~am.6:37~
暑気もこの時間帯ならまだ弱く、涼しげな風が吹いていた。
しかし靴を脱ぎ、ラナが編み籠を片手にそこを訪れると、途端に水気の籠もるむっとした熱気が昇った。
「おはようございます」
「あ、おはようラナちゃん。今日は一人?」
入り口近くにいた女性の声を皮切りに、次々と別の女性が笑顔で挨拶を投げかけてくる。
「おはよ~。早いね、いっつも夕方ぐらいなのに」
「彼氏さんが帰ってきてからそうだよねぇ……。それまではちょーっとおざなりだったけど」
「分かる分かる。やっぱり好きな人の前では綺麗でいたいよね!」
「そう言う自分は恋人作る気ゼロじゃない。知ってるわよ? 二日前だって……」
「あー! ちょっと、何で知ってるの!?」
賑やかだった。果てしなく。延々と続く姦しさに苦笑して、ラナは空いている棚に編み籠を置いた。
石造りの広い空間だから話し声が奇妙に反響する。くすくすと語られる美容の噂に、どの男が優良物件か秘密めいて囁き、もし別の街に行く機会があったらあんな服が欲しい、こんな物が食べたい、そういった女性だけの楽しげな話題の花が咲き誇っていた。
そこは男が入ること叶わぬ楽園。
風呂場の女湯だった。
形や深さ、広さ、台座のあるなしなど数種類作られた浴槽に、しどけなく肌をさらした女性たちが腰掛け、浸かっている。みんなラナより年上で、戦いの傷があったり火傷の跡が残っていたりするものの、まだまだ未発達なラナと比べれば豊かだった。
具体的には胸とかお尻とか。ファンのことを思い出して、ラナは顔を赤くする。
壁際の脱衣スペースでトンファーをベルトごと外し、前開きのスカートを落とした。
と、ラナの背後から影の如く密やかに魔手がにょきり。はっとなったラナが慌てて防御に転じようとするも、時既に遅く腋の下から蛇のように顎を開いた二本の腕が――
がっしと、ラナの胸を鷲掴みにした。
「っひゃぁああ!?」
「ぐふふふ……順調に育ってますなお姫様~? ファン君にこうやって毎日揉まれてるからだね?」
「や、やめてくだ……ぁう」
「か~わいっ♪ ねえねえラナちゃん、今夜はお姉さんと一緒にイケナイことでも……いやいっそ永続的に関係を!」
「はいそこまで」
がん、といい音がしてラナを陥落させるべく揉みしだいていた腕が外れた。ぐおお、と女性にあるまじき呻き声で魔手の主が蹲る。
その背後から肌にタオルを巻き、トンカチを肩に担ぐ女性が呆れ顔で現れた。
「マジ揉み厳禁。何回目だアンタ。……ラナちゃん、だいじょぶ?」
「は、はい。ありがとうございます…」
「まあもう恒例っちゃ恒例だけど、油断してるラナちゃんも悪いよ? やらしー事が大好きなお姉さんはそこら中にいるんだし。ラナちゃんはあれよ、羊の皮をかぶった狼の群れに迷い込んだ子ウサギ」
「……安全地帯はどこですか」
「凶暴なライオンのそば。喰われるけど」
食べられたらダメだと思う。
恒例という言葉の通り、ラナが今みたいに遊ばれるのは珍しいことではなかった。バルティゴで働く女性たちの中でほぼ一番年下なため、“鬼姫”のあだ名とは別にお姫様扱いで可愛がられるのだ。良くも悪くも。胸を揉まれるのも初めてじゃない。
ラナが若干乱れた服を整えている間に、復活した女性がふらつきつつ立ち上がった。
「痛つつ……い、いくら何でもハンマー有り得なくない!? てか何で持ってんの?」
「整備部だし。常習犯には相応しい仕打ちだと思うけど」
「よーし上等。貸してみなさいおんなじこぶ作ってあげるから!」
「性犯罪者に貸す工具はないよ」
火花が散り始め、ラナはこっそり編み籠を取り出し別の場所に移動した。というか逃げた。あの二人が喧嘩を通り越し乱闘に至るのはいつものことなので、周りはむしろ観戦ムードだ。
「……足、滑らせないといいけど」
脱衣スペースは敷き板だが、他はタイル床。
案の定、心配した矢先にもみ合いになった二人がまとめてすっ転び、互いの頭に額をぶつけていた。
タオルが解け、凄絶なダブルノックダウンに弾ける笑い声。ラナも小さく笑いながらズボンを脱ぎ、ブラウスのボタンを上から外す。
「――お、おい。どこに連れて行く気だ!?」
一番下まで外したところで覚えのある声が聞こえた。
え、とラナは入り口を振り返る。曇りガラスの向こうに赤い影が映る。それがとある少年の真っ赤な上着であることに思い至るまで一秒。その一秒で少年を止めるための時間は使い果たされた。
ガラッ、と、何の躊躇もなく扉が開け放たれた。
「…………」
