24「Beyound」******「……と、言うわけで。 昨日通達したとおり、本日一○○○時より、全体水練を行います。 訓練の一環ではありますが、何時もどおりだから皆、気楽にね?」 頷いたり、返事をする皆。 朝食後の、朝のブリーフィング。 というか朝礼の類だな、これは。 何時もの大きな黒板のある部屋でミーナさんが本日の予定を連絡してくれています。 毎朝あるわけじゃないけど、連絡・通達事項の無い日のほうが珍しいから結構こうやって朝集まったりはしてるけど。 さてと。 ミーナさんが何時もどおり、って言う事はやっぱり恒例行事なんだろう。 オレが来る前にも、暑い日はやってたのかもしれないなぁ。 昔はマリンスポーツよくやったなぁ……スキューバとか。 30にリーチ掛けるくらいの年になると、昔ほど積極的に海に行きたいとは思わなくなってるんだが。 それでも割と好きなので、機会があったらやりたいな。 ……こっちの世界にスキューバとかまだ存在しないだろうけど。 ああ、でも割と万能っぽい魔法の力でどうにかならんもんか……? オレが余計な事を考えている間にも、ブリーフィングは恙無く進められていく。 こういうの聞いてるのは結構だるい物です。 ちゃんと話してる内容は理解してるけれども。「観測部からの報告では、あと60時間はネウロイの攻勢は無いことになっています。 だけど、最近のサイクルの乱れを鑑みるに、情報の確度は著しく低下していると言わざるを得ない状況ね。 よって、翌朝○六○○時より48時間の警戒態勢に入ります」「聞いたとおりだ。 あまり羽目を外しすぎるなよ」 ミーナさんが真面目な顔で宣言した後、美緒さんが皆に釘をさした。 此処のところ、ネウロイには奇襲されまくりだからな。 そういう方針を採るのもおかしくないのかもしれない。 先週、スケジュールどおりだったけれど、最近ではそれも珍しい事態なのだ。 今週も予測どおりに来てくれると考えるほうがおかしいだろう。 まあ、つまりあれだな。 今日、水遊び一杯するから、明日からちょっと気合入れるよ! って奴だろう。 ただ、その遊ぶ予定の今日という日に、ネウロイが来ちゃったりするのだが。 ……日程とか知らないから本当に今日かどうかはしらないけどな。 まさか、ウィッチが水着を着るとネウロイが来る、とかそんなアホみたいな因果関係は無いだろうし。 ネウロイの来襲、それはおそらくオレにはどうしようもないファクターだ。 劇中で起きたイベントも、オレが色々動いたりするお陰で潰れたり、あるいは変動するはずで。 実際、昨晩の様子からするとルッキーニの魔改造によるシャーリーの音速突破はなくなりそうだし。 彼女には申し訳ないが……シャーリーならほっといても普通に突破しそうだな、うん。 多分戦後に普通に突破するし。 ベルX-1だっけか?「ああ、それとヴィルヘルミナさんは、コレをよろしくね」「……?」 もうコレで終わりかな、と思っていると。 ミーナさんが、そこそこの厚みの紙束を渡してくる。 眺めてみれば、それはブリタニア語とカールスラント語で何事かが羅列されたリストのようだった。 えーと、ラインメタル・マシーネンゲヴェーア42が云々……? あ、MG42の事か。 略称じゃなくて正式名称で書かれてるから一瞬わからなかったわ。 それにしても、何ぞこれ。 装備品リストかなんかかね? リストから眼を離してミーナさんを見つめる。 一息置いて、答えが返ってきた。「ヴィルヘルミナさんには、一○○○時より、装備品の保管庫のチェックをお願いします」「――えぇ!?」 エイラさんよ。 何故貴女が驚きの声を上げるんだ? 普通オレが驚くんじゃないだろうか……いや、オレにとっても普通に寝耳に水だけどさ。 エイラの驚きの声を無視して、美緒さんが言葉を引き継ぐ。「ヴィルヘルミナは前回の戦いにおいて、自分の負傷についての虚偽申告があっただろう……指揮官に対する虚報は厳罰ものなんだぞ? ま、結局のところ負傷はなかったわけだし、おめでたい事だったからな。 この程度で勘弁しよう、というところだ」 わっはっは、と笑う美緒さん。 いや、笑って誤魔化さないで、おめでたいとか関連用語そろそろやめてください! ううくそ、微妙に恥ずかしいぜ……生理痛が完全に消えたのが昨日今日なのでまだ記憶に新しいのだ。 連想される単語を使われると、年甲斐も無くビクビクしてしまう……顔には出ないけど。「こういう日に自室禁固は少し可哀想だから……確認が終わったら、砂浜まで報告に来てね」 ミーナさんが小さく囁いて、黒板の前へと歩み去っていく。 結構量あるけど、実際のところそんなに時間かからない作業……なのか? リストに目を落とし、連なっている行の多さに始める前から少しうんざりして、顔を上げると。 左隣に座っていたトゥルーデと、目が合った。 ちなみに右隣はエーリカである。 トゥルーデが真面目な顔で小さく頷いて、すぐに視線をミーナに戻す。 ……ああ、なるほど。 そういう事ね。 ありがとうなトゥルーデ……誤解されてる気がひしひしとするが。 まぁ、水着姿にならなくて済むならそれはそれでいいか。 オレの羞恥耐性的にもその方がいい……よな? うん。 昨日の晩、覚悟を決めてカールスラント支給のワンピース水着を着てみたわけだけど。 流石に、水着は露出が高すぎたし。 死ぬかと思ったし。 これが最後の通達事項だったらしく、そのまま解散となる。 何事か話しかけてこようとしたエーリカが居たが、さあ、さっさと探すぞ! とか言いだしたバルクホルンに引っ張られて行った。 辛うじて聞こえた声によると、水着貸して……とかなんとか。 いや、ズボンとかサイハイとか借りた恩はあるけど、お前自分の水着持ってるだろ……部屋片付けて探せよ。 第一、サイズ合わないだろうに。 あいつのほうが今のオレより身長高いんだし。 その光景を眺めていたら、相変わらず半分以上寝こけているサーニャを背負ったエイラさんと、芳佳という珍しい組み合わせが通りかかる。 目の前を通り過ぎ……ずに、顔だけこっちに向けて、残念そうな顔でエイラが呟いた。「ヴィルヘルミナの水着姿、ちょっと期待してたんだけどなぁ……」「……仕方、無い」「ヴィルヘルミナちゃん、そういえば一緒にお風呂とかしたこと無いよね」 水着姿から何を連想したのかは知らんが、芳佳さんが疑問の声を上げる。 あー、まぁ、それはね? 誰かに裸を見られる羞恥心も無いとは言わんが、やっぱり心苦しさがね? 時間ずれてもシャワーは浴びれるしね。 余計な誤解を招きたくないし。 そのお陰で妙な隔意を持たれてもなんか嫌だしね。 それに女の子の100%露出とか、エロビデオの中でしか見たこと無いのですよ芳佳さん。 年長組と風呂場で鉢合わせるかもしれないとか、チェリーボーイの心を弄ぶのもいい加減にしていただきたい。 とは、おくびにも出さず。