「敗残兵が潜んでいるかもしれん。各自、陣地をくまなく調べろ!」
『了解っ!』
「見つけた物資には手を付けず、直ぐに私達に報告してくださいね」
「ちびーずの片割れが言うとおりだ。きちんとオレ様に報告するように。
オレ様の軍で嘘をつくようなやつは、胴と首が離れ離れになるからな」
山賊どもをオレ様の獅子奮迅の活躍で蹴散らしたあと、オレ様たちは山賊どもの拠点に来ていた。
関羽ちゃんは律儀にも、山賊が残っていないか確認を飛ばしている。
ちびーず(命名オレ様)の、はわわ言ってる方は戦利品について指示を出している。
他は軒並み、戦が終わったことにほっとしたかのように、談笑していた。
「ランス殿、先程はありがとうございました」
一通りの指示を出し終えたのか、声を掛けてくる関羽ちゃん。
「なに、オレ様は英雄だからな。あのくらい軽いものよ」
「その後の敵陣への突撃、見事なものでした。同じ武人として、感服いたしました」
「そう褒められると悪い気はしないな。ところで関羽ちゃん、怪我とかはしていないだろうな?」
「えぇ、おかげさまで目立った怪我はありません」
「ならばよし。オレ様の女だからな、勝手に怪我をされるわけにはいかないのだ。がはははは!」
「かっ、勝手に貴方の、お……女にしないでくださいっ!」
「何を言う、さっきはオレ様にメロメロだったではないか」
「そっ……、それは……その…………ゴニョゴニョ」
関羽ちゃんは、顔を真っ赤にして押し黙ってしまった。
ふむ、これはもういけそうか……?
それとも、後一回くらい好感度を上げるべきか?
「にゃはは~。お姉ちゃん、顔が真っ赤なのだ」
「戦ってばかりの愛紗ちゃんにも、春が来たんだね~。ランスさん、愛紗ちゃんのことよろしくお願いしますね?」
「なっ!鈴々っ!それに、桃香様までっ!」
真っ赤になっている関羽ちゃんが珍しいのか、囃し立てるがきんちょ。
それと、まるで人事のように言う劉備ちゃん。
「当たり前だ。ベッドの中でしっかりと可愛がってくれるわ。
それと劉備ちゃん。がきんちょはともかく、君も人事じゃないぞ?」
「ふぇ?」
「君も可愛いからな。関羽ちゃんともども、オレ様の女にしてくれるわ。がはははは!!」
「えっ、え~っと……」
とたん、おろおろし始める劉備ちゃん。
顔はオレ様を向いたり、関羽ちゃんを向いたりしながらきょろきょろしている。
関羽ちゃんの方もなんか不満げな雰囲気になっている。
恐らく、オレ様を独り占めできない不満の表れなんだろうが、残念ながらオレ様は英雄なのだ。
オレ様に抱かれたいと願う何人ものかわいこちゃんのためにも、オレ様は一人の女に拘る訳にはいかないのだよ。
オレ様モテモテ~♪
「ぶ~、鈴々だけ仲間はずれはひどいのだ」
「がはははは!その体型、百年早いわ!もっとボインボインにならんとな」
「む~!そんなこと言ってられるのはいまのうちなのだ!鈴々はすぐにボインボインになるのだっ!」
「がはは!ボインボインになってから言うんだな、がきんちょ」
妙な対抗意識を出してるがきんちょを大人の余裕で軽くあしらっていると、パシリっぽいのがオレ様のところに舞い込んできた。
「申し上げます!陣地の南方に官軍らしき軍団が現れ、我らの部隊の指揮官にお会いしたいと……」
「官軍らしき、とはどういうことだ?」
「それが……、通常官軍が用いる旗を用いず、曹と書かれた旗を掲げているのです」
「曹と言えば……許昌を中心に勢力を伸ばしている、曹操さんかと」
関羽ちゃんが聞き返すと、詳細を話すパシリ。
そしてそれを聞いて、相手に見当をつけるちびーず(はわわ)
つーか……オレ様が聞きたいのはただ一つ
「曹操ってかわいこちゃんか?」
「曹操さんは……が、外見的には、ランスさんのお眼鏡にかなうかどうか微妙なところですが、
そんなことは関係無く、『誇り高き覇者』……そんな言葉が妙にしっくりくるような方です」
「『誇り高き覇者』か……。まあその言葉に免じて、直前の失礼な言葉は不問にしてあげるわ」
朱里ちゃんの発言が終わるのを待っていたかのようなタイミングで放たれる声。
そちらを向くと、青と赤の服を着たおねーちゃんたちを従えるように、一人の………が立っていた。
「はじめまして。我が名は曹操。官軍に請われて、黄巾党を征伐する為に軍を率いて転戦している人間よ」
「ふむ、君が曹操ちゃんか…………」
「貴様っ!華琳様に向かってちゃん付けなどっ!」
「やめなさい春蘭。私達が会いに出向いたのよ。この程度のことで目くじらを立てないの」
