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No.11660の一覧
[0] ヨコアスR(ネギま×GS)[uyr yama](2013/02/17 10:06)
[1] 序の巻[uyr yama](2010/07/08 18:22)
[2] GS日記 第1巻 [uyr yama](2010/01/13 02:33)
[3] GS日記 第2巻[uyr yama](2010/01/13 02:34)
[4] GS日記 第3巻[uyr yama](2010/12/07 08:54)
[5] GS日記 第4巻[uyr yama](2010/01/13 02:38)
[6] GS日記 第5巻[uyr yama](2010/01/13 02:40)
[7] GS日記 第6巻   エロ有り(小竜姫)  [uyr yama](2010/07/08 18:23)
[8] GS日記 第7巻[uyr yama](2010/07/08 18:23)
[9] GS日記 第8巻 [uyr yama](2010/07/08 18:24)
[10] GS日記 第9巻[uyr yama](2010/07/08 18:25)
[11] GS日記 第10巻 [uyr yama](2010/01/14 01:38)
[12] GS日記 最終巻   エロ有り(GS編オリキャラ乱交)[uyr yama](2010/07/08 18:25)
[13] GS編 設定資料集(笑)[uyr yama](2010/01/14 01:45)
[14] まほらのほほん記 第1巻[uyr yama](2010/01/26 22:00)
[15] まほらのほほん記 第2巻[uyr yama](2010/01/26 22:03)
[16] まほらのほほん記 第3巻   エロ有り(あやか)[uyr yama](2010/05/02 15:36)
[17] まほらのほほん記 第4巻   エロ有り(アスナ)[uyr yama](2010/05/02 15:37)
[18] まほらのほほん記 第5巻   エロ有り(夏美)[uyr yama](2010/05/02 15:38)
[19] まほらのほほん記 第6巻   エロ有り(あやか)[uyr yama](2010/05/02 15:39)
[20] まほらのほほん記 第7巻[uyr yama](2010/02/16 12:12)
[21] まほらのほほん記 第8巻[uyr yama](2009/12/31 18:59)
[22] まほらのほほん記 第9巻[uyr yama](2009/12/31 19:01)
[23] まほらのほほん記 第10巻[uyr yama](2010/07/08 18:28)
[24] まほらのほほん記 第11巻[uyr yama](2009/11/07 01:55)
[25] まほらのほほん記 第12巻[uyr yama](2010/07/08 18:29)
[26] まほらのほほん記 第13巻   エロ有り(アスナ、他)[uyr yama](2010/07/08 18:29)
[27] まほらのほほん記 第14巻   エロ有り(アキラ)[uyr yama](2010/07/08 18:30)
[28] まほらのほほん記 第15巻[uyr yama](2009/12/31 19:35)
[29] まほらのほほん記 第16巻[uyr yama](2010/07/08 18:31)
[30] まほらのほほん記 第17巻   エロ有り(のどか)[uyr yama](2010/07/08 18:31)
[31] まほらのほほん記 第18巻   エロ有り(夕映)[uyr yama](2010/06/21 15:53)
[32] まほらのほほん記 第19巻   エロ有り(シスター、千鶴)[uyr yama](2010/07/08 18:32)
[33] まほらのほほん記 第20巻   エロ有り(アスナ)[uyr yama](2010/07/08 18:33)
[34] まほらのほほん記 第21巻[uyr yama](2010/07/08 18:33)
[35] まほらのほほん記 第22巻   エロ有り(愛衣)[uyr yama](2010/06/21 15:53)
[36] ネギま!のほほん記 第1巻[uyr yama](2010/07/08 18:34)
[37] ネギま!のほほん記 第2巻[uyr yama](2010/11/16 23:09)
[38] ネギま!のほほん記 第3巻[uyr yama](2010/07/08 18:35)
[39] ネギま!のほほん記 第4巻[uyr yama](2010/07/08 18:36)
[40] ネギま!のほほん記 第5巻  微百合含むエロ有り(アスナ&茶々丸)[uyr yama](2010/05/02 15:47)
