クラスメイトを毒牙にかけた忠夫を皆でぼこり、ピクピクとしか動かなくなった所を見計らい、リカバーする前に荒縄でグルグル巻きにしてやった。 ああ、本当に、もう、この人は…… 『向こう』に帰ったら、愛子姉さんたちになんて言い訳するつもりなんだろう? そんなちょっとアレな誕生日を、それでも幸せいっぱいに過ごし……そして、夜になった。 エッチ禁止令。それを出した彼女は、彼の部屋を占拠して眠りについたまま、覚める様子はない。 それもそのはず。眠った頃合い見て彼が成した悪行。『眠』の文字の入った文珠をその部屋に放り投げ…… もう、彼女は今日の昼過ぎまで目覚めることはないだろう。 そうして、私は抱かれた。 明日は修学旅行だというのに、きっと私は朝まで愛する男の腕の中。 これでは京都までの移動の足、新幹線の中で、ただの一度も目を覚ますことなく眠呆けてしまいそう。 にしても、何度こうして彼に抱かれたんだろう。 抱かれる幸福を噛みしめる私の身体には、彼の知らない場所なんてまったくない。 子宮は彼の精液で何度もたぷたぷにされ、文珠の避妊がなければとっくの間に孕んでる。 まあ、それはそれで、構わない。 ……主にアッチの友人である誰かさんに負けたくない的な意味で。 けれど…… 「いやっ、ひっ、ひぁ……もう、もう、だめぇ、やだ……気持ちよすぎてっ、く、苦しいっ……んんんーっ」 まるで暴走するジェットコースターみたい。 あまりに酷く揺さぶられ、視点が定まらなくってブレてしか見えない。 ……思考も、うまく働かない。 それでも、私は一枚のカードから手を放さなかった。 私の絵姿が記載された、一枚のカード。 この日した、大切な絆の証、仮契約カード。 使徒である私の、主である彼へのもう一つの絆の証。 私こそが彼を守る第一の盾。 私こそが彼を救う第一の剣。 永劫を彷徨う旅人の彼を敵から守り、彼の敵を斬り伏せる盾であり剣。 その証である。 ……なんだろう? あんまり役に立ってないよ?って『高★なの★』と『クス★・★ズハ』辺りに言われた気がしたのは。 ……って誰? まあ、いいわ。 今はそれどころじゃないし。 「そろそろ本気でいくぞ?」 えっ? 本気じゃなかったの? と思いつつも、「う、うんっ」と素直に頷く私。 彼は私が頷くなり、全力で抽送をはじめた。 亀頭のエラで膣壁を掻きながら引き抜き、そして勢いに任せて子宮を突く。 ベッドがキシキシと乾いた音を立てる。 視界はチカチカと星が走り。髪は激しく振り乱れ。 激しく腰を振る彼と私の接合部は、ぐちゅぐちゅに泡立った。 汗が滲み、湿り気が増していく肌の感触。匂い立つ女の香。 肉と肉がぶつかって、パンパンと乾いた音が、セックスしているんだと周囲に知らせる。 そんな状況の中、 「アスナっ、アスナっ、アスナっ」 お腹の中を掻き回されながら、何度も名前を連呼される。 それだけで、私は身体だけじゃなく、心までも蕩けてしまう。 「あっ、あっ、あっ、あっ、あぁっ、あぁんっ!」 私は官能に支配されたみたいに声をいっそう荒げてしまった。 痺れるような激しい抽送に身ぶるいする。 背筋がゾクゾクして、腰の震えが止まらない。 イクのが、止まらない…… 「も、もうらめぇ……っ! らめなのぉっ!」 呼吸がうわずり、呂律が回らない。 私は、もうやめてと、これ以上されたら頭がおかしくなっちゃうと、なんども訴え。 でも、彼はやめない。やめてくれるはずもない。 抗議に胸をとんとん叩きながら、必死に彼を睨みつける。 さぞスケベな顔を晒しているのだろう。そう思いきや…… 彼は、淡く穏やかに微笑んでいた。 「アスナん中はあったかいな……やっぱ、お前が一番イイ……」 私の一番奥まで穿ち、優しく頬を撫でさすりながら、そう言う彼。 ……誰と比べたの? 昨日、ナンパした女の子たち? 柿崎さん? 釘宮さん? 椎名さん? 私と、ナンパで一夜を共にした程度の女達と比べないでよ! 私の心は怒り一色に……なるかと思いきや。 