「時間が……合わない、だけ」 そう返しておくオレは超紳士である。 本場ブリタニア人もこれには真っ青だな、などと脳内で大喝采しつつ。 とりあえず起きてる二人と寝てる一人に先を促して、オレも退室の流れに乗ることにする。 ……あ、そういえば。 念のため、ちょっと種をまいておくか。 手近なところでリネットでいいや。「……リネット」「はい?」 素直に足を止めて、此方を伺ってくるリネットさん。 いい子だ。 水着姿楽しみにしてます!「……海の、天気は……変わりやすい、から。 空……気を……つけて」「? あ、はい。 ヴィルヘルミナさんも、残念でしたけど……お仕事、頑張ってください」 これでよし。 さて、何事も起こらないのが一番なんだけれど、なぁ。******「なっ、ななななんでこんなの履くんですか!」 砂浜から少し離れた岩場の上。 ストライカーユニットの模擬体を履いた芳佳が悲鳴を上げた。 何時ものセーラー服を脱ぎ、インナー姿になった彼女の隣には、ピンク色のワンピース水着を着たリネットが不安そうに立っている。 その二人の正面で、竹刀を地面に突き立てながら美緒は諦めたように答えた。「何度も言わすな。 万が一海上に落ちたときの訓練だ! ……第一、その模擬体を運んでいるときに気づかなかったのか?」「う、そ、それは……」 美緒の一歩後ろに居たミーナが、たじろぐ芳佳の姿に苦笑を漏らしながら告げる。「他の人もちゃんと訓練したのよ? 後はあなた達だけ」「つべこべ言わず、さっさと飛びこめぇ!」 芳佳と同じ、インナー姿の美緒が振るった竹刀が風を切る。 ひぇぇ、と情けない声を上げながら二人は背後の小さな崖へと走って、その身を躍らせた。 何だかんだ言って美緒の竹刀が振るわれたことはほとんど無いが、怖いものは怖いのである。 盛大な水音を二つたてて。 芳佳とリネットは海中に没した。 そのまま浮かび上がらない。 水面には気泡が幾つか浮かび上がり、消えていった。 その光景を眺めながら、美緒が呟く。「……浮いてこないな」「ええ」「それにしてもミーナ、水着、新調したんだな?」「ええ、この前のお休みのときにね。 ちょっと大胆すぎるかな、と思ったんだけれど」 ミーナが今着ているのは、カールスラント軍支給のワンピースではない。 白のビキニ。 その上に、カーキ色のシャツを羽織っている。 美緒は、何とはなしにミーナを見ていた視線を、手元の懐中時計に移してから。「まぁ、ミーナならそういうのも似合うだろう」「あら、ありがとう。 美緒は新しいのは買わないのかしら?」「私は子供の頃からずっとコレだからな……今更別の物を着て潮風に当たるというのも、考えられなくてな」 そのまま、懐中時計を見つめ続ける。 二人とも無言のまま、時計の針が時間を刻んで行く。 期待した結果が返ってこないことに、美緒は、大きくため息をついた。「やはり、飛ぶようにはいかんか」「そろそろ限界かしら……」 と、ミーナが心配の声を上げたとたん、海面に二つの影。 二人ほぼ同時に浮かび上がって、飢えた魚のように口を開けて、上手く行かないながらも酸素を補給しようとする。 その、どうしようもなく無様な姿を見て、美緒は先ほどよりも強く息を吐いた。「こらー、二人とも……何時まで犬かきやっとるかー」「い、いきなりなんて……無理……」 精一杯の芳佳の抗議の声も、何処吹く風で。 美緒は少し離れた場所を指差す。 そこには、優雅に平泳ぎで通り過ぎていくペリーヌの姿があった。 「少しはペリーヌを見習わんか。 あいつは一発で浮いてきたぞ」「そんな事言われても……」 そんな、恨めしげな芳佳の視線をペリーヌは悠然と受け止めて。「ふふん、豆狸には犬かきがお似合いですわ」 それだけ言い残して、泳ぎ去っていった。「ま、また狸って……むむむむあばうばっ!」 唸った瞬間に気が抜けたのか、重いストライカーユニットに引かれて再び海中に没していく。 そんな芳佳につられたのか、あるいは力尽きたのか。 同じように沈んでいくリネットを見て、この短時間に三回目となるため息を美緒は吐いた。////// カールスラント軍支給の黒と灰色のワンピースに身を包んだエーリカとトゥルーデは。 全体水練という建前に――少なくともトゥルーデは――従うべく、元気に泳ぎ回っていた。 それもしばらくの事。 一通り泳ぎ終わって、海面に漂ってぼうっとするトゥルーデに、やや遠からくエーリカが問いかける。「何見てんの? ……って、宮藤か」「な、何を言ってるんだお前は! 違う!」 慌てて視線を逸らすその姿に、ムキになっちゃって、おねーちゃん可愛いなぁ、と内心微笑ましく思いつつ。 エーリカは、動揺して沈みかけた親友に近づいていく。 俗に言う、犬かきという泳法で。 尤も、小さく水音を立てながら近づいてくるエーリカの様子のお陰で、呆れという名の平静を取り戻すことが出来たトゥルーデだったが。「……フラウ、お前もいい加減泳ぎ方を覚えたらどうだ」「えー、きちんと泳いでるじゃん?」「お前のは犬かきだろう! 私が言っているのはクロールとか、平泳ぎとかそういった物のことだ」「平泳ぎなら出来るよ」 そう言って、泳ぎだす。 もっとも、それはどう見ても手の動かし方を少し変えただけの犬かきにしか見えなかったのだが。 そんな友人の姿を見て、顔を手で覆うトゥルーデ。 本当にこいつは空以外ではてんで駄目だ、と絶望する。 当の本人は全く気にした様子も無く、自称「ひらおよぎ」を続けて。 トゥルーデを諦観のどん底に叩き落しながら、エーリカはふと思いついたように問いかけた。「それにしても、ヴィルヘルミナ……トゥルーデが何かしたんでしょ?」「……何のことだ?」「またまた惚けちゃってぇ。 ……ま、いいけどね。 トゥルーデは意地悪するような奴じゃないし」 最初からその可能性を考えては居ない態度。 長年一緒に視線をくぐった相棒の事である。 何より、先週以来ヴィルヘルミナとトゥルーデの仲は非常に良好なものになっていたのだし。「……もしかして、水に対する恐怖感でも、あった?」 ヴィルヘルミナは、海の上で死に瀕した。 海や風呂などの大量の水が、死の恐怖感を励起させてもおかしくは無いと思ったのだ。 だが、トゥルーデはそれを首を振って否定する。「違う、そういうのではない……まぁ、気にするな」 ふーん、と。 唸って、考えて。 エーリカは黙りこむ。 その様子を眺めて、目を瞑りながら。 トゥルーデは少し考えて、言葉を選んで話し始めた。「そのうち本人が言い出してく」「ねぇねぇ、ほら、背泳ぎ!」 何事か言いかけたトゥルーデを遮り、エーリカが宣言する。 話を中断させられた彼女が見たのは、顔だけ浮かせて、水中で仰向けになりながら手足をばたつかせているその姿。 それはやはりどう足掻いても背泳ぎには見えなくて。「お前は人の話を聞いているのかっ! 第一それは背泳ぎじゃなくてもっとおぞましい何かだ!」 