携帯が鳴り、出た私の耳に聞こえてきたのは優しく甘い声だった。
「はい・・・」
『山岸です。』
「お、お姉様?!」
懐かしい声に声が上擦る。
『お久しぶりですね、ユイ。』
「ど、どうして・・・」
『ユイが・・・呼んでいたような・・・気がして。』
「あ・・・」
私が山岸さんを“お姉様”と呼ぶようになってから、別れの日までの短い一週間。その間にも同じようなことがあった。
シンジに身体を弄ばれ一人落ち込んでいるときに電話が鳴ったり、家に誘われて慰められたりした。
お姉様といる間は、何もかも忘れられた。
「お姉様・・・お姉様ぁ・・・」
『あらあら、どうしたんです?いきなり泣き出して・・・』
「う・・・うぅ・・・」
『また・・・碇さん、ですか?』
「違います・・・私、シンジ君に・・・捨てられました・・・」
『まあ・・・』
驚いた声が聞こえた。
『でも、私はそれで良かったと思いますよ・・・ユイと碇さんは一緒にいるべきでは無いと思います・・・』
「・・・」
『それで泣いていたのですか?』
「・・・違います。」
『話してご覧なさい・・・』
「今日・・・私、男の人とデートしてきました・・・」
私は今日一日の出来事を話した。お姉様は黙って聞いている。
『楽しくなかったのですか?』
話し終えると静かな声で聞かれた。
「いえ・・・楽しかったです・・・」
『なら・・・どうして?』
「私・・・私は、彼に相応しくない・・・・カヲル君は私なんかと一緒にいちゃいけないんです!」
『どうして?』
「私なんか・・・私なんかじゃダメなんです・・・」
はあ・・・電話の向こうからため息が聞こえてきた。
『悲しい娘・・・どうしてそんなに自分を卑下するんですか・・・』
「・・・」
『なにがそんなに辛いんです?いったい何がユイをそんなに縛り苦しめているんですか?』
「それは・・・」
『・・・』
「・・・」
『私にも言えないんですね・・・』
「ご免なさい・・・ご免なさい・・・」
私はひたすら謝る。こればかりはお姉様にも言えない。私の罪は誰にも話せない。
『可哀想に・・・私がそばに行けたら良かったのに・・・』
「お姉様・・・会いたい・・・会いたいです・・・」
『ご免なさい。私は今、オーストラリアにいるの・・・直ぐには行けないわ・・・』
遠い・・・遠すぎる・・・
『でも・・・私の心はいつもユイの側にいますよ・・・』
「お姉さま・・・」
『今も私はあなたの隣にいます・・・私を感じませんか?』
「あ・・・はぁ・・・お、お姉さまを・・・か、感じます・・・」
携帯から聞こえてくる声に、まるで耳に息を吹きかけられたかのような感覚が広がって私は思わず喘いだ。
身体が熱く火照ってくる。
『ユイ・・・自分の胸を触ってご覧なさい・・・』
「はい・・・」
そっと、胸に触れる。自分の鼓動が感じられた。
『どうなっています?』
「胸が・・・ドキドキ言ってます・・・お姉様に話しかられる度にもっと・・・」
『その手は私の手・・・』
「ああ・・・お姉様の手が・・・」
自然に手が胸を揉み始めた。
「あ・・・あぁ・・・」
『可愛いわ、ユイ・・・』
「あ・・・お姉様・・・あぁ・・・」
手の動きが激しくなっていく。薄いパジャマの下で乳首が固く尖り出す。
『ユイの乳首、直ぐ固くなりますね。いやらしい娘・・・』
お姉様がまるで見ているかのように言う。
「あ、ああっ、ご免なさいっ、ひうっ、ユ、ユイは、ユイはいやらしい娘です!」
パジャマのボタンを外し、胸をさらけ出すと乳首を摘んで引っ張った。
「はあっ、ああっ、ひんっ、あ、ああっ!」
『もっと、もっと感じなさい。ユイのいやらしい所を私に見せて・・・』
携帯から言葉が聞こえるたび、まるで耳に息を吹きかけられたかのように身体が仰け反った。
『ユイのあそこはどうなっているのかしら?』
その言葉に手が自然に股間へと移動した。
グチュ・・・
そこはすでに大きな染みが出来て、床にまで水滴が落ちている。
「あ・・・ああ・・・濡れてます・・・触ると音が・・・」
『聞かせてユイ・・・』
「はい・・・お姉様・・・」
私は携帯をハンズフリーの状態にすると、足を大きく開き股間の前の床においた。
自由になった両手でショーツの上から弄る。
水音はさらに激しくなっていった。
『聞こえますよユイ。あなたのいやらしい音が・・・』
床においた携帯から聞こえてくるお姉様の声も、心なしか熱を帯びてきていた。
ああ、私でお姉様が感じていてくれてるんだ・・・
「もっと、もっと聞いてください・・・ユイのいやらしい所、もっと!」
もどかしげにショーツを脱ぎ捨て、腰を浮かせると携帯の前に突き出した。
指を自分の中に潜り込ませる。
グチュウッ!
