エヴァンジェリンの家は、学園都市の外れの僻地に有る。 周囲には森と小川しかなく、暮すには不便さを感じさせるそんな場所だ。 そんな僻地を目指し、小川のせせらぎとチラリチラリと顔を覗かせる小動物に心を和ませながら、ゆったりとした足取りで夕闇に染まっていく人気の無い林道を歩く。 手にはスーパーに立ち寄って買ってきた、今日の晩御飯と明日の朝ごはんの食材。 それをガサゴソ言わせながら歩いていると、小川に架かる小さい橋の中央に無精髭のおっさんが立っているのが見えた。「タカミチじゃない。こんな所でなにやってんのよ?」「それはこっちのセリフだよ。アスナちゃんもエヴァに用があるのかい?」「ま、まーね……」 目を明後日の方に逸らす。 茶々丸さんに怪我させて、罰(?)としてしばらくエヴァンジェリン宅の家政婦になるなんて言えやしない。 タカミチはそんな私を微笑ましく思うのか、柔らかく表情を崩す。「僕はエヴァの所で、久々に自分を鍛えなおそうかと思ってね」 私の横に並ぶと、同じ速さで歩みだす。 何か、ちょっと懐かしいかも。「もう、じゅうぶん強いじゃないのよ」 だけど私は照れ隠しなのか、少しだけぶっきら棒な口調。 そんなツンな私でも、やっぱり微笑ましく思っているのだろう。 相好を崩さず、やはり顔は笑みのまま。 幼い頃を知られているってのは、どうにも気恥ずかしい。 こう言う時は圧倒的に不利だ。「ハハハ、まだまだだよ。覚えているだろ、ラプシィア・ルンに2人がかりであしらわれたことをね?」「あんな化け物どうしようもないわよ」 私の言葉に、だが彼は顔を厳しく歪ませる。 しまったわね、言葉を間違えたかしら? 不安気な私の方を見ず、首を左右に2~3度振って否定する。「違う、それは違うよ。アイツ程度倒せないようじゃ、あの人達には到底追いつけない」 ギリリ……と歯軋りをするタカミチ。 よっぽど悔しかったのかしら? そんな様子は見せていなかったのに。 正直な話、アレは忠夫でも独力じゃムリ。 聞くところによると、あの男は更にパワーアップ的な変身を残していたとか何とか。 それをされていたら……、忠夫どころかナギでもムリっぽい。 倒せたのは相手が油断していて、更に不意を突けたからだ。 忠夫自身も、アイツよりも自分の方が強いだ何て思ったことは無いだろう。「でもさ、忠夫はタカミチのこと褒めてたわよ?」「うん、知ってるさ。僕は直接聞いたからね。強くなったな、ってね」 厳しい顔が一転、子供の様な笑みを浮かべる。 握り拳を掲げると、紅から黒に変わりつつある空を眺め、目を細めた。「だからさ、だからもっと強くなるんだ! 彼らに追いつき、そして追い越す。『彼』がここに居る今こそ、それが出来るチャンスだからね!」 ああ、本当に子供みたい。 私は思わずクスクスと笑ってしまう。 そんな私を見て、居心地悪そうに苦笑い。 頭をボリボリかいて誤魔化そうとする。 ホント、男って子供なんだから。「私は忠夫の使徒だけどさ、『その時』だけはタカミチを応援してあげる。忠夫を倒す位にならないと、ガトーさんに会わせる顔がないもんね?」 そう、これは私とタカミチにとっては、約束みたいなものなのかもしれない。 私は幸せに、タカミチは……なんなんだろうね? 相変わらずクスクス笑う私に、タカミチは突然に真剣な表情になった。「『姫様』、今幸せですか?」 過去を捨て去った私。人を捨て使徒となった私。 10年前からは考えられない程に変わった私。「幸せじゃないように見える?」「……いいや。とっても幸せそうだ」「なら、そう言うことよ」「初め聞いた時はボコボコに殴ろうかと思ったんだけどね?」「使徒化のこと?」 コクリと獰猛な笑み。 ころころ表情を変えてまあ、忙しいわよね?「アスナ君にあやか君。