そう叫んで、犬かきのくせに妙に早く泳ぐエーリカを追い掛け回し始めた。//////「肌がひりひりする……」「暑いな」 砂浜に座り込んでいるエイラの隣、肩を寄せ合って同じように大人しく膝を抱えているサーニャが小さく呟く。 独り言のつもりだったのだろうが、隣に居るエイラはきちんとそれを拾っていた。 サーニャは、黒のビキニ。 エイラは、白のセパレーツの水着に身を包んでいる。 北国育ちの二人には、今日の日差しはやや強く感じられるようだった。 二人の視線の先には、水遊びを楽しむ少女達。 皆と触れ合う事が少ないサーニャは、その輪の中に積極的に混ざることが出来ずに居て。 それ以上に何よりも。「……眠い」 今はまだ、彼女は寝ているはずの時間だ。 声と、視線すら眠たげで。 夜間哨戒の後のため、体力が充実しているわけでもない。「帰って寝るか?」「ううん」 それでも、エイラのその問いには否定の声を返す。「皆と一緒に、居たいから」「……そっか」 それっきり、エイラは問うことを辞めた。 サーニャがそう望むなら、出来る限りそうしてあげたいと、彼女は思う。 だから、サーニャの頭が眠気に負けてエイラの肩に寄りかかってきたときも、エイラは慌てず騒がず、静かに肩を貸した。****** 格納庫の奥、第二倉庫。 その重苦しい扉を開ければ、暗い室内から漂ってくるのは機械油と埃と金属の匂いだ。 感想。 くせぇ。 換気窓も換気扇もあったもんじゃないし。 流石罰仕事だぜ。 3Kの内2要素を満たしかけてる。 うう、今頃娘さんたちはキャッキャウフフしてるんだろうなぁ。 女の子の水着姿である。 何歳になってもその響きに魅力を感じるのが男のサガである。 下着と見まごうばかりの露出度の癖に! けしからん! ルッキーニとかの年少組は割とどうでもいい。 将来に期待である。 今見たいのはシャーリーとかミーナさんとか美緒さんとかのである。 照りつける太陽! 健康的な肌の色と、色鮮やかな水着! 揺れるおっぱい! 濡れ髪が張り付いたりしてるとなおよしだ!「…………ふぅ」 ……想像と目の前の現実のギャップを自覚したらちょっと鬱になってきた。 終わったら砂浜のほうに報告に来るように、って言ってたからさっさと終わらせて肌色桃源郷に向かうとしますか。 今日ネウロイが来る可能性が高いのは判ってるが、何時来るかまでは判らないからな。 見逃したら泣き寝入りする。 部屋の電気をつけて、部屋の中に踏み込む。 電球の頼りない光に照らされながらその存在を自己主張するのは、漂ってきた匂いに相応しい物ばかりだ。 鉄と、鉄と、鉄。 機械化航空歩兵備品保管庫、という名前どおり、そこには銃器を始めとした様々な物が陳列されている。 手渡されたリストの数量と、此処にある物の数がしっかり合っているかをチェックすること。 それがオレに課された罰仕事であり、まぁ、要するに棚卸しの真似事だった。 一日だけで終わる罰仕事でよかったと思うべきか、トイレ掃除や風呂掃除の方が楽だったかもしれないと思うべきか 普段から格納庫にあるもの――たとえば、ストライカーの懸架台や壁のラックに備え付けられている装備。 出撃時に即座に持っていけるそれらと違い、此処にあるのはその予備だとか、使わない装備なんだろう。 見たところ、使用者が多いせいもあるのか、MG42とか替えの物だろう銃身だけのを含めて結構立てかけてあるし。 その脇には、MG34だとか、見たことの無い2m近い長さのある重機関銃があったりした。 銃器オタクとか大歓喜なんだろうなぁ……MG42と34くらいしか判んないぜ。 拳銃とかだったら結構判るんだけどな。 モーゼルとか、ワルサーとか、南部とかコルトパイソンとか……ああ、コルトパイソンはなさそうだな、この基地。 まぁ、個人の装備は個人で管理したり、あるいは一般の人員と共通なんだろう。 此処には無さそうだ。 弾薬も見たところ無いな……まぁ、当たり前か。 そういうのは失火事故とかあったらとんでもないことになるだろうから、もっと離れたところだろう。 銃器以外にも、なんか焼け焦げた複数気筒の小さなエンジンっぽい物――多分、魔道エンジン――が置いてあったり。 細々とした物もまとめて箱に入れておいてあったりして。 というか、焦げたエンジン廃棄しろよ……この分だと相当どうでもいい物まで置いてありそうだなぁ。 うむ。 すげぇ面倒くさそうだ……が、任された仕事は確りしなきゃなぁ。 あんまり早く終わっても疑われるだろうし水着着用コースかもしれないし。 うー、とりあえず数えるか。 鉛筆を取り出し、脇に挟んでいたリストを眺めて、簡単そうなところから始めることにする。 えーと、まずは身近なブツであるMG42の銃身がちゅうちゅうたこかいな……っと。 うん、数は有ってるな。 それにしても、重機関銃を身近なものに感じるとか……ぶっちゃけ嫌だなぁ。 次は、なんだこの発電機の親玉みたいなの? ……い……いぐにしょんなんちゃら? こういう大物は判りやすくて楽だな、チェック、と。 えーと、次のこの出来損ないのストライカーみたいなのは……フロート? フライングユニット用? 見た感じ随分古いな。 エンジンといい、使わない装備なら捨てちゃえばいいのに……物持ちがいいのやら何なのやら。 薄暗い照明の下、黙々と数量を数えては鉛筆でチェックをつける作業を続ける。 室内のお陰か、あるいは人が余り立ち入らない場所なのか、埃っぽくも涼しいのは良いんだが。 やっぱり! 凄く面倒くさい! うう、しかしコレが終わった後にはたゆんたゆんパラダイスが待っているんだ。 頑張れオレ、負けるなオレ。 この目に、皆の水着姿を焼き付けるそのときまで! ****** 脇に抱えていた塗装の成されていないストライカーユニットを投げ出しながら。 芳佳は砂浜の上に倒れこんだ。 全身が休息を求めている。 それは、彼女の横に座り込んで荒い息を吐いているリネットも同じ様だった。「うう、疲れたぁ」 まだ濡れている芳佳の髪から海水が滴り落ちて砂に染み込み、すぐに乾いていく。 芳佳にとって、水練という名の拷問――ストライカーユニットを履いたまま着水した時のための訓練は正しく拷問だった。 使用したのは重量のみを再現した、模擬機材である。 本来なら飛行用の呪符がある程度の浮力を発生させるため、魔力や体力を消耗しつつも割と難なく浮いていられるのだが。 模擬機材にそんな機構は当然ながら付属していないので、足に結構な重さのウェイトを巻きつけて海に飛び込むようなものだった。 実際のところは、自ら飛び込んだというよりも美緒に無理やり海に叩き込まれたのだが。 「何でこんな事するんだろう……ミーナさんも、遊べるって言ってたのに」 「海は広いからだよ」「シャーリーさん?」 誰に聞かせるでもなく呟いた愚痴は、予想外の返事を得た。 