07 「噴流式と猫」 ***Side Witches***「……絶対に……全力をそそいでは……駄目」「……分かった」 格納庫。 ストライカーユニットの懸架台で、Me262を装着したトゥルーデは、しかしその制御に苦戦していた。 主機の制御の勝手が違う。 それが最大の理由である。 装着した時は、やや時間がかかるな、くらいの印象を彼女に与えたに過ぎなかった。 彼女や、ほかのウィッチが使用しているストライカーユニットは、装着に5秒もかからない。 大き目の筒の中に足を突っ込む。 慣れてしまえば、文字通りその程度の行為であり、そういったユニットしか装備してこなかった。 Me262はその点、やや抵抗があるか、と思わせたのみである。 起動も、思っていたよりは簡単に行えた。 ヴィルヘルミナが起動するまでに二分弱かかっていたので、初期起動魔力によほどのものを要求されるか、と覚悟していたのだが。 たしかに初期起動に必要な魔力は大きいものであったが、トゥルーデにとっては特に問題はなかった。 魔力適正の高さもあるのだろうが、少し拍子抜けしてしまった。 問題なのはここからだった。 Me262は、絶対に、地表付近でスロットルを全開にしてはいけない。 ヴィルヘルミナがまず真っ先にトゥルーデに伝えた言葉だった。 曰く、エンジンが溶けるとの事だったが、魔道エンジンは別に何かを燃焼しているわけではない。 ウィッチの魔力を吸い上げて、増幅し、各種術式を任意駆動する補助具の役目を果たしているだけなのであり。 通常のストライカーユニットが持つプロペラも、実際は発動される飛行魔法が大気中のエーテルと干渉する際に視覚的に輝いているに過ぎないのだ。 通常、ストライカーユニットは離陸時に主機をフルスロットルで回転させる。 推力を得るためであり、カタパルトの役目を果たす魔法陣を展開するためであり。 魔力増幅を行うためであり、エーテルの濃度がやや薄い地表での出力を確保するためである。 また、トゥルーデが主に使用するユニット、Fw190/D-9は。 繊細で癖のある操作性のBf109に対し、より実戦的なユニットを目指してフラックウルフ社が開発したユニットだ。 生産も比較的容易で、整備性もよく、機構にも冗長性のある、いわば多少荒っぽく扱っても問題がない機体。 その癖さえ把握すれば高い性能を発揮できるエース好みのBf109と好対象に、非常に慣れやすく、扱いやすいユニットで。 Bf109を優雅なサラブレッドにたとえるなら、Fw190は戦場を駆ける軍馬である、とは設計者の言だった。 ヴィルヘルミナの言葉を、無理をするなという忠告と受け取ったトゥルーデはまず、全力の五割ほどの魔力を流し込む。 そして、驚愕した。 まるで手ごたえがない。 いや、主機は起動し、甲高い吸排気音を立てている。 しかし思った以上に出力が伸びない。 なんだ、と気を抜いた瞬間、主機の回転音が低くなった。 慌てて、魔力を全力で注ぎ込んだところで。 まるで底なし沼のようにMe262がその全力の魔力を飲み込んだところで。 魔力計を見ていたヴィルヘルミナに、強制停止させられた。 何かまずかったか、と問うトゥルーデに、ヴィルヘルミナは再び答えたのだ。 エンジンが、溶け落ちると。 意味はいまいち不明瞭だったが、言いたいことはなんとなく理解できた。 あのまま全開で魔力を注ぎ続けても、出力は伸びなかっただろう。 そして、魔力を使い果たしたトゥルーデは半日ほど寝込むのだ。「ん……これは……思ったよりも厄介だな」「……焦るな……落ち着いて……」「ああ、分かっている」 それから十分ほど、噴流式エンジンの扱いを試行錯誤しながら。 トゥルーデは思考する。 力んでしまえば魔力は勝手に流れ、かといって力を抜きすぎるとフレームアウトする。 焦ってしまえば魔力を無駄に吸い取られるという始末だった。 一体どうすればいいのか。「やらせておいてなんだが、バッツはよくこんなものを記憶のあいまいな状態で扱えたな」「……オレは……臆病だから」 水道の蛇口を、少しづつ、少しづつ捻るように。 真っ暗な夜道をおっかなびっくり進むように。 初めて触るものだったから、と。 ヴィルヘルミナはぼそぼそと語った。「なるほど。 