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No.7038の一覧
[0] リリカル in wonder Ⅱ【完結】[角煮](2010/05/11 14:32)
[1] カウントダウン5[角煮](2009/03/07 02:30)
[2] カウントダウン4[角煮](2009/03/12 10:38)
[3] カウントダウン3 前編[角煮](2009/03/30 21:47)
[4] カウントダウン3 後編[角煮](2009/03/30 21:49)
[5] カウントダウン2[角煮](2009/03/30 21:46)
[6] カウントダウン1[角煮](2009/04/25 13:06)
[7] カウントダウン0 前編[角煮](2009/05/06 20:21)
[8] カウントダウン0 後編[角煮](2009/05/06 20:23)
[9] sts 一話[角煮](2009/05/06 20:33)
[10] sts 二話[角煮](2009/05/20 12:15)
[11] 閑話sts[角煮](2009/05/20 12:15)
[12] sts 三話[角煮](2009/08/05 20:29)
[13] sts 四話[角煮](2009/08/05 20:30)
[14] sts 五話[角煮](2009/08/05 20:27)
[15] sts 六話[角煮](2009/08/09 11:48)
[16] sts 七話[角煮](2009/08/28 21:59)
[17] sts 八話[角煮](2009/08/20 21:57)
[18] sts 九話 上[角煮](2009/08/28 21:57)
[19] sts 九話 下[角煮](2009/09/09 22:36)
[20] 閑話sts 2[角煮](2009/09/09 22:37)
[21] sts 十話 上[角煮](2009/09/15 22:59)
[22] sts 十話 下[角煮](2009/09/25 02:59)
[23] sts 十一話[角煮](2009/09/25 03:00)
[24] sts 十二話[角煮](2009/09/29 23:10)
[25] sts 十三話[角煮](2009/10/17 01:52)
[26] sts 十四話[角煮](2009/10/17 01:52)
[27] sts 十五話 上[角煮](2009/10/17 01:51)
[28] sts 十五話 中[角煮](2009/10/21 04:15)
[29] sts 十五話 下[角煮](2009/11/02 03:53)
[30] sts 十六話 上[角煮](2009/11/10 13:43)
[31] sts 十六話 中[角煮](2009/11/19 23:28)
[32] sts 十六話 下[角煮](2009/11/27 22:58)
[33] ENDフラグ はやて[角煮](2009/12/01 23:24)
[34] ENDフラグ チンク[角煮](2009/12/15 00:21)
[35] ENDフラグ なのは[角煮](2010/01/15 15:13)
[36] ENDフラグ フェイト[角煮](2010/01/15 15:13)
[37] sts 十七話[角煮](2010/01/08 19:40)
[38] sts 十八話[角煮](2010/01/15 15:14)
[39] sts 十九話[角煮](2010/01/21 20:26)
[40] 幕間[角煮](2010/02/03 21:17)
[41] sts 二十話 加筆 修正[角煮](2010/02/03 21:18)
[42] sts 二十一話[角煮](2010/03/10 23:25)
[43] sts 二十二話[角煮](2010/03/11 19:00)
[44] sts 二十三話[角煮](2010/03/12 17:41)
[45] sts 二十四話[角煮](2010/03/13 18:23)
[46] エピローグ[角煮](2010/03/14 20:37)
[47] 後日談1 はやて[角煮](2010/03/18 20:44)
[48] はやてEND[角煮](2010/04/18 01:40)
[49] 後日談1 フェイト[角煮](2010/03/26 23:14)
[50] 後日談2 フェイト[角煮](2010/03/26 23:14)
[51] フェイトEND[角煮](2010/03/26 23:15)
[53] 後日談1 なのは[角煮](2010/04/19 01:27)
[54] 後日談2 なのは[角煮](2010/04/18 22:42)
[55] なのはEND?[角煮](2010/04/23 23:33)
[56] 後日談1 チンク[角煮](2010/04/23 23:33)
[57] 後日談2 チンク[角煮](2010/04/23 23:34)
[58] 後日談3 チンク[角煮](2010/04/23 23:34)
[59] チンクEND[角煮](2010/04/23 23:35)
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[7038] sts 四話
Name: 角煮◆904d8c10 ID:d2eca28f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/08/05 20:30
局で使用されている車と、立ち入り禁止のテープで封鎖された街の一角。
廃棄都市区画に近い場所であるそこでは、茶色を基調とした陸の制服に身を包む局員たちが動いていた。
その中にいる二人の少女は、床に引かれた白いラインを見下ろしている。