声の元、シャーリーは身を起こそうとする芳佳のを手で制しながらその隣に腰を下ろす。 濡れ髪が肌に張り付いているところを見ると、一泳ぎしてきたところなのだろう。「海ってのは静かに見えて、波が大きいから流されるし、水は冷たいからさ。 魔力や体力を消耗せずに、浮いていられるならそれに越したことは無いよ。 海に不時着して、見つけてもらうってのは結構大変な事なんだ。 坂本少佐は海軍の人だからそれが良く解ってるんだろうね」 まぁ、漂流するほど長く海水に露出したら、エンジンとか、保護措置されてるからって再起不能だろうし。 さっさと脱ぎ捨てちゃったほうがいいよ。 そう締めてから、シャーリーは上体を後ろに倒した。 青い、何処までも抜けるような雲ひとつ無い空。 離れたところからは、ルッキーニやエーリカが騒ぐ声や水音が聞こえてくる。 普段は温いと感じる潮風も、疲れの溜まった芳佳やリネットにとっては非常に心地のいいものだった。「平和だ……」 芳佳の口から、そんな言葉が零れ出てしまうほどに全てが穏やかだった。 もちろん、芳佳だって、此処が最前線だということを忘れては居ない。 過去数週間で、嫌というほど思い知ったのだから。 それでも、いや、だからこそ彼女は今のような穏やかな時間が心地よいと、今まで以上に実感している。「こんな日が何時までも続けばいいのに」「まったくだ。 ネウロイの奴らも、このまま攻めて来なければいいのにな」「私もそう思います」 芳佳の言葉に、シャーリーが続き、息をようやく整え終わったリネットが二人に同意する。 そして、しばしの沈黙。 三人の呼吸の音と、潮騒が場を支配して行く。 数分。 静寂は、誰かの砂を踏む元気な足音によって終わりを告げた。「シャーリー、ボール持って来た! あそぼっ!」 ルッキーニの声に、三人がそろって上体を起こす。 白いスポーツタイプのビキニを身にまとったルッキーニは、その言葉通り手ごろな大きさのボールを抱えていた。「よーっし、それじゃあやるか! 宮藤とリネットもやるよな?」「はい、もちろんです! 坂本さんも休憩が終わったら遊んで……じゃない、自主訓練して良いって言ってたし」「わ、私はもうちょっと休憩してから……」 ルッキーニ達の誘いに乗って立ち上がった芳佳は、座り込んだままのリネットを見つめて。 リーネちゃんの方が、胸におっきな浮きが二つあるから楽なのに、と少しばかり思考する。 その様子を見て、シャーリーがにやり、と笑った。「ふふん、宮藤……その様子だと、あたしやリネットとボール遊びしたとき大変だな?」 ばいんばいんだぞ、と胸を張るシャーリー。 隣に陣取っていたルッキーニも、ばいんばいんだよ! と続いて。 それを聞いた芳佳の目線が、自然とシャーリーの胸部に誘導された。「ばいんばいん……」「よ、芳佳ちゃん!」「え、ち、ちがうのリーネちゃん! シャーリーさんも!」 耐え切れず噴出すシャーリーに、漸くからかわれていた事に気づいた芳佳が、真っ赤になってうなだれた。 リネットはリネットで、話の流れを変えようと何かを言おうとして。 「そっ、そういえば! 天気って、大丈夫なんでしょうかっ」 そんなことを聞いていた。 芳佳はその言葉を渡りに船と、シャーリーはまぁこの辺で勘弁してやるか、と思い首を捻る。 ルッキーニはボールを持ったまま、シャーリーを見つめていた。 ふむ、と一つ唸ってから、シャーリーは空を見渡す。 雲ひとつ無い。 水平線の向こうに、夕立を呼ぶ積乱雲すら存在しなかった。「いや、大丈夫だと思うぞ? 少なくとも午前中は何にも無いだろ」「うん、私もそう思うけど」 芳佳も、海の近くに住んでいたのだ。 海の天気がどのように移り変わって行くかは、少なからず判る。 「うーん、じゃあどうしてヴィルヘルミナさんはあんな事言ったんだろ……」「あんな事?」「海の天気は変わりやすいから、空に気をつけろって……」「……山じゃなくて?」「あっ……そういえばそうですよね?」 あいつ、どっか抜けてるところあるからなぁ、と呟きながらも、シャーリーは空を見上げる。 それにつられて、他の三人も真っ青な空間を眺めた。 十秒ほど経って首が疲れ始めた頃、芳佳が疑問の声を上げる。「ん……? あれ?」「どうしたの芳佳ちゃん」「あそこ……真っ直ぐな雲?」 芳佳の指差した方向。 青い空に、小さな引っかき傷のような、白い軌跡。 本当に小さく、それこそ長さで言えば指の爪ほどのそれは、確かに雲で。 そして、不自然だった。 シャーリーが手を額にあて、光を遮る。 眼を細めて、その雲の前後へと視線を走らせた。 そして、見つけるのはゴマ粒よりも小さな点。 かすかに見えるシルエットは、シャーリーが知るどの航空機とも違う。 それの意味するところはたった一つ。 それを理解した瞬間、シャーリーは動いていた。 驚いている芳佳とリネットを置き去りにして駆け出すと同時に、肺腑の全てを吐き出す勢いで、叫ぶ。 それが、望んでいた平穏とは全く逆のものだと理解しながらだ。「敵襲――!」 ****** んあー、終わった終わった。 日差しがまぶしくてたまらんぜー。 新鮮な空気! 照りつける陽光! そしてしばらく歩けばドキドキ水着天国! 労働の対価って素晴らしいね。 英語で言うとファンタスティックだ。 独語だとファンタズィーク。 と、そんな意味も無い思考をしてしまう程度には疲れました。 書類仕事、案外疲れるよ…… 滑走路に出て身体を伸ばしていると、側壁を飛び越えてこっちに駆けて来る人影。 赤いビキニを身に着けたその姿、は――「ヴィルヘルミナかっ? 敵襲だ! 高高度、進路西南西!」 ――――OH。「あたしは追撃に出る! 中佐に伝えておいて!」 横を駆け抜けていくシャーリーに、辛うじてうなずきを返す。 ああ、なんだ、その。 すごいな。 言葉が見つからない。 強いて擬態語で表すなら、『ばるんばるん!』って感じである。 脳がルッキーニレベルまで退行した。 生きてて……良かった……ッ! 同時に、全力疾走はしないようにしよう、と心に決めた瞬間でもあった。 あんなに揺れると痛そうです。「ヴィルヘルミナさん!」「ヴィルヘルミナちゃん!」 余韻に浸っていると、芳佳とリネットが側壁を乗り越えて来て。 そちらのほうに意識を向けていると、背後から爆音が響いてくる。 格納庫で反響、増幅された魔道エンジンの音だ。 慌てて脇によけるたオレの横を、猛スピードで飛び立っていくシャーリー。 風にあおられる髪の毛を押さえながらその背中を見送る。 ストライカーの音も変なこと無かったみたいだし……この分だと問題はなさそうだな。 「リーネちゃん、私達もいこう!」「うんっ」 飛び立っていくシャーリーを見て、二人も格納庫の中へと走っていく。 うーん……リネットのピンクのワンピース……良いなぁ。 芳佳は予想通り普通のスク水でした。 十五年位前に飽きるほど見たからこっちは別にいいや。 