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No.2240の一覧
[0] 闇と罪と本の旅人 第2部[ふぁいず](2005/05/20 21:54)
[1] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 16[ふぁいず](2004/03/10 23:49)
[2] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 16[ふぁいず](2004/03/10 23:53)
[3] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 16[ふぁいず](2004/03/10 23:56)
[4] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 17[ふぁいず](2004/03/13 00:05)
[5] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 17[ふぁいず](2004/03/13 00:10)
[6] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 17[ふぁいず](2004/03/13 00:12)
[7] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 18[ふぁいず](2004/03/15 20:39)
[8] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 18[ふぁいず](2004/03/15 20:42)
[9] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 18[ふぁいず](2004/03/16 17:52)
[10] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 19[ふぁいず](2004/03/17 21:32)
[11] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 19[ふぁいず](2004/03/17 21:35)
[12] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 19[ふぁいず](2004/03/17 21:37)
[13] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 20[ふぁいず](2004/03/19 22:07)
[14] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 20[ふぁいず](2004/03/19 22:10)
[15] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 20[ふぁいず](2004/03/19 22:13)
[16] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 21[ふぁいず](2004/03/21 21:53)
[17] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 21[ふぁいず](2004/03/21 21:56)
[18] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 21[ふぁいず](2004/03/21 21:59)
[19] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 22[ふぁいず](2004/03/23 23:58)
[20] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 22[ふぁいず](2004/03/24 00:03)
[21] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 22[ふぁいず](2004/03/24 00:06)
[22] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 23[ふぁいず](2004/03/28 20:52)
[23] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 23[ふぁいず](2004/03/28 20:55)
[24] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 23[ふぁいず](2004/03/28 20:57)
[25] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 24[ふぁいず](2004/03/31 21:00)
[26] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 24[ふぁいず](2004/03/31 21:04)
[27] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 24[ふぁいず](2004/03/31 21:06)
[28] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 25[ふぁいず](2004/04/04 21:45)
[29] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 25[ふぁいず](2004/04/04 21:48)
[30] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 25[ふぁいず](2004/04/04 21:50)
[31] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 26[ふぁいず](2004/04/09 00:06)
[32] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 26[ふぁいず](2004/04/09 00:10)
[33] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 26[ふぁいず](2004/04/09 00:17)
[34] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 27[ふぁいず](2004/04/12 21:11)
[35] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 27[ふぁいず](2004/04/12 21:21)
[36] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 27[ふぁいず](2004/04/12 21:29)
[37] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 28[ふぁいず](2004/04/15 23:06)
[38] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 28[ふぁいず](2004/04/15 23:12)
[39] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 28[ふぁいず](2004/04/15 23:18)
[40] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 29[ふぁいず](2004/04/21 23:52)
[41] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 29[ふぁいず](2004/04/21 23:57)
[42] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 29[ふぁいず](2004/04/21 23:59)
[43] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 30[ふぁいず](2004/05/03 01:48)
[44] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 30[ふぁいず](2004/05/03 01:51)
[45] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 30[ふぁいず](2004/05/03 01:56)
[46] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 31[ふぁいず](2004/05/09 20:43)
[47] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 31[ふぁいず](2004/05/09 20:45)
[48] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 31[ふぁいず](2004/05/09 20:48)
[49] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 32[ふぁいず](2004/05/13 20:55)
[50] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 32[ふぁいず](2004/05/13 21:02)
[51] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 32[ふぁいず](2004/05/13 21:04)
[52] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 33[ふぁいず](2004/05/21 00:06)
[53] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 33[ふぁいず](2004/05/21 00:09)
[54] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 33[ふぁいず](2004/05/21 00:13)
[55] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 34[ふぁいず](2004/05/27 20:42)
[56] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 34[ふぁいず](2004/05/31 02:05)
[57] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 34[ふぁいず](2004/05/30 22:04)
[58] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 35[ふぁいず](2004/06/05 00:29)
[59] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 35[ふぁいず](2004/06/05 00:34)
[60] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 35[ふぁいず](2004/06/05 00:38)
[61] ここまでの人物紹介[ふぁいず](2004/06/11 21:44)
[62] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 36[ふぁいず](2004/06/10 21:15)
[63] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 36[ふぁいず](2004/06/19 00:09)
[64] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 36[ふぁいず](2004/06/19 00:13)
[65] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 37[ふぁいず](2004/06/19 00:16)
[66] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 37[ふぁいず](2004/06/19 00:22)
[67] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 37[ふぁいず](2004/06/19 00:28)
[68] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 38[ふぁいず](2004/06/25 22:26)
[69] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 38[ふぁいず](2004/06/25 22:31)
[70] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 38[ふぁいず](2004/06/25 22:36)
[71] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 39[ふぁいず](2004/07/03 21:23)
[72] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 39[ふぁいず](2004/07/03 21:26)
[73] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 39[ふぁいず](2004/07/03 21:33)
[74] Re:闇と罪と本の旅人 第2部 40[ふぁいず](2004/07/09 23:31)
[75] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 40[ふぁいず](2004/07/09 23:57)
[76] Re[3]:闇と罪と本の旅人 第2部 40[ふぁいず](2004/07/09 23:38)
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[2240] Re[2]:闇と罪と本の旅人 第2部 35
Name: ふぁいず 前を表示する / 次を表示する
Date: 2004/06/05 00:34
綾波と二人で学校を出ると、校門前にトウジが立っていた。
「おう、赤木はん、イインチョ達が探しとったで。」
「そ、そう。ご免なさい。あとで連絡しとくね。」
「そうしとき。・・・それと、大丈夫か?さっき、あのガキがウロウロしとったが・・・なんもされへんかったか?」
小声でトウジが聞いてきた。
「う、うん・・・大丈夫、だよ・・・」
思わず目をそらしてしまう。それでトウジは何か感じ取ってしまったようだった。