「……今月に入って、少なくともこれで四件目、ね」

「ええ」

ギンガとシグナムだ。管理局に入ってから三年以上が経つシグナムは、もう随分と制服を着こなしていた。
年齢はおよそ十四から十五歳といったところか。
幼さは抜けきっていないが、それでも、近寄りがたさを感じさせる目つきや落ち着いた立ち振る舞いは、彼女がエスティマと共に暮らしていたときと似ても似つかない。
烈火の将、と呼ばれていた以前のシグナムに近付いている。

二人は険しい顔をしながら、自分たちの追っている事件がどうして二転三転としたのかを考えていた。
二人の所属している108部隊は、管理局としての通常業務の他に、密輸品の調査などを行っている。
最近では主に結社へと届けられようとしていた物資の流れを突き止めることや、同じようにミッドルチルダの影から影へと回されるロストロギアの確保など。

その108部隊に所属している二人は調査の末、今朝方、廃棄都市区画付近にロストロギアの密輸に関わる者が潜伏していると踏んでこの場所に踏み込んだのだが――
そこに人気はなく、残っていたのは一つの遺体のみであった。
喉に刺し傷が一つ。それが致命傷となり死亡。他殺なのか自殺なのかは、調査中。
しかし二人は、他殺だろうと予想していた。

さきほどギンガが口に出したように、これとまったく同じ事件が連続しているのだ。
二人が知っているだけで四件。まだ報告の上がっていないのを含めたら、もっと多いのかもしれない。

この事件にも結社が関わっているのだろうか。どうなのだろう。
判断に苦しむ、とギンガは首を傾げた。

違法研究者集団である結社の掲げる目標はただ一つ、違法研究の合法化だ。
違法とされる研究の成果で管理局と小競り合いを続け、自分たちの主張を認めさせるという酷いやり口だが――
しかし、それと今回の事件は関連性がないような気がする。
筋が通っていない、とでも言うべきだろうか。

結社が直接的な手段に出る場合、基本的に標的となるのは管理局に関係のあるものに限られている。
だが、今回は違うのだ。
今回の事件と同じように殺された者たちは、美術商や聖王教会の技術者、そして結社と繋がりがあると予想されていたバイヤー。
彼らを結社が狙ったのだとしたら、今までと方向性が変わっているのではないだろうか。

ならばこの事件を起こしたのは結社ではなく、彼らを隠れ蓑にした便乗犯か。
まったく、と溜息を吐いて、ギンガは踵を返した。

「行こうか、シグナム。もう私たちにできることはないだろうし」

「はい。……しかし、我々がここへきたのは何故でしょうか。
 現場検証などより荒事の方が……」

「んー……まぁ、それはね」

心底から不思議そうなシグナムに、ギンガは苦笑する。
二人がこの場所にきているのは、ゲンヤのお節介だった。
何がどうお節介なのか、というと――

「あ、きたみたい」

「……あれは」

新たに到着した車両から降りてくる人物を見て、ギンガは心持ち表情を明るくし、シグナムは目を逸らす。
車両にペイントされているエンブレム――狼のシルエットが基本デザインのもの。ザフィーラに似ている――は、二人が良く見知ったものだった。
それは結社対策部隊として注目を集めている、六課と呼ばれる部隊のエンブレムの一つ。交替部隊と呼ばれる小隊につけられたものだ。

車両から降りてきたのは、ロングアーチに所属している魔導師であり、部隊長のエスティマ・スクライア。
その彼に続いて、ザフィーラと男が二人――おそらく交替部隊の者だろう――が降りてきた。

わざわざ部隊長の彼が出てくるなんて……と、ギンガは思わない。
彼がこの現場へくることは、父からきいていたからだ。
だからこそ、現場検証を行っている場で出来ることのない二人がこの場にいる。近況を聞いてこいと、ギンガはゲンヤに言い付けられていた。