しかし、リネット、水着着るとすごいね、うんうん。 脳内HDDにその光景を焼き付けていると、二人ともストライカーで出撃していきました。 何も持たず、水着姿のままで。 素晴らしい…… ……って、いや、駄目じゃないかオレ! 割と緊急時なのに、何考えてんだ! 第一あいつらも慌てやがって、武器無しとか何しに行くつもりなんだ!? 漸くやってきた美緒さんとミーナさんの姿に一瞬思考が持ってかれそうになるが我慢して。 シャーリーと芳佳、リネットが出撃していったことを伝える。 それを受けた二人は、頷き合って。 ミーナさんが電話のほうに走り、美緒さんが格納庫脇の木箱の上に地図を広げた。 受話器を耳に挟んだミーナさんが美緒さんに逐次情報を伝えていく。 地図には定規で直接線が描かれ、ネウロイの予想進路を描き出した。 それが指し示すところは、ブリタニア首都、ロンドン。「ヴィルヘルミナ、通信機を持って来てくれ」「……ん」 美緒さんの指示に素直に従う。 格納庫の棚においてある、小型の通信機の方に走りよって、少し重かったので軽くして。 電話の受話器を置いたミーナさんと一緒に、美緒さんの元へと走った。 通信機の電源を繋げて。 ミーナさんが通信機に語りかける。「シャーリーさん、聞こえる?」『中佐?』「目標は超高速型。 すでに、内陸側に入られてる」『方角は?』「……高度18000を、西北西、ロンドン方面に向けて侵攻中」「直ちに単機先行せよ」 何時ものように、言葉を引き継いだ美緒さんが、そこでにやりと笑って。「シャーリー、お前の速度を見せてやれ!」『了解、まっかせといて!』「宮藤とリーネが追従している。 後詰として三人送る、無理はするなよ!」 それで通信は一先ず終わって。 その頃には皆もう格納庫の周りに集まってきていた。 かなり楽しみにしていた水着天国も、この雰囲気の中では全然楽しめない。 指揮官である二人が頷きあい、その場に並み居る面々を眺めて、一瞬の思案顔を見せて。 先に口を開いたのは、やはり司令であるミーナ中佐。「バルクホルン大尉、バッツ中尉、ルッキーニ少尉、出撃。 合流後の指揮はトゥルーデに任せるわ」「了解した」「はーいっ」「……ヤー」 名前を呼ばれたのは、シャーリーのパートナーであるルッキーニと、トゥルーデとオレ。 比較的巡航速度の速い三人組だ。 返事もそこそこに駆け出す。 目指すは当然、オレのストライカーユニット。 懸架台に辿り着いたところで、トゥルーデが声を張り上げて聞いてくる。「ヴィルヘルミナ、着いてこれるな?」「……ん」 大丈夫、起動にも加速にも時間はかかるが、巡航速度で数百キロの差が有るんだ。 出撃に数分程度の遅れが出たって、追いついてみせる。 その自信が有るからこそ、うなずきを返した。「よし、ルッキーニ、先行するぞ」「はーいっ!」 相変わらず元気で、微妙に緊張感の無いルッキーニの声を聞きながら、オレはオレのことに集中。 ルッキーニとトゥルーデがストライカーユニットをほぼ同時に装着して。 二機の魔道エンジンの音が高らかに吼え猛り――破裂音。「に゛ゃっ!?」「なっ!?」「ルッキーニさん、大丈夫!?」 ルッキーニのストライカーが突如として小さく爆ぜ、小さな破片を撒き散らす。 なんだ、初期ロットの不良品か?! いや、そんな事ねぇだろ……きちんと飛んでるところ見てるし。 ルッキーニに怪我等は無いようで、小さく立ち上る煙に咽ながら、ストライカーから足を引き抜いていた。 その姿を見てバルクホルンが一瞬逡巡したが、ミーナさんの視線を受けて滑走路へと飛び出していく。 一人で行くとか戦力の逐次投入という割と最悪な状況になりかねんが……まぁ、接敵する前にオレも合流するし何とかなる。 バルクホルンの技量なら早々落とされはしないだろうし。 何で爆発したかは大いに気になるところだが、いやな予想を振り払うように起動に専念。 気が逸れればそれだけ遅くなるし、シャーリーは大丈夫なはず、変な改造とかは行われていない。 と、思っていたかったのだが。 耳に届いたルッキーニの声がそれを阻害する。 「うぇー……なんでぇ? シャーリーのと同じように弄ったのに!」 ……は? 弄くった……シャーリーのと同じように? ちょ、おま、何? 深夜まで一緒に居て、あの展開で魔改造入るの? シャーリーも一緒に居たのに? しかもルッキーニ自身のストライカーまで弄ったとか、寝てないのかよ!? いや、そんなはずは無いよな。 眠そうなそぶりはちっとも見せなかったし……じゃあ、一体、何が? どういうことなんだこれは、ちょっと予想外すぎるぞこの事態!「ルッキーニ少尉ぃ? ちょっと、詳しく聞かせてもらえないかしら……?」 にっこりと、しかし目が笑っていないミーナさんがルッキーニに問いかけ、その手が肩に乗せられる。 あれ、軽く置かれてるだけに見えるのに何でだろう、ルッキーニの肩が万力のように締め付けられている気がする。 その雰囲気に気圧されたのか、青い顔をしたルッキーニが誤魔化すように言った。「ほ、ほら、あのー、そにょ、グレムリン? そう、グレムリンだよ! 夜、機械を故障させちゃう奴! 格納庫にキャンディーとかチューインガムをを置いておかないから――」「ルッ・キー・ニ・しょ・う・い?」「ひゃっ!? ご、ごめんなさいっ!?」 そしてミーナさんに威圧されたルッキーニが、あっさりと口を割った。 弱いな……というかグレムリンって何だよグレムリンって。「あ、あのね! 昨日の夜ね、シャーリーと一緒に、ストライカーを好き勝手に弄ってみたの」「好き勝手って……どのくらいかしら?」「んー、わかんない。 アタシがあれこれ言ったら大体そうしてくれたし、シャーリーも大丈夫って言ってたし…… しゃ、シャーリーが大丈夫って言ってたから多分平気だよ、うん!」 うおお、マジでやべぇ! ルッキーニの魔改造ですら奇跡的だったのに、シャーリーが割と考えなしに調整したとか。 何が起こるか解らない。 最悪、交戦中に空中分解とかエンストとかしたら命が無い。 バイクのエンジンも、フィーリングで弄くりまくると碌な結果にならないのはよく知ってる。 こんなんだったら、いっそネウロイとか見つけてもらわない方が良かったかもしれん。 種をまくとか何調子こいたこと考えてたんだ数時間前のオレ。 ロンドンのほうにも高射砲部隊とか迎撃部隊とか当然居るんだろうし、ほっといても良かったと思うが後の祭りだ。 とりあえずミーナさんはにっこり笑ったままルッキーニの頬っぺたを引っ張ってさんざんぐにぐにした後、美緒さんの方に駆け寄っていきました。 怖い、ミーナさん普通に怖いよ! 足元、ストライカーユニットを見る。 いまだ起動途中で、低い吸気音が微かに聞こえてくるだけだ。 先ほどから何とか起動を早めようと魔法力送り込んだり集中してみたりするのですが、何時もどおり時間がかる。 