[41] ネギま!のほほん記 第6巻[uyr yama](2010/07/08 18:37)
[42] ネギま!のほほん記 第7巻  微百合エロ有り(横パ乱交)[uyr yama](2010/05/02 15:48)
[43] ネギま!のほほん記 第8巻[uyr yama](2010/02/16 12:07)
[44] ネギま!のほほん記 第9巻[uyr yama](2010/07/08 18:38)
[45] ネギま!のほほん記 第10巻[uyr yama](2010/02/17 00:08)
[46] ネギま!のほほん記 第11巻[uyr yama](2010/02/16 12:10)
[47] ネギま!のほほん記 第12巻  エロ有り(シスター)[uyr yama](2010/07/08 18:38)
[48] ネギま!のほほん記 第13巻  エロ有り(木乃香)[uyr yama](2010/07/08 18:39)
[49] ネギま!のほほん記 第14巻  エロ有り(アスナSP)[uyr yama](2010/07/08 18:39)
[50] ネギま!のほほん記 第15巻[uyr yama](2010/03/15 02:12)
[51] ネギま!のほほん記 第16巻  エロ有り(アキラ&裕奈)[uyr yama](2010/06/21 15:54)
[52] ネギま!のほほん記 第17巻  エロ有り(あやか、ちょい裕奈&アキラ)[uyr yama](2010/05/02 15:53)
[53] ネギま!のほほん記 第18巻  エロ有り(木乃香)[uyr yama](2010/07/08 18:41)
[54] ネギま!のほほん記 第19巻[uyr yama](2010/07/08 18:41)
[55] ネギま!のほほん記 第20巻  エロ有り(千鶴SP)[uyr yama](2010/07/08 18:41)
[56] ネギま!のほほん記 第21巻[uyr yama](2010/07/08 18:42)
[57] ネギま!のほほん記 第22巻  エロ有り(茶々丸)[uyr yama](2010/07/08 18:42)
[58] ネギま!のほほん記 第23巻  エロ有り(夕映&のどかSP)[uyr yama](2010/07/08 18:43)
[59] ネギま!のほほん記 第24巻  エロ有り(夕映&のどかSP)[uyr yama](2010/07/08 18:43)
[60] ネギま!のほほん記 第25巻  エロ有り(夕映&のどかSP)[uyr yama](2010/07/08 18:43)
[61] ネギま!のほほん記 第26巻  エロ有り(アキラ&亜子)[uyr yama](2010/07/08 09:49)
[62] ネギま!のほほん記 第27巻  エロ有り(木乃香SP)[uyr yama](2010/07/08 09:47)
[63] ネギま!のほほん記 第28巻[uyr yama](2010/07/15 00:40)
[64] ネギま!のほほん記 第29巻  エロ有り(夏美SP)[uyr yama](2010/08/02 16:25)
[65] ネギま!のほほん記 第30巻  エロ有り(アキラSP)[uyr yama](2010/08/04 13:50)
[66] ネギま!のほほん記 第31巻  エロ有り(あやかSP)[uyr yama](2010/08/12 17:46)
[67] ネギま!のほほん記 第32巻  エロ有り(美空&ココネSP)[uyr yama](2010/08/27 01:45)
[68] 一周年記念アタック![uyr yama](2010/12/28 00:38)
[69] 俺が為に鐘よ鳴れ 第1巻[uyr yama](2010/09/03 22:09)
[70] 俺が為に鐘よ鳴れ 第2巻[uyr yama](2010/10/14 08:49)
[71] 俺が為に鐘よ鳴れ 第3巻[uyr yama](2010/10/25 22:03)
[72] 俺が為に鐘よ鳴れ 第4巻  エロ有り(TS注意!ネギSP)[uyr yama](2010/11/16 23:12)
[73] 俺が為に鐘よ鳴れ 第5巻  微エロ百合有り(アスナ&木乃香)[uyr yama](2010/11/23 23:15)
[74] 俺が為に鐘よ鳴れ 第6巻[uyr yama](2010/11/29 15:21)
[75] 俺が為に鐘よ鳴れ 第7巻  微エロ有り(亜子)[uyr yama](2010/12/14 09:01)
[76] 俺が為に鐘よ鳴れ 第8巻  エロ有り(亜子SP)[uyr yama](2010/12/25 09:08)
[77] 閑話の1  エロ有り(亜子)[uyr yama](2011/02/07 10:51)