エスティマは鑑識の者と話し込んだ後、封鎖テープを乗り越えて白線の近くまで歩いて行き、片膝を付いた。
とことこと後ろを付いていたザフィーラも、彼の隣に座り込む。
何を考えているのだろうか。エスティマはしきりに首を傾げながら、手持ち無沙汰になった手でザフィーラの頭を撫でている。

「で、シグナム。行かないの?」

「必要がありません」

ギンガが声をかけると、シグナムは淀みなく応えた。
しかし言葉とは裏腹に、彼女は物陰から顔を出してエスティマをじっと見ている。
怪しすぎ、とギンガは苦笑した。

会いたいのなら会えば良いのに、とも思うが、そう単純な問題ではないのだろう。
家族ぐるみの付き合いがあるため、ギンガはシグナムがどんなつもりで108部隊にいるのかを知っている。
AAAまで魔導師ランクが上がるまでは、父親の側に立ってはならない。父に言われ、自らに課したその誓いを守るべく、彼女は今の部隊で力を付け続けているのだ。
現在のシグナムのランクはAA+。あと一歩で約束に手が届くのだが、この間のランク認定試験では資格を掴むことができなかった。
……六課の設立に間に合わなかった、と落ち込んでいたシグナムをギンガは知っている。だからこそ、彼女がエスティマの前に行きたがらないことも理解できた。

「……父上、元気そうです」

「そうなの?」

「はい。少し前までは、歩くときにどこかしらを庇っているような固さがありましたから。戦闘時以外は、大体気怠そうでしたし」

……本当、良く見ている。自分にも父親がいるからこそ、シグナムがどれだけエスティマを気にしているのか、ギンガには分かった。
おっかなびっくりといった様子で父親を覗き見るシグナムに、どうするかなぁ、とギンガは腕を組んだ。
様子を聞いてこい、と父には言われているけれど、シグナムを一人にしてエスティマの元に行くのは気が引けた。
んー、と少しだけ考えて、結論を出す。
無理にシグナムを彼に会わせる必要はないだろう。それに近況報告は、やろうと思えばいつでもできる。今日の仕事上がりに六課へ寄っても良いし。

そう決めると、ギンガはシグナムが飽きるまで、この場で様子を見ることにした。
そして、ふと気付く。
ザフィーラが僅かに振り向いて、こちらの様子を窺っている。
流石にどんな表情をしているのかは分からないが、それでもどこか、呆れたような、柔らかな笑みを浮かべているような気がした。




















リリカル in wonder





















『顔色が優れないな。どうした? エスティマ』

『ん……そう?』

『ああ』

車に揺られながら外を見ていると、ザフィーラが念話を送ってきた。
ちら、と視線を送ってみれば、ザフィーラは床に突っ伏してリラックスしている。尻尾もへたっていたり。

心配しているというよりは、世間話のつもりなのだろう。

『どうにも血の臭いってのは慣れなくてね』

『そうなのか? てっきり、もう慣れたものだと思っていたが』

『や、そりゃー血を吐いたり匂いを嗅いだりしてるけど……好きになるものじゃないだろ』

『それもそうだな。……それで、どうだ。あの事件現場から何か分かったか?』

『さてね。ゲンヤさんも何を考えて俺をあそこへ向かわせたんだか』

そんなに暇じゃないのに。帰ったらシャーリーのところに顔を出さないとだし。
管理職は辛い。

『ザフィーラは何か分かった?』

『あの場には人の匂い以外にも、火薬のそれが残っていた。気付いたのはそれぐらいか。
 人の匂いも薄い。あの場所に訪れる者はそれほど多くなかったようだ』

『犯人らしい奴の匂いは――って、匂いだけで犯人特定できたら苦労しないよな』

『まったくだ。……ただ』

『ただ?』

そこで一拍置いて、ザフィーラは考え込むように喉を鳴らした。
そして前脚に乗せていた頭を動かす。

『火薬の匂い以上に微かな腐臭が漂っていた。殺された者のよりは古いだろう。
 気のせいかもしれないがな』

腐臭に火薬。その二つの手がかりと、108から挙がった手がかり。
この二つを合わせて何が出てくるだろう?

