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No.7038の一覧
[0] リリカル in wonder Ⅱ【完結】[角煮](2010/05/11 14:32)
[1] カウントダウン5[角煮](2009/03/07 02:30)
[2] カウントダウン4[角煮](2009/03/12 10:38)
[3] カウントダウン3 前編[角煮](2009/03/30 21:47)
[4] カウントダウン3 後編[角煮](2009/03/30 21:49)
[5] カウントダウン2[角煮](2009/03/30 21:46)
[6] カウントダウン1[角煮](2009/04/25 13:06)
[7] カウントダウン0 前編[角煮](2009/05/06 20:21)
[8] カウントダウン0 後編[角煮](2009/05/06 20:23)
[9] sts 一話[角煮](2009/05/06 20:33)
[10] sts 二話[角煮](2009/05/20 12:15)
[11] 閑話sts[角煮](2009/05/20 12:15)
[12] sts 三話[角煮](2009/08/05 20:29)
[13] sts 四話[角煮](2009/08/05 20:30)
[14] sts 五話[角煮](2009/08/05 20:27)
[15] sts 六話[角煮](2009/08/09 11:48)
[16] sts 七話[角煮](2009/08/28 21:59)
[17] sts 八話[角煮](2009/08/20 21:57)
[18] sts 九話 上[角煮](2009/08/28 21:57)
[19] sts 九話 下[角煮](2009/09/09 22:36)
[20] 閑話sts 2[角煮](2009/09/09 22:37)
[21] sts 十話 上[角煮](2009/09/15 22:59)
[22] sts 十話 下[角煮](2009/09/25 02:59)
[23] sts 十一話[角煮](2009/09/25 03:00)
[24] sts 十二話[角煮](2009/09/29 23:10)
[25] sts 十三話[角煮](2009/10/17 01:52)
[26] sts 十四話[角煮](2009/10/17 01:52)
[27] sts 十五話 上[角煮](2009/10/17 01:51)
[28] sts 十五話 中[角煮](2009/10/21 04:15)
[29] sts 十五話 下[角煮](2009/11/02 03:53)
[30] sts 十六話 上[角煮](2009/11/10 13:43)
[31] sts 十六話 中[角煮](2009/11/19 23:28)
[32] sts 十六話 下[角煮](2009/11/27 22:58)
[33] ENDフラグ はやて[角煮](2009/12/01 23:24)
[34] ENDフラグ チンク[角煮](2009/12/15 00:21)
[35] ENDフラグ なのは[角煮](2010/01/15 15:13)
[36] ENDフラグ フェイト[角煮](2010/01/15 15:13)
[37] sts 十七話[角煮](2010/01/08 19:40)
[38] sts 十八話[角煮](2010/01/15 15:14)
[39] sts 十九話[角煮](2010/01/21 20:26)
[40] 幕間[角煮](2010/02/03 21:17)
[41] sts 二十話 加筆 修正[角煮](2010/02/03 21:18)
[42] sts 二十一話[角煮](2010/03/10 23:25)
[43] sts 二十二話[角煮](2010/03/11 19:00)
[44] sts 二十三話[角煮](2010/03/12 17:41)
[45] sts 二十四話[角煮](2010/03/13 18:23)
[46] エピローグ[角煮](2010/03/14 20:37)
[47] 後日談1 はやて[角煮](2010/03/18 20:44)
[48] はやてEND[角煮](2010/04/18 01:40)
[49] 後日談1 フェイト[角煮](2010/03/26 23:14)
[50] 後日談2 フェイト[角煮](2010/03/26 23:14)
[51] フェイトEND[角煮](2010/03/26 23:15)
[53] 後日談1 なのは[角煮](2010/04/19 01:27)
[54] 後日談2 なのは[角煮](2010/04/18 22:42)
[55] なのはEND?[角煮](2010/04/23 23:33)
[56] 後日談1 チンク[角煮](2010/04/23 23:33)
[57] 後日談2 チンク[角煮](2010/04/23 23:34)
[58] 後日談3 チンク[角煮](2010/04/23 23:34)
[59] チンクEND[角煮](2010/04/23 23:35)
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[7038] sts 五話
Name: 角煮◆904d8c10 ID:d2eca28f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/08/05 20:27