既存の機体に慣れすぎて、そういった感覚は忘れていたな……」「……一度……適正高度に、上がれば……そんなに気にしなくてもいい……」「そうか……確か、噴流式ストライカーはエンジンで飛行術式を駆動するのではなく、大気中のエーテルを吸入・圧縮噴射して推力を得るんだったな」「…………」「つまり……ええと、停止時から低速時には魔道エンジンの出力のみでエーテルの吸入と排気を行うため、推力はほとんど得られない…… 一定高度・速度を出せば、エーテル吸入量が自動的に増え、推力が伸びる、ということか。 なるほど、まるで飛び方が違ってくるな……これは副座練習機が必要なわけだ」「…………うん」 一瞬考え込んだヴィルヘルミナに一抹の不安を覚えたものの。 理屈と、ヴィルヘルミナが伝えたコツのような物さえ分かれば、あとはトゥルーデは歴戦のウィッチである。 それから10分もしないうちに、起動と低回転数での維持をマスターしてしまった。「ん……よし、起動に時間がかかりそうだが……慣れてしまえば一分前後、といったところだろうな」「……速い」「いや、それでも遅いが。 即応性に疑問が残るな。 警戒網がしっかりと機能してくれればいいんだが……」「……たしか……専属の、護衛機を……上げて……離陸を、援護させながら。 起動と……離陸を、していたような」「護衛機……それはまた大仰なことだ。 それにしても、少しは思い出したのか?」 かすかに眉をひそめて考え込んだ様子をしたヴィルヘルミナに期待したものの。 彼女は首を振り。 その様子が、トゥルーデに、先は長そうだな、と呟かせた。「まぁいい……急かす様なことを言ってすまんな。 少し、飛んでみるか。 副座機でお前に補助してもらいながらが理想なんだろうが、無いものはしかたない。 バッツ、お前もストライカーを装着して……ああ、念のためだ、 パラシュートはあそこの棚にある。 私の分とお前の分、付けていこうか」「……うん」 パラシュートなんて単独初飛行の時以来だ、と苦笑するトゥルーデの横で、ヴィルヘルミナが小さな体で動き回っていた。***Side Wilhelmina*** いてぇ。 「大丈夫か、バッツ。 それにしてもなんというか……随分と派手な着陸だったな?」「……痛い」 痛みがあるならまだ生きてる。 よかったな、とか言ってくるバルクホルンさん。 なめてんのかこの……! とか思ったけどうん、痛いって言うのはマジ大事だよね。 トラックに跳ね飛ばされた瞬間とか痛くなかったもんね。 今思うとあれは怖いわ。 着陸後の減速に失敗して、格納庫の中までオーバーランして。 盛大にずっこけまくりました。 MTBの前輪になんか挟まって回転止まって、そのまま前に投げ出された時位びっくりしたし痛かったよ! っていうかスピード結構出てたはずだけど、痛いで済んでるのは魔法による保護のおかげですか……魔法便利すぎる。 で、一時間半ほどバルクホルンと一緒に飛んだけど、やっぱりこの人すごいわ。 最初の10分で二、三回ストールしかけた以外はすげぇスムーズに飛び回ってやがんの。 何その才能。 嫉妬するし憧れてしまう。 旋回半径オレより小さいし……「トルクが無いな……だがそれならそれでやりようも有る」とか言ってるし。 くそ! 歴史に残るエースと凡百の差がこれですか! キャーおねえちゃーんかっこいい! 何でこの人と戦って10分以上生き残ったんだろうオレ。「ほら、いつまで逆立ちしているつもりだ……お前もカールスラント軍人だろう、しっかりしろ」 逆立ちしてるんじゃなくて逆さまに壁に張り付いてるんですけどね。 あと純粋に疲れた。 体力というか、なんだろう……魔力? みたいなのガンガン吸われるんですもの。 あ、手差し伸べてくれた……これが飴と鞭か。「……ありがとう」「気にするな」 立たせてもらって。 そのあと、全身の間接を動かしてみる。 問題なく動いた。 うん、よかった。 背中のパラシュートが無かったら即死だった……もとい体をもっと強く打ってたかもしれん。 なんだかんだ言って女の子の体だからな、あんまり無理しないようにしないと、どっかで大失敗するかもしんないな。 とりあえずバルクホルンもオレも空中でパラシュート使うような事態にならなくてよかった。 だってオレパラシュートの使い方知らないしな! 飛び立ったあとに使い方説明してもらってないの気づくとかオレ駄目人間過ぎた。「機動性能は概ね予想通りだったな……低速時の加速の伸びが悪くて、小回りもFw190に比べると利かない。 無理矢理旋回しようとすると途端にスピードが落ちる。 