沈黙、静寂。余りにも平然と踏み込んで来た少年に悲鳴一つ上がらない。……いや、革命軍に所属するだけあってたくましく、悲鳴を上げるほど純情な女性がいなかっただけかもしれないがともかく。
「ファン――っ? な、な、何してるの! ここ女湯だよ!?」
「…………ラナ」
赤紫の瞳が丁度いい、とばかりに瞬いた。そのまま何か、抵抗しようとしてるらしい相手の腕を引っ張り、ずるずると脱衣スペースに歩いてくる。その連れてこられている相手に、ラナは目を丸くした。
「……エル?」
大きな鳶色の翼を縮こまらせ、不遜な態度はどこへやら、なぜか怯えた顔の少女がファンの腕を振りほどくこともできず連行され、ラナの前に押し出される。
ファンの腕が離れた直後、エルは人見知りをした子供みたいに慌ててラナの背中に隠れた。ブラウスを引っ張られてつんのめりかけるが、どうにかこらえて困惑の目でファンに説明を求める。
「エル、何があったの?」
「…………荒療治」
「……はい?」
「後は…………よろしく」
言うだけ言って、ゆらりと踵を返すファン。全く説明になっていない。
いつものことだけど。
「――ちょ、ちょっと待てーっ!」
そこでようやくフリーズから立ち直った女性――トンカチで殴られ額をぶつけ合って悶絶していた人が、タオルで前を隠しつつファンを呼び止めた。
「…………なに」
「なにじゃないっ! こう、何か感想は!? 乙女の楽園を目の当たりにして燃え上がる煩悩はっ!?」
気炎を上げる女性にラナは思い出す。そう言えばあの人、以前ファンに着替えを覗かれ素通りされて怒ってた人だ。
ファンは一つ二つ瞬きし、ゆっくり視線を巡らせる。事情を分かっていなくとも、十三歳の少年に向かってからかい混じりにしなを作り、あるいはウインクしたり胸の谷間を見せつけたりする女性が多発する中、ファンは眠たげな無表情を欠片も崩さず言い放つ。
「…………男風呂より、設備が充実」
空気が凍りついた。お風呂場なのに吹雪が吹き荒れた。
ああ、ファンが女湯覗いて注目するのそこなんだ。ラナはがっくり項垂れる。思えば恋人の自分でさえボタンを全部外したブラウスに下着一枚のあられもない姿なのに、こうも無反応だと涙が出そうだ。……いや、反応されても困るのだが。
女としての見栄とか誇りとか尊厳とか軽く木っ端微塵にしてくれた少年は、ぱくぱくと感情が空回りして声になっていない女性から未練もなく目を放し、ゆらりと入口から出て行った。
後に残ったのは、居たたまれない空気とぶつけ所のない憤怒。
「っっっ……ラナちゃん! ファン君ちょっと本気で誘惑していいって言うか夜這いするからって言うかこれはもう寝取るしかっ!!」
「落ち着け」
がんっ、と二度目の快音が鳴り響く。
頭を押さえて蹲った相手を尻目に、整備部の女性はやれやれと。
「しっかし初めて近くで見たけど、凄いね、あれ。今のラナちゃん見ても平気の平左だし」
「すみません、悪気はないんです……多分。でも女湯まで入ってくるなんて」
「ああ、そっちは別に問題ないよ。一応ここ、子供はどっちの風呂に入ってもいいし。今更ガキに見られて恥じ入るピュアな奴なんていないし。……むしろ、見られて反応されないのが女としちゃきついよ」
やっぱりそっちの方がショックか。ラナは浴槽でずーんと暗雲背負って落ち込む十数名に申し訳ない視線を送る。自分の魅力に自信を持っていた人ほど落差が激しかった。
とんとん、と整備部の女性が金槌で肩を叩き、気を取り直すように言う。
「で、ラナちゃんの後ろに隠れてるあからさまに能力者な子は誰? 見たことないけど」
「あー……えっと、エル?」
自己紹介を促したのだが、何だかえらい勢いでぶんぶん首を振られて拒否反応。
お互い正しい意味で顔を合わせてまだ一日だったが、それでも初めて見る態度だった。
少し困った顔で、ラナはこの症状に当てはまる原因を考えてみる。
ラナがトゥム・ユエルテを知ったのが昨日のお昼。それからアゼリアの能力で記憶の夢に旅立ち、目が覚めてみれば夜明けだった。それはつまりファンとエルをまるまる一晩二人っきりにしてしまったわけで、ががーんと激しくショックを受けてしまったがそこは今関係ない。
周りに聞こえないよう首だけで振りかえり、背中のエルにラナは囁く。
「ファンと……したんだよね?」
「……」
かぁっと赤くなる耳。それが答えだった。
そっか、とラナは呟く。ほんの一瞬、胸の奥で嵐のような感情が渦巻いた。
だけど―――背に隠れ、自分のブラウスを必死で掴む手の震えが、生まれたての雛を思わせる頼りなさが、そっと染み入るように醜い心を和らげた。
