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No.22238の一覧
[0] ある人形の夜[午後12時の男](2010/10/20 18:25)
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[22238] ある人形の夜
Name: 午後12時の男◆96f3d9c1 ID:2e96b5a2
Date: 2010/10/20 18:25
 大陸の北部に領地を構える貴族や有力者の間では、己の血族の跡取りに、性的な仕事を専門にする奴隷を宛がう慣習がある。
 金と地位と権力にかまけた愚劣な遊びと評され、近代に入ってから早々に禁止令も出たが、それでも古くからある慣習はそう簡単に止まるものではない。中央の権力の行き届かない地方になると、今も当然のものとして根強く生き残っており、そういった奴隷専門の斡旋業が一定の権力をもって幅を利かせているのが現状である。
 事程左様に、人の欲望というものに歯止めはかけられない――そうとも言えるが、そもそもこの慣習、大元をたどれば、貴族の間で「血」を守るための効率的な手段として発明されたものであるとも言われている。
 営々と歴史を築きあげ、そしてその歴史が長ければ長いほど、権力者というものは跡取りの問題について神経質になるものだ。
 より純粋で。より高貴で。より誇り高い血を残す――古今東西を問わず、ある意味それは権力者の永遠の命題と言っても過言ではない。
 跡取りが何かの間違いで、どこの馬の骨とも知らぬ女と長男長女を作ろうものなら家の名に泥を塗ることになる。妾との次男三男ならまだしも、そのような不名誉だけは絶対避けねばならない。
 ならば跡取りにはあらかじめ劣情の対象となるものを与えてやり、それで若い欲望を処理すればいい――奴隷制度の当たり前だった時代、そんな理屈を重ねたうえで慣習化したのがこの性奴隷という存在だった。
 そして――しかし、欲望にも好奇心にも際限がかけられないのが人間という生き物だ。
 より美しく。より淫らで。より従順な性奴隷を作るために。
 性行為に特化した人間を作り出すという歪んだ「飽くなき探究心」は、地方権力と慣習によって正当化され、長い歴史の中でおよそ人道的とは言い難い思考錯誤が繰り返されてきた結果、数多くの「改造法」が編み出されてきた。
 人工交配による遺伝子操作、ウイルスの使用、魔法や薬物による調教、その他もろもろ。
 政治体系が近代化し、貴族の権力も絶対のものではなくなって、よほど格式高い家でなければ血を守る意義を失った現代においても、その呪われた技術は脈々と受け継がれている。過激化する手段は既に目的そのものになりかわっており、性奴隷を求めるものの多くは本来の起源がどういうものかをそもそも知らず、ただ下劣な欲求を満たす事に心血を注ぐようになった。