それはつまり、何時もどおり遅いって事で! 遅い! 遅すぎる! 早く早く! 早く起動してくださいお願いです! 動け、う・ご・けぇぇぇぇッ!****** 快。 シャーリーの心の中は、その一つの感情によって彩られていた。 高空の大気を切り裂いていく感覚。 保護魔法ごしに、冷たい空気が身体を撫でていく感覚。 眼前に何処までも広がる青い空間と、眼下の白い雲の海。 ストライカーの調子も予想よりもはるかに良い。 そして、それ以上に空を飛べることが嬉しかった。 加速が止まらない――違う。 空が、速度の世界が自分を受け入れてくれている。 その感覚が、確信がある。 今までに無く、この大空が身近な場所に感じられていた。『シャーリー大尉、聞こえるかシャーリー大尉! 即座に帰還せよ!』 インカムから流れてくるノイズ交じりの美緒の声。 帰還を促すその内容。 何故だ、という自問に、あ、バレたか、と自答する。 ミーナとの約束は、改造するとしても戦闘に支障の出ない程度に留めておく、というものだ。 大方、似たような調整を施したルッキーニのチェンタウロが不都合でも起こしたんだろう、と彼女は当たりをつける。 エンジンや機構の差か、単なる運か、そんな事は彼女にはどうでもいい。 ルッキーニには悪いことをした、と思うがそれだけだ。 それよりも、今はネウロイと接触するまで、この感覚を楽しんでいたい。 それに、シャーリーには今は自分しか居ないとの確信があった。 先ほどインカム越しに聞こえてきたミーナの言葉によれば、相手は高速型である。 部隊最速の自分以外の、誰が真っ先に喰らいつけるのだ、という思いもあった。 だから、依然として帰還を促す美緒の声に、シャーリーはごめんなさい、と心の中で頭を下げた。 「少佐、ごめん、インカムの調子が悪いみたいだ!」『な、シャーリー! おい、きいているのか! おい、シャー』 容赦なくインカムを停止させる。 これで、シャーリーの耳に聞こえてくるのは風の音とエンジンの音だけ。 何時も通りの、空を一人で飛ぶときのBGM。 彼女の速度が生み出す即興曲だ。 奏者も、観客も彼女ひとり。 そこに寂しさは無い。 昨晩、芳佳の言葉でシャーリーの心に戻った思いが、輝いて彼女の身体に熱を送っている。 人の身で容易に辿り着けない場所を、自由に闊歩しているという感覚。 そして、己の望むままに、速度と共にあるという事実。 こうやって飛ぶことで、シャーリーはそれを再確認すると同時に、存分に味わっていた。 そんな楽しいひと時も、やがては終わりを告げる。 航空歩兵に必須ともいえる、目のよさ――純粋な視力ではなく、広大な空間で目標を見つけることの出来る目ざとさ――が、警戒を促す。 眼前、12時の方向。 徐々にに大きくなってくる黒点がある。 推進部と思われる部位から微かに赤い光を漏らす存在――ネウロイだ。 たすき掛けにしてある、皮のストラップに手を伸ばす。 背中に感じる冷たい鉄の感触。 愛用の得物、ブラウニー・オートマチック・ライフル。 有効射程にはまだ遠い。 余計な動作で加速を殺したくない。 シャーリーはそう判断した。 数秒後、ネウロイのシルエットが赤く光った。 何時ものことだが、射程はネウロイに分がある。 己を射殺さんとする熱線を避けるため、シャーリーは反射的に身体を横に滑らせようとして。 しかし、それを辞めた。「……いや、前だ!」 更なる加速と共に浮かべるのは、快活な、あるいは獰猛な笑み。 前に出ようとする意思は魔道エンジンを鼓舞し、唸りを上げる推進力が宣言を履行する為に身体を前に押し出していく。 一秒にも満たない差。 ネウロイの身体から放射状に伸び、若干距離を進んだ後に物理法則を無視して捻じ曲がったビームは上下左右からシャーリーを押し包もうとして。 正面、それこそ人間一人分程度の隙間を一直線に駆け抜けていくシャーリーの影を焼き払った。 前進することで一気に近づくネウロイの姿。 それは、巨大な鍔の付いた両刃の直剣にも似た形で。 あるいは、風斬羽から風を吐き出して速度を増していく黒い矢だ。 追いかける。 降りかかる疎らな破壊の光を、ただ前に出るという行為だけで回避しながら、シャーリーはネウロイに肉薄する。 高度はわずかに彼女のほうが高い。 その差50mほど。 そのまま上を取り、銃弾を浴びせかけてやろうと背中の機関銃に手を伸ばした瞬間、ネウロイに異変が起こった。 各部、ビーム照射部位が急速に光を失っていく。 それと同時に、ネウロイのシルエットが徐々に変化を始めた。 響き渡る連続した金属音。 なるほど、確かに超高速型だ。 何事かと警戒して様子を見守っていたシャーリーはそう思う。 細く、長く形状を変えていく機体。 そして、より強く光り輝き始める推進部。 攻撃を捨てて、ネウロイが速度を持ってしてウィッチの意図を打倒しようとしている。 合理的といえば合理的だろう。 ネウロイにとっては、都市部までたどり着きビームの雨を降らせ、瘴気を撒き散らせば役目は果たせるのだ。 ウィッチの目的は、ネウロイが都市部にたどり着く前にそれを撃破すること。 しかし、まっすぐにロンドンを目指すこのネウロイの役目には、ウィッチの撃墜は入っていないのだから。 だがそれも、通常のウィッチが相手だったらの話だ。 今此処でネウロイが対峙しているのは、ただのウィッチではない。「……へぇ、このあたしにスピード勝負を挑むとは、なかなか良い度胸だ」 金属のきしむ音を響かせながら。 長く、細く、より矢のようなシルエットを先鋭化させていくネウロイを見て、シャーリーは笑みを浮かべる。 確かに早い。 今ですら、水平速度で800km程度は出ているはずのシャーリーを徐々に引き離し始めている。 だけど、と。 稀代のスピードクィーンは、その笑みを緩めずに宣言した。 「悪いけど、今日は負ける気がしないんだ!」 飛ぶことが楽しくて。 速い事が嬉しくて。 まるで、今日始めて空を飛んだみたいな、そんな気持ちの日に負けるはずが無いと。 シャーリーは確信する。 魔法は精神的なものだ。 思いが加速すれば、魔法力を物理的な力に変える魔道エンジンはそれに応えようとする。 そして、出鱈目で常識破りで、しかし奇跡的なバランスの上に成り立ったチューンはそれを可能にした。 風を、大気を、前を遮るありとあらゆるものが、シャーリーの速度に屈服して――否、彼女を受け入れていく。 ネウロイに追いつき、その巨体が生み出す気流を叩きつけられてもそれは変わらない。 黒い魔剣にとって虫にも等しいはずのシャーリー。 かすかに加速を緩めながらも、しかしその濁流には決して流されない。 切り裂いて駆け抜けて、前へ。 唯一点、刃のようなネウロイのその切っ先、今だかすかに赤い光を漏らす場所。 そこがネウロイのコアだと信じて、そこを撃ち穿つ為の最適のポジション目掛けて、唯只管に空を駆ける。 