「あのガキ!・・・やっぱり赤木はんから目を離さんほうがよかったか・・・」
トウジ、私を守ろうとしてくれているみたい。
ダメだよ・・・私なんかに関わっちゃ・・・


「だ、大丈夫だから。ほんとに、大丈夫だから・・・」
「いや、心配するに超したことはあらへん。とりあえず今日も送ってくわ。」
そう言うと私を先導して歩き出してしまった。
どうしよう・・・本当にトウジが巻き込まれちゃう・・・





その夜、先輩からメールが届いた。
『ユイちゃん、明日も楽しませてやるから早く来なよ。』





朝起きると、深夜帰宅して今日は寝ているはずの姉さんがリビングに座っていた。
「姉さん?今日はお休みじゃ・・・寝てなくていいの?」
「まあね。・・・ユイこそずいぶん早いわね。」
「え・・・う、うん・・・ちょ、ちょっと用事が・・・」
朝食も取らず鞄を持って出て行こうとする私の手を、姉さんが掴んだ。


「だめよ。」
「えっ?!」
「鈴原君が迎えにきてくれるから、待っていなさい。」
「す、鈴原君が?!ど、どうして?!」
どうしてトウジが?!
「昨日、ネルフの方に鈴原君から電話があったのよ。外線たらい回しにされてやっとつながったみたいだけど。」
「・・・」
「そしてこう言ったの。ユイを虐めようとしている生徒がいるから一人で登校させないでください。ってね。」
「あ・・・」
私を守ろうとしてくれている。
でも、これ以上巻き込むのは・・・
トウジに、トウジの家族に何かあったら私は・・・


姉さんは私の手を放すと、悲しそうな顔をして聞いてきた。
「どうして?」
「えっ?」
「どうして私に何も言ってくれなかったの?私はそんなに頼りにならない?」
「そ、そんなこと・・・そんなことない!」
姉さんはいつだって私のこと心配してくれている。大切にしてくれている。
「じゃあどうして?なぜいつも自分一人で悩むの?シンジ君もそう。言ってくれなければ人には通じないのよ。」
シンジも・・・“私”も“シンジ”だから・・・
“馬鹿シンジ”だから・・・
また姉さんに心配させてしまった・・・