でも、そうだ。昨日アゼリアさんに見せてもらった過去が真実なら。
「……エル」
呼びかけて、体温の高い子供みたいな手に触れて、やっと顔を上げた怯えた様子の瞳に、ラナは思い切って尋ねる。
「ひょっとして……ほんとのほんとに、人見知り?」
「……」
数秒、間があって。
「……ひ、人がたくさんいる場所は、まだ、その……慣れなくて」
なるほど。
何十年も人であることをやめて、人と関わらなくて―――だから人が、恋しくて怖い。
荒療治の意味が分かった。
沈黙した自分を恐る恐る見上げてくる鳶色の少女に、ラナは優しい笑顔を向ける。
「エル、ここの人たちは戦闘職の人もいるけど、純粋な力だったら多分エルが一番強いよ」
「そう……なのか?」
「うん。だからね、本気で腕とか足とか振り回したら、普通に怪我しちゃうの」
「……?」
何を言いたいのか分からない。そんな表情で見上げる精神年齢六歳の少女に、ラナは笑顔のまま言い放つ。
「だから―――皆さんもそこのところ、承知した上でお願いします」
「……え?」
エルが本気で首を傾げた、直後。
キュピーン! と妙な具合に目を光らせた女性が、一瞬でラナを盾にする少女の肩を掴んだ。
ひっ、とこれまた本気の怯え声を発するエルに、ぐふふふふ、と不気味な笑い声が木霊する。
「ううううううカワイイッ! ラナちゃん何この子! エルちゃんって言うのよね? なんで今まで教えてくれなかったの!?」
「なっ……や、ど、どこ触って!?」
「ああまだるっこしい全部脱がしちゃえ♪ ちょっとそこ暇そうな数名、見てないで手伝いなさい!」
「きゃぁあああああああ!?!?」
うわぁ、エルもきゃあって悲鳴上げるんだ。いや六歳の頃から一人きりで、いつもの大人びた口調が無理してる仮面だから、むしろこっちが精神年齢的に正常なのか。
そう納得するラナが見る前で、エルの着衣が宙を舞う。整備部の女性が一人冷静にそれを畳む間に、ファンとは比べ物にならない強度で連行され頭からお湯をかぶせられるエル。だが下手に突き飛ばしたりしたら相手が怪我をすると教えられたせいで、ろくに脱出を図ることすらできていない。
そのまま全身丸洗いコース、すなわち全身隅々までお触りコースに突入し、きゃあきゃあと間断のない悲鳴にラナはそっと目尻を拭った。
ごめんね、エル。でもこれがエルのためだから。……うん、私も通った道だからって、おんなじ目に遭わせようとか、そんな悪辣なことはこれっぽっちも考えてないから。ね?
~am.7:02~
「…………ひ、酷い目に、遭った」
散々洗われて、身体中触りまくられて玩具にされて。精根尽き果てた様子でエルがぶくぶくと口まで湯船に沈む。が、そのまま本気で沈みかけて慌ててざばんと立ち上がる。
「何してるの?」
「い、いや、一瞬水が危ないこと忘れてて……!」
「……海水だけじゃなくて、お湯もダメなんだ? 能力者って」
「知らん。が、少し力が抜けかけた」
結構危険らしい。でもそこでラナはまた一つ納得する。ファンが一人で入る時はいつも寮のシャワーな理由が初めて分かった。あそこは狭いし自分でお湯を炊かないといけないから、人気がないのだけど。
今度は浴槽の縁にしっかり掴まりながら、そぅっとエルが隣に浸かる。はぁ……と、身体の芯から温める湯温に頬を緩め、感動した声で言う。
「……お風呂だ」
「ど、どうしたの?」
「だって、もう二度と入れないと諦めてた……」
例の無人島で暮らしていた間はずっと砂浴びか、偶の雨で済ませていたらしい。
ふわぁぁ……と蕩けていく。そっと瞼を伏せて浴槽にもたれかかり、エルは文字通り羽を伸ばした。
整備部の人も、率先してエルを洗いまくった女性も、湯船に浸かってなぜか消えない翼に何の嫌悪感も示さず、それどころか興味深そうにしていた。やっぱり能力者に対する垣根は一般的な市民の方が高いんだなぁ、とラナは思う。
「……」
それまで騒がしかった分、静かな空気が漂った。他に入っていた女性たちもこれから仕事だからと、もうまばらだ。こういう人が集まる場所には、不思議と混み合う時間帯とそうでない時が生まれる。今は人の少ない時間だった。
のぼせそうで、ラナはお湯から上がる。タオルを前にかけ、足だけ湯に浸して浴槽に腰かけた。
「昨日の夜……どうだった?」
「……ファンとのことか?」
「それ以外に何があるの」
短く切り捨てるように言うと、エルが自分を見上げたのが分かった。だがラナは、お風呂場の天井に目を向けて、視線を合せなかった。
