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No.11660の一覧
[0] ヨコアスR(ネギま×GS)[uyr yama](2013/02/17 10:06)
[1] 序の巻[uyr yama](2010/07/08 18:22)
[2] GS日記 第1巻 [uyr yama](2010/01/13 02:33)
[3] GS日記 第2巻[uyr yama](2010/01/13 02:34)
[4] GS日記 第3巻[uyr yama](2010/12/07 08:54)
[5] GS日記 第4巻[uyr yama](2010/01/13 02:38)
[6] GS日記 第5巻[uyr yama](2010/01/13 02:40)
[7] GS日記 第6巻   エロ有り(小竜姫)  [uyr yama](2010/07/08 18:23)
[8] GS日記 第7巻[uyr yama](2010/07/08 18:23)
[9] GS日記 第8巻 [uyr yama](2010/07/08 18:24)
[10] GS日記 第9巻[uyr yama](2010/07/08 18:25)
[11] GS日記 第10巻 [uyr yama](2010/01/14 01:38)
[12] GS日記 最終巻   エロ有り(GS編オリキャラ乱交)[uyr yama](2010/07/08 18:25)
[13] GS編 設定資料集(笑)[uyr yama](2010/01/14 01:45)
[14] まほらのほほん記 第1巻[uyr yama](2010/01/26 22:00)
[15] まほらのほほん記 第2巻[uyr yama](2010/01/26 22:03)
[16] まほらのほほん記 第3巻   エロ有り(あやか)[uyr yama](2010/05/02 15:36)
[17] まほらのほほん記 第4巻   エロ有り(アスナ)[uyr yama](2010/05/02 15:37)
[18] まほらのほほん記 第5巻   エロ有り(夏美)[uyr yama](2010/05/02 15:38)
[19] まほらのほほん記 第6巻   エロ有り(あやか)[uyr yama](2010/05/02 15:39)
[20] まほらのほほん記 第7巻[uyr yama](2010/02/16 12:12)
[21] まほらのほほん記 第8巻[uyr yama](2009/12/31 18:59)
[22] まほらのほほん記 第9巻[uyr yama](2009/12/31 19:01)
[23] まほらのほほん記 第10巻[uyr yama](2010/07/08 18:28)
[24] まほらのほほん記 第11巻[uyr yama](2009/11/07 01:55)
[25] まほらのほほん記 第12巻[uyr yama](2010/07/08 18:29)
[26] まほらのほほん記 第13巻   エロ有り(アスナ、他)[uyr yama](2010/07/08 18:29)
[27] まほらのほほん記 第14巻   エロ有り(アキラ)[uyr yama](2010/07/08 18:30)
[28] まほらのほほん記 第15巻[uyr yama](2009/12/31 19:35)
[29] まほらのほほん記 第16巻[uyr yama](2010/07/08 18:31)
[30] まほらのほほん記 第17巻   エロ有り(のどか)[uyr yama](2010/07/08 18:31)
[31] まほらのほほん記 第18巻   エロ有り(夕映)[uyr yama](2010/06/21 15:53)
[32] まほらのほほん記 第19巻   エロ有り(シスター、千鶴)[uyr yama](2010/07/08 18:32)
[33] まほらのほほん記 第20巻   エロ有り(アスナ)[uyr yama](2010/07/08 18:33)
[34] まほらのほほん記 第21巻[uyr yama](2010/07/08 18:33)
[35] まほらのほほん記 第22巻   エロ有り(愛衣)[uyr yama](2010/06/21 15:53)
[36] ネギま!のほほん記 第1巻[uyr yama](2010/07/08 18:34)
[37] ネギま!のほほん記 第2巻[uyr yama](2010/11/16 23:09)
[38] ネギま!のほほん記 第3巻[uyr yama](2010/07/08 18:35)
[39] ネギま!のほほん記 第4巻[uyr yama](2010/07/08 18:36)
[40] ネギま!のほほん記 第5巻  微百合含むエロ有り(アスナ&茶々丸)[uyr yama](2010/05/02 15:47)