身体の奥からジワジワ感じてきて…… きっと、こうやってナンパして昼帰りを誤魔化すつもりだ。 つもりだって、分かっているのに、騙されてしまいそう…… 鼓動が早鐘みたいに高鳴ってしまう。身体が、熱い。 でも、この程度で許してあげるわけにはいかない。 「ふ、ふんっ、スケベ、変態、ダメ男っ」 でも、罵る言葉とは裏腹に、私の頬は紅潮し、瞳はきっと潤んでる。 そんな私の状態を分かっているのだろう。 ……いいや、どうすれば私が悦ぶのか、彼にとっては赤子の手を捻るようなもの。 だって、私の身体の全ては、彼が開発したんだもん。本当にずるい人よね? そうこうしている内に、私の中で、性欲旺盛な彼の律動が終わりにむかって本格的になった。 激しい律動に、たまらなく嬌声をこぼしながら、彼の成すがままに敏感になった身体を揺さぶられる。 力強く何度も貫かれ、先端が膣奥を叩くたびに、どうしようもなく子宮を震わせた。 ……震えは絶頂の証。彼の子種を子宮に注いで欲しいのだという、私の欲望の発露。 「くっ、ん、んんっ……んあっ……! ひっ、い、いく……ぅ……また、いっちゃ、うぅんっ!」 逞しい、愛する人の肉棒の出し入れが、甘美な刺激となって、私の心を支配する。 もっと……もっと……乱暴にして欲しい。何度も何度も頭を真っ白にして欲しい。 そんな想いが無意識に行動に出たのか、腰をいやらしくくねらせてしまう。 「ん? なんだ? おねだりか?」 「ちっ、ちがっ!? ちがうってばぁーっ!」 激しくされればされるほど、私は身体の奥から大量の淫液を溢れださせ、どれだけ感じてしまっているのか一目瞭然。 それに何より、私にも嫉妬や対抗心みたいなものがあるのだ。 昨日ナンパされて彼に抱かれた椎名さんたちなんかよりも、私のほうがずっといいもん! 醜くも、そう思った瞬間、私の中で彼の肉棒が爆発した。 びゅくびゅく、びゅくびゅく、びゅくびゅくと、長い、長い、精の放出。 「いやぁっ! またイクっ、イッちゃうのぉぉおおお!!」 激しく脈動しながら精液を放出し続ける彼の肉棒。 その大量に吐き出される精液が、私の子宮を満たす感触に、身体が大きく反り返る。 意識が、遠のく…… だけど、彼は私を許してはくれない。 反った身体を戻す様に、彼に力強く抱かれ…… 「アスナ、愛してる……俺だけの、アスナ……」 耳元で、愛を囁かれた。 瞬間、心の奥から歓喜が溢れ出る。 強い恍惚感に、全身がまるで性感帯のように敏感になった。 私を抱きすくめる力強い腕。 私の身体を押し潰す、細身の、だけども、その実、とても鍛え抜かれた彼の身体。 首筋にかかる、彼の荒い呼気。 私の身体の中を抽送する、脈打つ熱い彼の肉棒。 勢いよく子宮にかけられる、彼の精液。 その全てが、私のオーガニズムを、今までにない領域まで高めていく。 「あぁああっ、熱いっ、熱いのが、いっぱい! なかにぃっ、あ、あぁ、あぁああぁあああああ!」 びゅくびゅく、びゅくびゅく…… とまらない、とまらない。 膣内に放出される射精が、私がイクのが。 ああ、もうダメ。何も考えられない。 身体が、心が、気持ち良すぎてバカになっちゃう。 女が疼く。私の中の、醜い女の部分が。 どうしようもなく彼が欲しくて。 私の中に、いっぱい彼を感じたくって。 「もっと……もっと、だしてぇ……」 私のおまんこ、忠夫の精子でいっぱいにして。 ならばと、彼は私の禁断の領域に、肉棒の先端を押しこみ始める。 子宮口に彼のモノが、グリグリ、グリグリ……本来ならば、入る筈のないその場所の奥を目指して。 「ひっ!? ぎぃぃいいいぃいいいいいいっ」 痛みに目がチカチカした。 でも、それ以上の女の悦び。 彼の形にぽっこり膨らんだお腹が、彼の膨大な量の精子によって、更に大きく膨らんでいく。 はひゅーっ、はひゅーっ、と少しおかしい呼吸がでる。 異質の感覚に、恐怖で顔が歪んだ……違う。あまりの快感に顔が歪んだのだ。 