[78] 閑話の2  エロ有り(タマモSP)[uyr yama](2011/02/07 12:11)
[79] 閑話の3  (NTR美砂)[uyr yama](2011/03/08 00:09)
[80] 閑話の4  エロ有り(NTR美砂SP)[uyr yama](2011/03/08 00:14)
[81] 閑話の5  エロ有り(円SP)[uyr yama](2011/05/23 00:10)
[82] 閑話の6  エロ有り(桜子SP)[uyr yama](2011/06/05 09:52)
[83] 鬼鳴きの古都 第一巻  エロ有り(アスナSP)[uyr yama](2011/10/26 14:11)
[84] 鬼鳴きの古都 第二巻  エロ有り[uyr yama](2011/10/26 20:30)
[85] 30万HITスペシャル企画 ヨコなの 第1話[uyr yama](2010/04/26 09:14)
[86] 40万HITスペシャル企画 ヨコなの 第2話[uyr yama](2010/07/08 18:44)
[87] 50万HITスペシャル企画 ヨコなの 第3話 エロ有り(美由希H、なのは自慰)[uyr yama](2010/05/03 00:57)
[88] 60万HITスペシャル企画 ヨコなの 第4話 前編[uyr yama](2010/04/26 09:16)
[89] 60万HITスペシャル企画 ヨコなの 第4話 後編[uyr yama](2010/04/26 09:17)
[90] 70万HITスペシャル企画 ヨコなの 第5話[uyr yama](2010/04/26 09:18)
[91] 80万HITスペシャル企画 ヨコなの 第6話[uyr yama](2010/04/26 09:19)
[92] 90万HITスペシャル企画 ヨコなの 最終話[uyr yama](2010/05/02 00:58)
[93] キーやんのママがみてる&Fate/イリヤとしないTo![uyr yama](2010/05/10 00:21)
[94] 100万HITスペシャル企画[uyr yama](2010/12/07 08:55)
[95] 1111111HIT企画 横島エロ無双SP&無印ネタ語り[uyr yama](2010/11/03 16:12)
[96] 130万HITスペシャル企画  エロ有り(クスハ)[uyr yama](2010/12/12 10:49)
[97] 150万HITスペシャル企画  エロ有り(クスハ)[uyr yama](2010/12/07 09:02)
[99] 180万HITスペシャル企画[uyr yama](2011/04/18 14:11)
[100] 180万HITスペシャル企画 追加パック  エロ有り(黒桜×シャイン)[uyr yama](2011/04/21 20:32)
[101] ロードス島戦記Y 邪神戦争編 序[uyr yama](2011/04/28 17:57)
[102] 没シーン①[uyr yama](2011/08/17 21:54)
[103] せっちゃんといっしょ! ①[uyr yama](2011/09/04 19:20)
[104] せっちゃんといっしょ! ②[uyr yama](2011/09/05 16:14)
[105] せっちゃんといっしょ! ③[uyr yama](2011/09/08 16:37)
[106] せっちゃんといっしょ! ④[uyr yama](2011/09/12 23:03)
[107] 鬼鳴きの古都 第三巻  百合有り(アス×あや)[uyr yama](2012/07/14 00:02)
[108] 簡易データ表[uyr yama](2011/09/21 20:50)
[109] 逆行大作戦!! 第一話  エロ有り(ロリタマ)[uyr yama](2012/04/25 21:10)
[110] 逆行大作戦!! 第二話 [uyr yama](2012/05/02 13:10)
[111] 逆行大作戦!! 第三話  エロ有り(早苗)[uyr yama](2012/05/09 20:38)
[112] 逆行大作戦  第四話  エロ有り(冥子)[uyr yama](2012/05/27 16:33)
[113] 逆行大作戦  第五話  エロ有り(冥子)[uyr yama](2012/07/12 17:32)
[114] 逆行大作戦  第六話  エロ有り(モブ)[uyr yama](2012/08/03 23:45)
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[11660] 序の巻
Name: uyr yama◆157cb198 ID:c975af4b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/08 18:22

