ランスと白蓮が玉座の間に戻ってくると、白い服を着て、槍を持った女が立っていた。
「なるほど、確かにあの者達が言っていたとおり閨を共にされたようですな、伯珪殿」
「いや、あの……その……」
星の言葉に顔を赤らめてもじもじする白蓮。これはこれで可愛いのだが、ランスにとって今は目の前の女が優先のようだ。
オレ様サーチ!などと心の中で思いながら、星を観察している。
…
……
………
95点!それがランスの出した結論らしい。
「で、こちらの御仁が伯珪殿と閨を共にしたランス殿ですな」
「おう、オレ様が英雄のランス様なのだー」
「せっ、星。こっ…これには色々と事情があってだな…」
「ふふふ、一通りの事情は聞いておりますよ伯珪殿。しかし、今の貴女を見れば、それらの事情など切欠に過ぎなかったというように思えますがね」
「~~~~~~っ!」
顔を再び赤らめる白蓮。
「がはは、オレ様は英雄だからな、しょうがないのだ。ということで星ちゃん、君もやろう!(キュピーン!)」
「っ!」
「へっ?」
ランスの言葉を聞いたとたん、星の表情が切り替わり、一足飛びにランスに切りかかっていた。
咄嗟のことに驚いたランスは慌ててカオスを槍にあてにいくっ!
ガキンッ!
「おわっ!なっ……何しやがるー!!!」
「ほう、これを受け止めたか」
「星っ!いきなり何をっ!?」
カオスで塞ぐことに成功したランスではあったが、何故このような事態に陥っているのかさっぱり分からなかった。
それは白蓮も同様で、二人してすまし顔をしている星に目を向ける。
「なーに。いきなり真名を呼ばれて少しいらっときたものでな、挨拶がてらに腕試しといったところか」
なんでもないかのように言う星。
「むかむか~!いきなり切りかかってくるとは許せんっ!お仕置きしてやるっ!!」
いきなり切りかかられたことによる怒りからか、それなりに怒ってカオスを構えるランス。
「ふふふっ。貴殿にそれが出来るかな?」
そんなランスを見て、今度は楽しそうに笑う星。
二人の間に奇妙な緊張感が走り、そして……
「いきなりランスアターックっ!!!」
ランスは、いきなりランスアタックを繰り出した!
もちろん、可愛い女の子に本気を出せるわけも無く、それなりに手加減してのランスアタックではある。
しかし、凄まじい一撃であることには変わりない。
星は、それを槍で受け流し、その空きだらけの身体に一太刀入れて終わらせようと思った。
だが…
ガキンッ!!!!!
「ぐぅっ!!」
予想外の重い一撃に、槍が弾かれそうになる。
星は、瞬間的に全ての力を使い何とか弾かれるのを防ぐのが精一杯だった。
そのため予定していた反撃も出来ず、また、両手に痺れが残ってしまう。
「ふんっ!」
ランスはこれ幸いとばかりに続けてカオスを振るう。
その剣戟は休むことなく星を狙う。
対する星は、痺れを残す両手で何とか防いではいるが、崩れるのは時間の問題のように思えた。
「はぁああああああ!」
「うぉっ!?」
しかし、星は槍を体と腕の間に挟むように持つと、全身のひねりを使い、横に薙いだ。
槍は先端の刃に目が行き、突く物であると思われがちであるが、槍の特性としてもう一つ、その長さを生かした『払う』という行為もあるのだ。
ランスは槍を相手に戦った経験が少なかったためか、この攻撃に上手く対応できずカオスもろとも弾き飛ばされてしまった。
距離を開け対峙する二人。
星は笑っている。強者と手合わせできることへの喜びだろうか。両手の痺れも抜けてきたようで、次の一撃を今か今かと待っているようにも見える。
対するランスは少しいらいらしているようだ。槍という慣れない武器と対峙してるためか、あるいは、相手が女の子であるが為に全力を出し切れないためかも知れない。
ちなみに白蓮は、その戦いを見ておろおろしている。
自分の手が及ぶ領域ではないことに気付いているのだろう。分をわきまえているというべきなのだろうが、それはそれで憐憫を誘うものがある気がする
そんな白蓮を尻目に、対峙する二人は集中力を高めていく。
彼らにその気はないだろうが、傍から見ているものにとっては、次の一撃で決めようとしているように思われる光景であった。
このまま再開すれば、今度こそどちらかが傷つくかもしれない。
自分を今まで支えてくれた人と、自分を愛してくれた人、そのどちらかが……。
白蓮はそう思うが、彼女は自分では二人を止められないことも分かっていた。
そんな時である、この戦いをとめられる人間が現れたのは。
「ランスさんっ!」
鈴女に事態を聞いて駆けつけたウルザ、その人であった。
「いじいじいじ……」
その後、ウルザにしこたま怒られたランスは、部屋の隅で『の』の字を書いて小さくなっていた。
向こうでは女性陣が真名を交換するまで仲良くなっている。
「ランスランスー、そろそろ機嫌直すでござるよ」
「いじいじいじ……」
「みんな呼んでいるでござるよ?」
「オレ様なんていなくても……いじいじ……」
「星が真名を教えてもいいと言っていたような……」
「……なに?」
「いいのでござるか?せっかくのお近づきになるチャンスを逃して?」
「………」
その時、ランスの頭の中では以下の計算式が成り立った。
『真名で呼ばせる→オレ様が好き→セーックスッ!!!』
「がはは!星ちゃーーん!!」
一瞬にして立ち直ると、すぐさま星の元へ駆けていくランス。
なんとも単純であった。
「おおっ、ランス殿復活されましたか」
「うむ、オレ様とセックスしたいと聞いてな」