 アルデニ家で飼われているリアもまた、そんな時代に性奴隷として売られた者の一人である。

********************************

 奴隷という言葉で表わされてはいるものの、一日中を食べものの確保のために汗水たらして働くような人たちの事を思えば、自分の置かれた境遇はなんと気楽な生き方だと、リアはそう考えている。
 日に三度、栄養の事をきちんと考えられた食事を与えられ、やることと言えば健康維持のための軽い運動と十分な睡眠、申し訳程度の勉強、そして「調教」を含めても一日数時間程度の性行為。
 勿論それは飼い主であるアルデニ家当主が人道的というわけではない。単に性奴隷であるリアの「品質」を保つための処置にすぎない訳だが、買われた先によってはまさしくモノのようにいたぶられる性奴隷も居ることを考えれば、リアはやはり幸運だったのだろう。大した肉体的・精神的負荷を強いられる訳でもなく、ただ与えられたもの、要求されたことに対し受け身に応えるだけでその日を生きながらえることができるのだから。
 もっとも、どれほどひどい扱いを受けても、彼女がそれを辛いと認識することはなかったかもしれない。
 奴隷売買組織により、はじめから性奴隷という生き物として人工交配によって生み出され、専門の教育を施された彼女は、そもそも性的な行為ならばどんなことであっても喜んで受け入れられるようにと仕込まれている。
 尋常の性行為に悦ぶだけが能ではない。鞭で打たれれば嬌声を上げ、肛門を抉られれば愉悦のため息を漏らす。彼女たちはそういう風に作られた生き物だ。
 ただ――やはりそれでも。 
「可愛いな、リアは」
 愛情すら感じさせる手つきで愛撫をし、口づけを交わしながら主人はそんな言葉をつぶやいた。甘い言葉にリアも嬉しくなって、差し出された舌を自分の口内に受け入れ、舌と舌を絡み合わせ水音を響かせて、自分を組み敷いている雄の情欲を誘う。
 やはり自分は幸運なのだとリアは思う。
 性奴隷に甘い言葉をささやく必要などないのに、わざわざそんなことを口にするということを考えれば、主人の彼女への評価として、それは心からのものであろう。
 男を満足させるために作られた存在であるからこそ、性的快楽だけではなく、外見の面でも主人の満足に足るようにと、自分の身体のメンテナンスを十分に受けられる。だからこうして、主人からお褒めの言葉を頂ける。いいことである。うれしいことである。
 そして刷り込まれた本能によって、そんなすべての感情の昂ぶりは下半身にまとわりつく粘っこい熱となって転化されていく。
 ひん、と、のどの奥から子犬のような甘い泣き声がもれた。
「……ご主人様ぁ……」
 媚びを含んだ言葉と視線で、主人に本格的な性行為を請う。しかし主人はあいまいに優しい笑みを浮かべるだけ。穏やかで残酷なお預けに再度リアは泣き声を上げた。
 人と交わることに徹底的に快楽を感じるようにと調教された身体は、指による柔らかな愛撫だけで既に彼女を三度ほど絶頂に追いやっている。加えて与えられた甘い言葉と口付けで、リアの身体はもう熱くなり切っていた。贅をこらした下着で覆われた太股は既に愛液でぬめり、焦れたように腰が動く。雄を求めひくひくとうごめく性器から愛液が糸を引いて流れ落ち、純白のシーツに淫らな染みを作っていく。
「んくっ……あ、ぁ……っ」
 だが主人はなかなかお情けを与えてはくれないようだった。軽い口づけと陰核へのこねるような愛撫だけで、リアは声もなく四度目の絶頂を迎える。細い指が頼りなくシーツをつかみ、背筋をのけぞらせ、そして痙攣。指を入れられたわけでもないのに愛液と潮が桃色の肉孔から噴出し、主人と彼女自身を汚した。
「~~~~っ っ、あ! はぅ……ぅう……っ」
 恨みがましいような、奇妙に切ない気持ちが情欲に浸りきった身体を侵食していく。
 辛かった。
 絶え間なくリアを絶頂に追いやっていながら、しかしこれはあからさまなお預けだった。どれだけ絶頂を迎えても主人の性器でかき回してもらわねば彼女は満足できない。そういう風に仕込まれている。
「う、ぅううっ。ううう――――~~っっ」
 潤んでいた瞳はついに決壊し涙をこぼし、喘ぎと駄々っ子のようなぐずりの混じった奇妙な声が、豪華な調度で飾られた部屋に響く。
 主人と奴隷が睦みあっているその空間も――リアに与えられた個室も、彼女への扱いに合わせるように豪奢なものだった。男女の距離感を演出するために少々手狭だが、ベッドはもちろんのこと、壁紙から本棚、飾られている花にいたるまで、それぞれが厳選された一級品と呼ぶにふさわしいものだ。
 最高級の鳥は最高級の鳥かごに入れてこそ映えるもの――主人のそういう嗜好によるものだ。彼女に与えられる衣服もそれは同じで、無暗に男の情欲を誘うような下品なものはほとんどなく、清潔感さえ感じさせるような上質なものがほとんどだった。
 尤も、そんな服も、組み敷かれ愛撫にさらされるうちに、愛液と涎で見るも無残な状態になっているのだが。そしてそもそもそうやって「汚される」のも、また主人の嗜好のうちだ。だからリアはそれもまた喜びとして股ぐらを濡らす材料にする。
「……おねだり、しないの?」