クラナガンにある美術館では現在、一つの特集が組まれている。
聖王教会の協力の下に企画された古代ベルカ展。

結社によって根付きつつある、ロストロギアがただの危険物だという間違った認識を少しでも緩和できたら。
そして、今のミッドチルダの人たちにベルカの文化に少しでも触れてもらえたら。
この美術展は、やや物騒な空気が流れているミッドチルダでは明るい類のニュースとなるだろう。

――いや、なるはずだった、というべきか。

「……ああ、くそ」

フェレットモードに変身したユーノは、物陰に隠れつつ悪態を吐いた。
右前足には浅くない傷がある。折れているだろう、と頭の片隅で考えながら、ユーノは耳を立てて神経を研ぎ澄ませる。

ユーノは最近、管理局からの依頼を受けてスクライア一族を挙げて無限書庫での仕事を行っていた。
その彼がどうして美術展の会場にいるのかといえば、深い理由があるわけではなく、考古学会の一員として開会式へ招待されたというだけだ。

……それがこんなことになるなんてなぁ。

行き場のない苛立ちを胸に抱きながら、ユーノはことの始まりを思い出す。
それは、つい二十分ほど前のことだ。

美術展の準備が終わり、学会や聖王教会の知人たちと雑談をしていると一人の女が会場へと現れた。
彼女に気付いた内の一人が、一般の入場は明日からだと注意しようと女に近付き――そもそも彼は気付くべきだった。警備員が止めれば、こんなところに人が入ってこれるわけがないのだ――質量兵器らしきもので攻撃され、倒れた。

そこから先は詳しく説明することもないだろう。
ブランクがあるとはいえ美術展の関係者の中で唯一戦闘経験のあるユーノが囮となり、知人たちを逃がしたのだ。

そこまでは良かった。しかし、そこからがいけない。

侵入者の目的はなんなのだろうか。防御魔法をいつでも発動できるように準備しながら、ユーノはマルチタスクで考える。
美術展で公開されているロストロギア?
そんなことはないだろう。ロストロギアといっても、この美術展に展示されているものの中に危険物といえるものはない。
そんなものを展示するなんて馬鹿げたことをするわけがない。

もしかしたら自分たちが気付いていないだけなのかもしれないが、だとしたって犯人が美術展の関係者を襲う意味が分からない。

……なら、最近流行りのテロかな。

嫌な流行だよ、と毒づいて、ユーノは溜息を吐く。

あの女の考えていることが分かれば、どうにか……管理局の陸士部隊が到着するまで時間を稼ぐことができるかもしれないけれど。

「――っ!?」

機械が蠢くような、微細な金きり音。
ユーノが飛び退ると同時に、彼のいた床が吹き飛んだ。

魔力による攻撃ではない。質量兵器によってもたらされた破壊だ。
一撃だけならユーノにも止める自信はあるが、連射されたらたまったものではない。

足を止めず、前足を庇いながら移動を続け、ユーノは女へと視線を向けた。

黄色のボディースーツに、緑の髪。バイザーで目元を隠しているため、表情は分からない。
女の腕を目にして、ユーのはわずかに息を呑んだ。

変形している、のだろうか。女の腕は、肘から先が銃器へと姿を変えていた。

……新手の戦闘機人? だとしたら、相手が悪すぎる。

真っ向からやり合える相手じゃあない。ここへ到着する陸士部隊だって、半端な錬度じゃ返り討ちにあるのがオチなんじゃないか。
なら、呼ぶのは六課か――

「うあ……っ!」

マズルフラッシュ。一拍置いて、弾丸がユーノへと吐き出される。
咄嗟に展開したラウンドシールドで防ぐが、勢いを殺せず、ユーノは床に転がった。

カーペットの敷かれた展示場の床に、点々と血が飛び散る。
早く立ち上がらないと。ユーノは四肢に力を込めるが、前足の痛みと衝撃で息を整えるのがやっとだった。

『あなたは、知っているはずです』

声がかけられ、ユーノは頭を持ち上げた。
バイザーに点った光は、まっすぐに自分へと向けられている。
妙にひび割れた、出来の悪いスピーカーから放たれたような音は女の声だったのだろうか。

