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No.15558の一覧
[0] [エログロナンセンス!!!] 夢の国、地虫の話 [オリジナル][メメクラゲ](2010/07/20 11:41)
[1] 『地虫の話』 第一話[メメクラゲ](2010/03/12 19:57)
[2] 『地虫の話』 第ニ話[メメクラゲ](2010/03/12 19:57)
[3] 『地虫の話』 第三話[メメクラゲ](2010/03/12 19:58)
[4] 『地虫の話』 第四話[メメクラゲ](2010/03/12 19:58)
[5] 自治人の話 ①[メメクラゲ](2010/03/12 20:00)
[6] 『地虫の話』 第五話[メメクラゲ](2010/03/12 19:58)
[7] 『地虫の話』 第六話[メメクラゲ](2010/03/12 19:58)
[8] 自治人の話 ② 前編[メメクラゲ](2010/03/12 20:00)
[9] 自治人の話 ② 後編[メメクラゲ](2010/03/12 20:00)
[10] 『地虫の話』 第七話[メメクラゲ](2010/03/12 19:59)
[11] 『地虫の話』 第八話[メメクラゲ](2010/03/12 19:59)
[12] 挿話 普通人の話 前[メメクラゲ](2010/02/09 18:55)
[13] 挿話 普通人の話 中[メメクラゲ](2010/02/09 18:55)
[14] 挿話 普通人の話 後 [メメクラゲ](2010/07/20 03:27)
[15] 『地虫の話』 第九話[メメクラゲ](2010/03/12 19:59)
[16] 『地虫の話』 第十話[メメクラゲ](2010/03/12 20:00)
[17] 『地虫の話』 第十一話[メメクラゲ](2010/03/12 20:00)
[18] 自治人の話 ③ 上[メメクラゲ](2010/03/12 20:01)
[19] 自治人の話 ③ 中 [メメクラゲ](2010/03/12 20:01)
[20] 自治人の話 ③ 下 [メメクラゲ](2010/03/12 20:01)
[21] ※※※ 設定、用語集など 未完成 ※※※[メメクラゲ](2010/02/13 18:11)
[22] 『地虫の話』 第十二話[メメクラゲ](2010/03/12 20:01)
[23] 自治人の話 ④[メメクラゲ](2010/03/12 20:01)
[24] 『地虫の話』 第十三話 [メメクラゲ](2010/03/12 20:02)
[25] カッコウの話[メメクラゲ](2010/03/12 20:02)
[26] 自治人の話 ⑤[メメクラゲ](2010/03/12 20:02)
[27] 挿話 元普通人の話 前編[メメクラゲ](2010/03/14 05:04)
[28] 挿話 元普通人の話 後編[メメクラゲ](2010/03/19 02:14)
[29] 終章 『それでも貴方とわたくしは』 1/16[メメクラゲ](2010/07/20 03:33)
[30] 終章 『それでも貴方とわたくしは』 2/16[メメクラゲ](2010/07/20 03:33)
[31] 終章 『それでも貴方とわたくしは』 3/16[メメクラゲ](2010/08/04 04:39)
[32] 終章 『それでも貴方とわたくしは』 4/16[メメクラゲ](2012/05/20 18:27)
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[15558] 『地虫の話』 第十三話 
Name: メメクラゲ◆94ad61bb ID:9a343a1e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/12 20:02
  『夢の国、地虫の話』 第十三話



「こっ、この気配ッ!! 瞬間移動……? ううん、違うっ、自己の遠距離再構成ッ!! こんな馬鹿馬鹿しいほどの白夢……。もう何代目? 相変わらず、殺したいほどイヤな感じ」

 豪華な車内。俺の隣に座る紫色をした髪の少女が、そう憎憎しげに呟く。
気にせずに、必死に車体の夢構成を『ヨミ』しようと焦る俺。目をつぶり、己に深く埋没しようとする。
 だが、隣の少女の気配。ソレが見る見るうちに膨れ上がっていく。その恐ろしいほどの殺気……。
廃校舎で出会った時のような圧倒されるほどの気配に、俺の集中が途切れてしまう。恐怖。隣に座る少女の圧力が、俺の背筋を凍らせる。