[41] ネギま!のほほん記 第6巻[uyr yama](2010/07/08 18:37)
[42] ネギま!のほほん記 第7巻  微百合エロ有り(横パ乱交)[uyr yama](2010/05/02 15:48)
[43] ネギま!のほほん記 第8巻[uyr yama](2010/02/16 12:07)
[44] ネギま!のほほん記 第9巻[uyr yama](2010/07/08 18:38)
[45] ネギま!のほほん記 第10巻[uyr yama](2010/02/17 00:08)
[46] ネギま!のほほん記 第11巻[uyr yama](2010/02/16 12:10)
[47] ネギま!のほほん記 第12巻  エロ有り(シスター)[uyr yama](2010/07/08 18:38)
[48] ネギま!のほほん記 第13巻  エロ有り(木乃香)[uyr yama](2010/07/08 18:39)
[49] ネギま!のほほん記 第14巻  エロ有り(アスナSP)[uyr yama](2010/07/08 18:39)
[50] ネギま!のほほん記 第15巻[uyr yama](2010/03/15 02:12)
[51] ネギま!のほほん記 第16巻  エロ有り(アキラ&裕奈)[uyr yama](2010/06/21 15:54)
[52] ネギま!のほほん記 第17巻  エロ有り(あやか、ちょい裕奈&アキラ)[uyr yama](2010/05/02 15:53)
[53] ネギま!のほほん記 第18巻  エロ有り(木乃香)[uyr yama](2010/07/08 18:41)
[54] ネギま!のほほん記 第19巻[uyr yama](2010/07/08 18:41)
[55] ネギま!のほほん記 第20巻  エロ有り(千鶴SP)[uyr yama](2010/07/08 18:41)
[56] ネギま!のほほん記 第21巻[uyr yama](2010/07/08 18:42)
[57] ネギま!のほほん記 第22巻  エロ有り(茶々丸)[uyr yama](2010/07/08 18:42)
[58] ネギま!のほほん記 第23巻  エロ有り(夕映&のどかSP)[uyr yama](2010/07/08 18:43)
[59] ネギま!のほほん記 第24巻  エロ有り(夕映&のどかSP)[uyr yama](2010/07/08 18:43)
[60] ネギま!のほほん記 第25巻  エロ有り(夕映&のどかSP)[uyr yama](2010/07/08 18:43)
[61] ネギま!のほほん記 第26巻  エロ有り(アキラ&亜子)[uyr yama](2010/07/08 09:49)
[62] ネギま!のほほん記 第27巻  エロ有り(木乃香SP)[uyr yama](2010/07/08 09:47)
[63] ネギま!のほほん記 第28巻[uyr yama](2010/07/15 00:40)
[64] ネギま!のほほん記 第29巻  エロ有り(夏美SP)[uyr yama](2010/08/02 16:25)
[65] ネギま!のほほん記 第30巻  エロ有り(アキラSP)[uyr yama](2010/08/04 13:50)
[66] ネギま!のほほん記 第31巻  エロ有り(あやかSP)[uyr yama](2010/08/12 17:46)
[67] ネギま!のほほん記 第32巻  エロ有り(美空&ココネSP)[uyr yama](2010/08/27 01:45)
[68] 一周年記念アタック![uyr yama](2010/12/28 00:38)
[69] 俺が為に鐘よ鳴れ 第1巻[uyr yama](2010/09/03 22:09)
[70] 俺が為に鐘よ鳴れ 第2巻[uyr yama](2010/10/14 08:49)
[71] 俺が為に鐘よ鳴れ 第3巻[uyr yama](2010/10/25 22:03)
[72] 俺が為に鐘よ鳴れ 第4巻  エロ有り(TS注意!ネギSP)[uyr yama](2010/11/16 23:12)
[73] 俺が為に鐘よ鳴れ 第5巻  微エロ百合有り(アスナ&木乃香)[uyr yama](2010/11/23 23:15)
[74] 俺が為に鐘よ鳴れ 第6巻[uyr yama](2010/11/29 15:21)
[75] 俺が為に鐘よ鳴れ 第7巻  微エロ有り(亜子)[uyr yama](2010/12/14 09:01)
[76] 俺が為に鐘よ鳴れ 第8巻  エロ有り(亜子SP)[uyr yama](2010/12/25 09:08)
[77] 閑話の1  エロ有り(亜子)[uyr yama](2011/02/07 10:51)
[78] 閑話の2  エロ有り(タマモSP)[uyr yama](2011/02/07 12:11)
