それは悲しい思い出。焦がれる程に想ったあの人を失った、遠く忘れ難い大切な記憶。「お疲れさまっした、美神さん……」もう物言わぬ老婆の亡骸を、愛おしそうに何度も撫で。閉ざされた目蓋はもう開かないのだと、慟哭の声を上げた。雨のように止まらない涙は彼女を濡らす。もう、彼女の声は聞けない。あの最も熱い2年間を共に過ごした彼女の声を。そう思った瞬間、まるで胸にぽっかり穴が開いたような気がした。決して埋まることのない、大きな穴が…………「……しまくん、横島くん~っ」どこか間延びした声が、意識を覚醒させた。目を何度かシパシパさせて、ああ夢か……と大きく息を吐いた。戻る前の世界で開いた沢山の心の傷穴。この世界に、いわば『逆行』しても、その傷は癒えはしない。同じ外見、同じ魂。でも、違う。『あの』美神令子とはもう会えないのだと、死んでしまったのだと。だから、傷は決して癒えないのだと。 でも、この傷の痛みにはもう慣れた。終わらないジクジクした痛みには…………永く生きてたら別れは無数。美神さんだけじゃない。たくさんの大切な人達と、たくさんの別れ。ひとり、ふたり、さんにんよにんと……泣いて泣いて、いっぱいのさよなら。……次第に痛みに慣れ、涙も枯れ果て。虚ろな嗤いと、諦念の無表情が普通になった頃、それが突然起きたのだ。世界が巻き戻り、大昔に逝ってしまった大切な両親との再会。そして……横島は、心配そうに自分の顔を覗き込む女に笑みをみせる。「大丈夫っスよ。ちょっと昔の夢を見ただけです。それより、イタリアに着いたんですか?」「ううん、まだよ~。あと~1時間くらいじゃないかしら~」女の横島を想う気持ちは本物だ。だから無理矢理作った笑みだと、女……六道冥子にはすぐ分かった。でも、心配をかけないためなんだろうと、冥子は気づかないふりして微笑み返す。こういう気遣いこそが、大人の女の証だからと。ただただ子供っぽかった冥子にしては、格段の成長である。このことを冥子の両親が知れば泣いて喜んだろうし、逆に美神令子や小笠原エミなどが知れば、これは夢ねと現実逃避するだろう。なんて冥子は苦笑しながら────それこそが成長の証なのだが────横島の問いかけに何でもない風に答え、ポケットからハンカチを取り出し、彼の顔をふいた。額の汗、頬を伝う涙のあとを、優しい慈母の表情で微笑みながら、丁寧に、丁寧に…… 「あ、ありがと、冥子ちゃん」……なんだか、やたらと照れ臭い。「いいのよ~。私が好きでやってるんだから~~」うふふと笑う彼女に、横島はトクンと胸が高鳴った。本当にいい女だ。顔に熱がたまるのが分かる。横島は真っ赤になった頬をポリポリかいて、目をキョロキョロどっちらけ。このまま彼女の顔を見てると、心が魅せられてしまいそうで困る。横島は誤魔化すように狭い飛行機のシート────それでもファーストクラスだが────で身を捩らせ、うん、っと伸びをし……あれ? 別に魅せられてもいいんじゃね?っと思い返す。だって『この』六道冥子は横島忠夫の恋人だ。魅せられたって何の問題もありゃしない。そして考える。イタリアまであと一時間。一時間もあれば色々やれる。「もうっ、横島くんたらエッチなんだから~」艶然と微笑む冥子に下心を見透かされたなと思いながら、横島はズボンのチャックを開け放ち、社会の窓からこんにちわ。にょっきりいきり勃つ巨根に目を白黒させる冥子の頭を優しく引き寄せる。蒸せる男の体臭が、冥子の鼻を襲う。日本を出立してからこっち、トイレ以外はずっと飛行機のシートに座っていたのだ。当然、シャワーなんて気の利いた物で身体をキレイになんてしておらず、とても臭い。が、冥子は嫌な顔ひとつせず、ちろりと舌を伸ばし一舐め。味をじっくり確かめ……ほにゃっと微笑んだかと思うと、痺れるような快感に身を任せながらすぐに口に含んだ。冥子の可憐な唇は、横島の醜い肉棒で一杯だ。だけども、冥子の顔に嫌悪はなかった。