考えてみても、これといったものはない。
俺がベテラン捜査官だったりすれば違うのだろうが、生憎と管理局に入ってから力ずくの仕事ばかりしていたからなぁ。

『……この事件、六課は介入するのか?』

『どうかな。設立目的のとおり、俺たちの部隊は結社に対抗するべく生み出された部隊だ。
 それが結社と関係のない事件に首を突っ込めば、まぁ、上と下から色々と文句が飛んでくる。
 ……今のところ、実績がまるでないからなウチの部隊』

そう。
設立されたのは良いものの、今のところ目立った戦果を六課は上げていない。
交替部隊を結社と鉢合わせした部隊に派遣して、というのはやっているが、たったそれだけのことしか出来ないのならば予算の無駄だ。
求められているのは、もっと分かり易いもの。戦闘機人を捕らえたり、アジトを潰したり。

ま、それが簡単にできたらこの戦いももっと楽になっているわけだけれど。

『……管理局は基本的に後手だからね。俺たちに出番が回ってきても既に手遅れ、って状況もありえるかもしれない。
 それを少しでもマシにするために、出来る限りのことはするさ』

『ああ。まぁ、頑張れ』

『どこか他人事な感じがするのは気のせい?』

『生憎、俺は一匹の捜査犬だからな。できることは少ない』

『……なんか色々とゴメン』























「あの、エスティマさ……部隊長となのはさんって、どっちが強いんですか?」

午前の訓練が終わって一休みしていると、不意にエリオがそんなことをいった。
なのはさんを見るエリオの表情は、好奇心一色に染まっている。きっと悪気はないんだろう。

確かに、私も気になることではある。戦技披露会で何度も戦って、引き分けが延々と続いている二人だし。
聞きたいことは山々なんだけど……。

「……うん?」

一拍置いて、にっこりと笑顔を浮かべたなのはさん。
それを見て、非常に居心地が悪くなる。

私だけじゃなく、多分スバルも。キャロは……お腹を空かせたフリードをあやしてる。
お子様め……っ。

普通に考えて、あんまりよろしい質問じゃないでしょうがそれは。
興味があるのは分かるけど、ライバル的な人とどっちが強いの、なんて誰が聞かれても微妙な反応するわよっ。

「あはは、どっちが強いかなんて、それは勿論……」

「……勿論?」

エリオに聞き返され、なのはさんは咳払いを一つ。
心持ちプレッシャーが和らいだ気がする。

「なかなか難しいよ、それは」

……なんだか煙に巻かれた気がする。

「そうなんですか?」

「うん。状況によるかな。
 ほら、エスティマくんと私って戦闘スタイルがまるで違うから、よーいどん、で全力全開の模擬戦を始めたとしてもそのときの状況次第で勝敗は変わると思うの」

「状況、ですか?」

「でもでも、なのはさんなら距離を置けば一方的に部隊長に勝てると思います!」

「いや、全弾避けるでしょう部隊長なら」

「ティアはどっちの味方なの!?」

うわ、なんかこっちに飛び火してきた。
なんだかムキになったスバルを宥めながら、私はなのはさんへと視線を移す。

そんなスバルに、なのはさんも苦笑していた。

……別に私は部隊長の味方ってわけじゃない。
ただ、あの人ならヒラヒラと砲撃や射撃を避けて接近戦で勝つんじゃないかと思っただけだ。他意はない。

「けど状況次第っていっても、やっぱり自分の本領を発揮できる状況へもっていく能力も問われるわけだから……実際どうなんだろうね。
 私と模擬戦するとき、なんでかエスティマくんは全力じゃない気がするし」