[79] 閑話の3  (NTR美砂)[uyr yama](2011/03/08 00:09)
[80] 閑話の4  エロ有り(NTR美砂SP)[uyr yama](2011/03/08 00:14)
[81] 閑話の5  エロ有り(円SP)[uyr yama](2011/05/23 00:10)
[82] 閑話の6  エロ有り(桜子SP)[uyr yama](2011/06/05 09:52)
[83] 鬼鳴きの古都 第一巻  エロ有り(アスナSP)[uyr yama](2011/10/26 14:11)
[84] 鬼鳴きの古都 第二巻  エロ有り[uyr yama](2011/10/26 20:30)
[85] 30万HITスペシャル企画 ヨコなの 第1話[uyr yama](2010/04/26 09:14)
[86] 40万HITスペシャル企画 ヨコなの 第2話[uyr yama](2010/07/08 18:44)
[87] 50万HITスペシャル企画 ヨコなの 第3話 エロ有り(美由希H、なのは自慰)[uyr yama](2010/05/03 00:57)
[88] 60万HITスペシャル企画 ヨコなの 第4話 前編[uyr yama](2010/04/26 09:16)
[89] 60万HITスペシャル企画 ヨコなの 第4話 後編[uyr yama](2010/04/26 09:17)
[90] 70万HITスペシャル企画 ヨコなの 第5話[uyr yama](2010/04/26 09:18)
[91] 80万HITスペシャル企画 ヨコなの 第6話[uyr yama](2010/04/26 09:19)
[92] 90万HITスペシャル企画 ヨコなの 最終話[uyr yama](2010/05/02 00:58)
[93] キーやんのママがみてる&Fate/イリヤとしないTo![uyr yama](2010/05/10 00:21)
[94] 100万HITスペシャル企画[uyr yama](2010/12/07 08:55)
[95] 1111111HIT企画 横島エロ無双SP&無印ネタ語り[uyr yama](2010/11/03 16:12)
[96] 130万HITスペシャル企画  エロ有り(クスハ)[uyr yama](2010/12/12 10:49)
[97] 150万HITスペシャル企画  エロ有り(クスハ)[uyr yama](2010/12/07 09:02)
[99] 180万HITスペシャル企画[uyr yama](2011/04/18 14:11)
[100] 180万HITスペシャル企画 追加パック  エロ有り(黒桜×シャイン)[uyr yama](2011/04/21 20:32)
[101] ロードス島戦記Y 邪神戦争編 序[uyr yama](2011/04/28 17:57)
[102] 没シーン①[uyr yama](2011/08/17 21:54)
[103] せっちゃんといっしょ! ①[uyr yama](2011/09/04 19:20)
[104] せっちゃんといっしょ! ②[uyr yama](2011/09/05 16:14)
[105] せっちゃんといっしょ! ③[uyr yama](2011/09/08 16:37)
[106] せっちゃんといっしょ! ④[uyr yama](2011/09/12 23:03)
[107] 鬼鳴きの古都 第三巻  百合有り(アス×あや)[uyr yama](2012/07/14 00:02)
[108] 簡易データ表[uyr yama](2011/09/21 20:50)
[109] 逆行大作戦!! 第一話  エロ有り(ロリタマ)[uyr yama](2012/04/25 21:10)
[110] 逆行大作戦!! 第二話 [uyr yama](2012/05/02 13:10)
[111] 逆行大作戦!! 第三話  エロ有り(早苗)[uyr yama](2012/05/09 20:38)
[112] 逆行大作戦  第四話  エロ有り(冥子)[uyr yama](2012/05/27 16:33)
[113] 逆行大作戦  第五話  エロ有り(冥子)[uyr yama](2012/07/12 17:32)
[114] 逆行大作戦  第六話  エロ有り(モブ)[uyr yama](2012/08/03 23:45)
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[11660] まほらのほほん記 第11巻
Name: uyr yama◆157cb198 ID:c975af4b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/07 01:55
 注! 今回シリアスモードです。
     キツイな~、思う方は最後だけお楽しみ下さい。




