僕の生徒を2人も手をつけたのは万死に値すると思わないかい?」「私はあんたの生徒になる前からよ。それにあやかは仕方ないじゃない」「そうだね、あやか君は仕方無いかも知れない。でも、アスナ君は別だ! 師匠に託された大切な子に……、フッフッフッフッフッ……」 これはヤバイわね。 かなりキレ気味に哄笑するタカミチに、背筋が薄ら寒く感じる。 クラスの子の内、私とあやかを含めて既に8人も毒牙にかかっていると知られたら……、忠夫、殺されるんじゃないかしら? ここは少しフォローして、話を変えた方が良さそうね。「まあまあ、それも含めて幸せなのよ?」「グゥッ! だからこうして抑えてるんじゃないか……」「私の事よりさ、あんたはどうなのよ? まさか童貞じゃないわよね?」「ああ、師匠……、アスナちゃんが下品になってしまいました。これも全部忠夫さんのせいですよ」「しずな先生、美人よね~」「…………」「あの人のルックスといい、大きい胸といい、モロ忠夫の好みなのよね~。だからさ、アンタさっさとしずな先生を押し倒しちゃいなさいよ!」 私の保身から出る発破がけに、無言を貫くタカミチ。 顔を明後日の方を向かせて表情を探らせない。 ホント子供なんだから…… 私は再びクスクスと笑い出す。 2人の砂利を蹴る音と、そして私の小さな笑い声。 エヴァンジェリンの家に着くまで、ずっとこんな感じで、『昔』みたいに歩いた。 ネギま!のほほん記 第10巻 あすなん日記 その2「フン! 茶々丸から話は聞いている。我が下僕として働くがいい!」 ちっちゃいクセに、やたらとデカイ態度なエヴァンジェリン。 顔を合わせて開口一番コレだ。 こちらが悪かったとは言え、正直先が思いやられる。 「で、そこのデカイの! キサマは何しに来た! 言っとくが、神楽坂明日菜が我が下僕となったのは、横島忠夫も承知済みだぞ?」「下僕って……、私はただの住み込み家政婦よ! アンタが生活無能力者だって言うから、茶々丸さんの代わりに面倒見に来てやったんじゃないのよっ!」「生活無能力者だと……? この私が? 笑わせるな小娘! こう見えても600年を生きる真祖の吸血鬼だぞ! 家事裁縫、どれをとってもキサマ如き小娘に負けるなんてありえんわっ!!」「随分とまあ所帯じみた真祖の吸血鬼サマね!」 ガルル……と角突き合せる私とエヴァンジェリン。 オデコとオデコをガシガシとぶつけ合い、一触即発。「フフフ、笑わせるわね。 言っとくけど、今のアンタなら余裕で抹殺できるのよ、こっちは!」「クックックッ、それはコチラのセリフだ! ここは我が陣地、何の備えもないと思うのか?」「ハハハハ、2人とも随分と仲が良いんだね。知らなかったよ」 呑気に的外れな発言。 私はあやかから持たされていた神通棍、エヴァンジェリンは傍に置いてあった花瓶、それぞれ手に持つと「「フンッ!」」っと仲良くタカミチの顔面目掛けて投擲した。 神通棍が眉間に当たると同時に、鼻っ柱に花瓶が痛撃、「ガアッ!」と大口開けてそのまま床に倒れ伏す。 ガシャーンと花瓶が割れて、辺りに破片が散乱するのを見ながら、私とエヴァンジェリンはしばし無言になる。 そして「「フウ……」」と軽く溜息。胸に込み上がる虚しさ。「片すわね……」「ああ、任せた……」 私が手際よく片づけをしていると、タカミチがソファーに座りながら「いてて……」と呻き声を上げる。 そんなタカミチに呆れた視線を向けるエヴァンジェリン。「で、キサマは何しに来たんだ?」「あ? ああ、久しぶりに別荘を使わせて貰おうと思ってね。ほら、ネギ君が来てくれたお陰で、ちょっとだけ時間が出来たんだよ」「ハンッ! どうせスグに大量の仕事を押し付けられるさ、残念だったな」「解ってるよ。