「本気じゃないんですか?」

と、不思議そうに問うエリオ。
だが、なのはさんは困った風に笑うだけだ。

多分だけど、本気と全力の間に微妙なニュアンスの違いがあるんだろう。
それが何かは、良く分からないけれど。

「ま、この話題はここまでにしようか。みんながもう少し強くなったら、また考えてみよう?
 そのときは違った見方ができるようになっているはずだから」

それでこの話題は終わり。
もう少し経ったら、違う見方ができるようになっているのだろうか。

確かに、今の私たちは――他の部隊ならともかく――半人前だ。
一人前の力をつけて、経験を積んで判断力を養ったら、また違ったものが見えてくるのかもしれない。

それがいつのことになるかは分からないけれど、少しだけ楽しみだ。



















その日の業務が終わる頃、携帯にメールが届いた。
送ってきたのはギンガちゃん。なんでも、お食事でもどうですか、とのこと。

無論、二人っきりというわけではない。ゲンヤさんと……あと、シグナムもくるらしい。

断る理由もないし、むしろ楽しみなので定時で帰ろうとしたのだが、

「やっぱり夕方はラッシュが酷いなぁ、エスティマくん」

……なぜか、はやてと一緒にいる俺。
軽い渋滞となっている湾岸線の車道をうんざりした目で眺めながら、彼女はハンドルを握っている。

彼女はまだ茶色い陸士の制服姿だ。俺は一旦自室に戻ったので、袖と裾の所に白いラインが走っているポロシャツとジーンズ。

ちなみにはやて、愛車を持っています。俺と違って免許持ち。
……俺だって時間に余裕があったらバイク免許取りたかったよ。車も。
通院の時間をそっちに割けば、はやてみたいに取れたんだけど……ねぇ。

「……別に送ってくれる必要なんかなかったのに」

「ええやんか。私もギンガやシグナムと会いたかったし」

「……え?」

と、思わず声を上げてしまったが、はやては気にしていないのかなんなのか。
……別にはやてと一緒が嫌なわけじゃない。
けど、はやてと一緒にいるとゲンヤさんの反応が……なんつーか……しつこいんだよなぁ。

「エスティマくん、そういえば今日、現場に行ったみたいやね。どうやった?」

「どうもこうも……捜査官としての腕は二流以下だからね俺は」

「武闘派執務官やからなぁ、エスティマくん」

「そういうこと。そういうのははやてに任せるよ」

「んー、私、期待されてる?」

「期待も何も。三課でずっと働いてきた相棒として信頼してるよ」

「そか」

とんとん、とハンドルを指で叩き、はやてはゆっくりとアクセルを踏む。
ゆっくりと進む風景を眺めながら、俺は首もとのSeven Starsに目を落とした。

その仕草だけでSeven Starsは宝玉の表面に、『メールなし』『現在時刻、18:27分』『待ち合わせまで残り三十三分』と表示する。

「エスティマくん」

「ん?」

「そういえば最近、シャーリーと妙なことやってへん?」

「……やましいことは何もしてないけど」

「そういうことやなくて!」

変な風にブレーキを入れたのか、ガクン、と車が揺れる。
見てみれば、はやては唇を尖らせたまま視線を前に向けていた。

シャーリーをそういう風には見れないしなぁ。眼鏡かけてる女の子は好きだけど。
彼女はなんていうか、そう。趣味友達みたいな感じ。

「夜遅くまで開発室に入ってるやんか……ちょお気になって」

「新人たちのデバイス設計やってるんだって。俺はその手伝い」

「……なら、sts計画って何?」

ぽつりと彼女が呟いた。
やけに真面目な表情をしているが――

「ああ、そのこと」

「ああ、って……そんな軽く。何? そんなに重要なことやないの?」

「ああ。計画ーなんて大仰なのが付いてるのは、俺たちの趣味だし。
 ま、六課の新人メンバーをデバイス面でバックアップしようって構想のことだよ。
 三課の頃と比べて予算も増えたからね。それもあって、色々と遊んでる。
 sts、なんてコードネームは一種の願掛けさ」

「無駄遣いはあかんて」

「データ上で弄くり回しているだけだってば」

……今のところは。

まぁそんなことをいったら当たり前のように白い目で見られるから口にはしない。
それにしても、どこから漏れたんだか。一応、秘密ってことにはなっているのに。

新人のデバイス開発という名目で、結社に対する切り札を作っているのがsts計画の正体。
なのはのブラスターやフェイトの真・ソニック以外にも、だ。

これの構想は三課の頃からあったのだが、まとまった予算が取れた今になって本格始動している。
形らしい形になったら隊長、副隊長には話しておこうと思っているが……まだ早い。

隠し事をしているようで申し訳ないが、今は秘密にするしかない。
……まぁ、形にならなかったときに格好がつかないってのもあるし。

「とりあえず新人たちのデバイスは設計が終わって、これから製作に入るよ。
 今は――」

「あー、技術系の話はあかん。やめてー」

つれない。

「……けど、よかったわ」

「何が?」

「ん、また身体に優しくないことやってんかなって、心配やったから。
 エスティマくんの身体ボロボロやからね。その癖、皆が寝静まった頃になったら訓練場を起動して……。
 そんなんやから治りも遅い」