「ご免なさい・・・」
私が謝りながら項垂れていると、姉さんは優しい目をして私の頭をなでてくれた。
「お願い、もっと私を頼って。私はね。あなたに感謝しているの。だからあなたの力になりたいのよ。」
「かん・しゃ・・・?」
どうして?私なんかに?
「あなたが来るまで私は自分自身を捨てて生きていたの。死んだ母さんを超えたい。それだけのために生きていた。だからどんな汚いこともしたわ。愛される訳のない人にすがっていた。」
「姉さん・・・」
「でもね。あなたが来てからは違う。生きていることがこんなに楽しいなんて初めて知ったわ。家に帰れば出迎えてくれるユイがいる。だから家に帰るのが楽しい。ユイと一緒に食べる食事もとても楽しくて美味しいの。これもあなたのおかげなのよ。ユイが私の家族になってくれたから。」
「家族・・・」
「だから私もユイの力になりたい。ユイが苦しんでいたら助けてあげたいの。大切な妹なんですもの。」
「姉さん・・・」
いつの間にか姉さんは涙を流していた。そして私も・・・


「最初はね。マギでも調べられなかったあなたの身元を調べるために引き取ったの。でも今はそんなことどうでも良い。あなたがいない生活はもう考えられないのだから。」
姉さんは私をそっと抱きしめた。私も柔らかいその胸に顔を埋める。
「いずれね。あなたの戸籍をもう一度登録し直そうと思っているの。姪じゃなくて本当の赤木家の娘に。私の妹として・・・嫌?」
私は首を横に振る。
嫌なわけ無い。本当に姉さんの妹になれる・・・
「でも・・・本当に私なんか・・・良いの?」
不安そうに私が聞くと、姉さんは微笑んで言ってくれた。
「馬鹿ね。ユイだから妹にしたいのよ。」
私達はまた泣いた。嬉しさで・・・


にゃあ・・・
『ええ話やなぁ・・・嬢ちゃん、嬢ちゃんは世界一幸せもんやで・・・ほんまに・・・』
ケンちゃんの涙声が聞こえた。


「私はね。あなたとの生活を失いたくないの。ユイと一緒に生きていきたい。だから・・・どんなことをしてでも・・・」
姉さんの目は、何かを決意したかのように強い光を宿していた。





姉さんと本当の姉妹になれるんだ!


でも・・・
私のような大罪人がそんな幸せ掴んでいいの?
私は償いきれないほどの罪を背負っている。
すでに汚れきっているし、これからもっともっと汚れ壊されなければいけない。


でも・・・
姉さんと一緒に居たい・・・居たいよ・・・


どうしたらいいの・・・
とうしたら・・・わからない・・・




ピンポーン
チャイムが鳴り、玄関を開けるとそこにいるのはトウジだった。
「おっ、おはようさん。」
「あ・・・おはよう・・・鈴原君。」
何故か赤くなりながら挨拶をしてくるトウジ。


姉さんも玄関まで出迎えに来た。
「おはよう鈴原君。」
「お、おはようございます!」
「悪いわね。ユイをお願いね。」
「わ、わかっとります!ワシ、いや、僕におまかせください!」
頼もしいわね、と姉さんが微笑んだ。トウジは真っ赤になって照れている。


「それから・・・手に負えなくなったら私に言いなさい。良いわね。」
「はい。」
「ふふ・・・格好いいわよ鈴原君。渚君と五分の勝負してるわね。」
「な、なあっ!!」


「???」
姉さんの最後の言葉、どういう意味だろ?・・・トウジも真っ赤になって慌ててるし。





トウジと並んで学校に向かう。
どうしよう・・・先輩は早く来るように言ってたのに、遅れてる・・・
トウジも巻き込まれて、何か酷い事されるんじゃ・・・
「す、鈴原君。」
「あ、なんや?」
「や、やっぱり・・・鈴原君、私と一緒にいない方が・・・もしもの事があったら・・・私・・・」
「赤木はんは気にせんでええ。これはワシが好きでやってることや。」
「で、でも・・・」
「ええって・・・お、渚やないか。」
「え・・・」