だが、あのトップスピードは……慣れればこの上ない武器になるな」「……うん」 ですよねー。 速さは力です! 戦闘は速度です! STGとかと違って範囲火力が無い空戦の世界では速さイコール力なのです! まぁ、リアル指向のゲームでもたまに散弾ミサイルとか空気読んでないトンデモ兵器が出てくるけど、あれは、ああいう荒唐無稽さも面白さの一つだしね。「それに、お前の飛び方も昨日よりはマシになっていたな」「……バルクホルンが、居たから」「そう謙遜するな。 悪くなかったぞ?」 ちなみにオレ、バルクホルンの右斜め後ろに付いて飛んでいました。 なんか本来なら教導役が長機を務めるそうなんだが、オレが一緒に飛ぶのってフレームアウトした時のためと、機動中に変な事したときに警告するためだからなぁ…… この人そんなの要らなかったし。 というわけで後ろからバルクホルンの足捌き、体捌きをたっぷりと見学させてもらいました。 ……ぱ、パンツなんか見てないんだから! 本当だよ! 空の上では誰も見ていない、とか嘘だよ坂本さん。 僚機から丸見えだよ。 とにかく、オレは飛びながら、パンツでなくバルクホルンの足捌きや体捌きを見て、真似する事で。 なんとかついていけたわけです。 やっぱ見本があると参考になるわー。 でも結構無理やり動かした感もあるから、きっと明日筋肉痛とかあるんだろうなぁ…… とか何とか思っていると。「よ! お二人さん。 相変わらず惚れ惚れするスピードだったね。 ねー、ちょっとで良いから、あたしにも使わせてくんない?」 ……うーん、このおっぱいヴォイスはシャーリー嬢か。 よく格納庫で会うなぁ。「またかリベリアン……貴様まさか狙ってここに来ているのか?」「まさか。 非番だった昨日はともかく、今日はこのあとルッキーニと飛行訓練だよ。 で、話を戻すけど……駄目?」「駄目だ。 一応国家機密に関わるからな」「相変わらずかったいなぁ……多国籍部隊の基地に持ってきておいて、機密も糞もないだろうに。 それに中見せてくれって言ってるわけじゃないだろう?」「とにかく……駄目なものは駄目だ。 それに第一」 ……なんでそこでオレを見るのさ、バルクホルン。 いやな予感が。「Me262の管理責任は今のところミーナとバッツの連名になっている……聞くなら私じゃなくてこいつにするんだな」 ほわっつ!? いや、管理責任者て。 記憶障害者にそんな役職おしつけてんじゃねー! Me262に何か不都合が起こったら全部オレの……いや、連名だから半分はミーナさんの責任か、になるじゃねーか。 ……いや、本当はオレ個人が責任者だったけど、オレの記憶障害設定のおかげでミーナさんも面倒事ひっ被ってんのか? ちくしょー、実年齢より若い子に尻拭いて貰ってるとか…… 早いとこ勉強なり何なりしないとオレのなけなしのプライドが傷つく一方だぜ。「お、そーかいそーかい! というわけでヴィルヘルミナ、駄目? 同階級のよしみでさー。 おっぱい触らせてあげても良いよ?」「何だそのふざけた提案は……バッツ! お前も何つばを飲み込んでるんだ!」「……ごめん、バルクホルン」 いや、だって、あーた……うーん……この質量は、なんだ、すげー魅力的なんですが。 たゆーんて。たゆんて。 漫画の中だけかと思ってたら世界は広かった……井の中の童貞大海を知らず。 あーうー、どうしようかなー。 これが美人局に引っかかる心理か! 色仕掛けに引っかかるとか馬鹿だろ……とか思ってたけど、目の前に餌を吊されると厳しいモノがある。「どーだい、あんたも身長の割りには大きいらしいけど、あたしには敵うまい……ふっふっふ」「お前という奴は……第一、まだお前たちの飛行訓練までは10分くらいあるだろう!」「ああ、そうだった。 悪い悪い……本題はこいつだよ。 ん、あれ、どこいった? ルッキーニ?」 ルッキーニ? う、なんか背筋がぞくってした。 軽くトラウマっぽいかも。 そういえば、この格納庫の梁の上にルッキーニの巣が一個あったよなぁ…… と思って見上げてみると。「!」「……」 居たよ。 なんか、梁の上の毛布に寝転がってこっち睨み付けてます。 猫みたいだ……というかまるっきり猫だ。「あー、あんな所にいたか。 ほら、ルッキーニ、下りて来いよ」 またあんな所にあいつは……とぼやくシャーリー。 うーん……なんでそんなにオレ嫌われてるんだろう。 むしろ唐突に胸を揉まれたオレの方が嫌って当然の気もするんだが。 