「どう、と言われても……どう答えればいいんだか」
「何でもいいの。素直に言ってくれたら」
「……言わなきゃダメか?」
「黙秘するんだったら、次のお風呂でみんなに遊ばれても助けてあげないよ?」
ちょっと意地悪に唇の端を曲げて囁くと、エルが弱々しく眦を下げた。
「そ、それは勘弁してもらえないか?」
「ダメ。恋敵だもん」
「う~……。……その、な? 何と言うか」
「うん」
「やっぱり私は、ファンが好きなんだって、よく分かった」
「……うん」
「一緒に寝て、あんなことされて……ぶっきらぼうに見えて、でも優しくて」
昨夜の行為を思い返しているのか、エルは赤くした頬を俯いて隠す。
「……優しかったの?」
「ああ。……何だ?」
「ううん、別に」
何でもない、と言いながら若干声が低くなったのが自分でも分かった。エルが微妙に距離を取る様子も目に入らない。
……そっか。
エルには優しかったんだ。…………ふーん。
「わ、私のことはもういいだろう? それより、こ、今後の私たちの関係だが」
なぜか焦ったようにエルが話題を変えた。ラナはそこはかとなく無自覚に漏れ出していた黒い空気を霧散させ、少し冷えた身体にお湯をかけながら頷く。
「そうだよね。……とりあえず、どっちが一番とか二番とかは決めない方向で」
「……ファンが決めることだな。決めるつもりがあるのか疑問だが」
それを言ったらおしまいな気がする。
「他には、えっと、寝る場所だけど」
「……それもファンが決定権握ってるんじゃないか?」
「だよね……。でも、だとしたら、私たちの間の決めごとって何があるのかな」
部屋はたぶん三人で使うことになる。男一人に女二人の環境。周りから何を言われるかという不安はあるが、どうせそう遠くない内に出て行くのだ。
ドラゴンとの約束は一年契約。もちろん更新可能だが、余り長く革命軍に関わり過ぎると後々困った事態に陥る可能性が高い。だから一年。故郷の島を参って、それから住むと決めた街に降ろしてもらう。そういった話をファンやドラゴン、アゼリアに時々イーゼルも交えて何度か行っていた。
幾つか候補は上がっている。能力者に寛容で、理解があり、比較的平和で、自衛能力を持ち、安定した暮らしができる。そんな贅沢な条件に当てはまる島など、そう多くはなかったが、それでも幾つか絞り込んだ。後は航海の途中に可能な場所だけ寄港してもらい、実際に目で見て決めるだけだ。
その期間を考えれば、バルティゴで生活する時間は残り少ない。
仲良くなった人たちの顔を思い浮かべ、ラナは小さな溜息を零す。
出発の日取りはできれば十日前には決めてほしい。そう言っていたドラゴンの顔を思い浮かべながら、バルティゴに滞在しているだろう残りの日数を指折り数え、ラナはふと動きを止める。
「……エル。決めごとじゃないけど、二人でできることあるよ」
「ふん? まあルールに関しては追々決めればいいが……何だ?」
そろそろ湯当たりしそうなエルに、折り曲げた七本の指を開いて見せる。
「あと一週間で、ファンの誕生日だよ」
~am.9:43~
立て札があった。眠たげにファンはそれを見上げる。
→ ラナ
← エル
矢印は逆の方向を示している。どちらかに会えばどちらかに会えない。そんな意味らしい。
しばらくじっとその文字を眺めていたファンは、やにわにナイフを閃かせた。すっぱり真横に断ち切られた板の上半分を拾い、立て札の残りと重ね合わせ釘代わりにナイフを突き刺す。
出来上がった作品に一度小さく首を捻ると、ファンはぐるりと立て札の向きを変えてしまった。そして無表情ながら満足げにこくこくと頷き、もと来た道から外れることなくまっすぐ進む。
↑ ラナ
↑ エル
ファンが残した看板は、今や裏も表も少年の歩む方向を指差していた。
「…………という、夢が……昨日」
「……それはまた素晴らしく少年らしい夢だと呆れ果ててみよう」
どこまで我が道を突き進めば気が済むのか。アゼリアはそんな思いも露わに首を振り、ぼーっと座る少年の前にグラスを出して茶の余りを注いでやる。ファンは一つ瞬きして、真鍮製のグラスを興味深げに持ち上げた。
アゼリアがにやりと唇を曲げる。
「金属製のグラスは珍しいか? 何だったら少年にあげよう」
「でも、これ、黄金」
「残念ながらそれは真鍮だ。重さが全く違うと指摘してみよう」
何だかショックを受けた様子でそろそろとファンがグラスを下ろした。赤紫の瞳がまだ半ば信じられないように見つめている。