見れば前の通りに止まったネルフの公用車から降りてくるカヲル君がいた。
運転席の黒服の人と何か話している。


「ありがとう。あとは頼みますね。」
「は、おまかせください。」
黒服の人はそう言うと走り去った。
カヲル君は私達を見つけると微笑んで手を上げる。


「やあ、おはようユイさん。ついでに鈴原君も。」
「お、おはようカヲル君・・・」
「おはようさん。ついでは無いやろ・・・」
笑いあうカヲル君とトウジ。意外とこの二人は仲が良いらしい。





そのまま3人で学校に向かう。
私の足取りはますます重くなっていく。
そして、校門前まで来たとき、私は恐怖に硬直した。


校門の横で先輩とあの少女がじっと私を見ている。
先輩は苦虫を噛み潰したような顔で、
そして、少女は私を憎悪の表情で。




「おはようございますぅ。カヲル様ぁ~♪」
「ああ、おはよう。」
少女は一瞬で笑顔を作ると、カヲル君に話しかけた。
返事を返されて、きゃっと喜んでいる。
そして笑顔のまま、私の方に向いた。


「おはよう、赤木さん。」
「お・・・お、おはよう・・・ござい・ます・・・」
足がガクガク震えて上手く喋れない。
彼女の顔は笑顔のまま、でも目は全く笑っていなかった。


「ちょっとお話があるのだけど、いいかしら?」
「あ・・・あ・う・・・」
私は恐怖のあまり声も出せない。彼女は私の手を掴んで連れて行こうとした。


「どこ行くんだい?僕もご一緒させてもらうよ。」
「ならワシも行こうかのう。」
カヲル君とトウジがそう言ってついてきた。


「え、えっと、た、たいしたことありませんから、カ、カヲル様が来るほどでは・・・」
「たいしたこと無いなら別についていっても良いじゃないのかい?」
「そ~やなぁ~」
カヲル君達にそう返されて、少女は顔をそらす。でも、隣にいる私には彼女の表情を見ることが出来た。
悔しそうな顔が・・・


「あ、く・・・」
私を握る手に力が入り、私は苦痛に呻いた。


やがて彼女は振り返る。笑顔を作り・・・
「やっぱりたいしたこと無いですから、いいですわ。じゃ、赤木さん、また今度。」
そう言って私の手を放し、立ち去っていった。
離れて見ていた先輩も、チッと口を鳴らし後を追っていく。


「大丈夫かい?」
カヲル君が私の手を持つ。その手には指の後が赤くついていた。
「う、うん。何ともないよ。」


トウジも私の横に来ると耳元で囁いた。
「あの二人か?」
「・・・うん。」
「そっか・・・厄介やな・・・あの女、たしか・・・」
「某・大物政治家のご息女さ。」
カヲル君が何気なく話に加わった。


だから、もみ消せるって・・・町から追い出すって・・・
だめだよ、彼女ならトウジの家族をメチャメチャにしてまう。そんなの・・・


「す、鈴原君、やっぱり、私・・・」
「大丈夫やって。赤木はんは心配性やなぁ。」
トウジは笑い飛ばした。





その日、トウジは何気なく私のそばにいてくれた。そしてカヲル君も・・・
でも、二人の手の届かない所で、私は少女に捕まってしまった。


「あら、赤木さん。奇遇ね。」
休み時間になり女子トイレに入ると、待ちかまえていたように彼女と数人の女の子に囲まれた。
「あ・・・」
壁際に追いやられる。
「いい度胸ね、赤木さん。あれだけ言ったのにカヲル様に近づくなんて。」
「わ、私・・・」
氷のように冷たい彼女の視線、私は恐怖に足が震えてきた。