いや、子供のすることだし、オレもびっくりしただけで怒ってないけどね。「んー……ああ、そういえば二人とももう飛ばないんだよな?」 頷くオレとバルクホルン。 というかこれ以上飛べとか言われたら空中でへばってまたフレームアウトする自信があるね。「じゃあ悪いんだけどさ、エンジン落としてくれない? なんかあの子その音が苦手らしくてさ」 ……あーあー。 そういえばウォーロックのジェットエンジンの音、嫌いとか言ってましたね。 子供特有の、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い理論で嫌いなのかと思ってたら、普通に苦手なのね。 と言うわけで魔力の供給を止めると、エンジン音が途端に弱まり、バネの音と共に太ももの装甲板が開いた。 バルクホルンも、まったく……子供かあいつは、とか言いながらエンジンを落とす。「ほら……ルッキーニ! 約束しただろー、ちゃんと挨拶するって」「はぁーい……」 うわ超嫌そう。 梁の上からひょいとオレの目の前に飛び降りてくるルッキーニ。 そのままじっと見つめ合う。 ……あ、目逸らされた。「ホントはこんな子じゃないんだけどね。 昨日の模擬戦で、あんたの飛び方が気にくわなかったみたいでさ」「下手……だった?」 いや、ごめんなさい……ルッキーニのお眼鏡にかなわないとはドンだけ酷い機動してたんだ。 自分では良い線行ってたと思ったけど、所詮いっぱいいっぱいの状態だったしなぁ……「酷かったな」「まぁ……要努力?」「へたっぴ」 ……うわーん! みんなして言わないでも良いじゃないか! 泣ける。 いいもん! 凡人は凡人なりに頭使ってなんとかしてみせるもん!「堅物、お前さりげなく一番酷い……おっと、違う違う、そうじゃなくてさ。 トップスピード出してからだよ」「そうそう! あんなのずるい!」 噛みつきそうな勢いで言うルッキーニ。 あと、どうでも良いけど指さすな。 しかし……ずるいて。 いや、確かに……そうなのか? 圧倒的という言葉すら生ぬるい優速を生かしての一撃離脱戦法は、今オレが思いつく、Me262唯一にして最高の攻撃法だ。 既存のストライカーユニットは大型ネウロイより多くの場合高速で、こちらも一撃離脱戦法がよしとされている。 だが、ストライカーユニット同士ではそれほど速度差が付くこともなく、また多少の速度差も技量でどうこうできる範囲のものだろう。 そして発生するのは奇襲からの一方的な打撃か、格闘戦の末の決着、と言ったところだろう。 そこに突然、技量差を容易に覆す機体が現れたら……確かに反則だなぁ…… 基本、ウィッチの敵はネウロイだから、模擬戦は半分くらいスポーツ感覚だろうし。 怒るのも理解できる。 誰だって競輪場に突然バイクが乱入してきてオレTUEEEEEE!!! したら怒るだろう。 しかしその状況で負けるオレって一体……「ごめん……」「バッツ?」「バッツ中尉、べつに謝らなくても……」「オレは……弱いから……ああいう、風にしか、飛べなかった…… ……ルッキー……ニ。 機会があれば……飛び方を……教えて欲しい」 ……半分計算で、半分本音な、発言。 飛び方は教えて欲しいし、凄い切実な願いで。 ずるいと思ったのも、たしかで。 そして、こういう風に言えば子供っぽいルッキーニはきっと乗ってくるわけで。 黙って聞いてる大人二人。 あー、今オレすんげーずるい大人だわ。 自己嫌悪。「……うん、いいよ! あ、あと! シャーリーにそのストライカー貸してあげて! シャーリー、頑張ってたのに、突然現れてもっと速いの履いてるなんて……ずるい!」「ルッキーニ……そんなことお前は考えなくて良いの!」 えー……それが本音ですかルッキーニ少尉。 真面目に考えたオレが超恥ずかしいじゃないですか。 あーうん、まぁ、いっか。 別に履かせて減るもんでも無し。「えー、だってー」「それとこれとは話が別だろう、ルッキーニ!」「バルクホルン大尉の堅物ー。 おっぱいは柔らかいくせにー」「胸は関係ないだろう胸は!? 第一、言っているだろう……ほらバッツ、言ってやれ」「……いい、よ」「ほらバッツもこう言って……バッツ?」 眉間にすげーしわを寄せて睨んでくるバルクホルン。 ごめんね、でも、こうするのも良いと思うんだぜ。「別に……使っても良いけど……いくつか、条件が……ある」「へぇ、結構話がわかるね。 