 頬ずりをし、耳たぶを唇ではさんでコリコリとやりながら、主人がそんな声をかけてくる。命令でもお願いでもなく、ただ言葉の内容通りに尋ねるようなその口調に、リアの背筋はぞくぞくとわなないた。若い身体を保つようにと施された延齢処置によって生理まで止まった彼女にはもう生殖能力がないが、それでも明らかに性行為を志向する言葉を投げかけられると子宮のあたりがかっと熱くなる。雌として雄の性器を、そしてその奥に蓄えられた熱い子種を欲する自分が、止められない。
「ふぁあ……っ、ぁ……く、ください」
「うん?」
 切羽詰まった言葉に、主人は優しい笑みを浮かべてくる。
 相手の出方を待つようなその視線はどこまでも意地悪で残酷だ。
 一度言いかけたとおねだりはもう止まらない。堰を切ったようにリアの胸の奥から、雌の言葉が溢れだした。
「おち、ぅん……おち、おちんちん、ください、ご主人様の、ください、ください……っ」
 言葉で伝えるだけでは足りない。燃え上がるように熱くなった欲求の促すままに、リアは体全体でおねだりをする。
 口付けの雨を降らし、体を擦り付け、濡れそぼった女陰を見せ付けるように腰を揺り動かして、自分の体の隅々までを抉りぬく凶器を誘惑する。
「はやく、はやくぅ……んぅ、っく、あ……くださぃ……お願いだからぁ……」
「……うん。うん。良く出来ました」
 そして投げかけられる、満面の笑み。そして柔らかな口付け。
 ――次の瞬間、最早どうしようもないくらいに濡れそぼっていたリアの陰部に、主人の性器が差し込まれた。
「っ、ひ! ああ! ぁああ! ん、あ!」
 不意打ちの様に叩きつけられた快楽は、しかし涙を流し涎を垂らすほどに待ち望んでいたもの。息が詰まりながらもリアは歓喜の鳴き声を上げ、男を喜ばすために訓練された膣肉がきゅううっと締まって主人のものを歓迎する。
 自分の愛液で洪水のようになっているくせに主人の先走りが感じられて、それに奇妙な安心感を覚えてしまう。
 ――ああ、本当に。私はこの人のものなのだ、と。
 避妊のための措置すら取らず、肉と肉をすり合わせ、性器によってよがり狂う姿を主に見せつけ、その媚態によって主人を喜ばすための――性奴隷。
「……ほんとうに、上手になったなあ、えらい。えらい」
 正上位の体勢でありながら快楽を得ようと腰をゆるやかに動かし、喘ぎ声を上げるリアを見なから、主人もまた自分自身も喘ぎ交じりに感心したような言葉を口にした。
 数年前、まだ思春期の盛りだった主人の下に連れてこられた時、リアはまだ性行為はおろか口づけの経験もない乙女だった。ただ主人への忠誠心と性に対する欲求だけを叩きこまれ、「調教する過程」を売りにした性奴隷、それが彼女だったからだ。
 だから性行為を始めた頃はまだ彼女も不慣れで、主人と二人でどうしていいものかとあたふたしたものだが、今ではもうご覧のとおり、貪欲に主人の雄を貪って、快楽を得るまでになっている。
「らって、きもひ、よくって! あ、んあ、あああッ!? ひ、ぃ、あああっ」
 主人の腰の動きはいまだにこねるような緩やかなものだ。激しい抽挿が与えられた訳でもないのに、それでもリアは勝手に盛り上がって絶頂をまた迎えた。五度目だ。キツキツに密着した二人の結合部からごぽりと音を立てるほどの勢いで白濁した本気汁があふれ出る。獣じみた匂いが急速に部屋の中を満たして、その狭い空間を淫界へと変えていく。
 主人の性器で徹底的に感じるよう、数年間、毎日調教された結果がこれだった。先代の専属性奴隷だった女性が閨の技の教育係としてあてがわれ、そこでいろいろ教え込まれたが、そこで使用された張り型は主人のものから型取りしたものだったという。
 だから、口で奉仕する技術も、膣の形も、肛門すらも、リアは主人の性器に特化して矯正されたものだ。何よりも主人のために。誰よりも主人を喜ばせるためだけに。心も身体も知識も技術も、ただそのためだけにリアはすべてを捧げてきた。初めてのキスの時の緊張も、処女を奪われた時の痛みも。その時々すべての感情も、表情すらも。
 だから――
「ふあッ!? や、まら、いって、いってるのに、や、あ! あ―――ッ!?」
 長引く絶頂感に身悶えしているリアに軽く口づけをし、そして主人は腰を振り始めた。
 これが最近の主人のお気に入りだった。
 焦らしに焦らし、たまらなくなって絶頂し、収縮を繰り返すその瞬間の膣の動きを抽挿しながら責め立て味わいつくす。絶頂して敏感になったリアの膣肉はさらなる刺激で快楽を押し上げられ、絶頂感の中で更に絶頂する。そうやって主人が満足するまでの間、延々と絶頂し続ける。
「やらあ、いく、あ、ああ―――ッ あああ―――――――ッ!!」
「いって、いいよ。どんどん可愛くなっていって」
 性交を始めてから僅かな時間でリアは既に正常な思考能力をなくし、身も世もなく叫ぶだけの媚肉と化している。
 そんなリアを、主人は腰の動きだけでなく甘い言葉で更に責め立てて、更に高い場所へと彼女の意識をおしやっていく。
 さらに熱く。
 さらに高く。
 さらに白く。
 ただ、気持ちいい、奈落の世界へ。
「いっ、あ、あ! まら、まら、らめ、あ、あああっ、
 ひぃ、んんんっ 、んんんん―――ッ!? んんんんん――ッ!!」
 ――結局。
 主人は彼女の中で三度射精するまで腰の動きを止めることはなかった。