「私を舐めてるの?それともカヲル様が優しいことにいい気になってるのかしら?」
「そ、そんなこと・・・」
彼女は私の髪を鷲掴みにすると耳元に口を寄せて囁いた。
「あの写真・・・そんなにばら撒いてほしいんだ・・・露出狂の気もあったのね。この変態女!!」
私の顔から血の気が引いた。
「ご、ご免なさい。ゆ、許して、許してください。」


「あ~ら、震えちゃって可哀想♪」
取り巻きの女の子の一人が笑いながら言った。
「お嬢、知ってる?2-Aの連中ね、揃いも揃ってこの娘のことお姫様扱いなのよ。馬っ鹿みたいよねぇ~。」
「ふんっ。あのクラス、女共は馬鹿だらけだし、どうせ男連中はこのでっかい胸で誑かしたんでしょ。」
そう言いながら私の胸を無造作に掴んだ。
「い、痛い!」


別の娘が手を伸ばして、私の髪を一房掴む。
「あ~ら、ユイちゃん綺麗な髪ねぇ~。でもショートカットのほうが似合うんじゃない?おね~さんがカットしてあげましょうか?」
そう言ってポーチの中から鋏を取り出した。
「や、やだ・・・」
私が怯えながら言うと、彼女は急に不機嫌そうな顔になった。
「やだ?・・・人がせっかく綺麗にしてあげようって言ってるのに、そういうこと言うの?この娘は。ちょっと可愛いからって頭に乗ってない?」
「あ・・・」
「ほらっ!なんとか言ってみなさいよ!」
そう言いながら彼女は、鋏の刃の部分で私の頬をペチペチ叩いた。
「ひっ!」
恐怖に目を閉じる私の腰がぶるっと震えた。そして・・・


シャーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やだ!この娘!」
「アハハハハ!漏らしてやんの!汚ったな~い!」
女の子達が馬鹿にしたように笑う。


「あ・・ああ・・・止まらない・・・やぁ・・・う・・・うう・・・」
私はただ、せめてスカートまで濡らさないようにとすそを持ち上げて止まるのを待つしかなかった。




シャーーー・・・・ポツ・・・ポツ・・・


やがてそれは止まり、滴がショーツから時折落ちた。
足元には水溜りが出来、靴を濡らしている。


「う・・・うう・・・ひっく・・・う・・・・」
涙に視界が霞む。


「あははー、お漏らし娘ぇ~。」
「中2にもなって恥ずかしくないのかしらね~。」
「ほんとほんと・・・ん?お嬢、なにやってんの?」
「ふふ、これも青春のメモリーだから撮っておいてあげるの。」
そう言って彼女はカメラをポーチから取り出した。
「お嬢、やっさし~♪」
「「あははは」」


カメラをかまえる少女。
もう・やだ・・・
こんなの・・・ヤダ・・・





「ちょっと!今取込中だってば!」
「いいから退きなさい!」
その時、急に外が騒がしくなった。
そして外で見張りをしていたらしい女生徒を、引きずりながら入ってきたのは・・・
「放しなさい!・・・ユイっ?!あんた達!ユイになにやってんのよ!!!」
「アスカさん・・・」
女の子達に囲まれて泣いている私を見つけたアスカは、今まで見せたことのない憤怒の表情をした。
「な、なによ・・・」
「べ、べつに私達は・・・」
一斉に怯えた表情になる女の子達。
でも、お嬢と呼ばれた少女は強気な態度を崩さなかった。
「別にあなたに関係ないでしょ。私達は赤木さんとお話ししていただけよ。」
「お話?・・・あんたの言うお話ってのは、泣かすこと?」
「これは赤木さんが勝手に泣いてるのよ。だってお漏らししちゃったんだもの。泣きたくもなるわよね~。私達、慰めていてあげたの。」
そうそう、と周りが同意する。アスカはそんな彼女たちを嫌悪感丸出しの顔で見ていた。