 それはいつもと同じ平和な日常の一コマ。

 朝起きて、学校へ行き、授業を受けて、部活を頑張り……
 時折好きな人の事を想ってニヤニヤしたり、最近仲良くなった新しい友達と楽しくお喋りしたり。


「あっ、村上。今帰るところ?」

「うんそうだよ。大河内さんも?」

「じゃあ、寮まで一緒に帰ろうか。」


 普段と違う事は、夏休み以降封鎖されていた公園が開放されたこと。
 そこは何の変哲も無いただの公園。
 でも、彼女は、村上夏美は知っていた。
 そこが何故封鎖されていたのかを。


「夏美さん、今から帰るのですか? だったら私たちも一緒に帰るですよ。」

「そう言えば今日から通れるんだよねー。あの公園の近道ー」


 少しだけ嫌な感じはしたのだ。
 そこに行ってはいけないと。
 でも、なんでそんな風に思ったのか分からず、彼女は友人達と共に、そこに行ってしまった。

 本来ならば安全な筈のその場所へ。

 もしもそこに彼女が居なければ、ただの変哲も無い公園に過ぎないその場所へ。
 喪服に包まれた妙齢の女性、天ヶ崎千草が居なければ。


「夏美さん、聞きたい事があるのですが」

「な~に? 綾瀬さん」

「あっ、私の事はゆえでいいです」

「おっ? ゆえってば敵情視察かっ!?」

「黙るですよ、ハルナ!」


 ゆっくりと、少しづつ、だけども確実に近づいていく。
 夏美が感じる『何か』はどんどん強くなり、それは横島かアスナだったらこう言っただろう。


 『霊感』


 霊感が伝えるシグナルは、夏美の鼓動と呼吸を荒くする。


 ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ……


 背中を汗でびっしょり濡らし、顔は緊張と恐怖で青褪めて行く。
 夏美の様子が可笑しい事に気づく友人達。
 心配して声を掛けてくる。


「大丈夫? 調子悪いんだったら、ちょっとそこで休んでこうか」


 アキラが指差すのは、公園の噴水傍にあるベンチ。

「いっ、いいよっ!? そんな事より、速くここから出なきゃっ!」


 焦り余裕の無い声をはり上げる。

 どうしたんだろう?

 彼女の友人達は訝しげに夏美を見る。
 ソコにはガタガタと身体を震わせ、一点を見つめる彼女の姿。



 もしも横島が、夏美の様子を注意して見ていれば、彼女が霊力に目覚めつつある事に気づいただろう。
 もしも横島が、霊感について彼女に注意を促していれば、この後の出来事は防げたのかも知れない。
 夏美は、横島との情事で力に目覚めつつあったのだから。