「あーあ、こんなアへ顔しちゃってからに……」 そう言って私の顔を優しく包む彼の手は、いつも以上に優しく暖かく。 何より、とても官能的に淫らに思えた。腰が、跳ねる。膣から精子混じりの蜜が噴き出した。 そう、私はそれだけで、もう一度、イってしまったのだ。 「まったく、どうしてこんなエロい子になっちゃったんだか……」 「わ、わらひのせいじゃないもん。忠夫がわたしをこうしたんだもんっ」 涙ながらそう言えば、イイ子イイ子と頭を撫でる。 すると私は、くぅんっと啼いて、身体を大きく痙攣させる。 ああ、またイッちゃった…… そう思っていると、全て出し終わったのかズルリと引き抜かれる彼の肉棒。 私の中から彼がいなくなってしまった。寒い、そして寂しい。 ゴポッ、ゴポッと膣から噴き出す彼の精液に、更にその感情は大きくなった。 止めたいのに、止まらない。 彼の形に大きく開いたままの私のおまんこが、それを止めてはくれないのだ。 どうしよう? と思っていると、彼の肉棒が頬を突く。 きっと、キレイにしろと言っているのだ。 私は戸惑いなく彼の肉棒を口にすると、頬肉と舌でキレイに磨き上げていく。 そして、ちゅぅっとまだ出しきれていなかった精子を強烈な勢いで吸った。 コクンコクンと、嬉しそうに残滓を飲んでいると、もういい、と彼は私の口の中から出ていった。 寂しい。再びそう思う。 唾液にヌラリと光る彼の肉棒は、私の乳房によってキレイに拭われ。 「ああ、なんかアスナのおっぱいでもう一回出したくなってきた……」 「なに遠慮してんのよっ。好きに、したらいいじゃない」 少しだけ理性が戻って来たのか、勝ち気にそう言い返したけど、ホントはして欲しいくせにと笑う彼に私は真っ赤。 見透かされたみたいで、恥ずかしいよりも、ちょっと悔しいと思う。 だから…… 少しだけ素直になってみてもいいかもしんない。 たまには、そうっ。 今日は、私の誕生日なんだから。 「……うん、欲しいよ。いっぱい、欲しい。今日は……今日ぐらいは、アスナだけのアナタでいて欲しいの……」 子供の頃のように……ううん、違う。 私は、こんな風に甘えたことなんてない。 だから、子供の頃には出来なかった、目一杯甘えた口調でそう言った。 すると、突然、彼の肉棒が膨張し、暴発した。 私の顔目掛けて降り注ぐ白濁液は、とどまるトコロを知らず。 あれ? もしかして、私の言葉だけでイッちゃった? 冗談半分にそう思いながら彼の顔を見てみれば、顔が真っ赤になっている。 そして、うおおおおおおおっ! 大声で叫んだと思いきや、私を四つん這いにする。 彼の目の前には、獲物となる私の穴が2つ。 忠夫は、私のおまんこに勢いよく肉棒を突き刺した。 そうして正確に10回、私の中を行き来すると、先の勢いのまま強引に引き抜き、今度はアナルへと挿入する。 いきなり割り開かれた肛門は、まるで彼の肉棒を受け入れるのが当たり前のようにズブズブ飲み込んでいく。 だから、苦しそうにうめく私に配慮なんてしない。 いや、その必要は最初からなかったのだ。 だって、すぐに私の苦悶の声は、悦びに満ちた嬌声になった。 そうして再び、正確に10回。私の中を行き来し、また、強引に引き抜き、また前へ。 これを何度も何度も繰り返し、私のおまんことアナルに行ったり来たり。 その間、忠夫は声を発さない。 獣のような呻き声を上げるだけで、なんにも……なぁんにも…… もしかして、さっきみたいな風に言われるの、慣れてないのかな? だったら、これから二人っきりのエッチの時は、必ずこう言って甘えよう。 私は女の悦びに打ち震えつつ、そう誓った。 そうすれば、彼はきっと今まで以上に私を可愛がってくれるだろう。 それにしても、凄い。凄すぎる。何が何だか分からなくなる程の快感の嵐。 今まで凄いと思っていたのが、単なるそよ風にすぎないって思うくらいだ。 今の私が耐えられる快感を大幅に超えている。 これに耐えられるのは、タマモ姉さんくらいでしょうに。 