「墓を埋める作業は不毛だが、無知を埋める作業は有益だ。……しかし、少年が私を訪ねるなど珍しい。夢人間だから夢の話をしたかったわけでもあるまい?」
「…………暇」
注意深く、再度両手で持ち上げたグラスにおっかなびっくり口を付け、スプーンともフォークとも違う口当たりに瞬きしながら、眠たげな無表情に戻るファン。薄い唇がぶつ切りの単語を音にする。
「ふむ。まあ少年に仕事を任せるのは私も司令官殿も気が引ける。その場限りのお手伝いならともかく、当番だの何だので集団行動に組み込むのはいささか怖い。否、いささかどころでなく怖いと改めてみよう」
「…………赤?」
「それもあるが、気まぐれに仕事を放り出されては他の者が迷惑する。ならば最初からいない方がいいとマイペースぶりをさりげなく非難してみよう」
「…………さりげなく、ない」
「かもしれなくもないかもしれない。しかしながら少年が暇で、不肖私がその相手を務めているにせよ―――」
アゼリアはぐるりとその場を見渡して、
「―――ここは少々、暇とは言い難い場所だな」
赤錆めいた匂いに消毒臭が混じる。悲鳴がファンの耳をつんざいた。
「痛ぇ! いてぇよ……っ」
「動くなアホウが! そこ、しっかり手足を押さえんか! 麻酔が打てん!」
「先生! こちらの重傷者、意識が途絶えました!!」
「殴ってでも引き戻せ、三途の川で泳ぐにはまだ寒いぞっ!」
「ガ、ガーゼ追加ですっ! 不足してる薬品などありませんか!?」
怒号が飛び交う。ほとんど悲鳴のような声で指示が出る。
撃たれた者、斬られた者、折られた者、殴られた者。全員を載せる台などなく、多くは布切れの上に転がされ、重傷者が優先的に外科治療を受ける。
救われるべき命を持ち去ろうとする、それは死神との戦いだった。ファンの知らない戦場だった。
「先ほど船が着いたんだが、近くで一戦やらかしたらしい。普段なら逃げるところをアジト近辺だったために殲滅戦となり、勝利したはいいが見ての有様だ。と、情けなくも慨嘆してみよう」
「…………手伝わない?」
「手伝った後だ。応急処置で済む連中はもう診終わっていると疲れてみよう。……さすがに重傷者にまで手は出せんし、私がここに詰めている理由はほかにある」
? と首を傾げるファンの前に、白衣を血で汚した看護師の一人が駆け寄ってくる。
「アゼリアさん、お願いできますか」
「……助からないか?」
「残念ですが……」
沈痛な面持ちで看護師が首を振る。一つ溜め息したアゼリアは、億劫そうに、ひどく気の進まない顔で看護師の後に続いた。話の流れが見えず、ファンもゆらゆらと二人を追いかける。
看護師が案内した先は床で横たわる怪我人の一人だ。――いや、半死人と言うべきか。
火薬が至近で爆発したのだろう。男の右半身は無惨に焼け爛れ、火ぶくれが皮膚に泡立っている。
これは死ぬ。ファンでさえそう察した。体表面の二割を失えば命が危なく、だがこの男は皮膚の五割以上が火傷に侵されていた。懸命に水で冷やした後が見られたが、それこそ焼け石に水の容態だ。
もはや死を待つばかりである男を眺める少年に気付き、看護師が慌てて下がらせようとした。子どもの見るものではないと。しかしアゼリアはそれを遮る。
「これの面倒は私が見る。それより他の患者を回れと促してみよう」
「は、はい」
「…………これ呼ばわり」
「恨めしそうな声だな少年。しかし今回は優先事項がある。無視させてもらおう」
声に真剣な響きを聞き、ファンは常のように口を閉ざした。片膝をついてしゃがみ込んだアゼリアが、未だ意識を保っていること自体奇跡のような男に囁きかける。
「私がここにいる意味は分かるな? お前は死ぬ」
それは、処刑台の台詞だった。ギロチンのような言葉だった。
淡く、男が左目を開ける。右目は、開かない。火ぶくれが酷く、溶け崩れて。
し、と掠れ切った喘鳴を聞く。死、と繰り返す男に、アゼリアは頷いた。
「そう、お前は死ぬ。だから私がいる」
男が口を開けた。だがもう、声にはならなかった。ひゅうひゅうと呼吸音だけが、男の意思を伝える。
アゼリアは優しげに目を細め、男の濡れた髪を撫でた。
「思い出せ。お前には子供がいた。妻がいた。母がいた。父がいた。……思い出せ。平和な日々、戦いのない暮らし。毎日が幸せで、輝いていたあの頃を」
アゼリアを見る男の瞳が、どこか遠く、遥か彼方を見つめた。ぽろりと一筋、涙が落ちていく。苦痛に喘いでいた呼吸が穏やかになり、静まっていく。緩やかに……小さく。
「さあ、おやすみの時間だ。……眠れ」