「……なのはの奴、秘密にしろとあれほど」

「ん、なのはちゃんは関係ないよ? 私が気付いただけやから。
 別にええやんか。指揮官として六課にいるんやし、戦いに備える必要なんかあらへん。
 中将やって、エスティマくんのことを心配しているから前線から外したと思う」

「……かもしれない。けど、いざって時に実力が発揮できないのは怖いんだよ」

漏れたような言葉。
はやては、そか、と短く応えて、会話が止まる。

そうして車の走行音だけが響くようになってからしばらくして、俺たちはゲンヤさんたちが待っている居酒屋に到着した。

車を駐車場に止めて降りると、へんてこな建物に眉を潜めてしまう。
和風建築……のように見えて、全然そんなことはない場所。

百円回転寿司の店を機械的にした感じ。分かりづらいと思うが、そうとしか言えない。
ミッドチルダでの暮らしにはもう慣れた――というかこっちのほうが自分の世界という意識が強くなっている――けど、流石にこういうものを目にすると違和感を覚えてしまうのはしょうがないだろう。

はやても俺と似たようなことを思っているのか、しきりに首を傾げている。

……行くか。

二人で店にはいると、既にゲンヤさんたちは席に座っているようだった。
店員に案内されて座敷に進むと、制服姿の三人がいる。

「こんばんは。お疲れ様です」

「おう、きたかエスティマ」

まぁ座れ、と勧められ、腰を下ろす俺たち。
俺の対面にはシグナム、はやてはギンガちゃん、といった配置だ。

「三人とも、今日は上がりですか?」

「ああ。ここんところ働きづめだったからな。明日は休みだし、今日ぐらいってな」

「そうですか。それにしても、こうして揃うのも久し振りな気が。……スバルにも声をかけた方が良かったですか?」

「いや、良いだろう。この面子でしか話せねぇこともあるしな。またの機会だ」

会話をしながら、マルチタスクの無駄遣いで注文を決める。
店員さんにオーダーを頼むと、シグナムへと視線を移した。

シグナムはどこか落ち着かない様子で、メニューに視線を落としている。
……こうして顔を合わすのも久し振りな気がするな。

シグナムが108へ行ってから、会うことはほとんどなかった。
シグナムが家を出て一緒にいる時間がなくなったこともあるし、この子がいなくなって俺が仕事に没頭したこともある。

そうやって疎遠になっていって……今では、シグナムが何を考えているのか良く分からない。
少し前までは大体分かっていたんだけど……なぁ。

「……シグナム」

「は、はい」

「最近、どうしてる?」

「はい。今は、最近になって起こり始めた連続殺人事件を――」

「そういうことじゃなくて」

生真面目に返事をする娘の姿に、思わず苦笑する。

「飯、ちゃんと食べてるか? お前がどんな暮らしをしているのか分からなくて、俺はちょっと心配だよ。
 根を詰めるところがあるからなぁ。あんまり無理をしないように。体調崩して――」

「……大丈夫です。問題ありません」

むっとした表情で、言葉を遮られた。
気のせいか、シグナムは俺と視線を合わせようとしていない気がする。

……なんだかなぁ。この歳の子は説教されるのが嫌いだって、自分の経験から分かっているだろうに。
だがそれでもそれっぽい言葉をかけてしまうのが親心ってやつなのか。

……親、ねぇ。

なんか子持ちのパパさんがこっちを見てニヤニヤ笑っているのがムカつきます。

「なんですかゲンヤさん。そしてギンガちゃん」

「いやな、コイツにもこういう時期があったなーってよ」

「うぅ、お父さん」

「いつだったかなぁ……おお、そうだそうだ。結社の奴らが迷惑千万な声明を出した時ぐらいだったか。
 あの頃から妙に険が取れて――痛ぇ! 抓るなギンガ!」

「年甲斐もなくはしゃがないで下さい、お父さん」

「……おう」

……娘に尻に敷かれてる。苦労してそうだなぁ。

「エスティマさん、シグナムなら大丈夫ですよ。勤務態度も真面目だし、訓練も。
 生活だって心配するようなことありませんから」

「そっか」

なら安心……なんだけど、少し寂しいような。
今からこんなことを思っていたら、この先どうなるんだか。

「ところで、そちらの方はどうですか? 八神さん」

「ん、目立ったことはなんもないなぁ。新人フォワードはまだ訓練中で、他はヴィータが交替部隊の方に行って頑張ってくれてるし。
 私も結社を追ってるけど、今のところこれといった進展はなし。
 ま、六課が全力稼働するような状況なんて、起きないことに越したことはないんやけど」