「アスナ……お前、いつの間にこんなに女になったんだ……」 呻く様な忠夫の声は、私の耳には届かない。 だって、私はそれどころじゃなかったんだもん。 じゅぷじゅぷエッチな音を立てる私の局部。 彼のおちんちんが、激しく私のエッチな穴に出入りする。 時折、思い出したように何度も塞がれる私の唇。 喉を通る彼の唾液。 手にある仮契約カード。 でも最後に見たのは、文珠。 ころころ落ちる、文珠。 いっぱい、いっぱい、いっぱいの、文珠を見ながら私は───────── 許容量を超えた快感に、気絶した。 ─────────意識を失ったアスナを、それでも攻めるのをやめないのは、なんてことはない。 今まで感じたことがない程、身体が昂ぶっているからだ。 射精するたび、アスナの膣内や腸内がキュンキュン締まるんだから、仕方ないっちゃあ、仕方ない。 しかもだ、気絶してるアスナを抱くのは、まるでレイプしてるみたいで、やたらと興奮する。 そんな俺の感情に反応しているのだろうか? 文珠が次から次へと、ころころころころ…… 「は……はは、は…………」 笑いが止まらんのは、文珠が大量に出来ちまうほど煩悩が爆発してるからじゃない。 アスナへの、愛おしさが止まらないからだ。 さっきのアスナのセリフ……似た様なセリフは、今まで他の女達から何度も言われている。 そうだ、言われ慣れているはずなのだ。 なのに、止まらない。 俺の劣情が、情欲が、愛情が……アスナへの想いが止まらない。 パンパンパンパンパンパンパンパンパン……ッ!! ヂュプヂュプヂュプヂュプヂュヂュププ……ッ!! 激しく腰をアスナに叩きつけ、乾いた音と、粘る水音を同時に出し続ける。 意識のないアスナの身体は、俺の勢いに押されて右往左往と身体を跳ねさせる。 そんな彼女の身体を、俺はしっかりと抑えつけながら、止めようもない劣情を、ただひたすらにぶつけ続けた。 「なあ、アスナ……」 気絶してるアスナに届く筈はない言葉。 「なあアスナ……」 でも、だからこそ、口にする。 「お前が、3人目なんか?」 腰を振りながら、アスナの胸のぼっちに舌をツンと伸ばす。 屹立した乳首は、まるで俺の想いに応えるように、プルンとしていた。 そして、乳房を舐め、鎖骨に舌を這わし、首筋の味を堪能し、顎に伝っていたアスナの唾液を舐めとり、頬に流れた涙を味わう。 唇を丹念に舐めまわし、そうして最後にアスナの口の中に舌を侵入させた。 すると、気絶してるはずのアスナの身体が痙攣し始めた。 こんな状態でもイクんだな。 それとも、そんなに俺にキスされるんが好きなんか? と頬を緩ませ、グイッとアスナの一番奥まで突き入れる。 精液と愛液でぐちゃぐちゃのアスナの胎内は、驚くほど狭く、でも気絶してるおかげで少し緩んでた。 そんな中を、いつもより大きくなった肉杭で、今までよりも、奥へ、奥へ…… デコボコで、吸いついて来る膣壁の誘惑を乗り越え、射精を我慢し、ついにアスナの子宮に、さっきよりも更に亀頭がずっぽり入り込んだ。 気絶して、弛緩してるからこそできた行為。 夕映と違って成長著しいはずの肢体が、俺のちんぽの形に、ぽっこりお腹が膨らんだ。 そして、ドビュルルルルルルルルルルゥゥゥゥゥッ!!! アスナの身体が跳ねる。 ビクンビクンっと、釣ったばかりの魚のように。 だけど、嬌声はあがらない。 気絶してるから? いいや、そうじゃない。 これだけイケば、例え気絶してようともくぐもった声は出る。 でも、俺が出させない。 そのために、唇を塞いだのだ。 アスナの吐息を感じる。 声を出せない苦悶の表情。 でも、出させない。 すべてを俺の物にしたい。そんな欲望。 ああ、なんて……なんて、甘美…… 『愛』する女の身体は、どうしてこんなに心地が好いのだろう? 気づけば、赤玉が出るぐらい射精していた俺は、疲れた身体をアスナの横に投げだした。 心地好い疲れの中。まだ細かく痙攣しているアスナを抱きしめ…… どんな夢、見てんだか……と小さく笑う。 だってよ、エッチな夢以外、見られるはずはないじゃないか。 