口いっぱいに広がる汗や残尿の味は、横島忠夫の、大好きな人の、味。その味を噛み締め、冥子はもっと味わいたいと首を前後に振った。周囲にチュパチュパ音が立ち始める。「おいしそうにしゃぶるなぁ」「だって、とっても美味しいのよ~?」一旦、肉棒を口から出してそう答え、すぐに再び横島の股間に顔を埋める。陶然とした表情を浮かべながら、無我夢中でフェラチオを続ける冥子の頭を優しく撫でる横島は、心地好い快感に目を細めた。今の冥子はすんげーエロイ。この世界の、横島忠夫『の』六道冥子が。クッと悪い男の顔で小さく笑い、快感に身を委ねると同時に、頭の冷静な部分でイタリアで待ち受ける真祖との戦いを考える。真祖の吸血鬼。冥子が受けた仕事の討伐対象。この人界においては、ほぼ最強といってもいい存在である真祖。当然のように自身につきまとう死の臭い。だが、横島は嗤う。こりゃ~、絶対に負けられんな。こんなスケベな冥子ちゃんは、俺以外の男を知る必要なんてない。そうだ、死ねばこの女は別の男の下へと行くのだろう。六道家の次期党首としてでもあるし、一人では生きられない弱い女でもあるのだし。横島はそう思いながら冥子の後頭部に手を添えると、ゴンゴンと激しく彼女の喉に肉棒を突き上げる。「んじゃあ、一発目いくっすよ?」宣言と同時に射精をし、だけどもゴンゴン喉を突くのをやめはしない。喉に精子を浴びせられながら、更に肉棒で突かれまくる冥子はたまったもんじゃない。でも、呻き声をあげることなく、むしろ嬉しそうに頬を緩めながら横島のなすがままの冥子は、とても幸せそう。彼の精液を喉に通すだけで、身体全体に波打つような快感が広がっていく。下腹の辺りがキュンキュン脈打ち、花弁から湧く潤いで下着が濡れた。彼のことがたまらなく好きなんだと自覚させられる。じゅるじゅる音を立てて精液を飲み干した冥子は、ずるりと肉棒を口から出すと、期待の眼差しで横島を見上げる。ゾッとするほど色気のある表情だ。「どうしたんです? 誰がやめていいって言いました?」「あん、でも冥子ぉ~、横島くんに抱いて欲しい……」「ダメですよ。流石に飛行機の座席でやったらバレます。イタリアの空港に着いたら存分に可愛がってあげますから……」「……あげますから~?」「今は黙って俺のちんぽをしゃぶってろ。好きでしょ?」いつになく厳しい口調で。いつになく悪い男の顔だ。冥子は自分の身体を開発した男の、初めて耳にする言葉に、身体の芯に熱が灯った。身体が細かく痙攣する。小さく漏らした甘い喘ぎ声。冥子は、絶頂してしまったのだ。それは完全に横島に屈服した証。冥子は目を潤ませ、頬を上気させ、ビクビク身体を震わせ……「うん、好きよ~。大好き~~」「んじゃ、スチュワーデスさんに見つからんよう、しっかりこっそりしゃぶれ」座席のリクライニングを最大にして、ゆったりと背もたれにもたれ、傲慢なまでの態度で冥子を促す横島。 隣の座席から身を乗り出し、一見膝枕をして貰っているような体勢の冥子に、再び喉奥まで肉棒を飲み込ませる。じゅぱっ、じゅぱっ、と静かな機内に微かに響く淫音。冥子の苦しそうな鼻息がそれに続き、否応もなく横島の欲望に火をつけた。腰の奥から、再び熱い精の塊がせり上がって来る。だが、そう簡単には出してやらん。「もっと舌に唾液を絡めて、唇をすぼませろ。吸う力ももっと強く、喉の奥まで受け入れるんだ」「……ふぁい、わふぁったわ~」愚直なまでに言われるがまま奉仕を始める冥子に、横島は褒美とばかりに手を伸ばす。冷え症なのか、冥子は暖かそうなロングコートを着ている。そのコートのボタンを、上から一つづつ外していくと……中から出てきたのは上着ではなく、黒のブラジャー。紅潮させている冥子の真白い肌にはよく映えて。だが明らかに彼女の趣味ではなかった。むしろ横島の趣味に直撃だろう。この、コートの下は裸……まあ下着は着けてるようだが……なんて弩ストライクだ。……本当に可愛い年上のお姉さんだ。