『イクスはどこにありますか?』

「……イクス?」

イクス――それを聞いて薄ぼんやりと浮かんできたのは、戦闘能力を持たない知人たちの避難を任せた、知人のエクスだった。
語感は似ているが、違うだろう。

「悪いけど、分からないね」

『いいえ、知っているはずです』

いいながら、女は腕を持ち上げて――
ユーノは再び銃弾が吐き出されるよりも早くフラッシュムーヴを発動させ、なんとか生きながらえた。

……ものを訪ねておいて、殺そうとするか!?

あまりにも無茶苦茶な、考えなしともいえる女の行動に怒鳴りつけたい衝動に駆られる。
それを必死にこらえながら、ユーノは魔法を構築しつつ女と対峙した。

転送魔法で逃げるという手もある。だが、それは一つの選択肢だ。
この女を捕らえるつもりなど、ユーノにはない。正面から戦うつもりもない。

ただ、この手の厄介ごとはほおって置くと面倒になる。
今までの人生経験からそれを知っているユーノは出来る限りの情報を集めてからここから逃げようと考えていた。

……それに苦労性の弟を少し楽にできるかもしれないしね。

『イクスの場所を教えてください』

「待ってほしい。君のいうイクスがなんなのか僕には分からないけれど、情報をくれれば何か近いものを思い出すかもしれない。
 何か――」

『その必要はありません。イクスの場所を、あなたは知っているはずです』

……なんだこれは。
粗悪品のインテリジェントデバイスと話しているような気分になってくる。
こちらの話を理解はしているようだが、会話をしようとする意思を感じない。

話の通じる相手と思うことがそもそもの間違いなのだろうか。

なら、

「……君の名前は?」

駄目もとでユーノは言葉を放った。

『……マリアージュ』

マリアージュ。何度か見たことがある単語だ。
古代ベルカの言葉だったはず。意味は時期によって変わるので、ピンとくるものはないが。

他に得られる情報は何があるだろうか。この言葉が通じているのかも怪しい女は、どんな単語に反応するのだろうか。

そう考えていると、

『ユーノ!』

不意に届いた念話に、肩の力が抜けた。

『フェイト?』

『うん、大丈夫!? もうすぐそこまで――十秒で辿り着くから!』

焦りに焦ったフェイトの念話に、場違いな苦笑を漏らしてしまう。
残り十秒。それぐらいならば、簡単に逃げ切れるだろう。




















リリカル in wonder

















六課の医務室で、治療の終わったユーノはベッドに腰掛けている。
俺はユーノから聞いた情報を頭の中で整理しながら、ううん、と唸り声を上げる。

「――大体そんなところかな」

「ん、分かった。悪いなユーノ、余計なことをさせて」

「良いさ」

疲れの滲む笑みを浮かべたユーノを視界の端に入れながら、腕を組みつつ思考する。
美術館であったテロ。その実行犯である女は、フェイトと交戦を始めてから数分後、自爆した。

……そう、自爆だ。ぞっとしない。どこぞの紛争地域でもあるまいに。
フェイトは爆発に巻き込まれ、怪我こそないものの気絶。今はカーテンで仕切られたベッドで眠っている。

ユーノの証言とバルディッシュに記録された映像データを見てみるが、イマイチぴんとこない。

見たことあるような、ないような。俺はこいつを知っていたのか?
……まあいい。知っていたのだとしても、この女はもう死んでいる。
女の素性ももちろん重要だが、今はこれと結社の関連性だ。