 例え戦う力が無くても、逃げ出す事は出来たのだから。


 
 夏美の視線の先に居るのは、全身を黒の衣装に身を包んだ復讐に狂った女。

 彼女を中心に巻き起こる黒い竜巻。

「な、なんなんです、アレは!?」


 夕映の驚愕の声が夏美の耳に届く。

 夏美は我知らず悲鳴を上げた。


「いやぁあああああああああっ!」



 彼女の目には、はっきりと見えた。
 黒い奔流の正体、ドス黒い怨念の塊が。
























  まほらのほほん記  第11巻  ヨミガエリシモノ



























 何があると言う訳でも無く、そこに行けば如何にかなる訳でも無い。

 ただ、あの人の痕跡が見たかっただけ。
 でも、本当はそれすらあるとは思っていない。

 彼が死んでから、もう2ヶ月。
 その間、ずっとその場所は封鎖されていたのだから。
 聞けば、彼が死んだその場所から瘴気が溢れ出していたという。

 そして今、それは止み、だからこそ此処は一般人の立ち入りが許可されたのだ。

 ならば、此処に何かが残っている筈など無い。
 徹底的に調査されつくし、浄化されつくしたこの場所に。

 それでも、それでも彼女はそこに向う。

 そして、彼女はようやっとそこに辿り着いた。
 誰に教えられた訳では無かったのに、それでも女には分かった。
 ここが、男の終焉の場所だと。

 何一つ痕跡の残らぬその場所で、女は涙を一粒、地面に落とした。


 ドッ……クン……


 身体の奥から鼓動が聞こえる。
 自分を中心に風が吹き荒ぶ。
 黒い霧が身体に纏わりつく。
 風が瘴気を孕み、そして激しい奔流となる

 外野の一般人が何かを囀るのが聞こえるが、それを気に止める気が起きやしない。

 何故なら、女は死んだ男の呼吸を感じたから。
 自分を中心に舞う黒い風から……


 黒い奔流に手を伸ばす。
 何かの手応えを感じる。

 知識が、業が、力が、そして狂気が……

 邪気に犯され狂い魅せられる。

 女は、天ヶ崎千草は、『ソレ』を握り締めた。


 ドッ……クン……、ドッ…クン…、ドックン、ドクン、ドクンドクン、ドクドクドクドクドク……


 身体の奥から鳴る鼓動が速くなる。
 自分の中に有る、何かとソレが重なり混ざる。

 快感が全身を走り抜けた。
 まるで、あの人に抱かれ貫かれてるみたいに。
 まるで、あの人が自分の胎内に入ってくる様に。

 千草はその感覚に酔いしれ、溺れ、そして凶笑した。

「アハッ、アハハッ! アハハハハッ!! アーハッハッハッハッハッハッ…………キャハハハハハハハハハッ!!」


 狂った様に笑い……、否、狂い嗤う。
 そして手にした何かを、ブオンと軽く一振り。
 直線上に有った噴水を粉々に砕き、そして自分を中心に広域結界を張る。



 悲鳴、悲鳴、悲鳴。

 その場に居た者達が悲鳴を上げる。
 だが、逃がしはしない。
 彼女達は糧となるのだから。

 手に握られたナニかの。



 ソレは剣。

 かつて、神殺しとなる前のセリカ・シルフィル。
 彼に与えられた『真実の剣』と呼ばれし物。
 ウツロノウツワと呼ばれし物。
 慈悲の女神アイドスの力の源、神核。
 そのアイドスの姉であり、セリカが愛した、裁きを司る正義の大女神アストライアの体を貫いた剣。



 神剣『スティルヴァーレ』


 
 禍々しくも神々しい。神々しくも禍々しい。
 人は容易く堕ちる。この剣の輝きと力で。
 過去のセリカである筈の、ラプシィア・ルンが狂人と呼ばれて相応しい様に。







 千草は剣の柄から剣先まで舌を這わせ、うっとりと呟く。

「ラプシィアはん、ウチのトコに帰って来はったんやね……」


 そして、視線の先に居る少女に向かい剣先を向けた。


 千草は知っていた。

 目の前に居る少女の一人。
 赤毛の少女、村上夏美が怨敵横島忠夫の情人の一人だと。
 麻帆良に潜入して既に一月余り。
 調べに調べた横島忠夫の情報。


 憎い……


 目の前の少女が憎い。
 平凡で、だけど幸せ一杯なこの少女が憎い。
 横島忠夫に抱かれ、精を注がれるこの女を八つ裂きにしてやりたい。


 憎い、憎い……


 自分はもう、愛する男に抱かれる事が出来ないと言うのに。
 手足を切り落とし、化け物共に犯し尽くさせてやりたい。
 涙に濡れ、ボロボロになったこの女を、横島忠夫の目の前で殺してやりたい。


 憎い、憎い、憎い……



 ああ、憎い。 

 あの人が、ラプシィアが居ないこの世界が、憎い。






 ダン!

 地を蹴り、一気に夏美の目の前に行くと、一閃、剣を振り下ろした。


 それは陰陽師であり、ただの後衛である千草には出来ない動き。
 今の彼女は、剣からもたらされる力と知恵と技術と魔力、それらを十全に使っているのだ。


 シュバ!!