こんな可愛い子を、前の世界では鬼道のヤツがスキにしていたかと思うと、沸々と不快感が湧きあがる。まあ、明らかに俺が寝取ったみたいなもんだがな。そう嗤いながらも、罪悪感は一切ない。横島にしてみたら、鬼道正樹はほぼ見知らぬ赤の他人。精々知ってることと言えば、冥子と決闘みたいなのをして、才能差『だけ』で負けた可哀そうな男とか……確かおキヌちゃんの高校時代の担任だったっけ?って程度である。横島自身との関係は、まったくないのだ。だから当然のように罪悪感など一切湧かず、むしろ背徳感でやたらと興奮しまくりだ。それにだ、過去に戻って別の男と結ばれた女を自分の女にしてしまう。なんという達成感……!……この達成感が、後に横島による過剰な女漁りに続くのだが……まあ、ここでは割愛する。と、そんな達成感に満足しながら、鼻息荒く冥子のブラの中に手を差し込んだ。手のひらに丁度収まる冥子のオッパイは、とても柔らかく、それでいて張りがある。そんな極上のオッパイを、思うが儘に揉みしだく。すると肉棒の先端にかかる息が更に熱くなり、喉がキュッと締まった。……こりゃええ。すんげぇ気持ちよくなった。思わずオッパイを揉んでいる手とは逆の手で冥子の髪を掴み、しっかりと固定させる。続いて腰をグリグリとグラインドさせ、喉奥で肉棒の先端をマッサージ。流石に苦しそうに呻く冥子だったが、横島は嗜虐心に火がついたのか、決してやめようとは思わない。むしろ、イタリアに着くまで、冥子ちゃんの口に何発出せるかな?なんてことばかり考え。でも苦しそうな冥子も、横島くんのエッチなお汁~、イタリアに着くまで、どれだけ飲まされるのかしら~?心内ではうっとりしていた。……これから死闘が待っているとは思えない、すんごくエロいカップルである。 ────────────────────────────────────朝焼けにはまだ遠い。だが、月はもう天にない。そんな、時間に……崩れ落ち、瓦礫と化した城を背にした化け物が一匹。怒りに瞳を紅く染め、凄まじい、世界を塗り替える程強大な魔力を放出させる。────ああ、これは人では勝てない常人ならばそう思う。だが、彼は違う。違ったのだ!「キサマが真祖の吸血鬼だな。俺か? 俺は、キサマみてぇな悪党を退治する…… ゴーストスイーパー横島忠夫ッ!」右手が光る。手首から先が霊力に纏われ、光る剣となり────「俺がキサマを────極楽に、送ってやるぜっ!!」化け物たる吸血鬼の胸板を貫いた。──────────────────────────────────── 「って、きっとこんな感じなんだべな~」「……サナエおねえちゃん、ちょっとタダオに夢ミスギ」「んなことないべ? 死津喪比女との決戦は、こんな感じだったじゃねえか」あの人も、やる時はやる人だから……とアスナは早苗に分からぬよう小さく苦笑い。とはいっても、その『やる時』が年に一回あったら奇跡ともいえる彼のこと。そうそう格好好いことなんてある訳ない。大体、津喪比女との決戦は、100年に一度あるかないかのイベント戦。あんなのを基準にして考えたらバカを見る。だけど、まあ……それを抜きにしても、「かっこよかった」「だべ? だったら真祖なんちゅう化け物相手なら、こんくらい格好ええとこ見せてくれるに違いねぇべさ」 普段が普段である。あの時の横島に魅せられた早苗だからこそ、こういう時はすんごく格好好いとこ見せて欲しい。そう思うのが当たり前。だからこそ……「いっしょに連れてって欲しがったなぁ。そりゃあ、わたすが足手まといだ、ってのは分かるけんども……」何気に世間では『幽霊癒し(ゴーストテイマー)』なんて厨二臭い2つ名持ちになった早苗だが、所詮は付け焼刃の救霊だ。しかも相手は『幽霊』ではなく、真祖……怪物や妖怪と言った存在である。救霊じゃあ、足手まといにしかならない。一方、もう一人のアスナも小学生。例え中身が凄まじい力の持ち主でも、外見が小学生では世間体的な意味で連れていく訳にはいかなかった。