だからさ、今の内にちょっと鍛えておきたくてね」「……フン、丁度いい。オイ、神楽坂明日菜! 片付けはもう良い、ついて来い。」「あん? これから夕食の支度なんだけど?」「いいからついて来い。この私の本当の実力を見せてやる」「はあ?」 疑問の声をあげつつ、花瓶の欠片を一先ずゴミ袋にザザーと捨てる。 そしてさっさと行ってしまうエヴァンジェリンとタカミチの後を追いかけた。 地下へと降りる階段を潜り抜け、途中にある大量の人形に感嘆の声を漏らす。「すごーい!」「フフ……、可愛いところもあるじゃないか? ん?」 勝ち誇った表情で私を見るエヴァンジェリン。 タカミチは微笑ましそうに眉尻を下げる。 しまったと気恥ずかし気に顔を俯かせながら、それでもチラチラ人形達に目をやってしまう。 エヴァンジェリンがその中から一体の人形を手に取る。「ケケケケケ」と突然笑い出す人形。 私は余りの不気味さに、背中を仰け反らせヒクヒクと頬を引き攣らせる。 なんだか忠夫が人形怖いって言ってるのが解る気がする。 何でも、若い頃にそれはもう酷く怖い目に遭ったとかで……「ドウシタヨ、御主人?」「タカミチの修行の相手をしてやれ。私はこの女とやる」 ポイっとタカミチの方へとその恐怖人形を投げる。 タカミチはパシっと受け取ると苦笑い。「よろしく頼むよ、チャチャゼロ君」「ケケケケケ」 知り合い? なのかしらね…… そう言えばエヴァンジェリンって「人形使い(ドールマスター)」とも呼ばれてたんだっけ。 ってことは、茶々丸さんも同じ術式で動いて…… そんな事を考えながら彼女達の背中を追う。 すると人形部屋を出て、少し開けた場所に出た。 そこには光差す中央に台座と、その上に透明の球体。 中には何かの建物だか塔のミニチュアが入っていて、まるでボトルシップのよう。 良く見ると『EVANGELINE’S RESORT』とガラス状の球体に刻んである。 恐らくはコレがタカミチの言う『別荘』なのだろう。 エヴァンジェリンは私の方を振り向くと、小憎らしい顔をして私を誘う。 見ればタカミチと呪いの人形は既に魔法陣に包まれ、恐らくはあの球体の中に転移した。 続いてエヴァンジェリンがニヤリと笑い、「先に行くぞ?」と告げるとやはり魔法陣に包まれ転移する。 気づけば私一人がこの家に取り残され、思わず、今、この球体を破壊したらどうなるのかしらね? と人の悪い笑みを浮かべた。 エヴァンジェリンの目が無い今の内に、ストレス解消とばかりに球体目掛けて拳を放ち、ギリギリで寸止め。 ちょっとでも距離がずれたら、このマジックアイテムが壊れ……と思うとゾクゾクが止まらない。 一頻り楽しんだ後、強烈なまでの虚しさを感じ、ささっと魔法陣を起動させた。「何やってんだか……」と、軽く自嘲の篭った呟きを発しながら…… 別荘滞在1日目 昔、エヴァンジェリンが自ら作ったって言う、魔法の別荘に滞在中。 彼女の世話を焼きに来た筈が、気づけば彼女の従者の人形達に面倒を見て貰ってる始末。 どの娘も美人さんで、ちょっとだけドキってするのは愛嬌よね? エヴァジェリンの趣味なのかしら? だったら中々良い趣味していると言わざるおえない。 ちなみにこの別荘、中の時間がとってもファンタジー。 中で1日過ごしても、外では1時間しか経たないんだそうな。 タカミチは私が別荘に入った時には既に激しくバトル中で、なんだか楽しそうにも見える。 エヴァンジェリンは開口一番「遅い! 何をしていた!」と少しイライラ。 カルシウムが足りないんじゃない? って言おうかと思ったけど、何故かここでは学園結界が作動していないみたいで、彼女の力が全開に近い。 君子危うきに近寄らず。ここは大人しく謝っておいた。 忠夫の使徒として、勝てない勝負はしないのだ! そんな私を見て満足したのか「今日はゆっくり休んで力を回復しろ。