バルクホルンと一緒の隊だって言ってたから同じくらい堅物かと思ってたけど……実はエーリカ寄り?」 それには速攻首を振らせて貰う。 あの適当すぎるアマと同列に考えられるのも困る。 ちくしょー、ホントにどうやって揉んでやろうか奴の胸……いや、今はそんなことより。「使うのは……オレと、だれか、もう一人の……立ち会いの元で……。 絶対に……一人で飛ばないこと。 暫くは……オレと、カールスラントの皆が……ローテーション組んで、訓練……するから。 その後に……なるぞ?」 まぁこんな感じなら妥当だろう……どうよバルクホルン?「……あと、これは当然だが、無断で勝手に触ったりいじったりするなよ、リベリアン」「……それも……追加」「当然。 泥棒猫みたいな真似は絶対しないよ」「ありがとヴィルヘルミナ!」 満面の笑顔で抱きついてくるルッキーニ。 あーうんうん、可愛いね。 やっぱ仏頂面より笑顔向けられる方が嬉しいし。 身長差がほとんど無いから結構支えるの大変だけど。「まったく……何か問題があった時はお前が困るんだぞ、バッツ」「まさか……シャーリーの腕か……起動や、飛行中に……煙を吹くと……思ってる?」「……それこそまさかだ。 こいつはいいかげんだが腕は確かだし…… 作っている場所が変わったとはいえ、カールスラントの技術力は世界一だぞ?」「なら、後は……人材が、傷つかないように……すればいい」 そいつはどーも、とニヤニヤするシャーリー。 やれやれ、ミーナには報告するからな、と額に手を当ててうなるバルクホルンに。 ありがとう、と伝えた。「まぁ、仲も良くなったところで、ほら、ルッキーニ」「あ、うん! アタシ、フランチェスカ・ルッキーニ! ロマーニャ空軍所属で、階級は少尉! よろしくねー」「……よろしく」 うん、これでいい。 「話もまとまったところで、ほら、デブリーフィングでもやってきな。 あたし達は訓練にはいるからさ」「言われなくてもそのつもりだ」「あ、そうそう、ヴィルヘルミナ。 お前さんの料理、期待してるからなー。 エーリカは茹でジャガイモだし、この堅物は適当な煮込み料理だったし……あ、そういえば中佐の料理も食べてないな……」 ……何、そんなイベントあったっけ? あー……納豆? 納豆イベントか? さりげなく芳佳さんが来るのを楽しみにしています。 白米! 納豆! みそ汁! 和食に飢えるオレ!「適当な煮込み料理じゃない、あれはアイスバインという歴としたカールスラント料理だ」「適当に肉と野菜切って煮込んだだけの代物じゃないか」「そういうお前が作ったのはハンバーグと野菜をパンに挟んだだけの物じゃないか」「あれは良いんだよ、そういう料理なんだから!」 仲良いですね。 しかし、カールスラント料理……そんなもん作れんぞ? オレのレパートリーは主に和食だからな……しかし、和食、じゃなくて扶桑料理なんて作ったら明らかに怪しいし。 うーん……あ、材料さえあればどうにか出来る……か? 近所にあったオーストリア料理出す軽食屋に通った記憶を思い出せ……むむむ。 オーストリアもドイツも料理の質は大差ないだろう……隣接してるし、気候も似た感じだし。 メニュードイツ語だったし、当時は読めねえ! とか思ってたけど、こんな所で役に立つとは…… 「……大丈夫か、バッツ?」 心配そうに小声で話しかけてくるバルクホルン。 あー、うん、多分。「大丈夫……」「覚えているのか?」「うっすらと……だけど」「……まぁ、食べられるものを出せよ」 手伝うとか無いんですね。 まぁ、そんな手間暇かける物じゃないから、焦がしたりしなければ大丈夫だろう……「お、結構自信有りそうだな……楽しみだな、ルッキーニ」「うん!」「大抵のモノは厨房に置いてあるから、あとで確認しておくといいよ」「……わかった」 それじゃあ、と。 二人はストライカーユニットの懸架台へと歩いていった。「ほら、バッツ。私たちも行くぞ。 デブリーフィングの後、座学だ」「……ん」 さて、お勉強しっかりして……みんなの負担を減らせるように頑張りますか!---------料理フラグと、ルッキーニと仲良くなる回。あと、シャーリーの好感度UP、バルクホルンの好感度Down。しかし、お姉ちゃんの好感度はちょっとやそっと下がった位じゃ問題ないレベルなのだ!戦友設定万歳!ルッキーニのイメージはこんな感じ。猫っぽ。あと、シャーリーとルッキーニの関係のイメージも。この辺も、一般的な認識との齟齬はそんなに無い……と思いたい。