空という終わりの無いバックストレートを、その質量に蟻と像ほどの差がを持つ一人と一機が疾走していく。 双方とも、ただ直進するという意義のみを持って己の存在を世界に主張。 相手よりも速く、相手よりも前に、自分よりも前に何人の存在も許さない、と叫んでいるように。 拮抗は一瞬だ。 シャーリーのほうが速い。 加速は緩みながらも決して止まらず、じわじわと、しかし確実にネウロイを追い越していく。 ネウロイも必死に推進部位を輝かせるが、高速に適した形態を取っても、限界というものが存在した。 苦し紛れにその身をシャーリーに寄せるが、焼け石に水をかけるよりもその効果は微々たるもの。 彼女の速度は緩まない。 前に出るという揺ぎ無い意思が、そうさせている。 黒い巨躯が生み出す大気の奔流。 シャーリーがその濁流を切り裂いて、ついに突破する。 射撃ポジションまであとほんの少し。 そこにたどり着こうとした瞬間、彼女の背筋を、甘い痺れにも似た感覚が駆け上った。 ――あ、この感覚。 そう思考した直後、フラッシュバック。 目の前の青空が一瞬だけ、白く光り輝く塩湖へと変貌して、元に戻った。 似ている、と思い、即座に否定する。 似ているんじゃない。 これが、本物なんだ。 理性や本能よりも先に、彼女の魂がそれを理解した。 この速度に追いつくことの出来ない理性や本能が、不安と警鐘を鳴らす。 良いのか? 本当に、行って良いのか? そんな思考が、未知の領域に至ることを恐怖する衝動が脳裏を埋め尽くして。「当たり前だろ、あたしはグラマラス・シャーリーだぞっ!」 自然とシャーリーの口を付いて出たその言葉が、彼女の全てを掌握した。 彼女の故郷、リベリオン。 自由の国と呼ばれるそこは、実のところそれだけではない。 ヨーロッパから大西洋を渡って到達した人々の作り出した、開拓者の国である。 未踏領域? それがどうした! 自分の一瞬の弱みを蹴っ飛ばして、後に残った意思は唯一つ。 ――前へ! 思いと肉体、今まで決して重なり合わなかった二つの速度のシルエットが、完全に重なり合う。 思考するよりも早く、青く光り輝くシールドが壁を貫く破城槌として物理界に描き出された。 シールドに続き、魔法がシャーリーの周囲を駆け巡り、大気中のエーテルを巻き込んで光の輪を形作った。 己に許された力で、人類が今だ超えたことの無い領域を、一思いに貫く――「――いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」 叫んだ。 咆哮が力を呼び、力が結果を手繰り寄せる。 その声に応える様に、魔道エンジンが限界以上に回転し、猛々しい凱歌を歌った。 シールドによって引き裂かれていく空気の壁が生み出す気流が、シャーリーの身体を揺さぶり、一瞬だけ水蒸気の傘を形作る。 魔法によって与えられた加速度が生み出す強烈な負荷を、強化と保護の魔法で握りつぶした次の瞬間。 それは余りに唐突に、そしてあっけなく訪れた。 爆音、そして衝撃。 ****** ――速い。 『それ』が、シャーリーに抱いた感情は――それが仮に感情と呼べるのならば――その一つだけだ。 数週間前の様な特攻型とはまた違い、速度を持って目的を達成せんとすべく生まれた『それ』。 高空での直線飛行ではウィッチを容易に凌駕する筈であった己の、さらに速度に特化した状態に肉薄し、前に出ようとするウィッチ。 速度とは力だ。 追いつかれねば追撃を受けることも無く、相手の準備が整う前に懐に入り込めば、あとは一方的な蹂躙が待っているだけ。 そのはずだったのに、その目論見は容易に破綻していた。 ならば、と『それ』は判断する。 速度ではなく、鉄火にて対抗すべきだと。 『それ』の感覚器がシャーリーの姿をはっきりと捉える。 距離にしてたったの数十メートル。 空という広大な空間においては、それはお互いの吐息がかかるほどといっても過言ではない距離だ。 瞬間、『それ』はウィッチが己を見ておらず、また笑みの表情を浮かべているのを見て疑問を浮かべる。 が、理解は出来ない。 元より『それ』と人類との思考は異質なものだ。 疑問を棄却、ビーム照射部位の再展開を決断。 推進力に回していたエネルギーを再び引き戻し、砲座を再励起。 速度が落ちるが、構わない。 もはや選択は成されている。 目的と手段は明確で、ならば実行は容易い。 眼前の障害を打ち払う為に、『それ』の頭脳であり心臓であるコアからエネルギーが迸る。 だが、ビームを放とうとした、その瞬間。 唐突に、更なる加速を始めたウィッチ。 その速度に、或いは驚愕とも呼べるだろう思考を抱き、発射のタイミングがコンマ数秒遅れて。 ――『それ』は、己の身体に走る避け様の無い暴威に、ビームを放つ機会を永遠に失ったことを理解した。 爆音が、あるいは紙を引き裂いた時のような音が響き渡る。 それは大空が上げる歓喜の嬌声だ。 音の壁が打ち貫かれ、それに伴って破壊力すら伴う強大な衝撃波が発生。 速度を下げていた為に、あるいは狙いを付ける為にウィッチの後ろ下方に推移していた事が『それ』にとっての最大の不幸。 衝撃が直撃し、機首が一瞬で大きく下がる。 位置エネルギーの移動によって吸収し切れなかった破壊力が、機体先端部の装甲殻や構造体に無数の亀裂を発生させ。 伝播する衝撃はそのまま、厳重に保護されたコアにすら小くないダメージを与えるに至る。 機首が一瞬で下がることによって瞬間的に増大した空気抵抗、そしてその巨体故の慣性。 ダメージによって機能の低下したコアでは、傷ついた体を、あるいは空力を無視して飛翔する機構を支えることが出来ない。 再生する間もなく機体が悲鳴を上げる。 金属がひしげ、毟りとられていく音が連続する。 落ちていく。 推力も、浮力も、そして速度も失った者に待っているのは、墜落の二文字のみだ。 途切れ途切れになる『それ』の意識が最後に認識したのは、『それ』達が忌避する水に包まれ、沈んでいく。 その感覚だった。****** 「――――」 見えるもの。 それは、広大な青い空と、眼前のシールド。 聞こえるもの。 それは、何時に無く張り切っているエンジンの音と、かすかな風の音。 それが、今あたしの周りにあるすべてだった。 シールドに依然として圧力がかかっているのを感じるものの、予想していたような振動は全く無い。 怖くなるほど静かで、安定していた。 あの瞬間感じた衝撃と爆音のお陰で、一瞬、死んじゃったんじゃないかと思ったくらいだ。 だけど、水着しか纏っていない身体に感じる風の冷たさや、肩に掛けた機銃の重さは、紛れも無く本物で。 「これ、が」 これが、音速の世界。 空が、あたしを受け入れてくれている。 今、あたしは世界で一番速い。 世界で一番、速度に愛されている。 それを自覚した瞬間、胸の辺りがじわりと熱くなった。 やった。 やったやったやった! あたし、ついにやったんだ!