 夏美の右腕が宙を舞う。

 クルクルと舞い、そして重力に従いポトッと音を立てて地面に落ちた。


 腕を押さえ、膝をつき、そのまま地面に倒れ込む。


「きゃあああああぁぁっっ!!」


 誰かの悲鳴が静かな公園に響く。

 我に返ったのか、この場に居た夏美とは関係ない者達は逃げ惑う。


「村上っ!?」


 アキラは地面に倒れ込んだ夏美を抱きかかえた。
 切られた腕から絶え間なく噴き出す血に、全身を真っ赤に染め上げて。


「なに? 何なの一体っ!?」


 ハルナが困惑の声を上げた。
 夕映とのどかは全身を恐怖で震わせながら、それでも夏美の傍へと駆け寄る。

 アキラは夕映とのどか、そしてハルナに夏美を託すと、自分は彼女達と千草の間に立ち、彼女を睨みつけた。

 そして、アキラが千草に対し、何か言おうとしたその時、

「心配せんでええで。そのガキ切り刻んだ後は、アンタも同じように嬲ったるかんなぁ」


 心底楽しそうにそう言うと、切り落とした夏美の腕を拾い、大きく後ろに跳んだ。
 先ほどまで居た位置、ラプシィア・ルンが死んだ場所まで戻ると、彼女は身体を縦横無尽に動かし始めた。

 右に跳び、左に跳ね、剣を突き、払い、そして蹴り上げる。

 ビシュ、ビシュ、シュバ、バシュ、空気を切り裂く音。

「アハハハハ、凄いわ! この剣、ホンマ凄いわっ!! ウチの力と魔力がもの凄い上がっとるわ!
 ラプシィアはん、アンタなんやろ? ウチに力をくれたんは……。
 愛しとるよ、ラプシィアはん。横島忠夫を嬲り殺したら、ウチもスグにそっちへ行くかんな、待っててなぁ……」


 陶然と剣を抱きしめると、千草は流れ込んでくる魔力を使い、召喚の儀を行う。
 ここに居る獲物を、逃がさず喰らい尽くす為に。

「オン キリ キリ ヴァジュラ ウーンハッタ」


 力在る言葉に応える様に、地の底から現れ出でる亡者。
 異常なまでに腹が飛び出た醜悪で異形な鬼、 餓鬼。

 軽く20体は現れ出でたそれ等に、千草は持っていた夏美の手を投げ与えた。
 
 奪い合うように飛びつき、かぶりつき、食い尽くす。

「ゲッゲッゲッゲッ……」


 夏美の手を食い尽くした醜悪な化け物達は、涎を垂らしながらイヤらしい目をアキラ達に向けた。

「ヒィッ!?」


 誰とも無く嫌悪の声を上げる。

 アキラは恐怖でガチガチと歯を鳴らしながら、それでも両手を広げ、血を流し倒れる夏美を庇うように立つ。

 恐怖で気が狂いそうになる現実と戦いながら、どこか平静な自分が今の状況に疑問を感じていた。




 これは、現実なのか?

 今、私の後ろには腕を切り飛ばされ、血を流す村上がいる。
 そんな村上の腕から、絶え間なく噴き出る血を止めようと、全身を血で真っ赤に染めながら頑張る綾瀬と宮崎と早乙女。

 そして目の前には大きな剣を持つ黒染めの女に、醜悪な化け物。

 この滅茶苦茶な状況が現実?
 信じられない、信じたくない。


「ダメです! 血が止まりませんっ!!」

「もっとキツくしばって、ゆえー!」

「こう言う時って、患部を心臓より上にするんだっけ!?」

「そんなの今の状況で出来るわけ無いですっ!!」


 背後から聞こえてくる余裕の無い声。
 その声が耳に入る度に、今が現実なんだとアキラに教えてくれる。



「さぁ、そろそろええやろ。ほれ、行くんや化け物ども。殺したらあかん、捕まえて、ぐちゃぐちゃに犯し尽くすんや!」


 千草の声が響き渡る。
 それは少女達に絶望を与える言葉。
 餓鬼達は、少女達を逃がさぬ様に、じりじりと周囲を囲み始める。



 ギリリッ……

 アキラは歯軋りを立てる。
 このままでは、あの化け物に……
 そう思ったら、恐怖で喚き、逃げ出したくなる。

 そんな時、今にも死にそうな声色で、夏美が言葉を紡ぎ始めた。


「にげて……。わ…は、だいじょぶ。……っと、よこ…まさん、たすけにきてくれるから……」


 アキラは、いや、夕映ものどかもハルナも、唇を噛み締める。
 そして皆で目を合わせると、この絶望的な状況で微笑み合った。


 こんな事を言われて逃げ出せる筈なんてないよ!