「はん!よくもそんな話を・・・あんたよくうちのクラスの前で騒いでるカヲルの追っかけよね。大方カヲルと仲が良いユイに嫉妬して虐めてたんでしょ。あら、図星?」
アスカの挑発に少女の握った拳が震える。
「こ、この・・・私になんて口の利き方を・・・私を誰だと・・・」
「色々噂は聞いてるわよ。あんたのことはね。」
「だったら!」
怒鳴り返そうとする少女を取り巻きの娘達が押さえる。
「やばいよお嬢!」
「こいつ、ネルフの・・・お嬢のパパでも・・・」
「くっ・・・」
彼女の顔が真っ赤に染まり醜くゆがんでいた。


「ネ、ネルフの、ロボットのパイロットだからっていい気になるんじゃないわよ!」
「そんなの関係ないわ。アタシは肩書きなんかに頼らないし縋らない!アタシはアタシ、惣流アスカ・ラングレーよ。親の権力が自分の力だと勘違いしている、どこかの馬鹿娘と一緒にしないで欲しいわね。」
「な、なんですって?!」
「あら、思い当たるフシでもあるのかしら?」
「!!!」


彼女はしばらくうつむいて震えていたが、ずかずかと足音を鳴らしてトイレから出て行った。
「覚えてなさいよ・・・」
「あんたこそ覚えときなさい。ユイに何かあったら、あんたの大好きな権力でも何でも、使えるだけ使ってあんたを潰すから。」


彼女は悔しそうに去っていった。取り巻き達も慌てて追いかけていく。
「そんな物に縋ると、ろくな結末にならないのよ・・・」
アスカは彼女の背中に、何故か悲しそうな目でつぶやいた。


「ユイ、大丈夫?」
アスカは優しい表情になると、私を優しく抱きしめた。
「うん・・・う・・・うう・・・」
頬を流れる涙を、アスカは優しく指で拭き取ってくれた。
「泣かないの。ちゃちゃっと掃除しちゃうから、ユイは早く下着代えちゃいなさい。」




教室に戻ったアスカがカヲル君と何か話し込んでいる。
その後、カヲル君はどこかに電話をしていた。





「赤木ユイさんですね。」
学校が終わり、校門を出た私にスーツを着た男の人が話しかけてきた。
「あ、はい。」
私がとまどうように返事をすると、その人は名刺を差し出した。
「怪しい者ではありません。」
「大泉先生の秘書・・・さんですか?」
テレビのニュースとかでたまに聞く、政治家の人の事務所の名前が書いてあった。
「当事務所の大泉が是非お会いしたいと申しております。申し訳ありませんがご足労願えませんか?」
「えっ・・・ど、どういう・・・」
訳がわからず混乱する私の背後から、カヲル君とトウジが声をかけてきた。
「大丈夫だよ、ユイさん。僕も行くから。」
「ワシも行くでの。」
「えっ?えっ?えっ?」


結局訳がわからないまま、大きな車に乗せられてそのまま走り出してしまった。





着いたのは大きなビルの一室。
カヲル君達を控え室に残し、私は立派な部屋に招き入れられた。
出迎えたのは鋭い目つきでがっちりした体格の中年男性。
「いや、ようこそ。私が大泉だよ。わざわざ済まないね。」
「は、はあ・・・」
大げさに握手をされ、ますます困惑する。
確かこの人は、日本でもかなり偉い人じゃなかったっけ・・・たしか、時期総理の有力候補ってニュースで・・・


その時、別の扉が開いて誰かが入ってきた。


「パパ、急に呼び出してなんなの?・・・あ、あなた?!」
入ってきたのはあの少女だった。


「なんであなたが此処にいるの?!」
「なんでって・・・その・・・」
私が教えて欲しい・・・それにパパって、それじゃ、この人彼女のお父さん?!