「はっ?」
「がはは、照れるな照れるな。さぁやろう、今やろう、直ぐやろう」
「はぁ……。貴殿の頭の中にはそれしかないようですな」
呆れたのか諦めたのか、力が抜けたようになる星。
しかし、直ぐに気を取り直して続ける。
「姓は趙、名は雲、字は子龍、真名は星。先程の無礼を詫びると共に、この名貴殿に預けましょう」
彼女の瞳はまっすぐに、ランスに向かう。
真名を預けること、それは、彼女達大陸に住むものにとっては重要な儀式であったのだろう。
が、外の世界から来たこの男にとって、正直どうでも良いことだった。
「うむ、よろしくな、星ちゃん。さぁ、やろうっ!」
おざなりに返事を返したランスは、やはりセックスの事しか考えていないようだった。
そんなランスに対して、星は怪しい笑みをもって返答する。
「ふふっ。今はまだ私を預けるわけにはいきませんな。残念ながら、白蓮殿ほど軽くは無いのでね」
「むっ、まあ良いわ。白蓮ちゃんみたいに直ぐオレ様にメロメロにしてくれるわー」
「うむ、期待しておりますよ、ランス殿」
星の言葉を受け、ランスは、既に星を攻略した気になって高らかに笑っていた。
「そういえばでござるが、カオスは何で反応しないんでござるか?」
会話も大体終わり、そろそろ各自与えられた部屋に戻ろうかという頃、鈴女は一つの疑問を口にした。
「む、そういえば。おい、馬鹿剣っ!」
ランスも今更になって気付いたのか、カオスに声を掛ける。が、
「反応が無いでござるね」
「うむ、反応が無いな」
二人揃って首を傾げる。
近くで見ていた、星と白蓮も揃って首を傾げる。
「な…なぁ、星」
「……なんですかな、白蓮殿」
「何で、あの二人は剣に声を掛けているんだ?」
「さて、私にもさっぱり……」
改めて、首を傾げる二人。
そんな時、おっさんくさい、極めてだるそうかつやる気の無い声が聞こえてきた。
「………だる~」
魔剣カオス、その人……その剣の声であった。
「要約すると……」
「だる~、もういい?わしもう寝てもいいよね?」
カオスの言ったことをまとめるウルザちゃん。
まったくやる気の無いカオス。
「魔王の気配はおろか魔人の気配も感じないから、やる気が無い…と」
「そうそう。だからわし、と~てもやる気が出ないから、基本的に寝てるわ」
そう言って黙るカオス。
最初は、何事かと思って事態の推移を見守っていた星と白蓮は、『異世界には喋る剣もあるのだろう』という結論で落ち着いていた。
「うるさいやつが黙るなら、オレ様は文句無いのだー」
がははと、笑うランス。
カオス曰く、魔人やら魔王といった危険な奴らがいない。となれば、ランスにとってはカオスはただの剣であれば十分である。
ということで、ランスは五月蝿い奴がいなくなったと喜んだ。
他の面々も、所持者であるランスが気にしていないので、どうでもよくなったらしい。
こうしてカオスの件は、どうでも良いこととして処理されるのであった。
「なあ、星」
「なんですかな、白蓮殿」
ランス達を侍女に任せて客室に送った後、玉座には星と白蓮が残っていた。
「どうして、ランスにあれほど簡単に真名を呼ばせたんだ?」
「ふむ、そのことですか……」
白蓮はそのことがずっと気がかりだった。
ウルザやマリアなど、その他の人間は真名を預けるに値する人間だと、白蓮はそう思っている。
しかし、ランスについては別である。
彼には尊敬すべきところなど欠片も無いし、むしろ人間として最低のの種類なのではないか、そう思ったのだ。
「一つはいきなり切りかったお詫びということ。異世界から来た人間には、真名の重みが分からないだろうというのに、少し頭に血が上ってしまいましたのでね。
二つはその仕合が楽しかったことに対するお礼。ランス殿は強い。白蓮殿の下に来て、あれ程の使い手と久しく仕合っていなかったのでね。
そして三つ目ですが、これは白蓮殿も良く分かるのではありませんか?」
「えっ!?私っ!?」
「ええ。出なければ、貴女もランス殿に真名など呼ばせなかったでしょう?」
「うっ……、まぁ……」
「いくら命の恩人といっても、何の魅力も無ければ閨を共にしないでしょう。例え流されやすい白蓮殿であってもね」
「流されやすいって……」
「つまり、ランス殿には訳の分からない魅力があるのでしょう。私としてはそれをもうしばらく観察したいのですよ。
ですので、本当はもうそろそろお暇を頂こうと思っていましたが、今しばらくこちらにお世話になることにします」
「そ、そうか。これからもよろしく頼むよ、星」
「ええ、白蓮殿。ですが私の『救国』という願い、これを叶える為に白蓮殿には器以上に働いてもらうことになると思いますので、頑張っていただきますよ」
「はぁ……相変わらずはっきり言うなぁ~。まぁ、頑張るよ…」
それでは、そう言って星は玉座の間を後にする。
一人残された白蓮は、新たに負わされた重圧に、一人潰されそうになっていた。
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おしえて作者!のこーなー
Q・なんで星とランスがたたかってるの?
A・あついきょくききながらかいてたせいだとおもう
さいしょはらぶこめにするよていだった
Q・なんでかおすのけんがこんなにてきとうなの?
A・きづいたらてきとうになってた。けっして、あわてていれたわけではないですよ?
Q・なんで、ぜんたいとしてぐだぐだなの?
A・さくしゃのじつりょくぶそくです、ほんとうに(ry