そう、笑った。 だけども、アスナの見ていた夢は、決してエッチな物ではなかったのだ。 横島のオーバーフローした霊力を大量に注ぎ込まれたアスナ。 セックス……言わば交合という神事にも似た状況。 かつて持ってた『姫《巫女》』の称号。 その3つが合わさったおかげなのだろう。 優秀な霊能者の証、危険を知らせる、そんな、ちょっと変わった夢を見た。 ─────────アスナSPイベント② end 親代わりとも言えた大切な人の命の色で、大地が赤く染まった。 腹に大きな穴が開いている。息も苦しそうに吐くだけだ。 「あ、あああ、あ……」 目を、大きく見開いた。 感情を失わせ、自らを何もないと言わしめた、その顔が。 きっとこの時のワタシは、悲しみとやるせなさに苦しんでいたのだろう。 「幸せになりな嬢ちゃん。あんたには、その権利がある」 「やだ……ダメ、ガトーさん! いなくなっちゃやだ……!!」 喉が張り裂けんばかりに叫んだあの日、確かに『ワタシ』は『わたし』になった。 人形だったワタシは苦しみの生を吹き込まれ、きっと人としての産声をあげたのだ。 大切だった人達との別れ。 大切だった人との死別。 辛い…… 苦しい…… そして、悲しい…… ワタシをわたしに変えたのは、愛情なんて暖かいモノじゃけしてなかった。 それでも、今の私があるのは、確かに愛情っていってもいいもので。 「なあアスナ。忘れちまえば楽になれる。でもな、忘れちまえば、その忘れた相手を、本当の意味で殺しちまうんだ」 殺したくない。 ワタシを守り、わたしを産んでくれたあの人を、忘れはしない。 「そっか。じゃ、いいよな、タカミチ?」 「……アナタがそういうなら、師匠も文句はいいませんよ、絶対に」 暖かい手に抱き上げられる。視線が、同じ高さになった。 優しく目が細められ、きっと、わたしを愛してくれる目なんだ。 わたしを、幸せにしてくれる目なんだと、わたしは思った。 「俺は、元の世界に帰るつもりだ。アスナちゃんも一緒に来るか?」 「ん。行くよ。タダオが行くなら、ワタシも行く」 この世界に、わたしはイラナイ。 ナギもガトーさんもいないこの世界。わたしは、タダオとタカミチ以外には、誰もイラナイ。 そのタダオが遠くに行くというのなら、わたしはついていかないと。 ガトーさんの残滓を追い駆けるタカミチの傍では、きっとわたしは邪魔にしかならないから。 「タダオ、ワタシね、幸せになりたい……」 「おう! 絶対に、幸せにしてやるさっ」 「姫さまを頼みますよ、忠夫さん」 「俺に任せとけって! わっはっはっはっはーっ」 あの人が死んでからは、色がなくなったように感じた世界。 なのに、色を取り戻した気がするのはなんでかな? そんなことを考えながら、わたしたちは彼の故郷への道が通じやすいというマホラを目指す。 でも、わたしは咎人…… たくさんの憎悪に塗れし者…… 黄昏の姫巫女 アスナ・ウェスペリーナ・エンテオフュシア 「ば~か。アスナちゃんは使われただけだ。悪いのは、周囲の大人達だぞ? ナギも、ガトウも、タカミチも、もちろん俺も。誰もアスナちゃんを責めてないだろ?」 優しい声で、優しい口調。 「ほら、ア~ンしてみ」 言われた通りに大きく口を開けると、一文字、何かの字が刻まれた透明の珠を、口に入れられた。 アメかと思ってなめてみたけど、全然甘くないしおいしくない。 訝しげに、首をコテンと横に倒す。 「なめるんじゃなくて、飲むんだ」 言われてわたしは、コクンと飲んだ。 つるんと喉を通ってく感触のあと、なんだろう? 身体が妙な感じがした。わけが分からない。 「これで、しばらくはアスナちゃんを『隠』せる。その間に……」 「分かってます。麻帆良の代表には、もう話を通してます」 「じゃ、急ぐか」 「はい」 風に、なった。 物凄い勢いで景色が流れ。 走る、走る、走る、走る。 タダオが、私を抱きかかえたまま、走る。 わたしは、彼の胸に顔を隠し、そっと呟く。 ───サヨウナラ ダレにむけられた言葉か…… ナニにむけられた言葉か…… ワタシはガトーさんと一緒に死んで、わたしになった。 そしてわたしは世界を捨てて、私になるのだろう。 ───でも 私になっても、ワタシも、わたしも…… 決して、消えはしないのだと、私は知ることになる。 忘れようとした……忘れていた。忘れたかった、この世界での私の業。 星の数ほど人を不幸にした私を、求める誰かの陰謀か。でも、私はもう人形じゃない。 あの頃とは違って私には私の意思があり、決してアナタたちの思い通りにはならないと─── コレは予知夢か、はたまた警告か? 全ての事件が終わったあとに、私はこの夢のことを思い出し。 霊能力者にとって、夢は大切な情報源にさえ成りうるのだと、令子おばあちゃんに言われてたっけね。 全てが失われた光景を見ながら、そう思った。 ───やっほーっ! 今日は待ちに待った修学旅行の日だーっ なんだかやたらと疲れる夢を見てたら、とても元気な子供の声で起こされた。 「……うるさいわねぇ」 アスナは身体に絡み、胸を鷲掴む横島の腕と手を振りほどき、身体を起こす。 寝惚け眼をこすって時計を見れば、時刻はAM5:30.起きるにはまだ早い時間である。 恐らくは家中に響いたと思われるネギの朝の一声。 昨夜……というか、つい2時間ほど前まで横島とのセックスに興じていたアスナにとって、迷惑以外の何物でもなかった。 ……とは言っても、起きてしまった子供をひとり放置する訳にもいかず。 一応、修学旅行の引率という責任ある立場柄、自分達生徒とは集合時間が違うのかもしれない。 ちなみにアスナ達の集合時間は9時であり、集合場所である大宮駅へと行く電車の時間を考えれば、8時には家を出たいところだ。 身だしなみを整えたりなんだりする時間を考えても、やっぱり早い気がしないでもないが、遅いよりは断然まし。 寝足りない時間は新幹線の中で寝ればいいのだし、それより何よりネギの食事の世話をしなければ。 それに、現在自分の隣でイビキかいてる横島にアスナは言われていたことがあったのだ。 正確にはアスナだけでなく、みんなに、ではあったけど。 ほんと、何かしらね? アホなことじゃなければいいんだけど…… もちろん、アスナはその思いが叶わないことを、よ~く知っていた。 ───油断 この世界に来てから、いくつの『油断』をしたのだろうか───by 横島 忠夫 横島はアスナが着替えて部屋から出ていくのを、寝たフリしながら見送ると、少しだけ、顔を苦く歪めた。 なぜ苦々しい顔をしているのか? 決してナンパして昼帰りで相手バレしたからではない。ないったらない。 どうにか身体で誤魔化したとか、一切ない。ないったらない。 そんな、どうでも良い様な良くない様なことではない。 話は少し長くなる。 少し前に京を中心にした事件があった。 精気を吸いとられ───恐らくは性魔術と思しき技術によって、ミイラ化した男性の遺体がいくつも発見された事件である。 関西呪術協会の長である近衛詠春は、被害者の状況から見て、異世界発祥の儀式魔法『性魔術』により、精気を吸収され尽くした遺体と断定。 詠春はこのことから、現在関東に居座っている横島に協力を求めることにする。 和平交渉を進めているとはいえ、関西にとって関東魔法協会は敵対関係にある組織。 そんな組織に、例え客員とはいえ所属している男に依頼するのは、彼らの錦司が許さない。 許さないはずなのに、詠春は周囲の反対を押し切ると、長としての権限を使って断行したのだった。 結果は……上々。 事件は解決し、更には関西に所属している者たちと、横島自身との信頼関係すら結ぶことに成功したのだ。 これは、これから行われる和平への、大きな前進にも繋がったろうし、詠春の立ち位置も安定できた。 しかし…… 横島にとって見たら、関東と関西の仲がどうとかとか、詠春がどうなろうが、正直どうでもいい。 いや、まあ友人ではあるから、多少気にはするけど、もういい年した大人の男。 