「ああ、そうか。私にお別れ言いに来たのね。この町を出て行くんでしょ。大丈夫よ、パパに頼めば引っ越し先の物件もご家族の仕事先も良いようにしてもらえるから。」
「えっ?!」
一気にまくし立てる少女。私はオロオロと戸惑うばかりだった。
「パパ、そう言うことだからこの娘の力になって上げて。彼女、私のお友達なの。」
笑いながらそう言う彼女に、大泉先生は予想もしない行動を取った。


「この・・・大馬鹿者がぁ!!」
パアン!!
腕を振り上げ、自分の娘の頬をを思いきり叩いた。
「きゃあっ!」
その場に尻餅をつく少女。私はあまりのことに声も出ず成り行きを見守っていた。


「パ、パパ?!な、なにするのよ?!」
初めて父親に殴られたかもしれない彼女は、信じられないといった表情をしている。
「お前は・・・お前はなんと言うことをしてくれたのだ・・・この親不孝者めが!」
「パパ?!」
「私の恩師であらせられる赤木教授のお孫さんを・・・ネルフの赤木博士の妹さんでもある娘さんを辱めるとは・・・私は亡くなった教授に会わせる顔がないわ!」
そう怒鳴りつけると先生は私の方を向いた。
そして・・・
「パパっ!!」
「そ、そんな!止めてください!」
いきなり私に向かって深々と土下座をしてきた。
「娘が本当に申し訳ないことをしてしまった。全て私の責任です。どうか、どうかお許しください。」
「パパ!なんで?!なんでそんなことするのよ?!」
少女はもう半狂乱になっている。


「こんな事で許されるとは思っておりません。いっそのこと今の職を辞職してお詫びを・・・」
「パパぁ!!!」
「だ、駄目です。そんな事しないでください。お願いですから顔を上げてください。」
私の方も慌ててしまっている。よく知らないけど、この人は日本にとってとても重要な立場にいる人だって聞いたことがある。私のためにそんな・・・


「もう良いです。良いですからお願いです。私なんかのためにそんな事しないでください。」
先生の前に跪き、必死にお願いするとやっと先生は立ち上がってくれた。


「本当に申し訳ない。・・・娘にもきつく言っておきます。二度とお嬢さんには手を出させません。」
そう言いながらもう一度深々と頭を下げた。
返って私の方が恐縮してしまって、慌てて私も頭を下げた。




「外で待っておれ!この馬鹿娘が!」
「パパぁ・・・」
先生は少女を部屋から追い出すと、優しげな顔で私を見た。
「本当に申し訳ない。」
「いえ、もう良いですから。お願いです、謝らないでください。それに、それにあの娘のこと、嫌いにならないであげてください・・・」
父親に嫌われるのはとても悲しいことなのだから・・・
「優しいお嬢さんだ。」
そう言うと先生は私の頭をなでた。
違う・・・私は優しくなんて無い。ただ、嫌われる辛さを知ってるから・・・“父さん”に捨てられる辛さを・・・


お見舞い金を出すという先生を何とか止まらせて、私は部屋を出ようとした。
「済まなかったね。お姉さんの方にもお詫びを・・・」
「お、お願いです。姉さんには言わないでください!心配かけたくないんです・・・」
駄目!姉さんに知られたくない。私は必死に懇願した。
「そうかね・・・わかった。誰にも言わないよ。」
「お願いします・・・」
私が頭を下げると、先生は真剣な顔つきになってこう言った。
「お姉さんを大切にしてくれたまえ。君のお姉さんはとても勇気のあるすばらしい人なんだよ。」
「は、はい・・・」
どういう事なんだろう・・・





「終わったかい?」
「う、うん・・・」
部屋を出るとカヲル君とトウジが待っていた。
「もう大丈夫だよ。もう何も気にすることはない。もう一人の先輩の方もね。」
「らしいのぉ。なんやよおわからんが・・・」
二人とものんびりコーヒーをすすりながら言った。


「あ、あの、カヲル君・・・」
「ん?なんだい。」
「此処に呼ばれたのって・・・もしかしてカヲル君が?」
「さあ?」
綺麗な笑顔で笑ってごまかされてしまった。
でも、たぶんこれはカヲル君が何か手を回してくれたんだと思う。
でなければ、こんな私なんかに大物政治家の先生が会おうなんてするわけないもの。