「あうんっ!」
『ユイの中、とても熱いのね・・・』
話さなくても私のしていることは全て伝わっていく。
携帯から聞こえてくるお姉様の息づかいも熱を帯びてきた。
「あっ、あひっ、ああっ、んっ、手が、手が止まりませんっ、ああっ、気持ち、気持ちいいのぉ!」
激しく指を出し入れする。無意識に入れている指は二本に増え、私の中を擦りかき回していく。
『ああっ、ユイっ、私も、私も気持ちいいです。ユイを、ユイを感じる!』
「ひんっ、あっ、あふっ、私も、私もお姉様を感じますっ、お姉様の指が感じるのぉ!」
もう片方の手が後ろに回り、お尻の穴に指が潜っていく。
薄い皮を挟んでお互いの指がぶつかり合った。
あまりの快感に涙と涎が止めどなくしたたり落ちる。
「ひ、ひいっ、お、お姉様っ、ユイは、ユイはお尻でも感じてしまいます!お、お尻の中に指が入ってますぅ!」
『良いのよユイ。あっ、もっと、もっと感じなさい。』
私は壁に寄りかかったまま、腰を携帯に向かって突き出し夢中で指を動かした。
私のあそこから、そして携帯から激しい水音が聞こえてくる。
「ああっ、あっ、あっ、あああっ、も、もうっ、もう、いっちゃいますっ、お姉様っ、ユイ、いっちゃう!」
『はあっ、あっ、ああっ、私も、私もいきそうっ、ユイ、一緒に、一緒にぃ!』
「ああっ、だめっ、い、いくっ、ひっ、んあっ、ああっ、あんっ!」
無我夢中で指を動かし、そして・・・
「『ああっ、あっ、あぁーーーーーー!』」
身体が浮き上がる感覚とともに、頭が真っ白になり全身を硬直させた。
やがて仰け反らしていた身体から力が抜け、床に横たわる。
緩慢な動作で携帯を足下から顔の前の床においた。
そこから聞こえてくるお姉様の荒い息づかいに、もう一度軽く達してしまう。
べとべとになった指をくわえ、私はしばらく痙攣する身体を横たわらせていた。
この瞬間、この瞬間だけは、私は悲しみも辛さも全て忘れていた・・・
『たとえ殿方でも、あなたの側にいてくれるのならば、ユイはその方に付いくべきです。人は一人では生きては行けません。特にあなたは・・・』
「・・・」
『ユイがそんなに大切に思う方ならその方は素敵な人だと思います。その方が少しは強引なくらいにあなたを導いてくれることを願うだけです。』
「お姉さま・・・」
『どんなに離れていても、私はあなたのことを忘れません。・・・いつか私に話したくなったら、話せるようになったら、いつでも連絡なさい。』
「はい・・・」
そう言って、お姉様は電話を切った。
後に残るのはまだ火照った身体と静寂に包まれた薄暗い部屋。
窓から降り注ぐ月明かりに濡れた床が微かに光っていた。