小さく、小さく。
そして溶け消えるように……呼吸が、止まる。
男はもう起きない。身じろぎすらしない。
逝った。
「…………」
茫、と。ファンは男を見下ろした。
恐怖を抱き、苦しみの果てに至るもの。それが死だとファンは思っていた。
だが今、目の前に見たこともない死がある。
男の顔に恐怖はなかった。苦痛の色もなかった。顔の半分を焼け爛れさせながら、その死相は、安らか。 穏やかに、ただ眠っているだけのような。
「…………、…………夢」
アゼリアの能力によって、男は幸せな過去を夢見たまま、眠るように死んだのだと悟った。
死者を前に語られる言葉はなく、立ち上がったアゼリアと並んで椅子に戻る。
今、一人の人間を看取り、見送った褐色の女性は、酷く疲れ切った様子で机に突っ伏した。
ファンはその背中をじっと見つめる。眠たげで、ぴくりともしない赤紫の無表情で、しかし確かな感情を窺わせて。
ゆらり、とファンは踵を返す。向かう先は、ファンの知らない戦場。
後から考えても、なぜあの時あんな真似をしたのか分からない。ただ、今この時だけ、気まぐれに、奇跡のように、看取ることしかできないアゼリアの代わりに、突き動かされたのだ。
ピンセットのような器具を片手に、簡易の寝台に乗せられた患者と向き合う医師がマスクに唾を飛ばす。血が止まらない。もっとガーゼを。血管はどこだ。内臓の傷が見えない。そんな単語を聞きかじるだけで、どんな状況か把握できる。
何の躊躇もなく、医師の向かいで補佐する人の間から手を伸ばす。ほとんどいきなり現れた腕に、ぎょっと医師が顔を上げた。何をするかっ、と怒鳴りかけた瞬間。
―――ず、
と、爪が、指が、手の平が―――患者の肉に沈み込んだ。
「「「っっ……?!」」」
台を囲む全員が理解不能な現象を前に絶句し、
出血が―――止まった。
「…………縫合、するなら……今」
眠たげに言うと、凝然と目の前の医師がファンを見た。
「……能力者、か? 何じゃ、これは」
「僕は、選んで、すり抜ける……。…………筋肉も、雑菌も、血管も、すり抜けて……でも」
「血液だけ……すり抜けずに堰き止めたと!?」
ファンが言い切るのも待てず医師が後を継ぐ。ファンはこくりと頷いた。
瞬間、医師の表情に怒涛となって押し寄せそうな激情を見た。なぜもっと早く申し出てくれなかった、なぜずっと座っていた、もし自分にそんな力があったなら――!
だが、全ての感情を押し流し、医師はカッとファンでさえ気圧されそうな光で眼を輝かせる。
「ガーゼ! 何しとるかっ、この坊やが止血しとる間に腹を閉じる! そこ、手の空いてる奴は患者をもう一度チェックしろ! 盲管銃創、矢じり、刃物、刺さったまま後回しにした連中を連れて来いっ! 今すぐじゃ!!」
騒然と止まっていた時が動き出す。ファンの暴挙から我に返り、慌てて再確認を行い負傷者を集め、素人のファンが――否、ファンでなければ手伝えないだろう患者を運んでくる。
直接血流を遮ったことで血の海に沈んでいた傷口が現われた。医師の手が躍るように翻る。ファンは小さく目を瞠った。魔法のように傷が縫われていく。機械のように正確なリズムで。
瞬く間に腹が閉じられ、次の患者は胸部、心臓の近くに弾を打ちこまれていた。だがファンの手は直接内部に潜り込み、心臓も重要な血管も傷つけてないことを数秒で調べ上げる。そのままあっさりと弾をすり抜いて、後は医師の弟子だという人物に一任する。
それからはファンは珍しく、自分でも記憶にないぐらい目まぐるしく働いた。誰にできない、この世でただ一人ファンにしかできない手段で、止血し、傷を探し、細かな破片を取り除き、医師を補佐し続けた。
「……驚いた」
絶句に等しい呟きで、アゼリアは命の戦場に立つ少年を見やる。
「……明日は雪か、雹か? 槍衾どころか星が降ってくるんじゃないかと邪推してみよう」
軽く言いながら立ち上がる。唇に、いつもの飄々とした笑みが蘇る。赤紫の少年のあんな姿を見せられて、座ってなどいられない。
沈みがちだった空気が活気立つ。戦況は好転する。死の軍勢は追いやられ、苦し紛れに数人の命を攫うのが精々だった。それでも数人、連れ去られた、と医に携わる者たちは悔恨を胸に秘める。
最後の患者が運ばれ、執刀の多くを担った医師が振り返り、ファンの手を取って助かったと、深く頭を下げた。
当初見物に徹していたファンを責めもせず、ただ心からの感謝を口にした。
「…………っ」
弾かれたようにファンがその腕を振り払い、後ずさった。