「少佐ぁ!」『シャーリー! 無事か!?』「あ、あたしやりました! 音速を超えました!」『……はぁ? ネウロイはどうした!』 感動を誰かと分かち合いたくて、切っていたインカムを再度繋げる。 音速を超えるまでは、強いバフェットの所為かノイズ交じりだった少佐の声が、今は酷くクリアに聞こえて。 その声が、あたしが今本当は何をしていたのかを思い出させてくれた。 って、え、ネウロイ……あ、ああっ! しまった、交戦中だった! 途中から『あの感覚』に夢中で、すっかり忘れてたっ! あたしがこうやってのうのうと飛んでても生きてられるって事は、もうかなり引き離してしまったんだろうか。 流石超音速、凄い! って感心してる場合じゃない! 慌てて後ろを振り向いて、だけどそこに広がっているのは目の前と同じ、青い空と白い雲ばかり。 目を凝らせば、高度を急激に下げていく黒い塊が一瞬見えて、雲に隠れて見えなくなっていった。 ふむ……あの落ち方だと、降下って言うより墜落……だよな。「撃墜……したんじゃないかな?」『……シャーリー』 あたしの曖昧な報告に答える少佐の声が怖い。 撃墜確認しなきゃいけない場面だって言うのは良くわかる。 だけど、今は少しでも速度を殺すことが怖い。 この感覚を、音を超えた世界を少しでも長く楽しんでいたい。 しかし、ウィッチーズ基地の上空を通り過ぎたって事は、僅かな海を越えたらすぐに沿岸都市部にたどり着くって事だ。 もしネウロイが生きていたら、不味いことになるのは間違いない……けど、ううう……ああもうっ! 少しだけどうするか逡巡していると、少佐の長く大きなため息がインカム越しに聞こえてきた。『――はぁ、宮藤、リーネ。 どうだ?』『はいっ。 海に落っこちて凄い水柱をあげてたけど……ネウロイだったよね?』『芳佳ちゃんの言うとおり、ネウロイが落ちてきて、海に沈んでいきました。 かなりのダメージだったみたいですけど……』 宮藤が慌てて返事をして、それにリネットがを補足を加える。 しかし、かなりのダメージ、ねぇ。 あたしなんかやったっけ?『了解した。 まぁ……良くやったな、シャーリー。 丸ごと浸水すればネウロイといえども再起は不可能だろうし、着水の衝撃でコアが粉砕された可能性も有る。 後は海軍の管轄だな。 芳佳とリネットは後続のバルクホルンとヴィルヘルミナが追いつくまで墜落地点で待機』 少佐はてきぱきと指示を飛ばしていく。 あたしに指示が回ってこないのは、少佐なりの優しさって事なんだろう。 『バルクホルンとヴィルヘルミナは、最寄の哨戒艇がその地点にたどり着くまで周囲警戒。 芳佳とリネットは交代次第帰還するように。 というか、お前達……武器も持たずに飛び出して何をするつもりだったんだ』『あっ、あはは……』『ふぅ……宮藤にリネット。 帰ってきたら訓練のやり直しだ。 が、とりあえず今は全員無事な事を喜ぼう。 シャーリー、魔力が切れる前に帰って来いよ』 呆れたような少佐の声と、宮藤達の乾いた笑い声を最後に、インカムから声が聞こえなくなる。 再び、風を切る音と、エンジンの軋む様な音だけがあたしの世界を支配した。 ……って、あれ、軋むような音? 恐る恐る視線をストライカーのほうに向けてみれば、装甲板の隙間から嫌な色の煙が小さく立ち上っていて。 エンジンの立てる異音は収まりそうに無い。 寧ろ激しさを増していく。 あ、れ? ちょっとこれ、マズいよな? こうして、減速を余儀なくされたのだが、このときあたしは忘れていた。 音の壁というのは、超えるときだけでなく、戻るときにも存在しているということを。****** そうして、かなりの距離があったにもかかわらず聞こえた、銃声にも似た音速突破の音に誘われて。 ネウロイ墜落現場まで飛んでったオレとトゥルーデが出合ったのは。「……リベリアン、お前何をどうしたらそうなるんだ」「あはは……うっさい」 両脇を芳佳とリネットに支えられた、シャーリーさんの姿でした。 苦笑しているリネットと……いや、芳佳は腕に感じるシャーリーのおっぱいに気を取られているようです。 本当にこの子は駄目な子だな……オレも同じ状況だったらかなり意識を持ってかれるだろうけども。 それにしても、トゥルーデの言じゃないが。 本当に何がどうなったらそうなるの? 別に今回ぶつからなかったんでしょ? ストライカーユニットも見当たらないし……「エンジンがオーバーヒートして……減速したら、振動と衝撃のお陰でユニットが破損しちゃって…… 何とかリネットたちの近くまで戻ってきたんだけど、力尽きて空中分解した」 そう恥ずかしそうに語るシャーリーさん。 かわいこぶったって、その口から告げられた衝撃的な内容が覆るわけじゃない。 しかし、空中分解て、あーた……運が良かったなオイ。 トゥルーデも唖然としていらっしゃいます。 というか、体大丈夫なの?「……シャーリー……体」「ん? ああ、大丈夫大丈夫」 笑いながら答えてくれる。 然様ですか、良かったよかった。 芳佳が居たから怪我しても何とかなっただろうが、年頃の娘さんだからな。 とりあえず、これで気にするような事は全部解決した。 あの晴れ晴れとした笑みを見れば、シャーリーが音速を超えたんだろうって事は判る。 いや、あの独特の音が聞こえた以上、超えたんじゃないかとは思ってたけれど。 万事解決、すべては収まるべきところに収まった、って訳だ。 この分なら、最後のお節介も必要ないかもしれないな。 そんなことを思いながら、オレはシャーリーを支えて飛んでいく芳佳とリネットを見送った。------ つか、シャーリーとか一人称マジ無理。 自主練習なので辞めないけど。 今回の頻出専門単語:バフェット。 空気抵抗とか高速飛行中に機体から剥離する気流のお陰で機体が凄い振動したりすること ……あれ、これってフラッターだっけ? リベットとかネジとかが外れちゃうくらい振動したりするそうな。 ネウロイの変形は、モデルとなったブラックバードの逸話から。 高速時は大気摩擦のお陰で全長が60cmも伸びるそうで。 その状態を最適とした設計のために、地上では配管とかはスカスカでオイル漏れ、燃料漏れが酷かったというのは有名な話。 件の燃料、火のついた煙草落としても燃えないとかトンデモネェ代物だというのも有名な話だけど。 多分、衝撃波にこんな威力は無いけど。 画的に映えるからこれでいいのです。 画じゃなくて文ですけど。 まぁ、ネウロイのコアって透明だし結晶体だし、音波には弱いんじゃまいか。 あと割とどうでも良いけど、書いてる最中ずっと思ってたこと。 「音の壁=処女膜」。 うむ、ちと変態すぎたか。 でも、一旦破ってしまえば後はスムーズって所とか似てると(以下略) つまりチャック・イェーガーは空にとって初めての人。 くそっ、アメ公イタ公はプレイボーイばっかだな!