを決めていく。最初は気楽にやっていた男子達も、次第に必死になって霧島さんを追いかけるようになっていった。
「霧島さん、はいっ!」
「オッケィ、サヤカちゃん!ダアァァンク!」
霧島さんの細いからだが宙に浮くと、ゴールの輪にボールが叩き込まれる。霧島さんは決まったのが嬉しいのか、片手でゴールにぶら下がりながらニコニコしてVサインをしていた。
勝負はボクと霧島さんのいるチームの圧勝で決まったんだ。
「凄いな霧島はん、またやろな、今度は負けへんで。」
トウジ達が汗を拭きながら教室に帰っていく。残ったボクは霧島さんと並んで水道の水で顔を洗っていた。
「ぷはぁ~、きっもちいい♪あはは、楽しかったねぇ。サヤカちゃん、やるじゃん。」
「霧島さんの方が凄いよ。あのトウジ君を翻弄しちゃうんだもん。」
ボク達はお互いを褒めると、顔を見合わせて笑った。
やっぱり霧島さんって良い子だなぁ。明るいし、誰とでも分け隔て無く仲良くなれるし、ノリも良いし。一緒にいると楽しいよ。
「あのさ、サヤカちゃん。お願いがあるんだけど。」
「ん、なに?」
もうすぐ昼休みも終わる時間になり、ボク達が並んで教室に向かって歩いていた時、霧島さんが話しかけてきた。
「私の事ね、“霧島さん”だなんて硬い言い方しないで“マナちゃん”って呼んでくれないかな?ダメ?」
上目遣いでモジモジしながらそう言う霧島さんは、何だか小動物みたいで取っても可愛くて・・・とても“ダメ”なんて言えなかったんだ。それにダメな理由もなかったしね。
「うん、良いよ。これからもよろしくね、“マナちゃん”。」
「うん♪」
こうしてボクが“女の子”になってからの友達がもう1人増えたんだ。やっぱりこれは嬉しいかな。
でもね・・・
『サヤカ!西商店街でウナファイターが暴れているわ!』
『はい!直ぐに急行します!』
最近は前にも増してウナファイターが頻繁に現れるようになって、ボクは忙しくて堪らない。なかなか遊びにも出かけられないんだ。
今日もボクは赤木先生の通信を受けて、現場に急行する。
「胸の鼓動が響くとき、乙女の思いは無敵です。福音を呼ぶ天使!イブ・レイヤー!ただいま参上!」
「「「「「うぎょおおおおっ!!」」」」」
魚屋さんを襲ってカツオを囓っていたウナファイター達が、ボクを見てうなり声を上げる。
「毎日、街の皆さんのためにお魚を売っている魚屋さんを困らす貴方達!このイブ・レイヤーが絶対に許しま「きゃ~!イブ・レイヤーお姉様ぁ、頑張ってぇ!!」あらっ・・・」
ボクがウナファイター達に指を突き付け、口上をビシッと決めようとしたその時、黄色い声がそれを遮ったんだ。
誰だよぉ、これ最後まで言えないと、気持ちが戦闘モードに切り替えにくいのに。
ボクは声の主を捜した。それは直ぐに見つかったんだ。しかもそれはボクのよく知っている人物で。
「マ、マナちゃ・・・何で此処に・・・そ、其処の貴女!此処は危険です!早く逃げてください!」
「いやあん♪イブ・レイヤーお姉様に声かけられちゃったぁ♪」
ボクが逃げるように言っても、身体をクネクネさせて嬉しそうに悶えている女の子。ショートカットが可愛いその子は、ボクの新しいクラスメートで友達のマナちゃんその人だったんだ。
『シ、シンヤ!現場にボクのクラスメートがいるんだ!これじゃ下手に戦えないよ!巻き込んじゃう!』
『まったく・・・俺が何とかする。お前はウナファイターかたづけろ。』
『う、うん、お願いね。』
ボクは直ぐシンヤに連絡を入れる。そしてマナちゃんの方にウナファイターが行かないよう、牽制しながら戦いを始めたんだ。
シンヤは直ぐに駆けつけてくる。
「頑張れぇ~イブお姉様ぁ~!あっ、ちょっと!放してくださぁ~い!」
「何やってるんだ君は!危ないだろ!早く逃げるんだ!」
「だってぇ、イブお姉様の勇姿がぁ~。や~ん、もっと見てたいぃ~!!イブお姉様ぁぁぁぁぁ・・・」
半ば引きずられるように、シンヤに連れられて逃げていくマナちゃん。
なんだかなぁ・・・ボクは戦いながら、でっかい汗を流していたんだ。
転校初日の自己紹介で言ってたけど・・・まさかこれ程とはね・・・
ちなみに彼女、翌日の学校で、“ボク”に出会ったことを延々と自慢して話していました。