     あすなん日記      序の巻
























   x月x日

 きょうタダオに日記をもらった。
 じょーそーきょーいくのために、なんかあったこととかを書いたらいいらしい。
 とりあえずきょうはこれだけ。



















   x月x日

 まほらについた。
 ここでタカミチたちとしばらくオワカレらしい。
 きょうからアスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシアではなく神楽坂明日菜になる。
 しあわせになりな、っていったガトウさんのさいごのことば。
 だいじょうぶだよ、ガトウさん。
 タダオのそばにいれば、かならずしあわせになれるとおもうから。
 




































「忠夫さん、姫様を、よろしくお願いします」


 そう言って頭を下げる僕は、2人との別れに、少し気落ちする。

 彼は僕の憧れの一人だったし、姫様は師匠から託された、大切な娘だったから。

「安心しろ、タカミチ。10年位してほとぼりが冷めたら、一度顔出すからよ。」

「ハハハ……、また、そんな簡単に言っちゃって、良いんですか?」

「まあな。キチンと魔力がありゃー、何とかなるさ」


 彼は僕の背中をバンッと思いっきり叩くと、そのままワシャワシャと僕の頭を撫でた。

 まるで、初めて会った時のように。

「止して下さい、僕はもう大人ですよ。大体、背だって、もう僕の方が高いでしょう?」


 僕は目頭が熱くなるのに耐えながら強がる。
 彼は簡単に言うが、恐らく、もう、会えない。
 彼は帰ってしまうんだから。
 自分の世界、此処とは違う平行世界に。


 横島忠夫。

 僕の目標の一人。師匠やナギとは、また違った意味ではあるけれど。

 何も知らない奴らは、彼の事を『紅き翼の汚点』と、そんな風に呼ぶ。 

 普段が普段だから、まあ、仕方ないのだけれど。
 でも、僕ら孤児達は知っている。彼がどんなに勇敢だったか。
 不利な状況を引っ掻き回し覆す、ワイルドカードなんだと。

 光る盾と、変幻自在の魔力の剣。

 それらを用いて、敵に操られた悪霊や妖魔を退治し解放する、この世界でたった一人のゴーストスイーパー。

 僕らはナギの絶大な力に憧れ、ラカンの無茶苦茶ぶりに畏れ、詠春の剣技に見惚れ……そして、彼の明るさに救われた。



 


 そんな彼がいなくなってしまう。

 師匠が死に、ナギが消え、アルまで行方不明。

 そして今度は……。


「しっかしアレだなー。詠春の裏切り者め、見送りにも来ないったー、どーゆーことじゃーっ!
 そういやあの野郎、俺を裏切って美人のねーちゃんと結婚しやがって!
 今頃、あーんな事や、うっふーんな事をやりまくってんに違いないっ!!」


 くっそーねたましやーー!!と叫びながら、懐から藁人形と五寸釘を取り出し壁に打ち付けた。

 カーン、カーンとしばらく打ち付けていると、「ぎゃー!!」と突然のたうち回る。

「呪詛返しですね。詠春さん、忠夫さん対策はバッチリって言ってましたよ」

「くっそー、あんにゃろめー。いつか必ず、我らみなしご達の憎しみを喰らわせてやるっ!」


 空に向って吠える彼を見て、ハハハと笑いながら、先程までの暗い気持ちが少し吹き飛んだのが良く分かる。

 気を使わせちゃったかな、そう思いながら。



「詠春さんは組織の方の問題で、麻帆良には来れないんですよ。関東と関西は、今はちょっと、アレですからね……」

「ま、あんな顔色悪いおっさんはどうでも良いかっ!