医師も看護師も、少年の奇異な反応にぽかんと呆気に取られる。直後身を翻した少年が逃げるように走り去り、何か機嫌を損ねただろうかと彼らは不思議そうに見送った。
晴れ晴れとした表情から一転、むぅ、とアゼリアが難しい顔で唸った。
~pm.1:57~
「……で、それからファンは?」
「アゼリアさまが言うには、気分が悪いとのことで部屋に」
やや遅い昼餉。
卓に並んだ料理から一旦手を休め、ドラゴンは渋く眉間にしわを寄せる。
「自分から医療行為を手伝っておいてそれか……。相変わらず理屈の通じん奴だ」
「ファン君の反応ですが、簡単に赤くできる状況で赤くせず、それどころか赤を消してしまったため頭の中で矛盾が生じ、混乱したのだろうとアゼリアさまが」
「……一応、理屈はあるのか」
相当狭い、恐らくファンの中にしか存在しない理屈だろうが、何にしても困った性格である。だがそれで助かった命もあるのだ。革命軍の司令官としては称賛し、褒美でもやるのが筋だろう。
菓子と金銭、どちらが喜ぶか。
「ファンには後で顔を見せる。それより、本題を聞こうか。――イナズマ」
ドラゴンがそう呼んだ人物は、テーブルの向こうで佇立していた。暖色と暗色、真ん中から極端に塗り分けられた奇抜な衣装をいつもの如く身に纏い、革命軍幹部にしてオカマ王の右腕はワイングラスを傾ける。かと思えばキラッとサングラスが光り、シュビッと妙なポーズを取った。
変人である。変人なのだが、むしろ変人にこそ有能な人間が多く、使わずにはいられないジレンマをどう処理すべきかが、目下ドラゴンの個人的な悩み事だった。
イナズマがポーズを崩さないまま報告する。
「イワ様が身を隠して以来、南の海での革命活動は下火を演じている最中。各々が火を抱き、人々の影に交じりて目眩まし。地下に潜り機が熟すのを待つ……のですが」
「問題が起きたか」
濃紫の液体が仄かに揺れる。
「現在幾つかの支部を急ぎ撤収させています。しかし、海軍に気になる動きが。私は今朝の船で戻ったのですが、それも襲撃された次第」
「この場所が露見したと?」
「いえ――恐らく他に軍船を動かしたため、監視範囲をカバーするべく定期の巡回航路を外れたのだと」
「だろうな、俺も同じ結論だ。ここが本当にバレたなら、ただの一隻で威力偵察などおこがましい」
バルティゴは革命軍の本部とも言うべき最重要拠点。防衛戦力も相応。しかしいくら防護策を取ったところでバルティゴを強襲されるほど事態が切迫しているなら、ここ一つ守り通したところで高が知れる。危難の際には防衛よりも如何に退避するかが要となるだろう。
だが今はバルティゴより南の海の動向だ、とドラゴンは思考を切り替える。
資金、資材、武器に食料。革命行動を成す上で、しかしいずれも必需品ではない。何よりも数を揃えなければならないのは、人である。人数さえ集まれば多少物資が不足したところで瑕疵はないのだ。無論限度はあるが、ドラゴンは軍としての武力よりも、人々が足並を揃えた時に胎動する巨大な“意思”を重く見ていた。
何万、何十万の人間が集い、ただ一つの目的に向かって走り出す。そのエネルギーは膨大だ。一旦傾けば留まることを知らず、雪崩のように国を呑みこむ。――だからこそ扱うにも細心の注意が必要で、意思を纏め上げられる人材は貴重だった。各支部の支部長などは、そういった人間に任せている。
海軍がどんな思惑で動いているにせよ、そんな彼らを見捨てるわけにはいかなかった。ドラゴン個人は元より、革命軍を束ねる司令官として。
「巡回に影響を来すほど船を動かしているなら、正規の作戦行動か。今回、CP9の連中は来ないだろう。暗殺任務でもない。……だとすれば、万全を期して本部の将官クラスが派遣されていると見るが、どうだ?」
「嫌な推測ほど当たるものです。こちらも最悪の展開を想定してしかるべきでしょう」
「最悪、か」
「ええ。――つまり今この瞬間、撤収も増援も終わらない内に敵の侵攻が始まる、など」
鉄面皮に等しいイナズマの表情から、内心を探るのは骨が折れる。それでもドラゴンは憂慮を読み取り、重い息を吐いた。
「……俺から見ればそれ以上の最悪があるぞ」
「?」
傾くサングラスに、そんな事態は御免こうむる顔で言った。
「ファンを、現地に“飛ばす”ことだ」
嫌な空気が部屋に満ちた。一度殺されかけたことを思い出したのか、イナズマの鉄面皮に汗が一筋。
くまは動けない。表立って革命軍に助力すれば七武海の地位を失う。それは革命軍にとって計り知れない損害だ。
しかし。