「ユキっ、お兄ちゃんをこのまま瑠璃のお家まで連れて行って。解った? そしたらあの椅子に座らせておくんだよ、いい?」

 前方の座席に向かい話しかける夢人の少女。その響き……、あどけない声なのに、絶対に逆らえない雰囲気を漂わせている。

「は、ハイッ!! かしこまりました瑠璃様っ! それで、瑠璃様は……、まさかっ!!」

 前方座席から首だけを振り返り、少女に返答する獣娘。頭頂部の耳が、ピクピクと緊張しているように動いている。

「当然駅に行くわ。あの女に挨拶しないワケいかないもの。それに、ここは瑠璃のエリアよ。全てが瑠璃のモノなの。大切な駅を壊されて許せるワケないでしょ」

 紫の髪をかき上げながら、小さな唇を歪めて笑う少女。その名の通り、瑠璃色の瞳が車外の光に照らされて輝く。

「ごめんね、お兄ちゃん。用事を終わらせたらすぐに会えるから。大人しく待ってるんだよっ! あ、そうだっ。左手重いよね? ちょっと待ってね」

 小さな体を動かし、隣に座る俺へと向き直る少女。その言葉が終わらぬうちに、俺の左手に巻き付いていた鎖が変化を始める。
重く何重にも巻きついた銀色の鎖。ソレがズルズルと巨大なムカデのように動き出す。みるみるうちに、細く小さく変化。
そして左腕全体に巻かれていた鎖が、俺の左手、薬指の根元へと巻かれていく。まるで、ノーマルが着けている指輪のように……。

「こ、こいつはっ!! ぐ、がぁあああああああっ!!!」

 激痛。その指輪のように小さくなった鎖。まるでソコから小さな針が生え、手の内側に向かい伸びていくような痛み。
ゾリゾリと神経を犯しながら、その細い針が手の中を通り、手首まで届く。口から漏れる苦痛の叫びを抑え切れない。
まるで、左手が燃えるように熱く、痛い。これは……、ナンだ……。

「うふふっ。お礼だよ。きっとお兄ちゃんなら、すぐに使い方が解ると思うよ。さて、じゃあ行くね。大人しく待っててね」

 激痛に悶える俺、驚いた表情をしている獣娘を残し、笑いながら瑠璃がドアから飛び出す。
そのまま視認しきれないほどの速度で駅の方へと駆けて行く。
 だが、そんな事よりも左手の痛みが堪らない。ギリギリと歯を喰いしばる。
痛い、痛い、痛い。コイツはナンだ。指輪の内側から生えた細い針のような刺激。それは既に手首を越え、肘の辺りまで侵食している。
ポタポタと額から汗が滴り落ちる。

「お、おいっ!! お前、大丈夫かよっ、すごい汗だ。お、おかしいよっ。普通ならもうとっくに接続が終わってるハズだよっ!! おい、しっかりしてよっ」

 悲鳴のような声を上げながら、前方座席から身を乗り出した獣娘が布で俺の顔を拭く。
だが痛みが引かない。既に肘を越え、左肩に届く勢いで針が伸びてくる。体内で蠢く細い針の傷みと感触。
 あまりの激痛に噛み締めた奥歯からギリギリと音が響く。

「お、おいっ!! 身を任せるんだよ。ソレは起動の為の夢を探してるんだ。夢を『ヌキ』された事があるだろ? お前の中の夢をその指輪に委ねるんだよっ!! う、うわっ。る、瑠璃様はもう行っちゃったし、アタシだけじゃどうすりゃいいかわかんないよっ」