 ん~っ、しかしなんだな。いざ自分の世界に帰るとなると、色々と惜しくなるもんだな。この世界で、まだ見ぬ美人のおね~さんとの逢瀬の機会をのgぶぎゃ。」


 ズザザーと20~30メートルきりもみながら吹き飛び、地面にめり込む。

 それを成したのは、まだ幼い少女。

 無表情のまま拳を突き立て、フン!と鼻をならす。

「無音拳…?」


 呆然としたかの様につぶやくと、

「違うよ?コレは天馬彗星拳。タダオに教わったの。ガトウさんのじゃないよ。」

「いやいや、無音拳でしょ、どうみても」


 そう言うと彼女は「ぶぅー」とふくれ、ぼそっと「天馬彗星拳だもん」と言い走って行ってしまう。


「痛いやないかーーーっ、アスナ! って、あれ? どこ行った、あのお転婆はっ!」

「アスナちゃんをお転婆にしたのは貴方ですよ。っていうか、あの子は貴方以外にはそんな事しません。」

「なんじゃ、まるでワイが悪いみたいやないかーーーーっ!!」


 そのまま、うぉーんと泣き叫ぶ彼を斜め見しながら、みたい、じゃなくて、そう、なんですよ。

 と言いたかったのだが我慢して無理矢理話を戻す。

 何故なら、世界樹から光が溢れ出し、そして彼を中心としてちょうど真逆の位置に、混沌とした渦巻き状の何かが出現し始めていたから。



「そろそろ、行かれるんですね……」

「ん~、そうだな。何十年も故郷の味から遠ざかってたから、あっちに帰ったら郷愁と腹を満たすでーーーーっ!!」

「ははは……」

「元の世界に帰っても、しばらくは金には困らねーだろーし。しばらくは諸国漫遊美味いもの巡りじゃ」


 彼はそこまで言うと、こちらを見てニカッと僕等の好きな笑みを見せる。


「あ、俺らの戸籍、キチンとしとけよ。ここまでは結構、無理矢理きたかんなー。これからの事考えると、やっぱ戸籍は必要不可欠だかんな」

「あ、あっちに帰るんですから、そんな物はいらないでしょう?」

「ばーか、言ったろうが。ほとぼり冷めたら、こっちに顔出すって」


 僕は、目から溢れ出して来る液体をそのままに、彼に分かりましたと告げると、思いっきり腕で目を擦る。

 そのまましゃくり上げるのを堪えながら彼の言葉に耳を傾けた。

「お前はな、オレやナギと違って特殊な才能なんて持ち合わせていねー。クルトの様に小器用でもねー。
 でもな、お前は努力の才能がある。それは俺やナギには無いもんだ。

 強くなれっ! てめーには、その義務がある。ガトウから学んだ事を、忘れんなよ……」

「は、はいっ!!」


 僕は大きく返事をした。

 必ず、絶対に貴方達に追いついてみせます。

 そう心に誓って。




「おう。おーいアースナちゃーん。そろそろ行くぞー」


 はーい、と遠くから走ってくる。

「何か面白いもんでもあったか?」


 大きく手を広げ、「あのおっきい木の所に行ってた。あの木、なんかピカピカしてて、あったかい」と言いながら彼の胸に飛び込む。

 彼はそのまま彼女を抱き上げると、

「んじゃ行こっか。俺の生まれ故郷。」

「うんっ」額を横島の胸にこすりつけながら頷く。


 そんな彼らを見ながら、彼、タカミチ・T・高畑は思うのだ。

 申し訳ありません、師匠。

 師匠の最後の言葉、姫様の記憶を消す。それを守る事は出来ません。

 でも、彼なら大丈夫です。

 きっとあの子を、僕らが守れなかった女の子を、幸せいっぱいにしてくれます。




 彼は姫様を抱きかかえたまま、「そいやっ」掛け声を上げて飛び上がると、そのまま黒い渦の中心へと飛んでいく。

「じゃーなっ、タカミチっ! 今度合う時までに、俺達なんかより強くなってなきゃ、しょーちしねーかんなっ!!」

「む、むちゃ、い、いわ、ないで、くださ、いよ……」


 ボロボロと涙を流しながら、必死で声を絞り出す。

 彼はそんな僕を見ると、苦笑しながら大きく手を振る。

 それに合わせて僕も、そして姫様も手を振る。

 そして、彼が渦の中心部に到達した瞬間、渦が四散した。







 シーンと静まり返る。もう、あの人は、この世界のどこにもいないんだ。

 呆然と、いつまでも彼が消えた場所を見続ける。






「フン、とんでもないヤツだな。ナギが自慢してたワイルドカード。帰してしまったのは惜しかったかも、な……」

「エヴァ……」

「いつまで泣いている。強く、誰よりも強くなるんじゃないのか?」


 エヴァの言葉に、大きく頷く。

「ならば、さっさと動け。お前の為に、別荘を用意しよう。全ては咸卦法を習得してからだ」

「ああ、ありがとう、エヴァ」

「フ、フンッ!」


 エヴァは顔を真っ赤に染めて、そっぽ向く。

 そんな彼女を見て、僕は少し笑ってしまう。

「な、何を笑っているっ! 判っているのか? お前がこれから歩もうとしている道が、どれだけ険しいのかを」

「ああ、判っているさ」

「フッ。貴様が咸卦法を習得した暁には、この私、自らの手で鍛え上げてやる。誰にも負けぬ、そんな強さを貴様にくれてやろう。良い暇つぶしになるしな。
 それにしてもなんだ……。ヨコシマの力ってのは、一体なんだったんだ? 空間を割って平行世界移動など、正直言って、魔法世界の馬鹿共が聞いたら面倒事が起きる程だぞ」