明日は私自ら面倒を見てやる」なんてとってもありがたいお言葉。 正直もう帰りたい。 これが茶々丸さんを怪我させた罰なのかしら…… 明日が来なければ良いのに…… 別荘滞在2日目 あのドS幼女、マジでハンパない。 「フハハハハーーッ! 見たか! コレが私の本当の実力だ!!」 とか言って散々ボコられた。 正直泣きそう。 勝てるなんて思ってなかったけど、ここまで差を見せ付けられると本当にへこむ。 もう帰りたい。 なのに、あと5日はここに居るんだそうな。 タカミチ、あんた、殺す!「さて、そろそろ血を寄こせ」 別荘滞在3日目、稽古をつけてやると称して、散々私を痛めつけた後、このセリフ。 正直フザケルナ! と言ってやりたい。「使ってしまった分の魔力を返せ、と言ってるんだ。キサマにとっては授業料みたいなモノ、文句はあるまい?」「あるに決まってんじゃないのよ! ちょっ! やだってば! 離しなさいよ!」 散々にボコボコにされた後だ、当然彼女を振り払う力など残ってなくて、あっさりと組み敷かれた。 気づけば両手が細い糸のような物に絡みとられ、完全に抵抗が出来ない状態になってしまっている。 そんな私の首筋を舐めると、「フフッ……」と実に楽しそうに笑う。 私は「ひゃん!」と思わず可愛い声を出してしまい、それもまた彼女を悦ばせる一因となってしまった。「ち、血を吸うんだったらさっさとしなさいよ!」 この後に及んでもまだ憎まれ口を叩く私。 でも、それさえも彼女を喜ばせているのだと、私は気づけない。 彼女にとって見れば、これら全てが報復の一環なのだろう。 本当に楽しそうにガブッと私に牙を立てた。 チクリとした痛みに、身体がちょっとだけ跳ね上がる。 エヴァンジェリンはそれを強引に押さえつけると、ワザワザちうう~っと吸う音を立てながら私の血を吸っていく。 身体から血が少しづつ失われていく冷たい感触。「んぁっ……」と思わず喘いでしまう。 何故だか性感が高まっているのがわかる。 身体が熱い。昨日、一昨日と忠夫に抱かれていないせい? そういえば、吸血って性行為に通じるみたいな事を聞いた覚えが……「ぷはぁっ」と私の首筋から離れると、満足気に私の頬を撫でる。「魔力の血中濃度が随分と高いではないか。これなら使った魔力にお釣りが来るな」「だ、だったらさっさと離れてよ……」 力なく、息切れしながら言う私に、満足気な笑みを浮かべたまま、私の胸を弄りだす。 当然抵抗しようとする私だけど、腕が縛られているうえ力も何も出やしない。 調子にのったエヴァンジェリンは、暴れる私の両足の間に膝を差し込み、そのままグリグリと股間を刺激してくる。 「ぐぅぅ……、なにすんのよっ!」「フフフ、驚いたぞ。キサマ、純粋な人ではないな? その手の輩には鼻が利く筈なのにな、すっかり騙されたよ」「だったら何だって言うのよ! んあっ!?」 服の上から突起した乳首を摘ままれる。 そのままクリクリと刺激しながら、更に股間に当てられた膝もマッサージするようにゆっくりと前後に往復しだす。「処女でもないみたいだしな、相手は横島か? 随分と淫乱に仕上がってるではないか」 くつくつと笑うエヴァンジェリン。 目の端に涙が溜まる。 なんか最近こんなんばっか。 なんだってこんな目に……! このままじゃ犯される!! これも全部タカミチの所為だ!「ああ、安心するがいい。私にはその気がないからな。唯な、ちょっと意地悪したいだけさ」 口端を吊り上げ、すっごく意地悪な笑み。 今度はさっき噛み付いた場所と丁度正反対の位置に、レロォと舌を這わせ唾液を擦りつけると、再び牙を突き立てる。 チクリとした衝撃に、私の腰がキュンとなって軽く跳ね上がった。 