 もはや、あまりの激痛に声さえ出せない。夢……、夢。俺は夢なんか、見れない。もうずっと、夢など見ていない。
失神しそうな痛みの中、獣娘の助言に従って、なんとか夢を搾り出そうと足掻く。夢、俺の夢…………。
 最後、最後に見た夢はナンだったか……。記憶が無い。脳がガリガリと削られるような痛み。
見た夢、夢……。確か、一人の赤子を。泣き叫んでいる一人の女性。その女性は生まれたばかりなのに、ぐったりした赤子を抱いて…………。
 俺はお気に入りの服に身を包み、紫の髪をした少女と遊んでいた。翡翠のようなその瞳……。
今日は彼女に妹が生まれる日。でも、聞こえてきたのは叫び声……。オソロしいほどのさけびごえ………………。



『貴様は対極。夢が夢として在る為の陰。永遠に夢に焦がれ、ソレを語る為の存在。ゆえに貴様は夢を見ず、その生涯を地虫の如く生きる。夢に焦がれつつ、決してソレを掴む事が出来ぬ虫けら。人々を姫と妖精が導き世界は満たされる。その神話を人足りえぬ地虫が永遠に語り継ぐ。人、姫、妖精、地虫。この四柱こそが根源』



「があああああああああああああああああアアアあああああああああああああああああっっっっっ!!!!」

 喉が張り裂けそうな叫び。頭の中にダレカの声が聞こえた。聞いた事が無いような、ずっと知っているような男の声……。
怒り。突然、何もかもを壊したくなるような怒りが俺を支配する。渇望。俺だけが、何も手に入れられない事に対する怒り。
 失い続ける。あの日、赤子を救ったあの日から、何もかもが俺の手から、水のように零れ落ちていく。
俺は何も得ることが出来ない。夢に焦がれ続けるだけ。地虫、地面をズルズルと這いずり回るダケの存在。
何も、何も得られない。親父は俺のジャンクの『トギ』で狂って死んだ。お袋を殺し、俺を殺そうとして。
12歳だった俺。ただ無我夢中で足掻き、気付いたら『黒い夢』が……。壊す。全てを壊したい。何も得られないなら、いっそ壊してしまいたい。



『それでも、貴方とわたくしは、きっとまた出会えるでしょう。ひと目でいい。ただ、一瞬、触れるだけでいい。貴方が生きていてくれるなら。わたくしが生きたと、貴方に知って貰えるなら』



 砂漠のテントの中。アイツと二人で背中合わせで座る。ギタールの音色に、アイツの声が絡まりあい、穏やかな気持ちになる。
柔らかな風に、銀色の髪が揺れ、甘い香りが周囲に漂う。ギタールを弾きながら、時折振り返ってアイツの瞳を見つめる。エメラルドの瞳が俺を真っ直ぐにみつめ、何故か恥ずかしさに襲われて目を逸らす。
 俺に体重を預ける柔らかなアイツのカラダ。温かな体温が背中から伝わり、ドクドクと脈打つ鼓動が響く。
互いに微笑む。その唇。やわらかなカーブを描いて微笑むアイツの唇。柔らかな唇の感触。それはまるで、鳥の羽のように。風に吹かれた花びらのように。

 スっと痛みが収まる。あまりにも唐突に。今までの痛みが幻覚だったと思えるほど、何の痛みも無い。
荒い息を吐きながら左手を見る。薬指。ソコに深い緑色をした小さな石が嵌った、銀色の指輪が輝いていた。

「おいっ!! だ、大丈夫かよっ? 収まった、みたいだね? ああああ、良かったっ!! もしあのままアンタが死んだら、アタシ、瑠璃様に殺されるトコだったよ。もうっ!! よし、さっさと行こうっ!!」

 心底安堵したような獣娘の声。俺は急激な感覚の変化に戸惑い、口を開く事さえ忘れ、ただ頷く。
一体、今のは何だったんだ? 思い出せないほど子供の頃の記憶が……。どこかの、大きな庭で……、そんな記憶なんて無いのに。
 いや、それよりあの声は……。自分の記憶が信じられない。訳が解らない恐怖に駆られる。
いかん、まず落ち着くべきだ。大きく深呼吸をしながら、窓の外を見るって、マズイっ!!