 狂宴とも言えるような性行為が終わって。そして満足しきった主人はそのままリアに抱きつくような姿勢で眠りに落ちてしまった。
 見た目十代半ばの少女に二十過ぎの男が甘えているようなこの光景ははた目から見れば奇妙にも見えるかもしれないが、濃厚な情事のあとでリアもまた充実した倦怠感の中、ただ穏やかな心持ちで実年齢よりもあどけない寝顔を見せる主人の髪を撫でていた。
 常人の感覚なら、こんな表情を自分に見せてくれる主人の事を愛おしいと思うのだろうか。そんなことを、ふとリアは考える。
 しかし、今の彼女にあるのは、可愛がってもらったという嬉しさと充実感だけだ。そうして見るならやはり自分はどこまでも性奴隷なのだろう。そのことを今さら言っても詮無いことだし、他に生き方も考え方も知らないので、もうそれは本当にそれだけのことでしかないのだが。
 だが――それでも時々、ふと訳もなく不安になることもある。
 例えば、主人は既に思春期を過ぎ、結婚適齢期に入っている。縁談もいくつか持ち込まれていると聞いた。性奴隷を飼い、そしてそれにこんな扱いをするほどの余裕のある家である。遠くない未来、主人は家のために別の良家の娘と婚姻関係を結ぶことになるだろう。
 その時、自分はどうなるのだろうか。
 捨てられるのだろうか。それとも今までのように可愛がって頂けるのか。
 せっかく主人のためにと積み重ねてきたこの肉体を捨てられるのは寂しいし、今までどおり可愛がってくれたとしたら、それ自体は嬉しい事ではあるのだが、同時にこの家に跡継ぎが生まれないことを意味するわけで、今度は主人を不幸にしてしまう。
 どっちに転んでも辛い未来しか待っていないような気がして、酷くもどかしい感覚を覚えてしまう。
 彼女の教育係である性奴隷の「先輩」は、そう心配することはない、と言ってくれてはいるが、しかしそれでも先のことなど分かりはしない。
 いっそのこと、自分が主人の子供を産めればいいのに――そんな不遜な思いつきまで考えてしまう。既に生殖能力のない彼女にとってそれは全く意味のない夢想でしかないのだが。
(……そもそも、それ以前に無理なのよね……)
 出会った瞬間から主人とリアとの関係は確定してしまっていた。
 抱く側と、抱かれる側。
 数年間、ずっとそれだけの関係だった。勿論情事の合間や前後に言葉は交わすし、そこから彼の人となりも多少なりとも知ってはいるが――だがそれでもそれはやはり彼の一つの側面でしかない。
「……」
 すぐ傍にある筈の安らかな主人の寝顔が、ひどく遠い。
 リアを抱くときのあの優しくも残酷な笑顔とは違う、少年のような穏やかな表情。彼のこんな表情が見れるのは、情事のあと、こうして主人が寝てしまった時だけだ。
 この部屋の外側で、主人が何を行い、何を考え、どんな人生を生きているか、それをリアは知らない。ただ彼の性欲を満たすだけの距離感しか持たない性奴隷が、彼の子供を産むことも、彼の傍に立つことなど、許されるものではないように思える。
 そもそもそれ以前に、今、こうして主人を慕うこの気持ちですら、それは仕込まれた結果にすぎないのだ。主人の事を自分の意思で慕う権利を与えられた外の女性には、どうあっても自分は敵わない。
「……っは……」
 ――そこまで考えて。
 自分がひどく愚かなことを考えていることに気づいて、リアは苦笑を漏らした。
 一体いつからこんな事を考えるようになってしまったのだろう。
 主人がリアを優しく抱くのは、そうすれば「彼自身が気持ちいいから」であって、それ以上の意味はない。ついつい外面で勘違いしそうになるが、女を好きに扱っているという時点で、主人が彼女にやっていることは、噂に聞く限りの他の性奴隷が獣姦やら鞭打ちやらの仕打ちを受けているのと、本質は変わらないものなのだ。