「そうですか。……何も起きなければいいんですけどねぇ」

溜息混じりにそういうギンガちゃん。
まったくその通りなんだが……そうもいかないだろう。

いつぞやの結社設立やアインヘリアル防衛戦の時と同じように、今の沈黙は次への溜めのように思える。
いつになるかは分からないが、大なり小なり、奴らはテロを起こすだろう。

原作知識がまるで当てにならないから、何が起こるか分からないが。

そう思っていると、料理が運ばれてきた。
陶器の皿がテーブルに置かれて、こつこつと音を立てる。

シグナムと俺の間に置かれたのは、鶏の唐揚げ。
料理とお互いの顔を交互に見る。お互いに。

「……父上からどうぞ」

「……遠慮しなくていいから」

「……はい」

いただきます、と断って全員が箸を動かし始める。

しっかし、酒が飲めないのに居酒屋ってのはどうも。
まだ未成年だからなぁ、この身体。酒が飲めないってわけじゃないだろうけど、執務官が法を破ってどうすんの、とアルコールを口にしたことはない。

物足りない。ご飯が欲しいな。

「……ご飯が欲しいです」

……あれ、口に出した?
と思ったら、シグナムだった。

見れば、シグナムは一瞬だけ俺と目を合わせると、焦った感じで俯き加減になってしまう。

ううむ……どうしたもんか。

思春期の娘とどう接したら良いのだろう。
考えてみても、そう簡単に良い案が思い浮かぶこともなく。

『はやてはやて』

『何?』

『このぐらいの歳の子って、どうやって接すれば良いんだろうか』

『うーん。パパさんとして、って考えると私には難しいなぁ。
 やっぱりゲンヤさん辺りに聞くのがいいと思うけど』

当たり前の答えが返ったきた。
けど、あの人は念話使えないからこの場で聞くことはできないか。

困ったもんだ。

「その……父上」

「……ん?」

どうしたものかと考えていると、シグナムが声をかけたきた。
しかし、視線は俺のに向いているわけではない。
微妙に逸らされたまま、彼女は口を開いた。

「次のランク昇格試験で、AAAに挑もうと思っています」

「……そうか」

「はい」

それだけいって、シグナムは料理へと。
……約束だからな。

「期待してるよ」

「はい。頑張ります」

無理はしないように、とはいわない。
……変なところが俺に似てしまったシグナムだ。きっと目的を達成するためならば、どんな無茶でもするだろう。
そして俺と同じように、それを邪魔されるのを何よりも嫌っているはずだ。

……本当、似て欲しくないところが似てしまったなぁ。

黙々と食事をすすめるシグナムを眺めながら、俺は俯き加減で苦笑した。


























小劇場 割と平和な六課 2


結社対策部隊、通称、六課。
この部隊に集められた者たちは、いずれもライトスタッフである。
フォワード陣は勿論のこと、バックヤードスタッフも。
そして医療スタッフも……なのだが……。

「なのはちゃん、おやつを持ってきましたー」

「あ、シャマルありがとう」

陸士の制服の上から白衣をまとったシャマルが、バスケットからクッキーの詰まったランチボックスを取り出す。
新人フォワードに飲み物とお菓子を配るシャマル。
いやに表情がいきいきとしている。

「どうですか?」

「美味しいです!」

「そうですか! まだまだありますから、たくさん食べてくださいね!」

といってシャマルはバスケットから更にランチボックスを取り出す。
一つ、二つ、三つ、四つ……。
正直、作りすぎじゃね? と思わなくもない。

「……シャマル?」

「なんですか? なのはちゃん」

「シャマル、ストレス溜まるとお菓子を大量に作る癖があったよね……」

「……」

「シャマル?」

「……うっ、ぐすっ」

「シャマル――!?」





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