そんなマナちゃんだけど、アレさえなければ凄く良い子なんだ。ボクもすっかり仲良くなって、時々2人で遊んだりもした。
そんな今日も、ボクはマナちゃんに呼び出されて買い物に付き合っていたんだ。
「それでムサシったらね、まるでお父さんみたいに怒るんだ。ほんっと五月蠅いの。」
「あははは・・・」
歩きながら家での出来事を話すマナちゃん。ムサシ君って言うのは、マナちゃんの幼なじみの1人だそうなんだ。後もう1人ケイタ君って子がいて、2人とも隣のクラスにマナちゃんと同時に転校してきている。
2人とも両親がいなくて、マナちゃんのお父さんが引き取って保護者しているそうなんだ。同居はしてないけど、2人ともマナちゃんと同じマンションの隣の部屋に住んでるとか。
「ムサシってば、何時になっても私の事子供扱いなの。失礼しちゃうわ。」
「でも、それって心配してくれてるって事でしょ?仲良いんだね。」
「そんなんじゃないよぉ。ただの腐れ縁っ。」
なんかそのムサシ君に同情しちゃうなぁ。なんか昔のボクとアスカみたいだよ。立場はなんか逆みたいな感じだけど。
「マナちゃんはムサシ君の事好きじゃないの?」
「べ、別に嫌いってわけじゃないけど・・・アイツは家族。異性だと思った事ないもん。」
「へぇ・・・じゃあ、ケイタ君?」
「それこそ違うわよ!あの子は弟みたいなモノなの。」
「ふ~ん。」
そんな事言いながらも、なんか顔がほんのり赤いマナちゃん。楽しそうで良いな。ボクは一人っ子だったから、そういう賑やかな家庭に憧れてたもんな。
・・・今は賑やかすぎるんだけど・・・
「それにしてもサヤカちゃん。そのお洋服可愛いねぇ。」
「そ、そう?先週お兄ちゃんに買ってもらったんだけど・・・おかしくない?」
「全っ然!ばっちし似合ってるよ!サヤカちゃんズお兄ちゃん、グッジョブ!」
親指をぐっと立てて、満面の笑みのマナちゃん。
ちなみに今日のボクの服装は、セーラー服タイプの白い上下。ポケットの折り返しがチェック柄だったりして制服よりはお洒落だったりするけど、腕上げるとおへそがバッチリ見えちゃうんだよね。これって絶対シンヤの趣味だよ。
そして足は黒いストッキングに包まれてる。これは何か大人っぽくて、ちょっとお気に入りだったり。
選んだのはシンヤだけど、これは結構良かったかな?最近はイブ・レイヤーの仕事がちゃんと出来た時は、ご褒美で何か買ってもらえるようになったんだ。
シンヤは給料もらってるのに、ボクは何も貰えないんだからこれ位良いよね。
「う~ん、パンストからうっすら透けて見えるサヤカちゃんのおみ足。もうおじさんハアハアだよ♪」
「だ、誰がおじさんですか!?マナちゃん、最近アスカに影響受けすぎだよ。」
「アハハ♪」
覗き込むようにボクの足を覗くマナちゃんに、ボクは汗を掻きながら思わず引いちゃったよ。
そんな風にお喋りしながら色々お店を回っていたボク達は、そろそろ何処かで休憩しようという事になった。
「あ、アソコのハンバーガー、私好きなの。あそこにしよっ。」
「うん、良いよ。」
マナちゃんに手を引かれて店に入ろうとしたその時、それは突然現れたんだ。
ガコンッ!
突然店の前のマンホールが持ち上がり、地面にぽっかり穴が開く。そしてそこから伸びてきたのは、真っ白な太い腕。
「うぎょっ!」
聞き慣れた、でもおぞましい声を出しながら、ウナファイターはのっそり這い出でくる。そして突然の事に硬直しているボクとマナちゃんの前に立ちふさがったんだ。
「ひっ・・・!」
マナちゃんが引きつった悲鳴を上げた。その手はボクの手をギュッと握っている。
もうっ、何でこんな時に現れるんだよ!せっかくのボクの休日をぉ!
こうなったらさっさと変身してやっつけ・・・って、マナちゃんがいたんじゃ変身出来ないじゃん!!
どうしよ、どうしよ、どうしよ!?
どうしよう!!
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後書き
あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願いします・・・て、もう読んでくれてる人がいるか解らないけど
また新キャラ増やしちゃった・・・