 だって、そうではないか。もし主人がリアの事を性奴隷以上のものとして――一人の「人間」として扱う気が少しでもあるのならば、こうやって身体を重ねる時以外にも顔を出してもいい筈だ。そうやってとりとめのない話をしたり、一緒にどこかに出かけたり、そういうのが「男女」と言うものだということを、少なくても知識としてリアは知っている。
 そして自分は、主人にとって「雌」であっても「女性」ではありえない。
 肉体と、喘ぎ声と、快楽にとろけた表情と――彼がリアに求めるのはそれだけのものでしかない。
 性奴隷である彼女には、それ以外に彼に尽くせるものなど元からありはしない。
「……」
 ため息がふっと漏れた。
 多分、自分は要らない知恵をつけすぎたのだろう。
 良くない傾向だ。性奴隷はそうであってはならない。
 全てはご主人様のために。
 ご主人様の劣情を慰めるために。
 それに応えることこそが性奴隷の何よりの務めであり、主人を喜ばせること頃が何よりの喜びであり、それこそが彼女に与えられた唯一無二の存在価値。
 売りに出されるまでの間に魂の奥底にまで焼きつけられた筈のその大前提を、忘れてはならない。
 だから――
「ん……」
 ぴくりと、リアの腕の中で主人が動いた。
 そのまま気だるげにその瞳が開き、顔が上がる。
 髪を撫でていたので、もしかしたらそれで起こしてしまったのかもしれない。
「……あ、寝てしまっていたか」
「はい、可愛らしい寝顔でしたよ?」
 寝起きのぼんやりした主人の視線に、微笑を持ってリアは返した。そのまま自分から口を寄せ、口づけをする。主人もそれを咎めるでもなしに、口づけを返してきてくれた。何か、慰められたような気がして、リアはふっと心が安らかになった。
「続き……やりますか」
「……疲れてはいないの?」
「私、性奴隷ですよ」
 こちらを気遣うようなその言葉に苦笑して、また口づけ。
 三度の射精で満足したとは言っても、しかし未だリアの身体を見る主人の視線には卑猥な色が見て取れた。ならば彼女のなすべきことは一つしかない。
 未だ自分の中に入ったままの性器を膣の動きだけで刺激し、情欲を促す。リアの膣が主人の性器に合うように矯正されたということは、主人にとってもリアの膣は極上と言うことだ。彼の性器は何なく勃起して興奮を示してくれた。
 そうだ、それでいい。そうリアは思う。
 所詮自分は奴隷。性処理の道具。
 ならば、とことんそういうものとして扱ってもらうことにしよう。
 何も考えられなくなるくらい。快楽の事以外はどうでもよくなるように。
 そうやって自分の身体に満足してもらう――それこそがリアにとっても至上の喜びなのだから。
「いくらでも。どこまでも。貴方様が満足するまで。私を可愛がってくださいな」

 そういいながらリアは腰を動かして――そしてまた感極まって、甘い声を上げた。



 ―――それからさらに数年後。
 未だ根強く残る「性奴隷」の慣習を問題視した中央の意向で、監査員による地方有力者に対する立ち入り調査が行われた。
 この地域では一、二を争う規模の権力を持つ貴族であるアルデニ家もその対象には当然ながら入っており、調査の際、リアの存在が明らかになり彼女の処遇の是非が問題となった。
 当時のアルデニ家の当主は「彼女は私の友人である」として性奴隷であることを否定し、中央に対しても影響力のある当主の言葉をむげにする訳にも行かず、この件に関しては不問となったが――当主のその言葉を聞いたリアは、涙を流したという。

 その涙が悲嘆によるものだと気付いたものは、当主を含めてだれもいなかった。




*************************************

気分転換に落書きしたもの。
気分で突っ走って書いたのでいろいろ整合性とか展開とかあやしいです。すいません。

……んあー、やっぱりメインで書いてたものに引っ張られるなあ、気分が。浮気はよくないですね。うん。


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