……が、これは表向きの理由である。横島明日菜は……いや、神楽坂明日菜は、主であった横島さえも超える力の持ち主。『戻って』来た今、その力の大部分は失われてしまったけれど、それでも断然強い!そう、下級の神魔程度なら軽くあしらえる程度には。もちろん、横島には無理な話である。なにより彼女には、横島と同等クラスの戦闘経験と、横島以上に、『完全魔法無効化能力』『咸卦法』『飛燕剣』『伊達式格闘術』『真・魔装術』希少(レア)な能力(タレント)に技法(スキル)。そして、この時代には基礎すら出来ていないはずの伊達式格闘術を修めている。それらを小さな身体に詰め込んだ、使徒である経験を持つ少女。使徒の中では、主に戦闘の専門家であった彼女が、例え小さな身体に戻ろうとも弱いはずがない。そうだ。アスナさえいれば、例え真祖の吸血鬼といえど敵ではない。だが横島はアスナを置いて行った。いや、真祖以上の相手でも置いて行くだろう。横島にとっては『切り札』。『あいつ』との戦いが確定するまで、決して切らない伏せたままのスペシャル。それが、アスナだ。アスナも分かっているからついて行きたいなんてワガママは言わなかった。言わなかったけども……「ウン、私もいっしょに、行きたかったなぁ……」視線は部屋の外……窓からのぞく遠い空。あの人がいるイタリアへと繋がる、遠い、空……言葉も、表情も、小学生には決して見えない女の表情(かお)で。いつまでもいつまでも、早苗と一緒に見続けた。で、その横島はというと……むろん! 2人の期待を裏切る行為!! しまくりまくりの最低野郎ッ!! で、ある。空港に到着するなり、冥子に急かされるようにして女子トイレの個室に駆け込んだ横島は、「横島くん~、もうイジワルしないで~~! 冥子、これ以上待たされたら泣いちゃうわ~」冥子はそう言うと、慌ただしくコートのボタンを外していった。中はさっき横島が見たとおり衣服は身に着けておらず、黒のブラとショーツに、色気むんむんガーターベルト。それさえもガーターベルトだけを残して乱暴に脱ぎ捨て、あっさりと隠された肌を晒した。ここは空港のトイレの個室だ。壁一枚どころか、薄板一枚向こうは公共の場。にぎやかな喧騒がダイレクトに聞こえてくるこんな場所で、冥子は迷うことなく裸になった。……その事実に、興奮した。無垢な少女みたいな女だった六道冥子が、ここまで堕ちたのかと思うと、鼻息が荒くなってしょうがない。実際、機内で横島のモノをしゃぶり、ただそれだけで身体がメロメロな冥子のマンコは、もう十分以上に濡れそぼっている。「こりゃ前戯の必要はないな。しっかしチンポしゃぶるだけでこんなに濡らすなんざ、どんだけエロいんじゃ、冥子ちゃんはっ!」ツンと乳首が尖った胸の谷間に、まるでお祈りするみたいに両手を合わた冥子は、その言葉にブルルと身体を震わせた。「こ、こんな女にしたのは横島くんよ~」少しだけ泣きそうな冥子だが、横島には分かっていた。ただでさえ濡れていた股間が、更に湿り気を増している。感じているのだ。言葉だけで。これは、もう少し言葉で責めてみた方が面白いかもな。「こんな外国のトイレで服脱ぐような変態のくせして、人のせいにするんスか?」「ち、ちがうもん~~っ!」「ほれ、冥子ちゃんのエッチな汁」人差し指と中指を使って、冥子の濡れている股間の割れ目を優しくなぞり、溢れだす蜜をすくって冥子の口元に持ってきた。「認めた方がいいッスよ?」口角を吊り上げ、いやらしく笑いながらその指を冥子の口の中に突っ込んだ。「あ、あぁ……」奇妙な味が、冥子の口の中に広がった。酸っぱいような、甘いような……そんな奇妙な。でも、不思議と嫌じゃない。自分のだから?それとも、私が……だから?「おいしいっすか?」「わ、わかんないわ~。でも……どきどきするの~~」「やっぱり。それは変態だからです。冥子ちゃんは、変態なんすよ」「……いや~っ! 