美術的価値しかないといっても過言ではないロストロギアを奪取……しにきたわけではない。
イクス、という物、あるいは者を探していた……のか?
……分からない。犯人の行動に一貫性がなさすぎて、何をしたかったのかがさっぱりだ。

「……ユーノ、この女は本当にイクスっていっていたのか? エクスじゃなくて?」

「うん。イクス、だったよ」

「そうか」

……エクスだったらまだ分かる。彼女の持っている古代ベルカに関する記憶には価値があるからだ。
ただ、それが違うとなると……イクスとは何を指しているのやら。

ったく、連続殺人事件の次は自爆テロか。
忙しいことこの上ない。

ともかく、フィールドワークは六課だとはやての役割だ。
ユーノから聞いた情報を彼女に話したら……そうだな。密輸ロストロギアと関わりがあるかもしれないし、ゲンヤさんに話をしておこう。

溜息一つ。

「……それにしても、タイミングが良いのか悪いのか。無限書庫へ近い内に顔を出そうとしてたから、手間が省けたよ。
 そっちの進行状況はどうだ?」

「一応、毎日日報は上げてるけど……まぁ、そうだね。ようやくレリック、聖王のゆりかご関連の資料の絞り込みの目途が立ったところ。
 ここから先は少しずつ解析作業に移行するよ」

「順調なようで何より――まぁ、そこまでは日報に目を通してるから知ってるさ。
 どうだ? 無限書庫での働き心地は」

そう聞くと、ユーノは苦笑した。

「一族総出での仕事だから、雰囲気は悪くないよ。のびのび仕事をさせてもらっている。アルザスの人たちも手伝ってくれてるしね。
 ……ただ、こういう機会でもない限りあんまり近付きたくないなぁ、あそこ」

「なんでまた」

「整理した端から資料が詰まれてゆくんだよ? 用件が絞られている限定的な依頼だからいいものの、あそこを整理しろーなんていわれたらどれだけの時間がかかるか。
 十年は投げ捨てる覚悟で挑まないと駄目なんじゃないかな?
 まぁ、珍しい資料が山積みだから考古学者としては興味あるけどさ」

……その十年を投げ捨てる覚悟で挑んだのが原作のユーノなんだが、何もいうまい。
本来ならばともかく、今のユーノは原作以上に考古学者として、そしてスクライアの人間として人生を謳歌している。
だからだろう。きっとユーノには無限書庫で働くという選択肢がないのだ。

「それにしても」

「ん?」

「久し振りに身体を動かしたから、ちょっと筋肉痛が……まだ動けるつもりだったけど、駄目だね。
 フィールドワークと戦闘は別物だって痛感するよ。もう戦闘からは引退かな」

「そもそもPT事件、闇の書事件のときだって戦闘要員でもなんでもなかったんだから、当たり前っちゃあ当たり前なんだけどな」

「いえてる。思い出してみれば、あの頃は随分と無茶したもんだよ。
 まぁ、どこかの誰かさんは今でも無茶を続けているみたいだけど」

「お前から見て無茶でも、俺にとっては当たり前なんだって」

「どうだか。……そうそう、例の資料だけどさ」

そこまでいって、ユーノは念話に切り替える。

『レリックウェポンに関する記述と、技術関係の資料。見付けることができた』

『早いな』

『当たり前だよ。エスティ、自覚あるの? 君の身体のことなんだからね?』

どこか怒ったような視線を向けられる。
管理局からの依頼は別として、ユーノはレリックウェポン――人造魔導師の資料を探していた。
別に俺が頼んだことじゃないのだが……。

『少しはエスティの治療に役立てればいいんだけどね。いかんせん古すぎて、何が書いてあるのか読み取るだけでも精一杯だ』

『あんまり根を詰めなくても良いんだからな』

『はいはい』

軽く流される。もう今更ともいえるやりとりか。
無論、ありがたくはある。ガタのき始めているこの身体が持ち直すのなら、その分戦うことができる。
……ユーノが俺を戦わせるつもりで資料を探しているつもりじゃないってのは、充分に分かっているさ。