がちゃ・・・
その時、扉が開き打ちひしがれた表情の少女が出てきた。
「あ・・・」
彼女はジロッと私を見た。
「・・・汚いわよ赤木さん・・・パパに言うなんて・・・」
「わ、私・・・」
私が何か言う前に、カヲル君が庇うように私の前に進み出た。
「汚いのは君じゃないのかい?」
「カ、カヲル様?!だ、だって、この女は・・・この女はカヲル様に相応しくありません!この女の事、カヲル様は知らないんです!」
私の顔から血の気が退いた。言われる。全部言われてしまう。もう、ダメ・・・


「知ってるさ。そして君のやったことも全てね。」
カヲル君の言葉に今度は、少女の顔から血の気が退いた。
「あ、ああ・・・」
「君のやったことは好意に値しないね。嫌いってことさ。」
「カヲル様!」
カヲル君は冷たい目で彼女を見つめた。
「自分の欲望のために人を陥れる。それも他人を使って・・・ボクの一番嫌いなタイプだよ。」
「カヲル様・・・それは・・・それは・・・」
「二度と僕の前に現れないでもらいたいね。」
「カヲル様ぁ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
彼女は力なくその場に泣き崩れた。
「ああ、君の部屋に泥棒が入っているかもしれないけど、君のお父上は別に気にしないと思うよ。何がなくなっているかは君も見当がつくだろう。」
カヲル君はそう言うと私達を連れて部屋を出た。
振返る私の目に映った彼女はとても小さく見えた・・・





「終わったのう・・・」
トウジが伸びをしながら呟く。
「あ、あの・・・二人とも・・・ありがとう。」
「いや、大した事してないさ。」
「そや。結局、ワシなんかなんも役に立っとらんかったしのう。」
照れくさそうにトウジが言った。
「そんなこと、そんなこと無い!鈴原君は私のこと守ろうとしてくれた。酷い目に会うかもしれなかったのに・・・」
「そうさ。鈴原君、君は誇れることをしたんだ。尊敬するってことさ。」
私とカヲル君にそう言われると、トウジは照れたように頭を掻きながら空を見上げた。


「カヲル君・・・」
「なんだい?」
私は言葉に詰まった。でも・・・
「全部・・・知ってたの?」
私が何をされていたのか・・・私がどんなに汚いのか・・・
「赤木はん・・・」
トウジが心配そうな目で私を見つめる。
「いや・・・君が虐待されているって言うことも後で知ったんだ。すまないね、助けてあげられなくて・・・鈴原君がいなかったらどうなっていたことか。」
「ワシも大した事しとらんよ。」
二人してお互いを誉めあっている。その顔は照れくさそうだった。
そんな人とも、私にはとても素敵に見えた。


「私、助けてもらったのに・・・何もお礼も出来ない・・・」
何かしてあげたい・・・
でも、私には何もない・・・助けてもらうばかり・・・
やっぱり私は人に迷惑をかけるしかできないのかな・・・


「別に良いよ。」
「そや、何かしてもらいたくてやったことやあらへん。」
「でも・・・」
私がスカートの裾を握りしめ俯いていると、カヲル君がふっと笑った。


「なら、一つだけお願い聞いてもらえるかな。」





来るときに乗った車に送ってもらい、私達は学校に戻った。
そしてカヲル君の先導で校舎に入る。
着いたのは・・・音楽室?


「あ、あの・・・カヲル君?」
「一曲、弾いてもらえるかい?」
カヲル君はピアノの前に立つと、静かに言った。
「おお、赤木はんのピアノかぁ。そりゃええのぉ。」
トウジも嬉しそうに手近の椅子へ、背もたれを前にまたがるように座った。


「そんなので・・・良いの?」
「ユイさんのピアノは音楽の極みさ。そう思わないかい?鈴原君。」
「そや、金払ってもいいくらいや。」
二人とも期待した目で私を見つめる。


「ありがとう・・・」


私はピアノの前に座ると静かに弾き始めた。
観客はたった二人。
でも、素敵な二人のために心を込めて・・・


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