 
 4人の心は一つになり、そして、

「ゆえっ! なんか武器になる様なモン持ってないのっ!!」

「分厚い辞書位なものです。こんな事なら痴漢防止グッズでも集めとけば良かったですよ」

「……綾瀬には必要ないんじゃない?」

「如何言う意味ですかっ! 如何言うっ!? 意外と言いますね、大河内さん」

「アキラで良いよ」

「では私達も名前で呼んで下さい」

「解ったよー、あの化け物! 餓鬼って言って、お経をあげて食べ物を食べさせれば成仏するんだってー!」

「誰かお経あげれる?」


 一斉に顔を横に振る少女達。


「残念ですが、お経が書いてる本すらありません。これを教訓に、今後は持ち歩く事も検討しなくては」

「じゃあ、取り敢えずー、食べ物を投げてみようよー」

「あ~あ~。せっかくのおやつが~~」

「「ハ~ル~ナ~ッ!!」」


 恐怖は消えない。絶望感も無くならない。

 それでも、最後まで抗ってみよう。

 夏美はすでに意識を失い、うわ言の様に横島の名前を呼ぶ。
 アキラは知らないが、夕映達は知っている。その男性を。
 彼が来たからといって、助かるとは到底思えないけど。


 嫌な笑みを浮かべる千草を睨みつける。
 少しでも良い。あの女をギャフンって言わせてみせる!

 少女達は、千草の「行け、化け物っ!」の声と同時に反撃を開始する。

 迫り来る化け物に、一斉にお菓子を投げつけた。

 お菓子に群がる化け物に、それでも此方に迫り来る化け物。

 アキラとハルナが必死でそれらを振り払い、のどかと夕映が物を投げつける。




 助けが来るかもしれない。


 そんな小さな奇跡を信じて…… 


































 その頃、公園の外側では……


「何? この異常に硬い結界はっ!? はやくしないと犠牲者がっ!!」

「お姉さま、落ち着いて下さい! 今、結界破りのエキスパートが来ますって連絡が入りましたあ!!」


 高音・D・グッドマンはイライラしながらも、それでも愛衣の言葉に冷静さを取り戻したのか問い質す。

「誰よそれ? そんな人居たかしら?」

「神楽坂明日菜さん。横島さんの従者だそうです」

「そう、横島忠夫の……」


 苦々しく答えるも、愛衣も慣れているのかあっさりと。

「神楽坂さんが来て、結界を破壊すると同時に突入、制圧です。魔法先生方が敵対勢力の鎮圧。私達がそのサポートです」

「ええ、分かったわ。……もうっ! はやく来なさいっ、神楽坂明日菜っ!!」


























 そして……、


 大きく息を吐く。夢は夢だったと。

 世話になった人達と、これから同僚になる筈だった人達に向けて、大きく頭を下げる。

「お世話になりました。んじゃっ、急いでっから!」


 ボケた頭に気合を注入し、男は文珠を握り締める。

 少しだけ、ホンの少しだけ未練を残し、彼は跳んだ。

 行く先は、自分の女が待つ場所へ。今も自分を信じて待ってるはずだから。

「あーーーーっ、クソッタレっ! もうちょっとで、むつみさんの実に美事な乳を俺の物に出来たっちゅーのにぃっ!!」


 やっぱ沢山の未練を残して……
































 後書き

 スティルヴァーレ関連のアレやコレは、ヨコアス独自の設定です。

 むつみ? 名前が同じだけの別人じゃね?

 どーせこの先出ないから、深く考えても無駄無駄♪


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