けれど、俺は――

「フェイトおおおおおお!」

と、唐突に静かな雰囲気をぶち壊す存在が医務室に突撃してきた。
医師の皆様――特に先端技術医療センターから派遣された皆様――からの白い目を無視しつつ入り口を見てみれば、そこには子供フォームのアルフが。
……そして首根っこを掴まれて目を回しているキャロと、服の裾に噛み付いているフリード。

「ユーノ! フェイトが怪我したって!?」

「や、怪我はしてないから大丈夫だって。気絶しただけで――」

「フェイト、どこだい……そこか!」

ひくひくと鼻を鳴らして、アルフはカーテンで仕切られたベッドに突撃した。
微妙に苦い顔をしていたのは、薬用アルコールの匂いがキツかったからか。

「んん……あれ? アルフだ。おはよう」

「フェイト! 大丈夫かい、フェイト!?」

「目が回りましたー……」

「キュクルー」

「ああもうほら、しっかりしてキャロ。フリードも、いつまでも噛み付いていないように」

……慌ただしい。非常に慌ただしい。
けれど、これがいつもの俺たちな気がする。
血の繋がりなんて俺とフェイトにしかない兄妹の揃った光景。
そんなに懐かしいわけでもないのに、何か胸に込み上げてくるものがあった。




























「ありがとうございました!」

「うん。それじゃあ今日の訓練は終わり。しっかり休んで、明日も頑張ろう」

「はい!」

既に夕陽が沈んで、夕食時すら過ぎて、深夜ともいえる時間。
夜間訓練が終了すると、新人フォワードたちは一斉に地面にへたり込んだ。

疲れた、と口々にいうこの子たちの姿はいつ見ても微笑ましい。
全力全開で訓練に当たり、近い内にくる初陣の準備に、精一杯力を注いでいる。

どうかこの努力が報われますように――いつものように、私は胸の中で呟いた。
へとへとの皆は、重い足取りで寮へと向かう。
その際、振り返って私に声をかけてきた子がいた。

「なのはさんは、まだ帰らないんですか?」

声をかけてきたのはスバルだ。
顔には疲労がこびりついているけれど、瞳には気力が溢れている。
身体が普通の人と違うっていうのもあるだろうけれど、それでも芯の強さは後天的なものか。
彼女は興味深々といった様子で、首を傾げていた。

「うん。少しだけクールダウンしてから休むつもり」

「すごい体力……なのはさんはやっぱり違うなぁ。
 それじゃあ、お休みなさい! また明日、よろしくお願いします!」

小さく手を振ってスバルを送り出すと、大きく深呼吸をする。
さて……と。
あまり根を詰めるつもりはないけれど、今日も訓練、始めようか。

けど、その前に。

「エスティマくん、いるよね?」

「バレてたか」

隠れる必要なんてないのに。思わず呆れ混じりの笑みを浮かべてしまう。
仮想訓練場の生み出されたビル群。その影からトレーニングウェア姿のエスティマくんが出てくる。
一度は自室に戻ったのかな。

エスティマくんは新人たちの訓練が終わると、こうして訓練場に顔を出す。
お医者様からはあまり激しい運動をしないように、って言われているはずなのに。
……けど、エスティマくんの気持ちも分かるから、私は彼の訓練を黙認している。

戦うことで身体が蝕まれるのは当たり前だ。けれどそれを言い訳にして腕を鈍らせるのは――そう、怖い。
きっとそれは、私みたいな戦うことしかできない人間が……エスティマくんと近いからこそ、分かること。

彼と私は根っこにあるものが違う。それは随分と前に気付いたことだけど、表層はすごく似ていると思う。
据えているものが違うから行動も違う。けれど、守るために戦うというのは一緒なはずなんだ。
……そう。守るために力を振るう。もし自分の力が及ばないことがあれば、それは大事なものを守れないことと同じ。
だから彼は万全の状態を維持したいのだと思う。