“暴君”の瞬間移動――実際は超高速移動に興味を示した少年が、“幽歩”を応用発展させた“あの技”を使ったなら。
“本物の瞬間移動”でファン・イルマフィという無敵に近い戦力を投下できる。
ある意味まるで夢のような話だった。覇気使いを除いてファンに対抗し得る力はほぼ存在せず、ドラゴンの良心を省みなければ容易に実現可能なのだから。
とは言え。
「……各方面の反対を押し切り本人の意思を尊重したとしても、まだ問題が残るようですが」
「ああ……そればかりは俺も頭が痛い」
ドラゴンはしわの寄った眉間を揉み込む。その単純明快な不安要素がある限り、赤紫の少年を投入するのはにっちもさっちも付かなくなった最後の手段になるだろう。
二人で考えを煮詰める作業は終わった。後は動ける船を急行させ、撤収作業を迅速に完了させて人員を回収。それでひとまずは解決する。イナズマがその指示を出すべく部屋の外へ足を向け、ドラゴンはもしもの場合必要となる戦力を勘案しつつ、中断していた昼食の続きとばかりに小魚のフライに箸を刺した。
二人とも、失念していた。
嫌な推測ほどよく当たる―――と、たった今話したばかりだというのに。
電伝虫が、鳴った。
「「…………」」
同時に、部屋の扉がノックされる。
司令官と幹部は顔を見合わせ、それぞれで対応した。
受話器の取られる音を背に聞きながら扉を開けたイナズマは、現れた訪問者のどことなく青ざめた表情に、サングラスの奥で目を瞬いた。
「あ、お久しぶりです、イナズマさん。あの……ドラゴンさんは、お仕事中ですか?」
ええ、ともああ、ともつかぬ曖昧な返答をしたイナズマが後ろを窺うと、苦み走ったドラゴンの表情が見え、電話の中身を否が応にも察してしまう。
最悪の最悪を考慮すべきかも知れなかった。
イナズマはだからこそ、頭の中で優先順位を変更し、恐らく事態の鍵となるだろう少女を見下ろした。
「先に一つ、伺います。用件はファン君についてですか?」
「あ…はい。そうです」
「では、急ぎここへ呼んでください。我々もファン君に、至急お願いしたいことがあります。同時に済ませましょう」
イナズマの申し出に硬い表情で、こくこくとラナは頷いた。
~pm.3:11~
バルティゴで一人の少年がベッドに突っ伏し自分の仕出かした所業に混乱しっ放しの所を呼び出され、激しく機嫌を損ねて一悶着起こし、二人の少女に必死で宥められながら革命軍司令官の元へ赴いた頃。
遥か遠い海域では、軍船が集っていた。大型のそれが五つ。南の海という偉大なる航路でさえない地域に、これだけの戦力が揃うのは異常だった。
「あぁ……どうなのよ? 支部一個潰すにしちゃ過剰戦力……あ? ドラゴン? こんな外れにいるわけないでしょうが」
男のぼやきが聞こえる。ただしそれは船の上からではない。
ちゃぷちゃぷと砕ける波間に、パキパキと何かが急速に凝固していく音が。
「あーあー、もういい分かった。あれだよもう、あれ……何だったか」
極めて投げやりかつ適当に、まぁいいかの一言で会話を片づけた男は受話器を置く。何やら喚く声が聞こえた気もしたが、大した問題でもない。多分。
枝のように長く細い手足を折り曲げ、気怠げな態度でハンドルに寄りかかる。ハァ、と億劫極まる吐息を漏らした途端、それを吹き飛ばすようにズン、と火薬の花が咲いた。
「あらら……犯罪者犯罪者言う口で、ご丁寧に開戦の合図か。律儀だねぇ」
チリリン、と手慰みにベルを鳴らし、アイマスクで光を遮る。視界が暗闇に包まれれば、自然と漏れ出る大きな欠伸。
ほどなく、ぐおーっと大きないびきをかき始めた男が、五隻の軍艦よりも異常だと誰が知ろう。
だが見れば分かる。――その居所を。
肌で分かる。――その寒気を。
―――パキパキと凍りつく海を足場に、自転車にまたがる男の姿が異常でなくて何と言う。
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と、言うわけで遅ればせながら更新。……オリジナルが全く進まず涙。
最近、皇帝陛下は十五歳!というそれはそれは素晴らしいネット小説を読み、若干いやかなりショックを受けていたうたかたです。エロなのにあのクオリティは凄い……。エロシーンを抜本的に見直す必要に駆られ――いやこれは前からなので取り敢えず放置。納得できたら改訂という方向で。
次話ですが。……一応一カ月を目処にしますが本気でいつになるか分かりません><; 何だか妙な感じで切ってるのにふざけるなと思われるかもですが平にご容赦を……TwT