「うおっ!! てめえ動いているじゃねーか。ちょ、止めろこの腐れネコっ!!」

 今はのんびり考え事などしている余裕など無かった。止まった場所から、ゆっくりと自動車が動き始めている。
マズイ……。車のドア、その一部を『ヌキ』 車外へと転がり逃げる予定が……。動いている状態で無理矢理飛び出すか?
 大丈夫だろうか。さっきまで、かなりの速度が出ていたようだ。大怪我をしちまったら、そもそも逃げるどころの話では無くなっちまう。

「う、うるさいっ!! アタシは女豹だって言っただろッ!! お前、口が悪いぞ、まるで地虫、ってキャア!!」

 ガクンッ! と強い衝撃。そのありえない光景に唖然とする。
車前方にある透明な壁。そこへ、黒いマントを羽織った金髪の男が激突していた。
しかも、その姿……。顔の右半分は骸骨と肉が剥きだしになっており、右目は零れ落ちている。
 更には、全身が腐っているようにグズグズに溶け始めている。体の皮膚全体を真っ赤な湿疹が覆いつくし、そこ全てから、黄色い膿を噴出し続けている。

「うわあああああああ、グロいいいい!!! って、こいつ、転生者っ!!」

 叫び声を上げ、自動車を止めた獣娘。
チャンス。もう此処しかない。車体前方に死体のように転がっていく転生者とやら。その悪夢のようにグシャグシャな姿を見ながら、右手を上着の中、ディスクに触れる。指輪の嵌った左手をドアに貼り付ける。
 廃校舎で瑠璃が、車を『再現』する所を観察していて、本当に助かった。普通であれば、赤夢を『ヌキ』する事など絶対に不可能だ。
『再現』を間近で見た事と、内側から、つまり赤夢そのものに全身で触れているからこそいける。

 息を吸い、瞳を閉じる。獣娘がそんな俺の様子に気付かず、ドアを開け、転がっている転生者へと近寄っていく。
まさに千載一遇のチャンス。焦る気持ちを抑えながら、一気に『ヌキ』、ドアそのものを消滅させる。

 息を必死で整える。急げ、気付かれる前にっ!! まだ転生者を見ている獣娘。それを確認し、音を立てないように地面へと這うように降りる。
マンホールを探す。駅周辺には必ずあるハズだ。音を立てないように、それでも出来るだけ早く、ゴキブリのように這う。

「ああああっつっあああ!!!!!」

 突然、獣娘の絶叫が響き渡る。やばい、見つかった……。覚悟を決めて立ち上がり、一気に走り出す。
確か、アッチにあったと思うが……。車内から見ていた景色を必死に思い出しながら走る。
豹と人間の合成存在。その運動能力は普通の人間を遥かに凌駕する。まともに走れば一瞬で追いつかれる……。
 恐怖に怯えながら、夢中で足を進める。ようやくマンホールが見えた。汚臭と蟲の巣である下水。
そこが今、なにより愛しく思える。

「やめてやめてやめてっ!! 食べないで、アタシを、食べないでッッッ!!!」

 悲鳴。何事か解らず、思わず振り返る。獣娘……、ソイツが一人で頭を抱え、地面の上で転がり絶叫している。
そこから少し離れた場所に、転生者の死体。グズグズに腐ったように溶けている。
 一体、何が? 全く理解できない。だが、これは助かった。

 余裕をもちながらマンホールの蓋を開ける。途端にあふれ出す悪臭……。
住宅街に近い事もあり、吐き気を催すほどの腐臭がする。ヌルヌルしたコケやヘドロが壁面にこびり付いており、小さな虫が沢山固まっていた。

「やったぜ……」

 なんとか切り抜けた。相変わらず悲鳴を上げている獣娘。
俺はそれを見ながら、ゆっくりと下水道の中へと入っていった。
 


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