「はっ、しかし……」
「いいの。今は静かにしてなさい」
「はい……」
曹操ちゃんと呼んだ事が気に障ったのか、俺に噛み付こうとする赤いの。
それを止める曹操ちゃん。
まあ、そんなことどうでもいい。
大事なのは……
「胸はそれなりにあるし……身長は、がきんちょどもより少し高い位か。
髪型が縦ロールなのはちょっとあれだが……。
まぁ、雰囲気ががきんちょっぽくないし、低めいっぱいストライクといった所か……」
「すとらいくと言うのがどういう意味かは分からないけど、私を品定めするなんていい度胸ね。
人のことを品定めするそんなあなたは、いったい何様なのかしら?」
「オレ様はランス様だ」
「らんす……ね。最近、公孫賛陣営で獅子奮迅の働きをする異人が、確かそういう名前だったと思うけど、あなたでいいのかしら?」
「おう、オレ様で間違い無い。しかしオレ様の英雄っぷりも罪だな。
異国にまで、その名声が轟いてしまうとは。惚れてもいいぞ?」
「はぁ……、私があなたなんかに惚れる訳が無いでしょう……。
しかし、『英雄』か……。貴方、今この大陸においてその名前が持つ意味をわかって名乗っているのかしら?」
「むっ、どういう意味だ?」
「今この大陸において、『英雄』という言葉はとても重いわ。
それが、城下町の酒場でごろつき達が語っているのならば、私は特に気にしたりはしない。
けれど、公の場で、というよりも私達のような人の上に立つ人間達がいる場で自らを『英雄』と名乗るということは、
自分こそが、人の上に立ち、人を導き、そして平和をもたらす者である。と、公言するということ。
貴方には、その覚悟があるの?」
「当たり前だ。オレ様は誰がなんと言おうと『英雄』であることに変わりは無い」
曹操ちゃんがなんか小難しい話をしていたので、とりあえず頷いておいた。
まあ、オレ様が英雄であることに変わりはないだろうし、問題無いだろう。
む、曹操ちゃん。そんなに熱い目で見るな。オレ様惚れちまったのか?
君なら抱いてやるぞ。がはははは!
「ふふふ。天も面白い男を使わしたものだわ。ランス、あなたの目指すものは何?」
「む、最終的な目標は、この世界のいい女全員とセックスすることだな。
だがまあ、とりあえずの目標は何かと聞かれれば、あれだな。この国の平和だ」
「……あなたは自分の欲望に忠実なのね。でもだからこそ、何故そんな貴方が、平和を望むのかしら?」
「オレ様の女がそれを望んだからな。英雄のオレ様にとっては、その程度の願い楽勝なのだ」
「あなた……本気で言ってるの?」
「当たり前だ。なんだ、惚れたか?」
曹操ちゃんは沈黙をする。
と思ったら、なんか肩を揺らして笑い出した。
「くっ、くくく……。あーっはっはっは!!
いいわ、貴方凄く面白いわ!
自らを『英雄』と名乗って憚らないことといい、
誰もが夢を見ながら半ば諦めている『平和』を、本気で実現させる気でいることといい……。
天には、あなたのような人間ばかりなのかしら!?」
「英雄たるオレ様のような人間がこの世に二人といるわけなかろう。
オレ様は、どこの世界でも唯一無二の英雄なのだ」
「そうね、そうよね。あなたはあなたよね。天の御使いにして英雄の。
ええ、いいわ。こんなに愉快になったのは久しぶり。
我が名は曹操!覇道を往く者よ!!
そして、我が真名は華琳!この真名、あなたに預けるわっ!」
「な、華琳様っ!どうしてこいつなんかにその真名をっ!」
先程以上に慌てる赤い方。
つーか、真名を教えられるってことは……
オレ様にベタぼれっ!?
ちっ、さすが英雄。会ってすぐの女まで落としてしまうとは。
オレ様の格好よさが憎いぜ。
「いいのよ春蘭。私は今、最高に気分がいいの。こんな馬鹿にあったのは初めてですもの」
「む、今オレ様のことを馬鹿って言わなかったか?」
「ふふふっ、悪い意味じゃないわよ。それじゃあ秋蘭、春蘭、陣に戻るわよ」
『御意!』
「ランス、また会える日を楽しみにしてるわ」
そう言って、華琳は颯爽と去っていった。
次に会える日を楽しみに……ということは、今は時間が無いから駄目だが、次に逢った時は抱いてくれと言うことか。
なかなか大胆じゃないか。まぁ、エロエロな女は嫌いじゃないがなっ!がははははは!!!
その後、周りを見渡してみると、
何が起こったのか良く分からない人間と、
あわわ とか はわわ とか言ってるだけのちびーずと、
一応正式な指揮官のはずなのに、触れてすらもらえずに地面にのの字を書いている白蓮ちゃんがいた。