冥子、変態はいや……」最後まで言わせず、横島は冥子の言葉に上書きするようにこう言った。 「何度でも言います。冥子ちゃんは、変態だ。変態だから、ここで、俺の子を孕めっ」「……横島くんの……こども……?」「そうっすよ。冥子ちゃんは変態ですからね」「へん、たい……? わたしは、へんたい……」「こんな誰が来るかもしれないイタリアの空港のトイレん中で孕むなんざ、変態じゃないと出来ませんよ?」横島は冥子の左足を抱え上げ、いつでも挿入可能な体勢に持っていくと、おもむろにちんぽを取り出し、冥子に見えるようにユラリと揺らした。ギンギンに勃起したチンポは、あまりに雄々しく猛々しく。冥子は思わずゴクンと生唾を飲んだ。「どうします? 変態だって認めるんでしたら、コイツで冥子ちゃんを犯してあげます」「わたし……わたし、は……」煮え切らない態度だ。横島は、もう少し押してみるかと、チンポで冥子のヌレヌレの割れ目を優しくなぞってみた。「あっ、あっ、横島くん……あん、き、気持ちいいのぉ……あ、あっ、あああ……っ」くちゅくちゅと、淫らな音が響かせ割れ目をなぞるチンポは、でも冥子が絶頂しそうになると、すっと後ろに引いた。 「この先、して欲しくないっすか?」そして、冥子の身体が少し冷めたのを見計らい、そう言って今度は亀頭でクリトリスをグリッと押し潰した。「ひぃあんっ!?」ビリビリした僅かな痛みと、それ以上の圧倒的な快感の予感に、目がトロンとなった冥子。この瞬間、冥子は自分が、「私は、へんたいです~、だから~、冥子に種付けしてください~~っ」変態だと認めたのかもしれない。「よく、できました」言うなり、横島は冥子のクリトリスをグリグリしていたチンポを、ご褒美ですと小さく囁きながら冥子の膣口に押しつける。そして、グッと腰を押し出し……ズプンっ! なんの抵抗もなく一気に奥までちんぽを飲み込んだ冥子は、首を反らして快感に喘いだ。 甲高く上げる嬌声は、ここが空港のトイレなんだと、まるで分かってないみたい。……いいや、分かっているはずだ。でも、声を上げるのをやめるつもりが冥子にはなかった。だって、自分は変態なのだ。変態だから、周りに聞こえるように声を出し、変態だから、ここでエッチしてるんだとみんなに知らせたい。だから、だから、だから「私……横島くんの赤ちゃん、産みたい……」「ああ、いいですよ。俺の子を……そうですね、女の子で、名前は冥菜かな?」「めーな? ……うん、いい名前~。じゃあ横島くん、冥子の中に、めいなちゃんをちょうだい……」妖しく腰をくねらせ、きゅぅっと横島のチンポを締め付ける。受精の為の準備なのか、冥子の子宮はいつもより下に降り、子種が来るのを今か今かと待ち受けた。熱く濡れ、蠕動する膣壁。小刻みに身体を揺らす冥子の顔は、完全に発情しきった女の顔だ。あの子供っぽい冥子が、俺の子種が欲しくて牝になりやがった。なんちゅー達成感。実に素晴らしいっ!とそう思いながら、冥子の唇に自分の唇を重ねキスをした。舌を絡め、夢中になって唇を貪り合う。鳥肌が立つような快感だ。頭がクラクラしてくる。だが、キスだけで満足する訳にもいくまい。一旦、唾液の橋を作りながら唇から離れ、より深く繋がるために腰を突きだす。イキナリの刺激に仰け反る冥子を追うように腰を前後させ、激しく抽送を繰り返した。「イク……冥子、イッちゃうのぉ……横島くんはげしくって、冥子のオマンコ、もう……我慢できない~~~っ」「冥子っ、俺もそろそろ、イクぞっ!」「うん、イクッ、イクぅっ!! んんっ、あああああぁぁぁっ!!」そして……ドクン!! 横島は、冥子の子宮の中に、一気に精を放った。瞬く間に埋め尽くしていく精液は、冥子の中だけでなく、心までをも満たしていった。「あっ、あぁ……出てる……出てるのぉ……めいなちゃんが、私のなかに……あ、はぁ、はぁあん……」最後の一滴まで搾りだそう膣壁を痙攣させる冥子は、惚けたよう顔で横島を見つめる。