先程と違うのは、私の血を吸いながら、更に胸を、股間を刺激してくること。「あ……あ……あ、あ、あ、あぁ……」 途切れ途切れに声が漏れる。 目を見開き、口を大きく開けて何とか快感に抗おうとするも、流石は600年を生きる吸血鬼の真祖、巧みに私を追い詰める。 快感で身体を何度も跳ねさせながら、断続的に襲う絶頂感からブリッジする様に身を弓なりにして大きく喘ぐ。 満足気に首筋から離れると、今度は唇を吸い、舌を絡めとられ、その舌に牙を刺し込まれる。 チクンとした痛みも、頭が蕩けそうな快感に変わり、目から涙が溢れ止まらない。 彼女から強制的にもたらされる快感が、心地好く感じてくる。 エヴァンジェリンの意地悪な笑みは深くなり、美味しそうに私の唾液交じりの血をジュルジュルと音を立てて吸い上げていく。 コクン、コクンと咽が鳴る。彼女の唇の端から私の唾液と血が滴り落ちる。 舌に牙を刺し込まれた私は、声を上げる事もままならず、鼻息を荒げながら「んぅ……」と喘ぐことしか出来ない。 さぞかし満足したのだろう。 とても良い笑顔で私の舌から牙を抜き、今度は血が溢れ止まらないそこに優しく舌を這わせる。 それは血を止める行為なのだと思うのだけど、傍から見たら間違いなくただのディープキス。 ピチャ……チュ……クチュ……チュバッ…… 忠夫に負けず劣らずの舌技に、私の肢体はもう一度跳ね上げ股間から間断なく潮を噴き出す。 私のお尻と彼女の膝は、私の愛液でぐっしょりと濡れて粘りつく感触。 そんな感触に私は顔を歪めながら、エヴァンジェリンが私の口中から舌を抜き出すのを忌々しげに睨み付ける。「フフ、そう物欲しそうな顔をするな。このままベッドへと連れて行きたくなるではないか」「物欲しそうな顔なんかしてないわよっ! あっち行け! このエロ真祖!!」「クックックックッ……、足腰立たなくなってるくせに、良くもまあ、そんな悪態が吐けるモノだな。フハハハハ……」 私を見下ろしながらの哄笑。 忌々しくて仕方無い。 そんな私を嘲笑うのに満足したのか、エヴァンジェリンはパチンと指を鳴らす。 すると何処からともなく茶々丸さんのお姉さん達が現れ、私を抱えて持ち上げた。「なにするつもりよ!」「ハッハッハッ、なに、これ以上嬲るつもりはない。グチャグチャに汚れたキサマをキレイに磨いてやるだけさ」 笑いながら浴場の方へと歩いていくエヴァンジェリンに、その後を追う私を抱えた茶々丸さんのお姉さんズ。 結局この日、私はお姉さんズに全身泡々にされて、すみからすみまで丁寧に洗われた。 敏感な部分を弄られる度に、小さく嬌声を上げてしまう私。 それを酒の肴にして楽しむエヴァンジェリン。 入浴と言う名の拷問が終わった後は着せ替え人形とされ、ゴスロリ衣装を身に着けさせられて今へと到る。 寝る前の一服ともう一度血を吸われ、「ここに居る間は血の提供をして貰おうか」などと言われ涙目。「なに、キサマの血が極上の証だ。誇るが良い」 そんなの誇るヤツが居るとしたら、ただのドMだと思うのは気のせいかしらね…… あとこんな日が最低でも4日続くんだと思うと、憂鬱で仕方ない。 忠夫の顔も随分と見ていない気がして、何だか寂しいし。「ただお~、ただお~」 ぐすんと泣き言を漏らしながら、私はやたらと大きいベッドの上で眠りにつく。 この時の私は気がついていなかった。 この中で後4日経てば確かにここからは出られるだろう。 だがしかし、外の時間ではようやく7時間が経っただけなのだ。 当然、外の時間で最低でも後1週間はエヴァンジェリンの相手をしなければならない訳で……「死ね~タカミチ~~、呪われろ~エヴァンジェリン~~」 直接の原因のエヴァンジェリンと、この状況を作ったタカミチに怨嗟の念を向けても罪は無い。 私は、そう信じている。