自分のことぐらい、自分でなんとかしやがれ! とまあ、横島は自分のことは一切棚上げ。 それよりも、気になることがあったればこそ、わざわざ京都くんだりまで来て事件を解決したのだ。 性魔術の行使者……天ヶ崎千草。 彼女が一体どのようにして性魔術という異世界の技術を手にしたか? 横島の予想はこうだ。 彼女は、先に横島が不意打ちで滅ぼした、ラプシィア・ルンと繋がっていた。 もしくは、ラプシィア・ルンから性魔術を学んだ女が、誰かしらの男に教え、そこから天ヶ崎千草へと渡った。 前者ならばいい。 天ヶ崎千草を捕縛したのだから、後は詠春に任せておけば、性魔術という異世界の技術の氾濫はなくなったと考えてもいいから。 横島は、それぐらいならば詠春を信頼しているのだが…… しているのだが……っ! あのバカ! ちっともその後の取り調べの結果を知らせてきやがらねーっ!! 後者だったらどうする! そうでなくても、もしも天ヶ崎千草が、他の第3者に性魔術を教えていたのなら…… 横島としては、この世界で性魔術が氾濫すること自体は構わないと思っている。 だが、ラプシィア・ルンの手によって広まったとするならば、現在その技術を持っている者達は危険人物だろうと思えた。 危険人物かつ、天ヶ崎千草は京都の人間。 これからアスナたちが行く場所も京都。 ……心配しすぎなのかもしれない。 だけども…… もう油断はしないのだと、横島は決めていた。 決めていたから、横島は一つの方策を実行する。 文珠。 万能の霊具であるコレは、実のところ、体内に取り込めば、通常よりも効果が長持ちしたりする。 恐らくは体内にあることで、文珠自体が生命エネルギーとか何かを取り込んでいるのだ。 刻まれる文字によっては一ヶ月。そうでなくても4~5日程度は持つだろう。 横島はベッドからのそりと立ち上がると、ネギに渡す幾つかの通常文珠と、そしてアスナ達へと渡す通常文珠の種類と数を考える。 ネギは……まあ、文珠の『本当』を教えていないのだから、この世界の一般に知られている「治」「防」「爆」「氷」のうち、「治」「防」「爆」を。 他、千鶴、アキラ、のどか、夕映、木乃香達にも、これと同じ物とは別に、最も使いかってのいい「護」を。 最後に、アスナ、あやか、夏美の3人の霊力使いには、更に文字が刻まれる前の文珠を一個ずつ渡す。 そして、念には念を…… 何度も言うが、横島はもう油断しないと決めている。 だから、トドメのひとつ。 ……いや、むしろコレが本番。 ハイパー文珠『守/護』 これを彼女達の体内に取り込ませれば、修学旅行期間中くらいならば、まあ、【本物】でも出てこない限りは大丈夫だろう。 「さァーてっ! いっちょヤるとスルかっ!!」 腕をぐるぐる回して腰をフリフリ。 これ全て準備運動なり! 何を考えているのだろうか? いやらしい笑い方をする横島の下半身は昨日、一昨日とハッスルしまくったとは思えない程、熱く滾り。 「急がねーとやる時間がなくなるっ!」 更に念には念をとか言いつつ、自分の部屋……現在、エヴァと茶々丸のいるその場所に、昨夜と同じく「眠」の文珠を放り込む。 これで準備は全て整った。 あとはネギが行き次第…… 「ぐふふふふふふふふ」 明らかにスケベな笑いが横島家に響き。 「なんかえらい楽しそうやな~」 「……変なことにならなきゃいいんだけど」 「むりやろ、それは」 「分かってるわよ、そんくらいっ!」 「えっと……どうかしたんですか?」 「お子様には関係ない話やな~」 「そうねー、あと10年はかかるわね」 あははと楽しそうに笑い合う少女達と、む~っとするネギ。そして、したり顔でウンウン頷くオコジョがいたとか何とか。 後書き えっ?茶々丸に「眠」って効くの? この場合、スリープモード「休《眠》」状態になるらしいよ! 文珠は使い手である横島の発想力だかんね! 横島ならエヴァを眠らせつつ、茶々丸をスリープモードに移行させるなんてわけねーのさw