身体を酷使するのは良くないことだと理解しているけれど、そうまでしてやらなきゃいけないことがあるなら仕方ないんじゃないか。
私はそう考えている。

ただ、納得している反面どうしても彼にいい顔をできない自分がいる。
それは、はやてちゃんのこと。
……はやてちゃんがどれだけ心配しているのか知っているくせに。
もしエスティマくんの身体に何かあったらはやてちゃんがどれだけ悲しむか、知っているくせに。

この頑固者は、少しぐらい妥協というものを覚えても良いんじゃないかな。

「まったく、こんな時間まで訓練することもないだろうに。随分待たされたぞ」

「うん。新人たちも体力ついてきたから、この時間まで訓練しても次の日に響かない程度にはなったかなって」

「そういうことをいってるんじゃなくて……まぁ良いけど」

ガシガシと頭をかいて、エスティマくんは腰に差していたカスタムライトにSeven Starsを挿入する。
バリアジャケットは未展開。訓練場でダミーの攻撃を受けても衝撃があるだけだから、トレーニングウェアのままで良いのだ。

「じゃあ三十分ぐらい借りるぞ。
 Seven Stars、ガジェットドローンⅡ型を二十機、難易度最高」

『はい、旦那様。状況はどうしますか?』

「んー……今日は防衛戦の気分だ」

『了解しました。指定エリアを突破されたら敗北とします』

「あ、エスティマくん」

「ん?」

「私も一緒にやっても良い?」

「……そうだな。たまには良いか」

行くぞ、と合図のように声を上げて飛行魔法を発動した彼に続いて、私も空に。
バリアジャケット・アグレッサーモード、起動。

私と一緒なせいなのか、さっき設定した数よりもガジェットは多い。
四十はいるだろうか。
けれど、

「……お前と一緒じゃ訓練にならないんだよなぁ」

「む、どういう意味?」

「この程度、楽勝ってことだよ。……援護よろしく! いくぞ、Seven Stars!」

『はい』

カスタムライトを一閃。ガンランスの刃に魔力刃を形成して、エスティマくんがガジェットの群れに突撃する。
雨のように降り注ぐレーザー。けれど、繊細な、それでいて大胆な機動でそれらを避け、近くにいたガジェットに魔力刃を突き込んだ。
次いで、カートリッジロード。ガンランスの砲口から零距離でのショートバスターが吐き出されて、ダミーが爆散。
その煙に隠れ、タイミングをずらして再度ガジェットへと。

……見てないで私もやらないとね。

「レイジングハート!」

『all right』

クロスファイアとアクセルシューターを同時起動。
クロスファイアをトラップとして設置、シューターをエスティマくんの援護へと。

次々と減ってゆくダミー。最後に一体が残ると、エスティマくんから念話が飛んできた。

『最後は派手にやるか!』

『オッケー!』

明らかにオーバーキルといえる誘導弾をばらまいて、ダミーの足を止める。
動きの鈍ったダミーをエスティマくんが吹き飛ばし、その弾け飛んだ方向へと先回り。

私はレイジングハートをバスターモードにし、カートリッジのマガジンを掴んでフラッシュムーヴを発動。
挟み込むようにラピッドファイアを二人で連射し――普通のガジェットならばこの時点で粉微塵だろうけれど――ダミーを挟んで衝突。

ガンランスの刃が、バスターモードの穂先が、ダミーへと突き刺さり、

「ディバイン――!」「ディバイン――!」

砲撃魔法で消し飛ばす。
サンライトイエローと桜色が夜空に弾け、爆炎がそれを彩った。

射線が交差しないように細心の注意を払った、私とエスティマくんのコンビネーション。
……まぁ、エスティマくんと肩を並べて戦ったことは少ないから、実戦で使ったことはないんだけどね。