小さい唇を仄かに開けて、求めるのは一目瞭然。横島は、軽く苦笑いしつつも、冥子の想いに応えた。「あ、んぅ……横島くぅん……」たっぷりの唾液を冥子の喉に通しながら、腰をゆっくり回転させ始める。……2回戦の、始まりだ。「一回じゃ、妊娠したがどうか分かんないすからね? だから……」「……だから~?」「冥子ちゃんが妊娠するまで、中に出し続けますよ?」「あぁんっ、横島くんの~、私の中でまた大きく……いいわ~、一杯して~。私、早くめいなちゃんに会いたいもの~」「んじゃ、種付けセックス、再開しますかっ」六道冥子。彼女の活躍は、ここでの攻防を最後に、しばし空白期間が訪れる。次に彼女の勇姿(?)が見られるのは、これより1年以上あとであった。閑話休題。2人は空港のトイレで心も身体もすっきりさわやかになったあと、待ち合わせ場所である発着場へと足を急がせた。そこには『前の世界』での親友が何故かいた。訝しんで見ていると、彼が依頼人よ~、と普段ののほほんとした感じではなく、結構真面目な顔で……冥子なりに……そう言った。この辺りは、横島の教育による結果だろう。に、してもだ。依頼人がピートで、討伐目標が真祖ということは……真祖の吸血鬼ってもしかして?横島は戻る前の世界でのピートの父親への愚痴を思いだしつつ、用意された小型の旅客機に乗り込んだ。そうして、考えてたのと違って楽な依頼になりそうだなと思った瞬間、凄まじい殺気に身を震わせた。思わず身構えかけながら殺気の先を辿ってみると、そこには……「……おいピートっ! これはどういうことだっ!!」「えっ!? なんのことです? っていうか、自己紹介しましたっけ?」「なに言ってやがる! いくら俺でもダチの名前くらい忘れんわっ!」「ダチって……僕が? 友達、ですか?」少し嬉しそうに顔をほころばせるピートに気づかず。完全にテンパッた横島はそれどころじゃない。ってか、自分が何を言ってるのか分かってはいないだろう。なんせ今の横島にとって、ピートは見知らぬ他人にしかすぎないはずだ。でも、その当たり前のことに気づく余裕はまったくない。恐怖 恐怖 恐怖そして、助けが欲しい。『前』に高校生だった頃なら、迷わず、おがーんっ! と叫んだはずだ。でも、今なら……「あ゛ずな゛ーっ! た~ずけで~~っ!」「あ、あのね~横島くん。冥子思うんだけど~、小学生のアスナちゃんに助けを求めるのは流石にどうかと思うわ~」わたわたと、でも年上のお姉さんとして何とかかんとか横島を宥めようとする冥子。でも当の横島は、冥子の言葉なんて耳に入りゃしねー。彼の視線はたった一人の女に釘つけだ!冥子はそのことに、チラリと嫉妬を感じ……「間違いねぇっ! あの視線は……殺すッだ!? なんで! どうしてーっ! 俺は覗きもセクハラもまだしとらんぞーっ!?」「お、落ちついて~、横島く~んっ。本当にどうしたの急に~~!?」……る所ではなく。もう何が何だか訳が分からない。しかもだ、「いやあぅ────っ!?」恐怖が頂点に達したのだろう。頭を抱えて、恐怖の雄叫びまであげる始末。だが、その雄叫びはスグに止まることになる。青筋立てた、一人の美女の手によって……「うっさいわねっ! 静かになさいっ!!」ドゴンッ!!激しい打撃音と共に、喧噪は治まった。シーンと静まり返った機内には、頭から血をダクダクと流し、悶絶したままピクピク痙攣する横島の姿と、ぽか~んな他乗客。「よっ、よこしまく~んっ! 大丈夫~~ッ!?」横島に、文字通り彼を血の海に沈めた美神令子は、「ちょっと令子ちゃんっ! 横島くんになにするのよ~っ!」冥子が初めて『友達』に向けた怒りに戸惑い。思いもしなかった彼女の剣幕にオロオロし、ばつが悪そうに頬を掻く。先に同乗していた小笠原エミに言わせれば、男を知らない女のひがみ……「誰がひがんでるって! こいつが喧(やかま)しいからぶん殴って静かにさせただけじゃないのよっ!」……なんだそうな。