「フォッフォッ、それはワシも気になるのう」


 この麻帆良学園の理事長にして、学園最強の魔法使い。そして関東魔法協会の理事でもある近衛近右衛門。

 先程まではエヴァと一緒に、忠夫さんの張った結界の外側で待機していたんだけど。

 グルッと周囲を見てみると、ザワザワと驚愕の声を上げている魔法関係者達。

 きっと、自分達が蔑み、見下していた彼の圧倒的に訳が判らない力に、びびってるんだろうね。

「さあ、僕にはなんとも。ただ、一度聞いた事があります。彼の力は創造力と、何より『煩悩』だって」


 そう言って、僕は大きく笑い声を上げた。

 同じように楽しそうに笑う学園長と、頬を引き攣らせるエヴァ。

 そして、煩悩と聞いて吐き捨てる感を態度に表す魔法関係者達。

 ま、彼は立派な魔法使いには、絶対になれない人だからね。




 
「さあ、エヴァ、案内してくれ。僕には一分一秒が大切なんだ。僕の様な凡人は、人の10倍、いや、百倍も千倍も努力しないとね」



 僕が闇の福音に頼るのが面白くないんだろう。

 ざわざわとした不快な視線を向けてくる。

 この様子じゃ、例え赤い翼の関係者でも、立派な魔法使いには認定されなくなっちゃうな。

 もっとも、元来魔法の詠唱が出来ない僕だ。どの道無理だったろうさ。


 慌てて僕を先導して歩くエヴァの後ろを歩きながら、沢山あった肩の荷が無くなった事に気づく。

 これからする事は単純だ。

 まずは強くなる。彼らにだって負けないほどに。

 そして、沢山の人達を救う力となるんだ。


「ワシもそろそろ、ここの大掃除をせねばならん時期じゃのう」


 学園長が、先程からざわめいている魔法関係者達に、冷たい目線を向ける。

「その時は、よろしく頼むぞい」


 ポンッと僕の肩を叩きながらそう言い残すと、ささっと何処かへ行ってしまった。

 学園長の言葉など気にも止めず、僕は彼が消えた空間に目をやる。

 そして、心に誓う。



 今度あなたと会う時には、胸を張れる自分で有れる様に、と……。












































 ワタシとタダオが、何処までも暗い空間を抜けると、そこは……









 普通の街並みだった。



「ね、タダオ。ここがタダオの生まれたトコなの?」

「生まれたトコってか、生まれた世界やな。たぶん……」


 タダオは標識を見て現在位置を確かめると、ワタシを抱っこしたまま歩き出す。

「ね、どこに行くの?」

「事務所。まだ在るといいんだけどなぁ」



 



 ガタンゴトンと電車に揺られたり、途中で自転車を買って、すごいはやさで走りぬけたりしたり。

 いろいろあって、ついについた。

 そこそこりっぱなたてもの。





「おーい、人口幽霊一号やーい。俺の事、覚えてっか~」

「よ、横島さん!? ちょ、ちょっとお待ちをっ! 今すぐオーナーを呼んできますっ!!」

 どこからともなく声が聞こえる。

 タダオが言ってた生きてるたてものさん。ふしぎ……。

 タダオは落ち着かない様子で、ソワソワ、ドキドキ。

「どうしたの?」

「あ、ああ、なんてーか、その……」


 そして、またソワソワ、ドキドキ。

 だいじょうぶかなぁ?



































 ドタドタと轟音を立てながら、建物から出てくる一人の女性。

 既に60近い年であろうに、未だ若々しい彼女は、物凄い形相で彼を睨みつけた。

「ヒィッ、すんません、美神さーんっ!」


 そのまま土下座しそうな勢いで謝る彼。

 そんな彼を苦笑しながら見つめると、彼女は一転して懐かしそうな表情を浮かべる。


 そして……、


「おかえりなさい、横島クン」



 この世界から吹き飛ばされて40年弱。 遂に自分が居るべきはず『だった』場所に帰ってきた横島。

 止まっていた時が、再び流れ始める。

 残酷にも、過ぎ去った時間はそのままに。























  x月x日

 ここは20XX年。
 もといたばしょよりも、じかんがすすんでいる。

 たくさんのヒトとあった。
 みんなタダオをいっぱいたたく。
 でもね、みんなうれしそう。
 
 タダオもいっぱいわらってた。
 
 きょうから、ここが、ワタシのすむせかい。








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