全機撃墜。
二人で地上に降りると、エスティマくんは汗に濡れた前髪をかきあげ、笑った。

「だから訓練にならないっていったのになぁ」

「あはは、そうだね」

「ま、久し振りに馬鹿できたから楽しかったよ」

馬鹿、ねぇ。
この程度のことで息抜きになるのなら、たまには付き合ってあげてもいいかもしれない。

息を整えて、額の汗を拭うと、私は少しだけ疑問に思ったことを口にする。

「ねぇ、エスティマくん」

「ん?」

「三課で戦っていたときも、今みたいに誰かとコンビネーションを組んだりしてたの?」

「ああ。ザフィーラが一番多かったけど……次ははやてかな」

「あれ、そうなんだ」

少し意外。はやてちゃんとコンビネーションを組むにしても、距離が離れてて難しいというか、無理な気がするけれど。
そんな私の疑問に気付いたのか、

「ああ、はやては個人戦闘もそこそここなすぞ。んー、空戦AAぐらいには。
 やっぱり本領は超長距離からの広域魔法だけど」

「そうなの?」

「ああ。本来の――っと、ええと……まぁ、守護騎士四人の術式を起動してたら重かったろうけど、今はヴィータとザフィーラだけだからさ」

「微妙に答えになっていない答えな気がするけれど……」

「……まぁ、伊達に戦闘機人を相手に戦い抜いてないってことだよ。
 防戦に専念すれば、はやてだって――」

「確かに戦えるけど、私はあんまり前に出たくないなぁ」

エスティマくんと一緒に声の方へと振り向く。
そこには、手にタオルと飲み物をもったはやてちゃんがいた。

こんばんわー、と訛りのある挨拶をして、はやてちゃんは私たちへと近付いてくる。
それを目にして、エスティマくんが身体を硬くしたのを私は見逃さない。

……まったくもう。

「お疲れ様、なのはちゃん。はい、これ。
 エスティマくんも」

「ん、ああ。ありがとう」

いきなり挙動不審というか、情けなくなるエスティマくん。
微妙に目を逸らしながらタオルを受け取る姿は、なんというか、夜更かしを親に見付かった子供みたいだ。

「なのはちゃん、こんな夜遅くまでエスティマくんに付き合わせてごめんなー」

「えと……」

確か、はやてちゃんはエスティマくんが夜な夜な訓練しているのを善く思っていなかったはずだけど。
それを欠片も感じさせないのは、すごいというか怖いというか。

『もう、ええんよ』

「え?」

「どうした?」

「な、なんでもないから」

いきなり届いた念話に、思わず声を上げてしまった。

『もういいって?』

『んー、止めても無駄なら仕方ないなぁって。
 ま、今に始まったことやないからな』

……うう、なんだか心が痛い。
女の子にここまでさせるとか、エスティマくん、本当にそれってどうなの?

と、考える私やはやてちゃんを余所に、エスティマくんは呑気に飲み物を喉へ流し込んでいた。
はやてちゃんには悪いけど、どうしてなんだろうなぁ。

今度じっくり話を聞こう。
……それとなく惚気られる可能性が大だけどっ。























小劇場 割と平和な六課 3

結社対策部隊、通称、六課。
この部隊に集められた者たちは、いずれもライトスタッフである。
フォワード陣は勿論のこと、バックヤードスタッフも。
そして嘱託魔導師も……なのだが……。

「魔力光が付いたり消えたりしている……。
 あはは、大きい……SLBかなぁ。
 いや、違う、違うなぁ。SLBはもっと、バァーって出るもんね」

「ふぇ、フェイト、どうしたんだい?」

「また兄さんがなのはとばかりコンビネーションを――!」

「お、落ち着いてよフェイト――!」

と、騒ぐ怪我人を一歩下がってみている医療スタッフ。

「……おい、あんまり騒ぐと班長がうるさいぞ。
 誰か注意してこい」

「けど近付きづらくてなぁ……美人さんすぎるってのも考えもんだ」

「よし、シャマル。こういうのは下っ端の仕事だ」

「ふぇ!? というか、私って下っ端だったんですか!?」



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